――聖ヨト暦三三〇年、アソクの月、緑、いつつの日、昼。

 

『スピリット、エトランジェよ。報告せよ』

レスティーナ・ダイ・ラキオス女王の凛とした威厳のある声が、大広間に響いた。

アキラィス近辺での戦闘を終え、奪取された資料もすべて取り戻した柳也達は、一日をかけて首都へと帰還し、休む間も与えられず謁見の間に来るよう命じられた。

国王不在の上座には、昨日と同じくレスティーナとリリアナ、そして通産大臣のダグラスが控えており、空席の王座は無言の権力で下座の五人を見下ろしている。

『はい』

レスティーナに命じられ、エスペリアが任務の経過について詳細な報告を口頭で言う。どのみち後で正式な報告書の形にまとめる内容とはいえ、几帳面な性格のエスペリアらしく、王女に伝える情報は正確で、なにより漏れがなかった。

『やはり、その報告からするとバーンライトの兵であろうな。牽制のつもりだろう。さかしいことを……』

エスペリアから一通りの報告を聞き終えたレスティーナが眉をひそめる。

僅かに険を孕んだ表情ですら、レスティーナが浮かべるとそれにはどこか気品めいた雰囲気が漂っている。王族の血か、それとも彼女自身が醸し出す空気なのか。どちらにせよ、この若く聡明な王女は、並々ならぬ王者の風格を内に秘めているように、柳也は思った。

『今後はしばらく、ラースにスピリットを配置する』

『すると、我々もラースに?』

柳也は間髪入れずに口を挟んだ。

戦死した八名ものスピリットの代わりを用意するとなると、早急には難しいだろう。死んだ八名の代わりに、一騎当千のエトランジェやアセリア達がラースに回される可能性は高い。下手をすれば、佳織とますます離れ離れになってしまう可能性とてありうる。

『それは他のスピリットに担当させる』

レスティーナは小さく首を横に振った。

『お前たちには、他の作戦を行なわせる』

『はい』

『了解いたしました、殿下』

『殿下、さらにご報告いたしますと、敵の中にかなりの力を持ったものがいました。バーンライトだけで、あのスピリットを育てるのは困難かと』

柳也の言葉が終わるのを見計らって、エスペリアが言った。勿論、彼女の言う“あのスピリット”がセーラ・レッドスピリットであることは言うまでもない。

『……後ろ楯がいる、と。そう感じたか』

レスティーナは僅かに驚いたような表情を浮かべた。

エスペリアが頷く。

『はい。おそらくは……』

『ふむ……』

表情を引き締め、少し考え込むレスティーナ。その思案顔の奥にある心の中では、もしかしたらその後ろ楯の正体についてすでに検討がついているのかもしれない。

レスティーナは目線を下座に走らせると、ひざまずく水の妖精に目を留めた。

『アセリアよ』

『……ん』

王女に名を呼ばれたというのに、アセリアはいつもの無表情、いつもの返事だった。レスティーナに対する敬意は微塵も感じられない。ただ、名前を呼ばれたから淡々と返事をしただけ。そんな感じだ。

柳也はそんなアセリアの態度に呆れ半分、尊敬半分の念を抱きながら、レスティーナを見た。

意外にもレスティーナは特に気分を害した様子もなく、そのままアセリアに話しかけていた。どうやら王女も、アセリアの態度には慣れているらしい。いや、本来、臣下が取るべき態度でないのは明白だし、慣れですます王女も、それはそれでどうかと思うが…。

『お前は何か感じたか? そのスピリットに』

アセリアが最も剣に近い。

エスペリアが言っていた事を、王女もまたよく知っているようだ。だからこそ、アセリアを指名したのだろう。鋭利な刃物を思わせる美貌の持ち主だが、意外と部下のことをよく見るタイプの上司なのかもしれない。

『……つよいちから……』

アセリアはゆっくりとした口調で、いつもの抑揚のないトーンで応じた。

『でも、とても黒い』

『黒い力、か。だろうな』

妙に嘲るようなその口調に、柳也は思わず眉をひそめる。黒い力とはいったいどういう意味なのか。

しかし彼が疑問を口に出すよりも速く、レスティーナは言った。

『よい、アセリア』

『……ん』

顔を上げていたアセリアが再びひざまずき、王女は少し考え込むように瞑目する。

その閉ざされた瞳は、いったい何を映しているのか。また口に出して訊ねたい事が増えてしまったが、思索にふける王女の放つ気品には、それを許さぬ貫禄じみたものがあった。

やがて王女は瞠目すると、紫水晶の眼差しを下座に控える二人の少年に向けた。

『エトランジェよ』

『『ハッ』』

悠人と柳也が同時に声を上げる。

『…ユートよ、剣は使えたようだな』

レスティーナは少し間を置いてから、異世界の少年達の言語力を気遣ってか、ゆっくりとした口調で言葉を紡いだ。その気遣いが嬉しい反面、なんとなく馬鹿にされているような気がして、柳也は顔を下に向けたまま複雑な表情を浮かべる。

『今後の働きにも期待する。今回の成果に王も納得するであろう』

『ありがとうございます』

『そなたの義妹にとってもよい結果となる』

『……』

かけられた労いの言葉に、悠人は無言で唇を噛む。

表情には出していないが、その実、腸が煮えくり返る思いをしているのだろう。

内に秘めたる烈々たる怒りのマナが、〈決意〉を通して伝わってくるほどだ。

――俺達だけを戦わせて、自分達は高いところで見物か! ……とか、思っているんだろうな。

無論、柳也にもこの状況に対する憤りはある。

しかし、普段から剣術をたしなんでいる柳也は己の感情をコントロールする術をある程度心得ていた。

『…それから、リュウヤよ』

『ハッ』

レスティーナの視線が悠人から柳也へと移り、少年剣士も顔を上げる。

『そなたの活躍はエスペリアより聞いた。なかなかに的確な戦闘指揮だったようだな』

『ありがとうございます。しかし、それは私一人の功績ではありません。エスペリアを初め、優秀な部下がいたからこそ、私のような新米指揮官でもそれなりに戦うことができたのです』

『よい。その心構えを忘れるな』

『ハッ』

社交辞令とはわかっていても、やはり労いの言葉をかけられるというのは嬉しい。

しかし、悠人はまだそう単純には考えられないようだった。

レスティーナは視線を二人からはずすと、下座の全員を見回すように、声高に告げた。

『これからは、エトランジェも本格的な訓練に参加するように。我が国も、スピリット育成が急務のようだ』

『はっ』

『下がってよい。身体を休め、次の戦いに万全に望めるよう』

『はい、それでは失礼します』

立ち上がったエスペリアが礼儀正しく腰を折り、それに習ってあとの四人も頭を下げる。

『待て、スピリット隊』

その時、これまで謁見の間の空気を震わせることのなかった男の声が響いた。

いち早く顔をあげた柳也は、驚きの眼差しでその男を見つめた。

『殿下、発言させていただいてもよろしいですかな?』

その男……ダグラス・スカイホークは王族であるレスティーナに対して猛禽を思わす射るような目線を向けると、有無を言わさず下座へと向き直った。

『え、ええ…』と、このタイミングでのダグラスの発言に動揺を隠せないレスティーナの返事を聞くよりも早く、風見鶏の異名を持つ通産大臣の眼差しは、ある一人の男に向けられた。

柳也とダグラスの視線が、静かに交錯する。

ダグラスは、明らかに柳也を見ていた。

無論、伝説のエトランジェとはいえ一介の兵士にすぎない柳也と通産大臣であるダグラスに面識はない。柳也にしても会うのはこれが二度目で、それも一度目は昨日、謁見の間で姿を見たばかりだった。

――なんだ、この男……?

射るような眼差しの中に混じる、まるで商品を値踏みするような深い思慮の輝きを、柳也はつい最近目にしたことがある。それもこの謁見の間で、だ。そう、あのルーグゥ・ダイ・ラキオス王が同じ眼差しを自分に向けたことがあった。

怪訝に見返す柳也にダグラスは厳しい口調とともに告げた。

『エトランジェ・リュウヤよ』

『は? …あ、は、ハッ』

一瞬、誰のことを呼ばれたのかわからずに、気の抜けた返事をしてしまう。

しかしダグラスはそんな柳也の無礼な応答には露ほどの関心もよせず、ただ一言、

『スピリットの館に戻る前に、私の部屋に来い』

と、言った。

レスティーナとリリアナが、目を丸くしてダグラスと柳也の顔を見比べる。

そして柳也は、

『……はぁ? …あ、は、ハッ』

またしても、気の抜けた返事をしてしまった。

 

 

 

 

 

永遠のアセリア

-The Spirit of Eternity Sword Another-

第一章「有限世界の妖精たち」

Episode15「危険な男」

 

 

 

 

 

――聖ヨト暦三三〇年、アソクの月、緑、いつつの日、昼。

 

ダグラス・スカイホークの私室はエトランジェに与えられている私室の二倍はあろうかという広さをしていた。柳也達の部屋を下級将校や准士官のガンルームとすれば、さしずめこちらは大将クラスの司令室といったところか。室内のインテリアにも意匠を凝らした物が多く、貧乏生活が骨の髄まで染み付いている柳也は、思わず入室を躊躇ってしまった。

『どうした? 早く入れ』

ドアのところで立ち止まったままの柳也を振り返って、ダグラスが言った。

柳也が入室を躊躇しているのは、なにも贅の限りを尽くした部屋の威容に圧倒されているからだけが原因ではない。

異世界の政治には疎い柳也も、風見鶏の噂は知っている。この冷徹なマキャベリストに睨まれて失脚した政治家が決して少なくないことも、だ。

そんな男に呼ばれたとあっては、柳也が警戒するとも当然だった。

なんといっても、それが国のためならばどんな汚い手段の行使も良しとするのがマキャベリストだ。彼らの手にかかれば、核兵器の運用すらいとも容易く正当化されてしまう。

柳也はやや間を置いてから部屋の中へと一歩踏み出した。

油断なく周囲に視線を走らせながら、ゆっくりと足を運ぶ。

究極のマキャベリスト集団ともいえる米国中央情報局CIAは、かつて殺しのことをeliminate……“消去”と称していた。殺し屋は消しゴム、殺される相手は、生きているとアメリカのためにならない誤字というわけだ。

柳也としても、消しゴムで消されるように殺されてはたまらない。

警戒心を抱くのはむしろ当然だった。

『紅茶がいいか? それともコーヒーがいいか? …それとも、勝利の美酒を味わうというのはどうだ?』

『いえ…』

柳也は小さく首を横に振った。

『我々の先輩に酒に酔い潰れたがために窮地に陥った剣士がいます。また、飲食物に毒に盛られた例もありますゆえ』

『それは貴様らの世界での出来事か?』

『はっ。……おそれながら、ダグラス閣下とは酌を交わすわけにはゆきませぬ。私のこの命は、私のみのものにあらず。私の命はわが友のために、そしてこの国のためにありますゆえ』

『用心深い男だな。…それに、口も達者だ』

ダグラスは口元に不敵な笑みを浮かべると、ゆったりとしたソファに腰を下ろした。両手には琥珀色の蒸留酒が並々と揺れるボトルと、グラスが握られている。

『まぁ、貴様も座れ』

『……おそれながら、椅子を確認させていただいても?』

『好きにするがいい』

柳也はダグラスの座るソファとは反対側に鎮座しているソファを調べた。まさか柳也も電気椅子のような殺人のための機構が組み込まれているとまでは思わなかったが、用心に越したことはない。

ソファを調べているうちに、柳也の表情が僅かに動いた。

それは本当に微細な表情の変化にすぎなかったが、百戦錬磨の政治家はそんな細かな頬の筋肉の動きも見逃さなかった。ダグラスが、ニヤリと笑う。

『貴様がいつ気付くか、待っていた。レスポンス・タイムは私の予想よりも少し早かったな』

『これは……』

柳也は目線をウィスキーのボトルとグラスを載せたテーブルに向け、続いて室内の調度品を舐めるように見回した。

そうやって二分ほど、部屋の様子を眺めた彼は、ある確信を抱く。

『この机も、この照明もですか?』

『そうだ。すべて一流なのは見た目だけ。中身はすべて三流の品々だ』

ダグラスは特に表情の変化もなく言い切った。

贅の限りを尽くしたなどととんでもない。立派なのは外見ばかりで、その実、インテリアはすべて三流の品ばかりだったわけだ。

柳也には急に輝く部屋の装いが安っぽく見えてきた。

偽者の輝きに威圧されていた自分が恥ずかしい。外見ばかりに目を奪われ、物事の本質を見抜けなかったとは、剣士失格だ。

『…しかし、いったい何でまたこんなに三流品ばかりを?』

柳也はソファに腰を下ろすとダグラスに問うた。

『大臣ともなると、見栄を張ることも必要になってくる。別に本物を買う金がないわけではない。給金は十分に貰っている。ただ、節約が趣味でな』

『浮いたお金は何に使っているのですか?』

『この国をより良い方向に導くための活動に使っている』

ダグラスはきっぱりと言い切った。

感情を込めずに紡がれた言葉は、しかしそれだけに彼が常々考えている、本心からのものであることを窺わせる。

柳也はソファに深く座りなおすと、姿勢を正して改めてダグラスに向き直った。

『具体的には例えば?』

『信の置ける者達を囲っている。彼らに国内のありとあらゆる物事を監視させ、私のもとに報告がくるよう手配してある。勿論、情報部とは別にな。人を雇うには、それなりに金が必要だ』

『監視対象が、この国にとって益をもたらす人間であれば?』

『勿論、それが政治家であろうと、平民であろうと全力で支援する』

『では、逆に監視対象がこの国に仇なすような輩ならば?』

『消す』

ダグラスは後ろめたさをまったく感じさせぬ語調で言った。彼は迷いを感じさせない口調のまま、淀みなく続けた。

『そのような輩にはこの国の未来のための礎になってもらう。この大地に葬ってやれば、土の肥やしくらいにはなろう』

『…よろしいのですか? 私如きの前でそんな危ない話をして?』

『特に問題はあるまい。別にその密偵の正体について言及しているわけではないのだから』

ダグラスはウィスキーを、ぐっ、とあおると、冷笑を浮かべた。

彼は柳也から視線をそらすと、どこか遠くを見つめるような眼差しで、淡々と言葉を紡いだ。

『私は、私なりにこの国のことを愛しているのだ』

そう、前置きしてから、風見鶏の異名を持つ通産大臣は視線をそのままに柳也に語った。

『今日、貴様をこの部屋に呼んだのは、貴様がこの国に利を生む者か、それとも仇をなす者か、見極めるためだ』

『……また、正直におっしゃられましたね』

柳也は思わず苦笑した。

こうも素直に本心を語られると、怒りを通り越して呆れた笑いしか湧いてこない。

『経験則上、貴様のような男には下手な嘘を混じらせるよりも素直に本音を口にした方が効果的と存じている。…実際のところ、裏表のない人間の方が、貴様も好きだろう?』

『まぁ、そうですね。そっちの方が好感が持てる』

柳也は迷うことなく首肯した。それは嘘偽りない彼の本心だった。

『けど、人間が隠している裏の本性を、暴くのも好きですよ』

『この私のようにか』

『ええ』

『貴様も正直な男だな』

『閣下も、表裏のない人間の方がお好きでしょう? …その方が単純で扱いやすい』

ダグラスは朗らかに笑った。

柳也も穏やかに微笑んだ。

彼らのいう、裏表のない笑い声が、ダグラスの部屋に響いた。

『貴様がそのような単純な人格を装うというのであれば、私もその奥にある裏の本性を暴いてやらねばならぬな』

『それでどうします? 俺の本性が、閣下から見てラキオスに仇なす男に映ったなら…?』

『その時は消す』

ダグラスはウィスキーを舐めた。もうボトルの半分が開けられている。酒に強い性質なのか、その表情は変わらぬ厳しいものだった。

『だが逆に、貴様という存在がラキオスにこの上ない利をもたらすのであれば……』

ダグラスはそこで一旦言葉を区切ると、柳也に視線を戻した。

『貴様には、この国に忠誠を誓ってもらう』

『…………』

『ただ命令を淡々とこなすだけの兵隊も重要だが、私が欲しいのはこの国の国益のために自発的に行動してくれる人材だ』

『そのためなら人質も利用するって?』

『のみならず、あらゆる手段を使う。それが国のためになるなら』

『……本当に正直な男だな、あんたは』

柳也は敬語を使うことをやめた。

今やこの場において、うわべだけの敬意を示す必要はなくなっていた。

柳也は不敵に笑うとダグラスを見つめた。見つめ返す熱い眼差しは、リリアナやレスティーナ達とは違った意味で純粋で、強い意志の力を宿していた。

『それで、俺はあんたのお眼鏡にかなったのかな?』

『その判断を下すのは今日ではない。結論を下すのに必要な情報が、まだ足りぬからな。今日は貴様と直接言葉を交わすことが目的だった。貴様がどういう人間なのか、直接、会って確かめたかった』

『二つ質問したい』

『なんだ?』

『なんで、悠人ではなく俺を呼んだ?』

『私見だが、一見して貴様の方が多少、物を知っていそうだったからだ』

『複雑な気分だな。自分が褒められたのは嬉しいが、友人を馬鹿にされたようで腹も立つ』

『もう一つの質問はなんだ?』

『実際に話してみて、どう映った? ダグラス・スカイホークの目に、桜坂柳也という男は』

『危険な男だ』

ダグラスは淡々と告げた。

柳也の視線が、僅かに細くなる。

『王族の強制力が効かぬ唯一のエトランジェ。〈求め〉以外の神剣を持ち、この世界に召還された時点ですでにその力をある程度使いこなしていたイレギュラー。しかしその能力は優秀で、頭の回転も早い。駆け引きも上手だ。そしてなにより、非常に好戦的な性格をしている』

『…まぁ、否定はしないが』

柳也はテーブルの上に手を伸ばした。

残り四分の一ほどになったウィスキーのボトルをつかみ、直接、口をつける。芳醇な香りが口腔を衝き抜け、鼻腔に触れた。まろやかな味わいとともになんともいえない甘美な炎が喉を熱くし、柳也は陶酔に瞑目した。

『強制力が通用しないというだけでも脅威だが、その上、こうも攻撃的な性格をしているとなると、“危険”という言葉以外に形容詞が思いつかん』

『危険な男……か。いいな。その響き』

柳也は瞠目すると、不敵に笑った。

その凶悪な笑みは、百戦錬磨の政治家、風見鶏をして思わず、ぞっ、と背筋を凍らせるほど、残忍に歪んでいた。

柳也はボトルの中身を飲み干すと、静かに立ち上がった。

『……ったく、飲まないって言ったのに、結局、飲んじまった。まだこれからエスペリアの報告書の手伝いをしなきゃならないっていうのに。これ以上ここに居ると、また酒に手を出してしまいそうだ。これ以上、酔いが回らぬうちに公務に戻らせていただきます』

柳也は、最後だけ慇懃に腰を折るとダグラスに背を向けた。

立ち去ろうとする柳也の背中に、ダグラスが言う。

『私に会いたくなったら、いつでもこの部屋に来い。不在の時は、誰か衛兵にでも伝言を頼め。時間を作ってやる』

『暇な時にでも、話し相手になってもらいに伺いますよ。…この国の潜在的脅威の話については、またその時にでも。……それから、閣下は最初に“私は私なりにこの国のことを愛している”と、おっしゃいましたが……』

ドアのところまで歩いて、柳也は一度だけダグラスを振り返った。

『我々の世界には、こんなことわざがあります。“愛国心というのはならず者の最後の拠り所だ”……というものです』

柳也はにこやかに笑うと、ドアを開けた。

『それでは失礼します、閣下。あなたがならず者ではないことを願っております』

 

 

――同日、昼。

 

『柳也!』

ダグラスの部屋を退室してドアを閉めると、どこかほっとしたような表情で悠人が駆け寄ってきた。後ろにはアセリアとオルファを連れている。

てっきりもう皆は帰ったものと思っていた柳也は、三人の顔を見て驚いた。

『悠人…それにアセリア達も……なんだ、待っていてくれたのか』

『ああ。…それより、お前、大丈夫だったか?』

『大丈夫……って、何が?』

『エスペリアから聞いたんだよ。風見鶏の噂』

悠人は柳也から二歩離れると、しげしげと彼の姿を眺める。

『柳也があの大臣に目をつけられたんじゃないか、って、エスペリアが言うもんだから、心配になって待っていたんだよ』

『そうだったのか…いや、心配をかけてしまったな。アセリアと、オルファも、ありがとう』

柳也はみなに向かって深々と腰を折った。口調こそ平静を装っていたが、その胸中では熱い感情の唸りが生まれていた。

『……ん』

『オルファはパパと一緒だったし気にしてないよ〜』

柳也の言葉にオルファがにっこりと答え、一方、アセリアは相変わらずの態度で頷く。こちらの感謝の気持ちが本当に伝わったのかどうか不安だが、さすがに柳也達ももう慣れたものだった。

『俺は大丈夫だ。ダグラス閣下とは、ちょっとした世間話に花を咲かせていただけさ』

『本当か?』

『ああ。…それと、この国の未来のために、高い買い物をするべきかどうかの相談を受けた』

訝しげな面持ちの悠人の肩を叩くと、柳也は明るい口調で言った。

『ところで、当のエスペリアはどうしたんだ? 姿が見えないが…』

『エスペリアお姉ちゃんなら王女さまのところに行ったよ』

『レスティーナ殿下のところに?』

『うん。なんか王女さまに伝えたい事があるんだって』

『ほぅ…』

何気なくオルファが口にしたその内容に、柳也は表情を僅かに動かした。

現時点におけるスピリット隊の実質的な隊長とはいえ、究極的にエスペリアは自分達と同じ一介の兵士にすぎない。それも人間からその存在自体を忌み嫌われているスピリットの兵士だ。そんな身分の彼女が、王女であり国防大臣でもあるレスティーナに直接会いに行ったとしても、門前払いを受けるのが関の山ではないだろうか。

そんな当たり前の未来が予想できぬエスペリアではないはずだが…。もしかするとエスペリアは、王女に直接会うことを許された、特別なスピリットなのかもしれない。

『それじゃあ、今度は俺達がエスペリアを待つとするか』

柳也は赤絨毯の廊下を歩いて窓の前に立つと、地面を指差して言った。

高級官僚であるダグラスの私室は、通常の役人や兵士達が暮らすような宿舎ではなく、天守の四階にある。

弓兵が即座に待機できるようにするためか、ガラスのない窓から下界の風景を見下ろすと、前庭の噴水が悠人達の目に留まった。

公務で忙しい王女のもとへ出向いたエスペリアを待つのなら、なるべく目立つところが望ましい。国防大臣という役柄からその日常が多忙であることは容易に予想される王女も、彼女に会いに行ったエスペリアも、どこに居るのかわからないのだ。

 

 

――同日

 

空気を汚染するカビと埃、油を吸った紙と、百年以上が経過してまだ色褪せることのないインクの臭いが、レスティーナを取り囲んでいた。

ラキオス王城天守三階にある、王族図書室のお馴染みの香りだ。限られた一部の人間を除いては王族にしか使用を許されない知の宝庫だった。聖ヨト時代から今日にいたるまでの間に蓄えられた文献は書物だけでも約六万冊を数え、その蔵書数は現在でも僅かずつだが伸びている。

しかし、その誇るべき蔵書の数にも拘わらず、ラキオス城内で最も扉の開け放たれる回数が少ない場所の一つだった。父のラキオス王は〈求め〉に関する文献を斜め読みするだけで、自分の利益に繋がらない埃をかぶった情報に興味がなかったし、母のクーリア王妃は王妃で、政治にも学問にも関心がなかった。王家の血を引く他の王族たちもほとんど使用せず、実質的にそこはレスティーナのプライベート・ルームと化していた。一人きりで考え事をしたり、秘密の話をするのにうってつけの場所といえた。

『……そうですか。やはり〈求め〉の力はそれほどまでに…』

対面に座るエスペリアからの報告を聞いたレスティーナは、表情を曇らせると感嘆とした呟きをもらした。紫水晶の瞳の奥で、憂いの炎が揺らめいている。謁見の間では決して悠人達に見せることのなかった、哀しげな眼差しだ。

向かい合うエスペリアもまた表情と、なにより心に暗い影を落としながら、重々しく頷く。

次なる言葉には公衆の場において押し殺していた、嘆きの感情が見え隠れしていた。

『…はい。ユートさまは私たち緑のスピリットの防御を易々と突破していました。リュウヤさまや、アセリアでも一撃での破壊は困難な鉄の防御です。…ですがそれは、おそらく、ユートさまの力ではありません。〈求め〉の力によるものと思われます』

『それも、まだ目覚めたばかりの〈求め〉の力で、ですか……』

油断ならない多数の目が光る謁見の間においては、決して語ることのできなかったその力の一端。

エスペリアの口が紡ぐ驚愕の事実に、レスティーナの表情がますます曇っていく。

彼女の報告通りまだ〈求め〉が目覚めたばかりだとすれば、今回、発揮された力は本来の半分にも満たなかっただろう。しかし、その半分にも満たない力で、悠人は十体近いスピリットを撃破していた。しかも悠人は、その戦闘が初陣だった。

目覚めたばかりの神剣が、よく鍛えられたグリーンスピリットの防御を突破する。しかもその契約者は素人に毛の生えた程度の腕前しか持たず、そんな腕で十体近い敵を撃破した。

過去のスピリットと神剣に関する文献をいくら読み漁っても、似たような前例を見つけることはできなかった。グリーンスピリットに対し絶大な優位性を持つレッドスピリットですら、目覚めたばかりの神剣では魔法が使えないのだ。

やはり第四位の神剣の力は凄まじい。素人同然の少年を、一瞬にして一流の戦士に仕立て上げてしまった。

その威力はラキオスにとって歓迎すべきものだったが、レスティーナやエスペリアにとっては素直に喜ぶことのできぬものであった。

『ですが、〈求め〉の力がそれほど強大となると、ユートには辛い思いをさせてしまうでしょうね…』

レスティーナが僅かに目線を伏せながら、哀しげに言う。

『四神剣の口伝通りなら、〈求め〉の強制力は自我を壊すほど強いものと聞きます』

『神剣の中でも高位ゆえ、力の代償もまた大きいかと。今のところは、まだユートさまの意志が〈求め〉の攻撃を受けている気配はありませんが…』

『それは先の戦いで多量のマナを啜ったからでしょうね。満たされた腹が空腹を覚えた時、〈求め〉は……』

『ユートさまを操ろうとするでしょう。より多くのマナを求めて、スピリットを斬り、私たちの身体を欲するはずです。そしてその意志にユートさまが逆らった場合には、〈求め〉はユートさまの身体を支配しようとするはず』

エスペリアが哀しみに俯いて言った。

テーブルの上に置かれた己の手を、儚げな眼差しで見つめている。エスペリアの手は震えていた。最悪の場合、この手でまた一つの命を……それも、自分のよく知った人物の命を奪わねばならないかもしれないのだ。

『もし、ユートさまが〈求め〉の意志に取り込まれるようなことがあれば――――その時は、この私が……』

毅然とした口調。しかし、その肩は小さく震えている。

レスティーナは悲痛な眼差しで小刻みに震える細い肩を見つめた。

声をかけようと開いた口を、一度閉じる。

ひそかな決意で悲しみの心を塗り替えようとしているエスペリアに、できることならこれ以上、追い討つような言葉をかけたくはない。しかし、レスティーナは王女として、また国防大臣として、ここで会話を終わらせるわけにはいかなかった。

レスティーナは数秒の間瞑目し、瞠目した。その双眸には、あの謁見の間での決然とした輝きが宿っていた。

『ユートのことは分かりました。それで、リュウヤの方はどうでしたか?』

作戦の途中、負傷したエスペリアに代わって部隊指揮を予想外のエトランジェが執ったことは謁見の間でも報告されていた。しかし、謁見の間ではその戦闘指揮の上手についてまでは言及されなかった。

『作戦行動中に折を見て柳也と指揮を交代せよ』――柳也の指揮官としての適正を調べるため、王女から受けた密命をエスペリアは忠実に守った。指揮を交代してからは常に柳也の動向、下す命令に気を配り、その一挙一動を観察した。

エスペリアは顔を上げると、『リュウヤさまは……』と、口を開いた。たおやかなその顔を、先ほどまで抱いていたものとは別な感情が曇らせていた。

『ドラゴン・アタック作戦の時もそうでしたが、リュウヤさまの戦闘指揮は非常に上手いと感じました。あの方は、自分は軍人じゃないとおっしゃっていましたが、それが嘘だと思えるほどに…』

『柳也の戦闘指揮は、有効だったと?』

『……』

無言で頷くエスペリア。だが絶賛する口調とは裏腹に、その表情は晴れない。

『ドラゴン・アタック作戦の時に見せた作戦計画力と人をまとめる能力。今回の作戦で私自身目にした、鋭い決断力と冷静な思考力。奇抜な発想と戦術眼。どれをとっても、リュウヤさまは優秀な指揮官といえましょう』

『同じような事を、リリアナ・ヨゴウも言っていました。エトランジェ・リュウヤは戦士としても優秀だが、戦術家としても高い水準にある、と』

レスティーナは先週の定例会議でのリリアナの発言を思い出した。

ドラゴン・アタック作戦にも少なからず関わっているエスペリアは、レスティーナの口を借りて語られたリリアナの言葉に首肯する。

『私も、ヨゴウさまと同じ意見です。リュウヤさまの考案した隊列は、迎撃する敵に対して非常に有効でした。戦士としても、リュウヤさまの技量には目を見張るものがあります』

『それほどに…』

絶賛に次ぐ大絶賛に、レスティーナは目を見開く。

エスペリアもリリアナも、ラキオスが誇る一流の戦士だ。その彼女たちが言うのだから、あのエトランジェの実力は本物なのだろう。

力量に関してはわかった。戦士としても、指揮官としても、また戦術家としても、桜坂柳也の実力に文句の付け所はないようだ。では、その人間性のついてはどうなのか。

『人格に関してはどうでした?』

『それが……』

訊くべくして問うた質問に、エスペリアは難しい表情を浮かべた。

その先を言うのははばかられることであるかのように、言い辛そうにしている。レスティーナにどう柳也のことを報告するべきか、適切な言葉を探しているようにも見えた。

『私たちの間で遠慮は無用です。言葉を飾らずに、あなたの感じたことを教えてください』

レスティーナはそう、助け舟を出した。

やがてエスペリアはおずおずと口を開いた。

『とても危険なお方と、そう感じました』

『危険……?』

『はい』

エスペリアは考え込むように頷いた。言葉を紡ぎながらも、どう話すべきか考えをまとめているようだった。

『リュウヤさまは優しいお方です。私やオルファに対してもわけ隔てなく接してくれますし、ユートさまやカオリさまを常に気にかけておられます。リュウヤさまのそうした面のみを見るなら、あの方はとてもお優しい、信頼の置ける男性といえます。ですが、ひとたび戦場に赴くと、リュウヤさまはまるで別人のようになってしまうのです』

『……どういう風にですか?』

『私には、まるでリュウヤさまが戦うことを楽しんでいるように見えました』

エスペリアの言葉に、思わず声を失ってしまう。

レスティーナの頭の中で、謁見の間で見せた彼の不敵な態度、厳しい眼差し、大切な人たちに向ける優しい笑顔が、何度もリフレインする。

あの意志の強そうな大振りな瞳が、戦いの最中、愉悦に歪むなどレスティーナには信じられなかった。

エスペリアは自分の思いをすべて吐き出すように、一気に言葉を繋いだ。

『敵の部隊の気配を感じ取った時、リュウヤさまは笑っていました。敵が強力であれば強力であるほど、リュウヤさまは楽しそうに剣を振るっていました。…敵を倒すための作戦を立てる時、あの方の表情はとても活き活きとしておられました。

 神剣に支配された様子はありません。リュウヤさまは、ひとりの剣士として心から戦いを楽しんでいるようでした』

エスペリアはそこで一旦、言葉を区切ると、恐ろしげに表情を歪めながら、慄然と震えた声で続けた。

『レスティーナさま、本音を言うと、私はリュウヤさまが恐ろしくてしょうがありません。ユートさまは〈求め〉が恐ろしいから恐い。ですが、リュウヤさまはリュウヤさま自身が恐ろしくて、恐いのです。

あの方の攻撃的すぎる性格は、リュウヤさまに対峙する敵だけでなく、ご自身の身をも滅ぼしてしまいそうな、そんな気がします』

『それではまるで……』

『はい。まるで伝承にある〈求め〉のような……』

エスペリアの酷評に、レスティーナは思わず絶句する。

あのエトランジェが普通とは少し違うことは最初からわかっていた。王族の強制力が効かぬエトランジェなど、過去の文献を探しても存在しない。

しかし、まるで永遠神剣のようとは……。頭の中に、不意に灰燼と化した王都に立って、愉悦に口元を歪ませる柳也の姿のイメージが浮かんできて、レスティーナは背筋を震わせた。

 

 

――同日、昼。

 

『お疲れさまでした。ユートさま、リュウヤさま』

一日ぶりにスピリットの館に帰ってきて、食堂で一息ついていた柳也達に、ようやく事態の終息を示す労いの言葉をエスペリアは述べた。

『思ったより長い行軍となったのでお疲れでしょう』

『そうだな。ずっと気が張りっぱなしだったし……』

柳也の隣で、まるで身を投げるように椅子に座りながら、悠人は、ぐっ、と伸びをする。

『正直、まだ気持ちが昂ぶっている感じだ』

『そうだろうな』

体を動かしていた方が落ち着くのか、ぐるぐると肩や首を回す悠人に、柳也が穏やかな視線を投げかける。

『なんといっても悠人は初陣だし、俺も、初めて木刀を握って立会い稽古をした時はそんな感じだった』

『…そうなのか?』

『ああ』

意外そうな悠人の眼差しに、柳也はゆっくりと頷いた。

木刀は刃を持っていないというだけで、その威力は真剣とさして変わらない。だから木刀を用いての立会いは、寸止めが大前提の真剣勝負となる。面、小手、胴のいずれの部位であれ、先に刀身が肌身近くまで達すればそれで勝敗は決する。

無論、ちょっとでも手元が狂えば致命傷になりかねない。同じ流派の剣を学び、手の内が十二分に分かっている相手であっても、細心の注意を要する試合方式だった。対戦相手との信頼関係は、前提以前の問題だ。

『一種の極限状態だからな、あれは。下手に受ければ致命傷は免れない木刀の恐怖。剣を交わして感じる相手の力量。その相手を倒した際に得られる、快感にも似た達成感。……色んな感情が、混ぜこぜになってるんだろ?』

『そうだな…そんな感じかもしれない』

『ユートさま、鎮静効果のあるハーブを入れたお茶です。これで眠れば落ち着けると思います』

エスペリアは悠人と柳也の前に湯気の立つカップを置いた。見慣れた白いティーカップに、ツン、と鼻を刺す薄緑色の茶が湖面を作っている。この世界に来てから、初めて見る茶だ。その色合いと匂いは、セロリに近い。

『ありがとう』

『ありがとう、エスペリア』

二人は早速カップに手を伸ばすと揃って口元に運んだ。

長い行軍の果てに喉が渇いている。とはいえ、一気に煽るにはカップの中身はまだ熱い。

ゆっくりと飲み干していくと、やはり想像通りの風味が鼻腔と喉を突き抜けていった。

『セロリが苦手だと、辛いかもしれないな』

『幸いにして俺は食べ物に好き嫌いはない』

『俺もセロリは苦手じゃない。…まぁ、あんまり好きな食べ物でもないけどな。ん……このお茶は初めてだな』

もう一度カップに口付けて、改めて悠人が呟く。やや野菜臭い味と香りだが、決して嫌いな味ではなかった。

『そうですね。やや強い効果があるので、普通の時はあまりお出ししませんから』

エスペリアも席につき、湯気の昇るカップを口につけた。

『私も戦いの後くらいにしか飲みませんし、アセリアとオルファは飲みませんね。アセリアはいつも落ち着いていますし…』

と、エスペリアは一旦そこでカップを置くと、クスリ、と微笑む。

『オルファはこのお茶を出すと、跳んで逃げますから。お仕置きにはちょうどいいんです』

たしかに、あの二人から優雅に茶を飲むイメージは想像しにくい。むしろ断るアセリアと慌てて逃げるオルファの姿の方が、想像は容易だった。

『そういえば、当のアセリアとオルファはどうしたんだ? 帰ってきてから一度も見かけないが…』

ラキオス王城の噴水前でエスペリアと合流してから、スピリットの館に着くまでは一緒だった二人だが、先ほどから姿が見えないでいる。

二人のことが話題にのぼって、ふと気になった柳也はエスペリアに訊ねた。

『アセリアはフラリと何処かにいってしまいましたね』

エスペリアはちょっと考え込むようにしてから、言葉を紡ぐ。

『あの娘は、部屋に籠もっているか、外にひとりで出かけちゃうんです』

『あぁ…それでいつもすれ違いもしないのか』

普段から自室に閉じこもっているか、そもそも館にいないのなら、姿が見当たらなくても不思議ではない。食事と訓練の時には、しっかりと出席しているのが不思議だが。

『オルファは、その……カオリさまのところだと思います』

 エスペリアの言葉に、悠人のカップを持つ手が止まった。

『……佳織のところか』

ふと窓の方を振り返り、悠人は遠い白亜の宮殿に目線を向ける。

オルファと初めて顔を会わせたその日から、佳織の近況については彼女の口を借りてよく話されていた。今ではオルファによる佳織の近況報告を聞くのは、悠人にとって楽しみの一つだった。

『あの娘は、カオリさまにお会いするのが、本当に待ち遠しいみたいですよ』

王城を見つめる悠人の背中に、エスペリアが穏やかに言う。

『同じくらいの娘と、ほとんど話したことがないはずですから』

その優しい微笑みは、義妹のことを想う悠人に向けられたものか、今は遠いオルファに向けられたものか。あるいは、両方への笑みだったのかもしれない。

振り返った悠人は、少女の優しい眼差しと微笑みに、不意に心の中に湧いた考えを述べた。

『エスペリアたちって、本当の姉妹みたいだな』

『あ、それは俺も思った』

隣で柳也も同意する。

落ち着いた姉と、やんちゃで元気な妹。そして何を考えているのかいまいち分からない次女。

――さしずめ俺達は頼りない双子の兄弟ってところか。

今は遠くにいる佳織も含めれば、全部で六人兄弟だ。ずいぶんと大所帯になってしまったものである。

『姉妹、ですか』

悠人の言葉に、エスペリアは難しそうに眉をひそめる。どうやら今までに、自分達の関係を姉妹と評された経験がないようだ。

『私たちスピリットには、そういう血の連なりはありません。だから姉妹というのは、よく解りません』

『でも……』と、エスペリアは再び穏やかな表情で二人を見た。

『アセリアもオルファも、私にとってとても大切です。……私の命と同じくらい』

最後の方の言葉は、余韻を持って二人の耳に響く。

エスペリアの言葉に、悠人は感慨深げに頷きながら、自らも言葉を繋いだ。

『その気持ちは解るかもな……。俺と佳織も一緒だから』

『そうなのですか……』

重い響きを孕んだ悠人の口調に、エスペリアが表情を曇らせる。

高嶺家の事情をよく知る柳也は、口を開くことなく押し黙った。両親を失った悲しみ、残された佳織のことを大切に想うその気持ちは、柳也にも痛いほどよくわかる。柳也自身、事故で両親を失い、しらかば学園の児童らと実の兄弟同然に接してきた身だ。

『俺は佳織を幸せにするって約束したんだ』

それが亡くなった両親への供養になると、なにより自分のためになると、悠人が心からそう信じていることを、柳也は知っている。

『だから……』

『ユートさまは剣を握るのですね?』

『ああ。いまの俺には力がある。佳織を護ることができる。エスペリアたちの手伝いだってできるんだ』

テーブルに置かれた悠人の右手が、強く拳を作る。それを見つめながら悠人は、まるで何かに取り憑かれたかのように饒舌に言を紡いだ。

『戦いの怖さにも……慣れたし』

当たり前のように悠人の口から出てきたその言葉に、柳也とエスペリアは顔を見合わせる。

『…………ユートさま、今日はゆっくりとお休みなさいまし。少し、お眠りになられた方が宜しいでしょう』

僅かな沈黙の後、エスペリアは穏やかに微笑みながら悠人に言った。

その表情が無理に取り繕ったもののように見えたのは、はたして、柳也の気のせいだったか。

『あのお茶には睡眠効果もありますので』

『ふぁ〜ぁ。アレ、そんなに眠くはない筈なんだけど』

欠伸を噛み殺しながら悠人が言う。本当に効能の強いハーブティーなのか、急速に眠気が回ってきたらしい。

まるで子どものような悠人の反応に、柳也は苦笑しながらいたわりの眼差しを向ける。

『身体は素直だからな。それにここ数日、お前、まともに眠ってないだろ? 疲れているんだよ』

『夕食時にはお呼びいたしますので、それまでゆっくりとお休み下さいませ』

『ン……そうするよ。なんだかすごく眠くなってきた』

悠人は椅子から立ち上がると、ドアの方へと歩いていった。

『それじゃ、お休み』

『ああ、ゆっくり寝ていろよ』

『良い夢を』

後ろ手に挨拶する悠人の背中に、柳也とエスペリアも挨拶を返す。

食堂と廊下を隔てるドアが閉まり、食卓には柳也とエスペリアの二人が残された。

『エスペリア……』

『はい…』

悠人のいなくなったテーブルを挟んで、柳也とエスペリアの視線が絡み合う。

見つめあう二人の表情は、悠人を見送った時とは一転して、険を帯びたものになっていた。

『俺はまだ神剣との付き合いが短いからなんとも言えないが、俺の目から見て、悠人の様子はいつも通りに思える。…まぁ、たしかに少し言動がおかしいとは思ったが。エスペリアはどう思う?』

『今のところは、まだ問題はないように思います……』

エスペリアは不安げな面持ちで言った。

『ですが、まだまだ油断は許されません。今回の戦いでユートさまは弱っていらっしゃいます。その隙を〈求め〉に衝かれたら…』

『神剣に体を乗っ取られるかもしれない?』

『はい…』

柳也の問いに、いつになく沈痛な面持ちで頷くエスペリア。

一方の柳也は、エスペリアほど暗い表情を浮かべてはいない。これは、柳也がエスペリアほどその最悪の未来を危険視していない証ともいえた。

なんといってもいちばん身近な相棒の神剣が自分に忠実なだけに、神剣に乗っ取られるという事をいまいち理解できていないのだ。自分の肉体が〈決意〉に乗っ取られるなど考えにくいから、その危険性を十分に認識することができない。

人間は、時に自分が実際に手痛い目に遭わねばその事実を認識できない生き物でもある。

エスペリアは危機感の薄そうな柳也の態度が、歯がゆくてならなかった。

柳也はいまいち理解に苦しむ神剣に乗っ取られるという事について考えながら、茶を啜った。

カップの中身をすべて飲み干して、悠人のカップと一緒に流しに持っていこうと立ち上がったその時、

『グワァァァァァァァァァァァァッッッ!!』

天井を突き抜けて、聞き慣れた友人の、聞いたことのない絶叫が食堂に響いた。

 

 

――同日、夕刻。

 

『ユートさま!! どうなされました!』

『悠人、入るぞ!』

ノックの音もけたましく、柳也とエスペリアは返事を待たずに入室する。

勢いよく部屋になだれ込んだ二人の前で、悠人は……少なくとも、悠人の姿をしたソレは、緩慢な動作で振り向いた。

『………妖精、か』

酷く無機質な声。感情を殺しているとか、抑揚がないといった程度ではない。最初から感情など持たない、機械的な声だった。

声はたしかに悠人のものなのに、悠人の声として聞こえない。

『ゆ、ユートさま? この声……。まさかやはりこの剣は』

震える声と眼差しで、エスペリアは壁に立てかけられた〈求め〉を睨みつける。

刀剣というよりは無骨な鉄の塊に近いそれは、自ら鈍い輝きを放って、突然の闖入者を見つめていた。

『妖精よ……俺にマナをよこせ……』

『マナを……』

ゆっくりと、悠人の姿をしたそれがエスペリアに近付くべく悠人に一歩踏み出す。

隣にいる柳也のことなどまるで眼中にない。狂気にギラつく眼差しに、柳也の剣士としての本能が警告を発していた。

――なんだ…? 今の悠人から感じられる気配……こいつは……ッ!!

反射的に同田貫を抜いて身構える。

友に刃を向けているという意識はない。

そんな意識を、忘れさせるほどの悪寒が、柳也の全身を駆け巡っていた。

『ユートさま! 気を強くもってください!! 剣に飲まれようとしてます!! 戻ってきてくださいっ!! ユートさまっ!』

悲痛な訴えとともに〈献身〉を構え、その穂先を悠人に向けるエスペリア。

二つの刃を向けられて、さすがに悠人も少しはたじろぐかと思った柳也の考えは、甘かった。

悠人は平然とした様子で舐めるようにエスペリアを見つめると、ようやく表情らしき表情を浮かべる。

淫蕩に歪んだ、愉悦の笑みを。

『……うまそうだ。美しい声で泣くだろうな』

『〈求め〉よ。いまは退きなさい! まだいまならば私の方が力は上です』

なおも平然と近付く悠人に、エスペリアは中段に構える。

『私と〈献身〉の力があれば、あなたごとき再生の剣に戻すことなど造作もありません』

『気丈なことだ。だが、お前ならばわかるであろう? 我の力の大きさ…そしてその強さも』

その発言に一瞬だけ目を細めるも、エスペリアはすぐに表情から一切の感情を削ぎ落とす。

『……殺します』

エスペリアは冷たい声で宣告した。

『私はあなたたちが、心を壊すことを知っています。いずれユートさまが、あなたに飲まれるのならば……いま死んで頂くほうが幸せです』

決然とした宣言が部屋に響き、隣で柳也が息を飲む。

エスペリアの横顔からは、その言葉を本当に実行する決意の色が覗えた。

【その妖精の言う通りだ! 主よ、今すぐにその剣を破壊せよ!!】

エスペリアの決意に感化したか、頭の中で〈決意〉の声が痛切に響く。その声には、狂おしいほどの憎悪すら感じられた。

一瞬、その通りに行動したいという誘惑にかられるも、なんとかその欲望を抑え込み、柳也は言葉を紡いだ。

『…エスペリアは本気だぞ。それに、この場には俺もいる。さすがの貴様も、今の力で俺達二人を相手にするのは難しいと思うがな?』

『貴様は…………チッ』

エスペリアの強い語調から彼女の決意が本物であることを悟ったか、それとも同田貫に宿る〈決意〉の並々ならぬ憎悪の念に触れたか、悠人は吐き捨てるように呟いた。

『ふむ、そうだな。ここは退くとしよう』

悠人は……いや、悠人の姿をした〈求め〉は、ゆっくりと、嘲るような口調で言った。

『これから契約者には色々と働いて貰わねば困る。…勇気ある妖精よ。我はそなたが気に入ったぞ。いずれ、その体と心を頂くとしよう。それまで消滅することのないようにな。

 そして……』

〈求め〉の残忍な視線が、柳也を射抜く。

『〈宿命〉の奴隷よ。汝の主らに伝えておけ。我は貴様らの思い通りにはならぬ』

『早く消えなさいっ!』

『退け! 人外の化生がッ!!』

二人の恫喝に、壁の〈求め〉が一瞬、強い光を放つ。

目を覆わんばかりの閃光が室内を満たし、反射的に閉じた瞼に映る視界が白から黒へと変わった時、目を開けた二人の前で、悠人は茫然と立ち尽くしていた。

『あ……?』

空虚な視線が、宙を泳ぐ。

『りゅ、柳也? それにエスペリアも……俺は…なにを………ッ!?』

歩き出そうとした悠人の体が、ぐらり、と揺れ動いたかと思うと、そのまま床に倒れ込む。受け身すら取れずに転がる悠人の背中は、ブレザーの上着が変色するほどびっしょりと濡れていた。

ぱくぱく、と金魚のように口が開閉している。しかしそこに音は伴わない。

言葉を発しようにも、もはや声帯すら満足に動かせないようだ。

『悠人、大丈夫か? おい、悠人!』

慌てて駆け寄った柳也は、抱き起こした友人の体の熱さに驚いた。発熱が酷い。まるでインフルエンザに感染したかのような身体の火照りだ。

――これが……。

認識を改めねばならなかった。

エスペリアが不安に思うのも、無理もない。

――永遠神剣に、乗っ取られるということか

柳也は改めて、その危険性を認識した。

自分達の手にした力の大きさを。そして、その力を得た代償を。

 

 

――聖ヨト暦三三〇年、アソクの月、黒、ひとつの日。

 

『特殊訓練部隊との連絡が途絶えだと?』

その一報がリーザリオの外人部隊宿舎に届いた時、アイリスはちょうど浴室で服を脱ぎ、浴槽に足を入れた瞬間だった。

ようやく訓練で流した汗を洗い流せると思っていたのを中断させられたアイリスは、最初こそ不機嫌な表情を崩さずにいたものの、次第に状況を知るにつれて、徐々に表情を硬化させていった。

『は、はい。さらにはラキオス国内に潜伏中の諜報員とも連絡が取れなくなってしまったようです。最新の情報では、ラキオスで大規模なスパイ狩りが行なわれたらしい、という話も』

『それは本当か?』

思わず相手の方を掴み、詰問調で問いただす。

伝令役のバーンライト正規軍のスピリットは、アイリスに詰め寄られて声を上擦らせながら首肯した。

無論、アイリスに相手を怖がらせる意図はない。アイリスにとっては手塩にかけた愛弟子達と、互いに尊敬する戦友の安否に関わる情報だ。心配から声量強く念を押すのは当然のことだった。

しかし結果的に厳しい語調と真剣な眼差しに叩かれた少女は、その気迫に気圧されして、緊張に身を震わせてしまっていた。

『ちょっとアイリス、もう少し穏やかに質問できないの? この娘、怖がっているじゃない』

横からオディールが咎めるような口調で口を挟む。

それからオディールは、アイリスよりも幾分かゆったりとした調子で、伝令役のスピリットに語りかけた。

『もう一度確認したいのだけど、その情報は正規軍の上層部から教えられたものなのね?』

『は、はい』

いまだアイリスに肩を掴まれたままながら、オディールの穏やかな声音に安心したような表情を浮かべ、正規軍の兵舎からやってきた赤のスピリットが頷く。

『午後の訓練を終えて待機時間になった時に、正規軍の兵士の方がいらっしゃったんです』

『……ということは、これまでの噂話と違って、ちゃんとした信用の置ける情報ソースってことね』

チラリ、とアイリスに目配せをする。

先日の自分の噂話と違い、今度はちゃんとした情報ソースからの報せだ。もうこれ以上の念押しは不要だと言いたいのだろう。

アイリスはしぶしぶ相手の肩から手を離すと、幾分か声のトーンを穏やかにするよう心がけて口を開いた。

『それで、最後に連絡があったのはいつなんだ?』

『一昨日の朝とのことです。一日に一度の定時連絡があってから、すでに四十時間以上が経過しています』

『それじゃあ、ほとんど絶望的ってことじゃないですか……!』

背後でオデットが悲鳴をあげた。

敵国領内に潜伏している味方の連絡が途絶したということは、つまりそういうことなのだろう。何らかの事故に遭遇したか、それとも敵に捕捉されたか。あるいは、例のラース襲撃の噂話は本当で、その最中に敵と遭遇したのかもしれない。

いずれにせよ、一日以上の連絡の途絶は、二十六名からなる部隊の壊滅か、それに近い状態を容易に想像させた。

――セーラ……。

アイリスは胸の内で僅か数日前に別れた友の名を呼ぶ。続いて、よく見知っているはずのセーラの顔や風貌を思い出そうとしたが、なぜか脳裏にその端正な顔立ちを思い描くことができなかった。

――何故…?

自分でも不思議でしょうがない。

いや、いちばん不思議なのはセーラの顔を思い出せないことより、彼女ほどの実力を持ったスピリットを撃破した敵の存在だった。ラキオスの蒼い牙にせよ、伝説のエトランジェにせよ、並の戦士ではセーラを倒すことは難しい。

『特殊訓練部隊が連絡を絶った際の状況はまだ掴めないのか?』

『それについては……はい、まだ調査中のようです』

『調査中……って、それを行なう情報部がスパイ狩りにあったんでしょ!?』

激昂したオデットが伝令役のスピリットに食ってかかる。

オデットにとってもセーラは尊敬するべき人物だった。感情的になるのも、アイリスには痛いほどよく理解できる。本当ならば、自分がそうして叫びたいくらいなのだ。

しかし、アイリスには外人部隊の隊長という立場があった。

この役職にある限り、少なくとも表面上は狼狽するわけにはいかない。

『落ち着け、オデット。…とにかく、また何か詳しいことが分かったら、外人部隊の方にも情報を回してほしい』

オデットの醜態を見て先ほどよりは冷静さを取り戻したアイリスは、伝令役の少女に言った。

まだあどけなさの残る顔立ちの赤い少女は、今度はアイリスを恐れなかった。

『はい。必ず』

『ここ数日はラキオスの公式発表にも注目しましょう。例の噂が本当なら、ラキオスは正式に抗議してくるはずよ』

『ああ、そうだな』

オディールが国境線警備の折に入手した例の噂話は、すでに外人部隊では全員が共有する情報となっている。

『ラキオスが公文書として抗議文を作成すれば、状況も少しは解明されるだろう。……セーラ達が、全滅したのか、そうでないのかも』

アイリスは、最後の方は苦しげに言った。

自分は部隊長だという意識を張っていても、友の名を呼ぶその瞬間だけは、その表情は悲痛に染まっていた。

思い出そうとしても思い出すことのできなかったセーラの顔が、ようやく脳裏に浮かんできた。

 

 

今回のラース占拠事件は、バーンライト王国の仕業と後日判明した。

ラキオスは正式に抗議を表明したが、バーンライト王国側は、スピリットの暴走による事故と弁明した。

両国間に緊張が高まり、さらなるマナの確保のため、悠人達にはより過酷な訓練が課せられた。

大きな戦いが近いことを、少年達は否応なしに思い知る。

戦雲が、この大地を包み込もうとしていた。

聖ヨト暦三三〇年、アソクの月。

後に“永遠戦争”と呼ばれる戦いの火は、いまだ小さな燻りでしかない……

 

 

 

 


<あとがき>

 

柳也「どうもみなさんおはこんばんちはっす。永遠のアセリアAnother主人公、ゴミっぽい顔の桜坂柳也です」

 

北斗「最近若作りがたいへんな闇舞北斗です」

 

タハ乱暴「最近階段を上がるときに膝が上がらなくて困っているタハ乱暴です」

 

柳也「……全員、ボロボロだなぁ。さて、読者のみなさん、今回も永遠のアセリアAnotherEPISODE:15、お読みいただきありがとうございました!」

 

北斗「今回の話はどうだったろうか? 高嶺君が神剣の力を解放させて、物語が大きく進み始めたわけが、同時に柳也の周囲も動き始めた」

 

タハ乱暴「ラキオス王、レスティーナ、ダグラスといった面々から注目されることによって、悠人だけでなく柳也もまた望むと望まざるとに関係なく戦いに引きずり込まれていくのだった……」

 

柳也「そして〈求め〉を砕こうとする〈決意〉の存在! 今回の話は伏線たっぷりだぜェ……」

 

北斗「煽るのは別に構わないが、その伏線、ちゃんと回収し切れるんだろうな?」

 

タハ乱暴「……多分」

 

北斗「多分?」

 

タハ乱暴「いやさ、実はあんま自信ない」

 

北斗「左様か……読者のみなさん、今回も永遠のアセリアAnotherEPISODE:15、お読みいただきありがとうございました!」

 

柳也「次回もまたよろしく頼むぜ!」

 

 

北斗「しかし今回は本文もあとがきも短かったな」

 

柳也「言ってやらないでくださいよ。最近雨続きでタハ乱暴テンション低いんでさぁ」

 

タハ乱暴「おのれ低気圧めッ! 貴様は俺達天然パーマ族を殺す気か!?」




今回は戦いの後だな。
美姫 「悠人はちょっとピンチだったけれどね」
危うく乗っ取られる所だったもんな。
美姫 「今回は何とかなったけれど、次以降に求めを使ったらどうなるのかしら」
ああ、次回の展開も待ち遠しい。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。



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