この話は、『桜舞う日の邂逅』や『桜散りし日の決闘』を参考にして創作した話です。
すべてにおいて初挑戦の二次創作SSです。
文法などおかしな点が多々あると思いますが、海より深く、山より高く、大目に見てください。
『少年恭也と女子高生薫の恋物語』
第六話 「告白」
〆切を終え昼から眠っていた真雪が夕食の支度をしていた耕介のもとに現れた。
「神咲の様子はどうだ。」
「ええ。すっかり元気を取り戻しましたよ。」
「そうか。あいつが落ち込んでいるとうるせーこと謂われねえ変わりになんか物足りねえからよ。」
なんだかんだ言いながら心配していたようだ。
「ところで耕介。神咲の惚れている少年には会ったんだろ。どんな奴だった。」
すっかり、いつもの真雪だった。
「ああ恭也君ですか。少し話したんですけどあれは子供とは思えませんね。外見は兎も角、下手したらみなみちゃんやリスティよりよっぽど大人ですよ。」
「まぁ、あいつらが年齢よりガキなんだけどな。ところで今日の夕食は豪華だな。」
耕介の料理はいつもおいしいが、今日のはかなり気合が入っていた。
「薫の快気祝いと、愛さんが恭也君を招待したんですよ。」
「例の少年を。」
「ええ。薫を元気にしてくれたお礼がしたいそうです。」
「で、神咲は。」
「恭也君と話があるそうで、今は神社にいっています。」
「成程。……ケケケ。面白ろくなりそうだな。じゃあ、時間になったら呼んでくれ。」
真雪は邪悪な笑みを浮かべながらそう言うと、キッチンを後にしてリスティの部屋に向かった。
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八束神社。
いつもの鍛錬より早い時間に恭也はここに来ていた。さざなみ寮の夕食に招待したいと耕介から言われ、遠慮したのだが、オーナーの愛に押し切られてしまった。その後、薫から夕食前に話がしたいと連絡があったのだ。
「薫さん。まだ何か辛いことがあるんですか。」
元気を取り戻したと思っていたが、まだ辛いのだろうか。
「恭也君。うちな、君に大事な話しがあるんじゃ。」
心なしが薫は震えているのを恭也は感じ取った。
「恭也君。うち……君の事が………好…き……好きです。」
小さい声ではあるが恭也の耳にはきちんと届いた。
沈黙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「俺も薫さんのことが好きですよ。」
「違う。君の言う意味での好きとはちがうよ。………うちは…お…女として男の君が好きなんじゃ。」
普段『無愛想』『無表情』の恭也もさすがに驚愕の表情になる。冗談をいっているようには見えない。赤面しているが同時になにか怯えているようにも感じられる。それもそうだろう。ただでさえ五歳年長であり、色恋沙汰にはどちらかというと疎い部類に入る薫にとって、この告白は始めて霊剣『十六夜』を振るったときと同じくらいの覚悟が必要だった。足は振るえ立っているのがやっとである。年齢差を考えれは、何をほざいているんだと謂われかねない。恭也がそんなことを言うはずないのだが、そんな余裕は薫にはなかった。いままて自分を苦しめていた業から開放してくれた恭也に対し思いを秘めておくことはもうできなかった。
恭也は考えていた。未だに薫の発言に現実味を感じない。この不器用だが優しく美しい姉のような女性が、まさか自分の様な子供を男として好きだなんて。自分の想いなど、叶うはずがないと決め付けていた。恭也は自分を過小評価していた。自分のような男はそちら方面とは無縁だと思い込んでいたのだ。
薫に憧れていた。好きだった。だが自分が彼女に釣り合うとは思っていなかった。せいぜい弟のように思われていると思い込んでいた。
「本気なんですか。」
薫は恭也の瞳を見据えながら僅かに頷く。
「俺も、貴女を好いています。あなたが俺のようなつまらん男にそんなことを言ってくれるとは思ってもいませんでした。」
「うちは、もうずっと前から君を想っていた。もう抑えられない。うちは………。」
いままで必死に抑えてきた想いを吐露した薫は恭也の答えを聞き、やっと震えが止まっていた。
しばらく……時は……緩やかに……感じられ……お互いの……距離を……縮め……目線の……高さを……合わせ……ゆっくりと……唇が……近付き……やがて……重なり合った。
物陰に小さな影があった。
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「はじめまして、高町恭也です。」
さざなみ寮の夕食に招待された恭也は、手土産に持ってきた翠屋のシュークリームを耕介に渡した後、初対面の寮生に自己紹介していた。無愛想な恭也ではあるが、さすがにここでは少し優しげな顔をしていた。概ね恭也はさざなみの寮生達に受けいれられた。
美緒は最初恭也を警戒していたが、恭也が美緒に見覚えがあり、昔、水島公園で一緒に遊んだことのある『みゆきち』の兄であることを思い出し、多少警戒を解いたようだ。
真雪と対面したとき、恭也は真雪がかなりの達人だと思った。真雪も恭也がかなりの使い手と見抜く。
(成程。神咲が入れ込むわけだ。実際見てみないとわからねえが、少なくとも神咲よりは強いな。)
「それでは、薫さんが元気になったのと、恭也君との出会いを祝して。」
「「「「「「「「「かんぱ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い。」」」」」」」」」
愛が音頭をとり、おのおのが耕介の作ったご馳走に堪能する。
恭也の味覚の鋭さに耕介が感心する。
恭也の家が翠屋を経営していることを知り、みなみが興味を持つ。食欲に絡むと人見知りが薄れるようだ。
ゆうひと知佳が、ミーハー気分で薫と恭也の出会いについて質問したりして、二人を赤面させていた。そのとき……。
「さて、神咲と少年の祝いにあたしからのサプライズだ。おいぼーず。」
と、真雪がにやにやしながら、リスティを促した。リスティが頷き、用意していたビデオを再生する。
〈恭也君。うち……君のことが………………………。〉
〈俺も薫さんのことが好きですよ。〉
〈違う。君の言う意味での好きとは違うよ。………うちは…お…女として男の君が好きなんじゃ。〉
薫が硬直した。
「ケケケ。神咲の告白シーンだ。記念にとっとけ。」
「な……何故こんなビデオがあるんですか。」
「お前が少年と話しがあると聞いてな。もしやと思ってぼーずに隠し撮りさせたんだ。」
みんなの視線がリスティに向く。
「真雪。約束どおり欲しいCD買ってくれるよね。」
「おう。5,6枚まとめて買ってやるぞ。」
どうやら、リスティを買収していたようだ。恭也もあのときは冷静でなかったため、リスティの気配に気づかなかったようだ。
そして、二人のキスシーンになると黄色い悲鳴があがった。
その時、
薫が、
絶叫した。
「に……仁村さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。」
霊剣『十六夜』を抜き放ち真雪を追いかけた。
「今日という今日は、その根性を叩きなおしてあげます。」
「けっ。やれるものならやってみな。」
二人は庭に出で、いつもの光景が繰り広げられた。
薫の一撃を悉く防ぐ真雪。そして反撃。薫がその一撃に反応した直後、斬撃の軌道が変化し薫に襲い掛かる。
恭也はこの攻防を静かに見ていた。
「あの薫さんを翻弄している。最初に感じたとおりこの人は強い。」
やがて、真雪の剣が薫の首筋で寸止めされた。
「わはははははは。勝ちィィィィ。」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
得意がる真雪。心底悔しがる薫。そんな二人に恭也は近付いていった。
「仁村さん。今度自分とも手合わせ願えますか。」
恭也の力量に興味を抱いていた真雪が珍しく同意する。
「ああ、ちょうど〆切も終わったところだし、今月は急ぎ仕事もねぇし、来週あたりいいぞ。」
さすがに酒が入っているので今直ぐとは言わない。翌日も多分残っているので。
いつもの事が終わり再び、宴会が再開された。
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「お兄ちゃん。今頃楽しんでいるかな。」
高町家の食卓では恭也のいない夕食が始まっていた。
「う〜ん。今まで友達らしい友達がいなかった恭也が夕食に呼ばれるなんて、こんな日を迎えられて桃子さんなんだかうれしい。」
「桃子さん。師匠がいないからってすき放題いってますね。」
桃子がさも失礼な感動をしていると晶が突っ込む。
「とりあえず、今回のお礼に恭也の鍛錬仲間というその薫さんを今度はうちに招待したいわね。」
美由希や晶に薫のことを聞いていた桃子は、少しばかり期待していた。
「でも、ようやくあの『無愛想』『無表情』『朴念仁』の恭也にも春が巡ってきたのね。」
「春ってなんですか。」
「だって。その薫さんって綺麗な人なんでしょう。」
どうやら薫が恭也と恋人になると思っているようだ。既にそうなっているのでこれは女のカン……というより母のカンか。
「えっでも、かなり歳上でしたよ。」
「恋愛に年齢差は関係ないわよ。あと十年もしたら、初孫が生まれるかも。」
もし、そうなったらと思うとかなり嬉しくなる桃子であった。
「かーさん。なのはが生まれたばかりなのにもう孫が欲しいの。」
桃子の気の早さに呆れる美由希であった。
〈第六話 了〉
後書き
とりあえず、今回で薫と恭也は恋人同士になりました。恋人になってからも二人には様々なことがおこります。むしろこれでようやく序章が終わったというところです。
さて、次回は桃子と薫の対面です。
やっぱりすんなりと宴会だけして終わりにはならなかったな。
美姫 「まあ、あの人に気付かれたのが終わりね」
にしても、いきなり寮生の前で公開されてはな。
美姫 「あははは、相変わらず賑やかな場所で良いじゃない」
まあ、色々あったが恭也と薫の関係も変化し、真雪と手合わせの約束も。
美姫 「次回は桃子と薫の対面みたいね」
どんな事になるのやら。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。