※本作は永遠のアセリアAnotherの番外編短編小説です。
アセリアAnother本編ではありえない話を、オリ主桜坂柳也とヒロインのカップリングで進行させていきます。
なので、そういった話がお嫌いな方……原作キャラがほとんど活躍しねぇぞ。どういうことだゴラァ!? な、人は、今すぐバック・プリーズ。
そうじゃない方は、稚拙な文章ではありますが、しばし目線をお留めいただければ幸いです。
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あ、あと本作はあくまで番外編なので、時系列は基本とんでもないことになっています。
なので、その辺りもよろしくお願いします。
桜坂柳也の一日は、彼が日課とする午前六時からの早朝ランニングによって本格的に始動する。
しかしその日、柳也は午前七時半という現時点において、ベッドの中から体を起き上がれずにいた。
別段、病気を患ってしまったわけではない。かといってベッドから這い出せないほどの怪我を負ったわけでもない。いや、怪我を負うこと自体は軍人の手前、日常茶飯事だし、たしかに、二日前にも酷い大怪我を負った。しかしその怪我自体はエスペリアが治療に当たってくれたこともあり、すでに完治している。
柳也がベッドから起き上がれない理由、それは、彼がベッドから這い出ようとした際には、その行動を阻むよう命令を受けた、刺客が送り込まれたためだ。
刺客の名はアセリア、刺客を雇った者の名を、エスペリアという。
「あ、あの〜……アセリアさん? 僕、そろそろ軽めの運動とかしたいなぁ〜って、思ったりしちゃったりしているんですが……駄目?」
「ん。駄目だ。大人しくしていろ」
ベッドの上でご機嫌取りの愛想笑いを浮かべつつ、柳也はわざわざ自室から椅子を持ち込んでベッドの隣に座るアセリアに声をかけた。
感情を捉えさせない無表情を標準装備した青スピリットの少女は、しかし、三度の飯よりも戦いが好きで、剣術が大好きな青年の願いを一言の下に却下した。
相変わらず温情のないアセリアの返事に、ぐっ、と息を飲み込みながらも、柳也は再度愛想笑いを浮かべて、口を開く。
柳也が提案し、アセリアがそれを言葉短く却下する。青年がいつもの起床時間たる五時半に起きてから、すでに何回、何十回と繰り返されたやり取りだった。
アセリアがエスペリアより与えられた指令は、柳也を決してベッドから起き上がらせるな、というもの。性根が純粋で素直なアセリアはその言葉を額面通りに受け取り、忠実にその任を果たしていた。最初、「日課のランニングがしたいからそこをどいてくれ」という要求は、いまでは「軽い運動がしたいのでベッドから抜け出させてください。お願いしますアセリア様」にまで、質が下がっている。
交渉とは、下の者が上の者に対して少しでも有利な条件を引き出す戦いに他ならない。
しかし、すでにアセリアと二時間以上交渉を続けている柳也は、いまや有利な条件など頭の外に放り出し、恥も外聞もかなぐり捨てて、目の前の少女に懇願していた。
ベッドの外に出してくれ。これでは拷問も同然ではないか。
普段の運動量が激しい柳也だけに、軽い運動どころか寝台から起き上がれない状況というのは、まさに拷問以外の何物でもなかった。
「……くっ! こうなったら強行突破だ!」
「駄目」
ベッドから無理矢理飛び出して、ドアの前まで駆け寄った柳也は、襟首に冷たい感触を覚えてその後の動作を封じられる。
冷たいだけでなく、硬質感を伴う感触は、今日だけですでに四度体感した〈存在〉の刀身部分のそれだ。
柳也は、がっくり、うな垂れる。
【諦めろ、主よ。この青の妖精は思いのほか強情だ】
――チクショー。いったい俺が何をしたっていうんだ!?
【どの口がそれを言いますか……】
自分の置かれた理不尽な状況に、柳也は胸の内で文句をこぼす。
そんな彼に、〈戦友〉は呆れたように呟いた。
【二日前、無茶をして全身に三度近い火傷を負ったのはどなたでしたっけ?】
「リュウヤは怪我人。だから、無理に動いたら駄目」
奇しくも、〈戦友〉とアセリアの声が重なった。
相棒の永遠神剣の声はアセリアには聞こえないはずだから、物凄い偶然の一致だ。
「だからその怪我はもう完治してるんだって! エスペリアからもお墨つき」
【そのエスペリアが、まだ無理をしてはいけない、って言ったんじゃないですか】
「そのエスペリアが、わたしに頼んだ。リュウヤがベッドから抜け出さないよう、見張りをしろ、って」
また、〈戦友〉とアセリアの声が重なった。
相棒の永遠神剣の声は青スピリットの少女には聞こえていない。それなのに偶然の一致が二度続くというのは、確率統計学への挑戦だろうか。
「……それに、リュウヤが怪我をしたのはわたしのせいだから」
アセリアはいつものように無表情に言った。呟いた言葉には、どこか冷たい響きが含まれていた。
柳也はそれまでの不満げな態度を改めて、真顔でアセリアを見た。
ラピスラズリの原石を溶かし込んだかのような深い藍色の瞳には、一見すると何の感情も浮かんでいないように思える。
しかし実際は、複雑に混ざり合った感情によって、彼女の水面は揺れていた。起きてしまった事態に対する後悔と、己の不注意に対する憤り、そして桜坂柳也に対する罪悪感によって。
「だから、リュウヤの面倒はわたしが看る」
耳朶を撫でるアセリアの声は美しく、透明で、優しい。 それだけに彼女の呟きは、たとえそれがどんな性質を孕んだものであれ、無視することが出来ない。
アセリアの呟きに胸が締め付けられる思いを感じながら、柳也は、どうしてこんなことになってしまったのか、とベッドに縛り付けられる原因となった事件を思い出した。
永遠のアセリア
-The Spirit of Eternity Sword Another Story “Twin Edge of Protection”-
番外編 Episode01「カムチャッカ半島の目覚め ――アセリアルート――」
テロリスト。英語のテラー(恐怖)を語源とする政治上の暴力主義者達は、有限世界においても存在する。
多くの場合、彼らの主要な武器は製造と調達が容易な棒や投石器などだが、組織の規模によっては、剣や槍、はては弓矢などの強力な武器で武装しているグループもいる。その中でもとりわけ凶悪なのがスピリット・テロリストと呼ばれる輩で、文字通りスピリットで武装しているテロリスト集団だ。
〈紅の旅団〉は、現ラキオス王国の政策に反対する組織で、武闘派のスピリット・テロリストだった。
王国政府が十年以上も追い続けている狡猾な組織で、スピリットを最低三体保有しているとされる。この三体という数字は決して少ない数ではなく、スピリットは人間の兵士の何十人、何百人分に匹敵するから、侮れる戦力ではない。
また、スピリット以外も強力で、コストのかかる剣や槍、弓矢を百単位で製造・調達出来るだけの経済力と技術力を持ち、機動力や情報戦能力など、総合的な組織力に優れるグループだった。構成員の数は推定で三百人弱。ラキオスでも最大規模のテロリスト集団だ。
この〈紅の旅団〉の秘密アジトの一つが、リクディウスの森北東部に所在している、との情報を得たラキオス・スピリット隊は、国王より直ちに森の捜索を命じられた。
件の秘密アジトに、貴重なスピリット戦力が配備されているかどうかは分からない。しかし、もしスピリットがいるとしたら、人間の兵士ではどうすることも出来ない。スピリットに対してはスピリットをぶつけるのが、有限世界の常識だ。必然、捜索隊の人員にはスピリットが選抜され、また妖精に対してだけでなく、人間に対しても有効なエトランジェにも声がかかった。
結果から先にいえば、〈紅の旅団〉の秘密アジトは確かに森の北東部に所在し、そこには三十名ほどの武装工作員と、スピリットが一体待機していた。
森に入る木こりや猟師達の休憩所としても機能していた切妻屋根の小屋には、密かに掘られた広大な地下空間へ通じる秘密の入口があり、〈紅の旅団〉の工作員達は、そこに武器を集積してたのだ。
柳也と悠人、アセリア、エスペリア、そしてオルファの五人は、作戦を立てて突入した。
まず柳也とオルファが殺傷能力を極力殺した神剣魔法で相手を牽制し、他の三人が素早く突入。悠人が人間の工作員に対処し、アセリアが敵スピリットを対応、残るエスペリアが集積された武器の確保に努める。続いて柳也とオルファも突入。いくら広いといっても所詮は地下空間、乱戦は必至で、そうなるとかえって人数の少ないこちらが有利となる。混乱を上手く利用して一気に敵を制圧する、というのが、柳也の立てた作戦だった。
地下空間の戦いは終始柳也達が優勢の立場で推移した。
敵は弓や槍も持っていたが、狭い空間での乱戦時に、間合いの広い武器はかえって役に立たない。また、敵のスピリットが神剣魔法を得意とする赤スピリットだったこともあって、対するアセリアとの相性は抜群だった。
柳也達は次々と旅団の戦力を奪い、アセリアも二分ほどの硬直状態が続いた後、横薙ぎに放たれた斬撃を超低空飛行で回避し、背後に回り込んで一刀両断、という形で、赤スピリットを撃破した。
問題はこの時起こった。
〈赤の旅団〉はラキオス最大規模のテロリストで、その装備は充実している。集積された彼らの武器の中にエーテル火薬が含まれていることは、あらかじめ予想されたことだった。
しかし、さしもの柳也達も、たかだか非合法テロリスト集団が、有限世界ではグラム単位で一万ルシルにもなるエーテル火薬を、二十キロも保有しているとは思わなかった。そしてそのうちの十キログラムを、件の赤スピリットが自爆用に身に着け、しかもその起爆装置を、他ならぬ彼女が握っているとは、誰も思わなかった。
勿論、服の内側を見て取れない柳也達に、赤スピリットが身に付けているエーテル火薬の、正確な量は分からない。
だが、自爆攻撃を試みようとするその動きから判じても、身に付けているエーテル火薬は、青スピリット一人を十分に吹き飛ばせるだけの威力だろう。
「アセリア――――――ッ!」
柳也は咄嗟にアセリアのもとへひた走った。
他のみなもほぼ同時に駆け出した。
起爆装置は柳也もよく知る導火線を使った物。火薬に着火する前に縄を切断すれば、起爆は防ぐことが出来る。
しかし、アセリアにとってエーテル火薬による自爆攻撃は予想外だったらしく、導火線を切断しようとする行動は、一瞬遅れてしまう。
そしてその一瞬の間に、油の染みこんだ縄についた火は、断末魔の赤スピリットの服の中へと忍び入った。
回避の運動は、間に合いそうにない。
エスペリアや悠人といった、スピリット隊でも最強の盾を持つ二人の支援も、間に合わない。
アセリアから最も近い位置で戦っていた柳也だけが、間に合った。
「〈戦友〉、オーラフォトンバリア、全力展開ッ!」
【出力全開。オーラフォトンバリア、展開しますッ】
柳也の叫びに、〈戦友〉は何も言うことなく応じた。
アセリアをかばうように、赤スピリットとの間に割り込む。
前面に、オーラフォトンバリアを展開した。
エルスサーオでの戦いで新たに得た相棒のバリアは、悠人やエスペリアのそれに比べると見劣りするものの、青スピリットのウォーターシールドなどに比べれば格段の防御性能を誇る。
轟音は、爆発という現象の後に続いた。
目の前が、オレンジ色の炎に包まれた。
猛烈に襲い掛かるエーテルの炎と高圧ガスが、精霊光の防壁を叩いた。
質量を持たないオーラの壁が、ぴしぴし、と音を立てて軋む。
壁を壊されてなるものか、と柳也はオーラフォトンの操作に全力を注いだ。
「リュウヤ!」
背後からアセリアの声。
ついで、右の脇腹に痛み。
見ると、まだ無力化し終えていなかった工作員の放った投げナイフが、腹部に命中していた。いかなエトランジェの防御も、意識を向けていない方向に対しては無意味だ。
火薬のエネルギーが尽きたか、爆発の勢いが弱まり始めた。
脇腹の痛みに、つい意識がそちらに向かってしまう。
その直後、小さな亀裂からダムが決壊するかのように、オーラフォトンの壁が、砕け飛んだ。
「しまっ――――――!」
最後の方は、声にならなかった。
火砕流に飲み込まれた柳也は、そのまま意識を失ってしまった。
次に意識を取り戻した時、柳也は第一詰め所のベッドの上にいた。
時計を見ると、最後に記憶からある時間より十時間が経っていた。
目を覚ました彼は、その時からすでに隣に座っていたアセリアより、自分が戦闘不能になった後の事件の顛末や、自分が負った怪我の程度など説明を受けた。
曰く、〈紅の旅団〉の地下アジトはあの後崩落し、二度と使い物にならなくなったという。その場にいた三十人ものテロリストは全員無事に逮捕され、現在、取調べを受けているらしい。突入部隊は自分以外に怪我人なく、唯一の怪我人たる己も、すでにエスペリアによって治療済みだという。
「そっか……なんていか、最後の方はお荷物だったんだな、俺」
柳也は自嘲気味に笑うと、アセリアを見た。
「ところで、なんでアセリアはここに?」
「エスペリアに言われた」
アセリアは相変わらずの無表情で呟いた。
肝心な部分が欠落している。エスペリアに言われた? いったい何を?
「リュウヤのことを看ていろ、って」
「ああ。看病してくれ、ってことか。でも、怪我自体はエスペリアが治療してくれたんだろう? だったら看病の必要なんて……」
「あと、『このところリュウヤさまは働きすぎだから、無理矢理にでも休んでもらうように、ベッドから抜け出さないよう見張っていて』って」
アセリアはエスペリアの口調を真似て言った。正直、あまり似ていない。
「……それは、訓練とか、全部休めってことか?」
「ん」
「エスペリアの気遣いは嬉しいんだけどなぁ……」
柳也は溜め息をついた。
「抜け出さないように、って俺は檻の中の猛獣かっての」
【正直申し上げて、さして変わらぬと思うのだが、この剣術馬鹿?】
【そうですねぇ。ご主人様は自分が楽しいと思うといくらでも無理してしまう、バトル・ジャンキーですから】
「お前ら、後で締めるぞ」
「……締める?」
「――っと、いやぁ、こっちの話」
柳也は苦笑を浮かべつつ、アセリアに言う。
「……看病と言われてもなぁ、正直、俺はどうもしてないぞ」
エスペリア・緑スピリットは優れた回復魔法の使い手だ。彼女の治療を受けた身体は、意識を失う前と変わらぬ運動能力を示してくれている。強いて不調を上げるならば、身体の節々が少し痛いくらいだが、これは十時間におよぶ睡眠と、それに伴う食料不摂取による、ヒアルロン酸の不足が原因だろう。
「アセリアの手を煩わせるほどじゃあ」
「ん。でも、これはわたしの仕事」
アセリアは柳也の言葉に一度は頷いたものの、かぶりを振って言った。
「リュウヤがこんなことになったのは、わたしの責任だから」
いまにして思い返せば、あれは反則だ、と柳也は思う。
普段、自分に対しても、他人に対しても無関心なアセリアの口から飛び出した、「責任」という言葉。
重い言葉だ。あれを持ち出されては、柳也にその申し出を断る術はなかった。
――弱い男だな、俺は。
最近すっかり見慣れた天井を見上げながら、柳也は自嘲気味に冷笑を浮かべる。
アセリアの発言などつっぱのけてしまえば良かったのだ。そうすれば、こんな不自由な思いはしなくて済んだ。
鍛錬をしたくても出来ない。書類仕事に取り掛かろうと思っても、椅子にさえ座らせてくれない。お互いが寝る時と、アセリアが食事の時と、トイレに行っている間と、風呂に入っている時間以外、常に監視態勢にある。これが不自由でなくて、なんと言おう。
こうなることは、ちょっとでもアセリアの性格を知っていれば容易に想像できることだった。
それなのに、自分はアセリアを受け入れた。
「責任」と口ずさんだアセリアが、いまにも消えてしまいそうなくらい、儚げに見えてしまったから。
そんなことは実際にありえないのに、炎の中に消えていった両親と姿が重なって見えてしまったから。少しでも手元に置いておきたくて、受け入れてしまった。
「失敗したよなぁ……」
三度の飯より大好きな剣術を封じられた。
その三度の飯についても、エスペリアの指示か、現在絶賛食事制限中だ。まぁ、病み上がりと言えなくもない状態だから、仕方がないといえばそれまでだが。
「チクショー。欲求不満だぁ……」
柳也は思わず日本語で呟いた。
なお現在、アセリアは部屋にいない。柳也の朝食を取りに行っているためだ。
この隙に部屋を出るという手もあるが……昨日、実行して懲りた。
アセリアだけでなく、怒り顔のエスペリアと、何やら楽しそうだからという理由で自分を責め立てるオルファの三人を敵に回しては、さしもの直心影流も役に立たない。特に、オルファの「甲斐性なしー」という発言。本人は意味を理解した上で言っているのか危うかったが、無邪気な笑顔とともに言われた日には、思わず寝込んでしまった。ちなみに、昨日一日はそれでずっと寝て過ごした。
廊下の方から足音が聞こえた。
おかげさまで一昨日、昨日、今日と三日間、ほとんど寝て過ごしているから、体力が有り余っている。結果的に最高のコンディションを保っているエトランジェの五感は、鋭敏にアセリアの足音を捉えていた。
しばしの沈黙。
ついで、ノックもせずにドアが開く。
「ん。朝食を持ってきた」
お盆を両手にアセリアが入室してきた。
この三日間ですっかり定位置になりつつあるベッドの隣の椅子に座る。
机を引いて、そこにお盆を載せた。本日の朝食は、鰯の小鍋立て。朝から凝ったものを作るなぁ、と感心しながら、柳也は漂ってくる生姜の匂いに早くも唾液を口の中に溜め込む。
柳也はゆっくりと身体を起こした。
お盆の上を見れば、そこには木製の箸が一膳。洋風料理が主流のラキオスで、以前悠人と柳也がフォークやナイフよりこちらの方が使いやすいと試しに手作りしてみた箸だった。物珍しがったオルファ達に使い方を教えたところ、いちばん上手かったのがアセリアだった。
アセリアは箸を手に取ると、柳也に渡さず、そのまま生姜の出し汁で煮立った小鰯を一尾掴んだ。
「それじゃあ、口を開けろ」
下手な日本人より上手いのではないか、と思わせる箸裁きを披露したアセリアが言った。
直訳すれば、「はい、あ〜ん」して。
どこでそんな知識を仕入れてきたのか、女が男を看病する際はこうするのが礼儀なんだ、と自信満々に言ってみせたアセリアの顔は、二日前が初見だが、似顔絵に描き出せる程度には鮮明に記憶している。
「いつも済まないねぇ……」
「それは言わない約束だ」
……本当にもう、どこで仕入れてきたのか。まぁ、種明かしをすれば他ならぬ柳也が自分で教えたのだが。ハイペリアの文化だということですっかり気に入ってしまった。
ごほごほ、と演技の咳をこぼしながら、柳也は口を開ける。
幼き日、古の武人加藤清正に習って拳骨を入れられるよう訓練した大口に、アセリアさん、小鰯をそのまま投入。
「うお熱ちゃぁっ!」
舌の上が火事になった。
アセリアは驚いたらしく、僅かに目を見開く。いつもより二ミリほど瞳が大きかった。
「……大丈夫か?」
「そう思うのなら、次は冷ましてから食べさせてね?」
「わかった。……アイスバニッシャー」
「や。そこまで冷やさんでもいいから」
目の前で冷凍食品が出来そうなのをなんとか阻止し、柳也は再び口を開ける。
「ふー…ふー……ん。これくらいなら」
「あーん……むぐ。美味い」
さすがはエスペリアの作った料理だ。小骨の一本一本を抜いた鰯は生姜の出汁をたっぷり含んでいて美味い。欲を言えば白いご飯を自分の手で思いっきりかき込みたいところだが、それは目の前の彼女が許してくれそうになかった。
「……ふぅ。ご馳走様でした」
文字通り口を動かすだけの食事を終えて、柳也はようやく手を動かした。
といっても手を合わせるだけの簡単な動作。しかし万感の想いを篭めて、その言葉を口にする。孤児院育ちで貧乏暮らしの長い柳也にとって、誰かが作ってくれた手料理というのは、それだけで価値あるものだった。
食事が終わると、柳也にはもうやることがなくなってしまう。
ベッドに横になって寝て過ごすか。それとも、せめて柄を握って手の内を練るか。どちらにしても、ベッドの上で過ごすのは変わりないが。
「……寝るか」
古の剣士達は、長い患いで起きることが叶わない時や、寝る暇も惜しいほど稽古に励みたい時などには、床の中で柄だけを握り、手の内を練るのが常だという。とはいえ、自分は剣術好きだが、そこまで剣に身を捧げてはいない。
【嘘を申すな。この剣術馬鹿が】
――おきやがれ。このロリコン。
胸の内でこぼしながら、毛布を被って目を閉じた。
上から、アセリアの声。
「寝るのか?」
「ああ」
「そうか」
言葉短く言って、なにやらもぞもぞとした動作の音。若干の衣擦れ。
いったい何をやっているのか、とチラリと薄く瞼を開けると、
「……あのぅ、アセリアさん? 何をやっているんだい君はベイベー赤ちゃん?」
「……ん。一緒に寝ようとしている」
アセリアは柳也の毛布に手をかけて、いまにも彼のベッドに横になろうとしていた。
食事の最中ですら身に付けていた篭手をはずした手で、ベッドの真ん中に横たわっている彼に、場所を開けるようジェスチャー。
無表情に言ってみせた少女の態度に、柳也は頭を抱えたくなってしまう。
「……お父さん、育て方間違えたかなぁ」
「ん? おかしなことを言う。わたしはリュウヤの娘じゃない」
「いやまぁ、そうなんだけどさぁ。……なんなんだろう? こう、胸の奥から込み上げてくる……悲しさ? 寂しさ? 言葉では形容し難いなぁ」
柳也は乾いた笑みをもらしつつ、続けた。
「っていうか、なんでそんな発想に?」
「前に、エスペリアに聞いた。人間の男は、眠る時に隣に女の人がいると喜ぶ、って」
「Oh ! エスペリア!」
柳也は思わず天を仰いだ。
ブナの木だろうか。不ぞろいな木目柄の天井に、清々しい笑みを浮かべたエスペリアの顔が見えた。意味もなく腹が立った。
柳也は米神を揉みながらアセリアを見る。
「なぁ、アセリア? この場合の男の人と女の人は、お互い好き合っている同士なのが、一般的なんだぞ?」
「知っている。エスペリアもそう言ってた」
アセリアはきっぱりと言い切って、
「わたしはリュウヤのこと、好きだぞ?」
と、心底不思議そうな顔で言った。顔、といっても相変わらずの無表情・無感情だが、なんだかんだで付き合いも長い。それくらいの感情の機微は分かる。
アセリアのことだ。おそらく、一緒に寝る、という言葉に、自分の心のケアをしているという以外の他意はない。しかし、それにしても……
「わたしはエスペリアのように料理は出来ないし、オルファのように言葉でリュウヤを楽しませることも出来ない。わたしに出来るのはこれくらいだ」
「アセリア……」
「それとも、リュウヤはわたしのことが嫌いなのか?」
「……おーけー。俺もアセリアのことは大好きだよー」
「そうか」
微妙に嬉しそうな顔をするアセリア。よもや計算ずくなのか。もしそうだとしたら、目の前の少女は稀代の悪女だ。溺れてはいけないと分かっていても、溺れてしまう。近付いてはいけない、と分かっていても、彼女という底なし沼に飛び込んでしまう。
「……馬鹿だよなぁ、男って」
「リュウヤ、もう少し、そっちにいってほしい」
「あい、あい」
溜め息とともに呟いた囁きは、アセリアの言葉によってかき消される。
言われた通りに移動すると、隣に温もり。鼻腔の嗅覚細胞に、女の匂いが触れた。リリィ・フェンネス以外の女とこうも急接近するのは久しぶりのことだ。もっとも、さすがにアセリア相手に欲情は出来ないが。
――よくも悪くも、純粋なんだよなぁ。
すぐそこにアセリアの目線を感じつつ、柳也は溜め息をつく。
アセリア・青スピリットという少女は、純粋な娘で、基本的に心は子どもなのだ。子どもだから男の自分と一緒のベッドで寝ることに対しても心理的な抵抗がない。子どもだから、自分に対して「好きだ」と、平然と言うことが出来る。
男と女、という以前に、大人と子どもなのだ。
変な考えを抱いてしまうのは、大人の自分の、悪い癖だろう。変に気にしていた自分が馬鹿みたいだった。
「? リュウヤ、寝ないのか?」
耳元でアセリアの声。
いつもよりずっと近く、ずっと大きな声が、耳膜を叩く。
「ああ。寝るよ。すぐ寝るって」
呟いて、柳也は瞼を閉じた。
彼女も食べたらしい生姜の匂いを感じながら、彼は溜め息をついた。
桜坂柳也が目を閉じてから、時間にして十数分、飽きもせずに彼の横顔を眺めていると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
どうやら眠ってしまったらしい。
頬をつついてみても、むにゃむにゃ、言葉にならない声を吐き出すだけで、何の反応もない。
「……」
柳也が完全に寝てしまったのを確認して、アセリアは改めて男の寝顔をじっくり眺めた。
同僚のエトランジェとは初めて出会った日からずいぶんな時間が経っているが、こうも間近で彼の顔を見るのは初めてことだ。もう一人のエトランジェと比べるといくぶん劣るが、なかなか精悍な面構えをしている。いまは眠っているため無表情だが、時と場合によって、ころころ、と変わるこの顔を、彼女は意外と気に入っていた。
アセリアが桜坂柳也という男に興味を持ったそもそもの理由は、彼が異世界からやって来たエトランジェだからだった。
かつてこの世界に光とともに降臨し、大陸をマナで満たしたという、ハイペリアからのエトランジェ。光に満ち、マナに満ち、死んだ人間のみがそこへ行くことを許されている伝説の理想郷。
物心ついた時から、アセリアは創世記に記されたハイペリアに興味を抱いていた。スピリットの身では叶わぬと知りながらも、出来ることなら行ってみたいと思うし、せめて知りたいと思った。柳也達がそのハイペリアからやって来たかもしれないと知った時、顔には出さなかったが、アセリアはにわかに興奮した。
いったいどんな世界なのだろう。どんな人達が暮らしているのだろう。
しかし自分は生まれつきの口下手で、自分の意志や考えを相手に上手く伝えられない。ハイペリアのことを訊きたくても、思ったことを聞き出せない。
そこで彼女は、ハイペリアからやって来たらしいエトランジェの青年達を観察することにした。悠人と柳也の二人を観察することで、少しでもハイペリアの情報を得ようと思ったのだ。
以来、アセリアは努めて二人のうちのどちらかと一緒にいるようにし、やがて特に柳也を注意して観るようになった。
悠人よりも柳也の方が口数が多く、なにより女好きだったからだ。女の自分の前で、彼はよく自分の世界のことを語ってくれた。時に楽しそうに、時に懐かしそうに、自分と、自分の周りにいた人達と、それを取り巻く世界の情景は、彼女にとって実に興味深い内容だった。
柳也が面白おかしく語ってくれたこともあるだろう。アセリアは以前にも増してハイペリアのことを知りたい、と思うようになった。
また同時に、ハイペリアからのエトランジェ、リュウヤのことを、もっと知りたいと思うようになった。
どうしてそう考えるようになったのかは分からない。
そして彼のことを知れば知るほど、一緒の時間を過ごせば過ごすほど、アセリアの中で桜坂柳也という男の存在が大きくなっていった。
女好きで、剣術好きで、戦うことが大好きな男。子どものように目を輝かせて笑うこともあれば、こちらがぞっとするような目つきで冷たい計算をめぐらせることもある。そして、壊滅的な音痴。
いつしかハイペリアへの興味は柳也への関心へと変わり始め、アセリアは彼のことを知るために、一緒にいることが多くなった。
柳也と同じものを見て、同じものを食べて、剣を交わした。
彼が笑っていると自分もなんとなく嬉しく、彼と立ち会うと不思議と楽しい気分になった。任務で柳也と別行動を取らねばならなくなった時は、たまらなく寂しい気持ちになった。
柳也が作戦中に怪我を負ったのは、そんな日々を送っている最中のことだった。
与えられた任務は決して容易なものでなく、相対した赤スピリットは正規の訓練を受けていないとはいえかなりの実力者だった。
作戦を遂行するに当たって油断はなかったと、はっきり断言出来る。
ただ、想定していなかっただけ。自爆覚悟の彼女が、エーテル火薬を点火するなど、思いもよらなかっただけ。
結果的に柳也は深手を負い、意識を失ってしまった。
それも、自分を守るために取った行動の末に、だ。
柳也が炎に飲み込まれた直後、アセリアは、彼女にしては珍しく取り乱してしまった。
全身を不完全燃焼で黒く染めて倒れた柳也は、目を閉じたまま意識はなく、穴という穴から血を吐き、息も絶え絶えだった。
他ならぬ男の身体から発せられた異臭に包まれながら、アセリアは彼に縋りついた。
身体を揺さぶり、必死に彼の名を呼んだ。
倒れ付した柳也の身体からは、金色のマナの霧が上り始めていたからだ。
アセリアは瞳から大粒の涙を溢れさせ、背後の悠人達に懇願した。
「ユートでもいい、エスペリアでもいい! 誰でもいいから、リュウヤを助けてぇッ!!」
今にして思えば、なぜ、あの時、涙を流したのかは、自分でもよく分からない。
これまでにも戦友の死を目の当たりにしたことは何度もあったし、その度に悲しいと思った。
しかし、人の死に際を前にして涙を流したのは初めての経験だった。
ただ、悲しくて、そして恐いと思った。
このままリュウヤが消えてしまうのが、ただただ恐ろしかった。
「バカ剣! 力を貸せ。お前の望むもの、なんだってくれてやる! だから…だから、柳也を!!」
「〈献身〉、お願い力を貸して。リュウヤさまを助けてあげて」
リュウヤを包み込む優しい緑マナの光と、温かい加護のオーラ。
金色の霧の流出が収まり、黒くなった表皮がはがれて、柳也の肌が見えてくる。
熱い。
これ以上熱い、柳也の身体。
アセリアは必死に抱き締め続け、祈り続けた。
柳也が助かるように。それだけを、祈り続けた。
そして柳也は目を覚ました。
目を覚ました時の第一声は、
「カムチャッカ半島!」
だった。
柳也が目を覚ました時、アセリアは泣きたいくらい嬉しかった。
しかし、その喜びを表す術を持たないアセリアは、一言だけ、
「よかった」
と、呟いた。
この時、後ろで悠人が、「あ、アセリアが笑顔を……!?」と、言っていたが、いくらなんでも失礼だと思った。
柳也が目を覚ましてから、アセリアは彼の世話をするようになった。エスペリアに言われたからでもあるが、なにより彼のことが心配だったからだ。力になってあげたい、と思ったからだ。
治療に当たったエスペリアによると、柳也の身体は、火傷などの外傷こそ塞がったものの、内臓などの損傷はまだ完全には治っていないという。
それを聞いた柳也は、
「でも、外見は大丈夫なんだろう? だったら問題なし。軽い運動でリハビリしていけばいいさ!」
と、笑って言った。
エスペリアも思いの他元気そうな柳也の様子に、当初は笑顔を浮かべていたが、やがて柳也の考えるリハビリ用の軽い運動の正体が、
「とりあえず、二十キロばかり走ってくるわ」
だと、判明すると、ベッドからの起き上がり禁止令が出された。
柳也は「横暴だー」と叫んでいたが、アセリアもこれは仕方がないと思った。
そうして始めた柳也の看病だったが、一日経ち、二日が経って、アセリアは自分が情けなくなった。
看病とは言うが、自分に出来ることといえば柳也がベッドから抜け出さないよう見張っていることと、料理の持ち運びくらいしかない。見張りは自分でなくとも出来ることだし、自分に料理は出来ない。料理を食べさせることにしても、少しでも自分の仕事が欲しくて柳也に頼み込んだ結果だ。
せめて辛い思いをしている彼を楽しませてやりたい、と思うが、自分に柳也を楽しくさせられるような話題はないし、芸もない。
自ら柳也の看病を買って出たのに、これでは役立たずも同然ではないか。
エスペリアに人間の男が喜ぶことを聞いたのも、少しでも柳也の役に立ちたいと思うゆえだ。
そうして教えられたのが、こうして横になって寝ることなのだが……。
――リュウヤ、あんまり楽しくない?
おかしい。
エスペリアの言によれば、「こうすれば大概の殿方は喜び勇んで野獣になりますよ」らしいのに。
やはりこの世界の人間の男と、ハイペリア人の男は、根本的に違うのか。
隣で眠る柳也の寝顔をよく見る。特別、この世界の人間の男と変わりはないように思えるが、どこが違うのだろう。
「…………」
実は、エスペリアから教えられた人間の男を喜ばせる方法は、もう一つあった。
ただ、これは相手が起きていることが前提の行為だという。
眠っていても効果があるのか。
好奇心にかられたアセリアは、一人上体を起こして、柳也の寝顔を見下ろした。
大振りな目。太い眉。筋の通った鼻。薄い唇。顔を構成するパーツの一つ一つに目線を落とし、やがて一箇所だけを注視する。
ここに、自分のそれを、重ねる。
たったそれだけの行為。
何が楽しいのか、何が嬉しいのか。
まったく想像がつかないが、試してみる価値はあるだろう。
そう思って動かした顔は、なぜか、頬が熱かった。
息苦しい。
最初にそう感じたのは、深い眠りの奥底にある深層意識での現象。
何かで口が塞がれている。
次にそう感じたのは、夢の中に浮上した表層意識での現象。
生命の危機と呼ぶほどではないが、奇妙な息苦しさを感じた柳也は、ゆっくりと瞼を開いた。
「!?」
「なん……だ?」
口を開き、喉を震わせて発音。
声帯は正常に機能している。
いつの間にか、息苦しさも消えていた。
鼻も、口も、立派に呼吸器官としての役割を果たしている。
「ん〜〜……いったい何が?」
隣で寝ているはずのアセリアに目線を落とした。
アセリアは何事もなかったかのように、すやすや、と寝息を立てている。若干、寝息の間隔が短いように思えるが、個人差のレベルで済ませられる範囲だ。
「……気のせいか」
そう判断した柳也は、一つあくびをしてから、もう一度毛布を被り直そうとして、ふと、隣で眠るアセリアの肩に、毛布がかかっていないことに気付いた。
柳也はアセリアにも毛布がかかるよう位置を調整しながら、
「……ありがとな、アセリア」
と、少女の耳元でそっと囁いた。
その際、アセリアの耳たぶが真っ赤に染まっていたのは、寝惚け眼の自分の気のせいだろう。
柳也は再び瞼を閉じると、夢の世界へと旅立った。
おまけ
身体の内側についてもエスペリアから完治の太鼓判を貰ったその日、柳也はそのまま彼女をどついた。
「おみゃあはアセリアに何を教えとりゃあすか!?」
なぜか聖ヨト語の翻訳が名古屋訛りになっているが、気にしない方針でいこう。
「何を……って、何をですか?」
「とぼけるんじゃにゃあよ。ネタはあがっとるんじゃいワレェ!?」
柳也はここ数日間のアセリアの行動について、エスペリアに説明した。
「いくらなんでも、一緒に寝る、はやりすぎだ。嫁入り前の娘さんに、何をやらせているか」
「でも、一緒に寝たんですよね?」
「そりゃあな。だが、誓って言うが、やましいことは何一つなかったぞ」
オルファ曰く、自分は甲斐性なしらしいし。
「見た目はああでも、アセリアは基本、子どもなんだから。素直な分、迂闊なことを教えると、間違った方向に覚えるだろうが」
「それはそうですけど……でも、一緒に寝たんですよね?」
「……さっきから、やけにそこにこだわるな」
「……リュウヤさま、本物の馬鹿ですか?」
「な、なんだよ、いきなり」
突然、エスペリアの目線が冷たい感情を含んだ。
叱責しているのはこちらなのに、なぜか萎縮してしまう。
「いえ、何でもありません。いまのは口が滑っただけです。……ただリュウヤさま、これだけは言わせてください」
エスペリアはそう言って、自分の眼前で人指し指を立てると、きっぱりと言い切った。
「子どもでも、一緒に寝たいと思う相手は選びますよ?」
<あとがき>
タハ乱暴「今回は番外編なので、あとがきの相方はヒロインのアセリアに務めてもらおうと思います。読者の皆様、永遠のアセリアAnother番外編、お読みいただきありがとうございました!」
アセリア「ん。今回はわたしとリュウヤの話だ。楽しんでくれたなら嬉しい」
タハ乱暴「本作のコンセプトは、本編では味わえないような激甘なお話。ヒロイン、アセリアは、ご存知原作のメインヒロイン。というわけでタハ乱暴も力を篭めて書いたつもりですが……すみません。謝ります。だから石を投げないで!」
アセリア「どこが甘い?」
タハ乱暴「タハ乱暴の限界だね。甘いは書けるけど、激甘は無理」
アセリア「……たぶん、甘いですらない」
タハ乱暴「うぇぇ!?」
アセリア「……しょっぱい」
タハ乱暴「しょっぱい話なの、これ!?」
アセリア「番外編なんだから、もっと弾けた話にしてもよかった」
タハ乱暴「あ、あはは〜……あんまりぶっ飛んだ話は、ちょっと……ね? ほら、悠人に悪いし? 珍しいじゃん? ギャルゲーのエンディングであそこまで書くって?」
アセリア「……読者はきっと、『もっと弾けろよー、タハ乱暴』って、思っていた」
タハ乱暴「すみません。本当、申し訳ありません。でも、これがタハ乱暴の現時点の限界なんです。許してくださいプリーズ!」
アセリア「ユート、関係ない。単にお前の力不足」
タハ乱暴「ぐはぁ!」
アセリア「ところで、これはSSなのか? 短編なのか?」
タハ乱暴「んう? 字数的には原稿用紙三六枚分だから、短編の部類だねぇ?」
アセリア「なら、いつも書いている本編は?」
タハ乱暴「う〜ん、最新作のEPISODE:29が七七枚分……ってやべぇ! 文芸書一冊を原稿用紙三百枚としたら、俺、もう六冊以上書いている計算になる!」
アセリア「それなのに、話はまだ第二章前」
タハ乱暴「ぐっはぁっ!」
アセリア「……タハ乱暴を弄るのもそろそろ飽きた。この辺りでお開きにしよう」
タハ乱暴「そ、そうだね……永遠のアセリアAnother番外編、お読みいただきありがとうございました!」
アセリア「本編の方もよろしく」
タハ乱暴「ではでは〜」
今回は番外編という事で、アセリアがピックアップされたお話に。
美姫 「ほのぼのって感じね」
だな。アセリアが純粋だというのもあるけれど。
まあ、はっちゃけるのは本編でも見ているし、無理しなくても良いじゃないですかアセリアさん。
美姫 「あとがきに対して助け船を出すのってどうなのかしら」
助け合いは大事ですよ!
特にお前らみたいな突込みと称してとんでもない事をする奴と掛け合いをしている場合は特に!
美姫 「そこまで力説されてもね〜」
うお! 何て冷たい視線!
美姫 「はいはい、バカはそのぐらいにしておきなさい」
へーい。看病するアセリアのお話だったんだけれど、今後も番外編はあるのかな。
だとしたら、他のキャラのお話も見れると。
美姫 「何気に催促してるわね」
そそそ、そんな事はないですよ、うん。
美姫 「誤魔化したわね」
コホン! それじゃあ、本編も楽しみにしてますね〜。
美姫 「それじゃ〜ね〜」