この話は、『桜舞う日の邂逅』や『桜散りし日の決闘』を参考にして創作した話です。
すべてにおいて初挑戦の二次創作SSです。
文法などおかしな点が多々あると思いますが、海より深く、山より高く、大目に見てください。
『少年恭也と女子高生薫の恋物語』
第十三話 「噂」
新学期が始まってから、数日が経ったある日。恭也はクラスの女子に呼び出しを受けた。
「西崎さん。俺に話とはなんだ。」
クラスメイトの西崎優菜が真っ赤な顔をしていた。これが、普通の男なら「こいつ、俺に気があるのか。」などと考えるのだろうが、恐らく海鳴一の朴念仁である恭也がそんな風に考えるわけがない。
「顔が赤いな。熱があるのか、今日は無理をしないで先生に言って親御さんに迎えに来てもらったほうがいいんじゃないか。」
まったく、見当違いの説得を始める恭也だった。
「……あの、高町君。私、高町君に聞きたいことがあったの。」
西崎はもじもじと赤面しながら、尋ねてきた。この少女は恭也に告白でもする気なのか、と読者諸君らは思っただろう。しかし、実は。
「……夏休みの夜の神社で、私、見たの。高町君が……年上の女性とキスしてるの。」
彼女は見たのだ。薫が真っ赤な眼をして、恭也に抱きついてキスをした、あの日の事を。あの時は落ち着いているように見えたが実は、恭也も内心では取り乱していたのだ。何故、薫が眼を赤くしていたのか。恋愛関係以外には鋭い恭也である。薫が辛いことがあり、泣いたことを察し何とか慰めてやらなければいけないと思い薫に集中していた為、明らかに素人の西崎の気配に気付かなかったであった。むしろ、素人だから気付かなかったといえよう。プロならともかく、ある程度腕に自信のあるものの気配なら気付いただろうが、闘気も殺気も持ち合わせていない小学生の少女の気配など危機感が湧かない故に、まったく気付かなかったのだ。
「……そうか。」
「あのお姉さんは、高町君のなんなの。」
西崎は期待を込めた眼で恭也を見つめた。
「……俺の……恋人だ。」
恭也は素直に答えた。恭也は無口、無表情である。この歳ですでにポーカーフェイスができている。普通の顔で平気で嘘の吐ける男であるが、こと薫の事に関しては嘘を吐く気もない恭也であった。
「やっぱり〜〜〜〜〜〜〜〜。」
西崎は黄色い悲鳴を上げた。この少女はその手の話が大好きな耳年増だった。しかし、男に聞くのは流石に恥ずかしかったのか、赤面していた。先ほどのもじもじした態度は、それが原因だったのだ。しかし、恭也の肯定で恥ずかしさより好奇心が勝り、キスに関して恭也への質問がマシンガンのように続いた。……が、流石に恭也もそれ以上話す義理が無い為、西崎のマシンガントークはむなしく響き渡るだけだったが。
その日のうちに、恭也に年上の彼女がいることが広まった。恭也ファンの娘たちは涙し、そのファンの娘達を狙っていた他の男共は狂喜乱舞した。
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新学期が始まってしばらくして、風ヶ丘学園ではある噂が蔓延していた。
『神咲薫、ショタコン疑惑』である。
読者諸君は御察しの事と思うが、以前、恭也と薫に恥を掻かされた奥村が、瞳と尾崎が予想したとおり薫を陥れる為に流したのであった。
これで、薫に恥を掻かせてやる。そう画策した奥村だったが、薫はその噂に対して平然としていた。既に散々とからかわれ続け既にある程度の免疫ができていたのだ。それだけなら、まだ恥ずかしい気持ちもあっただろうが、この夏休みの間の事件で芽生えた恭也の恋人であるという誇りが薫を支配しており、もはや恥ずかしいとは思わなくなっていたのでる。
「確かにうちの恋人は、一年留年しているが小学生だ。でも、一人の人間として尊敬してるし、あの子の恋人だということに誇りがある。」
そして、宣言どおり瞳と尾崎の援護射撃があった。
「神咲さんの恋人の男の子は、確かに小学生だけど少なくともうちの学園の男子よりよっほど大人ね。」
「その男の子は、千堂が勝てる自信がないって言うくらい強いんだよ。」
学園女子の人気で双璧の片割れである瞳の援護が効いた。しかも、『秒殺の女王、千堂瞳』が勝つ自信がないという少年ということが噂を更に広げた。奥村の予想とは反対の方向にである。
もともと、薫は瞳ほどではないがかなり人望がある。そして、人望に関しては間違いなく学園一の瞳がそれを弁護しているので、薫とその少年の関係がいかがわしいモノではなく、純粋な想いであるという認識が広がったのだ。
更に、尾崎がダメ押しに奥村の醜態を暴露したのだ。薫に告白し、断られて恋人を紹介されたら逆上し、その少年を叩きのめそうとしたら逆に叩きのめされ、薫を中傷しその少年の怒りに触れ、失禁したことを流されたのだ。
女子にそれなりの人気のあった奥村だったが、この噂(しかも純然たる事実)により、その株を落とした。それどころか、女子に敬遠されるようになり、その人気は失墜した。余計なことをしなければ、少なくとも人気と人望は失わなかっただろう。薫も、瞳も、尾崎も、奥村が何もしなければ、少なくとも表面上は普通に接するつもりだった。しかし、奥村がこの噂を広めたのは周知の事実であったから、特に尾崎は遠慮せず、徹底的に奥村を攻撃したのだ。。
「ちくしょう。なんでこうなるんだ。」
奥村は悔しがった。剣道部内部でも、もはや主将としての権威が完全に失墜し、誰も彼を相手にしなくなったのだ。自業自得の極みであった。
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「瞳さ〜ん。神咲先輩の彼氏って、どんな人なんですか。」
護身道部二年生エース、鷹城唯子が瞳に訪ねてきた。彼女のクラスメイトで忍者の国家認定三級保持者の御剣いづみを伴ってである。唯子といづみは目標である瞳より強いかもしれないという、少年に興味を持ったのだ。
「あら、鷹城さんに御剣さん。そうねえ。」
瞳は恭也について語りだした。
「小学生なんだけど、本当に強いわ。私たちのようなスポーツの武道ではなく、どちらかというと御剣さん系のタイプね。二刀流の小太刀っていうのかしら。短い刀をもって戦う流派のようね。」
「………まさか……。」
いづみの顔色が変わった。小太刀二刀の流派にに思い当たることがあったのだ。
「どうしたの。いづみちゃん。」
「まさか、その子は御神流の生き残り。」
「……御神流って。」
唯子が聞いてきた。いづみは話した。最強の名を冠する流派のことを。そして、その一族に起こった悲劇を。
「………。」
流石にその場は、静まり返った。彼女達にとっては非日常の世界だったからだ。
「……あの子の強さがわかる気がするわ。やっぱり私ではあの子には敵わないでしょうね。」
瞳は素直に心情を口にした。この話を聴いていた他の人によって、薫の彼氏は瞳より強いかも、ではなく、瞳より確実に強い男の子という噂が広がったのであった。
「とりあえず、その子に会いたかったら、翠屋にいけばいいわ。その子は翠屋の店長さんの息子だから、時々、店を手伝っているの。」
このことも広がり、翠屋はしばらく客に困らなくなりそうだった。
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「薫さん。俺達の仲が学校中に広まってしまいました。」
「うちの学校でも広まったよ。」
恭也と薫は、嘆息した。
〈第十三話 了〉
後書き
第十三話いかがだったでしょうか。『少年恭也と女子高生薫の恋物語』も残りあと二話です。次回はこの話最後の大事件が起こります。最後まで私の駄文にお付き合いください。
この話を『小学生恭也シリーズ』と設定します。次は別のヒロインの話を考えています。そちらもご期待ください。
自業自得の奥村は良いとして、小学校でも噂が広まってしまったか。
美姫 「まあ、こっちは悪気のあるものでもないし良いんじゃない」
だな。今回は特に大きな事件もなく、二人の交際が広まったといった感じかな。
美姫 「でも、後書きで次回は何か事件が起こるって」
さて、一体何が起こるんだろうか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。