『時空を越えた超戦士−Remake−』

其之二 The opening(中編)

 

 ここは遥かなる昔、全次元世界が誕生する前から存在した原初の虚数空間『混沌』。

 その中に存在する空間……『超次元空間』。

 そこに一匹の龍と一人の青年が眠っていた。

 龍の名は『神龍』。

 青年の名前は『孫悟空』。

 『次元V』の世界のエイジ790年……ドラゴンボールの乱用によって生まれた邪悪龍を倒し、最後の願いであるドクターゲロとドクターミューが起こした事件によって死んだクリリン達を生き返らせる事によって新たに発生したマイナスエネルギーを浄化する為、この空間で眠りに就いているのだ。

 

「……悟空、孫悟空……目を覚ますのだ…」

 

「う〜ん。何だ神龍……もう百年経ったのか?」

 

「いや、まだ一年も経っていない…」

 

「じゃあ、なんでオラを起こしたんだ?」

 

「これを見ろ」

 

 神龍の目が光ると悟空の目の前に映像が映し出された。

 そこに映っているのは、虚数空間『混沌』を漂う悟空が見知っている3人……いや2人と1匹の姿だった。

 

「悟飯とハイヤードラゴン……それにブロリー?」

 

 悟空は自分の目を疑った。

 何しろ、ブロリーは既に倒しているはずだし、ここに映っている悟飯はまだ子供だったからだ。

 

「悟空よ。我らのいる超次元空間はお前がいた次元と同調しているが、周りの『混沌』はあらゆる次元軸、時間軸と繋がってるのだ。すなわち我らとは違う時代、違う次元の者がなんらかの要因によって、この空間に堕ちてくる事があるのだ。この悟飯とブロリーは、エイジ766年にお前が心臓病で死んだ次元から、『混沌』に堕ちた2人なのだ」

 

「未来から来たトランクスの次元からか?」

 

「いや、その次元よりも前の時間に分岐した次元からだ」

 

「それで、あの悟飯とブロリーは何処に流れているんだ?」

 

「恐らくは、我らの次元世界の外にある次元世界に向かっているようだ」

 

 神龍の話では、悟空達の世界とその他全ての次元世界は『混沌』によって隔離されているとの事だ。

 そもそも、悟空達の世界は他の世界とまったく異なる構造の世界なのだ。

 悟空達の世界は球体に包まれており、球体の上半分があの世、下半分がこの世とに分かれている。

 この世の構造は、東西南北4つの銀河に分かれており、悟空達が住んでいる惑星『地球』は北銀河に位置し、ドラゴンボールを作り出せる種族が住むナメック星(旧)は東銀河に位置している。

 あの世の構造は、最下層に生前、一定以上の悪事を行った悪人達が送られる『地獄』。

 厚い雲で地獄と隔てられているその上に、あの世の審問官である閻魔大王が住まう『閻魔大王の館』があり、その周りに東西南北の宇宙を管理する界王が住まう星、『界王星』があり、北銀河の界王星への繋がる『蛇の道』がある。

 その上に位置する大きな星が、生前において生きるために必要な業以外の罪を一定以上犯さなかった者達が住まう事を許された楽園である『天国』があり、更にその上にある小さな星が4人の界王を統括する大界王が住まう『大界王星』が存在している。

 そして、この世界の球体の周りを衛星の様に回る世界が、界王達の神である界王神が住んでいる『界王神界』であり、この世とあの世を監視しているのだ。

 更に東西南北の銀河の更に下層、世界の球体の下にある出っ張りが『暗黒魔界』と呼ばれる世界であり、そこには界王神と対極に位置する魔界王神が存在し、悪を司っているのだ。

 

 

 

 

 

 

「ブロリーが他の次元世界に行っちまったら大変な事になるぞ…」

 

「孫悟空よ……お前まさか?」

 

「…神龍……頼む!」

 

 悟空の考えを察した神龍だが難色を示した。

 

「孫悟空よ。確かに邪悪龍が倒されたので、マイナスエネルギーはほとんど浄化されている……しかし、外の次元世界にお前を現界させれば、かなりのマイナスエネルギーが溜まる事になるぞ」

 

 ドラゴンボールという触媒無しに神龍が世界に現界すれば、願いを叶えなくても少量だがマイナスエネルギーが発生するのに、更に違う次元世界に現界などさせれば、かなりのマイナスエネルギーが発生してしまう。

 今の悟空は、神龍と一体化しているので、悟空だけの現界でも同様だ。

 

「…すまねぇ神龍。でも……たとえ違う次元のとはいえ、オラは悟飯を見捨てられねぇ……頼む!」

 

「仕方あるまい……今回だけだぞ孫悟空」

 

 悟空の必死の懇願を受けた神龍は、しぶしぶだが悟空の意に従うことにした。

 

 ★☆★

 

 ここはある無人世界。

 人が生活できる環境ではないが、天然資源が豊富なので、その採掘の為に公的組織によって管理されている世界である。

 その世界に、悟飯達は流れ着いた。

 

「……ここは何処だ?」

 

「クァ―――ッ!?」

 

 いきなり周りの景色が変わり、戸惑う悟飯にハイヤードラゴンが警告した。

 我に返った悟飯だったが、超サイヤ人……いや、ブロリーの攻撃を受け、ハイヤードラゴン諸共吹っ飛ばされてしまった。

 

「カカロット……カカロットは何処だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 体中に気を纏い、無差別に気功弾をばら撒く『ブラスターメテオ』で周りを破壊しながら、自分に迫るブロリーを見て、悟飯は死を覚悟した。

 

「…ハイヤードラゴン、どうやらこれまでの様だ……お前を巻き込んでしまって御免な…」

 

 悟飯は、自分に寄りそうハイヤードラゴンの首を抱き寄せると、ハイヤードラゴンは気にするなという様に悟飯の頬を舐める。

 どういう理由かは解からないが、自分達は地球とは違う場所にいるようだ。

 そして、この場所には人が存在していない事も解った。

 周りから、気が一切感じられないからだ。

 地球が目の前の悪魔に破壊される事は避けられた。

 悟飯は、迫り来る死を目を閉じて待った。

 人造人間が滅び、それを滅ぼした悪魔も地球からいなくなった。

 地球は、ようやく平和になるのだ。

 ならば思い残す事は何もない。

 それにあの世に行けば、大好きな父やピッコロが……クリリンやヤムチャ達もいるのだ。

 

「…お父さん、ピッコロさん、クリリンさん、ヤムチャさん、天津飯さん、餃子さん……俺も……いや僕たちも今からそちらに行きます……」

 

 ブロリーは、左手に気を溜め、悟飯に向かってそれを投げつけた。

 ブロリーの技の一つ『イレイザーキャノン』だ。

 悟飯に着弾しようとしたその時、横から放たれた気功弾が、イレイザーキャノンを逸らした。

 

「お前の好きにはさせねぇぞ…ブロリー!!」

 

「カ……カカロット!?」

 

 突如、現れた悟空に戸惑ったブロリーは、悟空の不意打ちを受けて吹っ飛ばされた。

 

「悟飯!大丈夫か……しっかりしろ!!」

 

 懐かしい声が聞こえる。

 悟飯が目を開くと、そこには逢いたく逢いたくて仕方がなかった顔があった。

 

「お…お父さん!?……こ……これは夢?……いや、あの世から僕を向かえに来てくれたんですね…」

 

 死んだ父が向かえに来てくれたと思い、涙ぐみながら悟空に向かって手を伸ばす。

 悟空はその手を握り締め、笑顔で優しく抱き寄せた。

 

「心配すんな悟飯……夢でもねぇし、お前も死んじゃいねぇぞ」

 

 悟空の応えに我に返った悟飯は、辺りを見回した。

 そして、もう一度悟空の顔を凝視する。

 

「お……お父さん……一体これは…!?」

 

「お前は、ここでゆっくり休んでろ……プロリーはオラが倒してやるからな…」

 

 悟空は超サイヤ人に変身し、既に体勢を立て直し、こちらに突撃してくるブロリーを迎え撃った。

 

「カカロットォォォ!」

 

「ブロリー!」

 

 同じ日に生まれ、隣り合わせのベッドに寝かされた者たちのニ度の激闘(悟空にとっては)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 悟空とブロリーの激闘は苛烈を極めていた。

 悟空とブロリーが初めて闘った当時は、2人の力の差は大きかった。

 悟空はブロリーにまったく歯が立たず、悟飯、ピッコロ、トランクス、ベジータの力を結集し、ようやく倒す事が出来た。

 しかし、今の悟空は当時に比べ格段とレベルアップしており、互角の勝負を展開していた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 ブロリーが雄叫びを発し、辺り一面が緑色の気に包まれた。

 光が集束すると、ブロリーは筋骨隆々とした『伝説の超サイヤ人』と化していた。

 ブロリーの豪腕が、悟空に叩き付けられ悟飯の所まで吹き飛ばされた。

 

「お父さん!」

 

「…大丈夫だ悟飯……危ねぇからお前はハイヤードラゴンを連れて下がっていろ!」

 

 悟空は悟飯を下がらせると、再びブロリーに突撃して行き、ブロリーの前で急停止した悟空が光に包まれた。

 

「な…何だ!?」

 

 光が治まった時、ブロリーが見た悟空の姿は……。

 

「ブロリー……お前には負けねぇ!」

 

 従来の超サイヤ人の形態とはまったく異なる姿だった。

 金髪に変化していた髪が黒に戻り、体が胸部と腹部を除いて赤い体毛に覆われている。

 黄金の瞳と赤い縁取りに覆われた眼。

 超サイヤ人に大猿の力を加えた最終形態、超サイヤ人4に変身した。

 

「いくぞ!ブロリー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 形勢は悟空が押していた。

 ブロリーは確かに、かつての悟空にとって恐るべき敵であった。

 しかし悟空は、それ以上の敵と戦い続けてきたのだ。

 ブロリーの力は、セルはおろか下手をすれば魔人ブウすら上回るかも知れない。

 しかし、スーパー17号や超一星龍ほどではない。

 さしものブロリーも、超サイヤ人4と化した悟空に圧倒され始めていた。

 

「凄い……やっぱりお父さんは強い」

 

 悟飯は悟空の闘いに魅入られていた。

 今、闘っている父が幻覚などではない事は、はっきりと分かっていた。

 正直、何故悟空が生きて、目の前にいるのかは理解出来ない。

 でも、そんな事はどうでもよかった。

 心臓病で死んでしまった悟空と、再び逢えた。

 それだけで、悟飯はとても幸せだった。

 客観的に見れば、悟空は父親としては大失格である。

 息子に対しての愛情は持っているし、悟飯をすごく可愛がってはいたが、子育て自体には興味がなく、生活の為に金銭を稼ごうともしない。

 それでも悟飯は悟空が大好きで、尊敬していた。

 

 

 

 

 

 超サイヤ人4に押され気味だったブロリーだったが、流石は伝説の超サイヤ人。

 ブロリーは父パラガスが評した様に、サイヤ人そのもの……闘いの中でどんどんとパワーが増していき、超サイヤ人4の悟空の強さにどんどんと迫っていった。

 このまま続ければ、何れはスーパー17号や超一星龍の域まで達してしまいそうな勢いだ。

 

「……流石だなブロリー……お前が悪い奴じゃなかったら……このままずっと闘い続けてぇけど……そういう訳にもいかねぇ!」

 

 悟空が現界しているだけで、マイナスエネルギーは溜まっているのだ。

 早くケリを付けないと、再び邪悪龍が発生してしまう。

 しかも今度は、神龍と同調している悟空にも影響が出てしまうだろう。

 

「いくぞブロリー……10倍かめはめ波を受けろ!」

 

「カカロットォォォ!!」

 

 悟空がかめはめ波の構えをとると、ブロリーも構えをとった。

 左手に気を凝縮し、それを悟空に向けて放ってきた。

 

「かぁ…」

 

 両手首を合わせて手を開き、体の前方に構え…。

 

「めぇ…」

 

 腰付近に両手を持っていき…。

 

「はぁ…」

 

 体内の気を集中させ…。

 

「めぇ…」

 

 溜めた気が両手に満ちて…。

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それを一気に放った!!

 悟空の『10倍かめはめ波』とブロリーの『オメガブラスター』が空間でぶつかりあった。

 オメガブラスターは、かめかめ波とぶつかると同時に大きく膨張し、かめはめ波と拮抗している。

 この時点でブロリーは悟空と強さの領域に限りなく近付いていたのだ。

 

「グググググッ……!」

 

「……カ……カカロットォォォォォォォォ!」

 

 苦悶の表情でお互いの気を押し合う2人の超サイヤ人。

 しかし、ここで優劣が決した。

 確かにブロリーは、超サイヤ人4の領域に限りなく近付いてはいたが、まだ達したわけではなかった。

 それが命運を分け、オメガブラスターは悟空の10倍かめはめに遂に押し負け、掻き消された。

 

「ブロリー……お前もウーブみてぇに今度はいい奴になって生まれ変わって来い……その時は、楽しく闘おうぜ……またな…ハアァァァァァァァ!!

 

カカロットォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

 10倍かめはめ波の直撃を受け、ブロリーは消滅した。

 


後書き

 というわけで、にじファンでの幕間と三話の途中までを書き直しました。

 ちょっと、展開が変わっていますが、こんなものでしょう。

 次回でようやく、序章が終わるわけではありません。

 悟飯のプロローグは終わりですが、もう一人の主人公のプロローグがありますので……。




悟空の登場。
美姫 「やっぱりこうじゃないとね」
ブロリーはこれで本当に消滅したのかな。
美姫 「どうなのかしら。それにしても、悟飯たちはこれからどうなるのかしら」
すんなりと元の世界に戻れるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。



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