この話は、『桜舞う日の邂逅』や『桜散りし日の決闘』を参考にして創作した話です。

すべてにおいて初挑戦の二次創作SSです。

文法などおかしな点が多々あると思いますが、海より深く、山より高く、大目に見てください。

 

『少年恭也と女子高生薫の恋物語』

第4話 「回想・思い」

 

 さざなみ寮の朝食。管理人兼コック槙原耕介のいつものようにおいしそうな料理か並んでいた。寮生全員がそろい「いただきます」と挨拶の後、おのおのがその料理を堪能する。その中で一番新しい寮生。

 リスティ・C・クロフォード

 入寮当初は、誰にも心を開かずにいた。彼女はHGS(変異性遺伝子障害)患者だった。HGS患者は、病気ではあるがその副作用として一種の超能力者ともいえる。その特殊性ゆえに健常者を見下す傾向がある。それ故、一部の寮生とは険悪だった。一方通行ではあるが、まともに接していたのは、槙原耕介、オーナー槙原愛、同じHGS患者の仁村知佳、その姉の仁村真雪、おおらかな椎名ゆうひ、HGS以上に特殊な十六夜と御架月である。一部の寮生。リスティの態度と力に怯えていた陣内美緒、岡本みなみ、その態度が気に入らなかった神咲薫であった。しかし、愛と耕介の努力によってリスティは心を開き、いままでの態度を詫び、皆と打ち解けていった。その後、彼女の能力を悪用しようとしていた、佐和田女史や劉会長。リスティのクローン、フィリスとセルフィの件など様々があったが、現在はおおむね平和である。彼女はいずれ愛と耕介の養女となる予定であった。

 

「そういえば、薫。夜の鍛錬って男の子と一緒なんだね。」

 

 リスティは事も無げにそう言い、その言葉に驚いた皆の視線が薫に集中する。

 

「ちょっ……リスティ。何故、知ってるんじゃ。」

 

「うん。昨日神社に鳩の餌をやっていたときに忘れ物をしてね。普段なら『引き寄せ』るんだけど、昨日僕は抑制薬を入れていて能力が使えなかったから取りに行ったんだ。そしたら、薫と男の子が楽しそうに木刀で打ち合っていたから。」

 

と、無邪気に答える。まだまだ純粋な少女である。この後彼女は真雪の性格に多大な影響を受けるのだが、それはまた別のお話。

 

「ほほう、神咲に男ができたのか。朴訥のお前がいつの間にかねぇぇぇぇぇぇ。」

 

 真雪が邪悪な微笑を浮かべた。薫は、

 

(恭也くんの微笑とは正反対だ。)

 

と、内心思っていた。

 

「で、ぼーず。どんな男だったんだ。」

 

(まっ……不味い。)

 

 真雪の質問に、かつての危惧が思い浮かぶ。

 

「うん。歳は僕よりも下に見えたよ。」

 

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沈黙。みんなの薫を見る目が………。

 

「神咲。お前、そういう趣味だったのか。」

 

予感的中。

リスティより下、どう考えても小学生高学年か中学一年生くらいを思い浮かべてしまう。沈黙の後、真雪は再び邪悪な笑みを浮かべた。

 

「ま……まぁ、恋愛は個人の自由だし。」

 

と、自分も高校時代、中学生の少女を恋人にして(現、薫の親友)ロリコンと言われた為、耕介が薫を庇う。

 

「た……ただ、剣の鍛錬を一緒にしていただけです。」

 

 顔を真っ赤にした薫は急いで、朝食を食べ終え逃げるように出て行った。

 

「逃げたな。」

 

 その赤面を見て約二名を除き全員が薫の気持ちを理解していた。

 

「どうゆう奴だろうな。」

 

 本気で薫がショタコンに走ったとは思っていない。おそらく、薫が惚れるほどの少年なのだろう。普段は不真面目な真雪だが、人を見る目は確かである。なにかと口煩い薫のことを大事な家族の一員と認めているのだ。その少年に興味を抱いた。

 

「もしかして、あの時に関係あるのかな。」

 

 耕介の言葉に皆が聞く姿勢をとった。

 

「以前、薫がびしょぬれになって帰ってきて小太刀っていうのかな。短い刀持っていたんだ。それから薫が夕食後、鍛錬に神社まで行くようになったんだ。」

 

 それまでは、寮の庭、もしくは寮の裏で鍛錬をしていたのだ。

 

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 朝食時の話題もあり、薫は通学で利用するバスの中で改めて恭也に会った時の事を思い出していた。

 

〈回想〉

 

 少年が刀を池に放り込み帰って行った後。薫は自己嫌悪に陥っていた。霊剣『十六夜』の『癒し』のことを詳しく説明できないので、軽々しく聞こえたかも知れなかった。涙が溢れてきた。少年を傷付けたことに後悔した薫は、彼は勢いで捨てていったが大事なものだろうと思い、池に入り小太刀を探した。見つけ出し寮に戻ると出迎えた耕介が驚き、風呂場まで連れて行き薫を風呂に入れた。

 自責の念からか、薫はなんとしても少年の膝を癒してやりたくなっていた。

 

「十六夜。明日、一緒に来て『癒し』をしてほしい。」

 

 風呂から出て部屋に戻った薫は十六夜に頼んだ。

 

「どなたにですか。」

 

「さっき神社であった少年にじゃ。」

 

 十六夜は驚いた。薫が見ず知らずの他人に能力を使おうとすることに。しかし、十六夜はなにも言わず引き受けた。いかにも泣きそうな薫を見てよほどのことがあったのだろうと思ったのだ。見慣れぬ小太刀の手入れをしている薫を見えぬ瞳でじっと見つめていた。

 

 翌日。

 日曜日の朝早くから、薫は神社に居た。何故か必ず来るという確信を抱き、少年を待っていたのだ。待っている間、昨日のことを思い出し再び涙がこぼれていた。まるでよく泣いていた幼い頃に戻ったかの様に。そして、少年がやって来た。

 

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 膝の治癒の間、薫は恭也の事を聞いていた。彼の剣は父に教わっていたこと。その父が警護の仕事中に命を失ったこと。父に追いつきたかったこと。大事なもの守れる強さが欲しかったこと。約束を守りたかったこと。学校を一年間休学し、武者修行をしていたこと。鍛錬に明け暮れ、疲れきって事故にあったこと。

 この少年はこの歳で様々なことを経験していた。外見はともかく薫は恭也を子供には見れなくなっていた。今時の子供にはない夢と目標を持って努力し、その努力ゆえに道が閉ざされた。悔しかっただろう。それでも諦めきれず松葉杖を付きながら剣を振っていたのだろう。何も知らない自分が気楽にお節介を焼けば、激昂するのは当たり前だ。そんなことをした自分を許し、そして『御呪い』をすることを了承した恭也。そして完治したときに見せたあの小さな微笑。胸が高鳴った。顔立ちは美少年の部類に入る。しかし、自分が惹かれたその微笑は彼の心そのものなんだと思う。自分と同じ不器用な、それでいて自分など比べ物にならないくらい強い。一度死に霊となった人をもう一度殺し、それで得たお金で温かな食事と、暖かい場所で暮らせる自分。そんな仕事をしている自分を受け入れてくれたやさしい少年。歳が離れていても彼に惹かれていた。恭也は薫の想いには気づいていまい。年齢的には思春期に入っているが、薫以上の朴念仁だから。

 

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「次は風ヶ丘学園前。」

 

 車内アナウンスが到着を告げる。薫は慌ててバスを降りた。

 

〈第四話 了〉

 


後書き

 第一話において、薫の心情について意見があり第一話を修正しようとしましたが、この話は恭也の一人称だったため、急遽予定を変更して第四話で回想という形にしました。

 いかがだったでしょう。まだまだ未熟ゆえわかりにくいかと思いますが、頑張って最後まで執筆したいと思いますのでできたら広い心をもってお付き合いください。




うーん、とうとうさざなみの魔王さまにばれてしまいましたか。
美姫 「彼女がどう動くのか、よね」
大人しく静観する事にするのか、騒ぎ出すのか。
美姫 「さてさて、どんな展開が待っているのかしら」
それではこの辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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