『時空を越えた超戦士−Remake−』
其之三 The opening(後編)
ブロリーを倒した悟空は、ハイヤードラゴンと座りこんでいる悟飯の下に駆けつけた。
「大丈夫か……悟飯?」
悟飯の前に膝を付き、顔を覗きこもうとしたその時……悟飯は悟空の胸に飛び込んだ。
「お父さん、お父さん、お父さん、お父さん……」
もう会えないと思っていた父親と会えた悟飯は、悟空の胸の中で号泣していた。
久しぶりに感じる父の温もり、父の匂い……小さかった頃から、最も安らげた場所……。
夢じゃない……この感触は現実のモノだ。
そんな悟飯を悟空も優しく抱き締めていた。
「…そういう事でしたか…」
ようやく泣き止んだ悟飯は、神龍から事情を聞き納得した。
流石に学者志望だっただけあり、飲み込みが早い。
「じゃあ、ここにいるお父さんは、俺たちとは違う未来を辿ったお父さんなんですね…」
心臓病で死んだ悟空が生き返ったのではなく、違う次元から来た悟空……。
「…それにしても……まさかドラゴンボールにそんな秘密が隠されていたなんて……」
悟空から聞いた別の未来での結末……。
ドラゴンボールの乱用が招いた悲劇……。
この悟飯の世界では、ピッコロが死んでしまった為に神様も死に、ドラゴンボールが無くなってしまっていた。
新ナメック星の場所もわからないので、デンデに新しい神様になってもらうことも出来ない。
しかし、邪悪龍というとんでもない敵が現れてしまうのなら、ドラゴンボールを使う事も躊躇いを覚えてしまう。
「ところで、ここは俺たちの世界ではないとの事ですが……俺たちは元の世界に戻れるんでしょうか?」
【それは無理だ……】
悟飯の問いに神龍が悟飯の頭に直接響く声で答えた。
【そもそも、お前は我々とは違う次元軸の住人だ……唯でさえ虚数空間を越えて悟空を現界されるだけでも、かなりのマイナスエネルギーを発生させてしまっているのに、違う次元軸に干渉すれば確実に邪悪龍が顕れてしまう程のマイナスエネルギーが溜まってしまう……そうなったら今度こそ……世界は破滅してしまうだろう」
何しろ、今度は神龍と一体化している悟空も邪悪龍に取り込まれてしまい、対抗できる者がいなくなってしまう。
「神龍……何とかなんねぇのか?」
悟空が懇願するが、神龍から帰ってくる答えは否。
そもそも今、悟空が現界していること自体、無理をしているのだ。
流石にこれ以上の我儘を叶えるわけにはいかなかった。
「…いいんですよお父さん…」
「悟飯…!?」
「人造人間の脅威が無くなり、地球は平和になりました……もう思い残すことはありません……それに、こちらの世界に来なければ……俺もハイヤードラゴンもあのブロリーとか言う超サイヤ人に殺されていましたし、こうしてお父さんとも逢えませんでした……例え……別次元の存在だとしても……」
向こうに残してきた母チチやまだ幼いトランクスの事が気掛かりと言えば気掛かりだが……それだけで悟飯は充分だった。
「…すまねぇ……悟飯…」
悟飯を帰してやれない悟空は、ただ悟飯を抱きしめることしか出来なかった。
★☆★
【孫悟飯よ……お前たちを元の次元に戻すことは出来ないが、お前がこの次元で生きていく手助けくらいは出来る」
「手助け……ですか?」
【そうだ……まずはお前を有人世界に移動させる……この世界の水は飲料水には適さない、植物も食用果実を実らせない、食料となる動物もいない……そんな世界だ】
この世界は資源を発掘する為に、次元世界を管理する組織によって管理されているが、既にほとんどの資源は底を尽き、また人が住める環境ではない為、ほとんど訪れる者もいなくなって久しい世界なのだ。
【では、次は……今、手持ちの仙豆を出すのだ】
悟飯は、神龍に促された通り、道着の帯に括り付けている仙豆の袋を取り出した。
神龍は、悟空を介しその力を発揮した。
悟空の眼が紅く輝くと、仙豆が一瞬、光を発した。
本来、仙豆はカリン搭でしか栽培できないが、どこでも蒔けば栽培出来る様、品種改良したのだ。
実る数は多少減るが、その分多く蒔けば、たくさん収穫できる様になった。
【そして最後は……】
またも悟空の眼が紅く光り、悟飯の首に宝石の付いたペンダントが形成された。
「これは?」
【それは、こちらの次元世界で使われる『デバイス』と呼ばれるモノだ……】
デバイスとは、この世界に存在する魔導師達が魔法使用の補助の為に使う機械媒体の総称である。
実は、悟飯にはこの世界の魔法を使う為に必要な器官である『リンカーコア』があり、魔導師となれる才能があった……。
最も、それほど突出した力というわけではなく、せいぜいA〜Cランク程度の魔力量だが……。
【そのデバイスには、悟空の人格と経験の記憶をコピーしたAIが搭載されている―――例えるなら悟空の分身端末―――お前を有人世界に転移させた後で、自動的に起動するだろう……】
「…お父さんの人格と記憶の複製…」
そして、それ以外にもこのデバイスには様々な機能が内臓されている。
はっきり言って、かなりオーバーテクノロジーであり、例えブルマやドクターゲロという天才科学者といえども、このデバイスを完全に解明するのは不可能である。
神龍が創った正に神秘の結晶である為、科学ではけっして解明できない代物なのだ。
ドラゴンボールがどういう原理で願いを叶えるのか……それを科学で解明できない様に。
下手をすると、こちらの時空世界を管理している組織でいうロストロギアに指定されかねないが、このデバイスはオリジナルである孫悟空の血に連なる者以外使用出来ない様に作られている。
ハイヤードラゴンがいるとはいえ、まったく知らない、自分の知っている人が一人もいない世界で生きていくのは辛いだろう……。
だから、例え複製に過ぎないとはいえ、悟空を身近に感じられたら……その孤独も癒されるだろう…。
悟空と一体化している神龍もまた、悟飯の事が気掛かりなのか、かなりのサービスをする様だ。
【孫悟飯よ……そのデバイスを通じて、お前と悟空は繋がっている……お前は一人ではない……】
「悟飯……そのデバイスっちゅう奴を通じて、オラはお前を見守っているぞ……」
「…ありがとう……ありがとう神龍……ありがとうお父さん…」
悟飯は、悟空と最後の抱擁を交わし、神龍の力によってハイヤードラゴンと共に有人世界に送られた。
その世界の名は、この次元世界の中心世界『ミッドチルダ』という…。
★☆★
「ありがとうな神龍。悟飯の為にあそこまでしてくれて……」
超次元空間に戻った悟空は、神龍に礼を言った。
「お前と一体化しているせいか、私も孫悟飯に対し父性愛に近い感情を持っている様だ……だが、それだけではない」
「どういう事だ?」
「あちらの世界の住人――ーつまり魔導師と呼ばれる者達―――の戦闘力は、こちらの一般の地球人よりも上だが……それでも上位レベルの者達で武天老師と同レベルだ」
高位の魔導師は戦艦すら墜とす……とも言われているが、戦艦を墜とす程度、MAXパワーかめはめ波で月を吹っ飛ばせる亀仙人なら充分可能だ。
それに比べ、戦艦を墜とせる魔導師と言えど、月を破壊する事は出来ない。
それこそ、ロストロギアと呼ばれる危険物を使わない限り、個人の力のみでは不可能だ。
まあ、戦いはパワーだけで決まるわけではないので、あちらの魔導師でも戦い方次第では亀仙人を倒すことは可能だろう……決して簡単にはいかないだろうが……。
「だが、サイヤ人やナメック星人といった惑星戦士達には遠く及ばない」
「ああ。でもそれが何か関係あんのか?」
「実は、お前が眠っている間だが……悟飯よりも前にお前の世界の幾人かが『混沌』を越えて、あちらの世界に飛ばされている」
「何だって……!?」
「そして、今もまた……」
神龍が示した方に視線を向けると、また誰か一人『混沌』の中を流れていた。
「あ……あれは!?」
その男は、悟空に良く似た男であった。
ただ違うところは……左頬に大きな傷が付いている事だ。
「オラに似ているっちゅーことは、あいつサイヤ人か?」
「流れてきた時間軸から見て、1000年以上過去からの様だがな……つまり、あの次元世界はとてつもない災厄に見舞われる可能性が高い……いかに孫悟飯でも一人では対処し得まい……そしてあの世界の住人たちも最低でも、お前の地球人の仲間たち程度の強さを身に付けねばな」
後書き
真一郎「にじファンに投稿した分との相違点」
あちらでは、悟空の技の修行方法が書かれたノートとしましたが、せっかくリリカルなのはの世界に行くのだから、というわけで悟空の人格をコピーしたAI搭載のデバイスに変更しました
真一郎「とりあえず、今回で悟飯のプロローグは終わりだけど、しかし、まだまだ序は続くんだよな」
次回はもう一人の主人公のプロローグです
真一郎「今回の最後に登場した悟空そっくりのサイヤ人」
では、これからも私の作品にお付き合い下さい
真一郎「僕、本当に偉い学者さんになれるかな?」
いや、確かにそれはZだけど……放映初期のやつじゃねーか……
悟飯がデバイスを手に。
美姫 「実際、魔法を使うよりも素手の方が強い気はするけれどね」
まあ、この場合はAIがメインだろうけれどな。
美姫 「流石に一人は辛いものね」
さて、どうやら悟飯以外にも来たみたいだけれど。
美姫 「管理局側の対応がどうなるかよね」
続きが気になります。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。