『真一郎、御神の剣士となる』

第十三話 「真一郎、実力を明かす」

 

忍の別荘の風呂は露天風呂である。

みんな嬉しそうに露天風呂に入っていた。

その頃、真一郎はさくらの訪問を受けていた。

「先輩。改めて忍を助けていただきありがとうごさいました」

安次郎に誘拐された忍を助けたのが真一郎だと知ったさくらは、真一郎に礼をしていた。

「……先輩は…私が『夜の一族』だということを知っていたんですね?」

「……まあね……でも、馴れ馴れしく『俺は知っている』とは言えないからね……」

さくらも納得した。

そんなことを言われたら、おそらく自分は警戒しただろう。

「……ところで、大丈夫なの?」

「何がですか」

「夏の日差しはさくらちゃんには厳しいんじゃない……?」

さくらは、『夜の一族』としての食事をしていないため、貧血気味なのだ。

「……俺のでよければ提供するけど……」

「え!?」

真一郎の申し出にきょとんとするさくら。

「いや、俺の健康を害さない程度だったら血の提供をするって言っているんだ。確か、『夜の一族』は異性の血しか受け付けないはず……さくらちゃんの心に決めた人が見つかるまで、俺の血でよかったら吸ってくれてもいいよ……」

心に決めた人。

さくらにとってそれは真一郎であって欲しい……と思っている。

さくらは、もはや真一郎に夢中と言っていいほど惚れている。

血を吸うには、相手の首筋に口を近づけなくてはならない。

嫌いな相手の首筋に口など近づけたくないだろう。

正直、今のさくらにとって真一郎以外の男にそういう行為をしようとは思わない。

まだ、真一郎は自分の気持ちに気付いていない。

純粋な善意の申し出だ……。

しかし、その甘美な言葉に抗えないさくらであった。

「では……ほんの少しだけ……」

そう言うと、さくらは真一郎の首筋に自らの唇を近づけ……少し舌を動かして軽く吸う。

真一郎は、くすぐったさと心地よさを感じていた。

そして、少し痛みを感じた……真一郎の頚動脈から血が噴出する。

さくらは、こくんと喉をならしその血を飲む。

5回ほど喉をならした後、さくらは真一郎の首筋の傷を舐め始めた。真一郎は再びくすぐったさを感じていた。

やがて、首筋の傷と痛みが消える。

さくらの唾液の治癒能力は、人間のそれを遥かに上回る。

もうすっかりと痛みが消え去っていた。

「ごちそうさまでした」

さくらは満足そうに微笑んでいた。

実際、さくらが吸血行為をしたのは今回が初めてである。

それまでは、輸血用のパックの血を飲んでいたのだ。

そして、それは美味しいとはとても言えないものなのだ。

大好きな真一郎の血を初めて飲み……さくらは至福を味わっていた。

 

真一郎は、さくらから夜の鍛錬に向いている場所を教えてもらい、そのまま鍛錬に出掛けた。

2時間ほど鍛錬し、風呂を頂いて就寝した。

 

 ★☆★

 

翌日。

小鳥の作った朝食を全員で食べていた。

「……ふむ、野々村の料理はとても美味しいな…」

小鳥の料理を初めて食べる薫と瞳とななかとさくらと忍は、その美味しさに驚いていた。

さざなみ寮管理人、槙原耕介の料理とはまた違った美味しさであった。

「小鳥は俺の料理の先生だからな」

「唯子も小鳥の料理はママと同じくらい大好きだよ」

幼なじみの絶賛に、少し照れる小鳥であった。

「さて、野菜ジュースだけど……正直、あまり美味しくないけど欲しい人は手を挙げて」

真一郎が聞くと、アスリート組全員が手を挙げた。

それぞれ、ジュースを受け取り飲み始めた。

野菜はそのまま食べるよりもジュースにして飲むほうが栄養素を損なうことなく摂れる。

真一郎の作った野菜ジュースは余り美味しくないのは確かだが、りんごとヨーグルトが入っているため、それほど不味くはなかった。

「はい、小鳥も飲む……もっと成長する為に」

「ううっ…多分もう止まっています…」

拗ねながらも、真一郎に渡された野菜ジュースを飲む小鳥であった。

 

 

さて朝食が終わり、午前中の涼しい時間に夏休みの宿題をすることになった。

みなみとななかのそれぞれ両脇に、薫と瞳が座った。

先輩2人に監視され、逃げることも叶わず泣く泣く宿題に取り掛かる2人であった。

 

 

昼食は真一郎の作ったサンドイッチであった。

唯子と小鳥はもちろん、一年のときに食べたことのあるいづみとみなみ、一学期の中間試験のときに食べたことのあるさくら、ななか、瞳の3名は嬉しそうに食べ、真一郎の料理を初めて食べる薫は真一郎の料理の腕を知り、純粋にすごいと思った。

耕介といい、真一郎といい自分と親しい男性は皆、料理が上手なのだ。

薫は、みなみと違いそれなりに料理が出来るが、その腕は普通のレベルであり、正直、女として少し悔しい思いをしていた。

 

 

さて、みなみとななかの宿題は、本日のノルマを何とか終えることが出来たので、午後は泳ぐことになった。

皆それぞれ水着に着替え、早速浜辺に向かった。

唯子の水着は、今年新しく買ったビキニであった。

『まだ、ところどころ成長している』とのこと。

いづみは、スポーツタイプの水着でスレンダーな体格のいづみによく似合っていた。

薫の水着は、白のワンピースで薫のイメージにびったりであった。

瞳は、白のビキニに空模様のバレオを付け、一番色気があった。

小鳥とみなみとななかは………言うまでもあるまい。

「なんか、失礼な事考えているね……」

いえ、滅相も無い。

さくらと忍は水着に着替えておらず、パラソルの下に座っていた。

真一郎もパーカーを着て、さくら達と一緒にいた。

「しんいちろ!一緒に泳ごうよ」

唯子が真一郎の手を引っ張り連れ出そうとした。

「いや、俺はいいよ」

「う〜……唯子と泳ぐの嫌なの……」

唯子が涙ぐんだ。

「お…おい、泣くことないだろ…」

「うぅ〜〜……」

「わかった……泳ぐ、泳ぐから!」

「ほんと!」

ぱっと唯子の顔が笑顔に変わった。

さっきのあれは……うそ泣き!?………女って怖いなぁ……。

真一郎は仕方なく、パーカーを脱いだ。

「「「「「「「「「!!!?」」」」」」」」」

その瞬間、唯子たちの表情が変わった。

パーカーを脱いだ真一郎の体に無数の傷が現れたのだ。

そのどれも、刃物の傷であった。

そう、これはこの春に美沙斗と死闘を繰り広げたときに付いた刀傷であった。

『高町恭也』の傷に比べれば少ないが……。

真一郎の実力を知っている薫、忍、さくらの3人は納得したが、他の面々は真一郎の綺麗な顔に不釣り合いな傷を見て呆然としていた。

「……真くん!?」

「……ん…なんだ小鳥……」

「……ううん……なんでもない……」

皆、真一郎の傷の原因を知りたいと思ったが、何故か訊く事が出来なかった。

「……真一郎……ごめん……」

唯子が今度は本当に半泣きになり、真一郎に謝った。

「気にするな」

真一郎は、優しく微笑んで唯子の頭を撫でた。

 

 ★☆★

 

夕食は小鳥といづみに任せ、真一郎はさくらと共に町に出ていた。

散歩がてらに本を買いにきたのだが、歩いていた2人の近くに車が停車した。

「相川君!」

中から火影が出てきた。

「火影さん!?どうしたんですか」

「済まないが乗ってくれないか!」

せっぱ詰まった表情の火影に圧倒された2人は後部座席に乗り込んだ。

見てみると車には美沙斗も乗っていたのだ。

「美沙斗さんまで……何かあったんですか?」

火影の話はこうだった。

国際指名手配を受けている危険人物4名が密入国してきたので、捜査していた火影は彼らを見つけることが出来たのだが、部下のミスにより取り逃がしてしまったのだ。

その4人がこの町に潜伏していることを突き止めた火影は万全を期するため、丁度任務を終え帰国していた美沙斗に協力を要請した。

そして、美沙斗から真一郎がこの町に旅行に来ていることを知った火影は、真一郎にも協力を要請するため真一郎のいる別荘に向かおうとしていたのだ。

その指名手配犯たちの手配書を見せてもらった。

 

曹光琳。

鬼崎龍次。

ロドニー・ストロング。

クリストファー・V・フレーゲル。

 

さくらが驚愕した。

「どうしたの?さくらちゃん」

「……このクリストファー・V・フレーゲルという男は……私と同族です」

クリストファー・V・フレーゲル元伯爵。

数年前に『夜の一族』から永久追放を受けた男であった。

彼は、一週間で30人以上の人間の女性の血を全部吸い尽くし虐殺した男であった。

余りの残忍ぶりに、『夜の一族』に制裁として、能力を封印され、爵位を剥奪され、追放されたのである。

「不味いです。先輩!この男は忍の別荘の場所を知っています」

真一郎も理解した。

忍の別荘の場所を知っているということは、その場所を潜伏場所に選んだということだ。

『夜の一族』の私有地であるあの場所はそう簡単に捜査の手を伸ばすことは出来ない。

クリストファーはそこに目をつけたのだろう。

「このままじゃ、みんなが危ない!!」

火影も頷いた。

この旅行には、妹のいづみも参加している。

しかし、まだまだ未熟者のいづみに他の者を護りながらこの手配犯たちを相手にするのは不可能だろう。

「……ノエルさんが居るから、最悪の事態にはならないだろうけど……」

「クリストファーは、もう何百年も生きています。エーディリヒ式の自動人形の弱点も知っているはずです」

たとえ、能力が封印されていようが、知識は封印されてはいない。

この別荘に忍とノエルが居たときの為に、何か対策を練っているはずであった。

「火影さん。急いで下さい!!」

 

 ★☆★

 

夕食は、バーベキューにしようと浜辺で準備をしていた唯子たち面々だったが、突如襲ってきた4人組に囲まれていた。

「フフフ、久しぶりですね……忍……いや、貴女は幼かったから覚えておりませんな……」

クリストファーは笑いながら忍に刃物を突きつけていた。

「誰?」

「クリストファー・V・フレーゲル。忍お嬢様を放してください」

彼に関するデータを持っていたノエルが、クリストファーを睨みながら言った。

「断るよ、エーディリヒ式。忍を人質にしている限り、お前達エーディリヒ式は手を出せない。自らの主を見捨てることが出来ないようプログラムされているお前たちにはね……」

最終機体イレインとは違い、エーディリヒ式 最後期型は主に忠実なプログラムを施されている。

故に、忍を人質に取られれば、忍の安全を第一に考えるノエルは手も足も出ないのである。

「丁度、上手そうなバーベキューがある。たっぷりと腹ごしらえができそうだな」

龍次がそういいながら、もう焼けていたバーベキューを掴み、それを食べ始めた。

「お前達は、国際指名手配犯の……」

手配書を見たことがあるいづみがそう叫んだ。

「ほう、俺達のことを知っているとは、お嬢ちゃんはそっち方面の人間か!」

曹が、流暢な日本語でいづみの問いに答えた。

日本語を喋れないロドニーは何も語らず、龍次と共にバーベキューを食べていた。

「ふふふ、これほど美しいお嬢さんたちがいらっしゃるとは…しばらく食事に困りませんね」

唯子たちの血を吸う気満々のクリストファーであった。

「伯爵。アンタの食事にする前に俺達にも楽しませてくれよ」

龍次がにやけた顔で、クリストファーに頼んだ。

「ふむ、処女の方が美味しいのですが……まあ、これだけ居るのですから貴方達にも楽しませてあげましょう」

唯子と小鳥とみなみは完全に怯えていた。

唯子は道場や試合では強いのだが、道場から1歩外に出ると普通の女の子になってしまい、まったく役に立たない。

瞳は、何とか隙を見て飛びかかろうと考えているが、この4人は今まで瞳がストリート・ファイトで闘ってきた相手とは比べものにならないくらい強いので、瞳は中々隙を見つけることが出来ずにいた。

薫は、霊剣『十六夜』を別荘に置いてきていたので、対処できずにいた。

ロドニーが小鳥の手を掴んだ。

「い……痛い!」

ロドニーの馬鹿力に苦痛の悲鳴を上げる。

ロドニーはロリコンである。

故に、小鳥で楽しもうと考えていたのだ。

そのとき、黒い影二体が、クリストファーとロドニーに飛び掛かってきた。

2人は対応できず、それぞれ捕まえていた忍と小鳥を奪い返されてしまったのだ。

黒い影の正体は、『神速』の領域に入っていた真一郎と美沙斗であった。

目にも写らぬ速さで、人質を奪い返した真一郎と美沙斗は固まっていたノエルたちの傍に来た。

「ノエルさん、御剣!忍ちゃんと小鳥、そしてみんなを頼むぞ!!」

「え……相川!?」

「かしこまりました。真一郎様」

突然の出来事に呆然としているいづみだったが、ノエルが皆の護衛に入ったのを見て自分もそれに倣った。

 

 

「クリストファー!よくも忍を…そして、先輩達に危害を加えようとしたわね!!」

怒りに燃えるさくらが、クリストファーに襲い掛かった。

「お…お前は、さ……さく……ぐはっ!!」

能力を封印されたクリストファーでは、さくらにはまったく歯が立たず、その爪の一撃を喰らい瞬殺されてしまった。

 

 

ロドニーの前には、美沙斗が立ちふさがっていた。

ロドニーは自慢の怪力で美沙斗に襲い掛かるが、スピードに関しては御神流の中でも、高町士郎や御神静馬以上であった美沙斗を捉えることは出来なかった。

しかし、そのタフさは凄まじく、美沙斗の攻撃を受けても平然としていたのだ。

「……私の一撃が効いていない……ならば…」

美沙斗は距離を取り、己の最も得意とする奥義の構えを取った。

 

小太刀二刀御神流 裏、奥義之参 『射抜』

 

超射程の刺突がロドニーに襲い掛かる。

しかし、ロドニーはそれを物ともしなかった……が、それが過ちであった。

『射抜』の真髄は、その刺突では無くその後に続く派生にある。

 

『雷徹』

 

御神流最大の威力を誇る『雷徹』の直撃を喰らってしまい、さしものロドニーも一溜まりも無かった。

ロドニーはその場に倒れ付した。

 

 

龍次の前には火影が立ちふさがった。

「今度は逃がさん!!」

「へっ、この間の忍者か……馬鹿な部下をもってご苦労さんだな!」

その一言に、表面上は冷静だったが、内心は煮えくり返る火影であった。

ミスをした部下はこの龍次に不覚を取ってしまったのだ。

龍次は、短刀を逆手に持ち構えた。

そう、彼もまた忍者であった。

火影と龍次の実力は伯仲していた。

短刀の斬撃が、手裏剣が、苦無が飛び交う。

距離を取った火影は、四方八方から手裏剣と苦無を放った。

 

蔡雅御剣流、『乱翔陣』

 

「フッ、甘いわ!!」

龍次は、四方八方から飛んでくる手裏剣と苦無を叩き落としていた。

だが……!!

「ぐっ!?」

龍次の背中に、黒く塗られていた苦無が数本突き刺さっていた。

「こ……これは…」

 

蔡雅御剣流、『影苦無』

 

この技は、闇夜に有効な技である。

周りが暗いときに、黒く塗られた苦無を普通の苦無と共に放つ。

当然、他の苦無は見えるが、黒く塗りつぶされた苦無は見えず、相手の防御を掻い潜るのだ。

「……ち……畜生…」

ご丁寧に影苦無に痺れ薬を塗っていたので、龍次は体が痺れて動けなくなった。

 

 

真一郎と曹との闘いが始まっていた。

真一郎は今まで、その実力を唯子たちには隠してきた。

しかし、真一郎は『御神の剣士』である。

その真髄は『護る』ことにある。

唯子たちにばれるのと、唯子たちの命を護ること……それを天秤に掛ければどう動くかは、自明の理であろう。

大切な者を護るため、真一郎は皆の前で御神の剣を振るう。

 

真一郎と曹の実力も伯仲していた。

真一郎の『斬』を、曹の鋼鉄製のトンファーが防いでいた。

曹のトンファーの一撃に対し、『貫』で対抗する真一郎。

攻防はしばらく続いていた。

「……小僧…お前があの噂の奴か……『人喰い鴉』を倒した少年と言うのは……」

「……答える義理はない!」

真一郎は飛針を数本放った。

曹はあっさりとそれを交わしたが、腕に違和感を感じた。

「こ……これは!?」

曹の腕に鋼糸が巻きついていたのだ。

曹は力任せに引き千切ろうとしたが、それが失敗だった。

その鋼糸は0番だったのだ。

極細の鋼糸は、そのまま曹の腕に食い込んだ。

後もう少し強く引っ張れば、曹の腕は落ちていただろう。

とっさに気付いた曹は、懐にしまいこんでいたナイフを取り出し、鋼糸を切った。

しかし、無傷とはいかず、曹の右腕は使えなくなった。

「……やるな……だが、俺は左利きなんでな……右よりも左の一撃の方が強力だぞ!」

曹は右手のトンファーを左手に持ち替えた。

2人はお互い距離を取る。

曹は渾身の一撃を真一郎に放つため、力を溜めようと一瞬目を瞑った。

そして、いざ攻撃をしようと目を開けたら、真一郎が眼前に迫っていたのだ。

「なっ!?」

曹が目を瞑った一瞬の内に、真一郎は『神速』を使い間合いを詰めたのだ。

 

小太刀二刀御神流、奥義之六 『薙旋』

 

抜刀からの四連撃を喰らい、曹の意識は途切れた。

 

 ★☆★

 

唯子、小鳥、いづみ、瞳、ななか、みなみは、真一郎を呆然と見つめていた。

特にいづみは、真一郎があの『御神の剣士』であったことに、衝撃を受けていた。

瞳も、これほどの強さを持つ真一郎にまったく気付かなかったことに驚愕していた。

「……真一郎……何で、気付かなかったのかしら?」

「おい、千堂。まさか、また悪い癖が出たんじゃないだろうな…」

薫が瞳に注意する。

「……まさか神咲さん。貴女は真一郎のこと……知っていたの?」

「…ああ!」

薫は肯定した。

義姉弟の契りを交わし、瞳に一歩、先を越されたが、薫は薫で真一郎の強さを知っていたという優越感があった。

唯子と小鳥は、とても信じられなかった。

確かに、真一郎は小学生の頃、空手をやっていたので強いことは知っていたが……まさか、こんなにも強いとは思いも寄らなかったのだ。

しかも、空手ではなく剣を使っていたのにも驚いていた。

「真くん……」

「しんいちろ……」

呆然としている2人に真一郎が近づいてきた。

「2人とも、無事か!?」

2人は、コクコクと頷いた。

真一郎はホッとして、2人を抱きしめた。

いきなりのことに吃驚する唯子と小鳥だが……

「良かった……お前達に何かあったら……俺は……」

真一郎が泣いていることに気付いて、大人しくなった。

そして、真一郎の強さについての疑問もどうでもよくなった。

2人は、真一郎が自分達を大事にしてくれていることを再認識したのだ。

どんなに強くなっても、真一郎は自分たちが大好きな真一郎のままなんだ……と…。

唯子と小鳥は、真一郎を抱き返ししばらく3人は抱き合っていた。

当然、周りのみんなは嫉妬していた。

 

 ★☆★

 

国際指名手配犯の4人は、火影の部下達に連行されていった。

そしてさくらは、自分の一族の事をみんなに話した。

みんなから避けられることを覚悟の上で……。

しかし、みんなはその事実を受け入れた。

幽霊の七瀬も受け入れたのだ。

いまさらさくらが吸血鬼だと知っても、それでさくらを仲間はずれにする唯子たちではなかった。

さくらと忍は、真一郎と同じく自分達を受け入れてくれた彼女たちに感謝した。

 

みんなは真一郎のことも聞きたがったので、真一郎は『高町恭也』スキル【真顔で嘘を吐く】をときたま発動させながら『御神の剣士』としての自分について説明した。

香港国際警防隊、民間協力隊員であることを説明したとき、いづみが驚愕の声を上げた。

「あの世界最強の武装集団の一員なのか?相川は……」

「あくまで協力者だけどな……」

「……真くん……危ないよ……」

真一郎が危険なことをしていると知った小鳥は泣きそうになっていた。

「大丈夫だよ……小鳥…」

真一郎は、小鳥の頭を撫でながら諭した。

 

 

今回、こんなことがあったが旅行はそのまま続けることになった。

一応、念のために美沙斗と火影の2人も滞在することになったが……。

しかし、火影はここに残ったことを後悔することになった。

以前の女装写真の仕返しに、あの連中を逃がした件で散々と真一郎に嫌味を言われたのだ。

部下のミスは上司の責任……ということで、真一郎は唯子とみなみを味方につけ、翌日、火影にたくさん奢ってもらった。

唯子とみなみの想像を絶する食欲で、今月の給料を使い果たした火影は、泣く泣く貯金を下ろす羽目になった。

 

〈第十三話 了〉

 


後書き

 

恭也「なんか、都合のいい話だな」

以前も言ったと思うけど……この話はご都合話だと……。

恭也「まあ、それはともかく、とうとう相川さんの強さを皆が知ることになったな。ついでにさくらさんと月村のことも……」

これは当初から予定していたことだけどね……でも、真一郎がお前の身体能力を受け継いでいることは皆、知ることはないけどね。

恭也「で、次回は?」

旅行の話だけど……ぜんぜん考えてません。

ということで、これからも私の作品にお付き合いください。

恭也「お願いします。って逃げたな……」




皆にばれてしまったな。
美姫 「緊急事態だったもの、仕方ないわよ」
だな。それに御神の剣士としての記憶を持っている以上、護るを捨てられないだろうし。
美姫 「さくらの事と合わせて、小鳥たちも受けいれてくれたし、結果としては良かったじゃない」
だな。しかし、火影だけはちょっと可哀相と言うか。
美姫 「あの二人が遠慮せずに食べればねぇ」
合掌。
美姫 「それじゃあ、今回はこの辺で失礼します」
また次回を待っています。



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