注)このSSは独自の設定に基づいて構成されています。原作とはまったく違う設定で書かれておりますので、そういったものが嫌いなお方はプラウザの『戻る』を押して下さい。それでも読んで下さる奇特な方は、どうぞ下へとお進み下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレビを見る時は部屋を明るくして離れて見てね(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!”

 

――と、その時、突如として、ネメシスの体を無数の銃弾が襲った。

 

「!?」

 

秒間100発はくだらないであろう弾丸の嵐。

よく見ると、それは普通の鉛の弾丸ではなかった。

いびつな形をした、とても人が作った物とは思えぬ、けれども先の尖った徹甲弾だった。

振り向くと、そこには――――

 

「一時退却しろ。甲龍」

 

人間と、龍と、百足のキメラ……。

龍臣と思わしき怪人の姿が、そこにはあった。

先刻の弾丸は彼の体から生えている、無数の足から放たれたものなのだろう。

まるで戦車の砲撃の如し量の硝煙が、周囲に立ち昇っていた。

 

「ムグゥ…」

 

奇声を発し、海へと飛び込む甲龍。

追おうと思えばいくらでも追うことが出来た。

しかし、ネメシスは眼前の敵を前にして追撃を仕掛けることが出来ないでいた。

龍臣は『フンッ』と鼻を鳴らすと、何処かへと消えていった。

比喩ではない。本当に消えてしまったのだ。

そして、ネメシスもまた…………。

 

“ブオンンッ!!”

 

レッドスターに跨り、その場を離れていった。

脅威が去ったのを本能で察したのだろうか?

巨木にもたれ掛かっていた美緒の体から、ダラリと力が抜けた。

 

 

 

 

 

飛蝗の姿から人間の姿へ。

変身の解けた真一郎は、意識を喪失したまま仰向けに、海を流れていた。

このまま潮の流れに身を任せ続ければ、太平洋の藻屑となるであろう。

それを危惧したのかどうかは定かではないが、その様子を、じっと見詰める影があった。

“アウトロー”の異名を持つ、純白のバイクに跨った男……闇舞北斗は、バイクから降りると、浮遊し、宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Heroes of Heart

~ハートの英雄達~

第拾話「仮面」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笛の音が聞える。

どこかで聴いた憶えのある曲だ。

あれはいつだったか……そうだ、まだ幼い頃、学校の先生に何度となく歌わせられた曲……

 

「――――リフレイン?」

「気が付いたのか?」

 

突如かけられた男の声に、真一郎の中の獣が目覚め、彼は飛び起きる。

状況を把握すべく辺りを見回すと、そこは見慣れた自分の部屋だった。

――と、そこで初めて、真一郎は男の顔を見て驚愕する。

先日、雷龍の襲撃から自分達を助けてくれた男が、そこにいた。

 

「状況説明の前に自己紹介といこうか。俺は闇舞北斗。きみの名は?」

「……相川、真一郎だ」

「ふむ。では相川君。今日が何日か。分かるか?」

 

言われて、日捲り式のカレンダーに視線を運ぶ。

 

「2日も経ってるのか……」

 

真一郎は、特に驚いた様子もなく呟いた。

ただ、日捲りカレンダーを捲ったのは誰か? という疑問の方が、今の真一郎には気になるようだ。

それを察したのか、不意に北斗は立ち上がり、勝手知ったる他人の家とばかりに、キッチンの方へと足を運ぶ。

やがてキッチンの方からは、2人分の声が聞こえてきた。

再び北斗が戻ってきた時、真一郎は彼女の姿を見て驚愕した。

 

「こ、小鳥!」

「うん、そうだよ。小鳥だよ」

 

驚きと同時に、安堵の気持ちが強くなる。

真一郎の記憶にあるのは、あの蟹の化け物の記憶だ。

無事だったのかと、真一郎は歓喜した。

 

「……彼女に礼を言っておくんだな。この2日間、彼女は君の身を本当に心配していた。献身的に、介護してくれたんだぞ」

「あやや、そんなことありませんよ。闇舞さんが真くんを運んでくれたおかげです」

「――運んでくれた?」

「うん。そうだよ」

 

怪訝な顔をする真一郎に、小鳥は努めて明るく言う。

 

「闇舞さんが真くんを運んでくれたの。あと、真くんのバイクも闇舞さんが運んでくれたんだよ? ちゃんとお礼を言わないと」

「別に大した事じゃない。たまたま、俺にバイクの運転が出来ただけだ」

「…………ありがとう」

 

しぶしぶながらも礼を言う真一郎に、小鳥は苦笑して、北斗は感心したように、それぞれ反応する。

小鳥が煎れてくれた熱い茶を飲んで、真一郎ははたと気付いた。

 

「――そういえば俺の荷物は!?」

「ん? これのことか?」

 

差し出されたのは先日、真一郎が腰に回していたベルトとコルト・パイソンだった。

真一郎は目を見開くと、北斗の手からベルトを奪うようにひったくった。

北斗は、その行動に驚きもしなければ怒りもせず、ただ一言だけ、

 

「コルト・パイソンはいらないのか? 『M.R.ユニット』には劣るが、こいつだって結構高いだろうに」

 

真一郎にとって、爆弾を投下した。

今、目の前の男は何と言った?

『M.R.ユニット』と言ったのか?

真一郎の体が、フラリとよろめく。

 

「あ、あんたはいったい……?」

 

急速に力の抜けていく真一郎の身体を支えながら、北斗は無表情に言った。

 

「――『M.R.ユニット』……かつて、秘密結社〈ショッカー〉が開発半ばで断念した、瞬間生体改造システム。あらかじめ改造人間のデータがインプットされたメモリーカードを装置に挿入することでベルト状に展開。戦場で臨機応変かつ即座に改造手術が出来るようにと開発された禁断のシステム。現物を見たのは、これで3度目だ」

「……」

 

もはや言葉もない真一郎。

当然であろう。大切な幼馴染にすら、この装置のことは話していないのだ。

 

「――きみがこの『M.R.ユニット』をどういった経緯で入手したのかは知ならないし、聞こうとも思わない。しかし、俺はきみがそれを着けて戦っていた時、きみの心から負の感情を感じた。……この世の総てを破壊し尽くしても飽き足らない、憎しみの感情を」

 

所々妙な箇所があったが、北斗の言っていることは確かに的を射ていた。

自分はあの時、どんな気持ちで戦っていた? そう聞かれれば、間違いなく憎しみの下に戦っていたと答えただろう。

もはや果たすこともできぬ、“復讐”という二文字の代償行為として、戦っていたに過ぎない。

 

「よければ教えてくれないか? きみの中に存在する闇の正体。そして、きみがいかなる道を辿ってきたのかを……」

 

 

 

 

 

――海鳴市・海鳴大学病院――

 

 

 

 

 

……時は少し遡って、甲龍襲撃より2時間後の病院。

 

「美緒っ!!」

「あ、こーすけ」

 

息を切らしながら病室に駆け込んだ耕介を迎えたのは、いつもと変わらぬ美緒の笑顔だった。

美緒が病院に担ぎ込まれたと聞いて、慌てて駆けつけた反動か、元気そうな美緒の様子を見た途端、思わず脱力してしまう。

 

「ん、どうしたのだ? こーすけ」

 

耕介と2人きりの時、美緒はまるで子供の頃に戻った時のような話し方をする。

彼女にとってもまた、槙原耕介という存在は第二の父であり、唯一彼女が無条件で甘えられる存在なのだ。

また耕介も、美緒のことを実の娘のように思っている。

だからであろう。彼女の安否を確認して、疲れたような顔をしながらも、耕介は本当に嬉しそうに、安堵の息をついていた。

 

「あ、耕介さん」

 

不意に背後から声をかけられる。

振り向くと、グリップボードを抱えた銀髪の少女が立っていた。

耕介は軽く会釈して、自身の義理の娘によく似た少女に微笑みかける。

 

「美緒の状態はどうなんだ?」

「はい。特に目立った外傷もなく、傷になるってこともありません。これもデルタスーツの賜物でしょうね」

「よかった」

 

ほっと、心底嬉しそうに笑う耕介。

 

「まぁ、念のためあと2日は入院してもらいます。それに、健康診断もやりたいですし」

「……まだ終わってなかったのか?」

 

ギギギと、ゆっくりと首を回し、美緒を凝視する。

たらりと冷や汗を流しながら、美緒は本能レベルで危険が迫っていることを察知した。

 

「いや、その…こ、こーすけ! これには海よりも深い事情が……」

「あるわけないだろっ!」

「……2人とも、病室内では静かにしてください」

 

微笑む笑顔に、耕介と美緒は何も言い返せない。

彼女の笑顔には、有無を言わせない何かがあるようだ。

耕介はしぶしぶながら、美緒は涙を溜めながらひとまず問題を保留とした。

銀髪の少女の名はフィリス・矢沢。

幼い(というより○学生)外見とは裏腹に、立派な医者で、リスティの妹にあたる。

バツの悪そうな2人に優しく微笑みかけ、フィリスは言う。

 

「まぁ、健康診断のことは置いといて、本当に美緒ちゃん達は働きすぎなんだから、ちゃんと休まないと」

「ううう…面目ないのだ」

「……面目ないって言えば、誰が美緒を助けてくれたんだ? スーツが脱げて気を失っていたって事は、デルタブラックじゃ敵には勝てなかったってことだろ。また、あのネメシスって奴か?」

 

耕介の脳裏に、あの強力な復讐鬼の姿が浮かび上がる。

しかし、美緒の解答は耕介の予想を大きく超えたものだった。

 

「ううん。ネメシスもそうだけど、あたしを助けてくれたのは真一郎だったよ」

 

瞬間、耕介の時が止まった。

――真一郎だって?

――今、彼女はそう言ったのか?

 

「―――相川君が……」

 

別段不思議なことではなかった。

相川真一郎はすでに帰国している。

彼がこの街で自分達と会う確率がゼロというわけではないのだ。

その確率が何千万分の一だったとしてもゼロではない以上、実際に起こったとしても不思議ではない。

 

「こーすけは知ってたの? 真一郎がこの街に帰ってきてたこと」

「…ああ」

 

知ったのは今日だけどな、と付け加える。

 

「……真一郎が、フランスで今まで何をしていたのかも?」

「……ああ」

 

美緒は真剣な表情で耕介を見上げる。

何かを訴えかけるような視線に、耕介は顔を逸らした。

美緒の言わんとしていることが分かるのだろう。悲痛な表情を浮かべている。

――と、その時、

 

「―――話してやりな」

 

不意に背後から声をかけられた。

振り向くと、明後日退院を控えた真雪が、病室の扉にもたれかかって立っている。

完全に気配を殺しての登場に、フィリスだけでなく耕介と美緒も驚く。

真雪は、言葉を続けた。

 

「話してやりな。それで、そいつの気持ちが治まるのなら安いもんだろ?」

「……でも真雪さん」

「でももクソもねぇっ!」

 

耕介との僅かばかりの距離を詰め、胸座を掴んで80キロ以上ある巨体を僅かながら持ち上げる。

 

「テメェのせいで、みんながどれだけ心配してるか分かってるのかっ!? テメェは気付かれねぇようにしてるつもりかも知れないが、みんなもう知ってんだよ!!」

 

相変わらず嘘が下手だなと、正直に思ってしまう。

もう少しでも、耕介に嘘をつき、それを隠す能力があれば、自分もこれほどまでに気苦労はしないだろう。

もっとも、それが耕介の長所でもあり短所でもあるから、何とも言えないのだが。

呆然とした表情の耕介に、美緒もさらにまくしたてる。

 

「あたしも知りたい。こーすけはみんなのことを思って隠してるのかもしれないけど、もう、あたし達だけ何も知らないのは、ゴメンなのだ!」

 

美緒の叫びに、耕介は真雪の手を掴んだ。

しばしの逡巡の後、彼女の細腕に力を入れ、床に足を付ける。

耕介は備えつきのパイプ椅子に座ると、美緒とフィリスを一瞥した。

 

「フィリスも知っといてくれるか? リスティにも、話しておいてほしいし」

「あ、はい」

 

突然の指名にやや驚いたものの、フィリスはすぐに気を取り直し、耕介の言葉を一言も聞き逃すまいと、耳目に精神を集中させる。

……それは、あまりにも悲しき物語であった。

 

 

 

 

 

6年前の“あの戦い”の後、相川真一郎は、本格的に料理の勉強をすべく、留学のためフランスへと旅立った。

……というのは、表向きの理由で、実は真一郎のフランス行きには、もうひとつの理由があった。その理由を押し隠したのは、そうでも言わなければ両親が海外行きを許すはずがなかったからだ。

真一郎のもうひとつの目的……それは、フランスの外人部隊に入隊することだった。

21歳までは訓練と戦闘、そして料理の勉強と、三足草鞋を続けていた。訓練での生存率は4割だったという。

部隊の人数は100人ほどだったが、その100人で国境間の紛争の勝敗を左右していたこともあった。

もっとも、真一郎が所属していた部隊は、彼が23になってすぐに壊滅したらしい。生き残ったのは、わずか7人だけだったという。

そして今年になって、料理の腕にも、戦いの腕にも自信を付けて、彼は帰国したのだ。

彼は現在、翠屋でコックをしているという。

美緒も翠屋にはよく行くのだが、決して表に出る仕事ではないため、全く気付かなかった。

 

 

 

 

 

――海鳴市・真一郎の部屋――

 

 

 

 

 

時は戻って真一郎の部屋。

 

「――これで、全部だ」

「……そうか」

 

真一郎の話を聞き終えて、北斗は低く呻いた。

真一郎の一挙一動を注視しつつ、自身は腕を組み考え込む。

相川真一郎自身から聞かされた彼の過去は、北斗が想像していた以上のものだった。

特に、フランスに行ってからの彼の人生は、壮絶という言葉の連続と言ってよく、北斗はまるでまるでかつての自分を見ているような郷愁にかられてしまった。

 

「……俺はあの時、自分の大切なものを守れなかった。自分の弱さってやつを、あの時ほど思い知らされたことはない。だから、フランスに行って、外人部隊に入って、少しでも強くなりたいって、願ったんだ」

 

真一郎の言葉に、北斗は顔を歪めた。

人間は誰しもが弱い生き物だ。

弱いゆえに群れをなし、武装することで自らを守ろうとする。

しかし人間は同時に強い生き物でもある。

地球に住む百億を越える生物の中で、ここまで進化したのは人間だけだ。

強靭な四肢と器用な手先。類稀なる環境適応能力。

そしてなにより、他の生物にはない異常とも言える知能。

強くて弱い。それが人間だ。

その矛盾さゆえに、時として人は苦悩する。

存在意義そのものが“矛盾”している人間に、強弱の是非を唱えることなど愚かな行為なのかもしれない。

そしてそれは、もはや厳密な意味で人間ですらない北斗にも当て嵌まることだった。

北斗の中で、やりきれない感情が芽生える。

 

「……話は変わるが、その『M.R.ユニット』を俺に預けてはくれないか?」

「…………は?」

 

突然の北斗の申し出に、真一郎は素っ頓狂な声を上げた。

先刻まで自分が話していた内容と、あまりにもかけ離れていたからだ。

 

「お、おい」

「聞えなかったのか? だから『M.Rユニット』を……」

「ちょっと待てよ!」

「……何かおかしな事を言ったのか?」

「いや、わたしに言われても……」

「ふむ、理解不能だな」

 

理解不能なのはこっちだと言いたげな真一郎を無視して、北斗は話を続ける。

 

「相川君がフランスで訓練をし、その訓練をしたきみが『M.R.ユニット』を装着したことは分かった。しかし、その力できみはあの化け物に勝つことが、戦うことが出来たかい?」

「う…それは……」

「だからだよ。幸い、俺の知り会いには元〈ショッカー〉の人間がいる。今の『M.R.ユニット』には、明らかに不足している物があるはずだ」

 

『M.R.ユニット』の中央部の、球状の窪みを叩きながら北斗が言う。

真一郎は渋い顔をしながら言った。

 

「……“動力源”だろ?」

「そうだ。正規の物でなくとも、せめて“動力源”の代わりになるような物は必要だろう。出来ればそいつを調達して、『M.R.ユニット』の強化をしてみよう」

 

さとすような口調の北斗に、真一郎はしぶしぶながらも『M.R.ユニット』を手渡す。

北斗は、握り拳大の装置を受け取って、ふと、思い出したように言う。

 

「ああ、そうだ」

「まだ何かあるのかよ?」

「ああ。これは俺の知的好奇心からなんだが――」

 

北斗は一旦区切って、言葉を紡ぐ。

 

「もし『M.R.ユニット』を強化して、その上で手に入った“力”を、きみはどうするつもりだ? また、あの時のように憎しみに身を任せて使うつもりか?」

「それは……」

「これは宿題だ。今度会う時までにやっておいてくれ」

 

言って、部屋を後にする北斗。

残された真一郎と小鳥は、ただただ暗い面持ちをしていた。

 

 

 

 

 

――????――

 

 

 

 

 

「待て甲龍っ! その体で泉に浸れば、むしろ身体は傷つくだけだっ!!」

 

遠くから聞えてくる蟲龍の声に、翼龍はビクリと身を震わせて、牙龍の浸っているプールから出た。

急ぎ紺色の水着を脱ぎ、純白の衣に着替える。

――と、声は次第に大きくなり、声の主はこの部屋まで入ってきた。

 

「こ、甲龍っ…」

 

傷ついた甲龍と、それをいさめる蟲龍。

翼龍は少なからず動揺した。

自分達龍臣の中でも最高の防御力を誇る甲龍が傷ついているものそうだが、甲龍のベルトの龍が漆黒に染まり、その瞳から正気が失われていることに、なにより驚いた。

 

「ど、どうしたの甲龍!?」

「翼龍からも言ってやってくれ! “清めの儀式”なしに“癒しの泉”に浸れば、それは薬どころか毒しかならない!!」

「どけ……邪魔だ……わたしは……傷を癒したいだけだ」

 

もはや甲龍に正常な判断能力は失せていた。

甲龍の心の大半を占めているのは、憎悪という負の感情。

あの時、真一郎がその身を任せた感情と同一のものだ。

2人の制止を振り切って、甲龍は緑色の液体へと浸っていく。

 

“ジュウウウウウッ!”

 

プスプスと、甲龍の堅牢な装甲すら腐食する音。

肉の腐った臭いが立ち上り、辺りが腐敗していく。

 

『甲龍!!』

 

2体の声が重なる。

甲龍が今浸かったのは“癒しの泉”と呼ばれる、言うなれば薬湯のようなものだ。

その効果はその者の傷を癒し、心を鎮める力があるという。

しかし、ある一定の手順を踏まねばその効能は得られず、逆に心は昂ぶり、その肉体は腐敗していくという毒にもなってしまう。

翼龍の反応は機敏だった。

そして蟲龍も、翼龍に習い行動を開始する。

 

「今からでも遅くない!」

「我らの力で甲龍に清めの儀を!」

 

力を掌に集中させ、甲龍へとかざす。

するといったい何が起きたのか、甲龍の周辺の湯が青色に変色し、甲龍の傷を癒し始めたのだ!

 

「これで傷だけはなんとかなるはず」

「でも、甲龍の心は……」

「邪悪のまま、か…。チクショウめ!」

 

未だ黒いままの甲龍のベルトを見て、蟲龍は吐き捨てた。

 

(もうみんなボロボロだよ…。牙龍、早く目覚めて)

 

遠くの方で漂う牙龍を見つめながら、翼龍は心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

傷を癒した甲龍が、再び街へと繰り出すのは、それから5日後のことだった。

 

 

 

 

 

――海鳴市・海鳴商店街――

 

 

 

 

 

「あ、小鳥こっちこっち!!」

「ゆ、唯子。そんな大声出さなくても聞えるよ」

 

はずかしいなぁ、もう……と、苦笑しつつ、休憩時間となった小鳥は、4人掛けの客席にいる、ひとりの女性の元へと向う。

長い髪を後ろで結わえ、ポニーテールにして流している女性は、長身だった。

彼女の名前は鷹城唯子。

小鳥、真一郎の幼馴染で、晶やレンの通う、海鳴中央で体育教師をやっている。

 

「もう…恥ずかしいんだから」

「にゃははは。ごめんごめん」

「ううん。いいよ」

「あはは、ありがと。それで、真一郎の調子は?」

「うん…。大分元気になったよ」

「今度お見舞い行くって言っといて。唯子も、今、結構忙しいんだ」

 

3月の上旬といえば公立高校の一般入試の時期である。

海鳴中央は近々風ヶ丘学園高等学校という私立校と統合される予定だが、海鳴中央の生徒の全員が全員、風ヶ丘に進学するというわけではない。

中には当然、公立高校に進学したいという生徒もいる。

そういったごく少数の生徒のために、教師陣は総動員されるのだ。

 

「いやー学生諸君は頑張ってるねぇ」

「唯子、なんか、オジさんっぽいよ……」

 

翠屋特性のシュークリームを頬張りながら、何気無しに外を見てみる。

――と、そこで小鳥は、多少の違和感とともにひとりの老人を見つけた。

腹を抱え、うずくまっている。

唯子も同じく見つけたようで、小鳥と顔を見合わせる。

やるべき行動は決まっていたが、どうもすぐに立ち上がれなかった。

何か、その老人から違和感のようなものを感じるのだ。

本能が、あの老人は危険だと、本能が警告していた。

その時、その老人を不信に思ったのか、海鳴商店街の一角にある交番に勤務している警察官が、職質を兼ねて話し掛けた。

――と、その瞬間、商店街のど真ん中で、信じられないような現象が起きた。

老人の姿がグニャリと歪み、異形の怪物になったのだ。

老人……否、甲龍は、その警察官を頭からバリバリと食べると、今度はその様子を呆然と見ていたサラリーマン風の男を食らった。

誰かが、悲鳴を上げた。

唯子が鞄の中から棍を持ち出して外に向ったのは、その直後だった。

 

 

 

 

 

――海鳴市・真一郎の部屋――

 

 

 

 

 

未だ体を起こすのも辛い真一郎は、突如として鳴り始めたケータイを取ると、ディスプレイの『小鳥』の二文字を見て飛び起きた。

すぐさま通話ボタンを押して、電話機を耳に当てる。

回線を通じて聞こえてきたのは、いつになく切羽詰った様子の、幼馴染の鳴き声だった。

 

「もしもし」

「あ! 真くん!?」

「ああ、俺だ。……一体どうしたんだよ?」

「唯子が…唯子が……!!」

「落ち着け小鳥! 唯子がどうしたって……!?」

 

小鳥から大体の事情を聞いた真一郎は、「あの馬鹿っ!」と、幼馴染の取った愚考に毒づいた。

コルト・パイソンを手に取り、鍵も閉めずに部屋を飛び出す。

エレベーターなんて待ってられない。まるで疾風のように階段を駆け下りると、真一郎は車庫からマジェスティを起動させた。

5日ぶりの運転だったが、体の方は忘れていなかった。

しかし、震える車体の振動が辛いのか、全身に走る痛みに、真一郎は顔を顰めた。

 

「早まるんじゃないぞ……唯子!」

 

ハンドルを振り切り、エンジンの回転数を全開にまで上げる。

シルバーの車体が、流星の如く風を切って走った。

 

 

 

 

 

そして一方、不破もまたXR250に跨り、国道を駆け抜けていた。

たまにはいいかとツーリングをしていた最中、不意につけたラジオの放送で『龍』出現の報を聞いた彼はが、慌てて元来た道を引き返していた。

それほど遠出していたわけではなかったので、海鳴市までは10分もあれば着く。商店街なら、あと30分もあれば街並みが見えてくるはずだ。

しかし、不破の計算は見事に覆される。

 

“ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!”

 

空を引き裂く凶悪な音。

ブレーキをかけ、反動でジャンプ。

見ると、先刻まで不破が走っていた道路には無数の弾痕が残されていた。

不破はそれをコンマ1秒だけ見て、コンマ1秒の後には前方を見上げた。

 

「今の甲龍はもはや自制が効かん。今現在、我らを倒せるのは貴様のみ。ここで貴様を食い止めさせてもらう」

 

戦闘体の、蟲龍。

百足の如く伸びたいくつもの足から、硝煙が立ち上る。

 

「喰らえっ! “弾矢嵐招(だんしらんしょう)”!!」

 

直後、蟲龍の持つ全ての足から、数百を超える弾丸が放たれた!

 

「くっ……変身!」

 

不破は素早くネメシスに変身すると、無数の弾丸向って駆け出した!

 

 

 

 

 

 

――海鳴市・海鳴商店街――

 

 

 

 

 

 

「うっ…痛っ!」

 

コンクリートの壁に叩き付けられ、唯子は苦悶の声を上げた。

すぐに自分の状態を確認してみる。

受身の要領でなんとか出来るだけダメージを軽減してみたつもりだったが、実際には肋骨が、何本か砕けてしまったようだ。

 

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

 

壁に叩き付けられた時に、肺の中の空気を全部吐き出してしまったらしい。

慌てて横隔膜を上下させ、酸素を貪る。

 

「その程度か……」

 

ベルトの龍を漆黒に染めた甲龍は、ゆっくりと、まるで嬲り殺しを楽しむかのように、恐怖に引きつる表情を観賞するかのように唯子に近付く。

 

「うう……」

 

唯子はすでに立ち上がる気力すら失っていた。

しかしそれも当然であろう。

もう、何十発も、甲龍の最低の力で、わざと急所を外されて殴られているのだ。

それは嬲り殺しを楽しむために甲龍が施した、手加減だった。

 

「……中々に、余興としては面白かったがな」

 

甲龍が拳を振り上げる。

 

「若い娘の血肉……食らってやろう」

 

呟いて、甲龍はその拳を振り下ろ……せなかった。

 

“ガガガガガガガガッ!”

 

突如その身を襲う横殴りの衝撃。

否、そんな生易しいものではない。

圧倒的なまでの、光の奔流だった。

 

「り、リスティさん! 街中でヴォーテックス・キャノンは危険ですよ!」

「いいじゃないか。威力は10分の1に押さえてるんだし。美緒の話だと、奴の装甲を破るにはこれぐらいなくちゃね」

「そうだぜお嬢ちゃん! 大事の前の小事だ! そんな細けぇこたぁ気にすんな!!」

 

デルタアクセルである!

鋼鉄よりも硬いドアが開き、中から5人の戦士が降り立つ。

 

「さ、戦闘開始といこうか!」

 

デルタホワイト――リスティの言葉に、4人も頷く。

デルタイエロー――美由希はレッド――那美からメタルブレードを借りると、自分のメタルブレードも抜き、戦闘態勢に入った。

ブルーも同様にデルタブラスターを抜き、ブラックは雪辱戦とばかりにブラッククローを装着する。

ヴォーテックス・キャノンを受けてなお立ち上がる甲龍を見て、彼女達は猛進した!

 

「フンッ…」

 

まるでつまらないものでも見たかのような不機嫌そうな視線。

甲龍はゆっくりとした動作で懐から種を蒔いた。

種は徐々に成長し、人型の異形へと変わっていった。

その数、およそ30。

 

「みんな、散開だ!」

 

ホワイトの掛け声に、デルタハーツのメンバーが分散する。

龍魔達は、その各々へと向っていった。

1人につき6体。それが与えられたノルマだ。

 

「やぁっ!」

 

レッドダガーが唸りを上げ、刃風が鳴った。

デルタレッドが繰り出す一太刀、一太刀により、龍魔達は徐々に戦力を削がれていく。

 

「てぇいっ!」

 

ブルーがデルタブラスターの引き鉄を絞る。

銃口から放たれた高出力レーザーにより、次々と龍魔達が倒れていく。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

イエローの蹴りと刃を巧みに使った戦闘。徹を放ち、斬を放ち、貫を繰り出す。

それらの攻撃が命中するたびに、強靭な生命力を持つ龍魔達も、次第に動きを鈍らせる。

 

「サンダーッ!」

 

ホワイトの稲妻とブーメラン。

どちらも不意を突くトリッキーな攻撃に、龍魔達は1体、また1体と灰と化していった。

 

「さざなみ憲法第23条! 『やられたら907倍にして返す』!!」

 

駿足の足から繰り出される、ブラッククローの斬撃。

自分が斬られたことにも気付かず、龍魔達はその数を減らしていった。

 

 

 

 

 

そして、5分後……。

 

「フン……時間稼ぎにすらならぬか」

 

“グシャアッ!”

 

最後の1体をブルーが倒して、5人は改めて甲龍に向き直った。

強酸の泡を吹き出しながら、彼の龍は歩みを始めた。

 

「あいつの甲羅は強固なのだ。一点集中でいかないと」

「デルタブラスターの一点集中一斉射撃でいきましょう」

「那美、美由希、よ~く狙うんだよ」

「は、はい!」

「うう…頑張ります」

 

ホルスターからデルタブラスターを手に取り、構える。

デルタハーツと甲龍を隔てる距離は、そう遠くはない。拳銃の射程でも十分届く射程内だ。

問題はタイミングである。デルタブラスターの威力が最大限に引き出せ、かつ相手の反撃を受けない距離。

すなわち、20メートルである。

 

(20メートルあれば、奴が接近するまでにデルタブラスターで焼き殺せる!)

 

龍魔達と戦うために、5人と甲龍との距離は離れてしまっている。

その距離、およそ50メートル。

マスクに備えられた自動望遠レンズのおかげで分かりづらいが、鮮明なデジタル画像の隅に、しっかりと相手との相対距離を表示していた。

その表示が徐々に縮まり、望遠レンズのピントも段々と変化していく。

甲龍が接近している証拠だった。

50…45…40…35…30…25…20!

 

「シュートッ!」

 

直後、デルタブラスターの銃口が一斉に火を、高出力のレーザーを噴いた!

光の帯が川のように流れ、甲龍の体を呑み込む。

その様子はさながら大河に差された1本の小さな棹のようで、差された棹はあまりの流れに地を離れ、そのままはるか後方へ……

 

「グ、ヌゥオオオオオオッ!」

 

……流されない!

 

“ピピピッ”

 

ふと、そんな音とともに相対距離の表示が変わり始めた。

18…15…13…11…8……5…3……1メートル……!

“轟!”と、風が鳴いて、何か“黄色い”ものが宙を舞った。

……デルタイエローだった。

 

「……っ痛!」

 

したたかに背中を強く打ちつけたイエローが呻いた。

しかしさすがは武術家。受け身をとり、追撃に備えてすぐさま立ち上がる。

必然、自分を除く4人の姿が視界に入る。

そこに広がっていたのは、悪夢だった。

甲龍の一撃でレッドが吹き飛ばされ、建物に叩き付けられる。

ブルーが応戦するもまったく歯が立たない。

ホワイトも同様にサンダーブレイクを放つが、黒焦げになった甲羅がさらに黒くなっただけだった。

甲龍はブルーをハサミで掴むと、何度も地面へと叩き付ける。

それを止めようとブラックが挑むも、何合もブラッククローで斬りかかるうちに、ついに爪が折れてしまった。

それと同時に、もはや動かぬブルーに興味をなくしたのか、甲龍はまだ動いているホワイトとブラックに襲い掛かった。

突然の攻撃に、ホワイトとブラックは反応しきれず、甲龍のタックルが直撃してしまう。

 

「……っ!!」

 

ほぼ無意識に、美由希は駆け出していた。

いつも使っている小太刀よりやや長いメタルブレードを十字差しに構え、それこそオリンピックでも通じるような加速をする。

そしてそのまま刃を振るう!

……が、

 

“ギィィィィィンッ!”

 

そんな金属音とともに、メタルブレードの一刀が折れた。

見掛けによらず俊敏に、甲龍はそれに反応する。

 

「っ!」

 

折れた方のメタルブレードを盾にして、イエローはその攻撃を捌いた。

 

“ガギギギギィィィィィッ!!”

 

今度こそ完全に砕け散ったメタルブレードを捨て、イエローは距離をとる。

すでに、甲龍はホワイトやブラックから興味を削がれた様子だった。

2人の間に、静かな風が流れる。

その風と対照的に、イエロー――美由希の心は揺れていた。

 

(攻撃が……効かないっ!)

 

原因は分かっている。あの装甲だ。

蟹のように……否、本物の蟹など比較にならないほどの硬度の鎧。

美由希は、もう1度甲龍の姿をしげしげと眺めた。

 

(……! これはもしかして…………)

 

――と、そこであることに気付く。

そしてそれは、美由希に次の行動をさせるには充分な判断材料となった。

 

(…練習しといて、よかったかな?)

 

突進してくる甲龍にたじろぎもせず、美由希は、その技を放った。

 

(……徹っ)

 

斬、徹、貫……と続く、御神流の基本技の2番目。

衝撃を表面ではなく、内部へと浸透させる打ち方。

蟹は甲羅とその身が一体となっているか?

否、甲羅はあくまで守るための鎧。その柔らかくしなやかな筋肉繊維は、他の生物と何ら変わりはない。

蟹の甲羅とはすなわち鎧だ。

鎧の下にあるのは生身。では、その生身の肉体に攻撃を加えることが出来れば――

 

「……ぐぅっ!?」

 

突然全身を駆け巡る痛みに、甲龍は驚愕する。

その様子を見て、美由希は確信した。

 

(これなら……いけるっ!)

 

みなが回復するまでどれほどかかるか、医者でない美由希には到底分からない。

もしかしたらもうしばらくは動けずに、彼女達の援護をアテには出来ないかもしれない。

しかし、そんなことはどうでもよい。

ただ自分は、その時まで兄より教えてもらった“徹”で戦うのみだ。

美由希の、たった独りの戦いが始まった……。

 

 

 

 

 

交通規制など完全無視で、真一郎のマジェスティは混乱の中を駆け抜けた。

本来ならば、商店街に着くのに、それほどの時間は必要ないのだが、すでに避難が始まっている現状では、真一郎は遠回りをせざるをえなかった。

まさか、人を轢くわけにもいかない。

しかしそうしている間にも、唯子の命は危険に晒されている。

あるいは、もう避難を始めたのかもしれないが、この混乱である。

ケータイも通じず、真一郎は焦っていた。

来た道を逆送し、本来ならば一方通行の裏道を通る。多少の近道ではあったが、それでもまだまだ時間は惜しい。

真一郎はフルスピードで駆けようとして、急ブレーキをかけた。

 

“キキキキキィィィィィ……”

 

マジェスティの車体が、“彼”の目の前で止まる。

真一郎は“彼”を見ると、激昂した。

 

「…なっ! そこをどいてくれ!!」

「悪いがそれは出来ない。今のきみでは、むざむざやられに行くようなものだから……な!」

 

男……北斗は、抱えていた鞄の中から小さな金庫のような鉄製の箱を取り出すと、真一郎に向って投げた。

突然の飛来物に体が反応し、身構えてしまうも、それがただの箱だと知るやいないや、体勢を低くし、キャッチする。

北斗の行動に訝しげな顔をするも、とりあえず箱を見てみる。

箱はたしかに金庫だった。

4桁のナンバーロック式の鍵がかけられている。振ってみると、2つ、なにか固形物が入っているのが分かった。

 

「解除コードは4016だ」

「あ、ああ……」

 

言われるままに真一郎はナンバーロックを解除する。

普段の真一郎ならば怪しんだであろうが、北斗との距離が近いこともあり、爆弾ではないと悟って手際よくコードを入力する。

鍵の開く音がして、真一郎は慎重に蓋を開けた。

なかに入っていたのは、中央部に赤い宝玉を納めた『M.R.ユニット』と、それに挿入するメモリーカード3枚のセットだった。

 

「これは……!?」

「正規の動力源ではないから限界は30分だ。メモリーカードは……まぁ、サービスだ」

 

これに真一郎が持っているメモリーカードを合わせれば4枚である。

真一郎は北斗と装置を見比べて、戸惑いの表情を浮かべた。

 

「……もう1度聞いておくが、きみは、その力を何のために使うつもりでいる?」

「……! 今はそんなこと行ってる場合じゃ――「答えろ」」

 

やや強い口調で、北斗は真一郎の解答を求めた。

答えなければ絶対に通してくれないと悟り、真一郎は考え込む。

 

「……復讐のためか?」

「…それも……あります……」

「…考えろ相川真一郎。考えに考え抜いた答えを……俺に聞かせてくれ」

 

北斗は決して急がせているわけではない。

だが、状況が状況であるために、真一郎も必死だ。

時間のない中、真一郎が考えに考え抜いた結論。それは――

 

「―――今は、助けたい人がいるから…その人を守りたいですね」

 

それは、現在進行形の答えだった。

相川真一郎が生きた23年の人生からの結論ではなく、嘘偽りのない、今の本心だった。

 

「それは、守りたいという対象が、キミの幼馴染だからか?」

「…ッ! ……たしかに、それもあります。けど――」

 

真一郎は一字一句を噛み締めるように、

 

「――やっぱ、いちばんの理由は……みんな、“優しい人達”ばっかだから……かな?そりゃ、復讐って意味もあるけどね」

「……それが現時点における、相川真一郎のファイナルアンサーか?」

「ファイナルアンサー……当たったら、1千万円くださいよ」

「……お前が持っている物は1千万以上するんだがな」

 

そう言って、北斗は不器用に笑った。

真一郎はひとつ頷くと、『M.R.ユニット』を眼前にかざし、スイッチを押した!

 

M.R.unit start up…… Please set changing memories card.

 

メモリーカードの束から、飛蝗と思わしき絵柄のカードを取り出し、インサートする。

 

Now lording……Type grasshopper system standing by.

 

『M.R.ユニット』はたちまちベルト状に変貌する。

 

Please say metamorphosis code……』

 

必要なのはたった一言。

真一郎は、北斗に微笑むと、その一言を叫んだ。

 

「変、身――!」

 

刹那、真一郎の全身を激痛が襲った。

『M.R.ユニット』から眩い光が放射され、真一郎の体を包み込み、見えなくさせる。

その肉体は、徐々に変貌を遂げていった!

鋭い爪。太い手足。まるで昆虫のように、真一郎の肉体は緑色に変色していく。

そしてその変化は、ついに頭部まで及んだ。

顔の輪郭そのものに変化はない。

しかし、両目は複眼状に拡大され、裂けた口からは鋸のような歯が覗いている。額の中央から伸びた2本の触角は、何かを求めるように小刻みに震えていた。

……あえて言うならば、その姿は“飛蝗”。

メモリーカードをインサートして3秒の間に、真一郎は変身を終えた。

異形の姿と化した真一郎に、北斗が言う。

 

「メモリーカードの使い方は分かるな?」

 

飛蝗――真一郎は頷くと、メモリーカードの束が入ったボックスをベルト部に下げ、中から1枚のカードを取り出す。

“鎧”の絵柄が描かれたカードをベルトの挿入口の1つにインサートする。

刹那、第2の変化が起きた!

 

Now lording……Weapon call……Crystal Armor!

 

瞬間、真一郎の体が輝き出し、その身に次々と光り輝く、水晶の如し鎧が装着されていく!

太陽の光を蓄え、月の光すらも蓄えたその水晶は、グロテスクな飛蝗の肉体を優しく包み込み、絶対無敵の防御力を真一郎に与える。常人ならざる北斗の眼は、その変化をしかと脳内に焼き付けた。

アウトローのシートを開け、中から、スイカでも収まりそうな、大ぶりの四角いジェラルミンケースを取り出し、真一郎に渡す。

 

「最後にプレゼントだ……。その顔、見られたくはあるまい」

 

ケースの中に入っていたのはフルフェイスのヘルメットだった。

否、仮面と言ったほうがいいのだろうか。それは明確に顔として設計された物だった。

真っ黒なバイザーゴーグルを備えた、どこかギリシア彫刻を思わせる造り。

真一郎は、2本の触角を器用に畳んで、それを被る。

直後、真一郎の視界が広がった。

気温。気圧。酸素濃度。相対物との距離。熱源と熱量。様々な情報がデジタル化され、ゴーグル部がまるで1枚の画面となって、表示される。

その急激な変化に戸惑いながらも、真一郎は北斗に向き直り、軽く頭を下げると、マジェスティに乗った。

 

「行け! 相川真一郎! ……お前の手は、人を守るための手だ!!」

 

真一郎は頷くと、エンジンを起動し、それこそ神速の如しスピードで駆け抜けた!

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

振るった小太刀の一撃が、蟲龍の足をまた1本削ぎ落としていく。

すでに何本の足を切り落とされただろうか。

蟲龍は使えなくなった足は使い捨て、なおも攻撃を続けた

飛び交う無数の弾丸は、確実にネメシスに命中しているが、復讐鬼はダメージなど皆無だと言っているように攻撃を続ける。

 

「……くっ」

 

ネメシスの装甲が火花を散らす。

ダメージがないわけではないのだ。

ただ、我慢をしているだけ。それが蟲龍には効いていないと見えるだけ。

実際はもう、ネメシスは満身創痍の状態であった。

 

「チッ! どんだけ喰らえば倒れるんだ!?」

「……っ!!」

 

飛び交う銃弾の中、それらを躱しつつ、体を反り返らせる。

その、一種独特な構えから繰り出されるのは……最速の刺突だった!

 

“ズシャァァァァァアアアッ!”

 

「……がっ!!」

 

突如襲い掛かる衝撃と激痛に、蟲龍が顔を歪ませる。

その隙を突いて、先に着地した左足を軸に右足の爪先で蟲龍の腹を抉る。

 

「そうそう何度も当たれるか!」

 

流れるような動作で蹴りを躱し、手刀をネメシスの腹に突き立てる。

直撃はしなかったものの、カウンター対策が出来る状態でないネメシスは反応が遅れてしまった。

すぐさま飛び退き、腹のダメージを確かめつつ、呟く。

 

「見よう見まねだったが……上手くいくものだな」

 

小太刀を鞘に納めて、ネメシスは抜刀の姿勢をとった。

それを見るや否や、突然、蟲龍が踵を返す。

 

「……どういうつもりだ?」

「俺の役目は終わった。今頃、甲龍も破壊の限りを尽くして満足しただろう」

「なっ…!」

「ふんっ! せいぜい、頑張るんだな」

 

そのまま森の中へと去っていく蟲龍。

ネメシスは蟲龍の気配が完全に去っていったのを悟ると、XR250をレッドスターへと変形させる。

 

「急げ! レッドスター!!」

 

黒き復讐鬼を乗せて、赤き流星は道路を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

実際はまったくそんな事はなかった。

甲龍は依然暴走したまま、イエローと戦いを続けている。

しかし、さすがの甲龍も連続して打たれる“徹”の応酬に、その装甲に亀裂を走らせていた。

だが同時に、デルタイエローも疲弊しきっていた。

いかに前任の仁村真雪よりも若いとはいえ、美由希の体力とて無尽蔵ではない。

まして敵は龍腎という、人間の常識の範疇を遥かに超えた存在だ。

まともに対峙するだけで、美由希の神経は消耗していた。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

“ガガガガガギギギィィィィィィィィィィ!!”

 

“徹”を充分に篭めた斬撃。

そしてすぐにバックステップをし、距離をとる。

甲龍のパワーをまともに喰らっては、美由希に勝ち目はない。

一撃を受けた時点で嬲り者にされてしまうだろう。

――焦りは禁物。

そう自分に言い聞かせるも、美由希は焦っていた。

原因は分かっている。何度叩いて、何度斬っても、効果という効果が現れないのだ。

いやたしかに、甲龍の装甲には亀裂が入っている。

しかし、それが決定打になるとは到底考えられない。当然油断は出来ないし妥協も出来ない。

美由希は慎重だった。

しかし何事も適度という言葉がある。

それは『慎重』というカテゴリにも当て嵌まるのだ。

 

「やぁぁぁぁっ!」

 

“ガギィィィィィッ!”

 

再び徹による斬撃。

ついに甲龍の装甲の亀裂が一気に広がり、その中身を見せ始めた。

そしてほぼ同時に、甲龍の体がどさりと倒れる。

 

「…はぁ……はぁはぁ………はぁ」

 

呼吸を整えながら、イエローは甲龍と距離を保ったままその様子を静観する。

 

(……やったの?)

 

これが人間ならば血を流しているなり、何なりで分かるが、相手は美由希の範疇を大きく上回る存在だ。気絶しているのか、演技なのか、はてまた死んでしまったのかなど、分かるわけがない。

10秒ほどそのまま眺めて、美由希は近付いた。

メタルブレードの先端を甲龍に当て、反応をたしかめる。

――と、突如として、甲龍は起き上がると、無防備なデルタイエローの鳩尾を狙って拳を放った!

 

「!?」

 

デルタイエローのかるい体が宙を舞った。

 くるくると、まるで壊れた玩具のように宙を舞い、落ちる。

 

“ドザサァァァァァ……”

 

地面に叩き付けられ、かつ後ろへ追いやられた美由希が、マスクの中で顔を顰めた。

背中を強く打ってしまったためか、思うように身動きがとれない。

 

「……遊びは終わりじゃな」

 

ユラリと、多少よろめきながらも甲龍はイエローに接近する。

 

「くっ!サンダー!」

 

多少なりとも回復したホワイトが雷撃で攻撃するも、甲龍に通じない。

揺れる視界の中、ゆっくりと接近してくる甲龍を見て、美由希は心の中で呟いた。

 

(恭ちゃん………)

 

そして、爆音が鳴り響く。

バイク……それもビックスクーターの爆音が!

甲龍が銀色のマジェスティに視線を向けた時、すでにそこには人の姿はなく、空から雄叫びが聞こえた。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

“ズシャァァァァァアアアッ!”

 

得意のジャンプ力を活かし、垂直に落下して蹴りが炸裂する!

甲龍の、亀裂が開いた。

よろめき、膝を付くも、甲龍は目の前の“敵”を見据え、叫ぶ。

 

「き、貴様は一体!?」

「俺か……? 俺の名は…………」

 

気高き水晶の鎧を纏いし“飛蝗”は、まるで“王”の如く嘶いた。

 

「我、風の王者にして深緑を操る者……ホッパァァァァァキィィング!!」

 

先日甲龍が遭遇した時よりも強く、硬く、そして輝くその身体。

飛蝗を治める王者は、甲龍に向って駆け出した。

そして、跳躍!

 

「なっ…!」

 

その、異常ともいえる跳躍力にその場にいる誰もが驚いた。

ゆうに30メートルは跳躍したホッパーキングは、豆粒ほどの大きさになって、一気に地上へと落下する。

甲龍はそれを避けようとするが、ホッパーキングは身体を捻って両手を突き出し、地面を触れると、その反動を利用して強力なキックを見舞う。

 

“ドギャアッ!”

 

それだけで、甲龍は10メートルも後ろに蹴り飛ばされた。

ホッパーキングは着地して、半秒も経つ前に再び跳躍し、甲龍に接近する。

ホッパーキングの拳が、甲龍を捉えた。

 

“ドンッ…ガギィッ…バズンッ…ドガアッ!”

 

物凄い速さのラッシュ。

全体重を乗せ、回転を加えた強力な拳。

その一発一発を、ホッパーキングは甲龍の急所へと叩き込む。

「ぐっ…調子に乗るなぁ!」

 

反撃!

甲龍のハサミがホッパーキングの脇腹を抉る。

――が、致命傷には至らない。水晶の輝きを秘めた鎧は、同じく水晶のように硬く、衝撃こそ受けたものの、傷には至っていなかった

改めて自分の纏う鎧の堅牢さに目を見開きながら、ホッパーキングは拳を、蹴りを繰り出した!

負けじと甲龍も反撃する。

 

“バギッ………ドゴォ………ドガッ!!”

 

装甲の強度は双方ほぼ同等だった。

ただし、甲龍はそれまでの戦いで装甲に亀裂を入れている。

それが、2人の勝敗を分けたと言っても過言ではない。

地面を蹴って跳躍し、ホッパーキングが思いっきり足を突き出す。

 

“ズバアアアアッ!!”

 

ホッパーキングの一撃に、ついに甲龍の装甲が崩壊した!

もはや甲羅のない甲龍など、恐れるに足りない。

――と、その時、ホッパーキングの耳にある音が聞こえてきた。

 

“ヴォォォォォ……!!!”

 

アイドリングの音。

――レッドスターだ!

赤い流星に跨った復讐鬼は、ホッパーキングの姿を見るなり吼えた!

 

「ウォォォォォォォォォッ!!!」

 

ネメシスの体が光に包まれる。

光は右膝から全身へと広がり、やがて右足へと収束していく。

 

「てぇりゃああああああっ!!」

 

ネメシスが、レッドスターから飛び跳ねる。

そしてほぼ同時に、ホッパーキングも近くの建物の壁を蹴って跳躍した。

 

「カーズド!」

「レジェンド・オブ!」

 

ネメシスが右足を。

ホッパーキングが左足を。

それぞれ突き出し、甲龍へと迫る!

そして――――

 

「――ライトキック!!」

「――ウィンドキック!!」

 

復讐鬼と王者のダブルキックが、甲龍を貫いた!!

 

「馬鹿……なぁっ!!」

 

断末魔の雄叫びを上げ、甲龍のベルトに亀裂が走る……!

 

“ドゴォン!!!”

 

爆発。

炎上。

総ての存在を眠らせ、安息へと導く炎。

戦いを終えて、ネメシスとホッパーキングは互いを見詰め合う。

しかしやがて、どちらからとなく握手を求めると、2人はその手をガッチリと掴んだ。

 

 

 

 

 

――????――

 

 

 

 

 

甲龍が死んだ。

その報せを受けた蟲龍はひどく荒れた。

 

「馬鹿なっ! あとたった400と少しなんだぞ。目標半ばにして、甲龍が死んだというのか!?」

 

“ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!”

 

戦闘体のまま全身から弾丸を乱射しながら蟲龍は、洞窟内を駆け巡った。

ものかげから、猛り狂う蟲龍を心配そうに翼龍が見詰める。

ともにいる爪龍と毒龍は、まったくの無関心といった感じだが、どこかそわそわとした様子で蟲龍の暴走を見詰めていた。

……どういうわけか、その場に蟲龍の暴走をいさめるべき大祭司の姿はなかった。

やがて蟲龍が、癒しの泉の湧く場所へと入る。

蟲龍は、そこでも弾丸をバラ撒いた。

弾丸を恐れて一定の距離を保ち続けている翼龍達はまだ、泉のある間には辿り着いていない。

 

“ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!”

 

弾丸の1つが、泉の底へと沈んだ。

突如として泉が一筋の輝きを見せた。

 

“ゴゴゴゴゴゴゴゴ……”

 

地鳴りが洞窟内に木霊する。

震度6といったところだろう。洞窟の岩に亀裂が走り、ぱらぱらと土砂が落ちてきた。

さすがにこれには、翼龍達も慌てて泉の間に駆け込む。

壁にもたれるようにしてしばし待つと、徐々に揺れは小さくなっていく。

翼龍達も安心したその瞬間、彼女達は目を見開いた。

癒しの泉が泡立ち、渦を巻いている。

そしてその渦の中心には――――

 

「が、牙龍……」

 

立っていたのは龍と人間と狼のキメラだった。

全身を覆う毛並みは銀色。古代中国の兵士を思わせる装甲を纏った狼は、その視線を虚空へと漂わせていた。

戦闘体となった“牙龍”は自身の体調をチェックすると、驚愕の表情を浮かべる翼龍達に振り向く。

そして、彼は言った。

 

「世話をかけたな……」

 

緑色の液体を全身に帯びた牙龍は、彼なりの笑顔を見せる。

翼龍が、目頭から涙を浮かべ、牙龍に抱き着いた。

 

 

 

 

 

――????――

 

 

 

 

 

暗闇の中、高級そうな革製のソファに座って、スクリーンを眺める男がいた。

年の頃は50代も後半。銀縁の眼鏡をかけ、医者が着るような白衣を纏っている。

映画館で使われるような巨大スクリーンに映っているのは、本来ならば放映禁止になってもおかしくないような映像だった。

ネメシスとデルタハーツ、リプルとそして、ホッパーキングの戦闘映像。

市販のデジタルカメラや、テレビ局が使う高性能のカメラではない。国際空軍の対地球外侵略者監視用の偵察衛星が捉えた、鮮明な画像である。

下手をすれば軍の最重要機密にもなりかねない映像を見て、男は唇の端を歪めた。

 

「……『M.R.ユニット』ですか?」

 

不意に、男の背後からそんな声が聞こえた。

首だけ回して振り向くと、そこには5人の男女がいた。

一見すれば医者にも見える、眼鏡をかけた女性。

優男な印象が強いが、それ以上に甘いマスクが印象的な、赤い瞳の青年。

容姿からしておとなしそうな少女。

どこの街にもいるような、カジュアルかつラフな格好の青年。

そして、黒の下地に赤いラインの入ったライダースーツを羽織った長身の、それでいてガッシリとした体格の美男子。

今喋ったのは、どうやらライダースーツの男らしい。

まだ20前と思わしき彼は、ソファに座る白衣の男の隣りに立つと、スクリーンを凝視した。

後ろにいる4人も、各々で視線を集中させる。

やがて赤い瞳の青年が口を開いた。

 

「『M.R.ユニット』か……はははっ、どうやら、やっと“彼”に復讐する機会がきたようだね」

「へぇ…じゃ、あの男がおみゃあさんの仇なんかい?」

 

ラフな格好の青年が、微妙な名古屋弁で赤い瞳の青年に訪ねる。

含み笑いを洩らしたあと、赤い瞳の青年は眼鏡の女性を見た。

 

「因縁はそちらのレディの方が深そうだけどね」

「まさか、再びさざなみ寮と関わることになるとはね。脱獄した甲斐があったわ」

「……おみゃあさん、えらい悪さしっとたんだぎゃあねぇ」

 

そう言いながらも、青年は楽しそうである。

ただ1人、おとなしそうな少女が、

 

「海鳴ですか……懐かしいですわね」

「キミもあの街の出身なのかい?」

「ええ、そうですわ。……もしかして、『氷村』さんも?」

「いや。あの街には、憎むべき敵と、義妹がいるんだ」

「そうなんですか……。あなたは?」

 

少女がライダースーツの男に聞く。

男は、獲物を狙う猛禽の如き眼でスクリーンの一点を見詰めた。

全身から放たれる殺気に、その場にいた4人が思わずあとずさる。

ただソファに座っていた男だけが、苦笑してそれを見ていた。

 

「どうした、勇吾?」

「ネメシス……レッドスター……必ず、殺してやる!」

 

ライダースーツを纏った男は、戦慄の微笑みを浮かべて言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

光の歌姫は悩んだ。苦悩し、そして答えを見つけた。

目覚めた牙と、新たな力。

襲い掛かる異形の集団。

漆黒の破壊者と歌姫が巡り合う時、復讐鬼は彼女の前に現れる。

 

「―――もう、守られっぱなしは嫌ですから」

 

次回

Heroes of Heart

第拾壱話「決意」

 

 

 

 

 

 

設定説明

 

“M.R.ユニット”

 

旧〈ショッカー〉が研究していた『瞬間生体改造装置』。

あらゆる改造人間にその場で自己改造可能なシステムとして研究されていたが、〈ショッカー〉の壊滅により、実用化はされなかった(試作型は何機か製造されていたらしい)。

メモリーカードにあらかじめインプットされた情報を解析し、実行することで変身し、武器を電送する。

当初は動力源がなく、出力が不安定だったが、闇舞北斗の改修を受け、動力源の代用品も得る。

 

思いっきりガイバーのアプトム(笑)。むしろファイズや龍騎か?

 

 

“ホッパーキング”

 

身長:184cm 体重:90kg

 

相川真一郎がM.R.ユニットで変身。

外見は先のTYPE-GRASSHOPPERと変わらないが、戦闘力は格段にアップしている。

跳躍力に優れ、アクロバティックでトリッキーな攻撃を得意とする。

また、変身者である相川真一郎の影響により空手スタイルの戦い方もする。

必殺技は『レジェンド・オブ・ウインドキック』で約35トンの破壊力がある。

 

 

“クリスタルアーマー”

 

水晶のような輝きを秘めた鎧。

メモリーカードに情報としてインプットされ、『M.R.ユニット』挿入数秒後にどこからともなく電送される。

その装甲は甲龍と同程度、もしくはそれ以上の硬度を誇り、従来のメタルヒーローを思わせる(つーかモデルはシャンゼリオン)。

 

 

“甲龍”

 

身長:209cm 体重:195kg

 

人間と龍と蟹のキメラ。

病気の老人を装って油断させ、近付いてきた人間を喰らうという、人の両親に付け込む卑劣な戦法をとった。

堅牢な装甲と強力なパワーが最大の武器で、口からは強酸の泡を吐く。

これといった必殺技はないが、かなり強力。

蟲龍とは歳の離れた親友同士。

 

 

 

 

 

 

~まだまだ続く対談形式あとがき~

 

タハ乱暴「『Heroes of Heart第拾話』、お読みいただきありがとうございます!」

真一郎「やっと俺もまともに戦えるようになったな」

タハ乱暴「ですね~。怪獣が出ないと出せない耕介と違って、これから出番増えると思いますよ」

真一郎「でも、フランス外人部隊ってなんだよ?」

タハ乱暴「知りません? フランスに実在する正規軍事組織なんですよ。発足は1831年だったかな?」

真一郎「――で、俺はそんな危険なところに所属していたと」

タハ乱暴「言葉に棘があるのは何故かな、真一郎クン?」

真一郎「うわっ! すっげぇムカツク笑い!!」

タハ乱暴「HAHAHAHAHAHA! 気にするなぁ真一郎クン」

真一郎「……もういい」

タハ乱暴「でもまぁ、危険だという点に関しては時代の情勢ごとに違いますから。時には契約期間5年を戦闘無しで過ぎることもありますし、15年過ぎれば年金も貰えます」

真一郎「でもこの作品の世界って……」

タハ乱暴「すっごいバイオレンスですねぇ」

真一郎「…………」

タハ乱暴「…………」

真一郎「……………………」

タハ乱暴「……………………」

真一郎「………死ねぇっ!」

タハ乱暴「HAHAHAHAHAHA! だから効かんて。じゃ、改めて『Heroes of Heart第拾話』お読みいただきありがとうございました!」






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