『時空を越えた超戦士−Remake−』

其之五 EPISODE of BARDOCK THE NEXT.(後編)

 

 バーダックとカリワーの激闘が続いていた。

 金色の戦士、超サイヤ人と化した2人の死闘は正に互角だった。

 バーダックの拳が、カリワーの蹴りがそれぞれの相手に的確にヒットしている。

 2人のパワーの余波が、周囲に影響を及ぼし、岩山が崩れ、地が裂け、天空に雷鳴が轟いていた。

 そんな最中、宇宙警察の8勇者が惑星プリズンに到着し、戦場に急行して来た。

 

 惑星アサヒーダ担当のエクスサー。

 テンヤ星担当のファイバー。

 惑星リョクハマ担当のガダーン。

 惑星ヌーベル担当のマイト。

 ナナキョク星担当のジェッカー。

 惑星レジェン担当のゴルドン。

 惑星サンカイ担当のダグオーン。

 カモメ星担当のガオガー。

 

 それぞれの担当惑星で勇者と崇められる程の実力者たちだが、そんな彼らですら、バーダックとカリワーの激闘は戦慄を齎した。

 

「こ……これが戦闘民族サイヤ人の力なのか?」

 

「バ……馬鹿な…!?確かにサイヤ人は強靭な肉体を持つ強戦士族だが、こんなケタ違いの強さを持っている筈がない…」

 

 この時代のサイヤ人は、宇宙を放浪しておらず、まだ本来の母星である惑星ベジータ(旧)に存在し、そこで他の種族との戦いに明け暮れていた。

 他の星の人間が傭兵として雇うほどの戦闘力は有していたが、1000年後の悟空やベジータ程の戦士は現れておらず、それほど恐怖された種族ではなかった。

 

「あのカリワーは自らの事を『超サイヤ人』と称したそうだが……正にその名が相応しいかも知れん???」

 

「しかしどうする……このままあの賞金稼ぎに任せるのか?」

 

「彼1人に任せるのは偲びないが、あの状態では下手に手出し等出来まい……」

 

 勇者と呼ばれた彼らですら、手が出せない。

 目の前で戦いを繰り広げている者たちとのレベルの違いを痛感する勇者たちだった。

 

 

 

 

 

 

 今まで互角の闘いを続けていたバーダックとカリワーだが、長くは続かなかった。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 カリワーが雄叫び発すると同時に、筋骨隆々の姿に変貌したのだ。

 

「何ッ!?」

 

「死ねぇ!」

 

 驚くバーダックの間合いに一瞬で入り込み、カリワーは強力な肘打ちを腹に叩きこむ。

 血反吐を吐きながら地面に叩き付けられ、更に追い討ちを受け、背中に強力な膝落としを喰らい、更に血反吐を吐いた。

 

「バ……馬鹿な!?」

 

 バーダックには信じられなかった。

 実はバーダックも似たような変身が出来る。

 通常の超サイヤ人とは別のベクトルの変身形態。

 体の筋肉が膨れ上がり、発せられるオーラがバーナーの激しい炎の様になる第2形態。

 そして、第2形態よりも更に筋肉が膨れ上がり、目の前のカリワーに近い姿になる第3形態。

 賞金稼ぎの仕事をこなす内に自分の意思で超サイヤ人への変身できる様になり、その後も戦いに明け暮れながら、この変身を可能にしたのだが、バーダックはこれを不完全な変身として一蹴した。

 第2形態は確かに、通常の変身よりも強いが体に掛かる負担が大きいし、第3段階は掛かる負担は増大するだけでなく、筋肉の重みでスピードが殺されてしまう。

 つまり、第1形態が最もバランスがとれた変身であると判断し、これらの変身を行わなかった。

 通常の状態では勝てなかった相手も、超サイヤ人に変身すれば事足りたので、わざわざ更にパワーアップの必要性もなかった。

 約1000年後の未来において、孫悟空やベジータ達と相対した超サイヤ人以上の戦士など、この時代には現れなかったのだ。

 唯一の可能性が南の銀河のコナッツ星で誕生した幻魔人ヒルデガーンだが、既に封印されている。

 カリワーはあれだけの筋骨隆々とした姿に変身したにも関わらず、そのスピードが鈍るどころか、むしろ早くなっている。

 仕掛ける攻撃全てを受けても微動だにせず、遂にバーダックは追い詰められ、カリワーが連続的に放った気功弾をまともに受け、倒れ伏すのだった。

 

 ★☆★

 

 バーダックとカリワーの戦いを見守っていた8勇者は戦慄を増していた。

 唯でさえ、2人の戦いに介入できずにいたのに、カリワーはパワーが更に跳ね上がり、バーダックを圧倒してしまった事に恐怖していた。

 しかし、誰も逃げるという選択を選ばない。

 故に彼らは勇者と呼ばれているのだ。

 この時代で彼ら以外で勇者と呼ばれるのは先に述べた幻魔人ヒルデガーンの封印に協力したタピオンとミノシア以外いなかった。

 

「さて、どうする。あのバーダックですらも勝てなかった奴を彼よりも劣る我々でどう対処する?」

 

「我ら全員で掛かってもカリワーはおろかバーダックにも勝てない……」

 

「方法はある!」

 

 そう主張したのはゴルドンだった。

 このゴルドンは、勇者たちの中で唯一の魔導師である。

 彼は、約500万年前に魔人ブウを作ったビビディに比べると数段劣る魔導師ではあるが、それでもこの時代ではトップレベルの魔導師だった。

 彼は自分の荷物の中から、厳重な封印が施された箱を取り出し、封印を解いた。

 その箱の中には、指先ほどの大きさの青い宝石が入っていた。

 

「この宝石は、強大な魔力の結晶体だ……私が偶然見つけこの特性に気付いて慌てて封印を施したのだ」

 

「何故、封印したのだ?」

 

「私が調べた結果、この結晶は周囲の生物の願望を自覚の有る無しに関わらず、勝手に叶えてしまうという特性がある……しかも、下手に力を加えると暴走し、惑星そのものを滅ぼしかねない代物なのだ」

 

 ナメック星にあるという何でも願いを叶える不思議な玉ほどではないが、ある程度実現可能な願いならば叶えてしまうほどの『力』によって、この結晶体は出来ている。

 この結晶体は、別の次元世界において『ジュエルシード』と言われる遺失物であった。

 幸いかどうかはともかく、この惑星プリズンはカリワーに破壊尽くされ、有人惑星としては機能出来なくなっている。

 あと数時間もすれば死の惑星と成り果てるだろう。

 ならば、このジュエルシードの力を用い、この惑星ごとカリワーを倒すべきだと、ゴルドンは進言した。

 そして、もはなその方法しかない事を他の勇者達も悟った。

 

「貴官らの命も捨てさせる事になるが……」

 

「構わん!」

 

「では、我らが少しの間時間を稼ぐ。その間に貴官が決めろ!}

 

 そう言うと、ゴルドンを残し他の勇者達はカリワーに特攻して言った。

 エクスサーが、ファイバーが、ガダーンが、マイトが、ジェッカーが、ダグオーンが、ガオガーが、次々とカリワーに向かって行った。

 力ではカリワーに敵わない事は皆、理解していたので、様々な策を用い、カリワーを足止めした。

 そして、彼らはそれぞれの奥義を用いて、カリワーを攻め立てたが、彼はちっとも痛痒せず、エクスサー達を薙ぎ払って行った

 

「よし、準備完了……いくぞカリワー…私達諸共、この星と共に吹っ飛べ!」

 

 ジュエルシードを暴走寸前まで解放し、カリワーに向かって投げ飛ばし、それに向かって皆が気功波を放ち、暴走を引き起こすという作戦を実行した……のだが……。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……パクッ!」

 

「「「「「「「「へっ……!?」」」」」」」」

 

 雄叫びを揚げながらゴルドンに突撃したカリワーの口にジュエルシードが入り込み……。

 

……ゴックン!!

 

 と、飲み込んでしまった。

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

 余りにも想定外の結末に呆然となった8勇者に、カリワーの無差別攻撃が襲いかかった。

 カリワーの作り出した巨大な気功弾が、分裂し、拡散して周囲に降り注いだのだ。

 為す術もなく、8勇者達はズタボロにされ、大地に転がった。

 

 

 

 

 

「ハッハッハッ……ウワーッハッハッハッハッ!!」

 

 カリワーの哄笑が周囲に鳴り響く。

 自らの圧倒的な力に酔った彼は、先ほど以上に見境を無くし辺り一帯を破壊し始めた。

 もはや死の惑星どころではなく、後数時間もすれば大爆発を起こしてしまうだろう。

 8勇者達の心が絶望に染まろうとしたその時、彼らの耳にこちらに向かってくる足音が聴こえて来た。

 

「…バ……バーダック!?」

 

 全身血塗れになりながらも、バーダックは生きていた。

 生きているのが不思議なくらいの重体であるにも関わらず、彼の眼からは闘志が消えていない。

 何と言う種族なのだ……サイヤ人という種族は……。

 戦闘民族と呼ばれるその理由を知り、勇者達は畏敬の念を抱いた。

 

「バーダック……その体で闘うつもりなのか?」

 

「誰だ……てめぇら?」

 

「…我々は宇宙警察の者だ…」

 

「ああ。てめぇらが8勇者とか言われている奴等か……どうやらカリワーの奴にボロ負けしたようだな…」

 

「とにかく、その体で立ち向かうのは自殺行為だ……私の最後の魔力で君の体を癒そう……」

 

 8人の中で比較的軽症のゴルドンが、己に残る最後の魔力を用い治癒魔法を翔け、バーダックを完治させた。

 それと同時にバーダックの戦闘力が上昇した。

 死からたちなおる度にサイヤ人は戦闘力がどんどん高まる。

 バーダックは、この特性により下級戦士ながらエリート戦士を上回る戦闘力を身に付け、ついには超サイヤ人に覚醒するほどの強さを得たのだ。

 しかし、それでもまだカリワーには遠く及ばない。

 

「バーダック……奴を倒す手段として一つ提案がある……」

 

 8勇者のリーダー格であるエクスサーがバーダックに語りかけた。

 

「提案だと!?」

 

「我々の命を貰ってくれないか?」

 

「何だと!?」

 

「ゴルドンには、我々全員を癒せる力はもう残っていない……それに我々が回復しても、君の足を引っ張るだけだ……ならば、我々全員のパワーを……生命力を君の下に結集する……そうすれば……カリワーを倒せるパワーを君に与える事が出来よう……」

 

「……てめえら……そんな体で他人にパワーを注ぐなど、確実に死ぬぞ!」

 

「フッ…どうせこのままでも助からんよ……ならば、やるだけやって死にたい……」

 

 バーダックが8人全員の顔を見渡すと、皆、決意を固めていた。

 

「……いいだろう……奴を倒せる力をくれるなら願ったりだ……てめぇらの力を俺が役立ててやるぜ!ありがたく思うんだな…」

 

「クククッ…こっちが素晴らしいプレゼントをやろうと言うのに何て言い草だ……では頼むゴルドン」

 

「…うむ」

 

 エクスサーに促され、ゴルドンは自身を含むこの場にいる全員のパワーを吸収し、それをバーダックに注ぎ込んだ。

 すべての力を吸い取られたエクスサー達の体は、ゴルドン以外真っ白になって崩れていき、塵となっていった。

 

「うおっ!?」

 

 その瞬間、バーダックの体に凄まじい力が漲って来た。

 

「すげぇ……この体に溢れる凄まじいパワーは……想像以上だぜ。一応、感謝してやるぜ!!」

 

 バーダックは、唯一残ったゴルドンに敬礼の様なポーズを取ると、カリワーに向かって突撃していった。

 

「…私の命もあと僅か……だがエクスサーたちの分まで、君の戦いを見届けようぞ。それまで持ってくれよ我が命よ…」

 

 ★☆★

 

「ほぅ。まだ生きていたのか……流石はサイヤ人……褒めてやろう…」

 

「てめぇに褒められても嬉しくも何ともないぜ!」

 

 売り言葉に買い言葉。

 バーダックの言い様に怒りを露わにしたカリワーは、渾身の力を込めて、バーダックに殴りかかった……が!?

 

「な……何ィ!?」

 

 バーダックはその剛腕を片手で受け止めていた。

 

「馬鹿な……何故こんな急激に?」

 

 つい先ほどまで自分にまったく歯が立たなかった男が、自分の渾身の一撃を止めた。

 カリワーは驚愕し、目の前で起こった出来事が信じられなかった。

 そしてバーダックは、ある種の高揚感に包まれていた。

 自分以外の者のパワーが自分の中に集束されている事に興奮しているのだ。

 今までバーダックは、自分の力のみを頼りに戦ってきた。

 トーマ達を仲間だという認識は持っていたが、あくまで頼れるのは自分だけ。

 しかし、8勇者のパワーを自らの内に集束した時に感じる暖かさを……。

 バーダックはこの時初めて、力を合わせて戦う事の素晴らしさを知った。

 フリーザは、超サイヤ人だけでなく、徒党を組んだサイヤ人を警戒していたという……。

 もし、フリーザに挑んだあの時……他のサイヤ人達がバーダックの言う事を信じ、共にフリーザに立ち向かってくれたなら……最終的には勝てなかったかもしれないが、あんなにもあっさりと敗れなかったかも知れなかった。

 

「フン!多少パワーが上がった程度で、この俺を倒せるはずが無い!!」

 

 カリワーはそう言うと、右手に気を凝縮し、バーダックに向かって放った。

 

「今度こそ死ぬのはてめぇだ!!」

 

 バーダックは左手を前に付き出し、腰付近においた右手に全パワーを集中し、気が満ちると同時に掌低打ちの要領で右手を前へ付き出し、溜めた気を放出するリベリオントリガーを放った。

 カリワーの放った気弾はリベリオントリガーとぶつかり合うと同時に大きく膨張した。

 奇しくもその技は、1000年後の伝説の超サイヤ人ブロリーの使うオメガブラストと酷似した技であった。

 しかし、バーダックのリベリオントリガーはあっさりとオメガブラストもどきを貫通し、カリワーに直撃した。

 

「ぐおおぉぉ」

 

 カリワーが怯んだその一瞬を付き、バーダックはその懐に飛び込み、全ての力を込めた拳でその胸板を貫いた。

 その体内にあったジュエルシードごと……。

 

「ば……馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 バーダックの放ったパワーとジュエルシードが砕けた事で発生した凄まじいエネルギーにより、カリワーは惑星プリズン共々大爆発を起こし、この宇宙の塵となって消えた。

 爆発の余波によって、宇宙に吹き飛ばされたゴルドンは、運良く来援に来ていた宇宙警察の予備艦隊に救助され、バーダックとカリワーという2人の超サイヤ人の激闘を語り終えると、仲間たちの後を追う様に息を引き取った……。

 ゴルドンが伝えた話は、後々まで語り継がれる事となるが、1000年という年月の内に変質していき、バーダックとカリワーの変身は同一視され、超サイヤ人伝説として宇宙に広まったという。

 余談だが、チルドが一族に伝えた話も、この伝説の影響を受け、「金色に変化するサイヤ人」てはなく「超サイヤ人」として後世に伝えられることとなった。

 

 

 

 

 

 

 しかし、バーダックは死んではいなかった。

 ジュエルシードが砕けた際に発生した凄まじいエネルギーは、次元震を引き起こしバーダックを原初の虚数空間『混沌』へと誘った。

 『混沌』を流れ、バーダックは再び時間を渡り、更に別の次元世界に跳ばされる事となった。

 バーダックが辿り付いたその世界は第6管理世界、アルザス地方と呼ばれる世界であった……。

 


後書き

 

真一郎「なんとか序が終わったな」

ちなみに、今回登場したジュエルシード、そして其之一でブロリーが踏み潰したのもジュエルシードで、それらはリリカルなのは無印でプレシアと共に虚数空間に堕ちたジュエルシードです。

真一郎「それが、虚数空間から混沌を通って、ドラゴンボールの世界の様々な時代に散らばったという設定か……なんて強引な設定」

ちなみに、今回登場したオリキャラである8勇者。彼らの名前の由来は、某ロボットアニメシリーズから取っています。

真一郎「ああ、あの勇○シリーズね……」

いや、伏字にしてもそれだと直ぐにわかっちゃうじゃん。

真一郎「次回から、主役は再び悟飯に戻り、なのはの世界を舞台にした本編が始まります」

では、これからも私の作品にお付き合い下さい。

真一郎「お願いします」




バーダック編の序章もこれにてお終い。
美姫 「相打ちかと思ったけれど、どうにか生き残ったみたいね」
瀕死状態だろうから、更に強くなるかも。
美姫 「問題は流された先よね」
これによってどうなるのか、だな。
美姫 「続きが気になるところよね」
うんうん。次回は悟飯に戻るみたいだが。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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