『時空を越えた黄金の闘士』
第二十三話 「クロノの実力」
シグナムは、強装型の捕獲結界にヴィータとザフィーラが閉じ込められたのを確認した。
『レヴァンティン』から行動の選択を要請される。
「レヴァンティン……お前の主は、ここで退くような騎士だったか?」
すぐさま『レヴァンティン』は否定する。
「そうだ……私達はずっとそうしてきた…!」
カートリッジがロードされ、刀身が炎を纏う。
「結界内にあの黄金の鎧の男は居ない……。ならば……!!」
シグナムは『レヴァンティン』を掲げた。
対峙するなのは、フェイトとヴィータ、ザフィーラ。
戦いに来たわけではなく、話がしたいというなのは達に対するヴィータの答えは……。
「ベルカの諺にこういうのがあんだよ。『和平の使者なら槍を持たない』ってな」
理解できず、顔を見合わせるなのはとフェイトに、ヴィータは子馬鹿にした表情で、話を続けた。
「『話し合いをしようってんのに武器を持ってくる奴がいるかバカ』って意味だよ。バ〜カ!」
「い……いきなり有無をいわさず襲ってきた子が言う!?」
ヴィータの話を聞いて、ズッこけたなのはが反論した。
「それにそれは諺ではなく、小噺のオチだ」
味方であるザフィーラからも突っ込まれる始末であった。
「成る程、一理あるな」
臨時本部のモニターで、ムウ、エイミィと現場の状況を見ていたカノンがヴィータの台詞を聞き、そう呟いた。
「しかし、武器を持たずに現れたら、彼女達はちゃんと話し合いに応じると思いますか?」
「……今までのあの小娘の態度から見て、無視するだろうな……」
等と後ろで暢気に会話している2人に、エイミィは苦笑いをしていた。
「本当に今回は、フェイトちゃんたちに手を貸す気はないんですね」
「奴らが、俺たち聖闘士にとって倒すべき敵にならない限りは……な」
「あと、あの娘たちには内緒にしてもらいますが、あの2人が殺されそうになった時は……無論、助けますから……。その為にリニスを同行させたのですからね……カノンは…」
その返答を聞き、エイミィはホッと息を吐いた。
★☆★
結界を破り、シグナムが姿を現した。
フェイトとのなのはは、クロノとユーノとアルフに手を出さないでと頼んだ。
なのははヴィータと、フェイトはシグナムとそれぞれ一騎打ちを望んだのだ。
クロノとユーノは、難色を示したが、アルフは了承した。
アルフにしても、ザフィーラとケリを付けたいようであった。
彼女達の意思が固いと見たクロノは、あの3人を彼女達に任せることにした。
彼女達は『闇の書』を持っていない。
結界の内か外に、『闇の書』を持った主ないし、もう一人の守護騎士がいるはずである。
クロノはユーノと共にそちらの捜索に回ることにした。
『レイジングハート』と『バルディッシュ』にカートリッジシステムを組み込んだことにより、なのははヴィータを圧倒し、フェイトはシグナムと拮抗した戦いを繰り広げられるようになっていた。
アルフと戦っていたザフィーラは、状況不利と判断し撤退を決意する。
結界の外のシャマルに念話でそのことを伝え、結界を破れるか否かを聞いた。
【何とかしたいけど……局員が外から結界維持しているの…。私の魔力じゃ破れない。シグナムの『ファルケン』かヴィータの『ギガント』級の魔力が出せなきゃ……】
【2人とも手が離せん。やむをえん……『アレ』を使うしか……】
【わかっているけど……でも……】
その時、シャマルは背後をクロノが取った。
【シャマル……どうした?シャマル!?】
『S2U』の先端をシャマルの後頭部に突きつけ、クロノは勧告した。
「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いで貴女を逮捕します……。抵抗しなければ弁護の機会が貴女にはある。同意するなら武装の解除を……!?」
言い終わる前にクロノは側面から気配を感じた。
何者かが自分に蹴りを放とうとしているのを感じ、肘と膝でその蹴りを挟み込んで止めた。
「……何ッ!?」
蹴りを放ったのは仮面を付けた謎の男であった。
『仮面の男』はまさか自分の不意打ちに対処されるとは思わなかったらしく、驚愕の声を上げた。
「エイミィ…今のは!?」
「わかりません!?こっちのサーチャーには何の反応も……」
突如現れた乱入者にあわただしくコンソールを操作するエイミィの後ろで、カノンは満足そうに頷いた。
「ほう、あれを対処するとは……クロノも出来るようになりましたね…」
ムウも、感歎の声を上げる。
「フッ……今のあいつなら、あの程度造作もない……」
しかし、口に出して褒めないカノンであった。
モニターでは、クロノと仮面の男の戦いが映し出されていた。
『仮面の男』は次々と、拳や蹴りを放つがクロノはそれを余裕で躱していた。
「……クロノ君…凄い…」
計測した結果、『仮面の男』はSランク以上の実力を持っている。
しかし、そんな相手にAAA+のクロノが圧倒しているのだ。
『仮面の男』は困惑していた。
『彼』はある事情から、クロノ・ハラオウンという魔導師の実力は完全を把握していた……把握しているつもりだった。
はっきりいって、まだまだ自分には及ばない……筈であった。
しかし、現実はどうだ。
自分の攻撃を、『あの』クロノが余裕で躱している。
【一体…どうなっているの!?】
『彼』の困惑は深まるばかりであった。
クロノも自分の実力に戸惑っていた。
明らかに相手は、魔導師としての自分よりは、格上の相手だと分かる。
しかし、今、相手の鋭い攻撃を完全に見切っている。
クロノは、先日カノンが言った言葉を思い出した。
「少なくともお前より上位ランクの魔導師を上回る実力はついている」
目の前の『仮面の男』は間違いなくSランク以上の魔導師……。
カノン相手では分からなかった自分の力を、クロノは自覚した。
そして、魔導師として戦っては、相手に勝てない事を悟り、『小宇宙』を燃焼させた。
『仮面の男』は近接戦闘に絶対の実力を持っていた。
しかし、今、本来格下の筈のクロノ相手に、間合いに入ることも出来なかった。
「クソッ!?」
手を拱いていたら、クロノが反撃してきた。
どうやら防御は上手くなったようだが、攻撃までは……。
しかし、その考えは甘かった。
クロノの足から繰り出された無数の蹴りを見切ることが適わず、衝撃を受けた。
その後、空を裂くような音が響き渡った。
「ば……馬鹿な…。衝撃の後に音が響くなんて……」
「す……凄いよ、クロノ君!」
モニターの前でエイミィが興奮していた。
「今のクロノの蹴りですが……一秒間に百発繰り出していましたね…」
「ああ。どうやらようやくクロノは音速の領域に入ったようだ…」
クロノはついに、スピードにおいても聖闘士の領域に踏み込んだのだ。
初めて聖闘士としての力を実戦で使用して、クロノは興奮していた。
カノン相手にシュミレーションをしていた時は分からなかったが、自分は今、確実に強くなっていることが実感できた。
クロノは自分が思い描いた技を試してみることにし、『小宇宙』を更に燃焼させた。
「な……何だ……これは……『宇宙』!?」
必殺技を放とうするクロノの小宇宙を、『仮面の男』は感知し、戸惑いを見せた。
「いくぞ!『メガトン・メテオ・クラッシュ』!!」
クロノは飛び上がり、空中で前転しながら敵に近づき、勢いを付けて蹴りを放った。
『仮面の男』はシールド魔法を展開した。
しかし、聖闘士の力の前では無力だった。
シールドは、『メガトン・メテオ・クラッシュ』とぶつかってすぐに皹が入り、粉砕され、そのまま『仮面の男』を吹っ飛ばした。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『仮面の男』はビルに激突し、身体をめり込ませた。
不利を悟ったのか、そのまま魔方陣を展開させ、転移していった。
その時、強装結界が破られた。
どうやら、クロノが『仮面の男』に気を取られている間に、シャマルが決意し『闇の書』の魔力で結界を破壊したのだ。
「しまった!」
普段なら、このようなミスを犯さないのだが……自分の今の力に興奮していたクロノはそこまで気が回らなかった。
結界が破壊されたことで、それまでなのは達と戦っていた3人も、撤退していった。
「……馬鹿が!」
「…まだまだですねぇ〜〜〜〜」
クロノの詰めの甘さに、ため息を吐く黄金聖闘士2人だった。
〈第二十三話 了〉
カートリッジシステムを搭載したデバイスを持ったなのは達の活躍を期待した方々にお詫びします。
真一郎「……まあ、ほとんど原作アニメと変わらんからな……」
そして、原作アニメと異なり、仮面の男……リー…
真一郎「おい!ここで仮面の男の正体を明かすなよ!」
みんな知ってるだろう……ゴホン!…仮面の男を圧倒するクロノ
真一郎「しかし、クロノの放った技で、クロノが何の守護星座の聖闘士になるか分かった聖闘士星矢ファンの読者もいるだろうな」
まだ、クロノを聖闘士にすると決まったわけではありませんが、とりあえずクロノの守護星座は「アレ」です。
真一郎「どこぞの獣と属性が被るな…」
では、これからも私の作品にお付き合い下さい。
真一郎「お願いします」
修正版あとがき……
真一郎「何で、修正したんだ?」
まあ、たいしたことじゃないんだけど……クロノの守護星座を変更しようと思いまして……。
真一郎「何でまた?」
クロノの守護星座に考えていた聖衣は、別の人物にしようと思いましてね……。元々、「リリなの」のキャラで聖闘士の闘技を身につけるのはクロノを含めて3人の予定だったんですよ……でもあと1人増やそうと思ってね……。で、クロノの守護星座に考えていた『○座』は、その人物にした方がいいと判断し、変更することにしました
真一郎「クロノの守護星座は『○座』から『△■?●座』に変わります」
読者の方々を混乱させてしまうことになり、申し訳ございません。
この場にて、謝罪いたします。
真一郎「では、これからもかのものの作品を見捨てることなく、お付き合いください」
お願いします。
おお、クロノが見事にパワーアップしている。
美姫 「あれだけきつい修行をした甲斐があったわね」
まあ、本人も驚いてたけれどな。
美姫 「とは言え、肝心のシャマルの方を忘れちゃってたわね」
カノンたちにもそこの点は注意されそうだな。
美姫 「次回はどんな話になるのかしらね」
次回も待っています。