第四話
恭也は、肩で息をしている美由希に向かって、タオルを投げ渡した。
それを美由希は礼を言って受け取り、全身に流れる汗を拭っていく。
「はあ、皆伝したのに恭ちゃんからなかなか一本取れない」
「そう簡単に負けてやるつもりはない」
「ううー」
「鳥のように口を尖らすな、阿呆のように見えるぞ」
「アホって!?」
目を見開いて抗議をしてくる美由希に、恭也は華麗に言いくるめる。いつも通りの対応だ。
深夜の鍛錬が終わり、師と弟子の関係から、兄妹の関係に戻ればいつもこんなものだ。少し前に美由希が皆伝したが、この関係が変わることはないだろう。
「そう言えば恭ちゃん、母さん、残念がってたよ」
「そうか」
「そうかって……それだけ?」
「他に何を言えばいい?」
恭也が肩をすくめて言うと、美由希はうっと口を閉じてしまう。だがすぐに不思議そうな顔をして再び開いた。
「でもどうして香港警防隊の話断ったの?」
恭也が退院してから暫く経ち、全快すると、今年度で大学を卒業する彼を美沙斗がスカウトしてきたのだ。
つまり香港警防隊に入らないか、と。
だが恭也はそれを断った。
「守りたい人たちがいるからな」
「かーさんたちなら私が……」
「家族だけじゃない」
「それだって……」
「お前が知らない人もいる」
恭也はやりたいことを見つけていた。それはやはり護ること。
それは家族や友人たちだけではない。
恭也は大学に通いながらも、護衛の仕事をしていた。その中で出会った人たちで、これからも護っていきたい、この人の進む道を阻む者たちから護りたい、という者たちもいた。
だからそういう人たちを守っていきたいと考えていた。
専属の護衛というわけではないが、その人たちが正しい道を進むための盾となり、剣になると。
つまりは士郎と同じ道だった。それ故に、香港警防隊に入ることはできなかった。
それでも一番守りたいのは家族や友人たちではある。
詳しく言わなくても伝わったのだろう、美由希はそっか、とだけ言って納得した。
「恭ちゃんはなのはの傍にいるために残ったと思ってたけど」
「もちろんなのはのためでもあるぞ」
「じゃあ私のためには?」
「なぜお前のために大切な進路を決めねばならん」
「ひ、酷い。なのはとの扱いの違いはなに?」
美由希はそのまま座り込んで、地面にのの地を書き始めてしまった。
その姿を見て、恭也は呆れたようにため息を吐く。
「冗談だ。皆伝したとは言え、お前の師であることは変わらん。それも少しは考えた」
「す、少し」
微妙な答えで、嬉しくなさそうな声を出すが、それでも顔は嬉しそうな美由希は、のの字を書くのを止めて立ち上がる。
それから恭也の隣に戻り、首を傾げた。
「なのはのことで思い出したけど、なんかこの頃なのはおかしくないかな?」
「ああ、確かにな」
なのはの様子がおかしい。それは恭也も気付いていたことだったし、おそらく他の家族たちも気付いているだろう。
ちょうど恭也が退院してきた時……いや、入院していた時から。つまりもう二ヶ月近く前から。
表面上は変わらないのだが、たまに妙に思い悩んだような表情を見せる。
そして、
「恭ちゃん、ちょっと避けられてるよね」
「ああ……」
恭也はいつも通りに答えたのだが、美由希にはその声が僅かに沈んでいるのがわかる。
なのはが恭也を避けている。いや、避けているというほどには露骨ではない。ちゃんと会話もするし、表面上はいつも通りなのだ。
だが家族だからこそわかる感覚。
なのはが前ほど、恭也と二人きりになりたがらないというのもそう。
「恭ちゃんがなのはに何かしたとも思えないし」
「何もしてない」
「わかってるよ。恭ちゃん、なのはには甘いから」
私にとは違って、と言う美由希を恭也は憮然とした表情で見るが、それは高町家一同所か、恭也の関係者一同が思っていることである。
甘いとは言っても、甘やかすのとは違う。何でもかんでもしてやるわけではないし、何でもかんでも手伝うというのとも違う。だが、それでも恭也はなのはには甘い。
恭也が進んでなのはに嫌われるようなことをするとは思えない、というのが全員が同じ見解である。もっともなのはが成長するためとか、何か理由があり、それがなのはのためになるのなら、自分が嫌われることになっても、恭也は自らそうするだろうが。
「反抗期ってやつなのかなぁ? 恭ちゃん、父親代わりでもあるし」
「む、どうだろうな」
もうすぐ中学生になるなのはだ。反抗期に入ったとしてもおかしくはない。
ただ反抗期だったとすると、恭也は何もできないだろう。なぜなら経験がない。恭也自身が経験していないし、やはり美由希にもほとんどなかった。晶はそう言った面もあったが、あれは反抗期とはまた違うだろう。
だが、
「そういう類ではないと思うのだがな」
別段反抗しているわけではないし、無意味に怒りをぶつけてくるわけでもない。無視するわけでもない。一般的な反抗期とは少し違う。
恭也を避けていると言っても、先ほど言ったとおり露骨にというわけではないのだ。
「悩みでもあるのかな?」
「かもしれんが……」
悩みがあるからと言って、恭也を避けるのはおかしい。もしくは恭也に直結した悩み事か。だがそれこそ思いつかないのだ。
「もしかしたら……」
そう言って、美由希は腕を組んで考え込む。
「何かわかったのか?」
「え、あ、うん、本当にもしかしたらって感じだけど」
「何だ?」
恭也に問われ、美由希はまた少し考えるものの、首を振った。
「恭ちゃんは知らない方がいいよ」
「なに?」
「恭ちゃんは知らない方が……ううん、気付かない方がいいことだと思うから」
美由希の言葉に恭也は首を傾げるものの、こうなったら絶対に彼女が喋らないこともわかっている。
それに美由希はそれがなのはのためだと思っているのだ。ならば無理矢理聞くようなことはしない。
「ただの予想だから、違うかもしれない。だから気にしないで」
「そうか」
「うん。どちらにしろなのはが相談してくるなり、悩み事について話してくるのを待つしかないよ。もちろん、話してくれるならだけど」
「そうだな」
あまり解決にはなっていないが、なのはに関しての話は終わり、二人は飛針などを回収し、家へと歩き出した。
◇◇◇
なのはは自分の机の前に座り、その額を机の上に押しつけてため息を吐いた。
あれから……二ヶ月が経った。それは、もしかしたら恭也とは血が繋がっていないかもしれないと知ってからの時間。
あれから一日何回ため息を吐いているのか。
二ヶ月という期間は長かった。その時間の中で、あの時感じた恐怖は落ち着いてきた。だがそれでも未だそのことを考えるとなのはの思考は乱れる。
その度になのははため息を吐いていた。
「嬉しくないんだ……」
血が繋がっていないかもしれないという可能性を手に入れても、全然嬉しくない。恐怖が薄れても、嬉しさなど浮かんでこない。
「これからどうすればいいのかな……」
恭也とどう接していいかわからない。きっと態度だっておかしくなってしまっている。それに家族たちが……何より恭也が気付いていないはずがない。
血が繋がっていないかもしれないというのは、あくまで可能性だ。
だがやはり恐いのだ。
血が繋がっていないかもしれない、という恐怖は薄くなっても、恭也と接するのが恐い。
もしこの想いが恭也に気付かれてしまったら。
元々気付かれてはいけない想いだったが、それでも前までならば、その想いが実らなくとも妹でいられた。
だが今は違う。想いが拒絶されてしまえば、妹ですらいられなくなってしまうかもしれない。
「恐い……」
恭也と他人となってしまうことが。
自分の想いが恭也に気付かれてしまったら、その未来は確実だとなのはは思っている。
恭也はあくまでなのはを妹としてしか見ておらず、それが当然なのだ。だからやんわり拒絶される。それはかつてからあるなのはの予想だった。
「おにーちゃんは知らなくても……」
例え恭也がなのはと血が繋がっていない可能性があるというのを知らなくとも、そのときなのはの中で恭也との兄妹という関係すら終わってしまうのだ。
恭也の中で終わらなくても、なのはの中でひっそりと終わってしまう。血の繋がりがないというのが可能性でしかなくとも、終わる。
それはやはり兄妹としての終わりだった。
つまりこの想いに気付かれたとき、恭也との関係は全てで終わりとなる。
それは高町なのはにとって許容できるものではなく、絶望であり、高町なのはとしての終わりだ。
だからこそ、恭也の傍にいられない。
だが、
「本当は一緒にいたいよぉ……」
会話なんて交わさなくてもいい。ただ恭也の傍にいたい。
恭也の傍にいられないというのは、なのはにとっては苦痛でしかない。
「おにーちゃん……傍にいてよ」
避けているのは自分だとわかっている。勝手なことを言っているのはわかっている。
それでも……傍にいてほしい。
今すぐにでも会いたい。一緒にいたい。傍にいてほしい。
だけど、恐い。
そして何より致命的なのは、もし兄と血が繋がっていなければ、結婚できるのではという考えが同時にあった。
もちろん戸籍などではどうなっているかはわからないが、少なくとも血が繋がっていないという証拠があれば、それさえも変えることができるかもしれない。つまり兄と結婚できるようになるかもしれない。
それがわかってしまったら、今度は兄以外の男の人を好きになるということが、今まで以上に考えられなくなってしまった。
だが、それを嬉しいことと認識することはできない。
恐怖の他にも様々な感情と想いで、本当になのはの心は荒れ狂っていた。
「私……どうすればいいの……おにーちゃん……」
なのはは額を机に擦り付けて、震えた声で呟いた。
◇◇◇
恭也は大学のキャンパスを歩いていた。今日は一週間に一度の授業があったのだ。
その授業も終わり、これから帰ろうとしていた時、
「恭也さん!」
恭也は突然背後から呼び止められ、足を止めた。
振り返ると、ロングの髪を揺らして、蛍が駆け寄って来ていた。
「大学、来て、たん、ですね」
駆け寄ってきたからなのか、息も絶え絶えに言う蛍を見て、恭也は苦笑する。
「まずは息を整えた方がいいですよ」
「は、はいー、すみません」
恭也の言うことを聞いて、蛍は深呼吸を繰り返す。
久保蛍。
二ヶ月前に受けた護衛の仕事で知り合った、その護衛対象者の娘であり、恭也が身を挺して護った人物。
あの件で恭也が傷ついた責任は自分にあるとでも思わせてしまったのか、恭也が入院している時も、度々見舞いに来てくれた。その間に、家族たちも仲良くなってしまった。
そして恭也が退院したあとも、結構な頻度で翠屋に訪れたりしている。その上、大学まで一緒だったとは、恭也も聞いた時は驚いた。
ただ大学で会うことは極端に少ない。なぜなら恭也は四年になり、授業がほとんどない。必要な単位のほとんどは三年までの間に取ってしまった。このへんは友人である忍に感謝である。
進路もほぼ確定したと言っていい。そのため後はほとんど卒業を待つだけのようなものだ。
そういうこともあり、恭也はもうほとんど大学に来ていないのだ。
だから大学でまだ一年である彼女と会うのは珍しい。
「はー、すみません」
少し恥ずかしげに言う蛍に、恭也は首を振って返す。
「それでどうしたんですか?」
「え、えと、元々話があったんですけど、今のは恭也さんを見かけたから反射的に話かけてしまったというか……」
蛍の言いたいことがわからず、恭也は思わず首を傾げてしまう。
「うー」
なぜか顔を真っ赤にした蛍。それを見て、さらに首を傾げる恭也。
「あ、あの、少し時間いいですか?」
「ええ、構いませんが、授業は大丈夫なんですか?」
「あ、私はもう終わりましたから。次の授業が休講なので。恭也さんは?」
「俺も終わりましたから大丈夫ですよ」
それを聞き、蛍は安心したように笑う。
それから二人は場所を変えるため一度大学を出て、近場の喫茶店に向かった。
その喫茶店は大学の近くということで、おそらく恭也と同じ大学の生徒であろう者たちが、飲み物を飲んでいたり、軽食を食べたりしていてるのが窓から見える。
恭也は一度も入ったことがない店だったが、蛍は入り慣れているように躊躇なく入っていったので、それなりに利用したことがあるのかもしれない。
中はやはり学生を主客としているためか、翠屋のように落ち着いた感じではなく、色々な置物が置かれていたり、飾られていたりで、雑多という感じがする。
そして店員に案内されたのは、窓際の席。席についてすぐに恭也はコーヒーを、蛍は紅茶を注文する。
「それで、どうかしましたか?」
何か話があるようなことを蛍自身が言っていたので、恭也は早速切り出す。
すると蛍は言いづらそうに俯くが、しばらくして怖々と再び恭也の顔を見た。
「あの恭也さん……私のボディガードをしてもらえませんか?」
それは護衛の依頼。
突然の言葉に、恭也は目を細める。
蛍は恭也が護衛の仕事をしているのを知っている。彼女の父親の護衛をする際に何度か会っていたし、護衛だと自己紹介もしたのだから当然だ。
だが、もし蛍に護衛が必要であるならば、彼女の父親の方から依頼が来るだろう。彼女の父親には、また何かあったときのために、連絡先……仕事用の携帯番号……を教えていた。
「理由を聞いてもいいでしょうか?」
たとえ知人であろうとすぐさま返事はできない。そのためそう聞くと、蛍はポツポツと語りだした。
あの事件のあとから、たまに妙な視線を感じ、さらにはつけられているような感じがするらしい。蛍は最初、自分の自意識過剰だと思い込んでいたらしいが、何度か振り返ったとき、確かに人影を見たという。
それらを聞いて恭也は感覚を広げてみた。
だが、
「ふむ、この近くには妙な者はいませんね」
「へ?」
「俺たちを見ている者もいませんし、殺気を放つ者もいません。ここに入る前もつけてくるような者の気配は感じませんでしたし」
悪意のあるなしに関わらず、ここまで自分たちとまったく同じ道順で、この店に入った者はいなかったし、途中からつけてくるという者もいなかった。今、周りを調べても答えは同じだった。
「そ、そんなことわかるんですか?」
「ええ」
驚きながら聞いてくる蛍に、恭也は簡単に頷いて返すのだが、彼女は驚いた表情のままだ。普通に過ごしてきた者からすれば、気配云々など漫画やアニメの世界の話にしか感じないだろう。
こんなことをできる者は恭也の周りに多くいるし、できない者でもすでになれていてしまっているため、恭也は顔には出さないものの、蛍の反応を新鮮に感じていた。とりあえずイタズラがしたかったわけではないので、それはすぐに押さえ込めるが。
「ですが今回はたまたまということもありますし、男の俺が一緒だったからというのもありえなくはありませんね」
「は、はい」
先ほどの話を、蛍は本当に怖々と話していた。その表情から冗談や嘘ということはないだろうし、彼女が嘘をつく理由はない。蛍の父親に関しての事件もすでに終わった話だし、誘拐ならばつけ回している間にいくらでもチャンスがあったはずだ。俗に言うストーカーというやつかもしれない。
蛍ははっきり言ってしまえば、かなりの美形であった。顔立ちは少し幼さを残すが、可愛いと綺麗を見事に両立していた。背は女性としては平均的ではあるが、顔の造形や大きさと良く合っているし、その背に流れる美しく長い栗色の髪は触れてみたいと思わせる。スタイル抜群とは言えないが、それでも均整がとれていて、その姿を見れば普通の男なら目で追ってしまうだろう。
恭也の家族たちは、彼女がなのはに似ていて、将来なのははは彼女のようになるのではないかと言っていた。正直、恭也は彼女がなのはと似ているとは思えないのだが、それでも彼女が自分の周りいる女性たちと同じで、魅力的な女性だと思っていた。
そういうことを考えれば、邪な男が彼女をつけ回すこともありえる。無論、恭也にはそんな感情はわからないし、わかりたいとも思えないが。
「それで俺を護衛として?」
「はい。駄目……ですか?」
対面から、まるで下から見上げるように見つめてくる蛍に、恭也は僅かに笑った。
「構いませんよ」
知らない人間ではないし、恭也にとっても彼女は護りたい人だ。だからすぐに頷いて返した。
「あ、ありがとうございます!」
それを聞いて、蛍はパッと表情を輝かせ、嬉しそうに笑って頭を下げる。
丁度その時、ウェイトレスが注文したコーヒーと紅茶を持ってきて、それを二人の前に置くとお辞儀をして去っていく。
恭也は添えられていた角砂糖とミルクをよけて、そのままコーヒーを一口飲むと、蛍は砂糖を入れて紅茶を飲み始めた。
「あ、それで依頼料は」
「ふむ」
カップを置いて聞いてくる蛍に、恭也もカップを置いて少し考える。
今回の話は依頼としてきたと言っていい。
恭也はすでにプロの護衛者であり、そういう意識もある。そのため全く金銭を受け取らないわけにはいかない。
別に恭也は金銭を重要視しているわけではないが、金銭を受け取るのはプロとして当然のことであり、逆に金銭を受け取らなければ信頼を得られないこととてある上、周りの信頼を下げてしまうこともあるのだ。
これがストーカーという存在に恭也が気付いて善意で護衛をしようというのなら話は変わるが、依頼としてきた以上は、それが知人相手であろうと依頼料を受け取らないわけにはいかない。
だが、蛍が知人であるからこそ、それほど取る気はないし、おそらく彼女は家族たちに心配させたくないからと、何も言っていないのだろう。言っていれば、きっと今頃彼女に護衛がついていたはずだ。それが恭也であるか、他の者であるかはわからないが。
蛍は一応資産家の娘ではあるが、彼女自身は普通の大学生に過ぎない。その彼女から一般的な依頼料を取る気にはならなかった。
「では……」
色々と考えて恭也は依頼料を出した。
「それって、一日ってことですか?」
「いえ、この件が終わるまでですが」
「不定期な依頼になっちゃうと思うんですけど」
「わかってますよ」
無論、ストーカーが捕まるなりなんなりしなければ、今回の件は終わらない。だがそれを考えての金額であった。
すると蛍は驚いたように何度も目を瞬かせた。
「え、えっと、それだけでいいんですか?」
「ええ」
「た、たぶん安すぎると思うんですけどぉ。いえ、一日とか時間って言うなら、ちょっと私じゃキツイですけど。でも期間が決まってないのに、それだと」
「そうですね」
さすがにこの金額が破格どころではないことは、恭也の方がわかっている。このような依頼を、こんな金額でいつも受けていたら、恭也とてもたない。
彼女の父親から受け取った依頼料はこの十倍以上だった。まあ危険性の違いから、相場も違うのだからそのへんはある意味当然であるのだが。
「久保さんは、今回のことをご両親には言っていないのでしょう?」
「それは……」
「さすがに大学生とはいえ、未成年に適正料金を払わせるわけにもいきませんから」
元々恭也はそれほど高い依頼料は取っていないが、それでも適正価格ではただの学生で未成年、その上まだ扶養を受けている身である蛍に払えるものではない。
だが依頼料を払わなければ、蛍とて色々と負い目が出てきてしまうだろう。幾らかでも払った方が、彼女にとっても心理的に楽な所がある。
「でも……」
蛍はもうちょっと余裕ありますよ、と言うのだが、恭也は軽く首を振った。
「久保さんは知人ですからね、サービスです。もし金額が安すぎると思うなら、これからも翠屋を利用して売り上げに貢献してください」
少し冗談っぽく言う恭也に、蛍は少し目を瞬かせるものの、すぐに笑って頷いた。
商談は成立。今度はこれからどうするかの話である。
相手はストーカーかもしれない相手。それも顔を確認したわけではないし、それも確証があるわけではない。
これが実に難しい。恭也には経験のない種類の仕事である。期間が決められているわけではないし、そもそもその原因をどうにかしないと仕事が終わらない。つまり犯人がいるなら捕まえなければ終われない。
これははっきり言ってしまえば護衛の仕事ではない。本来護衛というのは、護衛対象者を危険から守るものではなく、危険な目に合わせないことが第一であり、危険から守るよりも、危険から逃す方が正しい。もちろん、それが理想であるだけで、それだけではどうにもならないことも多々あるが。
そういう意味では、元々恭也は護衛の中では異端だ。直接の護衛だけではなく、攻勢の回ることすらあるのだ。これは不破であるというのもあるのだが。
蛍の父親を護衛した際も、それがあった。つまり護衛だけではなく、犯人らしき者が来たならば、直接の護衛は他の同業者に任せ、恭也が遊撃に出るというものである。これは護衛対象者が逃げる時間を稼ぐものであり、同時に相手を捕まえるためでもある。
これらは父親である士郎も似たような感じであった。それを恭也が覚えていたというのもあるが、契約者と相談の上で決める。
というわけで、今回も相談である。
「つけ回している者を捕まえなくてはいけませんね」
「はい。あの、そのへんは……」
「ああ、大丈夫ですよ。その場合は俺が捕まえますから」
「お願いします」
少し心配そうではあるものの、蛍はそれに頷いた。それはすでに信頼があるからなのだろう。
と、早速捕まえることは決まったが、問題はやはりある。
「そういう意味では、まずそのつけ回している人間をいぶり出さなければならないのですが」
つまる所、この人物はストーカー……の可能性が高い。屈折した想いを蛍に抱いているのかもしれない。
はっきりと言ってしまえば、警察に相談するのが一番良い方法である。まだつきまとっているだけだが、動いてくれるだろう。
ただ、確固たる証拠などがないのと、犯人の顔を見ていないのが少々難しい所だ。ストーカー防止法というのがあるが、警察は基本的に事件が発生した後でなければ動かない、というか動けないので、相談にのり、ある程度動いてくれるだろうが、積極的に調べてくれるかはわからない。そのへんはリスティとの付き合いで、理由も何となくわかるので恭也は非難する気はないが、こういうときは困りものだ。
それに蛍は立場上……というよりも、父親の立場上、あまり事を荒立てたくないのだろう。だから彼女も家族に何も言っていないのだ。
ならば、
「俺は一応、久保さんの恋人役になった方がいいかもしれませんね」
もちろん、これにはリスクを伴うのだが。
「こ、恋人!?」
それを恭也が説明する前に、顔を真っ赤にさせ、慌てたように叫ぶ。
その叫びのためか、それとも内容のせいか、喫茶店にいた他の客の視線を集めてしまい、蛍はさらに頬の赤みを深め、俯いてしまった。
それを見て、恭也は再び僅かに苦笑する。
「あくまで役ですよ。俺では久保さんと釣り合いません」
「そ、そんなことないです。むしろ私の方が……」
そんな言い合いになるが、とりあえず恋人役になる意味を説明する。
蛍に恋人が出来たと思って相手が諦めるならそれでよしだ。敵意を恭也に向けてくるなら、やはりそれはそれでよしであるということ、そして……
「ただこれは久保さんもリスクを伴います」
つまり恭也を狙ってくるならいいが、逆上して蛍を襲ってくる可能性があるということだ。もちろんそんなことになっても恭也が彼女を護るだろうが。
「本来、護衛の仕事でこんなリスクを背負わせるわけにはいかないのですが」
だが護衛として蛍に張り付く以上、いつかは似たようなものとして取られてしまうだろう。蛍は事を荒立てたくないのだから、最初からそうして、短期決戦に持ち込んだ方がいい。
最終的には警察に突き出すことになるだろうが、恭也自身がある種の脅しを入れるつもりである。
「私は大丈夫です」
リスクの説明をしても、蛍は恐がりもせず、ただ真剣に頷いた。
それに多少驚いたものの、恭也は頷いて返し、今後のことを話していく。
まず絶対に一人にはならず、家族にしろ友人にしろ、そして恭也にしろ連れていくこと。どんな些細な用だろうと、家の外へと出かけるさいは恭也に極力連絡を入れること。携帯は常に所持していること。この際、ボタン一つで繋がるよう、できれば常に恭也の電話番号に合わせておくこと。
等々、指示したことはそれなりに多い。護衛の仕事は、やはり依頼者もそれなりに合わせてもらわなければならないのだ。蛍はそれらに対して真剣に受け取り、承諾する。さらにはわからない所などはちゃんと質問してきた。
「まあ、こんな所ですね。大学の登下校なんかは、俺が送り迎えをしますので連絡をください」
「お願いします」
説明の途中で遠慮は無用であり、逆に邪魔だとまで恭也は言っていたので、蛍はそれに遠慮を挟まず頭を下げる。
とりあえず今はこんな所だろうと説明を終えると、蛍がおずおずとした感じで恭也を見る。
「あの、恭也さんは恋人役なんですよね?」
「ええ。ですがイヤならばそれでも構わないですよ」
別段恋人と限定する必要はない。結局の所自分たちが恋人だと言っても、そのつけまわしている人間が二人を恋人だと見なければ何ら意味のないことだし、むしろ恋人だなどと自分たちが吹聴せずとも、その人物が恋人だと疑う可能性とてある。
別に恭也としてはどちらでも構わない。結局犯人が捕まれさえすればいいことなのだから。
だが蛍は手をパタパタと振ってイヤなんてことありません、とまたも大きな声で言ってしまい、再び周りから視線を集めてしまう。
また真っ赤になるのだが、何とか恥ずかしさを振り払ったのか、真っ直ぐに恭也を見る。
「えっと、恋人なら敬語は止めませんか? その、できれば普通に。皆さんと話すように」
その皆さんというのは、おそらく恭也の家族たちや友人たちのことだろう。
「確かに……なら蛍さんも……」
「蛍、です」
「いや、呼び捨てはさすがに」
「イヤですか?」
「イヤということはないが」
「なら呼び捨てで」
「……では、蛍で」
「はい」
呼び捨てにされ、蛍は花咲くような笑顔を見せる。それを見て、恭也は何となく家族たちが言っていたことを理解した。
なのはは彼女に似ているという言葉。もちろん家族たちが言うほど似てるようには見えないが。それでもその笑い方はなのはと似ているような気がした。
「蛍も敬語はいらないぞ?」
「えっと、私の場合はゆっくりと変えていきます」
「ふむ、わかった」
恭也はそれほど他人の喋り方を気にする方ではない。相手が話しやすいように話してくれればいいので、強制はしなかった。
その後は仕事の話から離れ、しばらく世間話をしたあと、恭也は蛍を自宅まで送り、自分も帰宅した。
その晩、高町家のリビング。
夕食も食べ終わり、それぞれがリビングで食休みをしていた。
その中にはなのはもいたが、やはり恭也の近くに寄ろうとしなかった。そのことにそれぞれ気付いていたりしたのだが、皆何も言わなかった。
恭也はソファーに座って茶を飲んでいたのだが、湯飲みをテーブルに置き、同じくソファーの上で本を呼んでいた美由希の方を向いた。
「美由希、恋愛小説などはあるか?」
その唐突な恭也の言葉に、美由希に限らずその場にいた高町家一同が固まった。
『は?』
しばらく硬化していた一同が、目を瞬かせていた。
晶などは聞き間違えかと思い、耳を何度も指でほじくっている。
「きょ、恭ちゃん、今なんて言ったの?」
「だから恋愛小説はあるか、と」
恭也が聞こえなかったのかと首を傾げながらもう一度言うと、やはり美由希たちは目を見開き、さらにズザッと音をたてさせて、皆恭也から距離をとった。
「きょ、恭ちゃんが……」
「きょ、恭也が……」
「お、おにーちゃんが……」
「し、師匠が……」
「お、お師匠が……」
全員が顔を恐怖に顔を引きつらせていた。
『恋愛小説ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』
そして大絶叫。
「あ、あの超鈍感で、超朴念仁で、恋愛なんて興味のなさそうな恭ちゃんの口から恋愛小説! もしかして私、恭ちゃんに一撃もらっちゃって気絶してて、その中で悪夢を見てるんじゃ!」
「し、士郎さん、ついに、ついに恭也が、恋愛に興味を……!」
「お、おにーちゃん、熱はない? 熱があるならちゃんと休まないと!」
「し、師匠! 俺、体温計持ってきます!」
「ま、まちーや、おサル! うちが持ってくる!」
いやもう、一瞬で阿鼻叫喚になってしまった。
美由希は恐れおののき、桃子は天井を見つめて祈り、なのはは今までの悩みがすっ飛んだかのように恭也へと近づき、晶とレンはどつきあいながら体温計を探し始める。
「随分な反応だな、とくに馬鹿弟子」
恭也はその反応を見ながら元々鋭い目をさらに鋭くさせた。
それにびくっと震える一同。
「だって恭ちゃんが恋愛小説だよ!? ありえないよ! 地球が滅んじゃうよ!」
美由希のさらなる叫びを聞き、恭也は一瞬で彼女の隣に移動。そのまま拳骨を一つ。
美由希もかなり強くなったはずなのだが、恭也の拳骨だけはなぜかいつまでたっても避けられず、今回も容赦なく脳天にもらい、痛みでその場にしゃがみこんだ。
「み、美由希ちゃん、いつも思うけど命知らず」
「いや、美由希ちゃんのことやから、勝手に口が動いとるんかも」
自分たちが殴られたわけではないのに、晶とレンは思わず自分の頭を押さえている。音が凄いので、それだけで自分の頭まで痛くなってしまうのである。
「まったく、少し普通の恋人同士というのがどんなことをするのか知りたかっただけだと言うのに」
恭也は呆れたように言うのだが、美由希は頭を押さえ、涙目になりながらしゃがんだまま彼を見上げた。
「そ、そもそもなんで恋愛小説で、さらに普通の恋人同士なんて知りたいの?」
「いや、形だけとはいえ、女性と付き合うことになったのでな。俺はそのへんが疎いから、少しでも……」
『つ、付き合うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』
恭也の続きの言葉は、なのは以外の絶叫によって遮られた。
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
目の前では、桃子、美由希、晶、レンが恭也に近寄って何かを騒いでいたが、なのはにはその内容が一切聞こえてこない。
女性と付き合う。
この意味がわからないほど、なのははもう子供ではない。
だが、繋がらない。
(付き合う? 誰と誰が? 付き合うって、恋人同士ってこと……だよね?)
恋人同士。
なのはがどれだけ望んでも、恭也とは決してなりえない関係。だが、同時に求めていた関係。そして諦めていた関係。
だが、
(おにーちゃんが……誰か……と……)
それに自分以外の誰かがなると知ったら、心臓が張り裂けそうになった。
それはあの時の想像以上の衝撃をなのはに与えていた。
自分が悩んでいる間に、血の繋がりがないのかあるのか、どうやって兄と接すればいいのか、そんなことを考えている間に、勝手に答えは出てしまった。
もう妹しか選べない。
そしてそれは同時に、血のことを絶対に知られてはいけないということにもなった。
「あ……」
なのはの足から力が抜けそうになった。
だが、何とかテーブルに手をついて支える。
どうすればいい。
(おめでとうって、言わないと……)
相手は誰だかわからないけど、でも兄に恋人ができたなら、祝福しないといけない。
それが妹としての……言葉だ。
(やだ……)
本当は嫌だ。
だけど、だけど……。
なのはが葛藤している間も、美由希たちは叫んでいて、彼女のことには気付いていなかった。
そんな中で、恭也は深々とため息を吐く。
「早とちりするな、話を最後まで聞け。形だけとも言ったぞ」
恭也は手を前に突き出して全員を落ち着けると、経緯を話しだした。
蛍がストーカーらしき者に付きまとわれていること。そのため護衛をすることになったこと。相手をおびき出すために、恋人役になったこと。
恋人というのはあくまで役であるというのを強調する。自分が蛍の本当の恋人では彼女に悪いと言って、美由希たちを呆れさせもしたが。
「というわけで、あくまで仕事だ。相手が何を考えているかわからん。もしも家に来るなんてことがあったら、美由希」
「あ、うん。わかってるよ」
美由希がどこかホッとしながら答える。つまりもしものことがあったら頼むということだろう。
晶とレンもどこか安心したように息を吐き、桃子はつまらなそうに唇を尖らせる。
だが、すぐに桃子の顔がパッと輝いた。
「恭也、いい、これを利用して蛍ちゃんと仲良くなるのよ」
「かーさん、何を言っている」
「だって、恭也ももう二十三よ? そろそろ恋人の一人や二人いてもいいじゃない」
「普通恋人は一人だ」
もう聞き飽きたかのように恭也は首を振り、そして大げさにため息を吐くのだが、桃子は聞く耳もたない。これを機に蛍と仲良くなれと命じている。
美由希たちも、とりあえず恋人ではないことを聞いて安心したのか、それにはとくに口を挟まずいつものことだと、苦笑して見守っているだけだ。
そしてなのはは……
「あっ……」
またも力が抜けてしまったかのように、崩れ落ちるのだが、たまたまそれがソファーの上であったため、周りからはただ座ったようにしか見えなかった。
(よかっ……た)
兄にはまだ恋人はいない。
でも、
(まだ、いないだけ……)
今はいないだけだ。恭也はもう恋人がいてもおかしくはないのだ。いつまでもこのままだなんて言うのはありえないと突きつけられた。
だからこそ、どうすればいいのだろうと悩んだ。
だがその前に、
(今のままじゃダメだ)
いつまでも悩んでいるわけにはいかない。きっと兄は自分が避けていることに気付いているから。
それで血について気付かれてしまっては本末転倒だ。
(まずはいつも通りに……)
だからこそそう決めた。
まずは恭也に気付かれないようにと。
しかし、なのは自身は気付いていなかった。
それがただの逃げであることに。
いつも通りを意識することで、いつかは恭也に恋人ができるということを忘れるためのものでしかないことに。
そしてそれが、大きな後悔となってしまうことに、この時点ではまだ気付いていなかった。
◇◇◇
蛍のストーカー事件は簡単に解決した。期間にして二週間ほど。
蛍を危険にさらすこともなく、警察に力を借りることもなく、何より恭也の力を必要とすることもなく。
そして今、恭也は蛍とともに、あの大学近くの喫茶店にいた。
「まったくもう、お父さんは!」
「まあ、そう言うな」
いささか乱暴に、注文した紅茶が入ったカップをソーサーの上に置き、ガチャリと音をたてさせた蛍に、恭也は僅かに苦笑する。
「親心というやつだ」
「だからってやりすぎですよ」
僅かに頬を膨らませて言う蛍に、やはり恭也は苦笑したまま。
蛍を付け回していた人物は、ストーカーではなかった。その人物はなんと、
「まさか同業とはな」
恭也は、苦笑したまま呟く。
そう、蛍にストーカーと間違えられたのは、恭也と同じボディーガードであり、しかも女性であった。
あんな事件があり、娘が撃たれそうになったということがあったため、蛍の父親は会社に何か動きがあるたびに、彼女に護衛をつけだしたのだ。それも娘の日常を壊さないために、彼女にはばれないよう影からである。
蛍の護衛を始めてみれば、つけてくるような感じはあったのだが、それでも決して敵意など向けてこないこと、そして何となく気配などから、その人物が女性のような気がして恭也は多少訝しんだ。
それを二週間ほど続けた所で、昨日恭也はその付けていた人物に接触した。その女性に聞いてみれば……ということである。
そして先ほど蛍は……恭也もつれて……父親の元に乗り込んで話をつけた。
「まあ、彼女には少し同情するが」
その言葉は、蛍に聞こえないように恭也は呟いた。
恭也は、蛍を影から護衛していた女性に、ひどく同情していた。それこそ話を聞いたさいに、かなり愚痴も聞いたりしてあげた。
よく漫画などで影から守るなんていうものがあるが、これは難しい所の話ではない。恭也ならばこんな仕事はまず断る。彼女の愚痴の中で、なぜ断れなかったのかなども聞いていたが、まあこのあたりは今は関係のない話だ。
「はあ、すみません。なんか身内の恥をさらしてしまったみたいで」
「俺も多少久保さんの気持ちはわかるからな。気にするな」
恭也もなのはに対して甘く、同じような事件があったならば、似たようなことをしてしまうかもしれない。もちろんその場合は恭也自身が張り付くわけだが。
「それに恭也さんが傍にいるなら安心だとか」
「あれは多少驚いたが」
どうも間違って、蛍の父親の方に恭也が恋人だと伝わってしまっていた。
そのおかげで、蛍の父親は簡単に護衛を外したわけだが。もちろんその誤解は解いたが。
何はともあれ、これで事件は解決だ。
そう考えたあと、恭也は時計を眺めた。
「そろそろ行くか?」
「え? どこへですか?」
「今日は映画を見にいく約束だっただろう」
元々、昨日の約束で今日は二人で映画を見に行くことになっていた。
「で、でも仕事は終わっちゃいましたし」
それを聞いて、恭也は再び苦笑した。
「俺だって今回は別に全てを仕事と割り切っていたわけではないぞ」
元々蛍とは知り合いであった。この二週間は確かに仕事で付き合っていたが、全てをそうだと割り切っていたわけではない。
むしろ護衛としてではなく、友人として接していた場面がほとんどだ。
昔、忍を護衛していたときと似ている。結局このへんは、恋愛経験初心者である恭也と蛍が、どうやったら恋人に見えるとかがわからなかったからなのだが。
「それとも蛍は、全部が仕事だと思っていたのか?」
「そ、そんなことないです! 凄く楽しかったですし!」
「ならそれでいいだろう。これからも友人としてそういう関係であればいい」
「は、はい!」
笑顔で頷く蛍に対し、恭也も微笑を返し、伝票を取って立ち上がった。
あとがき
やっと蛍が動いてきた。
エリス「確か重要だとか言ってたけど」
まーねー。ちなみにとらハ本編で、恭也が美由希に選んでもらった本は恋愛小説ではありませんでした。
エリス「そしてストーカー事件。まあ違ったけど」
ええとストーカー問題は、個人間で解決しようとするのはなるべく止めましょう。ストーカー被害は弁護士や警察を頼るのが吉。その際に色々と証拠や資料(何時、何をされたかなどを書き記しておく)があるとさらによし。本当はこの話の恭也のやり方はあまり褒められたやり方ではありません。今回はとくに問題ありませんでしたけど。
エリス「にしてもまたオリキャラ」
すみません。この役は既存のキャラではできそうになかったので。そのへんは後で説明しますが。
エリス「それとあんたの場合、こういうシーンで、高町家らしさが足りない」
うう、度々すみません。
エリス「とまあ、今回はこのへんで」
ではー。
悩むなのはに、恭也が付き合う発言。
美姫 「いや、それは驚くわよね」
今回はそういう振りだったけれど。
美姫 「これによってなのはがどう動くのか」
また、それがどうなるのか。
美姫 「とっても気になるわよね」
うんうん。次回もとっても楽しみです。
美姫 「続きを首を長くさせて待ってますね」
って、痛いっての!
美姫 「それじゃ〜ね〜」
待ってます。