赤い瞳の青年に守られながら、ようやくたどり着いたウエストウッド村。
愛しい弟分たちの出迎えを受け、ほっと安堵の笑みを浮かべるティファニアは、しかし、すぐにまた表情を凍らせた。
村の出入口に近い森の中から、武器を持ったリザードマン達が次々と飛び出してきたためだ。
自分達の縄張りを侵し、あまつさえ数多の同胞を殺害したティファニア達への怒りに燃える亜人の群れは、三人の姿を認めるや雄々しく咆哮。各々手にした武器を、がちゃがちゃ、鳴らしながら、自分達のもとへと歩み寄って来た。こちらに恐怖を抱かせるためか、不自然なほどにゆっくりとした歩みだった。
あるいは、援軍が到着するまでの時間を稼ぐために、わざわざゆっくりとした足取りを演出したのかもしれない。
リザードマン達は森の中から続々と現れ、どんどん数を増していった。
十や二十といった規模ではない。五十、一〇〇、二〇〇と、ちょっとした軍隊並の数へと膨れ上がっていった。
ウエストウッド村は、子ども達ばかりが暮らす人口僅か十数人の集落だ。子ども達だけで衣食住のすべてを自給自足するのは難しく、生活物資の多くは、外部からの輸入に頼っていた。そうした商人達を迎え入れるために設けられた出入口は、荷馬車が停まれるようにちょっとした広場となっていた。
広場といっても、僅か一五〇平方メイルほどの土地だ。坪数にして約四五坪。そんな狭い空間に、二〇〇体近いリザードマンが集結し、蠢く様子は、奇怪極まりない光景だった。
集団の中には、まだ子どもの個体や、明らかに年老いた個体の姿もあった。メスの姿も多数見られる。老若男女問わず、どうやら群れに所属する全個体を根こそぎ動員したらしかった。それだけ、赤い瞳の青年を警戒しているということか。
二〇〇体近いリザードマンの群れを見て、ティファニアは今度こそもう駄目だ、と絶望した表情を浮かべた。
敵の数が、あまりにも多すぎる。いくら赤い瞳の青年が強いといっても、所詮は一人の身。手足は二本ずつしかなく、一度に出来ることには限界がある。二〇〇体近いリザードマン達が、同士討ち覚悟で一斉に襲いかかってきたとしたら、いかな彼でも対抗する術はないと思われた。
「お姉ちゃん……」
怯えと不安を孕んだ弱々しい声が、自分の名を呼んだ。
同時に、誰かが腰元にしがみつく衝撃。
視線を落とすと、妹分のエマが自分にしがみついていた。
その顔は恐怖に歪み、自分に縋りつくその肩は小さく震えている。不自然なくらいに荒い呼吸は、彼女が軽いパニックの状態にあることを示していた。
無理もないな、とティファニアは思った。ようやく死の恐怖から解放されたと思った矢先の、この絶望的な状況だ。助かった、と、一度安堵の気持ちを得ている分、かえって死の恐怖は倍増しているはずだった。最年少のエマには、あまりにも過酷な現実だといえた。
ティファニアは自らもエマの小さな身体を抱きしめた。
ついで彼女は、他の兄弟達の顔を見回す。
自分に抱きついてきたのは最年少のエマ一人だけだったが、弟達はみな等しく暗い面持ちをしていた。この状況を覆す手段など存在しない、と諦観に翳った表情だった。
そんな兄弟達の顔を見ているのが辛くて、ティファニアは視線を転じた。
悲観に揺れる眼差しを、青年に注ぐ。
黒い外套に覆われた背中。こちらに背を向けている彼の表情を、ティファニアの位置から窺うことは出来ない。はたして、彼はいまどんな表情を浮かべているのか。この絶望的な状況に身を置きながら、何を考えているのか。
「クラー、マナ……(マナよ……)」
そのとき、ティファニアの耳朶を、低い声が叩いた。
動揺も、絶望感も存在しない、ひどく冷たい声。
今日一日だけで、すでに何度も耳にした、赤い瞳の、彼の声。
瞬間、見慣れぬ靴を履いた彼の足下が、突如発光し出した。
闇色に輝く光がまるで筆のように、何もなかった地面に紋様を描く。円を主体とした幾何学図形だ。大きな円の内側に、小さな円が三つ並んで三角形を形成している。三角形の内と外には、ティファニアがこれまで見たことのない文字の羅列が刻まれ、心臓が鼓動するかの如く、一定のリズムで点滅を繰り返していた。
「ハヌゥ、ハテンサ、ナ、ヨテト。ハヌゥ、ソサレク、エト、ワ、イハーテス、ハイ、スゥン、ナ、ラスレーコン(僕に従え。オーラとなりて、敵をぶち殺せ)」
青年が、左腕を天高く掲げた。
言の葉を、一つ紡ぐ度に、闇色の光が彼の左手に集まっていった。
まるで、青年の左腕を中心に漆黒の暴風が躍り狂っているかのような光景だった。
漆黒の光は瞬の掌中で荒れ狂いながら、やがて球形を形作っていった。
大振りのクルミくらいの大きさの、黒い光球だ。
黒い風を集めながら、激しく放電している。
いったいどれほどのエネルギーがあの一点に集中しているのか、黒球を中心に、周囲の空間が歪んで見えた。
――……あ、れ……?
ティファニアの表情が、怪訝に歪んだ。
急速に、息苦しさを自覚する。
いつの間にか体が火照りを帯び、心臓の鼓動が激しくなっていた。
――あの、黒い光球のせいなの?
身体の火照り具合から察するに、この熱は青年の手の内にあるあの光球から発せられているものだろう。調理などで火を扱っていると、時折、息苦しさを感じることがある。とすれば、この息苦しさも、やはりあの光球のせいなのか。
もし、ティファニアにもう少し自然科学の知識があれば、自分の身に起きた異変がその程度で済んでいる事実に驚愕していたことだろう。
赤い瞳の青年が握る精霊光球は、摂氏三万度という莫大な熱量を孕んでいた。あらゆる物質は一万度を超えるとプラズマという高エネルギー状態になる。三万度もの熱の塊が空気中に出現すれば、空気もまたプラズマ化して膨張し、周辺一帯は真空状態になるはずだった。
真空に身を置いた結果、生物が受ける被害は、呼吸困難などという生易しいものに留まらない。鼓膜は破れ、眼球は飛び出し、粘膜の水分は沸騰。肺は膨張してあらゆる臓器を穴という穴から押し出していたはずだった。また、真空地帯めがけて周囲の空気が殺到。強烈な上昇気流は竜巻となり、ティファニア達の身体を吹き飛ばしていたはずだった。
三万度もの熱の塊が空気中に出現すれば、本来なら被害はそれほどの規模になる。それを息苦しさを感じる程度に留めているのは、ひとえに青年のコントロールによるものだった。彼は摂氏三万度というエネルギーを生み出す一方で、周囲への被害が最小限になるよう力の流れを操作していたのだ。
「ラスレェェコンッ・コンレスッッ!!(オォォラフォトンッ、レイッッ!!)」
言霊が、爆ぜた。
天高く掲げられた、青年の左手。
その左手が握る、闇色の光球が放たれた。
空中へと発射された光球は、地上から三〇メイルほどの高度でさらに爆発し、地上に、黒い雨を降らた。
異形の怪物達の心臓へと正確に照準された漆黒の槍が、二〇〇発、地上に降り注いだ。
漆黒であるはずの光。
あまりの激しさと、その眩さに、ティファニアは思わず目を瞑った。
視界を閉ざした世界に、光の槍が地面を叩く音だけが響く。
時折耳膜を叩く怪異なる悲鳴に肩を震わせながら、ティファニアは終わりの時を待った。
そして、
そして――――――、
静寂が、訪れる。
おそるおそる、目を開けた。
「……え……?」
思わず、呆けた声が、口から漏れた。
まず視界に映じたのは、黒い背中だった。
ついで視界に飛び込んできたのは、大小無数のクレーターを地面に刻んだ広場の光景。見慣れた広場の、変わり果てた姿。いったいどれほどの莫大なエネルギーが大地を叩いたというのか。急激に熱せられた地面からは濛々と蒸気が上がり、僅か数メートル先の景色さえ見通すことは叶わない。
そこに、リザードマンの姿はなかった。一匹たりともいなかった。異形の怪物どもは、死体さえ残さず消えていた。自分が目を瞑っている僅かな間に、二〇〇体近いリザードマンが一体残らず消滅していた。
――いったい、何を……?
ティファニアは目の前に立つ黒い背中に、驚愕と恐怖とが共棲する眼差しを注いだ。
前後の状況から考えて、目の前の青年が何かしたのは間違いない。では、その“何か”とはいったいなんなのか。魔法を使ったようにも見えたが、ティファニアの知る限り、亜人は魔法を使えない。目の前の彼が亜人だとするならば、いったいどんな奇跡を起こしたというのか。
――そもそも、彼は亜人なの? ……それとも、人間なの……?
一度は結論づけた疑問が、再び胸に去来する。
エマの窮地に、駆けつけてくれた。圧倒的な暴力をもって自分達を救い、少々強引な手段ではあったが、帰るべき村まで送り届けてくれた。自分達を助けてくれた恩人。
はたして、目の前の彼はいったい何者なのか。
自分達を助けてくれた、あなたの正体はいったい……?
「……あなたは、誰なの……?」
通じるはずのない言葉。届くはずのない想い。
ティファニアの問いかけに、青年はやはり何の反応も示さない。
黒い外套に包まれた背中を、こちらに向け続けている。
青年の手の中で、赤い剣が不気味に輝いた。
永遠のアセリアAnother × ゼロの使い魔クロスオーバー
ゼロの魔法使いとその使い魔と、ついでに現われた守護の双刃
EPISODE:48「I want belive him and I can't belive him」
なにはともあれ、青年のおかげでリザードマン達の脅威が去ったのは間違いない。
ティファニアは、自分の言葉は相手に通じないと承知しつつも、目の前の背中に向かって感謝の言葉を述べた。その声は怯えから僅かに震えていた。目の前の青年は恩人だと、頭では理解していたが、先ほどの光景を思い出すと、どうしても恐怖心を捨て去ることが出来なかった。
赤い瞳の青年に礼を告げた後、彼女は改めてかたわらのエマを見た。正午前に行方知らずとなった彼女は、まだお昼ご飯を食べていない。さぞやお腹が空いているだろうと、ティファニアは思った。いまは緊張から空腹感を感じていないようだが、青年のおかげで死の恐怖は去った。じきにお腹の減りを自覚するだろう、と彼女は推測した。
聞けば、村の出入口で自分達の帰りを待っていたジム達も、まだ昼食を摂っていないという。エマのことで責任を感じていた彼らは、二人が戻ってくるまではと、食事を摂らぬ決意を固めていたらしい。
昼食を摂っていないのは自分とて一緒だ。ティファニアは、ひとまずみなを連れて自分の家へと戻った。
ウエストウッド村では、子どもたち三人ずつで、一軒の家を与えられ、そこで暮らしている。しかし、三度の食事については、みんなティファニアの家で取ることにしていた。そのため、ティファニアの家の居間は、十数人の子どもたちが一堂に会してもゆったり余裕のある広さがあった。
なお、子ども達の暮らす家にも、一応キッチンの設備はある。しかし、ティファニアお姉ちゃんの作る料理がいちばん美味しいと、普段は滅多に使われていなかった。
ティファニアが帰宅すると、リビングでは村の子どもたちが全員、集まっていた。食事を摂った様子はなく、ティファニア達の姿を見るなり、口々に「お帰りなさい」と、声をかけてくる。
思わぬ光景に、きょとん、としてしまうティファニア。
自分が村を出て、相当な時間が経過している。てっきり、みんなもうお昼を食べて、それぞれの家へ戻っているものと思っていたが。
そんな彼女に、居並ぶみなを代表して、一三歳のサムが言った。
「みんな、姉さん達が帰るのを待っていたんだよ」
なんのことはなかった。彼らもまた、村の出入口で自分達の帰りを待っていたジム達と同様、自分と、エマのことを心配してくれていたらしい。
サムの発言を受けて、ティファニアのかたわらに立つエマが、居間に集まったみんなに向かって、「ごめんなさい」と、頭を下げた。
幼いなりに、自分がみんなにどれほどの心配をかけ、またどれほどの迷惑をかけてしまったのか察したらしい。謝罪の声は小さく、そしてかすかに震えていた。
謝罪の言葉を向けられた子どもたちは顔を見合わせた。やがて、ティファニアに次いで年長のサムが、優しく微笑んでかぶりを振った。
「いいよ、もう。……そんなことより、早くご飯にしようぜ? 俺たちみんな腹減ってんだ。ほら、姉さん達も早く席に着いて。一緒に食べようぜ?」
サムはそう言って、自らの隣の席をエマに勧めた。
一三歳のサムはウエストウッド村で暮らす孤児たちの中でも古参の一人だ。これまで、周りのみんなに迷惑をかけ、いらぬ面倒を背負わせてしまった経験は一度や二度ではない。
サムには、しょぼくれているいまのエマの姿が、かつての自分と重なって見えた。妹分の感じている申し訳なさを理解出来ればこそ、彼は謝罪の言葉を受け取るや早々に話題を転じた。
みんなからは怒られるだろう、叱られるだろう、と予想していたのか。サムの返答にエマは思わず茫然と立ち尽くす。
他方、弟分の気遣いを察したティファニアは、そんなエマの背中をそっと押してやった。
エマはティファニアとサムの顔を交互に見比べた後、おずおずと兄貴分の少年の隣の椅子へと腰かけた。そうしてから、ようやく浮かぶ、明るい笑み。安堵の息が、ティファニアの、そしてサムの口から洩れた。
昼食と呼ぶには少々遅い時間帯の食事が、ようやく始まった。
孤児とはいえ、小さな子どもが十数人も集まる食卓だ。みんな行儀の悪さは自覚しつつも、食事の席はやかましく、賑やかなものだった。料理に対する感想は勿論のこと、今日は何があったか、誰がどんなことをしたかなど、小さなコミニティゆえに話題は事欠かず、会話の密度は濃かった。
そんな食卓において、ティファニアはもっぱら聞き役に徹していた。
もともと人見知りする性格の彼女は、自分の考えを口にすることが苦手だった。自らが話し手になるよりも、聞き手側に回った方が会話を楽しむことが出来た。
「なあ、姉さん」
対面に座るジャックとの会話が一段落した頃合いを見計らって、 隣に座るサムが話しかけてきた。やけにひっそりとした声音。不信感の募った渋面。彼がこれから何を話そうとしているのか、すぐに察しがついた。
「……結局、アイツはなんなのさ?」
サムはそう言って、自分の背後を見て顎をしゃくった。
心なしか、少しムッとした印象の表情。
示されて、ティファニアも肩越しに後ろを見る。
居間に設けられた暖炉の側。子どもたちが四人並んで座れるサイズのゆったりとしたソファを、一人の男が占拠していた。血のように赤い瞳。銀糸とまごう白い髪。抜き身の赤い刀剣をかたわらに置き、ソファの真ん中に座る彼は、ウエストウッドの森でティファニア達を助けた、あの青年だった。
リザードマンの脅威を除いた後も、赤い瞳の青年はティファニアらの側を離れなかった。自宅へと戻る彼女達の後ろにくっつき、最終的には家の中にまで着いてきてしまったのだ。家主たるティファニアは、青年の行動を奇妙に思ったが、まさか命の恩人を問答無用で追い返すわけにもいかず、一応の警戒を払いながら黙って彼を家に上げてやることにした。
家に上がった青年は、最初物珍しそうに室内の方々に視線を巡らせていた。しかしやがて、ティファニア達が食事を始めたのを見ると、居間のソファに座り込んでしまった。それからは何をするでもなく、ただ黙って自分達の団欒を眺め続けていた。子どもたちは、食事の風景というプライベートな姿を、よく知りもしない他人に見られることに最初こそ不快感を露わにしていた。しかしすぐに彼の視線を無視することにした。不快感を訴えようにも、そのための手段がなかったからだ。ティファニアから言葉が通じないことを聞かされた彼らは、仕方なく、青年の存在を一旦意識の外に置くことにした。視線が不快な意外は、特に迷惑をかけているわけではなかったから、彼の好きなようにさせてやることにした。
切れ長の双眸は、いまも自分達を見つめている。目が合い、ティファニアは慌てて顔をそむけた。なんとなく恥ずかしい気持ちがこみ上げてきて、少女の頬に、朱色が差した。
サムを見ると、弟分の少年はあからさまにムッとした様子で、
「命の恩人ってのはさっき聞いたけど……だからって、いきなり家に上げるのは、なんか違うと思う。それに言葉が通じないって……それって、亜人かもしれないってことだろ? 姉さんやエマを襲った、あのリザードマン達と同じ。そんな奴を、村に入れるなんて……」
と、険のある言葉を口にした。
サムはティファニアに次ぐ年長者で、村でいちばん年上の男の子だ。若いながらも、彼には自分が家族のみんなを守らなければ、という自覚があった。突然、自分達の生活圏に踏み込んできた得体の知れない男の存在は、そんな彼の危機意識を煽った。
サムの発言に、ティファニアは困った表情を浮かべた。
恩人のことを悪く言われて腹立たしい一方で、弟分の言い分も理解出来るから、その心中は複雑だった。
「サム、言いすぎよ。……それに、彼は他の亜人とは違うわ」
「何が違うっていうのさ? 自分やエマを助けてくれたから、リザードマン達とは違うって?」
サムは、自分は酷いことを言っていると自覚しつつも、これも家族達の安全のためと続けた。
「アイツが亜人だっていうのなら、姉さん達を助けた意味も変わってくる。姉さん達を食べるつもりだ。リザードマンを蹴散らしたのだって、自分の獲物を奪われるのを嫌ってのことかもしれない。姉さん達を送ってきたのも、村に行けばもっとたくさんの餌があると思ったからかもしれない」
サムは、ソファに座る青年を、じろり、と睨んだ。
「それに、亜人じゃなかったとしても、アイツが得体の知れない男だって事実に、変わりはないよ」
むしろ、彼が自分達と同じ人間であることの方が恐ろしいとサムは思う。
サム自身は直接目にしていないが、二〇〇体近いリザードマンを一瞬で消滅させたという青年の力はどう考えても異常だ。手練れのメイジだって、そんなことは出来まい。それだけの力を持った存在が、自分と同じ人間だなんて、考えただけで恐ろしかった。
ウエストウッド村の村民は、みな何らかの理由で親を失った子ども達だ。サムの場合は謀略だった。薬問屋を経営していたサムの両親は、商才に恵まれていたこともあって、平民ながらそこそこの財産を蓄えていた。当時、サム達が暮らしていた土地を預かっていた領主は、貴族至上主義とでも表現すべき思想の持ち主で、平民のことを虫けら同然の存在と思っていた。彼は裕福な一家を見て、平民風情が生意気な、と思った。平民如きが蓄財していることが気に食わなかった領主は、サムの両親に無実の罪を着せた。放火の容疑をかけられた両親は、釈明の機会さえ与えられることなく、財産没収と打ち首を言い渡された。幼いサムだけが、両親の商売相手だった薬屋達の必死の嘆願により、刑の執行を免れた。私刑は速やかに執行され、かくして彼は天涯孤独の身となった。
謀略によって両親を奪われたサムは、人間の持つ暗く、陰湿で、残酷な側面を、実体験として知っていた。
彼はリザードマンのような亜人よりも、人間の方がはるかに恐ろしい存在だと考えていた。人間の持つ悪意こそが、この世で最も恐ろしいものだと確信していた。
膂力に優れる亜人達を圧倒するほどの力を持ったこの青年が、そんな暗い悪意を内に持った人間だとは、思いたくなかった。亜人であった方がまだマシだ、とサムは心の底から思った。
サムの境遇を知るティファニアは、彼の言葉に、何も言えない。
自身もまた特別な事情からこの村で暮らしている彼女には、弟分の気持ちがよく分かった。彼の感じている恐怖、不安、不信、みんなを守らねばという責任感……そういった諸々の感情が、理解出来た。ために、何一つ、言葉にすることが出来なかった。
「ごちそうさまでした!」
そのとき、幼い活力に漲った声が食卓に響いた。
見ると、サムの隣でエマがシチューを平らげたところだった。
その姿を見て、ティファニアとサムは揃って少し驚いた表情を浮かべた。まだ五歳のエマは他の子どもたちと比べても小食で、食べる速さも遅い。その彼女が自分達よりも早く食べ終えるなんて、珍しいこともあるものだ。
食事を終えたエマは、空の皿を持って台所へと向かった。
後始末が楽なよう、汚れ物をまとめておくのかと思いきや、違った。エマは鍋の前に立つと、空になった自分の皿にまたシチューを注いでいた。
ティファニアの顔に、怪訝な表情が浮かぶ。
はて、たったいま彼女は「ごちそうさま」と、言って食事を終えたばかりだが。いったい、何をするつもりなのか。
妹分の奇妙な行動を、サムもまた不思議そうな面持ちで眺めた。
少し底深な皿にシチューを並々と注いだエマは、そのまま、トテトテ、とした足取りで、居間へと向かった。
居間では、依然として赤い瞳の青年がソファを占拠している。
エマは彼のもとへ歩み寄ると、にこにこ微笑みながら、「はい!」と、シチューの皿を差し出した。
食卓へと注がれていた視線が、幼い少女の顔へと向く。こころなしか険を帯びた眼差し。思わず、サムは椅子から腰を浮かせた。いつでも動き出せるよう、膝を軽く曲げ、運動に備える。
赤い瞳の青年はしばしエマと、差し出されたシチューを交互に見比べた後、
「……ラスト、ライスング、セム、ハヌゥ、テカレウト? (……食え、と言っているのか?)」
と、言った。
不機嫌そうな口調。勿論、何を言っているかは分からない。
しかしそれだけに、サムはこの男が大切な妹分に何かするのではないかと、警戒した。
他方、青年に向けてシチューの皿を突き出したまま、エマは、通じないとは理解しつつも口を開いた。
「さっきからずぅっと、みんなのこと見てたから……。だから、はい! お腹、すいてたんだよね?」
エマはおさなごらしい屈託のない笑みを浮かべて言った。
どうやら青年が食卓へと視線を向けていたのを、お腹が空いているからと推測したらしい。たしかに、眺めていたのが食事風景だから、分からなくもない推理だが。
「エノウィ……(お前……)」
赤い瞳の青年は、射るような眼差しでエマを睨みつけた。
いったい、何がそんなに不快なのか、端正な美貌には苛立たしげな表情が浮かんでいた。
「ラスト、デ、ヤコオロフ、ヤァ、ヨテト? (僕が恐くないのか?)」
形の良い唇から、言の葉が漏れた。
当然、言葉の分からないエマは、小首をかしげた。
「デ、ハテスシカメ、イクミウ、ワ、ロゥ、セム、ヨテト、ラ、モナニア、セィン、ヘン。ノトンカ、ラ、エノウィ、ハウト。……シエハル? (他の連中はみんな僕と目を合わせようとしないのに、お前は違う。……なぜだ?)」
「?」
「……デハケニテス、ウラクサテオル。(……伝わるはずもないか)」
諦観の溜め息。
言葉の分からないエマとしては、やはり首をかしげるほかない。
青年が、手を伸ばした。シチューの皿を掴むと、やや強引なアクションで取り上げる。皿を取り上げられたエマは、ちょっと乱暴がすぎる彼のリアクションに驚いた表情を浮かべるも、すぐに笑顔となった。
そんな彼女に忌々しげな視線を注ぎつつ、赤い瞳の青年は、皿に添えられたスプーンを手に取った。野菜の栄養をたっぷり吸ったシチューを掬い、唇に寄せる。静かに、喉が上下した。
「……ねぇ、サム」
青年とエマのやり取りを眺めていたティファニアの口から、安堵した声が漏れた。
他方、名を呼ばれたサムの、姉を見る顔は複雑そうだ。
「あなたはああ言ったけど、わたしは大丈夫だと思うわ。ほら、エマを見て。あんなに懐いてる」
エマはウエストウッド村に暮らす子どもたちの中でも、特に人見知りの激しい性格をしている。それだけに、幼いながら人間の本質を見抜く観察眼に長けていた。その彼女が、命の恩人とはいえ、初対面の彼に懐いているその姿は、ティファニアに微笑ましい感情と、安堵をもたらした。
「……あの子があんなに懐いているんだもの。あの人は、わたしたちに害をなす存在なんかじゃない」
「……そんなの、分かるもんか」
サムは、吐き捨てるように言い放つと、テーブル上のシチューの皿へと視線を落とした。
◇
「……ほう」
差し出されたシチューと思しき液体を一口含んで、秋月瞬は思わず舌鼓を打った。
美味い。野菜特有のくさみやえぐみを極力抑えつつ、素材の持つ旨みを丁寧に引き出している。特別、調味料は使っていないらしく、素朴だが深い味わいが、瞬の口の中を、喉を、胃袋を、心地のよい熱で満たしていった。
――まるで佳織の料理を食べているみたいだな……。
どこか懐かしさを感じさせる風味に、瞬はまだ現代世界で暮らしていた頃に食べた佳織の手料理の味を思い出した。
この世に生を受けたその瞬間に母と死に別れた瞬は、少年時代、誰かの作った手料理というものから縁遠い日々を送っていた。侍女達が作ったものは手料理と呼べるような代物ではなかったし、そもそも父は、妻が死んだのは息子のせいだと、自分のことを嫌っていた。秋月家に仕える専門のコックが作った料理はたしかに美味かったが、決して自分の心を満たしてはくれなかった。
転機が訪れたのは、瞬が十歳のときのことだった。ある日、自分の大切な幼馴染で、想い人の佳織から、自分の作った料理を食べてみてほしい、と願われたのだ。彼女曰く、はじめて作った料理を、幼馴染の自分と柳也に食べてみてほしい、と。
瞬と柳也は、佳織のお願いを快く引き受けた。
「あ、あの……はじめて作ったものだから、ちゃんと美味しく作れたか、分からないんだけど」
「なるほど。俺と瞬は毒見役というわけだな?」
自身なさげに卵焼きの載った器をテーブルに並べていく佳織を見て、柳也が冗談っぽく言う。
瞬も口には出さなかったが、これは実験だろうと考えていた。
佳織自身もまた体験した例の飛行機事故で、高嶺家は二親を一度に失った。まだ幼い兄妹は家事の一切を自分達でしなければならなくなった。少しでも早く料理の腕を上達させたいと考える佳織が、味見役に幼馴染の自分達を選んだのは自然といえば、自然な流れだった。
もう十年近くも昔の出来事だが、瞬はいまでも、あのとき食べた卵焼きの味を鮮明に思い出すことが出来た。
佳織の作った卵焼きは、一から十まで彼女一人で作ったはじめての料理とあって、お世辞にも、美味い、と絶賛出来るものではなかった。表面が所々黒焦げたそれは明らかに焼きすぎだったし、砂糖の分量も多すぎた。しかし、一口食べてみて、瞬はその瞬間、彼女の料理の虜となった。
佳織の料理には、彼が普段口にしている高級料理にはない、あたたかさ、があった。
あたたかさ、としか形容の出来ない、“何か”があった。
その“何か”は、自分の胃袋だけでなく、心さえも満たし、彼に、幸福な時間を与えてくれた。
“何か”を感じたのは柳也も同じだったらしく、彼女の手料理に感動した親友は、
「佳織ちゃん! 俺をきみの弟子にしてくれ!」
と、当時八歳の佳織に向かってのたまう始末だった。彼女は苦笑しながら、柳也の願いを聞き入れた。
普段、秋月家で口にしている高級料理には程遠い味。しかし、自分の心をかつてないほどに満たしてくれた味。あったかくて、どこか懐かしい、味……。
いま、口に運んでいるこのシチューは、佳織の料理に似ている。
勿論、似ているというだけで、味はまったく違う。
違う、が、スプーンを動かす手を止められない。
かつて佳織の手料理を食べたときと同じように、もっと味わいたい、という気持ちを、抑えられない。
瞬は、自分でもよく分からない不思議な衝動に突き動かされて、シチューを啜り続けた。
隣でにこにこ笑っている子どもの存在だけが鬱陶しかった。
野菜たっぷりのシチューを味わいながらも、瞬の視線は常に食卓へと向いていた。
異形の怪物ども薙ぎ払いながらようやく辿り着いたこの村で、瞬は情報収集に余念がなかった。なんといっても、ここは右も左も分からぬ異世界だ。何気ない日常の食事風景からも、学ぶことは多いと考えられた。
たとえば、いま自分も手にしている食器からも分かることは多い。衣食住は人間が社会生活を送っていく上での基本だ。そのうちの“食”に関連した食器の造りは、この世界の文明レベルを知る上で大いに役立った。飾り気のない陶器製の皿はともかく、青銅製のスプーンの存在は、この世界の文明レベルがさして高い水準にないことを推測させた。贔屓目に見て、中世後半から近代初期といったところか。
瞬は食卓の様子を目で観察する一方で、耳を使って彼らの会話にも注意を寄せていた。
会話の中でよく使われるフレーズを耳で拾い、それがどんなとき、どんな雰囲気の中で使われているかを観察する。そうやって単語のおおよその意味を見当づけ、どんどん頭の中に叩き込んでいく。記憶した単語の数が五十を超えると、なんとなくではあるが、文法についても、こうではないか、という推測がはたらいていった。
瞬が特に気になったのは、子ども達の会話の中で時折口にされる、「ティファニア」という発音の単語だった。使っている場面から察するに、どうやら自分が助けた金髪の少女の名前のようだが。
――まさかとは思うが、この女が、倉橋時深の言っていたティファニアだというのか……?
金髪の少女の華奢な後ろ姿を見つめながら、瞬は自らに向けて問いを投げかける。
この世界がどれほど広大で、いったいどれほの人間が暮らしているのか、瞬は知らない。しかし、いくらなんでも一〇〇人、二〇〇人ということはあるまい。少なくとも数万からの人口がいるはずだ。
目の前にいるティファニアが、倉橋時深の言っていた女なのか。可能性は限りなくゼロに違いが、万が一、もしそうだとすれば、この女こそが自分と柳也とを結ぶ鍵ということになる。
はたして、彼女は倉橋時深の言ったティファニアなのか、そうでないのか。そもそも、子どもたちが口にするティファニアとは、本当に固有名詞なのか。
――そのあたりを、見極める必要がある。
言葉を覚える、情報を集めるという目的以外にも、この村にはしばらく逗留する必要がある、と瞬は頷いた。
――それにしても……、
野菜のシチューを綺麗に平らげて、瞬は改めて食卓に座る面々の顔を見回した。
子ども嫌いの彼には忌々しい光景だ。子どもばかり、どころか、子どもしかいない食事風景。瞬は不愉快そうにしかめっ面を作る一方で、そのことについて疑問を抱く。
――……なぜ、この場には子どもしかいない? 大人はいったい、どこにいる……?
この場だけのことではない。
この村に足を踏み入れてから、自分は大人の姿を一度も確認していない。青年層や中年層はおろか、老人の姿さえ見受けられない。
働き盛りの青年や、中年だけがいないというのならまだ分かる。この時間帯は、村の外へ出て仕事をしている、と解釈出来るからだ。しかし、老人の姿まで見えないというのは明らかに異常だ。
一見したところ、目の前の少女達は、自分達地球人と同じ姿形をしている。食性もまた同様だ。大人になった途端、地球人とはかけ離れた姿になるとは考えにくいが。
――子どもだけの村……子どもだけの世界、か……。
不意に頭の中に浮かんできたフレーズに、瞬は思わず顔をしかめた。
子どもだけの世界。
かつて、自分の親友が過ごした世界。
桜坂柳也が暮らした、世界……。
孤児院。
その三文字が、脳裏によぎって、瞬は、いいや、とかぶりを振った。
――まさか、な……いくらなんでも、考えがすぎる。
考えるべきことがあまりにも多すぎた。だから、ついつい思考が関係のないことにまで及んでしまう。
いまは、柳也を探すことだけを考えなければ。
自分自身に言い聞かせ、瞬は観察を続けた。
◇
夜。
子どもたちばかりが暮らすウエストウッド村の夜は、基本的に早い。
夜の娯楽が乏しいことに加えて、村民たる子どもたちの年齢が年齢だ。夜更かしや夜遊びを楽しめるほど体力に余裕のある子どもは少なく、必然、年齢が上の子もそちらに合わせなければならないから、みながベッドに潜る時間は早かった。夜が早いのはティファニアも同じで、夕食の後片付けを終えた彼女は、二階の寝室へと向かおうとした。
ティファニアの家の構造上、キッチンから二階へと上るためには、居間を通る必要がある。
すでに灯りを落とした居間を足音を殺しながら進みつつ、彼女はふと居間に置かれたソファへと目線をやった。
灯りを絞った暗い視界の中、ソファの上で、誰かが寝転がっているのが見えた。窓から薄っすら差し込む月明かりが、白い寝顔を照らす。そよ風が、銀糸とまごう細い前髪を静謐に揺らしていた。
ソファの上で眠りに就いてたのは、赤い瞳の青年だった。
エマ達と一緒にティファニアの家まで着いて来た彼は、昼食が終わった後も彼女の家を出ようとせず、結局、ティファニアが眠りに就こうとするこの時間まで居座っていた。
のみならず、ティファニアの家のソファを占拠して、そのまま熟睡してしまった。これにはさすがのティファニアも渋い顔をしたが、恩人で、言葉の通じない彼を無理矢理追い出すわけにもいかず、彼女は困り顔で彼のこの暴挙を傍観するしかなかった。
――いったい、何を考えているのかしら……?
月明かりに照らされた青年の甘いマスクを眺めながら、ティファニアは思った。
単に図々しいだけなのか。それとも、大物なのか。
今日、初めて出会ったばかりの人間の家で、斯様に熟睡出来る彼の考えが、いまいち理解出来なかった。
なぜ、今日出会ったばかりの人間の家で眠ることが出来るのか。なぜ、この家から離れないのか。そもそもなぜ、自分やエマを助けてくれたのか。
「……このまま、ここに住み続けるつもりかしら?」
規則的に静かな呼吸を繰り返す青年の寝姿を見つめながら、ティファニアは、ふと胸の内で湧き出でた疑問を口に出して呟いた。
人間か、亜人なのかさえも分からない彼が、今後も自分の家に、この村に住み続けるつもりなのだとしたら……村長として、自分はこの恩人をどう扱うべきなのか。どう接していけばいいのか。
もし彼が、自分の秘密を知ってしまったとしたら、そのとき自分は、どうすればいいのか。
ティファニアは重い溜め息をつきながら、階段を上った。
◇
翌朝―――――。
突然、ドスン、という床を叩く音が一階の方から聞こえてきて、自室のベッドで横になっていたティファニアは、驚きから目を覚ました。
まるで床をハンマーで思いっきりぶっ叩いたかのような重く、大きな音。
いったい何事が起こったのか、と取るものもとりあえず、ティファニアは慌てて階段を駆け下りた。
音のした居間を見て、彼女は絶句した。
そこには、昨晩最後に見た光景と同様、赤い瞳の青年がソファを占拠し、その隣には――――――、
「……イノシシ?」
そう。イノシシだった。
推定体重一五〇キロはあろう大人の猪が、気を失った状態で横たわっていた。頭部には、なにやらファンタスティックな形状のたんこぶが見て取れる。殴打の痕跡だ。どうやら、青年が殴って気絶させたらしい。
「え、ええと……これ、どうしたの……?」
ティファニアは、わなわなと震える指で気絶しているイノシシを指し示した。
言葉は通じずとも、指差しというアクションを交えることで、意図は通じるはずだった。
ソファで寝転がっていた青年は、ティファニアの声に反応して瞼を開けた。
体は起こさず、視線だけ少女に向けると、億劫そうに口を開いた。
「……ハイヤム、リューカンメ、ウ、ネレ、ソサク(さっき、森で狩ってきた)」
居間に設けられた窓から見える森を示して、顎でしゃくった。
それから、イノシシを示して言う。
「テスクナ、ユーシ。、ハヌゥ、テカレウト(宿代だ。食え)」
何を言っているかはさっぱり分からなかった。
ただ、なんとなく、
――この人、結構天然かも……。
と、ティファニアは思った。
昨晩の悩みが、一瞬にして吹き飛んだ。
ちなみにイノシシは、その日の朝食として美味しく調理された。
イノシシの肉は豚肉と比べるとややクセのある味だが、鯨肉に似た味で非常に美味しいのだ。
<あとがき>
……お気づきですか? ティファニアの家、原作よりも増築しています(笑)。
というわけで、読者のみなさんおはこんばんちはっす! タハ乱暴でございます。今回もゼロ魔刃をお読みいただき、ありがとうございました! 今回の話は、いかがでしたでしょうか?
今回の話は、タハ乱暴の欲望(=セルメダル)をめいっぱい詰め込んだ話でした。エマ、可愛いよ。エマ。瞬とエマのやりとりで、少しでもほっこりしていただければ幸いです。……あ、あと、みんなのことを想うあまり、瞬を敵視するサムに微笑ましい気持ちを抱いていただければ、我が意を得たり。
ちなみにエマの五歳、サムの一三歳という年齢は、タハ乱暴の創作です。というより、ウエストウッド村の村民たちは、たぶんにタハ乱暴の手によってオリキャラ化することになります。なにせ、原作で詳しい描写がされていないので……。ゼロ魔刃では、子どもたちは基本、タハ乱暴のオリキャラになる、と考えてください。
最後に、上の増築云々について。原作では何階建なのか明らかになっていないティファニア邸ですが(八巻では一階建っぽかったけど、続く九巻では四人も客を泊めている)、本作では瞬と一緒に暮らすことになるという物語の都合上、二階建にしました。二階の寝室でティファニアが寝て、一階のソファで瞬が寝る、というのが基本です。寝所を別にしたのは、まぁ、タハ乱暴なりの気遣いです(笑)。佳織ぞっこんらぶな瞬は、ティファニアのバストレボリューションには欲情しないだろうけど、他の男の子たちが許さないだろうからね。
さて、前回のあとがきで、瞬の話は次のEPISODE-48で終わります云々書きましたが、予定より長くなってしまいました。Another Etranger編は、あと一回だけ続きます。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ではでは〜
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柳也「幼女は駄目だぁ、瞬!」
言葉が通じずとも変わらずにマイペースだな、瞬。
美姫 「まあ、彼らしいかもね」
本来なら柳也を探しに行きそうだけれど、事前に聞いたティファニアという単語のお蔭か。
美姫 「とりあえずは滞在するみたいね」
しかし、言葉が通じないと言うのは中々に難しいものだな。
美姫 「多少の意思疎通は出来るけれどね、やっぱり」
その辺りも含め、瞬がどんな風に馴染んでいくのか。
美姫 「完全に馴染むかどうかは難しいけれどね」
気になる次回は……。
美姫 「この後すぐ!」