『真一郎、御神の剣士となる』
第十四話 「真一郎、皆の想いを知る」
旅行四日目、早朝。
いつものように早朝鍛錬をしている真一郎だが、今日は1人ではなかった。
美沙斗、いづみ、薫、瞳と共におこなっていた。
昨晩、同じ御神の剣士である美沙斗と早朝鍛錬について話していたら、いづみたちが参加したいと言ってきたのだ。
早朝の鍛錬は基礎であり、御神流の深いところに迫るものでもないため二人は許可をしたのだ。
朝4時に起床し、5時前には鍛錬を始めていた。
毎朝、新聞配達のバイトをしているいづみは慣れていたが、薫と瞳は少し眠そうにしていた。
瞳はジョギング、薫は素振りと自主的な朝練はしていたが、それでも朝6時くらいにおこなっていたので、朝4時起床は早すぎたようだ。
しかし、さすがに鍛錬を始めれば目が冴えてきたのか、2人の動きはだんだんと活発になってきていた。
ある程度のトレーニングが終わり、打ち合いを始めようとしたとき、瞳が美沙斗に手合わせを申し込んできた。
「私と、手合わせ願えませんか?」
「……ちょっと…瞳ちゃん!?」
「………構わないわよ…」
こうして、瞳と美沙斗の手合わせが始まった。
「いったい何を考えているんだろう、瞳ちゃんは……」
美沙斗の実力を知りぬいている真一郎には、瞳の考えが分からなかった。
「……どうやら千堂の奴……昔の悪い癖が再発したみたいじゃな……」
薫がため息を吐きながら、真一郎に答えた。
「悪い癖!?」
「ああ、今は物腰が柔らかくなり、落ち着いているように見えるが、本当の千堂は、負けず嫌いで勝ち気な性格なんじゃ」
というより、我が侭で自分の思い通りにならないと気が済まない……それが瞳の本性である。
「耕介さんの話じゃと、千堂は子供の頃はかなりの暴れ者じゃったらしい。自分より強い者に何度負けても向かっていったそうじゃ」
「……なんでそこまで?」
「強くない自分が嫌いなんだそうじゃよ」
などと話しているうちに、瞳は美沙斗に関節技を極められていた。
「あれは、完全に極まっているな……」
「ええ、あれは外せないですね……」
畑違いとはいえ、組み打ちもある程度の知識がある薫。忍者として当然、体術の心得があるいづみ。
それぞれ、今、美沙斗が極めている関節技からは脱出出来ないことを悟っていた。
結局1分間足掻いていたが、一向に外れないので真一郎が見かねてストップをかけた。
しかし………。
「もう一度、お願いします」
瞳は再び美沙斗に挑むようだ。
「……本当に負けず嫌いなんだね……瞳ちゃん…」
真一郎もため息を吐いた。
「相川…」
再び始まった、瞳と美沙斗の手合わせを見ていた真一郎に、いづみが声をかけた。
「なんだよ、御剣?」
「とりあえず、私と手合わせしてもらえないか?」
いづみが、真一郎に頼むと薫が割り込んできた。
「……うちは美沙斗さんとやってみたかったんじゃが、千堂のあの調子じゃ、今回は無理のようじゃからな……相川君。うちと打ち合ってくれないか?」
「神咲先輩、先に頼んだのは私ですし、先輩は時々、相川と鍛錬していたらしいじゃないですか。今回は譲ってください!」
珍しく、先輩である薫に遠慮せず強行に主張したので、薫はいづみに譲ることにした。
その間に、瞳が美沙斗に投げ飛ばされていた。
「……もう一度!!」
またしても、美沙斗に挑む瞳を見て薫は苦笑していた。
一方、真一郎といづみは……どうやら得物は真剣で寸止め方式で行うようであった。ただし、投げ物に関しては訓練用の物を使うようだが…。
いづみは、真一郎に対し愛用の苦無、『影丸』(訓練用)を何本も投げていたが、真一郎はそれを全て紙一重でかわしていた。
忍者としての脚力を使い、四方八方から攻めているのだが、真一郎はいづみの動きを完全に見切っていた。
否、真一郎は目を瞑っていた。
御神流、『心』。
自らの死角となる場所の人間の動きを察する御神流の技術である。
本来は、隠れている相手の動きを探るために使う技であるが。
忍者だけあり、いづみの体術はそうとうなものがある。
故に真一郎は目を瞑り、全てを死角とし、『心』を使いいづみの動きを読んでいるのだ。
目を瞑っているが故に、忍者のトリッキーな動きに惑わされず、確実に迫ってくる『影丸』をかわしているのだ。
避けたり、小太刀で弾き落としたり……ついにいづみは手持ちの影丸を全て使い果たしてしまった。
いづみは、懐から『円架』を取り出しだ。
この武器は、いづみが叔父さんからもらった片刃の手裏剣である。
これも一応飛び道具であるが、いづみはこれをよく接近戦に利用するのだ。
いづみは真一郎に『円架』を突き出した。
真一郎は、それをしゃがんでかわし、そのままいづみの足を払った。
「うわっ!」
「御剣……足元がお留守になっているぞ…」
足払いによりバランスを崩したもののなんとか踏み止まるが、喉下に『夢景』の切っ先を突きつけられていた。
「………」
「勝負あり……だな」
「……ああ……私の負けだ…」
いづみが負けを認めたので、真一郎は『夢景』を鞘に収めた。
「攻撃に集中しすぎて、防御をおろそかにしすぎだな……攻撃は最大の防御とは言うけど、その攻撃を見切られたら隙だらけになるぞ」
いづみは改めて、真一郎の実力を理解した。
自分よりも遥かに優れた実力者であることを……。
「相川!」
「何?」
「これからも、私と鍛錬してもらえないか?」
いづみは、今まではほとんど1人で鍛錬をしていた。
たまに、瞳に不意打ちOKの手合わせに付き合ってもらっていたが、最近伸び悩んでいたのだ。
今回の真一郎との手合わせは、瞳との手合わせ以上に手応えがあった。
やはり、本当の意味での実戦を知っている真一郎の方が、忍者としての鍛錬に向いていると感じたのだ。
「………それはいいけど、俺は師匠には向かないから、お前に教えるなんてことは出来ないぞ…」
「ああ、流派が違うからな、師事はしないよ……手合わせしてくれるだけでいい」
真一郎は、いづみとの鍛錬を承知した。
いづみは真一郎に対する見方が少し変化していた。
高校で一番最初に仲がよくなった友達。無意識に好意を抱いていた男。
そして、自分と同じ世界に生きている男という新たな認識を持ったのだ。
忍者は、裏世界に深く関わる職業である。
当然、殺し合いも行う。
いづみは、そんな道を歩む自分と一般人との恋愛は、上手く行かないと思っていたのだ。
友人として付き合う分には問題ないだろう。
しかし、恋人となったら、自分とその男は耐えられるだろうか……そう思っていたのだ。
それが、真一郎に対する想いに気付かぬふりをしていた理由の一つだった。
しかし、真一郎は一般人ではなかった。
いづみは、自分の心に引っかかっていた躊躇いが解消するのを感じていた。
さて瞳は、その間に投げられ、叩き伏せられ、最後には絞め落とされていた。
「なかなか、しつこい娘だな……」
瞳を絞め落とした美沙斗は苦笑していた。
「すいません美沙斗さん。千堂が迷惑をお掛けして……」
薫は、恐縮して謝罪していた。
★☆★
朝の鍛錬を終え、別荘に戻ってきたいづみは火影の部屋に来ていた。
「兄様……まだふてくされているんですか?」
昨日、今月分の給料を真一郎、唯子、みなみにたかられた火影がふてくされていた。
「相川君といい、あの2人の女の子といい……鬼だ……」
まず、唯子とみなみの2人に昼食と夕食を奢ったのだが……2人で昼、夜併せて100人前喰われた。つまり、唯子とみなみは1人で50人前平らげたことになる。
しかし、高給取りである火影の給料はそれだけでは無くならない。かなり厳しくなるにしても……。
丁度、この可南海岸の近くの街で世界の酒展示販売会が開かれていた。
真一郎はそこで、耕介、真雪、桃子の三人の為のお土産として、限定地域でのみ作られる高級ワインを10本買い、火影にその代金を出させたのだ。
1本で軽く3万円するそのワインを10本。
それぞれ3本ずつ耕介たちに送られ、最後の1本を昨晩、火影と美沙斗とさくらの3人で飲んだ。
そのワインは確かに絶品であり、火影も満足していたのだが……10本買ったわけだから、30万円も支払ったのである。
それで、今月の給料は無くなってしまったのだ。
しかし、いくら女装写真の仕返しとはいえ、真一郎がここまでするのは訳があった。
鬼崎龍次に不覚を取った火影の部下は、実はかなりの問題児であったのだ。
実力は、火影の部下の中でもトップレベルなのだが、それを鼻にかけ、よくサボったりしていたのだ。
あまりにも目に余るので、免職にすべきという声も上がっていたのだ。
しかし、火影はその男の実力を惜しいと思い、今回の任務に参加させたのだ。
ラストチャンスとして……。
しかし、またしてもサボっていた所、鬼崎に不覚を取られ、大失態を犯してしまったのだ。
流石に、これ以上庇うことも出来ず、とうとうその男を懲戒免職にしたのはいいが、そのことを知った真一郎は怒りを隠さなかった。
火影の寛容さはともかく、その男を付けなければ、あの4人を逃がすこともなく、唯子たちに危害が及ぶこともなかったかも知れない。
火影の余計な情けが、唯子たちを危機に追い込んだのだとすれば、真一郎としても内心穏やかではいられなかった。
ゆえに、意趣返しも含めて、十分に奢らせることでチャラにしようとしたのだ。
まあ、唯子とみなみが本当に遠慮なしに喰いまくるとは真一郎も思っていなかったが……。
「まあ、確かに……あの男を見誤った俺に責任があるし……相川君をおもちゃにして楽しんだのも事実だからな……多少仕返しされるのは覚悟していたが……」
ワインの件はともかく、唯子とみなみの食欲は完全に予想外だったのだ。
いづみは、唯子とみなみの食事量を思い出し、苦笑していた。
★☆★
いつもの午前中の勉強会。
結局、美沙斗にまったく歯が立たなかった瞳は少し不機嫌だったので、瞳に直接教わっているななかが少し怯えていた。
昼食が済み、今日も午後は海で遊ぶことになった。
真一郎は唯子、みなみ、ななかの3人とビーチバレーを楽しんでいた。
そんな真一郎を他の面々は見つめていた。
と、いうより真一郎の体の傷を見ていたのだ。
「……相川の体の傷……ようやく納得いったよ……」
真一郎の強さを知り、体の傷のことも納得した面々だった。
「………すまない」
美沙斗がいきなり皆に謝った。
「何がですか、美沙斗さん?」
謝られる理由が解らず、薫が訊き返した。
「……真一郎君のあの傷は……私が付けた傷だ……」
美沙斗は、この春の真一郎との死闘を……そして、自分の身の上も簡単に説明した。
「そうか!始業式の時のあの傷は……」
いづみは、一学期の始業式のときの真一郎の包帯姿を思い出した。
「私はあの時、真一郎君を本気で殺すつもりだった。しかし結果は私の敗北だった。復讐に囚われた私と、御神の真髄……護る為に戦っていた真一郎君。御神の剣士としてどちらが勝つかは自明の理だな。真一郎君が命がけで私を止めてくれなかったら……今の私はなかったかも知れない……」
美沙斗だけでなく、その前に恭也を救ってもらい、その後、美由希も救ってくれた真一郎。
いつしか、美沙斗は感謝とともに真一郎を弟のように思うようになっていた。
美沙斗は兄が2人居たが、自分より下の兄弟は居なかった。
だから、弟ような存在が出来たことを少し嬉しく思っていたのだ。
「美沙斗さん……真一郎の姉役はわたしですよ!」
瞳がふて腐れた表情で主張する。
「同じ流派で、共に戦うこともあるんだ……そういう意味でも私も真一郎君の姉役になれると思うが……」
美沙斗も主張する。
負けず嫌いで嫉妬深く、独占欲の強い瞳にとって、どうやら美沙斗は超えなければならない壁になったようであった。
真一郎の姉にも恋人にもなりたい瞳にとってまさに、美沙斗はライバルであった。
美沙斗は亡き夫、御神静馬に操を捧げているので、真一郎に対し恋愛感情は持ち合わせていないが……。
ビーチバレーが終わり、真一郎はしばらく日光浴を楽しんでいた。
そのうち、うとうとと眠りに入っていった。
そんな真一郎を、唯子と小鳥が見つめていた。
「美沙斗さん……」
唯子が火影とみんなを見守っていた美沙斗に声をかけた。
「何だい、鷹城さん……」
「しんいちろはいつ剣道を学んでいたんですか?」
小学生の頃は、自分と共に明心館空手の道場に通っていた。
中学に入った時、空手を辞め、唯子は護身道に転向。真一郎はそのまま何もしていなかった筈である。
それが、いつの間にか剣を持って、とんでもなく強くなっていたのだ。
「唯子が護身道の練習をしていた時、しんいちろは小鳥の家で一緒に料理をしたりしていた筈のに……」
「うん。真くん……殆ど私と一緒に居た筈……」
「それ以前に、たった4年ちょっとで……あんなに強くなるものなんですか……しんいちろがやってる剣道って……」
空手を学んでいたときは、唯子と真一郎の実力はそれほど差がついていなかった。
若干、唯子の方が強かったのだ。
そして、護身道に転向し、唯子の実力は風芽丘でも瞳に次ぐ実力者になっていた。
真一郎と唯子の実力差はかなり開いている筈であった。
そして、確かに真一郎と唯子の実力差は開いた。
真一郎が圧倒的な強さで、唯子を遥かに上回るという形で……。
「すまない……私が真一郎君に会ったのは、今年の春からだ……真一郎君がいつ御神流を学んだのかは、わからない……」
美沙斗は、申し訳なさそうに答えた。
「あと、訂正しておくが……御神流は『剣道』じゃない……『剣術』だ」
剣一本で『道』を往くのが『剣道』。
たくさんある戦闘技術の中で、一番、剣が得意である……と、いうのが『剣術』である。
「真一郎君が何時、誰に御神流を学んだのかはわからない……真一郎君も師匠の事はよく知らないらしいからな」
真一郎の強さは、あくまで超越者によって『高町恭也』の能力を宿らされたからであり、真一郎自身が修行して得た強さではない。
しかし、超越者だの、未来から『高町恭也』の魂が逆行して、真一郎に宿ったなどそんなこと言っても誰も信じる筈がないので、『高町恭也』スキル【真顔で嘘を吐く】を発動させ、誤魔化しているに過ぎない。
「それに、いくら御神流とはいえ、鷹城さんが言うようにわずか4年足らずであそこまで強くなることは……どれほどの才能に恵まれていても、恐らく不可能。実際、真一郎君の実力は、物心ついたときから御神流を学んでいる『御神』『不破』の血族に匹敵する」
真一郎の秘密を知らない美沙斗にとって、真一郎の実力は驚愕に値するものであった。
「しかし、私は……気にしていない……真一郎君に御神流を教えたのが誰なのか、何故、そこまで強くなったのか……今となってはどうでもいいことだ……少なくとも、真一郎君は私達家族にとっての恩人だ。私と甥の恭也、そして娘の美由希……真一郎君には感謝してもしきれない」
大切な家族を爆弾テロで失い、運命を呪っていた美沙斗だが……真一郎に逢えたことによって、多少、運命を見直していた。
「……そうだね……しんいちろはしんいちろだもん。どれだけ強くなっても……」
唯子も納得したようだ。
しかし、小鳥の表情は晴れなかった。
「でも、真くん……危険なことをしているんでしょう……そのことが心配だよ……」
「……うっ!それは確かに……しんいちろ……大丈夫かな……」
香港国際警防隊。
その活動内容を知り、不安になっている小鳥であった。
「啓吾さんもちゃんと考えている。正規の隊員ではない真一郎君に、そこまで辛い任務はそう簡単に回ってこないよ」
美沙斗がそう言うが、小鳥の表情はまだ晴れない。
「でも、何が起こるかわからないんですよね……」
「……だけど、俺は『御神の剣士』として……これからも生きていく……そう決めたんだ!」
寝ていた筈の真一郎が突然、話に割り込んできたので唯子と小鳥はびっくりして真一郎を見つめた。
ちなみに、美沙斗は真一郎が起きていることに気付いていたようだ。
「真くん!?起きていたの?」
「吃驚した〜〜〜〜〜!」
「小鳥が心配するのは分かる……でもこれは、俺が決めたことなんだ……護るために剣を振るう……それが『御神の剣士』の理なんだ」
『高町恭也』の力が宿った真一郎は、その力を『高町恭也』が望んだことに使おうと考えていた。
以前にも記述したが、真一郎は『高町恭也』を尊敬している。
彼が歩んできた人生……『御神の剣士』として、ただ護るために生き、そして死んだ人生。
犯罪組織『龍』を美沙斗、美由希、弓華と共に滅ぼしたのも、『自分の家族の仇』というだけでなく、自分が護ろうとしている人たちに危害を加える存在だからこそ、野放しに出来なかったからなのだ。
その結果、命を落とし……家族の皆を哀しませただろう。
『高町恭也』が爆弾の爆発の閃光に包まれるまでしか、未来の世界のことを知らない真一郎には、あの後、『高町恭也』の死を目の当たりにした美由希、美沙斗、弓華。そして、『高町恭也』の帰りを待っていた桃子、なのは、フィアッセ、晶、レン、忍、那美、久遠がどれだけ哀しんでいるか……想像するしか出来ない。
その事に忸怩たる想いを抱いているにしても、、『御神の剣士』として生き、そして死んだことに後悔していない『高町恭也』である。
超越者は、真一郎の好きにしていいと言ったが、真一郎は尊敬する『高町恭也』の力を、彼が望む事に使いたいのであった。
「ごめん……唯子、小鳥…」
真一郎は2人の頭を撫で、謝ることしか出来なかった。
いつか、真一郎も『高町恭也』と同じ末路を辿るかもしれない。それでも……。
火影といづみ、そして他の面々はそんな真一郎たちの話を黙って聞いていた。
「……相川……」
いづみは、真一郎を哀しそうに見つめていた
「人事ではないぞ、一角!『牙無き人の牙となり』生きていく以上はな」
「……はい…」
忍者として生きていくいづみも当然、任務中に死ぬ可能性がある。
「……だが、彼女たちと違ってお前は相川君と共に歩むことは出来よう…」
「兄様!?」
「いい加減、自分の想いを認めたらどうだ……お前が相川君に好意を寄せていること、この兄はお見通しだ……相川君が『義弟』なるのは歓迎だぞ」
真っ赤になるいづみ。
「ちょっと待ってください!私だって、先輩のお役に立てますよ」
さくらが主張する。
『夜の一族』として、純粋な『力』に関してはこの中で一番強いのが、さくらである。
戦闘技術に関しては、真一郎、美沙斗、火影に劣るであろうが……。
忍、瞳、薫、ななか、みなみもむっとしていた。
「私だってさくら程じゃないけど『夜の一族』としての力があるし、ノエルが居れば真一郎君を護ることもできるもん!」
「確かに今は美沙斗さんより劣るけど……いつか追いついて真一郎を護れるようになるわ!『姉』として!!」
忍と瞳がそう主張する。
「うちも……相川君の助けになることは出来る」
神咲一灯流は人間に対してもそれなり有効である。
以前、『人工HGS計画』……戦闘用のHGS患者を量産する計画……の為に知佳とリスティを連れ去ろうとした佐波田女史の手の者を耕介と2人で制圧したことのある。
退魔師として、畑違いではあるだろうが……。
護身道をやっているとはいえ、瞳や唯子ほど強くはないのだが、それでも真一郎の恋人候補に加わりたいななかだった。
荒事が苦手なみなみも、真一郎が自分と住む世界が違うからと、諦めたくはなかった。
ななかも、みなみもそれぞれの想いを口にする。
「………」
みんなの声がはっきりと聞こえていた真一郎は、呆然と見つめていた。
まさか、皆が自分をそんな風に見ていたとは思いも寄らなかったのだ。
『高町恭也』程ではないにしても、真一郎もかなり鈍感なので気付いていなかったのだ。
「唯子だってしんいちろのこと好きだもん!」
「……私も……昔から真くんのこと……」
唯子と小鳥も参戦する。
「……もてもてだね、真一郎君……」
今だ固まっている真一郎の肩を叩き、美沙斗が苦笑していた。
〈第十四話 了〉
後書き。
第十四話。いかがだったでしょうか。
恭也「告白……」
お前ほどじゃないけど、真一郎も鈍いからな……。
恭也「何を言う。相川さんならともかく、俺のようなつまらん男を好きになる女性など居るはずがないだろう」
これだから、自分の魅力に気付かない男って奴は……本当にいつか嫉妬に狂った男に刺されるぞ……って素人に刺される奴じゃないか…。
恭也「ところで、みんなの気持ちを知った相川さんはどうするんだ?」
まあ、悩むことになるだろうな……
恭也「鷹城先生やさくらさんたちのお互いの仲は大丈夫なのか」
それは大丈夫。好きな男が一緒だからといって、友情をないがしろにする娘たちじゃないからな。恋愛によってどろどろの関係になるっていう恋愛ものの定番とは無縁だ。彼女達は友達として仲良くしながら、真一郎を取り合う……こういうヒロイン達だからこそ、私、かのものはとらハが好きなんだよ
恭也「お前は、ヒロイン同士のどろどろ関係は嫌いだからな」
恋愛バトルも清々しいのが大好きですので……では、これからも私の作品にお付き合いください。
恭也「お願いします」
いやー、まさかのヒロインたちの告白。
美姫 「これから先、色々と大変そうよね」
だよな。まあ、その辺りのドタバタはちょっと楽しみだけれど。
美姫 「これからどんな風に鳴るのかしらね」
次回が楽しみです。
美姫 「続きを待っていますね」
ではでは。