『真一郎、御神の剣士となる』

第八話 「真一郎、試験勉強をする」

 

真一郎は、図書室に足を向けた。

明日の中間試験で、いづみと『順位の低いほうが1日下僕となる』という賭けをしたからだ。

真一郎は、唯子に勉強を教えてもらおうと考えたが、同じクラスの強みか、一足違いでいづみが先に約束取り付けていた。

賭けをしている以上、一緒に勉強をすると足の引っ張り合いになり問題ゆえ、真一郎は1人で勉強しなければいけなかった。

いづみは勝負事となると、体育の授業だろうと、カラオケだろうと、トランプだろうと熱くなるので、今回もかなり燃えているようだ。

ちなみに、この件については『高町恭也』の記憶は当てにならない。

真一郎の方が『高町恭也』より成績がいいからである。

授業中、ほとんど居眠りをしていた『高町恭也』の成績は下から数えた方が早い……何故、彼が海鳴大に合格できたのかは、誰もが首を傾げるところである。

 

 ★☆★

 

「やあ、さくらちゃん」

「相川先輩、こんにちわ…」

図書室に入った真一郎は、さくらと挨拶した。

真一郎とさくらは、それなりに親しくなっていた。

鳥と戯れるさくらと話したり、図書室の貸し出しカードで切った指を咥えて止血してもらったりと、最初は警戒していたさくらも真一郎に心を許すようになっていた。

そして、小鳥がさくらと親しかったため、その縁で更に親しくなった。

真一郎は、『綺堂さん』から『さくらちゃん』に呼び方を変えていた。

しかし、まださくらは真一郎が姪の忍と友人付き合いしていることは知らなかった。

 

「明日から試験だね……」

「そうですね」

「勉強、どうしてる?」

「…人並みにやってます。先輩はお友達と?」

「そのつもりだったんだけど……出来なくなってしまった……」

「……?」

さくらと話していると後ろから声を掛けられた。

「あら、相川君…」

振り返ると、瞳とななかの2人がいた。

「あ、千堂さんにななかちゃん……2人もここで勉強ですか?」

「ええ、それと井上さんの勉強を監督しなくちゃね!」

怒っている表情でななかを見る瞳。その雰囲気にすっかり怯えているななかであった。

「どうしたんですか?」

「井上さん、前回の実力テストの点数、ほとんど赤点だったらしいんですよ……成績が低くても赤点さえ取らなければいいですだけど……流石に全教科赤点は見過ごせないからとりあえず、みっちり扱かないとね……」

「……あうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」

「ははっ、そういえば岡本も去年、テストの点数が悪くてバスケ部の先輩にどやされていたっけ……」

「バスケ部もうちの護身道部と剣道部と同じく『勉学をおろそかにしない』がモットーですからね……特待生とはいえ、成績が余りに悪すぎるとレギュラーから外されてしまうらしいですよ…」

そういうわけで、みなみはいつもテスト前になると、ヒィヒィ言いながら同じ寮生の仁村知佳に勉強を見てもらっているのだ。

「相川君は、そちらの方と勉強ですか?」

「いえ、少し話をしていただけです。ちょっと友人と試験結果を競うことになりまして……勉強しに来たらばったり会いまして……」

「誰かと競う事はいいですよ、自身の向上に努める事ができますからね……」

「……綺堂さんも、実力テストの成績は悪かったはずですよ〜」

「あら、そうなんですか?」

「……はい、ここに入学できたのは帰国子女優待制度のお蔭ですから……私の漢字知識は小学生レベルですから……」

「へぇ、さくらちゃんって帰国子女なんだ?」

流石にそんなことまでは『高町恭也』の記憶にはない為、真一郎も知らなかったが……夜の一族の発祥は欧州であるから海外が長いのは考えられることであった。

「では、こうしましょう……流石に井上さんだけビシビシ扱くのは気の毒なので、相川君とそちらの……綺堂さん…だったかしら。貴女も一緒に勉強しましょう。私が一番年上ですから、解らない所があったら訊いてくださいね……」

真一郎にとっては渡りに船であった。

いづみが、人に教えるのが得意な唯子に教えてもらっているで、こちらもそれなりの相手と勉強した方が有益である。

「ご迷惑でなければ……さくらちゃんはどうする?」

「……綺堂さ〜ん……私を助けると思って一緒にやりましょ〜」

涙声でさくらに懇願するななかであった。

部活でマンツーマンで指導されるならともかく、勉強の方では地獄にしかならない為、お仲間を欲するななかであった。

「……では、よろしくお願いします」

さくらが珍しく了承した。

普段なら、遠慮するはずのさくらだが……真一郎がこの綺麗な女性とななかと一緒に勉強すると思うと……なんとなく気になってしまう……。

いつの間にかさくらは、真一郎に特別な想いを抱き始めていた。

 

 ★☆★

 

勉強会が終わり、瞳は帰宅していた。

初めて会ったとき、勘違いして投げ飛ばし、それから何度も話をした。

『相川真一郎』という綺麗な少年……。

後輩の鷹城唯子の幼馴染。

その唯子と一緒に帰宅するため、終わるまで護身道部の見学している日があり、休憩時間のときによく瞳とも話をするようになっていた。

 

瞳は長崎にいたとき、姉の幼馴染の『槙原耕介』という男と付き合っていた。

付き合うといってもキスもした事がなく、プラトニックな付き合いだった。

瞳は、それでも十分だったが、耕介はそうではなかった。

耕介は、瞳に迫った。それ以上を求めたのだ。

瞳は、男性の欲望を恐れ耕介を投げ飛ばした。

耕介も近隣に名の通った不良であったが、幼い頃から格闘技を習っていた瞳はあっさりと投げ飛ばしてしまった。

その結果、耕介は上腕筋と鎖骨を怪我してしまった。その後、瞳の家は引越しが決まり、そのまま疎遠になってしまった。

その事が原因で、軽い男性恐怖症になっていた。

そんな耕介と昨年、再会した。

親友、神咲薫が下宿している『さざなみ女子寮』の管理人となり、以前とはまるで変わっていて、優しく暖かな雰囲気になっていた。

しかし、2人のヨリが戻る事はなかった。

耕介は、さざなみ寮のオーナーで従姉の『槙原愛』と恋仲になっていたのだ。

瞳の初恋は、終わりを告げたのだ。

 

男性とは簡単な話しかしない瞳だが、真一郎が相手だと話が弾んだ。

男の怖さをまるで感じないのだ。

いつの間にか、真一郎に好意を持つ自分を自覚していた。

今日、図書室で見かけたとき、綺麗な下級生の少女と楽しそうに話をしていた。

胸が少し疼き声を掛けた。

そのまま、皆で勉強することになり楽しい時間を過ごす事ができた……ななかの面倒を見るのは大変だったが……。

しばらく、皆で勉強を続けることになり、楽しみになっている瞳であった。

 

 

実力テストの結果を部活の主将である瞳に知られ、散々説教された後、図書室に強制連行された。

普段は優しい瞳だが、こと部活関係に関してかなり厳しくなる。

護身道部は皆、成績が優秀である。

主将の瞳は当然のことながら、いつもほえほえしている唯子も、成績は上位である。

ななかは、中学時代から成績は下から数えた方が早かった。

風芽丘学園には、護身道家として憧れていた瞳と一緒の学校に行きたい一心で勉強し、ギリギリ合格できたのだ。

 

図書室に着いたら、同じクラスのさくらと先輩の唯子の幼馴染の真一郎が、楽しそうに話をしていた。

ななかとさくらは、クラスでもよく話す方だが、あんなに楽しそうに話すさくらを見たことがない。

女の自分よりも綺麗な真一郎を見て、ドキドキする。

男の人は、やっぱり優しい人がいい。

ななかは、そう思っていた。

それ以前に、いいなっと思っていた瞳の幼馴染の耕介には、すでに恋人がいる。

真一郎は、唯子と恋人同士だと思っている人も結構いるが、実際はまだ『ただの幼馴染』でしかない。

綺麗で優しい真一郎が気になるななかであった。

 

 ★☆★

 

翌朝、真一郎はサンドイッチを作っていた。

今日のテスト終了後に行う勉強会のメンバー、自分、さくら、ななか、瞳の4人分である。勉強を始めるのが午前11時からで、1時間すればお昼である。空腹だと勉強に集中できないため、弁当を持参することにした。

 

 

午前中の試験が終了し、4人は図書室に集まった。

「さあ、今日も勉強を頑張りましょう!特に、井上さんはしっかりと勉強しなければ駄目ですよ……」

「……はい〜〜〜〜……」

がっくりした声で返事をするななか。

「じゃあ、始めましょうか」

皆、勉強を開始した。

ななかは、殆ど解らないらしく瞳に質問する回数が一番多い。さくらも、読めない字を真一郎や瞳に教わりながら問題を解いていた。

正午になり、図書室で勉強していた面々は、弁当と取り出したり、学食に向かったりしていた。

「お腹すきました……お昼どうしますか!」

食事の時間になったため、先程より元気な声でななかが訊いてきた。

「うん、実はみんなの分のサンドイッチを作ってきたんだ。飲み物もここに来る前に買ってきたから、ここで食事にしよう」

「え!?相川先輩が作ってきたんですか?」

「うん!俺は1人暮らしだし、自炊しているからね」

真一郎は、サンドイッチをいれたバスケットを机の上に広げた。

「たくさん作ってきたから、遠慮せずに食べてね…」

「いいんですか?」

さくらが遠慮がちに訊いて来た。

「見てのとおりたくさんあるから、お口に会うかは分からないけど、さくらちゃんも遠慮せずに……」

「綺麗ですね……美味しそう……」

サンドイッチの出来ばえに感心するさくら。

「ありがとうね、相川君。それじゃあ、いただきます」

みんな遠慮がちに手を伸ばす。

「美味しいですよ、相川先輩!」

「ええ、ホント……自分が作ったのより美味しいわ……!」

みんな、次々と手を伸ばし、サンドイッチを頬張っていた。

なかなか好評だったので、真一郎も満足していた。

 

「「「ご馳走様でした」」」

「お粗末様でした」

すっかり食べ終えた3人は満足していた。

「……相川君。料理が上手なのね……」

「まあ、子供の頃から鍵っ子だったので、よく幼馴染と料理をしていたんですよ……あっ、唯子じゃなく、もう1人の幼馴染とですよ……あれは食べるの専門ですから……」

小さい頃から、父親の料理を作っていた小鳥は、真一郎にとって料理の先生だったのだ。

「耕介さんといい、相川先輩といい、料理上手な男の人っていいですよね……千堂先輩…」

「……そうね…」

知らない名前が出てきたので首を傾げているさくら。

「ああ、耕介さんっていうのは、さざなみ寮っていう女子寮の管理人さんの名前だよ、さくらちゃん」

「あら、相川君、耕ちゃんの事知っているの?」

「ええ、面識はないですけど、岡本や神咲先輩から、話は聞いていますので……」

真一郎自体は面識がないが、『高町恭也』はそれなりに耕介と親しかったのでよく知っていたが、とりあえずそう答えた。今回は事実、みなみや薫から聞いていたので『高町恭也』スキル【真顔で嘘を吐く】は使用していない。

「それより、『耕ちゃん』って呼んでる千堂さんもかなり親しいようですね?」

「ええ、姉の幼馴染で私にとっては兄のような人よ……」

少し、寂しそうな顔で答える瞳だった。

「岡本から話は聞いているので、一度、その耕介さんの料理、食べてみたいですね」

 

食事を取り、適度にお腹が膨れた為、午後からの勉強は充実していた。

相変わらず、ななかだけはヒィヒィ言いながら勉強していたが………。

「じゃあ、今日はここまでにしておきましょう」

瞳から、終了の言葉を聴き、ななかは机に突っ伏した。

「お……終わりました〜〜!」

「ここでの勉強が終わっただけで、家に帰ってから勉強しなくちゃ駄目よ!」

厳しい瞳の注意を受け、ななかは顔が引き攣った。

「……はい〜〜〜」

「頑張ろうね、ななかちゃん……そうだ!今回の試験が終わったら、皆で打ち上げみたいなのをやりませんか?……俺達と、あと唯子たちも誘って…」

「いいですね!」

いきなり元気になったななかが賛同した。

「千堂さんとさくらちゃんもどうですか?」

「いいわね……楽しみです」

瞳も賛同した。

「……私も……いいんですか?」

「うん、小鳥とかも誘うつもりだし……さくらちゃんも楽しめると思うよ…」

「じゃあ、私もお邪魔させて戴きます」

小さく微笑んで、さくらも参加することを決めた。

「じゃあ、千堂さん……神咲先輩を誘っておいてもらえますか、岡本には俺の方から言っておきますので……」

「ええ、神咲さんも喜ぶと思うわよ」

「じゃあ、詳しい事は後日…・・・と言う事で…」

真一郎たちはそれぞれ帰路についた。

 

 

帰宅途中、真一郎は翠屋に寄った。

打ち上げのために、翠屋を貸切にしようと考えたのだ。

「あら、真一郎君。いらっしゃい」

入店してきた真一郎を桃子が歓迎した。

「桃子さん……ちょっとお願いがあるんですけど」

「なにかしら?」

「今、中間試験なんですけど……テストが終わったら打ち上げをやりたいので、貸切をお願いしたいんですけど……」

真一郎の言葉に、桃子は難色を示した。

「それはかまわないけど……貸切にするのなら、いくら真一郎君でも只って訳には行かないわ……お金は大丈夫なの?」

「大丈夫です。この間のアルさんの護衛の時の報酬がまだたっぷり残っているので」

それを聞き、桃子も笑顔になった。

「ああ、そうだったわね……美沙斗さんが真一郎君はかなりの額の報酬を貰ったって言っていたわね。じゃあ、いつにするの?」

「え〜っと……テスト最終日が3日後ですので、その日にお願い出来ますか」

「いいわよ、それで時間は……お昼のピークが終わるのが午後2時だから……午後3時から午後5時までの間でどうかしら?」

「ええ、それでいいですよ、じゃあ、よろしくお願いします」

貸切の予約を入れた真一郎は、家に戻った後、それぞれに連絡した。

翠屋の貸切と聞いて、皆、かなり楽しみにしているようだった。

 

 ★☆★

 

2日目の試験終了後、今日も図書室に来たとき、先に来ていたさくらに1人の男子が話しかけていた。

どうやら、さくらを口説いているようだが……さくらはめんどくさそうに応対していた。

邪険にされているのに、それでもしつこく「一緒に勉強しない?」などと話かける男子だった。

女の子はこういうの、めんどくさいのである。

真一郎も、ナンパされたことがあるので(男にも女にも)よくわかっていたので、助ける事にした。

「さくら!」

「あっ先輩」

真一郎の顔を見てほっとするさくら。

「どうしたん?そいつ誰よ?」

「知らない人です……」

「おい、まさかさくらに嫌がらせでもしているんじゃないよな」

真一郎はその男子を睨みつけた。

下級生の男子は、いきなり現れた真一郎に戸惑っていたが、女みたいな顔をしている真一郎を見て、とくに警戒していないようだった。どうやら、相手の強さで態度を変えるタイプの人間のようだった。

「アンタには、関係ないだろ…僕はこの娘と一緒に勉強したいんだから……」

と、真一郎をシッ、シッと追い払うように手を振る。

流石に少し腹が立った真一郎は、振っている手首を掴んだ。

「悪いが、さくらは俺と勉強する約束をしていてね……お前の方こそ失せろ!」

そう言うと手首を握った手に握力を込めた。

真一郎は『高町恭也』の身体能力を受け継いでいるので、握力は80kgを超えている。

予想外に強い相手であることを知った下級生男子は、態度をコロリと変えた。

「すいません!もうちょっかい出しませんから放してください!!」

激痛で泣きそうな顔をしながら、懇願してきたので、直ぐに手を放した。

下級生は、小走りに逃げていった。

「ご免ね……おせっかいでした?」

「……先輩…かっこいい」

久しぶりにかっこいいと言われ、真一郎は感動していた。

 

瞳とななかも到着し、本日の勉強会を始めようとしたのだが……今度は瞳の周りに下級生女子数人が付きまとい始めていた。

「千堂先輩。私達にも勉強を教えて欲しいんですけど……」

明らかに、瞳とお近づきになりたい……というミーハーな女子たちだった。

「相川君。どうしましょうか?」

「まあ、教えて欲しいということですから、かまわないのでは……」

と、いうことでかなりの大所帯となったが、勉強会を始める事にした。

しかし、勉強に集中できなかった。

下級生女子たちがキャイキャイとはしゃぎながら、瞳に話しかけていたからだ。

正午になり、真一郎はバスケットを取り出し、机に並べた。

「今日は、卵とツナとチキンとハムのサンドイッチだよ」

さくらとななかが、手を伸ばしサンドイッチを美味しそうに食べ始めた。

瞳も食べようとしたとき、下級生女子たちが瞳に話しかけてきた。

「千堂先輩、そんな物より私達と学食にいって食べましょうよ……」

その台詞に、さくらとななかはムッとした。

真一郎が、作ってきてくれたサンドイッチを『そんな物』呼ばわりされた為である。

当然、瞳も流石に頭にきて、下級生女子たちを叱り付けた。

「貴女達、いい加減にしなさい!せっかく相川君が私達の為に作ってきてくれたサンドイッチを『そんな物』とはなんですか!それにさっきから、勉強をしないで雑談ばっかりで、真面目に勉強している井上さんや綺堂さんの迷惑よ!!ちゃんと勉強しないのなら、家に帰りなさい!!」

瞳は、普段は優しく下級生達に接しているが、無条件に優しいわけではない。

怒るときには、きっちり怒るのである。

今まで、見たことがない瞳の厳しさに、下級生女子たちは泣きそうな顔で図書室を出て行った。

「……いいんですか?千堂さん…」

「いいのよ。きちんと勉強している貴方達に迷惑を掛けるわけにはいかないですから…」

食事を済ませ、勉強を再開した。

下級生女子たちがいなくなったので、今度は勉強に集中できるようになった。

 

 ★☆★

 

4日間続いた試験も終了し、真一郎達は試験終了の打ち上げの為に翠屋集まっていた。

参加メンバーは、真一郎、唯子、小鳥、いづみ、大輔、みなみ、ななか、さくら、瞳、薫の10名である。

「じゃあ、それぞれ初対面の人もいることですし……簡単な自己紹介をしましょう」

真一郎の発案で、自己紹介が始まった。

「2Aの鷹城唯子です。護身道部に所属しています。しんいちろとは幼馴染です」

「……2Fの野々村小鳥です。趣味は……料理で、相川君と唯子の幼馴……染です」

「御剣いづみです。唯子と同じクラスの2Aです。ちなみに忍者の国家認定免許3級を持っています」

「3Gの千堂瞳です。護身道部主将をしています」

「同じく3Gの神咲薫です。剣道部主将をしています」

「岡本みなみです。クラスはののちゃんと同じ2Fでバスケ部です。神咲先輩と同じ寮に住んでいます」

「1Eの井上ななかです。護身道部に所属しています。ちなみに実家は浅草煎餅を売っています」

「井上さんと同じクラスの綺堂さくらです………よろしくお願いします」

「端島大輔っス。クラスは真一郎と同じ2C。よろしくな」

「それじゃ、俺の事はみんな知ってると思うけど…幹事を務める2Cの相川真一郎です。じゃあ、今日は楽しんでいってください」

パーティーが始まった。

 

「どうだ、相川。今回の試験の自信は?」

いづみが真一郎に話しかけていた。

「いつもより、よく出来たと思う。負けないぜ」

「ほほう、結果が楽しみだな」

いづみも今回は相当自信があるようだ。

 

「えっ瞳さん。しんいちろと一緒に勉強してたんですか?」

「ええ、あと、あちらの綺堂さんと井上さんも一緒だったけど……」

「唯子は、いづみちゃんと小鳥の2人を見てたけど……どうやら、いづみちゃんとしんいちろ、今回の試験の点数を競っているみたいなんですよ」

「そのようね、結構真剣に勉強してたから……でも、相川君の作ったサンドイッチは美味しかったから私としても楽しかったわ」

「ああ、いいな瞳さん。ママと小鳥の次に好きなしんいちろご飯は唯子のお腹にジャストフィットなんですよ」

羨ましそうな顔になる唯子に、瞳が苦笑した。

「でも、鷹城さんも野々村さんの料理を食べていたんじゃないんですか…?」

「いや〜!小鳥は食事時になると家に帰って、お父さんの夕食の支度に行っちゃったので……いづみちゃんも、自活しているからバイトには行かないといけなかったみたいなので……ちなみにママは近所のお友達と旅行に行ってまして…」

結局、簡単な食事ですませていたようだ。

「あらあら」

拗ねている唯子を宥める瞳であった。

 

「お〜、確か井上だったか……」

「何ですか、端島先輩?」

「いや、けっこうバカ食いしているなと思ってな……」

「悪いですか?」

「いや、悪くねぇけど……太るぞ!」

「それは、女の子には禁句です!」

ななかはおもいっきり大輔の足を踏んづけた。

「いって〜〜〜〜〜〜!!」

本来の歴史では、この2人、一時期恋人同士になるのだが……この次元では、その可能性はなさそうであった。

 

「おお、まさか綺堂がこういうのに参加するとはな……」

「神咲先輩……その節はどうも……」

夜の一族であるさくらに、薫は、一度話をしたことがあった。

夜の一族は、人間社会に溶け込んでいるが、ときどき、その能力で悪さをする輩もいるため、薫は少し警戒していたのだが、話してみて、さくらは大丈夫と判断していた。

「……相川君とは親しいのか?」

「……最近、よく話します……」

「……そうか……いい人じゃろ、彼は……」

「はい!」

普段はそちら方面に鈍い薫も、今回はさくらが真一郎に好意を抱いていることに気付いていた。

(……ふ〜……岡本や千堂、さらには綺堂もか……ってうちは何考えとるんじゃ!)

 

「ねぇ、ののちゃん……なんか相川君の周りに女の人が増えちゃったね……」

「……うん、相川君は美人さんだから……仕方ないと思うけど……」

「……ライバル……多くなるなぁ……」

「みなちゃん…元気出してね」

溜息をつくみなみと、それを慰める小鳥……こっそり自分も溜息を吐いているが……であった。

 

その後、簡単なゲームをしたりで楽しんだ面々は仲良くなり、その後も、よく集まって遊ぶようになった。

 

 ★☆★

 

さて、本日は試験結果発表日である。

廊下に試験結果が張り出された。

「よぉ〜相川、決着をつけようか……」

「望むところだ、御剣!」

真一郎は、張り出された順位表でいづみの名前を見つけた。

2A御剣いづみ、87位。

「げっ、結構な順位だな御剣め……」

真一郎は、自分の名前を探すが80位台に自分の名前を見つけることができなかった。

「……げっ不味い……負けたのか?」

などと考えていたら、いづみの声が聞こえた。

「がが〜ん!」

「……えっ!?」

「2C相川真一郎70位……」

なんと、大差で真一郎の勝ちであった。

「やった〜!俺の圧勝だな!!」

「くそ〜!まさかここまで離されるとは……」

地団駄踏んで悔しがるいづみ。

「じゃあ、今日1日、御剣は俺の下僕だな!」

「ううっ……はい……」

いづみの1日下僕が決定した。

 

〈第八話 了〉

 


後書き

 

恭也「今回は、さくらさん、千堂さん、井上さんがメインの話……だと思ったが、後半は全員集合みたいな感じだったな」

そうだね。ヒロイン候補が全員顔を合わせたね…

恭也「ところで、相川さんといづみさんの試験の順位なのだが……」

ああ、とらハ1のいづみルートと瞳ルートを合わせている。いづみの順位はいづみルートそのままの順位。真一郎の順位は瞳ルートの順位より若干低くした

恭也「何故だ?」

いや、瞳ルートの試験勉強のときは、1日を除いて、瞳と真一郎とマンツーマンだったけど今回は、むしろななかを教えるほうに集中していたから、その分悪くしたんだ

恭也「だったら、いづみルートの順位でいいんじゃないか?」

いや、いづみルートのとき、瞳と勉強したのは1日だけで、瞳ルートは試験期間中ずっとだったからその差を見せたくて…

恭也「変なところに拘るな……」

さて、次回は直ぐ後のいづみが真一郎の下僕になったところから始まります。では、これからも私の駄文にお付き合いください

恭也「お願いします」




しかし、よく考えてみたら賭けの対象が下僕って。
美姫 「まあ、それができるぐらい親しい友達って事よ」
テスト結果は瞳に教えてもらった真一郎の勝ちか。
しかし、あとがきで言われておおう、そんな違いがと気付きました。
美姫 「流石に本来のテスト順位までは覚えてなかったわね」
ああ。くそ、もう一度プレイして確認を。
美姫 「そんな時間あるの?」
…………ないかも。
美姫 「さて、こっちも綺麗にオチがついた所で、次回も待ってますね」
ではでは。



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