ジャクソン号の甲板上に降り立った柳也と才人は、背中合わせに寄り添い立って、自分達を取り囲む数百の敵兵を見据えた。
柳也は二メートル超えの長槍を中段に構え、才人はデルフリンガーを正眼に置く。
「怖くないか、才人君?」
「怖いっすよ、そりゃあ。……でも、俺も男ですから。ここまで来たら、腹括らないと」
「……良い覚悟だ」
額に冷や汗を滲ませながら冷笑を浮かべる才人を、柳也は微笑を浮かべて流し見た。好戦的な微笑みだった。数百の敵兵に囲まれながら、この男はいま、この瞬間を心の底から楽しんでいた。
「それじゃあまぁ、馬鹿一号と二号、行くとするかッ!」
「応――ッ!!」
裂帛の気合いとともに放たれた雄叫びに、才人も応じて咆哮した。
その気勢に呑まれて、包囲する軽歩兵隊の面々が、びくり、と肩を震わせる。その怯えを、柳也は見逃さなかった。
柳也は槍を霞上段に振りかぶり、前進しながら、膂力の限り、思いっきり振り抜いた。この男は槍を、突く武器ではなく、叩き、斬撃を見舞う武器だと考えている。
一文字に振るわれた薙ぎの一撃は、一人吹き飛ばし、また一人叩きのめし、三人目の背骨を叩き折ったところで、ようやく殺傷能力を失った。槍の一撃を受けた三人のうち、二人は即死だった。唯一、生き残った三人目の男も、肋骨を砕かれ、背骨を折られ、さらには内臓を破裂させられ、虫の息の状態だった。
一撃で三人の戦闘能力を奪った柳也は、再び槍を霞上段に保持し、不敵に微笑んだ。
「……申し訳ないが、槍の扱いは不慣れだ。手加減が出来ん。かかってくるなら、覚悟して来い!」
「こ、この野郎!」
一人の兵士が、中段に構えた槍を突き出してきた。
まるでそれが合図だったかのように、他の者達も一斉に動き出す。
たった二人の敵に、四〇〇人の男達が殺到する。
柳也は、
才人は、
己が相棒を、思いっきり振り回した。
永遠のアセリアAnother × ゼロの使い魔クロスオーバー
ゼロの魔法使いとその使い魔と、ついでに現われた守護の双刃
EPISODE:39「炎剣」
「ドーチェスター卿の部隊が動いた?」
ニューカッスル城から五キロと離れていない反乱軍総司令部の天幕にて、オリヴァー・クロムウェルは眉をひそめた。
まだ三十代半ばの、若い男だ。丸い球帽をかぶり、緑色のローブと、マントを身に着けている。一見すると聖職者のようなこの男こそが、反乱軍レコン・キスタの最高司令官たる人物だった。
幕僚からの報告を受けたクロムウェルは、彼に事態の詳しい説明を求めた。
将軍曰く、正午の総攻撃の最終打ち合わせのため、ドーチェスター隊の陣地に赴いたが、そこには誰もいなかった。のみならず、武器や糧食といった、戦闘に必要な物資の一切がなくなっていた。不審に思い、直ちに調査を進めると、卿が所有する輸送船が、兵達を満載した状態で出港したことが判明した。
「ドーチェスター隊の輸送船……ジャクソン号が停泊していた港に勤める水夫に確認したところ、ドーチェスター隊は、昨夜のうちに糧食と武器類を船に積み込み、出港したそうです。行き先は誰にも告げなかったそうですが、戦闘準備を整えた上で出港したことから、おそらく、ニューカッスル城へ向かったものと考えられます。……功を焦った、抜け駆けではないかと」
分厚い唇と鐘馗髭が特徴的な五十代の将軍は、野性的なその風貌とは裏腹に、理路整然と自分の考えを述べた。
幕僚の意見にクロムウェルは深々と頷いて、「おそらく、将軍の考える通りだろうね」と、呟いた。
「ドーチェスター男爵にも困ったものだ。たしかに、余は戦後の恩賞を、戦功で決めようと考えているが……」
「して、どういたします、閣下?」
幕僚の言葉に、クロムウェルは溜め息をついた。
「無論、見殺しには出来んよ。ドーチェスター男爵自身はともかく、彼の焦りに付き合わされた兵達に罪はない。きっと男爵は、本当のことは、兵達には伝えていないだろうからね。……それに、ドーチェスター隊には、モーガン・ガドウェインがいる」
「“炎剣のガドウェイン”ですな。過去に巨人を屠ったという歴戦の勇者です」
「死なすには惜しい人材だと思わないかね?」
「本職も同感です」
幕僚の言葉に頷いて、クロムウェルは天幕に集まった各隊の指揮官を見回した。
「総攻撃の開始時刻を早める。まだ眠っている兵達には悪いと思うが、叩き起こしてやってくれ。それから……」
クロムウェルはかたわらに控えていた四十代半ばの男を見た。レコン・キスタの情報セクションの長たる人物で、要は、スパイの元締めだった。
「城内に潜入している我らが同志に、伝書フクロウを飛ばしてくれ」
◇
下段より擦り上げたデルフリンガーの一撃が、目の前の兵士の胴を薙ぎ、鎧を砕き、あばらを折った。
狭い甲板では槍は不利と、ロングソードを振りかぶっていた兵士は悶絶し、膝が震えて、前へと倒れ込む。
才人は横へとすり抜けて、転倒する男の体をかわした。
すり抜けたその先に、また敵兵がいた。三十過ぎと思しき顔。その後ろにも、敵兵の姿が見える。そのまた後ろにも、敵の姿……。
「ったく、いやんなってくるなぁッ、もう!」
辟易とした怒声が、唇から洩れる。
浅い呼吸を繰り返しながら、才人はデルフリンガーを八双より振り下ろした。
三十過ぎの兵士が構えた槍を斬割し、返す刀で、足を払う。
脛を切られた男は体を支えられなくなり、後ろ向きに倒れた。その転倒に巻き込まれて、男の背後にいた二人がバランスを崩す。その隙を衝き、才人は彼らの頭蓋にそれぞれ一撃見舞った。刃ではなく、剣身側面で思いっきり叩く。
脳震盪を起こした二人はそのまま気絶した。
肩で息をする才人の手の中で、デルフリンガーが震える。
「二三、四、五人目だな。ヒュー、やるねぇ! さっすが俺の相棒だ!」
「ったりめぇだ。伊達に、伝説の使い魔やってねぇ、よ!」
正面から、三人の兵士が一度に殺到してきた。
槍衾を形成し、横一列に並んで向かってくる。
しかし、才人は風の速さで敵の突撃を避け、前進。すれ違いざまに、一人の脇腹を浅く斬り上げた。
さらに背後に回り込むや、残る二人の背中も薙ぐ。
「これで二八人目だ、相棒! ……ところで、どうして敵を殺さねぇんだ?」
「俺は、俺の、大切なもののために戦っているんだ」
「はい?」
「この人たちも、きっと、自分の大切なもののために戦っているんだ。そんな人達を、殺したくない」
「優しいねぇ、相棒」
才人の手の中で、デルフリンガーは溜め息をついた。
「……ところで、この前、ちょっと思い出したことなんだが……」
「なんだよ!?」
向かってくる敵兵の斬撃を右に流し、左に弾きながら、才人は怒鳴った。
敵の猛撃を防ぐ間にも、デルフリンガーは変わらぬ調子で言う。
「相棒、たしか、“ガンダールヴ”とか、呼ばれてたよな?」
「ああ、伝説の使い魔だってよ! ってか、その話、いましなきゃなんないことなのか!?」
「いいや、んなこたぁ、ねぇが……なんかこう、その名前、頭の隅に引っかかっているっていうか……」
「だったら後にしろよ! つうか、お前、剣じゃねぇか。頭、どこだよ!?」
「……たぶん、柄」
デルフリンガーはしばらく考えた後、ぽつり、と言った。
その瞬間、才人は通算三五人目の敵を斬り倒した。
◇
城の裏庭に反乱軍の飛行船が現れた。船種は輸送艦で、船内には武装した兵員が満載されているらしい。
裏庭の見張り台からもたらされたその一報は、正午の決戦に備えて眠っていた王軍兵士三〇〇名の意識を、瞬く間に夢の世界から連れ戻した。その中には勿論、王軍総大将のジェームズ一世や、空軍大将のウェールズ皇太子らも含まれている。
老いたる国王に代わって、軍の実質的な指揮を執るのは若き皇太子だ。
目を覚ましたウェールズは兵達に迎撃の指示を下すかたわら、情報の分析に努めた。
敵船が現れたのは分かった。では、その規模はいかほどのものなのか。いったい何隻で攻めてきて、どれほどの兵力を連れてきたのか。攻撃の開始は正午と告げた敵が、なぜ攻撃の時刻を早めたのか。これは敵の総攻撃なのか、それとも一部の部隊が暴走した結果なのか。そのあたりのことを整理する必要があった。
しかし同時に、空軍大将でもあるウェールズは、イーグル号の出港準備と非戦闘員の乗船誘導の指揮を執らなくてはならなかった。敵の攻撃が四半日以上早まったため、そちらの作業も並行して行わなければならない。
若き王軍司令は多忙を極めた。裏庭に出現した敵への迎撃に、総攻撃に対する準備の指揮。それに加えての避難船の準備の監督だ。他にも彼には、やらねばならないことがあった。とてもではないが、自分で情報を集める余裕がない。
そこでウェールズは補佐役の副官に侍従のバリーを任命し、彼に情報を集めさせた。
バリー老メイジは、兵達が持ってくる情報を内容によって四種類に分け、それぞれ整理した上でウェールズに逐次報告した。四種の分類とは、裏庭に出現した敵船の様子、城を包囲している五万の軍勢の動静、避難船準備の進行状況、わが軍の迎撃状況、だ。
バリーのまとめた情報によれば、裏庭に現れた敵船は一隻のみ。大型の輸送艦で、船内には武装した兵士を満載している、とのことだ。しかし、護衛の艦艇はおろか直衛の竜騎兵の姿さえないことから、功を焦った部隊の抜け駆けと判断出来た。また、輸送艦の大きさから推定するに、敵兵力は少なくとも二〇〇以上と考えられた。
他方、城を包囲する反乱軍五万に、いまのところ特に大きな動きはない。少なくとも、いますぐに攻め込んでくる気配はなかった。
ただ、物見の兵が、敵前線部隊の動きが僅かに活発化し始めたのを確認しており、やはり総攻撃の開始は正午よりも前になるのは確実だった。抜け駆け部隊の攻撃に、五万の大軍が引きずられた形だ。
「尻尾に振り回されるトカゲの頭、か……僅か数百の兵士も統率出来ないとは、オリヴァー・クロムウェル、君主の器にあらず!」
ウェールズはバリーの情報を基に指揮杖を振るった。
「全力をもって裏庭の敵を速やかに撃退する。然る後、正面の五万に対し、迎撃の姿勢を取る。
敵兵を城内に侵入させてはならない。敵の主力が空にいる間に、これを無力化せよ。
兵はみな銃を取れ。温存していた大砲を引っ張り出し、砲弾をぶち込め。弾の出し惜しみはするな。メイジの精神力も同様だ。敵の意志を粉砕するまで、攻撃し続けるのだ!」
ウェールズは力強い言葉をもって兵達に命令した。
それから彼は、司令部に置かれた水時計に視線をやった。現在の時刻を確認し、頭の中で敵の総攻撃開始の時刻を計算する。
――敵の攻撃が早まった以上、ヴァリエール嬢らの結婚式も急がねばなるまいな。
一度結んだ約束を、王族は破ってはならない。
ウェールズは、うむ、と頷いて、指揮杖を一時バリーに託し、司令部を後にした。
◇
戦闘が始まって、まだ十五分と経っていなかった。
それなのに、ドーチェスター隊は早くも戦力の三割を失いつつあった。
少年の手の中から一条の光線が飛び出したかと思うと、また一人、兵士が気絶して倒れた。
その隣で、長身の男が剛槍を回転させると、一撃で二人が戦闘能力を奪われた。そのうち一人は即死の状態で、もう一人もかろうじて生き長らえている重体だ。
二人の足下では、気を失った者、すでに息絶えた者、これから息絶える者が折り重なるようにして倒れていた。その中には、メイジも一人混じっている。
それら屍の数々を踏む二人の息遣いはともに荒々しい。その身は多量の返り血を浴び、自身もまた傷を負い、血を流していた。疲労の色は濃い。しかし、兵達を薙ぎ倒すその動きには一切の遅滞なく、その刀勢には一向に衰える気配がなかった。
――なんなのだ、あの二人は……!
朱色に染まる二人の勇戦ぶりを見て、ジョセフ・カーイン・ドーチェスターは恐慌の極みにあった。
四〇〇の敵兵が蠢く船上に、たった二人で乗り込んできた。その姿を見たとき、ドーチェスター卿は思わず笑ってしまった。
馬鹿なガキどもだ。勇猛果敢が過ぎて、逆に愚かにしか見えない。こっちは四〇〇、そっちはたった二人。兵力差、戦力差は明らかだ。お前達など、相手にもならない。
二人が船に乗り込んできた当初、ドーチェスター卿は自信に漲り、侮蔑の笑みさえ浮かべていた。
しかし、いまや男爵の顔からは血の気が引き、嘲笑を浮かべていた唇は口角の筋肉が強張って、不気味に引きつっていた。額からは脂汗が絶え間なく滲み出て、自信どころか恐怖の表情を浮かべていた。
――いったいなんなのだ、あの二人は!?
すでに一〇〇人近い兵達が、あの二人の手によって死傷させられていた。ドーチェスター隊の総兵力は四〇〇人だから、すでに二五パーセント近い戦力を失った計算だ。
一般に軍隊の世界では、損害が三割を上回ると、その部隊は壊滅したとみなされる。
いまやドーチェスター隊は、その壊滅寸前の状態にあった。
たった二人の男のために。
船に強行に乗り込んできた、たった二人の平民のために。
四〇〇の兵力を誇るドーチェスター隊が、壊滅寸前に陥っている!
その事実が、ドーチェスター卿には信じられなかった。
一瞬、自分はいま、夢を見ているのでは? などという考えが浮かぶ。
しかし、耳朶を打つ兵達の怒号、悲鳴、断末魔の絶叫、裂帛の咆哮が、目の前の光景は現世のものと訴えかけていた。
「……なぜだ? なぜ、倒せんのだ!? 相手はたかが二人であろう!?」
「二人だからこそ、倒せぬのです」
ドーチェスター卿を守るため、隣に控えるガドウェインが、ヒステリックな呟きに淡々と答えた。
「斯様に狭い船上では、兵力に優れるわが方がかえって不利にございます。同士討ちの可能性がありますゆえ、射撃や、魔法による強力な攻撃が出来ませぬ。そればかりか、槍さえ満足に振るうことが出来ませぬ。
また、わが隊の主力は革命が始まる以前は鍬を手に畑を耕していた農民がほとんどです。訓練期間は短く、実戦経験もない。技量の低さは勿論のこと、なにより、彼らは戦場の恐怖を抑え込む術を知りませぬ」
ガドウェインは苦渋の滲む声音で言い放った。
戦場に立つ者にとって、いちばんの大敵は自らの内より湧き出でる恐怖の感情だ。
恐怖心は人間の意志を崩壊させ、理性を麻痺させる。恐怖心を抱くと、思考は目的に集中しなくなり、肉体からは敏捷な動きが奪われてしまう。敢闘精神旺盛な勇将も、一度恐怖に支配されれば、弱腰の弱将となってしまう。百人力の武を誇る勇者も、恐怖に囚われたら最後、一人分の働きさえ出来ない臆病者と化してしまう。
たとえば、恐怖心が部隊の行動を制限した典型的な戦例が、一九三六年に始まったスペイン内乱に見受けられる。
一九三一年に王政が倒れて以来、スペインの政局の混乱は留まるところを知らなかった。やがて三六年の選挙で、反ファシズムを掲げる人民戦線派が勝利を収め、共和党政権が成立するも、親ファシズム派のフランコ将軍が反発。彼は旧王党派や保守派と合流して、現政権に対し反旗を翻した。
スペイン内乱は、軍事史において、一般に第二次世界大戦の前哨戦としての意味合いを与えられている。反ファシズムの共和党政権をソ連が支援し、フランコ将軍をドイツ・イタリアが支援したためだ。
内乱では、両陣営が第一次世界大戦以降の戦間期に開発した最新鋭兵器が数多く投入された。やがて到来するであろう世界大戦に備えて、両陣営はスペインの戦場を新兵器の実戦テストの場としたのだ。
これら実戦投入された新兵器群の中に、偵察戦車と呼ばれる兵器があった。
第一次世界大戦の後、世界の列強は数々の違った種類の戦車を開発した。偵察戦車はそうした一つで、文字通り偵察任務のために作られた戦車だった。一般に軽装甲・軽武装として設計され、その代わりに快速という特徴を持っていた。
ところが、実際にスペインの戦場に投入された各国の偵察戦車部隊は、いっこうに速度を上げようとしなかった。当然のことだった。一般に偵察部隊は、師団前方の最前線を敵情不明のまま突っ走る。偵察戦車の乗組員は、隠れている敵警戒部隊や待ち伏せ部隊にいつ遭遇するかわからないストレスと戦いながら進まなければならない。そのため、行軍は慎重に前方を捜索してから、蛙飛びのように躍進することになった。
偵察戦車の走行能力は快速であっても、乗組員の心は恐怖で過度に慎重になってしまう。
その結果、その前進速度は恐怖による慎重さの速度に、ぴったり合ってしまった。恐怖が部隊行動の出力を半分にした典型例だ。以来、世界の列強は偵察戦車の開発と研究をやめてしまった。
アメリカ独立戦争で英軍側に参加したロバート・ジャクソン軍医は、
『戦場における本当の敵は、敵の銃剣や弾丸ではなく、恐怖である』
と、述べた。また、あの巨大なるナポレオンも、
『人が想像するほど戦争の術は難しいものではない。実際、敵を恐れる自分を克服することが、戦争の術なのだ』
と、語った。
ナポレオンによれば、戦闘において最も肝要なことは、恐怖心を克服し、勇気と知恵をもって危険に立ち向かうことだという。如何にして敵に銃弾を叩き込むかよりも、如何にして恐怖心を乗り越えるかの方がよっぽど重要だ、と彼は言った。
勿論、異世界人のガドウェインは、ジャクソン軍医やナポレオンの言葉は知らない。しかし、歴戦の彼は自らの経験則から、恐怖こそが最大の敵であり、恐怖心を克服してはじめて満足に戦うことが出来るのだ、という認識を持っていた。
「……恐怖を克服せずして、戦場で満足な槍働きは出来ませぬ。その術を知らぬわが兵に、勝ち目はありませぬ」
ガドウェインは獅子奮迅の活躍を見せる二人の若者を見た。
野獣のような槍捌きが唸りを上げればまた一つ首が飛び、疾風怒涛の太刀捌きが閃けばまた一人意識を失う。たった二人ですでに一〇〇人近い兵達を蹴散らしている彼らの力戦からは、魔性じみた気配さえ感じられた。
そんな彼らの戦いぶりを指呼の距離で見せつけられている兵達は、みな等しく恐怖の表情を浮かべていた。二人の気迫に、完全に呑まれている様子だ。
恐怖心は人間の意志を砕き、理性を麻痺させ、思考を掻き乱し、運動能力を低下させる。
見れば、二人を取り囲む兵達は、その大部分が戦意を喪失している様子だった。自ら率先して攻撃を仕掛けようとする者は数少なく、反撃の構えを取る者さえ稀だった。兵達の大半は、二人との戦いを嫌い、狭い甲板の上で必死に逃げ回っていた。
――はじめから逃げ腰の兵達が、どうしてあの魔性の二人に勝てようか!
ただでさえ力量で劣り、またその実力を十分に発揮出来ない場所での戦闘を余儀なくされている。その上で戦意を失っては、数の優位も何もなかった。
壊滅どころの騒ぎではない。ガドウェインはドーチェスター隊の全滅さえありえるだろう、と覚悟した。
「……閣下、ご決断くださいませ。撤退か、このままこの場に留まり続けるか。いまならばまだ、隊の損害は許容出来る範囲にございます」
「撤退だと!? 馬鹿を申すでない!」
ガドウェインの言葉に、ドーチェスター卿はヒステリックに言った。
周りの兵達には聞こえぬよう、声を絞って続ける。
「オリヴァー・クロムウェルは自分の意に従わない人間を決して許さない。あの司祭は、羊の皮を被った獰猛な獣よ。人を殺すことなど、なんとも思わぬ男だ。
わが隊はただでさえ抜け駆けという軍規違反を犯しているのだ。何の戦果もなく戻れば、間違いなく処罰の対象となろう。ここはなんとしてもあの二人を倒して、総司令にわが隊の戦功をアピールせねばならん」
ドーチェスター卿は兵達と同様、怯えた眼差しで奮戦する二人を見た。言葉こそ勇ましいが、その実、内心ではあの二人を恐怖しているのは明白だった。
「狭い船上では強力な武器が使えない? 上等ではないか。それが奴らの作戦ならば、こちらはその上を行くまでよ!」
ドーチェスター卿はかたわらにいる弓兵部隊を見た。
その視線は、恐怖と動揺から、狂気の色を滲ませていた。
「弓兵部隊、あの二人に向けて、矢を放ていッ!」
「な! 閣下っ!?」
ドーチェスター卿の発言にガドウェインが目を剥いた。この乱戦の最中にそのようなことをすれば、間違いなく同士討ちになる。眼前の二人への恐怖で、ただでさえ低下している部隊の士気が、同士討ちの混乱でさらに阻喪してしまう。
なにより、そんなことをすれば、兵達の信頼が完全に離れてしまう。ドーチェスター卿は自分達平民の命などなんとも思っていない。同士討ちになるのが目に見えている命令を、躊躇なく下しやがった。この卿の下にいては、命がいくつあっても足りやしない……そんな印象を抱かせることになってしまう。
軍隊に限らず、組織とは、上下左右の信頼があってはじめて機能するものだ。その大切な信頼を、自ら失わせるような真似はするべきでない。
しかしドーチェスター卿は、ガドウェインの反対意見に耳を貸そうとしなかった。
「平民の兵など後でいくらでも補充が効く。しかし、功を上げる機会は、いまをおいて他にない! 弓兵部隊、矢を放ていッ!」
ドーチェスター卿は非情な命令とともに指揮杖を振り下ろした。
命令を受けた弓兵部隊の指揮官は、茫然とした眼差しを卿に注いだ。それまでガドウェインらのやりとりを眺めていた彼は、しかし、ドーチェスター卿は悪い冗談を言っているのだ、と思い込んでいた。いくら平民軽視の思想がはびこる世の中とはいえ、さすがに卿もそのような非情な命令は下すまい、と楽観していた。実際に卿の口から命令が下される、その瞬間までは。
ドーチェスター卿の目は本気だった。卿は真実、平民の命などどうでもよい、と考えているようだった。
――畜生めッ、俺達平民を何だと思ってやがる!?
弓兵部隊長の憤りは、弓兵部隊全員の抱く思いでもあった。
ドーチェスター隊を構成する四〇〇人はみな同郷の出身であり、そのほとんどが兵役に就く以前からの顔見知りだった。卿の命令は、彼らに友人や家族を撃て、と言っているようなものだった。
一人の弓兵が、やってられるか! とばかりにクロスボウを投げ捨てた。とうとう、ドーチェスター隊から命令に従わない者が現れた。
ドーチェスター卿が怒りで目を剥く。
「き、貴様! 平民風情が、貴族の命に逆らうのか!?」
「いまあの二人と戦っている中にゃ、俺の弟がいるんだ! 出来るわけねぇ!」
その言葉が合図だった。
一人の弓兵の命令拒否を契機に、弓兵部隊からクロスボウを放り出す者が続出した。貴族の権威に対する恐怖よりも、友人や家族に向けて矢を射ることに対する恐怖が打ち勝った瞬間だった。卿の命令に従って発射器械を構える者は、弓兵部隊全体の三分の一もいなかった。
「な、な、な……」
ドーチェスター卿は茫然とした面持ちで足下に転がるクロスボウの数々を見下ろした。
貴族の自分の命令を、平民の兵士達が突っぱねる。そんな事態は、卿の人生の中でも初めての経験だった。初めての経験ゆえにどうすればよいか分からず、ドーチェスター卿はしばし立ち尽くしてしまった。
「血の通った人間ならば、当然の反応にございます、閣下」
ガドウェインは冷ややかな眼差しをドーチェスター卿に注いだ。
ドーチェスター家の家督がジョセフに移る以前からドーチェスター家に仕える彼は、彼の人間的な欠陥を知り尽くしていた。
ジョセフ・カーインという男は優柔不断な性格のくせに権勢欲旺盛で、また平民というものをまるで信用していなかった。普段より平民を過度に軽視していればこその、先の発言だった。
「閣下、恐れながら再度具申いたします。撤退のご決断をなさいませ」
「な、ならん! それだけはならん!」
ドーチェスター卿はまたヒステリックに叫んだ。もはや戦理も何もない。ドーチェスター卿は、自らの保身と、意地ゆえに、この場に留まることにこだわった。
ドーチェスター卿はガドウェインの傷だらけの顔を見上げて口角泡を飛ばす。
「もはや兵達は頼りにならん! ガドウェイン、この上はお前があの二人を倒すのだ!」
高圧的な物言いによる命令。しかし、長年の忠臣を見上げる眼差しには、藁にも縋りつきたい卑屈な思いが滲んでいた。
ドーチェスター卿の命令に、ガドウェインは粛と頷いた。どんなに欠陥があろうと、長年仕える主人の命令だ。つい先日、徴兵されたばかりの兵達と違って、ガドウェインの頭の中に、卿の命令を拒否する考えはなかった。
ガドウェインは視線を、猛威を振るう二人の若者に転じた。
剣の男と、槍の男。どちらも一騎当千の精兵だ。たかが平民と、侮ってよい相手ではない。
二人一度に相手取るのは下策だ。まずは片方を潰し、然る後にもう一人を潰すのが上策か。しかし、そうすると、先にどちらを倒すべきか――――――
頭の中で素早く作戦を立てて、ガドウェインは僅かに瞑目し、ドーチェスター卿の両肩を抱いた。
「……お任せください」
力強い言葉。
忠臣の返答に勇気づけられ、ドーチェスター卿の表情に安堵の色が差す。
ガドウェインは踵を返すと、背中の大剣に右手を伸ばした。
◇
柳也達がジャクソン号に乗り込んで、かれこれ二十分が経とうとしていた。
船上での戦闘は、途中から柳也と才人が終始敵を圧倒する一方的な展開へとシフトしていった。
当初は僅か二人の敵兵に果敢に挑んできた軽歩兵部隊だったが、二人の強さを知り、その強さに恐れを抱き始めると、攻勢に出ようとする者がめっきりと減った。そればかりか、我先にと逃げようとする者さえ現れた。背中を向けた敵から戦力を奪うことは容易く、柳也達は気力と体力の消耗を最小限に留めることが出来た。
――とはいえ、さすがにこの数はキツイな……。
五十何人目かの敵兵の頭蓋をロング・スピアーの石突で叩き割り、柳也は疲弊した溜め息をついた。
才人と合わせて、すでに一〇〇人以上の敵を斬り捨て、あるいは叩き伏せていた。得物も、それを扱う人間の方も、いい加減、ガタがき始めている。
いかなガンダールヴ、エトランジェといっても、所詮は人間。体力は無限大ではない。激しい運動を続ければ疲労は蓄積されるし、傷を負えば動きはさらに鈍る。
戦いが始まったばかりの時点では、敵の攻撃も激しかった。マナの消耗が著しく、神剣の力を存分に発揮出来ないいまの柳也は、初期の段階で多数の手傷を負っていた。どれも致命傷と呼べるほどの怪我ではないが、すべてが有効打。全身を苛む苦痛に、柳也の顔からは血の気が引いていた。
それでも、敵に弱味は見せまいと、柳也は不敵な冷笑を浮かべながら槍を振るい続けた。
余裕を見せるつもりの笑みは、ただでさえ凶悪な面魂が土気色に染まることで凄絶なものとなり、対峙する敵兵をそれだけで威嚇した。
六尺豊かな巨体から迸る剣呑な気迫と、残忍な冷笑を受けた敵兵はすっかり怯えてすくみ上がった。
動きの鈍ったその隙を見逃す柳也ではなく、二メートル超のロング・スピアーを軽々掲げ持ち、腰を据え、袈裟に振り抜く。
血煙。
革の鎧ごと胴体が斬割され、血飛沫とともに苦悶の絶叫を噴出しながら、敵兵がまた一人こと切れた。
「これで六十人目」と、口の中で呟きながら、柳也は安堵の笑みを漏らした。順調に敵戦力を減らしている手応えに、戦闘に最中にあって、思わず笑みが浮かんだ。
しかし、次の瞬間、柳也の顔から微笑は消えた。
背後より、斬撃の緊迫。
ジャクソン号に乗り込んでからはじめて感じる、濃密な剣気が、背筋を撫で上げる。
柳也は反射的に後ろを振り返ろうとして、ぐっと堪えた。
いま振り向けば、その間に斬撃を受けることになる。
考えるよりも先に、剣士としての本能が、警鐘を鳴らしていた。
敵の姿を確認するのは、初撃を避けてからでも遅くはない。
柳也は自らの生存本能の言葉に従って、大きく前へと踏み出した。
その刹那、剣呑なる刃風が柳也のうなじに吹きつけた。
袈裟がけに振り下ろされた第一刀。
その斬撃を、寸前のところで避けた柳也は、慌てて振り返り、回転、槍を下段に構えた。
背後よりの襲撃者を、鋭く睨み上げる。
柳也を襲ったのは、鎖帷子とマントを身に着けた大男だった。白いのもの混じった月代。傷だらけの顔。身の丈は二メートル近くあるだろう。六尺豊かな自分が見上げねばならないほどの長身の持ち主で、体格も大柄だった。
使い手と同様、得物もまた巨大だった。ファンタジー小説の世界でお目にかかるような、両刃の大剣だ。刀身だけで一・七メートルはあろう、巨大なツゥ・ハンド・ソードだった。両手での運剣を基本とする刀剣で、そのために柄の丈を長く取っているのが、最大の特徴の武器だ。
鎖帷子の大男は、全長二メートル近い大剣を軽々振り回し、正眼に構えた。
炯々たる眼光で、柳也を睨みつける。
凄まじいプレッシャーが、槍を構える男の五体を襲った。
額に滲む脂汗の嫌な感触と、高鳴る心臓の鼓動、刻々と荒くなっていく自身の呼吸を自覚して、柳也は確信した。
――この男……間違いない。この男こそが、この船で一番の実力者だ!
目の前の男が容易ならざる相手だということは、すぐに分かった。
疲労の色濃い柳也は、このタイミングで現れた強敵に向けて、まず槍ではなく、言の葉を叩きつけた。
「……そのマント、どうやらメイジとお見受けするが?」
「いかにも」
重い響きの声が、傷だらけの唇から漏れた。
正眼に構えた大剣は、ぴくり、ともしない。これほどの大剣ともなれば相応に重いはずだが、剣を保持する男の姿勢は堂々とし、安定していた。それでいて、その構えからは無駄な力みがまるで見られない。平時の鍛錬の程と、その腕力の凄まじさが窺い知れた。
剣を使わずとも、素手でぶん殴られただけで即死だな、と柳也は好奇の眼差しで男の顔を見た。
「杖は?」
「この剣よ。この剣こそが、わが杖にして、わが最大の武器」
「なるほど」
「そちらは?」
「うん?」
「そちらは、その腰の物を抜かなくてもよいのか? お手前の、最大の武器を」
大男のその発言に、柳也の表情が硬化した。
柳也は男の問いには答えぬまま、逆に男に向けて質問をぶつける。
「どうして気がついた?」
「兵達を薙ぎ倒すお手前の動き、豪快なるも所々不慣れな印象を感じた。また、お手前自身発言していたではないか? 槍の扱いは不慣れだ、と」
「……まいったなぁ」
柳也は思わず苦笑した。
土気色の顔に浮かんだ、屈託のない笑みだった。
柳也は下段の構えを解くと、武器庫から失敬してきたロング・スピアーを投げ捨てた。
それから、彼は軍服の上に巻いた帯元へと手を伸ばした。左手を鞘に、右手を同田貫の柄元へと添える。掌から〈決意〉の一部を寄生。次いで抜刀。薄っすらと地上を照らし始めた夜明けの日差しが、肥後の豪剣二尺四寸七分を照らした。
柳也は脂汗の滲む顔に不敵な微笑みを浮かべて、眼前の大男に笑いかけた。
応じて、大男の方も柳也に笑いかける。
「よもや敵さんにそれを指摘されるとは思わなんだ」
「なに、どうせ倒すのなら、私も強い相手と戦いたいだけのこと」
「もう、勝ったつもりか?」
「うむ」
「はっ、大層なご自信ですこと」
柳也は同田貫を正眼に構えた。
対する大男の大剣も、正眼の構えを崩さないでいる。
「革命軍、ドーチェスター隊所属、炎剣のガドウェイン」
「直心影流、桜坂柳也」
「変わった名前だな」
「よく言われる」
柳也はニヤリと笑って答えた。
鎖帷子の大男……ガドウェインもまた、不敵に笑う。
両者を隔てる距離は僅かに二間半。
彼らほどの剣士からしてみれば、あってないような距離だった。
二人は最も扱い慣れた相棒をともに正眼に構えて、無言のまま睨み合った。
ともに一撃必殺を可能とする豪の剣士だ。
斯様に接近した間合いでは、勝負は一瞬の内に決することになるだろう。
この男を前にして隙を晒せば命はない。
柳也も、ガドウェインも、それを理解していればこそ、迂闊に動くようなことはせず、不動の構えで相手の出方を窺った。
粛、とした対峙の時間が、しばし続いた。
どちらも剣は動かさず、間合いを詰めようとするそぶりさえ見せない。
ただ静かに呼吸を紡ぎ、両者は剣呑な殺気をぶつけ合った。
才人も、ドーチェスター隊の兵達も、自分達の戦いを忘れ、固唾を飲んで両者の睨み合いを見つめていた。刻々と昂ぶり続ける緊迫感と、自分が殺されるような恐怖感に、両者の刀剣に目が吸い寄せられていた。
やたら口うるさかったドーチェスター卿さえもが、声を失い、二人の一騎打ちに見入っていた。身の毛がよだつような緊張感に襲われて、肉も骨も凝り固まってしまいそうだった。
どれほどの時間、そうしていただろうか。
やがて、静かなる対峙の時間に、終わりの瞬間が到来した。
闘気のぶつけ合いに疲れたか、同田貫を正眼に保持する柳也の呼吸が、徐々に乱れ始めた。
もとより、マナの消耗著しく、ジャクソン号に乗り込んでからは六十人近くを斬り伏せてきた柳也だ。いまの彼に、一騎打ちとはいえ長期戦を戦い抜く気力と体力は残されていなかった。
これ以上の睨み合いはこちらが不利になる一方だ。
いち早い決着を望む柳也は、同田貫の大刀を上段に振りかぶった。
瞬間、正対するガドウェインの表情が、警戒から険しいものへと歪んだ。
胴をがら空きにしてしまう上段の構えは、一般に、実戦ではあまり役に立たない構えとされる。しかし、逆に言えば、それだけ打ち込みの速さに自信がある証左ともいえた。
ガドウェインは、すでに六十近い首級を上げた目の前の平民を、決して侮っていなかった。
あの振りかぶられた大刀が、どれほどの一撃となって振り落とされるのか……想像しただけで、背筋が凍った。
柳也が、呼吸を止めた。
ガドウェインも、呼吸を止めた。
両者は同時に床を滑った。
足場の甲板が、ミシミシ、と軋むほどの力強い踏み込み。
振りかぶった同田貫が、稲妻の如き勢いで振り下ろされた。
大上段に構えた大剣が、疾風怒濤の勢いで落ちてきた。
正しく人体の正中線を狙った、真っ向からの打ち込み同士が交差した。
重い金属音。
鍛え抜かれた鉄と鉄とが激突し、もつれ、鍔競り合うかと思いきや、両者は再び距離を取った。
互いに必殺を期した真っ向斬り。そのあまりの重さと、凄まじい衝撃に驚いての後退だった。
――なんて重い打ち込みなんだッ!?
――まともに受け止め続ければ、得物がヘシ折られてしまう!
ともに手の内の愛刀を気遣って距離を取った両者は、慄然とした表情で互いの顔を見た。
相手との距離は、およそ三間。
「……すげェパワーだな、あんた」
「それはお互い様だ」
荒々しい息遣いとともに、言の葉を吐き出す。
ガドウェインは再び、ツゥ・ハンド・ソードを正眼に構えた。応じて、柳也も同田貫を正眼に取る。
「どうやら本職とお手前の筋力は、ほぼ同等のようだな」
「みたいだな。そんなデッケェ大剣ぶん回しているから、豪の剣士だとは思っていたが……そうか、打撃力はほぼ同等か」
「だが、本職とお手前とでは、決定的な戦力差がある」
「うん?」
「得物の違いよ」
ガドウェインは正眼に構えた柳也の同田貫に視線を注いだ。
「お手前の得物は豪剣なれど斯様に細い。翻って、本職の剣は見ての通り長大にして、重ねの厚い造りをしている」
「……打ち合い続ければ、先に折れるのは俺の刀と言いたいわけか」
「然り。先ほど一撃打ち込み、受け止めた手応えから察するに、お手前の得物はあと七、八度、本職の斬撃を受け止めれば、ヘシ折れる」
自信に満ちた断言。
ガドウェインの推測は、おそらく当たっているだろう、と柳也は思った。
いかに肥後の同田貫が頑丈な造り込みをした豪剣とはいえ、目の前の男が持つ大剣と比べれば、刀身の強度の差は歴然としている。〈決意〉の寄生による強化も、著しくマナを消耗した現状では高が知れていた。ガドウェインの口にした七、八度という数字も、おそらく正解だろうと、柳也は小さく溜め息をついた。
しかし、すぐに表情を引き締めると、彼は剣呑な冷笑を浮かべて言い放った。
「なら、そうなる前に、カタぁ、付けてやるよ!」
七、八度斬撃を受け止めればヘシ折れる、ということは、少なくともあと五、六回は受け止めても大丈夫ということだ。
また、ガドウェインの放つすべての斬撃を刀身で防がねばならない理由はない。
要は、武器が折れる前に決着をつければよいだけの話だった。
「……早期決着は、こちらとて望むところよ」
ガドウェインは短く呟いて、ルーンを紡いだ。
魔法を発動するつもりだ。やはり、本人が口にした通り、あの大剣は武器であり、メイジの杖でもあるらしい。
やがて呪文の詠唱が完成し、ガドウェインは、小さく剣尖を振るってみせた。
次の瞬間、ガドウェインの構えたツゥ・ハンド・ソードに、轟、と紅蓮の炎が灯った。比喩ではない。本当に、大剣の刀身が、燃えていた。大男の手の中に、燃え盛る炎の剣が出現していた。
「フレイムセイバー。灼熱の炎を刀身とする、炎の剣だ。わがふたつ名、“炎剣”の由来よ」
“火”と“火”と、そして“土”の系統から構成される、トライアングル・スペルだった。
ラインの“火”が生む炎の温度は摂氏二三〇〇度。鉄をも溶かす炎の刃は、人間の身体など触れた瞬間に蒸発させてしまう。当然、それほどの熱量に鉄の刀身が耐えられるはずもなく、“土”系統の錬金を施すことで、剣身の強度を上げたのだった。
「この炎の斬撃ならば、たった一撃受け止めただけで、刀身は蒸発する。よしんば避けたところで、二三〇〇度の炎だ。熱波は、何メイルも先まで届く」
言われて、柳也は脂汗とは別に、自分の身体が濡れていることに気がついた。
真夏の太陽の下に素っ裸でいるかのような猛暑感。急速に、体内の水分が失われていくのを自覚する。
そしてその熱気は、ガドウェインの構えた剣より放出されていた。
「……しかし、それほどの熱気ともなれば、間近で握るお前にも、当然ダメージが」
「然り。そのための、鎖帷子よ」
ガドウェインの言葉に、柳也は得心した表情で頷いた。
なるほど、メイジにしてはやけに重装備だとは思ったが、そういうことだったか。鎖帷子を始めとする各種の防具は、敵の攻撃から身を守るためではなく、自身の魔法が生み出す炎を防ぐための……。
「もっとも、これらの鎧で身を固めたところで、炎の剣の熱は膨大。完全に防ぐことは出来ぬ。ゆえに、早々に決着をつけさせてもらう……!」
ガドウェインが言い放ち、ツゥ・ハンド・ソードを上段に振りかぶった。
前へと踏み出しながら、大剣を正面に振り下ろす。
すかさず、柳也は同田貫を右脇に取るや、前に踏み込んだ。
頬を焼く熱波。
炎を吸い込まぬよう呼吸を止め、柳也は袈裟がけに同田貫を振るった。
相手が前に踏み出したことで真っ向打ちの照準をはずされたガドウェインは、舌打ちしつつ足を引く。
応じて、柳也もまた退いた。
袈裟がけの一刀は、真っ向打ちをはずすための騙しの斬撃だった。
後ろに下がった次の瞬間、眼前の空間を、炎の刃が薙いでいった。
咄嗟に左腕を盾にして、顔をかばう。
灼熱する剣身はおろか、飛び散る火の粉にさえ触れていないのに、繊維の焦げる臭いがした。
二メートルを超える大剣を真っ直ぐ振り下ろしたガドウェインは、一瞬の遅速なく、再度前へ踏み込む。
下段からの脛斬り。
目前の右足を狙った。
柳也は素早く右足を引くや、脇に取った刀を擦り上げた。
二尺四寸七分の刀身が尋常でない伸びを見せ、一条の光線と化して、ガドウェインの左肩を襲った。
反射的に大きく肩を引き、右半身になる大男。
柳也の斬撃は何もない虚空を斬り上げたが、ガドウェインの脛斬りもまた不発に終わった。
柳也は斬撃の勢いを殺さず、そのままガドウェインに対して体当たりをぶちかました。
右半身という不自然な体勢のところに強い衝撃を受けて、二メートル近い巨体が思わずよろめく。
二歩、三歩あとずさって、ガドウェインはようやくバランス感覚を取り戻した。
フレイムセイバーを、正眼に構え直す。
「貴様……!」
「攻撃に対しては攻撃をもってこれを制す……右転左転。直心影流、秋の太刀筋」
直心影流の太刀筋は春夏秋冬。状況に応じて適切に変化する四季の太刀筋こそが、同流派の基本にして最大の持ち味。
柳也は体の内に熱を溜め込まぬよう、極力息継ぎを小さくしながら続ける。
「互いに早期決着を望む、か……惜しいな。まったく」
「なに?」
怪訝に訊き返すガドウェインに柳也は莞爾と微笑んで言った。
「いや、あんた、すっげー強いからよぉ。早く決着つけるのが、勿体ない。本音を言えば、あんたとは、もっと戦っていたいんだが……」
自分を取り巻く周囲の状況と、なにより己の体調が、それを許してくれない。
六十人近くの敵兵を斬り捨て、数々の傷を負ったいまの己では、これ以上の長期戦は続けられない。
三度の飯より女好きで、さらに女よりも戦うことが大好きな柳也にとって、この戦いを長引かせられないことは、この上なく辛いことだった。
「せめて五体壮健なうちに戦っていれば、もっと長く、あんたとの戦いを楽しめたんだろうが……いや、ホント、惜しいぜ。まったく」
柳也は心底残念そうに呟くと、同田貫を水平に掲げ持った。
かます切っ先で、ガドウェインの顎を示す。
「名残惜しいが、次で決めるぜ?」
「……望むところだ」
ガドウェインはフレイムセイバーを八双に構えた。
「わが最高の一撃をもって、お手前を倒す!」
ガドウェインが、床を蹴った。
柳也も、同田貫を脇に取り甲板を滑った。
両者の間合が、一気に詰まる。
炎の剣が、袈裟がけに振り下ろされた。
猛り狂うオレンジ色の光芒が、柳也の視界を埋め尽くす。
柳也は地擦りに構えた豪剣をのびやかに撥ね上げた。
地から天へと。
昇竜の如き斬撃が、炎の剣と激突した。
同田貫の刀身が一瞬にして赤熱化し、溶け始める。
ガドウェインの傷だらけの顔に、勝利を確信した微笑が浮かんだ。
柳也は咄嗟に、同田貫の柄から両手を離した。
腰を沈め、ガドウェインの左脇へとすり抜けながら、閂に差した脇差に手を伸ばす。
左手は鞘に、右手は鍔元に。
腰を入れ、手の内を練り、父の形見の脇差一尺四寸五分を、一挙動で抜き打った。
確かな手応え。
柳也はそのまま、ガドウェインの左側方を駆け抜け、男の背後へと回り込んだ。
踵を返す。
柳也は脇差を正眼に、肩で息をしながら、背中を向けたままのガドウェインを見据えた。
大男は動かない。
大剣を袈裟がけに振り下ろした姿勢のまま、身じろぎ一つしない。
やがて、脇差の斬撃より一拍遅れて、血飛沫が、ガドウェインの脇腹から噴出した。
抜刀からの一文字斬りは鎖帷子を斬割し、その内にある肉と骨を断っていた。
「……見事」
乾いた呟き。
なんとなく、柳也は背中を向けたガドウェインが、微笑を浮かべているように思った。
「あんたもな、炎剣……楽しかったぜ」
ツゥ・ハンド・ソードの剣身から、炎が消える。
二メートル近い巨体が、ぐらり、とよろめいたかと思うと、ガドウェインは前のめりに倒れ込んだ。
◇
「が、ガド、ウェイン……?」
父の代からドーチェスター家に仕えてきた忠臣が倒れていく姿を、ドーチェスター卿は茫然と眺めていた。
まるで夢を見ているかのような気分だった。
モーガン・ガドウェインはドーチェスター隊が擁する十人のメイジの中で唯一のトライアングルであり、若き日の武勇伝にも事欠かない、名実ともに隊の最強戦力を務める人物だった。三八歳にときには、身の丈が十メイルにもなる巨人と戦い、これを討伐したことから、当時ジェームズ一世から直接勲章を手渡されている。ドーチェスター隊どころか、アルビオン大陸全土において、最強クラスの戦士の一人に違いなかった。卿自身、若い頃にはガドウェインの強さに憧れ、彼の下で剣を習ったりもしたものだ。
そのガドウェインが、一騎打ちで敗れた。それも、相手はまだ二十歳になるかならないかという若造にすぎず、しかも魔法の使えない平民。その事実は、ドーチェスター卿に深い衝撃を与えた。
あのガドウェインが敗北するなんて、信じられない。
少年時代に憧れた英雄が負けるなんて、信じたくない!
表情以上に、内心の動揺激しいドーチェスター卿は、目の前に広がる光景を現実の出来事と認識出来ずにいた。現実だと、認めたくなかった。
茫然と立ち尽くすのは、ドーチェスター卿ばかりではない。
二人の一騎打ちを見守っていた周りの兵達も、目の前の光景が信じられずにいた。
彼らにとっても、モーガン・ガドウェインは不敗の英雄であり、強さの象徴であった。その象徴が敗北し、兵達はみな茫然自失の体となってしまった。
先ほどまで騒然としていた甲板は、いまや、粛、と静まり返っていた。
弓兵部隊の九十人も、軽歩兵部隊の生き残りの二〇〇人も、誰も彼もが言葉を失い、倒れ伏すガドウェインの背中と、補助の刀を鞘に納める男を見つめていた。
刻々と、静かに時間だけが過ぎる。
そのうち、誰かが、ショートソードを落とした。
誰かが、血で染まった甲板に膝を着いた。
誰かが、「嘘だろ……」と、呟いた。
その言葉に、ようやく現実感を取り戻したか、ドーチェスター隊のみなの顔に、じわじわ、と絶望感と、喪失感が浮かび始めた。
さらにその時、心身ともに追い詰められたドーチェスター隊の面々を追い討つかのような事態が起こった。
突如として、城の裏庭より轟音が聞こえてきた。
天地を引き裂くかの如き、重低音。
ドーチェスター卿が大砲の音だと気が付いた時、ジャクソン号に激震が走った。
船のどてっ腹に、砲弾が命中したのだ。
命中弾は一発だけだったが、当たり所が悪かったのか、ジャクソン号は僅かに斜めに傾いた。
横と縦の激しい揺れに、兵達は慌てて船体にしがみつく。ドーチェスター卿は、船のメイン・マストに捕まった。
そんな中、一人の勇気ある弓兵が、揺れる船上を駆け、舷側から地上を見下ろした。
はっ、と顔面の筋肉が硬直した。
ニューカッスル城の裏庭では、迎撃態勢を整えた王軍の兵士達が、ずらり、とカノン砲を並べていた。その数、計十二門。射角を八十度近くまで取ることが可能な高角砲で、無論、対空砲に違いなかった。
――事前の徹底砲撃にも拘らず、まだあれだけの砲を隠し持っていたのか!
弓兵は思わず唸り声を発した。
地上には他に、二人の剣士をジャクソン号へと乗船された、巨大な土ゴーレムの姿もあった。対空砲用の石弾を、王軍の兵士から受け取ると、ジャクソン号めがけて放り投げてくる。その飛距離は、高角砲の射程にも負けていない。凄まじい膂力だった。
弓兵は慌てて踵を返し、マストにしがみつくドーチェスター卿に裏庭の状況を伝えた。
ドーチェスター卿は、「このままではいい的だ」と、とにもかくにもジャクソン号の移動を命令した。
次いで、卿は弓兵部隊に地上の敵に対し矢を射かけるように命令を発した。
それまで戦意の低かった兵達も、自分達の乗る船が沈む危機にあるとあって、命令一過、即座に舷側に並び、射撃の姿勢を取ろうとした。
そこを、船に乗り込んでいた例の二人が衝いた。やたらすばしっこい方の剣士が場を引っ掻き回し、射撃の隊列を掻き乱す。
他方、ガドウェインと一騎打ちを演じた長身の男は、一度は捨てた槍を拾い上げ、弓兵部隊の援護に回ろうとする軽歩兵部隊を抑えにかかった。ロング・スピアーを振り回し、遮二無二、とにかく目の前の敵をぶった斬り、ぶっ倒す。
軽歩兵部隊の援護を受けられぬ弓兵部隊は、風の剣士のされるがままとなり、また、舷側に立っているがために、地上からの射撃の餌食となった。王軍の兵士達は、高角砲だけでなく、小銃でも武装していた。
事ここに至って、ドーチェスター卿は船上で暴れ回るガキどもが、なぜたった二人でこの船に乗り込んできたのか、その意図するところをようやく悟った。
あの二人は、王軍の部隊が迎撃態勢を整えるまでの時間稼ぎのために、ジャクソン号に乗り込んできたのだ。ジャクソン号が姿を現した時点では、裏庭にはあの二人とメイジの女が一人いるだけだった。あのまま地上で迎え撃っていては、数の暴力の前に、三人はたちまちやられていただろう。仮に援軍が間に合ったところで、カノン砲の設置と砲撃準備には時間がかかる。おっとり刀で駆け付けた準備不足の敵など、大した脅威ではなかった。
――だが、あの二人が乗り込んできたことで、我々はその対処に時間をかけすぎた。その結果、裏庭での迎撃の準備を許し、いまの苦境に立たされている!!
ドーチェスター卿は慄然とした眼差しを二人の若者に向けた。
最初に、あの二人がジャクソン号に乗り込んできたとき、卿は彼らを、馬鹿なガキどもだ、と評した。また、彼ら自身も、自分達のことを「馬鹿三匹」と、称した。
馬鹿などととんでもない。なんという策士、なんという勇気。
ドーチェスター卿はこのときようやく、兵達を蹂躙する二人の若者に、本当の意味で恐怖を抱いた。
ジャクソン号の巨体がまた激しく揺さぶられた。
二発、三発と、また命中弾が叩き込まれた。
そのうち一発は、動力系統を破壊したらしい。急ぎその場を離れようとするジャクソン号の速力が、がくん、と落ちた。
足の鈍ったところを、地上の対空砲は容赦なく狙った。次々と命中弾が叩き込まれていく。さしもの巨艦も、二十発以上の砲弾を受けては、大破の損害となった。
甲板上の構造物も、破壊されていった。
メイン・マストが倒れ、数人の兵がその下敷きとなった。
舷側に砲弾が炸裂し、破片が近くにいた兵を殺傷した。
剣の男が疾風の太刀ゆきで次々と兵を昏倒させ、槍の男の剛撃が、一撃で二人を空へと吹っ飛ばした。
ついには非戦闘員の船乗り達にまで、被害が出始める。
もはやドーチェスター隊は兵力の半数を失い、ジャクソン号もまた轟沈寸前の状態だった。
卿の脳裏に、先刻のガドウェインの言葉がよぎった。
もはや、認めるしかなかった。抜け駆け作戦は失敗だ。
「……撤退だ」
ドーチェスター卿は、悔しげに俯くと、力なく、呟いた。
近くで護衛を務めていたドット・メイジが振り向く。戦いの騒音で、卿の小さな呟きは彼の耳に届かなかったらしい。
ドーチェスター卿は顔を上げた。
壮年貴族の悲壮な顔がそこにはあった。
卿は今度こそ、船上の兵達全員に聞こえるよう、大声で叫んだ。
「ドーチェスター隊、撤退だぁぁぁ――――――!!!」
◇
ドーチェスター卿の悲壮な絶叫は、当然、同じ甲板に立つ柳也と才人の耳にも届いた。
卿の撤退命令は二人にとって何よりの朗報だった。やっと終わった、と才人の表情に安堵の色が浮かぶ。そんな才人を、彼の側で槍を振るう柳也がたしなめた。
「気を抜くなッ! まだ、敵の船の上だぞ」
「あ、はい。そうでした」
「でもよ、褌。撤退命令が出たんだ。俺達も、あとは降りるだけだぜ?」
目前まで迫った袈裟斬りを受け止め、才人の手の中でデルフリンガーが言った。最初に出会った時の装いが褌一丁だったことから、この剣はいまだに柳也のことを「褌」と呼ぶ。
やはりこちらも敵の斬撃を払いのけながら、柳也は「その降りるだけが難しいんだよ」と、言った。
「揚陸のため低く高度を取っているとはいえ、下まで十五メートルはあるんだ」
「でも、神剣士の身体能力があれば、楽勝な高さですよね?」
目の前の敵を斬り伏せ、才人は摺り足で後退し、柳也の背中に自分の背中をくっつけた。
「船から降りることを考えて、残り少ないマナを温存していたんでしょ? あのガドウェインとかいう人と戦っている間も」
「……まあな」
柳也は若干の間を置いて、小さく頷いた。意外に見ているところは見ているものだ、と愛弟子の観察眼に内心で舌を巻く。
その時、才人の口から「ん?」と、呟きが漏れた。
背中合わせの柳也が、チラリ、と一瞬、後ろに視線をやる。
「どうした?」
「いや、なんか……左目がヘンだな、って」
才人は自分の身に起きた突然の事態に困惑した表情を浮かべた。
突然、才人の左目の視界がぼやけ始めたのだ。まるで真夏の陽炎のように、視界が揺らいでいる。何度か瞬きをしてみるが、視野は一向に晴れない。
「なんだろ、これ……?」
才人の当惑した声が、柳也の耳朶を打った。
<あとがき>
ドーチェスター卿は書いていて楽しいキャラだったなぁ……。
どうも、読者の皆様、おはこんばんちはっす。
タハ乱暴でございます。
今回もゼロ魔刃をお読みいただき、ありがとうございました。今回の話は、いかがでしたでしょうか?
今回の話のオオトリは、なんといっても柳也VSガドウェインのシーンです。大剣相手とはいえ、久々のチャンバラシーンに、タハ乱暴も書いていて胸が躍りました。やっぱり、一騎打ちはいいですねぇ〜。互いの力と力、技と技、知略と知略がぶつかり合う。エネルギーを非常に使いますけど、書いていて楽しいです。あぁ……、楽しかった。あぁ、疲れた。
さて、次回はいよいよあの男との戦いの始まりです。
次回もお付き合いいただければ幸いです。
ではでは〜
<今回の強敵ファイル>
炎剣のガドウェイン
柳也を基準とした戦闘力
攻撃力 | 防御力 | 戦闘技術 | 機動力 | 知能 | 特殊能力 |
C | D | C | C | C | C |
主な攻撃:ツゥ・ハンド・ソードによる剣術
特殊能力:なし
ドーチェスター卿に仕えるトライアングル・クラスのメイジ。卿の命令により、ジャクソン号に強行乗船した柳也と一騎打ちを行った。アルビオン全土でも最強クラスの戦士。
メイジでありながら剣術に長けた歴戦の勇者で、一撃の重さはエトランジェの柳也とほぼ同等。二三〇〇度の炎を剣身に宿らせるフレイムセイバーの魔法により、その斬撃はさらに威力を増す。炎剣は過去に巨人を屠ったこともあり、今回の一騎打ちでもその威をしめした。
今回の一騎打ちでは、柳也は神剣士としての力を使っていなかったとはいえ、彼と互角に戦った数少ない戦士である。
原作では:原作に登場せず
戦闘経験が殆どない農民出身者が多かったのが幸いしたか。
美姫 「戦意喪失により、人数の不利が何とかなった形だものね」
ガドウェインが言った、地の利もあったしな。
美姫 「お蔭で無事に乗り切れたわね」
だな。流石にガドウェインは強者だったけれど。二人の対決は読んでて楽しかったです。
美姫 「これにて、一先ずは安心って感じじゃないわね」
だな。サイトに起こった異変。おまけに、今回の単独行動で総攻撃の時間が繰り上がったしな。
美姫 「どうなってしまうのかしらね」
次回も楽しみに待っています。
美姫 「待ってますね〜」