『時空を越えた超戦士−Remake−』
其之十 フローズという男について
悟飯は今、ゲンヤと共に次元空間の狭間にある時空管理局・本局を訪れていた。
本局は、次元航行部隊――通称『海』の本部であり、悟飯の様な『次元漂流者』の保護などはこちらの管轄だからである。
そこで、悟飯を元の世界に戻す為の手続きが取られるのだが、初っ端から難航していた。
「現地惑星名称『地球』……これに該当するのは第97管理外世界のみ……それ以外の世界にはない…」
更に悟飯の持つデバイス『カカロット』から、悟飯の出身世界は原初の虚数空間『混沌《カオス》』を超えなければ行けないと言われ、管理局は混乱した。
虚数空間とは、次元断層などで引き起こされる次元空間に出来る空間の穴で、ブラックホール様なものと言える。
そこでは全ての魔法がキャンセルされてしまうため、飛行魔法や転移魔法が一切使えなくなり、一度落ちたが最後、二度と上がってくることは出来ない。
しかし、虚数空間の事は詳しく知っている彼らも、原初の虚数空間など聞いたことがなかった。
そこで、無限書庫のユーノ・スクライア司書長に調査が依頼された。
「…原初の虚数空間についての書物が見つかりました」
数日後、スクライア司書長から調査報告が提出された。
書物によれば、原初の虚数空間『混沌』はいつから存在しいたか定かではなく、一説によれば次元世界の誕生前より存在していた空間であるとの事だ。
あらゆる魔法をキャンセルするという特徴に変わりはなく、この空間を突破するには正に魔法以上の超常力……つまり『神の御業』でもなければ不可能とされる。
次元断層で発生する普通の虚数空間と繋がっているとも言われ、伝説にある忘れられし都『アルハザード』は原初の虚数空間と普通の虚数空間の狭間にあるという説も存在している。
しかし、旧暦の末期以降研究する学者すらおらず、既に忘れ去られていた。
司書長であると同時に考古学者であるスクライア司書長ですらも、今回の件がなければその存在すら知らなかった。
「仮に彼のデバイスが言っている事が真実ならば、彼を元の世界に戻すことは不可能だぞ」
「ああ。虚数空間に飛び込んでも、必ず原初の虚数空間に辿り付けるとも限らないし、そもそも魔法がキャンセルされる虚数空間を航行する事など無理だ」
結局、本人が帰還を諦めた様に、管理局も悟飯を元の世界に送る事を断念せざる得なかった。
そして次に問題となったのが、フローズという未確認知的生命体についてである。
彼が犯罪者をデスビームで撃ち殺している映像が陸士108部隊から提出されていた。
「計測した結果、射程A、威力SSS、発射速度SSS……にも関わらず魔力反応ゼロ。一体何の冗談だ?」
「何かの間違いではないか?所詮、地上部隊の報告だぞ…」
『海』では何かと『陸』を軽視する者も多い。
次元航行部隊が担当する事件は地上のそれと規模が違うからである。
それが、地上との確執の原因の一つでもあった。
「映像に改竄の形跡は見られないし、提出者はあのナカジマ三佐だ……。我々の常識からすれば信じ難いが……これは事実だ」
『陸』の高官には、事実上のトップであるレジアス・ゲイズ中将を筆頭に、『海』を嫌っている者は数多い。
下士官以下の者はそれほどではないが、士官――部隊長級の役職に就いている者の中には縄張り意識が強く、自分達の現場に『海』が介入してくる事を好ましく思っていない。
しかし、そんな中で『海』に対し、それほど対抗心を燃やしておらず、良好な関係を築いている者も存在する。
ゲンヤ・ナカジマ三佐もその1人であり、『海』の幹部も彼に対しては信頼を寄せていた。
「まあ、外見から見て知的生命体だが、人間のカテゴリーには入らんだろう……そういう種族であると納得するしかないな」
ちなみに、悟飯とフローズの戦闘記録は提出されていない。
否…提出出来なかったと言った方が正しい。
あまりの高速戦闘だった為、可能な限りのスロー再生にしても、影を捉えるのがやっと……それすらも注意深く見なければ判別出来ないので、こんな物を提出しても、理解して貰えないだろうと判断したからだ。
「それで、この化け物は何処に行ったのかね?」
「犯罪組織が利用していた次元転送装置で他の次元世界に移動したとの事だ」
「調べた結果、第42無人世界に設定されていたらしい」
「第42無人世界だと!?」
第42無人世界。
世界の約90%が砂漠地帯で昼間は約80℃と耐熱処理を施さなければとてもではないが生存できない灼熱地獄であり、夜間も氷点下80℃と地球の南極並みに下がるという気温の寒暖差が一般の砂漠以上の世界であり、人間が住むには過酷過ぎる為、無人世界となっているが、残り約10%のオアシスには稀少動物が生息しており、稀に密猟なども行われる。
しかし、あまりに過酷な環境である為、管理局の自然保護隊もとてもではないが、常駐する事が出来ない世界である。
「ナカジマ三佐からの報告では、このフローズの種族はどの様な環境下でも、例え宇宙空間であっても生存できるとの事だ…」
「バカな!?」
「無茶苦茶過ぎるぞ!?」
第97管理外世界で放映されている|子供向け特撮の巨大ヒーローじゃあるまいし、気圧が無く真空の宇宙空間で生存できる生物など常識では考えられない。
「勿論、確証がないし、報告したナカジマ三佐自身も半信半疑との事だ……だが、事実であれば我々にとっても無視できる存在ではないな…」
常識を超越した知的生命体との邂逅に、管理局の面々は頭を抱える事となった。
結局、フローズは敵対さえしなければ、管理局と対立する気はないという言葉を信じるしかなく、なるべく不干渉という方針を取る事になり、本局と地上を問わず部隊長級にその旨が通達されることとなった。
後年、フローズは管理局と度々接触するのだが、その度に対処に苦労する事となる。
★☆★
本来、次元漂流者は出身世界が見つかるまで本局の施設に滞在し、魔力などがあれば封印処理を施される。
しかし、中にはこちらの世界が気に入り、そのまま帰化する者も少なくない。
ゲンヤの先祖も第97管理外世界から来た次元漂流者だったが、上記の理由でこちらに帰化している。
悟飯は、戻れないと言うことが既に解かっているので、帰化を希望し、ゲンヤが悟飯の身元引受人となったので陸士108部隊で預かる事となった。
ゲンヤの家族は、数年前に妻が任務中に殉職したため、ゲンヤと娘2人の3人家族である。
ゲンヤとしても悟飯を保護者となる事で、いつか息子と酒を酌み交わすという夢が叶うと喜んでいた。
ハイヤードラゴンは、正式に悟飯のペットと認められ、陸士108部隊の隊舎の裏山に寝床が用意された。
悟飯が陸士108部隊預かりとなって10日余りが過ぎた。
警戒心が強いハイヤードラゴンも、最初こそ108部隊の局員たちを威嚇していたが、今ではすっかりと懐いていた。
昔は悟飯と悟空くらいにしか懐かなかったのだが、悟飯と接していく内に適応していたのだ。
現在、昼休みの時間であり、昼食を終えた局員達は中庭に集まり、ハイヤードラゴンが悟飯の口笛に合わせて踊ってるのを見て楽しんでいた。
そこに、ラッド・カルタス二等陸尉が、悟飯を呼びに来た。
「おい悟飯。三佐が呼んでいるぞ!」
「あ、はーい!」
「お前らも、そろそろ昼休みが終わるぞ!」
カルタスニ尉に促され、次々とオフィスに戻って行った。
「じゃあ、ハイヤードラゴン。俺はゲンヤさんのところに行くから、お前は裏山に戻っていろ」
「クアァー!」
ハイヤードラゴンが戻るのを確認してから、悟飯は部隊長オフィスに向かった。
部隊長室に来た悟飯は、ゲンヤから今後の事を聞かされていた。
「とりあえず、正式に我が家でお前を引き取る手続きが完了した」
「そうですか」
「そこで、俺の娘たちと引き会わせようと思ってな……幸いというか今日、娘達がここに遊びに来る事になっているから、臨海第8空港で待ち合せているんだが……顔合わせも兼ねてお前1人で向かえに行ってほしいんだ」
そう言うとゲンヤは悟飯の正面に、2人の少女の写真を空間モニターに展開した。
「こっちの長髪の方が姉のギンガ、ショートの方が妹のスバルだ。お前の事は既に娘たちにも伝えてある。待ち合わせ場所は正面玄関口前の案内板だ」
「わかりました。それじゃあ行って来ます」
★☆★
ミッドチルダ北部、臨海第8空港。
ミッドチルダ西部に近い場所に位置しており、ここから西部に向かう者も少なくない。
ゲンヤ・ナカジマの娘であるギンガ・ナカジマは現在、陸士候補生で実家を離れ、陸士訓練校の寮で生活しており、休暇を利用して父と妹に会う為にここに訪れていた。
しかし再会して早々、妹とはぐれてしまっていた。
泣き虫だが好奇心旺盛な妹は、普段来る事があまりない空港が物珍しくて、探険などしているのだろう。
迷子センターで妹を探してもらっており、新しい家族となる少年が来るのを待とうしているとき、事件が起こった。
突然起こった爆発により、第8空港は炎に包まれるだった。
後書き
真一郎「最近、3DSのドラゴンボールヒーローズばっかりやって執筆が進んでねぇな」
だって、やりたいんだもん。
真一郎「…まあいい。とりあえず悟飯が正式にナカジマ家に引き取られる事になったな」
うん。そして次回が終われば、次はバーダックサイドを書く予定だ。
真一郎「バーダックが辿り付いた世界を考えれば、誰と絡むかはわかるな」
では、これからも私の作品にお付き合い下さい。
真一郎「お願いします」
リリカルサイドの時期もこれで分かるな。
美姫 「空港災害が起こったという事はね」
しかし、そこに悟飯が居る事でどうなるのかが気になる所だが。
美姫 「一体、どんな展開になるのかしら」
次回が非常に気になります。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。