ルーテシアview

 

 

「うん。ガリュー、ミッションクリア。いいコだよ……。じゃあ、そのままドクターに届けてあげて」

 

 アスクレピオスを通し、自身の守護獣へと告げる。

 ちょっと予想外のことがあったけど、ドクターに頼まれたことはちゃんとできた。あとは届けてあげるだけ。

 ドクターに頼まれた品物はいきなり動き出したみたいだけど、ガリューのところではなにも起きなかったみたい。ここからも空に見たことない形の魔法陣が見えたから、それだったのかも。

 ともかく、これで自分にできることは終わり。呼び出したインゼクトを全部送還して、足元に展開していた魔法陣も消える。

 

「品物は、なんだったんだ?」

 

 ゼストが近づき、コートを差し出しながら訊いてきた。

 

「分かんない。オークションに出す品物じゃなくて、密輸品みたいだけど……」

「そうか」

 

 差し出されたコートを受け取り、袖に腕を通す。

 それを待つ間にゼストは戦場の方を見た。その視線の先ではまだガジェットが戦っていて、爆発が起こっている。

 

「戦いも、もう終わりだ。前線の騎士たちが、なかなかよい戦いをした」

 

 コートの前を留め、ゼストのコートの裾を掴む。

 それでゼストは振り返り、

 

「さて、お前の探し物に戻るとしよう」

 

 それに、頷くだけで答えた

 

 

 

 

 

 

      第03話  「異邦人たち 〜Mad Tea-Party〜」

 

 

 

 

 

 

   なのはview

 

 

 ホテル外周の森の中、戦場の跡。そこかしこではガジェットの残骸がまだ煙を上げている。

 そこでは六課の課員たちが事後処理をすべく散らばっていた。

 撃墜されたガジェットの破片を集める者。

 戦闘の損害を調査する者。

 その一角になのはとフェイト――二人の隊長とフォワードたちの姿もあった。

 

「えっと、報告は以上かな」

 

 一通りの口頭報告を終え、最後の確認として問いかけた。二人はすでにオークション会場でのドレスから六課の制服に着替えている。

 

「現場検証は調査班がやってくれるけど、皆も協力してあげてね。しばらく待機してなにもないようなら、撤退だから」

「「「はい」」」

 

 元気な返事が返る。

 とは言ってもさっきのは彼女たちの話。はやてとフェイト――部隊長と執務官の二人には一つ余分に仕事ができたので別の便で帰るということになるけど。

 それからなのはの視線は、さっきの返事や今の並び位置で一歩引いた場所にいる人物へと向けられた。

 

「で、ティアナは……ちょっと、私とお散歩しようか」

「ぁ……はい」

 

 いつもの様子からは考えられないくらい、気迫など感じられない消沈した声で答えた。

 これは重症かな……

 彼女がそうなった理由は察しているつもりだ。だからこそ、早いうちにフォローしておくべきだろうと判断する。

 

「それじゃあ皆、お願いね」

 

 他の三人にそう告げて、ティアナが付いてくる様子をなんとなく確認して、森の方へと歩き出した。

 

 

 少し森の中に入ればそこは静かなものだった。

 この辺は戦闘区域にならなかったのでガジェットの残骸はないし、他の課員たちもいない。心地よい日差しもあってこの雰囲気の中のんびりできたらどれだけ気持ちいいだろう。

 けれど、いつまでもただ歩いているだけにもいかない。

 

「戦闘の記録は見たよ」

 

 後ろでビクリと反応したのを感じた。

 振り返る。そこには変わらず――いや、さらに意気消沈したティアナがいる。

 

「すみません……。一発……逸れちゃって……」

 

 そう、たった一発。

 だがそれは、完全に無警戒だったスバルの背中を襲った一発でもあった。

 もしもその一発が当たっていたら……

 そのときはそれと同時に銀髪の少年が現れたためにうやむやになっていたたけど、完璧を求めるこの少女があの失敗を気にしないはずがなかった。

 少しだけ語気を緩めて、諭すように告げる。

 

「うん。ちゃんと自分で分かって反省できてるみたいだし、ヴィータ副隊長からも言われてるだろうから私からは改めて叱ったりしないけど……ティアナはときどき、少し一生懸命過ぎるんだよね。それでちょっと、やんちゃしちゃうんだ」

 

 それはある意味ではこの少女の長所かもしれない。失敗を恐れず挑戦する意志。

 でも、それだけじゃいけない。

 

「でもね、覚えておいて」ポン、と肩に手を置いて、同じ高さの目線で「ティアナは一人で戦ってるわけじゃないんだよ。集団戦での私やティアナのポジションは、前後左右、全部を見渡して戦況をコントロールする重要なポジション。前に出る味方の背中を預かって、後ろから狙い打つ。その意味と、今回のミスの理由を考えてみて。それで同じ事を二度と繰り返さないって、約束できる?」

「っ……はい」

 

 さっきよりいくらか元気のある声での返事。それと同じく目にも力が戻っているのが見て取れる。

 これで大丈夫……かな?

 

「なら、私からはそれだけ。忘れないでね」

 

 今の言葉を、その意味を、ちゃんと分かってくれただろうか 

 今自分が受け持っている六課での教導は、いつもの短期の教導で技術を教え込むのとは違う。一年もの時間をかけて、技術だけじゃない、もっとたくさんのものを教えていく教導。

 いつか卒業のときを迎えて、その先にある自分の道を歩いていけるように。

 どんな困難に突き当たっても、それを乗り越えていける確かな力となるように。

 かつて自分が落ちてしまったときのような失敗はさせたりしないから……だからちゃんとまっすぐに育ってほしい。

 それが、なのはの偽らざる想いだ。

 

「それじゃあ、皆のところに戻ろうか。早く片付けて、今日はゆっくり休もう」

「はい」答えて、踵を返そうとしたところでティアナはなにかを思い出したように「あの……、なのはさん。あの人たちはどうなるんですか?」

 

 そう訊かれて、さっき見た戦闘の記録を反芻する。

 その中にはティアナの失敗だけではなく、ティアナの言うところの『あの人たち』――突然戦場に現れた子供たちも映っていた。

 突然空に展開された魔法陣から現れた五人の子供たち。

 ロングアーチの報告や接触した隊員――シャマルやヴィータの意見から総合すると、次元漂流によりこの世界に流されたどこかの世界の戦闘者ではないか、というものになる。

 そしてその次元転位の原因は、まず間違いなく地下で反応があったというロストロギア。

 でもそれ以上はなのはは詳しくは聞かされていない。

 

「うん、あの子たちはホテルに部屋を借りてそこで待ってもらってる。後で八神部隊長とフェイト隊長が事情聴取するみたいだよ」

「そうですか……」

「? どうかしたの?」

「いえ。お礼、言ってなかったから……」

 

 ああ、と納得する。それはたぶん、スバルを助けてもらったときのことだろう。

 そのときは状況がそれどころではなかったというのも理由の一つだろうけど、それに気が回らないくらい落ち込んでいたというのもあるかもしれない。

 

「それなら大丈夫じゃないかな。どんな処置を出すのかはまだ分からないけど、きっと後でお話しするくらいはできると思うよ」

 

 多少なり希望的観測が込められているものの、あの十年来の親友たちならそう悪い答えは出さないだろう。

 あとは、あの子たち次第といったところか。

 

 

 

      *   *   *

   サクラview

 

 

 ぼんやりとした意識のまま、最初に目に映ったのは天井らしい白い一面だった。

 ……ここは何処だ?

 目覚めて、一番最初に頭に浮かんだのはその疑問だった。

 順当に考えれば、シンガポール軍の艦のどこかだろう。最後の記憶は旗艦の司令部なのだから。

 だがそれにしてはおかしいことに、軍艦独特の雰囲気やノイズメイカーの影響がない。自分の参謀たる青年が上手くやってくれたのかとも思うが、彼の規格外な能力をもってしてもあまりに状況は不可解だ。

 しかし、こうして無傷で放置されていることを考えれば敵地であることも考えにくい。脳内時計を確認すれば気絶していた時間はおよそ一時間。

 いったい、今の状況はどうなっているのか?

 とりあえず、その確認を優先すべきか。そう思い、サクラが指一本動かすより先に、目覚めた影響で生じた呼吸のわずかな乱れを感じ取ったのか、

 

「おお、起きたんか」

 

 不意に聞こえたその声に一瞬で意識が完全に覚醒してガバッと一挙動で起き上がり、I‐ブレインを戦闘起動させる。

 そうして目を向けた先には、シンガポール軍の制服を着た白髪の青年――幻影17の姿。

 

「……ここは何処だ? 何故、貴方がいる」

 

 見れば他にもディー、天樹錬までが同じテーブルについており、隣のベッドではフィアが寝ている。

 そしてテーブルにはもう一人、初めて会う紫色の髪の女性。初めて見る作りの制服を着ているが、しかし剣を隣に立てかけていることから騎士だろうと推測できる。

 テーブルについている四人の前には紅茶の注がれたカップが並んでいることから、なんらかの話し合いでもしていたのだろうか。

 どういう状況か、さっぱり分からない。

 

「安心せえや。今お前をどうこうする気はあらへん」

「その言葉を信じろと……?」

 

 以前に一度は共闘した相手ではあるが、それとこれとは別の話。たとえ彼のその在り方に尊敬と賞賛を覚えようとも、自分とこの男の理念が決して相容れないものであることは疑いようがない。

 語る言葉は多くはない。牽制のために外套の裏に仕込んだナイフへと手を伸ばし――     

 手が空を掴んだ。

 なに……?

 ナイフが、ない。

 そもそも外套すらつけていない。

 その動作に気づいた紫の髪の女性が言った。

 

「悪いが、武装は解除させてもらった」

 

 そう言い顎で示す先、部屋の反対側の隅に外套ごと手持ちのナイフの全てが置かれていた。そこにはディーの双剣と天樹錬のサバイバルナイフもある。意識を失っていた自分ならともかく、この二人まで武器を差し出したとは……

 

「……いったいなにがあった?」

 

 そう言うとディーは困ったように笑い、天樹錬は不機嫌そうに顔を背け、幻影17は呆れたようにため息を吐いてくいっと親指である方向を指す。

 つられてサクラが向いた先には窓があり、その向こうには――

 

「なにかと思えば、ただの窓ではないか。それが――」

 

 言い終える前にその本当の意味するところに気づき、一瞬で思考が驚愕に塗り潰される。

 

「なっ!? バカな。そんな……」

 

 思わず窓へと駆け寄り、『それ』を信じられないとばかりに凝視する。だが何度目を凝らしても、I‐ブレインは『それ』を本物と告げてくる。

 窓の外いっぱいに広がる青い空。

 見渡す限りに広がる緑色の大地。

 雲に覆われ青空を失った世界のどこにも残されていない景色。

 

「見ての通りや」背後から幻影17の声「こんなわけ分からん状況で下手なことできんやろ」

「うん。だから状況が分かるまでは、休戦協定を結ぼうってことになったんだけど……」

 

 なるほど、この状況ではその判断も仕方ない。

 

「……それを貴方たちは受け入れたのか?」

「おお。こんな状況でまでいちいち殺し合いするほどアホとちゃうわ」

「うん。それに、フィアだったらたぶん賛成してくれる……。もともと戦いとかは好きじゃないしね」

 

 天樹錬が今だ眠っているフィアの意見を代弁した。

 それにも納得する。自分はあの少女と直接話したことはないが、真昼から聞いた人物像や能力からすれば戦いにはまったく向いていないタイプだ。

 そうすると、

 

「つまり、あとはお前だけっちゅうことや」

 

 じっと三対六個の目が集中する。味方のディーにまでそう見られては、もはや他の選択肢などないに等しい。そこまで空気が読めないわけでもない。

 

「……分かった。その協定を呑もう」

 

 甚だ不本意ではあるが。

 しかし他にどうしようもなく、とりあえず会話に参加するべくディーの隣に座り、

 

「では早速だが答えてもらおう。ここは何処だ? 空は見えているが雲の上というわけでもないようだが……」

 

 それに答えるのは紫の髪の女性。

 

「ミッドチルダの南西、アグスタ地方だ」

「アグスタ……?」

 

 聞いたことがない地名だ。しかも今の言い方だと、ここがどこかのシティというわけでもないように聞こえる。

 

「初めて聞く名前か?」

 

 こちらの動揺を見透かしたように紫の髪の女性は言う。

 

「お前たちの事情はある程度聞かせてもらった。その話から考えるとお前たちはおそらく管理外世界からの次元漂流者ということになるだろう」

「次元ひょう……なんやって?」幻影17が怪訝そうに「なんや管理外世界とかなんとか、なんですか、それ?」

「ああ。平行世界、とでも言えば分かるか? それぞれに文化や歴史を重ねた世界が次元空間と呼ばれる超空間に無数に存在し、それらを総称して次元世界と呼ぶ。そして管理外世界というのはその中でも次元を渡る術を持たず管理局に不可侵を決められている世界の総称だ。お前たちが時空管理局のことを知らないというなら十中八九、管理外世界からの漂流者ということに――」

「そんなことはどうでもいい! 私はそんなおとぎ話に付き合うつもりはない!」

 

 いきなり語り出されたおとぎ話めいた世界の説明を叫び遮る。自分にとって重要なことはそんなことではない。

 だが紫の髪の女性はそれを冷めた目で見返して、

 

「そうだな。知らなければそう思うのも仕方がないだろう。だが今の話が事実だということは変えられん。だからこそ、現実にお前たちはここにいる」

 

 きっぱりと言い切る。そして自分たちこそがその証明と言われてしまえばもう反論のしようもない。

 

「しかし、そんなはっきり言い切るっちゅうなら、おれらみたいなんはしょっちゅうあるんですか?」

「いや、むしろ珍しい方だ。だが、決してありえないというほどでもない」当然のように答えて紅茶のカップに口をつけ一口飲み「じきに我が主が来られる。詳しい話はそれからとしよう」

「いや、それより先に一つだけ聞かせてもらいたい」

 

 これだけは後にできないと強く意を込め、

 

「我々は、元の世界に帰れるのか?」

 

 その問いに紫の髪の女性は難しい顔で考え、

 

「……私からはまだなんとも言えん。決して不可能ではないだろうが、そのためには色々と面倒を片付けなければならんだろう」

「そうか……」

 

 はっきりとした答えではなかったが、それでも十分だ。来ることができたのだから、帰ることもできるはずだ。

 そう楽観的な考えができるのもおかしな話かもしれないが、決して絶望的な状況ではないと思っていたのだ。

 この時は、まだ。

 コンコン。

 ドアをノックする音が部屋に響いた。

 

 

 

      *   *   *

   はやてview

 

 

「部隊、上手くいってるみたいだね」

 

 ホテルのカフェスペースで、テーブルを挟み席に着いている男性が言う。   

 彼の名はヴェロッサ・アコース

 聖王協会でも数少ない古代ベルカ式の伝承者で、管理局本局の査察部に所属する査察官。

 

「うん。アコース査察官のお義姉さん、カリムが守ってくれてるおかげや」

 

 カリム・グラシア。

 聖王教会の騎士であると同時に管理局理事官でもありヴェロッサの義姉。機動六課設立の際にもいくらか力を貸してもらった恩人でもある。

 

「うん。僕もなにか手伝えたらいいんだけどね」

「アコース査察官は遅刻とサボリは常習やけど、基本的には忙しいやん」

「ひどいな」

 

 はやての苦言に対し、ヴェロッサは苦笑して返す。

 

「カリムも心配してるんよ、かわいいロッサのこと、いろんな意味で」

 

 それはもう、いろんな意味で。

 けれどこんな言い方ではその真意は伝わらなかったのか、

 

「心配はおあいこだよ。はやてだって、僕とカリムにとっては妹みたいなもんなんだから」

 

 笑って流された。真面目にやれば管理局でも有数の敏腕査察官になれるだろうに、分かっててそういう仮面を被っている印象さえ感じるから始末に負えない。

 でも、その余裕が彼の持ち味と言えるのだろう。

 

「それでロッサは、なんで今日ここにおんの?」

「今日はユーノ先生の付き添いだよ。今回のオークションで鑑定役に呼ばれたっていうからね」

 

 ユーノがオークションの鑑定役に呼ばれていたらしいという話はなのはとフェイトから念話で聞いている。

 だけど、ユーノとヴェロッサに繋がりがあることまでは知らなかった。

 

「ロッサ、ユーノくんと知り合いやったんか?」

「うん。前に無限書庫に行ったときにユーノ先生に直々に案内してもらってね。つい最近のことだよ」

「そうなんか」

 

 それは確かに幼馴染のあの青年ならありそうなきっかけだ。

 

「それよりもはやて。あの子たちのことはどうする気だい?」

「どうって……」

 

 それは、突然戦場に現れた五人の子供たちのこと。

 

「今回のことは僕も予想外だったけど、はやてにしてみれば他人事じゃ済ませれないだろう?」

 

 言われるまでもなく、彼らのことは今現在はやての頭を一番悩ませている問題だ。彼らがどの世界から呼び出された何者なのか。それによっては後々面倒を招きかねない。なにせ責任者というのは責任を取るためにいるものなのだから。

 それにしても、ロングアーチから地下の魔力反応のことを聞いたときは焦った。

 慣れないドレスやなにも知らない招待客に気を遣って少し手間取ったものの地下へと行ったのだ。

 だけど、遅かった。

 そこには問題のロストロギアはなく、代わりになにかが強奪された痕跡だけが残されていた。

 

「やっぱ盗まれたロストロギアが今回の件の原因なんかな……」

「それはどうだろうね。僕の方でも調べてみたけど、盗まれたロストロギアは次元系ではなく出力系。それも、ランクとしてはB級程度。それなら今、次元航行艦とかで使われている駆動炉の方が効率がいいくらいだよ」

「おかしいやん、それ。なんでそんなのであんな……」

 

 それ以上はどう言っていいか迷うが、そうとしか言いようがない。

 あれほど大規模な魔力反応と、同時に観測された次元断層の反応。

 そしてその最後に何処からか召喚された少年少女たち。

 それだけのことがあったのに、その盗まれたロストロギアが本当にヴェロッサの言う通りのものであると納得するのは難しい。魔力反応のあった地下で他の疑わしい物は全て調べてシロだったのだから、もうその盗まれたロストロギアしか理由は考えられないのだから。

 

「そうだねぇ。僕としてもそれはおかしいと思うけど、直接『見た』答えがそれだからさ」

 

 そう言って、手のひらに緑色の光を灯して見せた。

 確かに、それならば間違いはない。ヴェロッサがそうしたと言う以上、それ以上の追求は無意味でもある。おそらく密輸取引の容疑者たちを『捜査』したのだろう。

 

「……せやったら、なんであんな……」

 

 つい口から漏れたはやての呟きに対しヴェロッサは、ふむっと顎に手を当てて、

 

「考えられるのは、その密輸取引の犯人でも知らない機能があったのか、それとも、もしかしたら彼らの方になにか転送される要因があった、というくらいだろうけど……」

 

 なるほど、それなら理屈は通る。

 

「ところで、その子たちは今どうしてるかな?」

「今はシグナムに見てもらっとるよ。他のコたちはいろいろと事後処理で忙しいし、万一もう一度襲撃があってもいいように待機してもらわなあかんのよ。けど一応、フェイトちゃんには手が空いたら来てもらうように頼んどいたから、そろそろ――」

「はやて、お待たせ。アコース査察官もお久しぶりです」

 

 なんとも、測ったようにいいタイミングでフェイトが現れた。

 

「うん、久しぶりだね。フェイト執務官」

 

 義兄と親友という形でクロノを通じて顔見知りの二人が挨拶を交わすのを見届けてから席を立つ。

 

「さ、フェイトちゃんも来たことやし、そろそろ行ってくるわ」

 

 あの子たちをこれ以上待たせる意味もない。

 

「ああ、僕も一緒にいいかな?」

 

 だけど、ここで一旦お別れかと思っていたヴェロッサが名乗り出た。

 

「なんでや?」

「今回の一件にスカリエッティが関わっているなら、今後彼らにどうにかアプローチしてくるかもしれないだろ? その前に彼らがどれくらい珍しいものか見ておこうかと思ってね」

「は? なんやねん、それ」

「さっきの戦闘は僕も少し見ていたけど、彼らの魔法は僕たちのものとは根本的に違うようだ。なら、スカリエッティに限らずたくさんの違法研究者が手を出してくるかもしれない」

 

 ……つまり、彼らは餌か。

 査察官という立場上、そういう考えが浮かぶのも仕方ないかもしれない。あまり気持ちのいいものではないけれど。

 

「そうかもしれませんね」

 

 それにフェイトが同意した。そうなれば仕方がない。

 

「分かったわ。とりあえず行こか」

 

 ヴェロッサの言う理由も決して間違っているわけでもない。

 例の子供たちを留めている部屋へと歩き出すと、フェイトとヴェロッサも付いてくる。

 

「ところではやて、さっき地下で盗まれた商品がなにかは分かったの?」

「ああ、それならロッサがもう調べとったよ」

 

 そう答え、ヴェロッサに答えを促すように視線を向ける。

 

「うん。はやてにはさっき話したけど、せいぜいBランクの出力系のロストロギアだよ」

「出力系? でもそれじゃあ……」

「そうだね。それじゃあ本来彼らを呼び出すことはできないはずだ。でも実際にはそのロストロギアの力で彼らはこの世界に現れた。それにこれはフェイト執務官も聞いてると思うけど、彼らは魔力を使わず魔法を使った。少なくともあの技術は管理世界のどこにも確認されていない。そこまでくれば僕や他の誰かが興味を持ってもおかしくないだろう?」

「その技術を悪用しようとする人がいるかもしれないと?」

「そういうことだね。……まぁ、後のことは彼らの話を聞いて判断しよう」

 

 話している間に、目的の部屋の前へと着いていた。

 コンコン。

 代表してはやてがノックする。

 

「どうぞ」

 

 中からはシグナムの声。

 

「お邪魔するよ〜」

 

 ガチャリとドアを開けて踏み込んだ部屋ではテーブルを囲うようにシグナムと三人の少年たちと黒髪の女の子が座っており、ベッドには今だ気絶したままの金髪の女の子が寝かせられている。

 

「外の方も落ち着いてきたようやから、ちょっと話し聞かせてもらいに来たんやけど……」

「そっちの子は大丈夫なの?」

 

 フェイトが今だ気絶したままの少女を気遣って訊いた。

 

「こっち飛ばされるときに、とんでもない量の情報を叩き込まれたからなぁ。そのショックで気絶しとるんやろ。まぁ、おれたちも問題ないからたぶん大丈夫や」

「そうなの? それならいいんだけど……」

 

 白髪の少年のよく分からない説明にフェイトは一応の納得を見せる。

 けれど今の説明を聞くだけでも、転送のやり方や影響が自分たちと違うのが分かる。さっきヴェロッサが言っていたように、魔法の体系から根本的に違うということか。

 まぁ、それを含めてこれから取調べをするわけで。

 

「主はやて、こちらへどうぞ」

「うん、ありがと」

 

 シグナムが立ち上がって席を一つ空け、そこに入れ替わるように座り――

 

「んぅ……」

 

 タイミングを見計らったように小さな呻き声を上げて、ベッドの上の小さな体がもぞもぞと動いた。それからぼんやりとした感じで上半身を起こした。 

 

「あ、フィア。起きた?」

 

 そこへ誰よりも早く黒髪の少年が駆け寄る。

 

「錬さん……」

「大丈夫? 怪我とかはないと思うけど、気分とか悪くない?」

「あ、はい。それは大丈夫ですけど」ぐるっと部屋を見回して「あの……ここはどこですか?」

「うん、それなんだけど……」

 

 黒髪の少年は一度首だけで振り返って、はやてたちの目を気にしたように服のポケットからコードの束を取り出して、

 

「いいかな?」

「え?」意表を突かれたように「でもそれなら私が同調した方が……」

「うん、そうなんだけど……。でも……」

 

 もう一度ちらりとこちらを振り返って見せて、それで金髪の少女も意味を察したらしい。

 一つ頷いて少年の手にあるコードの片端を摘み出した。

 しかしそんなコードでなにをするのかと思いきや、

 

「うわっ……」

 

 黒髪の少年が自身のうなじに押し当てたコードが、ずぶずぶと皮膚を潜り込んでいく様を見て思わず声が漏れた。そしてコードの反対側は金髪の少女のうなじに同じようにずぶずぶと潜り込んでいく。

 

「ちょっ……あれ、なにしとるんや?」

「は? ああ、有機コードでI‐ブレインを繋いで、さっき話した情報を直接やり取りしとるんやろ。あれなら口で話すより百倍は早いですわ」

 

 その説明を受けている間にもうそれは終わっており、二人ともうなじのコードをずるりと引きずりだした。その間ほんの数秒、本当に情報交換できているなら確かに百倍早い。

 ってか、有機コードとかI‐ブレインってなに?

 そんな疑問を抱えるがそれは後にしよう。

 

「お待たせしました。お話の方はだいたい分かりましたので続けてください」

 

 そう言って、女の子の方はぺこりとお辞儀をしてから黒髪の少年と一緒にベッドに腰掛けるように落ち着いた。テーブルの方にもすでに七人囲っているし、スペース的にはちょうどいいかもしれない。

 

「それじゃ全員揃ったってことで、まず最初に自己紹介といこか。私は時空管理局古代遺失物管理部・機動六課部隊長、八神はやてや」

「時空管理局の執務官で機動六課のライトニング分隊隊長のフェイト・T・ハラオウンです」

「僕はヴェロッサ・アコース。彼女たちとは所属は違うけど、一応、管理局では査察官という立場でもあるし同席させてもらうよ」

 

 新たに入室した三人が順に自己紹介をする。それからすでに部屋にいたシグナムへと視線を遣り、

 

「シグナムは……もう自己紹介しとるよね」

「あぁ、おれらは最初に聞きましたけど、そいつらは寝とったから聞いてませんよ」

 

 そう言って、白髪の少年が女の子二人を示す。報告でも女の子二人は気絶していたと聞いている。それなら仕方ないか。

 

「そうだな……」少し居住まいを正して「機動六課所属、ライトニング分隊副隊長、シグナムだ」

 

 改めて自己紹介をした。

 

「じゃあ今度はこっちの番やな。おれはイル。モスクワ軍実験訓練生、幻影17や」

 

 まず白髪の少年――イルが名乗った。

 

「ぼくは……ディーです。よろしくおねがいします」

 

 次に銀髪の少年――ディーが名乗る。

 

「私はフィアといいます。よろしくお願いしますね」

 

 次は金髪の少女――フィアが名乗り、

 

「僕は天樹錬」

 

 その次に黒髪の少年――錬が名乗って、

 

「……サクラだ」

 

 最後に、黒髪の少女――サクラが名乗った。

 

「うん、イルくんにディーくん、フィアちゃんに錬くん、サクラちゃんやね」

 

 一人ずつ名前を確かめていく。簡単な名前や見分けやすい外見のおかげで覚えやすい。

 

「じゃあ次は、君たちの出身世界についてやけど――」

「ちょっといいかな?」言葉の途中でフェイトが挙手して「さっきイルが言っていたモスクワっていうのは、確かロシアの都市だよね?」

 

 さっきの自己紹介を聞いて疑問に思ったのか、イルに訊いた。

 

「は? いや、そら確かに昔はそうやったかもしれんけど……なんでいきなりそんなこと言い出すんですか?」

「アコース査察官は違うけど、私たちは地球の出身だからね。さっきのイルの自己紹介を聞いてひょっとしたらって思ったんだ」

 

 確かにさっきイルは、自分がモスクワ軍の所属みたいに言っていた。(何故ロシアではなくモスクワと言うのかが不思議だが、そういうものなのだろうと無理やり納得する)

 だけど、この手がかりは大きい。これで彼らの出身世界は判明したのも同然だし、この後の調査もずいぶん楽になる。

 

「はぁ……」

 

 でもイルは、なにか釈然としない様子で返すばかり。

 けれどそこにフェイトがさらに告げる。

 

「それでね、もし本当に君たちが地球出身だったら、帰してあげることは難しくないよ」

「本当か!?」

 

 横からサクラが勢いよく割り込んでくる。その勢いに押されるようにフェイトは若干身を引き、

 

「う、うん……。でも念のために、君たちが今回の事件と関係ないことを調べないといけないし、それから転送装置の使用許可の申請も通さないといけないから、だいたい二週間くらい――」

「二週間!?」

 

 いきなりサクラがバンッ! と勢いよくテーブルを両手で叩いて、

 

「そんなに待つ余裕などない! 今すぐにでも北極に戻らねば、我々の仲間がどうなるか……」

「北極……? なんでそないなところに?」

 

 そんなところにいったいなにがあるのか。あまり詳しくはないけど、よほど特別な事情でもなければ行くような場所ではないと思う。

 

「ああ、こいつら一応、極秘のはずの作戦中っちゅう立場やしな、知らんでもおかしないですわ」

 

 そんな内心を察したように、イルが補足を入れる。

 

「……本当にそうかな?」

 

 ポツリと呟かれた言葉に全員の視線がディーへと集中した。

 

「ディー、どういうことだ?」

「確かに、北極での作戦は他のシティには秘密のはずだったから知らなくてもおかしくないんだけど、外で会った女の子は賢人会議のことを知らなかった。だから僕はここが現実じゃないんじゃないかって考えたんだけど……」

「その女の子が地球の出身じゃなかったってだけじゃないの?」

「そうなのかな……?」

 

 錬の指摘にもディーは疑問が解けないように考え込む。

 

「う〜んと、ディーくんが外で会ったっちゅうと……」

「おそらくはヴィータのことでしょう。その少年の相手をしたのはアレでしたから」

 

 思い出そうと首を傾げると、シグナムが助け舟を出してくれた。それが本当なら、確かにディーにとってはおかしいことかもしれないけど……

 それはともかく、賢人会議ってなんや?

 中卒でミッドチルダに移住したはやての学力を買いかぶってはいけない。聞き覚えのあるような、語呂のいい言葉くらいにしか分からない。

 でもそれを自分より年下らしい子供たちが当たり前のように口にしているのを見ると知らないのがおかしなことのように思えてくる。

 それを察したのだろう、イルが呆れたように言う。

 

「マジで知らんのですか。世界中を敵に回すテロリストやぞ」

「えっ、そうなん?」

 

 初めて聞く話にフェイトと顔を見合わせるが、フェイトも同じように初耳と言わんばかりに目を見開いている。

 

「幻影17、その言い方はやめてもらおう。確かに我々は人を殺すこともシティを敵に回すことも覚悟の上だ。だがそれは、あの間違った世界を変えるために選んだ手段だ。それをテロリストなどとそんな言葉で片付けるな」

 

 イルの言い分に、サクラが憤って返す。

 言っていることの全部は肯定できないけれど、その姿に圧倒される。見た目自分より年下の少女が、世界を変えると怖気づくことなく言い切った。そこには驕りも侮りも感じられず、本気で世界を変えようと変えようとする真摯さが伝わってくるほどだ。

 けれどその意味するところの全てを、この場にいる全員が理解できるわけでもない。

 

「……なんだか、はやてから聞いてた地球のイメージとはずいぶん違うね」

 

 ヴェロッサが戸惑うように言った。

 だけどそれははやてやフェイトも同じだ。

 なんだろう、なにかがおかしい。

 自分たちの認識と彼女たちの言うことがまったくと言っていいほど噛み合っていない。

 

「うん。私らも四年前にミッドに移住したから最近の地球の情勢とかはあまり詳しないけど……なんかおかしいわ」

「はやて、一度ちゃんと確認してもらった方がいいんじゃないかな」

 

 フェイトがそう言って空間パネルを展開して、ピッピッと映像記録を呼び出していく。

 

「そやね。こないだ戻ったのは日本の海鳴だけやから、君らの知らん場所かもしれんけどちょっと見てもらおか」

 

 そうして、先日聖王教会からの依頼で地球に戻ったときの映像記録をいくつか呼び出す。

 管理外世界への派遣で、現地の拠点に到着した場面。

 任務の過程で海鳴の街を探索している場面。

 コテージの近くでバーベキューをしている場面。

 しかし、そのどれを見せても、五人とも困惑の表情を浮かべるばかり。それどころか、

 

「本当に、これが地球か?」

 

 そんなことまで言い出した。

 

「そうだよ。第97管理外世界、現地名地球の日本。私たちの出身世界」

 

 確信を込めた声でフェイトが答える。

 けれどそれでサクラはより一層疑いを濃くした目で画面を見つめ、同じように確信を込めて、

 

「……どうやら、貴方たちの言う地球と私たちの元の世界とは違うもののようだ」

「は、なんで?」

「この映像にある地球は我々の元いた世界の地球とは決定的に違う。おそらく私たちの言う地球と貴方たちの言う地球は名前が同じなだけの、別の世界なのだろう」

 

 ……確かに、それは可能性としてありえる。でも、百を超える管理外世界や観測指定世界。その全てを覚えているわけではないけれど、同じ『地球』という名前があればさすがに気づく。

 

「あの……もう少し詳しく見せてもらってもいいですか?」

 

 早くも調査が進むかと思いきやそれを本人たちに否定されて、振り出しに戻るかと思われたところに、フィアが申し出た。

 

「フィア、いいの?」

「はい、私なら大丈夫です」

 

 錬がはやてたちにはうかがい知れない理由から気遣うが、フィアはそれでも決意を崩さないようだ。

 

「せやな。ちびっ子やったらなにか分かるかもしれん」

 

 さらにイルの援護もあり、少し任せてみようかという気分になる。どのみち、一度打つ手を考え直さないといけない。

 

「じゃあ、お願いできる?」

「はい」

 

 その返事を確認して、いくつか見られてはいけないデータにロックをかけてから、フィアの前にもモニターと制御パネルを展開する。

 それを前に一度深呼吸し、フィアが空間パネルへと手を伸ばして――

 

 一瞬だけ、フィアの背中に光の帯を束ねた天使の羽のようなものが見えた気がした。

 

 次の瞬間、ものすごい勢いで映像データが展開されていく。どれほど熟練したらここまで速く作業できるのか、それどころか機械の限界にも挑みそうなほどにその作業は速い。

 すご……。

 その速さには賞賛や驚嘆を通り越して呆れるしかない。

 そうして展開されていくデータに、他の四人も素早く目を通していく中、きっかり三秒後にフィアの動きが突然止まった。

 その理由はおそらく、フィアの前に展開された一つの画面。

 

「錬さん、これ……」

「どうしたの?」

 

 錬がフィアの指差した画面の一箇所を見て、

 

「そんな……」

 

 なにかに気づいたらしい。

 

「なんやねん」さらにその画面を横から覗いたイルが「……なるほどなぁ」

 

 同じようになにかに納得した。

 なににそんな納得を見せたのか興味を覚えて横から覗きこんでみれば、その画面に映し出されていたのはそのときの事件の報告書だった。それは確かに重要機密というほどのものではなく閲覧可能な書類ではあるが、それはあくまで管理局員であればという前提があってこそのもの。こんな簡単に部外者が見ていいものでは断じてない。

 だから渡す前ににロックをかけておいたはずだ。

 なのにそれをこうも簡単に出したフィアの技量に改めて驚く。

 そしてフィアの指差す先に記された一文にはこうある。

 

――現地時刻200X年5月16日 午前10時05分

  第97管理外世界、現地惑星名称「地球」極東地区 日本・海鳴市に到着。

 

 報告書の行動記録の最初の方に書かれている文。

 それを見て疑問に思う。この文のどこに、この子たちはこの違和感を解く手がかりを見つけたのか?

 その三人の深刻な驚きようからどう声をかけていいものかと悩む横から、いつも通りの飄々とした声でヴェロッサが問う。

 

「なにか分かったのかい?」

 

 それにフィアたちは答えていいのかと迷うように視線を交わしあい、最終的に錬が答える。

 

「うん。僕自身信じられないんだけど……」

 

 そう前置きして、その言葉を告げる。

 

「たぶん僕たちは、この時間よりも未来から来たみたい」




 

 

 

 お久しぶりです。遅れに遅れてようやく第3話を投稿です。

 当初の予定ではウィザーズ・ブレインの新刊が出る前に4話まで進めたかったのですが……相変わらずの遅筆振りによりようやく第3話。しかも第4話も今4割程度といった状況です。

 この調子で(しかももう一つ連載を抱えた身で)完結できるのかと不安なんですが……まぁどうにかなるでしょう。

 とりあえず次回で序章というか一日目は終わりになります。

 今回短いですがこの辺で。

 

 では最後に、今回も二人ほど簡単に紹介を。

 

 

・ サクラ

 西洋系、十六歳、女。黒いリボンでツインテールにした長い黒髪。黒い瞳。

 

 情報制御理論創始者の一人、アルフレッド・ウィッテンの最高傑作。『もう一人の元型なる悪魔使い』。

 錬と同じ『後天的に書き換え可能なI‐ブレイン』を持つ。しかし錬の複数の能力を同時起動する『並列』に対し、サクラの能力は複数の能力を一つの能力に作り変える『合成』。これにより本職の魔法士にもできない魔法の使い方を実現する。

 数年の間、個人でありながら『賢人会議』を名乗りシティの犠牲になる魔法士を救う活動をしていたが、シティ・メルボルンの事件(エピソードX参照)をきっかけに、世界中のシティに宣戦布告をした。

 

 

・ イル (幻影(イリュージョン)17)

 西洋系、十七歳、男。薬で染めたような白髪、青い瞳。

 

 ディーと同じシティ・マサチューセッツのWBFで作られた十七番目の規格外の魔法士。

 世界でただ一人『量子力学的制御』という原作中一、二を争う難解な能力を持つ。これは自身と接触する物の存在確率を書き換え物質を透過する能力であり、これによりイルはあらゆる攻撃を回避し、指先を透過させ神経や血管を抜き取るという攻撃を繰り出す。

 魔法士でありながらシティの人たちを守るために戦うという決意をしており、魔法士ではない普通の人間を犠牲にすることをいとわない賢人会議の思想に反発している。




ようやく目も覚めて、現状の把握となった訳だけれど。
美姫 「そこで分かったのは、未来の地球から来たというとんでもない答え」
これって、戻れるのかな。
美姫 「寧ろ、下手に関わると未来が変わるかもね」
さてさて、これからどうしていくのか。
美姫 「一体どうなっていくのかしら」
今回はこの辺で。
美姫 「それでは、また次回を待ってます」



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