金曜日になって、海鳴大雅楽同好会の選抜メンバーがリリアン女学園に入り、全員が揃

い踏みしたところで早速稽古が始まった。

 それまで見た事もない雅楽の稽古が、その様子を見た生徒達にとって、新鮮な刺激にな

ったのは間違いないだろう。

 そして、彼女達を特に惹き付けたのは、恭也が真剣な面持ちで舞う姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜リリアン女学園高等部学園祭までの挿話〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第四話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 稽古がひと通り終わると、恭也はステージの端に腰かけて、周りを何気なく見やった。

 同好会の面々に、リリアンの生徒達が何人か話しかけている。演劇部だけではなく、吹

奏楽部の部員達も見学に来ていた。やはり楽器に興味があるようで、笙や篳篥を、同好会

の許可を得て、手に取ってみたりしている。

「この〔舌〕の部分、演奏する前にね、温かいお茶に漬けて湿らせると、いい音が出るの。

それも渋ーいお茶にね」

「まぁ、そうなんですか?」

「どうしてお茶を用意していたのか、不思議に思っていたのですけれど」

 こちらで篳篥談義。かと思えば、

「えぅ、うまく音が出ませんの……」

「あははは……そうそう簡単に出ないってば。あたしだって、最初は見よう見まねでやっ

てみたんだけど、全然吹けなくて。もう、その時はがっくりきたよ」

「……そうなんですの?」

「うんうん。最初から上手く出来る人なんていないってば。安心しなさい」

「あ、はいですの」

 笙を吹くのに挑戦して、失敗した生徒をなだめている構図。

(何と言うか……馴染んでいるな……)

 田丸の周りにも、生徒が何人か集まっていて、色々と話を聞いている。ちなみに田丸は

彼女持ちなのだが、彼女の方が相当なやきもち焼きだという話を、以前小耳に挟んだ事が

あった。そんなよしなし事を頭の中で思い浮かべつつ、しばしぼうっとしていると、

「高町さま」

 蓉子が声をかけてきた。

「水野さん……その、そちらの方はいいのですか?」

「ええ、大丈夫ですわ。聖と江利子がまとめてくれているので……それとも、今はご迷惑

でしたか?」

 一瞬、表情を曇らせる蓉子を見て恭也は、

「あ、いえ」

 ステージから降り、彼女の正面に立つ。女性の曇った表情を見るのは本意ではない。

 蓉子は笑顔に戻って、

「少し、外に出ませんか?」

 持ちかける。提案に頷いた恭也は、田丸に断りを入れた。

「表に出てきます」

「ああ、いいよ。俺達の事は気にしなくていいから」

「……だ、そうです」

「まぁ、うふふっ」

 そんなわけで、恭也と蓉子は連れ立って体育館を出て行く。

 ふと、視線を感じ、恭也は一度振り向く。すると案の定、田丸がこっちに視線を向けて

いた。右の親指を立て、白い歯を光らせてさえいる。

(……何を期待しているのやら……)

 外に出ると、傾いた陽の光が、幾分柔らかいものになっている。校庭の遠くに目を凝ら

すと、この辺りを縄張りにしているのか、一匹の野良猫が悠然と歩いて行くのが見えた。

教育施設にしては、やけにあちこちが風景として完結している。

「それにしても……」

「はい?」

「いえ、リリアンというところは、本当に広いな、と」

 精悍な風貌から出てきた、まるでおのぼりさんのような恭也の台詞に、思わず吹き出し

そうになるのを何とかこらえて、

「そう、ですわね。学園全体だと、幼稚舎から大学まで揃ってますもの」

 淑やかに微笑を浮かべ、蓉子は答える。その微笑を見て恭也は、眩しげに目を細めた。

(さて、俺は水野さんの隣を歩く程の、資格を持っているのだろうか……いや、これが佐

藤さんや鳥居さんであっても、言える事……か)

 そんな恭也の内心を知ってか知らずか、蓉子は微笑を絶やす事なく、隣を歩いている。

 

 

 

 

 

 腰を落ち着けた所は、学園の中庭に当たる場所だった。そこにいくつかあるベンチのひ

とつに座るなり、蓉子は力を抜いて、大きな息をひとつ吐いた。

 恭也は、彼女の双肩にかかる重圧と言うべきものに、思いを致す。

 蓉子はこのリリアン女学園高等部の、いわば〔生徒会長〕とでも言うべき立場にある。

聖や江利子、つぼみ達が補佐していると言っても、重要な決定やその根回しで、蓉子は他

の生徒や教師達と、渡り合ったりもするのだろう。

(俺のそれとは違うが、水野さんもまた、戦っているのだな)

 今度は自分の事を振り返ってみる。小さい時から、御神の剣は恭也の一部だった。父を

喪ってから、それが重くのしかかった事もある。

(あの頃の俺は、その〔重さ〕を乗り越えられるほど、強くも柔らかくもなかった)

 その証拠が今でも、右膝に深く刻印を残していた。

 もっとも、自分と蓉子を重ね合わせて考えるのは、あまり適当とは思えなかった。しか

し恭也は、隣に座る彼女に暖かな眼差しを向けずにはいられない。

「あ……恥ずかしいところを見せてしまいましたわね」

「いえ」

「……不思議ですわ」

「?」

「高町さまと一緒にいると、何故か重しが取れるような気がするんです」

「重し、ですか?」

「ええ……余計な力を入れなくてもいいと言うか……安心出来る、そう言った方が良いか

もしれませんわね。うふふ」

 笑う仕草に、いかにもリリアンの生徒ならではの慎ましさと、彼女自身の美しさ、そし

て年齢相応の可愛らしさが同居している。

「もしかしたら、高町さまはお気を悪くされるかもしれませんけれど……少し、話を聞い

ていただけますか?」

「構いません」

「ありがとうございます。実は、この学園のスール制にも関わる事なのですけれど」

 リリアン独特の〔スール〕について簡単に説明すると、蓉子は本題に入る。話の内容は

〔妹〕の祥子の事だった。

 今度の学園祭で上演する『シンデレラ』の主役となった祥子が、王子役の人選に反発し

ている事。その王子役は、隣の男子校の生徒会長である。

「祥子は、どういう理由でかは詳しく分かりませんが、男嫌いなのです」

「……なるほど」

「見ると吐き気がするとか、じんましんが出るとかでも、ないようなのですけれど」

「そう、ですか」

 男性恐怖症、ともまた違うらしい――恭也は考えるが、流石に判断材料が少な過ぎた。

 そして、未だに妹を得ていない祥子にも、そろそろ妹を持ってもらおうと思う気持ちも

絡み、白薔薇さま――聖の提案でひとつの賭けが始まった事。

「祐巳さん……彼女には迷惑だったかもしれないですわ」

「……と、言うと……水野さん達の手伝いをしている?」

「ええ、あの時はそう言いましたけれど」

 蓉子が苦笑するのを見て、恭也は何かあったのだろう、と感じたものの、とにかくは話

を進めてもらう事にした。

「実は、主役にお願いした花寺の生徒会長との共演に、祥子が反対した時……」

「はい」

「妹の一人も作れない人に、発言する権利はない……そう言ったのです」

「……水野さんが?」

「ええ」

「ははぁ……」

 この言葉に衝撃を受けた祥子は、男子生徒との共演を辞退する為の一種の〔カード〕に

祐巳を選び――祥子の男嫌いの理由については、後で知る事になるが――しかし、祐巳は

祥子の〔妹〕になる事をためらった。そこで聖が提案したのが、

「もし、学園祭前日までに祥子が祐巳さんを妹にする事が出来たら、主役を降板しても構

わない。その穴は祐巳さんで埋める……というものだったのですけれど」

 聞いて、恭也は思わず天を仰いだ。

 

 

 

 

 

「……話は、分かりました」

 昨日〔薔薇の館〕の中で感じた微妙な〔気〕は、恐らくこの話に通ずるものだったのか

もしれない、恭也はそう振り返る。

「すごい事になってますね」

 巧妙、と言えばそこまでですが――そう付け加えた恭也の論評に、蓉子は苦笑するしか

なかった。ともあれ、賭けの成否は既に、抜き差しならぬところまで来ている。日曜日に

は学園祭当日を控えているから、後は明日しかない。ここまで来て、今更この賭けとやら

を止めさせるわけにもいかないだろう。

(それに、俺が口を差し挟むような問題でも、ないな)

 ぶっちゃけた話、こんな馬鹿げた賭けはするだけ無駄ではないか、というのが恭也の本

音だ。だがどうあれ、始まってしまったものは仕方がなく、後は祥子と祐巳、二人の気持

ちひとつにかかっているわけだ。

(恐らく佐藤さんが考えたのは、上演する劇と小笠原さんのスールとやらの問題を、両方

解決する為の方法だった、そういう事なのだろう)

 そして、蓉子はそれを受け入れ、祥子は当然乗った。祐巳は――否応なしに乗せられ、

今は肩書き的に〔山百合会〕の助っ人、という扱いになっている。そんな構図が、恭也の

頭の中で出来上がってきた。

「しかし……そうなると、もう誰の出る幕もないでしょうね」

「ええ。祥子と祐巳さん……二人が互いの事を本当にどう思っているか、ですわ」

「それにしても、水野さん」

「はい?」

「意外に、強く出る事もあるんですね」

 恭也のひと言に、蓉子は胸を圧迫されるような感覚を覚えた。もしかしたら、

(私の事、そういう女性だと思ってしまったかしら?)

 そんな恐れを抱きつつ、それを表情に出さないよう必死に努力して、蓉子は恭也に聞い

た。

「……幻滅、しまして?」

「いえ、単に驚いただけです」

 返って来た答えは、やけにあっさりとしたものだった。聞いた蓉子が逆に二の句を告げ

なくなってしまった程、恭也の答えには淀みというものがない。

「俺は……今回の事について、何を言う事も出来ません」

 恭也は、むしろ淡々とした口調で、しかし蓉子に優しい眼差しを向けて言葉を紡ぐ。

「水野さん。あなたは今度の事について、考えた上で判断したのだと思います。それなら

ば、後は皆を、二人を信じていいと、俺は思います」

 そこまで言って、ふと思い出したかのように、

「……ああ、余計な差し出口、だったかもしれないですね」

 苦笑した。

「いえ……いいえ。そんな事はありませんわ。私もここ数日、あれこれと考え過ぎていた

のかも」

 それまで抱えていた精神的な重みが、ふっと抜けていくような感覚を、蓉子は覚えた。

 恭也の言葉や気の遣い方は、どちらかと言うと不器用だが、むしろ、いや、だからこそ

真っ直ぐ心に響く。

 そして恭也の瞳は、その言葉以上に、彼自身の心を相手に伝える〔力〕すら持っている

のかもしれなかった。

 出会ってからそれほど経っていないし、数える程しか会っていないのに、恭也の存在は

蓉子にとって、急速に大きなものとなって来ている。

 自覚して、気恥ずかしくなり、ベンチから腰を上げる。そして、照れ隠しに両腕をうん

と頭上に伸ばし、思い切り背伸びをした。

 が、それがいけなかったか、

「あ……」

 急にくらっ、ときた。いけない、と思った瞬間、身体の力が抜けて、後ろに倒れていく

感覚だけが残る。しかし、それは唐突に止まった。

 

 

 

 

 

 一瞬何が起こったのか分からなかったが、背中に包み込むような暖かさを、はっきりと

感じる。

「大事、ありませんか?」

 低く重みのある、それでいて優しい声が、驚くほど近くから身体の深奥に直接響く。

「……えっ?」

 視線を、無理矢理声の聞こえる方に上げて――澄んだ漆黒の瞳に、蓉子は囚われた。身

体が抱き留められていて、身体が恭也の身体に密着している。

「あ……」

 恭也の顔を、あまりにも近くで見てしまい、蓉子はとっさに言葉を出す事が出来ない。

(あ……は、早く離れないと……)

 もうひとりの蓉子が慌てふためいているが、身体の動きがそれを裏切った。上半身が微

妙に動き、右の手が恭也の左肩にそっと乗る。

 恭也の顔をもっと間近に見ようと、頤がいつの間にか上がり、吐き出す息に熱さを覚え

る。鼓動が大きく、早くなり、

「あ、あの……もう、少し……このまま」

 言ってしまった。まるで、強烈な魔術にかかったような気がする。

 恭也の瞳が、わずかに細められた。まるで、

(俺で良ければ、構いませんよ)

 そう、答えてくれているかのように、蓉子は思った。例え私の傲慢でもいい。妄想でも

いい。白昼夢であったとしても、文句は言わない。

 理性と言う名の、もうひとりの蓉子が影を潜めてしまいつつある今、ほんの少し背を伸

ばすだけで、肩にかけた手をほんの少し上に、恭也の首にかけて引き寄せるだけで、きっ

と〔何か〕が決定的に変わる。

 まだ踏みとどまっていた理性が、

(ああ……見ていられないくらいに、顔が真っ赤になっていてよ?)

 言い残して、今度こそ本当に、どこかにいなくなってしまった。同時に、右手が音もな

く肩から上を目指す。

 瞳を少しずつ閉じていき、紅唇を恭也の唇に近付けていく。

「あの、水野、さん……?」

 恭也が流石に怪訝な表情になるが、もう気にしない。

「わた、し……」

 何も考えられなくなり――

「おーい、蓉子ぉ」

 間延びした呼び声が、とてつもなくはっきりと、蓉子の聴覚に飛び込んできた。

「きゃっ!?

 反射的に、蓉子と恭也は飛び離れ、互いに距離を取り合う。

「あ、あ……わ、わ、わ、私ったら、そ、その、ご、ご、ごめんなさい!」

 真っ赤になって、蓉子は恭也に謝る。

「あ、い、いえ、その、こちらこそ、何と言うか……」

 恭也もしどろもどろになってしまい、何とも気まずい雰囲気が一陣、二人の間をすり抜

けていった。

 互いに、目と目を合わせると、二人とも真っ赤になっている。

「高町さまの顔、真っ赤になってますわ」

「……水野さんも」

 憮然とした真っ赤な顔を、少しうつむき加減にしてぼそりと呟いた恭也が、何とも可笑

しくて、年上の男性にこんな事を思うのは失礼だと分かっていながら、可愛いと思った。

 また一度、蓉子を呼ぶ声が聞こえる。

「聖の声ですわね」

「行きましょうか、水野さん」

「ええ、そうですわね」

 二人とも、何とか理性を取り戻した。先程の事を、忘れようとするかのように。

 と、歩き出した蓉子が、後に続く恭也に振り向いた。

「高町さま」

「はい」

「その……恭也、さん……そう呼んでも、よろしいでしょうか? 私の事は、呼び捨てに

して構いませんから」

 理性が戻った蓉子の、これが精一杯の自己主張。

「はい。ですが、呼び捨ての方は……善処します」

 困惑の滲む微笑を蓉子に見せた恭也の、それが答えだった。

 

 

 

 

 

「どこに行ってたかと思ったら、高町さんを口説いてたとはねぇ」

「な、何言ってるのよ、聖」

「だって、ねぇ? 江利子」

「そうね……高町さまが〔恭也さん〕に、水野さんが〔蓉子さん〕だもの」

「……はぁ」

 揃って中庭から戻って来た恭也と蓉子が、会話の中で互いを名前で――さん付けではあ

ったが――呼び合った事に、聖と江利子だけでなく、周りでやり取りを聞くとはなしに聞

いていた全員が、思わず色めきたったものだ。現状、渦中の二人であるはずの祥子と祐巳

までもが、蓉子を囲む輪に加わっている。

 恭也は、と言うと、

「一体、いつの間にそういう仲になってたのかなぁ?」

「高町さん、詳しく話を聞かせてもらうわよ」

「そうそう」

「……むぅ……」

 こちらは同好会の面々に詰め寄られていた。同情(憐憫?)の笑みを浮かべて肩をすく

めている田丸は、この際何の助けにもなりそうにない。

 体育館の中にふたつの集まりが出来て、しかも、各学級や部活の取材で飛び回っていた

新聞部の築山三奈子が、騒ぎを偶然見かけて突入してきたものだから、今度は集まりがひ

とつになった。

 三奈子は、新聞部の文字通りエース的な存在で、面白い記事を書く事では定評があるも

のの、自らのモットー、

「話題は生もの、時間が勝負」

 に忠実なあまり、強引な取材や誇張した表現も辞さない面があって、学園内の評価は、

「功より罪が多少上回る」

 ひいき目に見てこんなところだ。

 そんな彼女の、理知的と言うよりはむしろ挑戦的、とでも形容するべき瞳が、まるで獲

物を見つけた猛禽の如く、ぎらりとした光を放って蓉子と恭也に肉迫する。それに後押し

されたか、他の皆も恭也と蓉子を半包囲するかのように迫ってくる。

 が、事は三奈子達の思惑通りには、いかなかった。恭也が正面切って三奈子を見返し、

「熱意は理解出来ますが、同意もなく強引に取材を迫るのはどうかと。いかに?」

 蔦子の時と同じように斬り込んだのである。しかも、誰もが気付かない内に蓉子を庇う

位置に――つまり〔盾〕として――立っていた。もちろんその眼光の迫力は、三奈子の太

刀打ち程度で揺らぐような、ヤワなものではない。

「う……」

 言葉以上に、強烈な眼光に圧倒され、三奈子はその後が続かなかった。昨日の内に、雅

楽同好会の顧問と話をする事が出来た――〔薔薇の館〕での打ち合わせを終え、出て来た

ところを捕まえるのに成功したのだ――ので、更に何かしら話題を掴もうとしていた時に、

願ってもないチャンスを得た、そう思ったのだが、甘過ぎた。

 恭也の、曇りなき黒い瞳を見ている内に、三奈子は麻痺するような感覚に陥りかけて思

わず、

「い、いいえ……私の方こそ、ぶしつけな事をして、申し訳ありませんでしたわ」

 口に出してしまった。完敗である。

「皆も、あまり騒がないでくれるとありがたい」

 畳みかけるようにして、恭也は包囲する全員の首を縦に振らせる。聖や江利子、つぼみ

達も、

「はい」

 反射的に揃って同意してしまう。それを見て安堵したのか、眼光を収めて目を細める恭

也に、皆一様に見惚れていた。

 そうこうしている内に、いよいよ外の陽が早くも暮れて来た。既に辺りは暗くなりつつ

ある。練習の為に残れる時間も限られていたから、そろそろ潮時と言って良い頃合いであ

った。

 蓉子の音頭で片付けが始まり、生徒達が動く。

 上演は日曜日に迫り、残された練習時間は明日のみ。午後から最終的なリハーサルを行

う事を全員で確認し、この日の日程は全て終了したのだった。

 依然として祥子と祐巳の問題は、まだ解決していない。








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