注)このSSは独自の設定に基づいて構成されています。原作とはまったく違う設定で書かれておりますので、そういったものが嫌いなお方はプラウザの『戻る』を押して下さい。それでも読んで下さる奇特な方は、どうぞ下へとお進み下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――過去約5000年前・バラージの街郊外――

 

 

 

 

 

辺り一面に広がる、荒涼たる砂漠。

黄色い砂塵を巻き上げる暴風と、軽い地面を深々と抉る雷光。

砂漠では雨も珍しいのに、その日は嵐だった。

それも、並大抵のものではない。

人によっては台風とも捉えられるほどの暴風雨。

まだ昼間だというのに、砂漠の気温は異常なほど低かった。

 

「ジュワッ!」

 

ふと、そんな巨大な声が雷雲へと呑み込まれた。

そこに居るのは背の丈40メートルばかりの、2体の巨人。

一方は赤土色の体躯に、見るもおぞましい無数の触手を生やした、怪獣。

一方は銀色のボディに赤いストライプを走らせ、胸部に青い宝石をたたえた、光の戦士。

グエェーッ――まるで大地を震撼させるかのような、怪獣の咆哮。それに反応して、積乱雲から稲妻が落とされる。

 

「デュアッ」

 

間一髪のところで躱す銀色の戦士。

40メートルもの巨体のどこに、稲妻を躱せるほどの運動能力が隠されているのか。銀色の巨人は襲いくる雷光を避けながら、怪獣へと接近していく。

 

“ピコーンッ! ピコーンッ!”

 

「!?」

 

――と、突如巨人の胸に備えられた青い宝石が点滅し、危険信号である赤い光を放ち始めた。

戸惑い、驚愕の表情を浮かべているのか、巨人が一瞬だけ動きを止める。

しかし、音速の速さをもつ稲妻には、その一瞬が命取りとなる。

 

“ズシャァァァァァアアアッ!”

 

大地を揺るがすかのような炸裂音。怪獣の放った稲妻が、巨人の体を直撃した。

ガクリと膝を着き、前屈みに怪獣を睨み付ける巨人。

 

「ジュアッ」

 

だが巨人は、自身の体に檄を入れて立ち上がると、疲労する肉体に構いもせず、奇妙な動作を始めた。

右腕を直角に曲げ、水平へと持っていく。

 

“グォォォォォオオオ――――――ンッ!!”

 

怪獣が、今までにはないほどの音量で、咆哮する。

銀色の巨人の頭上に、巨大な雷雲が集まり出した。

巨人は、微動だにせず、もう片方の左腕を、右腕とクロスさせる。

 

「…………」

 

荒れ狂う天候の中、巨人は静かに精神を集中させた。何発もの稲妻が巨人のすぐ側に落ちるが、見向きもしない。

 

“グアァァァァァアアア――――――ッ!!”

 

怪獣が、吠えた。

直後、巨人の頭上に蠢く積乱雲から、無数の、巨大な稲妻が落とされる。

 

「デュアッ!」

 

同時に、クロスした巨人の手から、光の奔流が溢れ出した!

 

 

――スペシウム光線。

 

 

圧倒的な破壊力と速度を秘めたそれは、まさに光の速さで怪獣へと炸裂する。

そして、爆発!

四十メートル近い体躯を数百メートル飛ばして、怪獣は肉片も残さずに消え失せた。

巨人はそれを確認すると、ひとつ頷いて、空を見上げる。

そして、そのまま上空へとジャンプしようとして――倒れた。

 

「ジュウ…………」

 

怪獣の放った雷は、たしかに巨人に命中し、多大なダメージを与えていたのだ。

 

“ピコンッ! ピコンッ! ピコンッ! ピコンッ!”

 

胸の宝石が、点滅の速度を上げる。

絶望という名の、カウントダウンが始まった。

巨人は、自らの死が近いことを悟った。

 

(私は、死ぬのか……)

 

巨人は、憂いた。

今、自分に降りかかろうとする死に対してではない。

自分の不甲斐なさに。自分の力のなさに、巨人は憂いたのだ。

 

(このまま私が死んで、誰があの者達を守るというのだ?)

(このまま私が消えて、一体誰がこの地球を守るというのだ?)

(私は……)

 

“ピコンッ……ピコンッ”

 

もはや警告音を出す余力もないのか、段々と宝石の輝きは失せ、巨人の瞳から光が失せていく。

 

(私は……まだ死ぬわけにはいかないっ!)

 

そして、巨人は咆哮する。

 

「お、おおお、おおおおお!!!」

 

その声を聞く者がいたのならば、これほどまでに悲しみに満ちた叫びを聞いたことはないだろう。

巨人は叫び続けた。

それが自分の、残り僅かな命を縮めると知りながら、巨人は、咆哮を続けた。

 

 

 

 

 

やがて、その声も聞こえなくなった時、かつて『ノア』と呼ばれた異星の戦士は、この星からはいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Heroes of Heart

〜ハートの英雄達〜

プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――過去20年前・バラージの街郊外――

 

 

 

 

 

旧約聖書に記されている、ノアの箱船が流れ着いたといわれるアララット山。

その付近に、地図上にも掲載されていないような、バラージという名の小さな街があった。

ある……ではない。あった……だ。数年前から廃墟と化したそこから少し離れた砂漠の一画に、一人の男が居た。

 

「ここか……」

 

男は呟くなり、懐から小さな機械を取り出すと、乾いた砂へと設置する。

ガラス張りの向こうに見えるメーターの針が、右に振り切った。

 

「……間違いない」

 

男は、確信の下に頷くと、満足げな表情を浮かべる。

 

「ついに見付けたぞ、ノアッ!」

 

 

 

 

 

――バラージの街。そこはかつて、異星より降臨せし戦士が戦った、戦場だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――現在・海鳴市――

 

 

 

 

 

西の空が紅に染まり、子供達の声も聞こえなくなってきた夕暮れ。

海鳴市全域を見渡せる小高い丘の上。

斜面に階段状に広がる墓地の片隅で、高町桃子は、今は亡き夫……高町志郎の墓に花を捧げた。

 

「また、来ちゃった……」

 

やさしく目が細まる。

常に周りに笑顔を絶やさない桃子が、唯一、素直に、そして自分が弱くなれる場所。

手を合わせ、両目を瞑り、しばし夫と無言の会話をする。

会話は一方通行で、相手は答えてなどくれなかったが、桃子には、それだけで充分だった。

やがて、背後に人の気配を感じ、桃子は振り向く。

 

「……また、来てたんだ」

 

眼鏡を掛けた少女が、優しく微笑みながら言う。

桃子は「うん」と頷くと、立ち上がって場所を譲る。

少女……美由希は、しゃがんで両手を合わせると、自分がこの世で唯一、父と呼んだ人と会話を始める。

ふと、優しい風が2人の頬を撫でた。

 

「……恭ちゃんがいなくなってから、もう二ヶ月だね」

 

不意に、美由希が呟いた。

それは父に向けた言葉か、自分に向けた言葉か。あるいは、ただの独り言だったのかもしれない。

桃子は、しばしの逡巡のあと、静かに頷いた。

それだけで、美由希には充分だった。

 

「恭ちゃんのことだから大丈夫だと思うけど……やっぱり、心配だね」

「そうね。あの馬鹿息子、何処で何をやっているのやら」

「多分、いつも通りだと思うよ」

 

二ヶ月前、書き置きも残さずに行方をくらました息子に対して愚痴を溢す。

以前、彼が一年近く武者修業のために全国を回った時も、たしかこんな気分だったと、桃子は記憶している。

しかし、その時と今回とでは、少しだけ状況が違った。

 

「赤星さんも、まだ見つかってないんだよね……」

 

息子の数少ない、親友と呼べる男の子。

桃子は、快活に笑う彼の甘いマスクを思い出して、ひどく憂いた。

風が、今度は2人に吹き付けた。

 

 

 

 

 

高町恭也が、親友の赤星勇吾と行方をくらませたのは二ヶ月前のことだった。

『免許を取ったぞ』と、珍しく笑みを浮かべながらバイクに乗る彼の姿を、彼の友人や恩師(主に女性)は、食い入るように見つめていたという。

その彼が、ボディガードのバイトで貯めた貯金を下ろして購入したホンダXR250のブラックバージョンで峠に出るようになったのは3ヶ月前。

友人の赤星勇吾も自分用の単車を買って、一緒にツーリングするようになったのが二ヶ月と三週間ほど前。

そして二ヶ月前、彼らは突如行方をくらました。

当初は桃子達も、「恭也にも楽しみができたのだから」と、やや心配しつつも、小太刀二刀・御神流の使い手である彼と、草間一刀流の使い手である勇吾の強さを知っていたので、あまりおおげさにはその態度を表には出さなかった。

しかしそれが、一週間、二週間と続くうちに、みなは『二人の身に何か起きたのでは?』と、考えるようになっていった。

そしてそれは、しばらくして確信へと変わった。

一ヶ月前、海鳴市よりさほど離れていない峠の谷に、赤星勇吾の愛車が落ちていたと、警察から連絡が入ったのである。

 

「二人は死んだ」

 

いつしか、そんな絶望的な噂が、美由希達の通う学校で広まっていった。

 

 

 

 

 

「……そろそろ、行こっか」

 

不意に、桃子が言った。

墓前の前で佇んでいた美由希は、「うん」と答えて立ち上がる。

 

「今日の晩御飯はレンが作るんだよね?」

「うん。たしかそうだったと思う」

「美由希も早く料理できるようにならないとね〜」

「うぅぅ、頑張ります」

 

笑い合いながら、2人はその場に漂う嫌な空気を払拭すべく、歩き出す。

しかし、所詮それは気休めでしかないのかもしれない。

2人の目尻には、涙の流れた跡が、はっきりと残っていたのだから……。

 

 

 

 

 

――現在・海鳴市、とある廃ビル――

 

 

 

 

 

70年代まで続いた団地マンション建設ブームのおりに建設されたそこは、近所の子供達からは『お化けマンション』と親しまれ、秘密基地となっている建物だった。

工事半ばで建設が中止されたのだろう。

剥き出しのコンクリートの上に、彼は居た。

全身黒尽くめの、長身の青年。

傍らには黒塗りのバイク……ホンダXR250ブラックバージョンと、スポーツバッグが置かれている。

不意に、青年は背後に気配を感じ、振り向いた。

 

「……貴方ですか」

 

青年はそれ(・・)の姿を確認すると、ふっと安心したように穏やかな表情を浮かべる。

 

「何の用です?」

「そろそろ出番だ」

「……」

 

にべもなく告げられたその言葉に、青年の顔が僅かに曇る。

 

「『虎』と『鳥』が目覚めた。残るは『亀』と……」

「『龍』ですね」

「ああ。戦いの日は、近いぞ」

 

表情を落としたまま青年は、暗い天井を見上げて、言う。

 

「一度は死んだはずのこの身、それを助けてくれた貴方には感謝しています。……だから戦いますよ、貴方のために。それからこの街のみんなのために」

 

青年の解答に、それは満足げに頷いて、消えた。

比喩ではない。

文字通り、消えたのである。

 

「…………」

 

青年は無言でそれが居た空間を見詰めると、おもむろにスポーツバッグから2本の、棒のような物を取り出す。

青年は静かに構えを取ると、棒を振るった。

僅かな照明が、銀色の刃に反射して幻想的な空間を演出する。

やがて一通りの型を終えると、2本のうちの1本……否、1振りを手に取り、今度はそれを見詰める。

 

「……また、お前の世話になりそうだ」

 

青年は静かに、呟く。

 

「頼むぞ、『八景』……」

 

鈍く輝く刀身を撫でながら、青年は手にした小太刀に頼もしげな眼差しを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新番組登場!

 

それは突然の出来事だった。

爆発、炎上する街。

蘇える強大な敵。

そして、現われた漆黒の青年!

 

「『龍』……貴様らだけは……許さん!」

 

新番組

Heroes of Heart

第一話「復活」

 

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

 

Heroes of Heartプロローグ、お読みいただき有り難うございます。

みなさん初めまして。新米作家のタハ乱暴です。

今回の作品が初めての作品なので、(まぁ、どっちにしろ)かなり稚拙かつ内容もつまらないものですが、最後までお付き合い願いたいなぁ〜などと、空想しております。

この作品を読んでくださった全ての皆様と、このような駄文を載せていただいたPAINWESTの皆様、そしてこの話をこちらのサイトに送るきっかけを作ったわが同志に最大限の感謝を籠めて。






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