『時空を越えた黄金の闘士』
第三十四話 「影の闘法」
『アルカンシェル』が通用しなくなった『闇の書の闇』に対し、もはや打つ手は何もなかった。
『ギャクシアン・エクスプロージョン』は威力に関しては『アルカンシェル』と同レベルであるが、規模では劣る。
しかし、『闇の書の闇』のその巨体から繰り出される『ギャラクシアン・エクスプロージョン』は速度を犠牲にしたとはいえ、それを克服してしまったのだ。
再び、戦場に戻った黄金聖闘士と魔導師と騎士たちだったが、その攻撃は無力だった。
『闇の書の闇』のバリアは魔力と物理の複合四層式……だったのだが、サガを取り込んだ為にそこに『小宇宙』が加わってしまい魔力と物理と小宇宙の複合五層式になっていたのだ。
『小宇宙』のバリアは魔法の障壁よりも遥かに強力である。
なのは達の魔法はおろか、カノン達の技も最後の小宇宙のバリアによって威力を相殺され、『闇の書の闇』を再生不可能までのダメージを与えることが出来なかった。
もはや完全に手詰まりになったかに見えた。
「くそ!どうすればいい?」
既に『闇の書の闇』が侵食が始まっている。
この世界全てを侵食し終えた後、有人世界に転移されれば、大混乱が起きる。
クロノに表情に焦りが見え始めた。
「………こうなったら……もはや『アレ』しかないな…」
カノンの呟きに、ムウとアイオリアがハッとなった。
「……『アレ』!?何か手があるんですか?」
もはや、手立てが何も思い浮かばないユーノは、目の前の規格外3人の反応に期待した。
「……カノン…お前、まさか!?」
「……『アレ』は、我々にとっては……」
「俺と違って、お前らは抵抗は薄いだろうが……一度使用しているのだから……」
躊躇いの表情を見せるアイオリアとムウに、カノンは苦笑しながら指摘した。
「それに……アテナの許可はとってある……」
「許可?……いつだ?」
カノンは、『闇の書の夢』に囚われた時に、アテナとコンタクトが取れたことを説明した。
「……成程な……俺たちがこの世界に飛ばされたのは……『神』の力によるものか…」
「時の神『クロノス』……オリンポスの神々をも超越した『神』……」
嘆きの壁を破壊したとき、間違いなく命を落としていたはずの自分達が何故、生きていたのか漸く納得がいった二人であった。
「……俺たちは……『神』の気紛れで命を存えたのか……」
アイオリアは苦笑していた。
「……とにかく、アテナのお許しがあるのなら……」
「そうだな。カノンにとっては初めて、俺たちにとっては二度目の『アレ』を撃つか……」
ムウとアイオリアも決意した。
カノンがクロノに呼んだ。
「何ですか?」
「お前以外はアースラに撤退させろ!」
「な……なんでだよカノン!!」
横にいたアルフが食って掛かってきた。
「話は最後まで聞け!いいかクロノ。俺たちはこれから『切り札』を使う。皆が撤退したら、少しの間だけでいい……奴の動きを止めろ。出来るか?」
「この『デュランダル』の凍結魔法を使えばなんとか……」
「それだったら、『バインド』でもできるのでは?」
ユーノが口を挟んできた。
「いや、設置型のバインドなら直ぐに破壊されるだろう……自我を失っているとはいえ、奴にはサガの……聖闘士の力が在ることを忘れるな……」
少なくとも、凍結魔法なら数十秒は氷付けに出来るだろう。
「うちの石化魔法でも可能やけど……」
「そうか……ならばまずムウとアイオリアが奴のバリアを破壊し、はやての石化魔法で動きを止める。その後クロノ以外はアースラに撤退。奴が石化魔法を破る寸前にクロノの凍結魔法で再度動きを止める。そしてクロノはすぐさま撤退。その後、俺たちの『切り札』で奴を討つ!」
「何故、撤退する必要があるのだ?」
「……これから撃つ技の余波は『ギャラクシアン・エクスプロージョン』同士のぶつかり合いの比ではない……。『黄金聖衣』を纏っていないお前たちではその衝撃にはとても耐えられん!!」
シグナムの問いにアイオリアが答えた。
先程の『ギャラクシアン・エクスプロージョン』のぶつかり合い以上の余波……。
どんな物なのか想像もつかなかった。
「分かりました。カノンさん達を……『黄金聖闘士』の力を信じ、そのプランで行きましょう」
★☆★
「…『ライトニングプラズマ』!」
「…『スターダストレボリューション』!!」
アイオリアとムウの技が魔力と物理と小宇宙の複合5層式のバリアを相殺するとその場をテレポーテーションで離脱。カノンの両サイドに立った。
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け!石化の槍『ミストルティン』!!」
バリアを張り直す隙を突き、はやてのランクAAA+の石化魔法『ミストルティン』が『闇の書の闇』の石化に成功した。
「今だ、エイミィ!転送を!!」
【了解!】
すぐさま、クロノと黄金聖闘士を除く者達がアースラに撤退する。
石化された『闇の書の闇』は形状を変え、すぐさま石化を破った。
「クロノ!」
「はい。悠久なる凍土。凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ。『エターナルコフィン』!」
グレアムから預かったストレージデバイス、氷結の杖『デュランダル』にセットされたランクSオーバーの凍結魔法『エターナルコフィン』が『闇の書の闇』を凍結し、クロノもすぐさま撤退する。
凍結の軛から脱した『闇の書の闇』だったが、その目の前には、膝を着き両腕を前に出して構えるカノンと、その左右で構えるムウとアイオリアの姿があった。
「……いくぞ!」
「「応!!」」
黄金聖闘士が三位一体となって放つこの技は、究極まで高めたゴールドの攻撃的小宇宙が一点に集中する為、その破壊力は小規模ながら宇宙創造のビックバンに匹敵する…。故にその余りに凄まじい破壊力の為、神話の時代よりアテナに禁じられた究極の影の闘法。
「「「…『アテナ・エクスクラメーション』!!!」」」
小規模ながら宇宙創造のビックバンに匹敵する『アテナ・エクスクラメーション』が発生した…
無人世界―――廃墟と化した街
『闇の書の闇』はおろか、その街の廃墟は跡形もなく消滅した
かつて人々が生活していたと思われた建築物は全て吹き飛び、大地は引き裂かれた荒野と化した
諸行無常…
盛者必衰…
その地に残っていたのは、黄金の三人のみであった
★☆★
アースラのモニターで見守っていたなのは達は絶句していた。
「……エイミィ……分析は……」
「……ぶ…分析不能です…。お…おそらく宇宙創造の『ビックバン』に匹敵するエネルギー量とコンピュータは予測していますが……」
何とか声を振り絞り、エイミィに先程の技の予測結果を聞いたリンディだったが、返ってきた答えを聞き、再び絶句する。
確かに、結果だけなら『アルカンシェル』を撃った後の状態と大して変わらないだろう。
だが、放たれたエネルギー自体は『アルカンシェル』とは比べものにならず、しかもそれを、たった3人の力のみで制御したのだ。
「ど……どこまで…私達の常識を覆せば気が済むのかしら……。黄金聖闘士という存在は……」
大量の冷や汗を流しながら、シートに座り込んだリンディは嘆息しながらそう呟いた。
「……終わったな…」
「………ええ…終わりました…」
アイオリアとムウが一息入れた時、異変が起こった。
「グッ…」
カノンが表情が苦悶に歪み、膝を突いた。
「カノン!」
「どうしました!!」
二人の手がカノンの肩に触れる寸前……カノンは全身から血が噴き出した。
「「カノン!!」」
流血が止まらぬまま、カノンはその場に倒れこんだ。
「カノンさん!」
「カ…カノン!!」
「イ……イヤァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
カノンが倒れる様をモニターで見ていたクロノとアルフの顔色が変わり、フェイトの張り裂けんばかりの絶叫が艦橋に響いた。
〈第三十四話 了〉
真一郎「今回は短いな」
まあ、あっさりと終わらしたけど……
真一郎「原作どおりのなのは達によるフルボッコはやらなかったの?」
いや、ライトニングプラズマとスターダストレボリューションの二つで十分だろ……威力的に…。
真一郎「まあ、ただバリアを破壊するだけで、核を曝け出す必要はないか…決め手がアテナエクスクラメーションなら…」
では、これからも私の作品にお付き合いください。
真一郎「お願いします。君は、小宇宙を感じたことがあるか!?」
いやはや、まさかこんな奥の手で葬られるとは、流石に闇の書も思ってなかっただろうな。
美姫 「何とか倒せはしたみたいだけれど、カノンに異変があったのが気になるわね」
そこで終わっているしな。一体、何が起こったんだろう。
美姫 「続きが気になるわね」
次回を待ってます。