闇。

 

 なにも見えない。なにも聞こえない。

 その中に、気がつけばわたしは一人でいた。

 

 暗い。

 目の前は本当に真っ暗で、自分の手も見えない。

 

 寒い。

 少しずつ、指先から冷えていくような感じ。

 

 そこで、ふと気づいた。

 

 なんで、わたしはこんなところにいるんだろう?

 

 それを思い出そうとして……必死に思い出そうとして……思い出せないことに気づく。

 急に、怖くなった。

 

 なのは! アルフ! はやて! クロノ! ユーノ! リンディさん! シグナム! エイミィ! アリサ! すずか!

 

 喉が痛くなるほどの大きな声で呼べるだけの名前を叫ぶ。そうすればきっと、誰かが応えてくれる。この怖いのも寂しいのもきっと消える。

 でも誰も応えてくれなかった。それがまた怖くて寂しくて、なおも声を出そうとしたところで、

 

(生きたいか?)

 

 突然、闇のどこからか声が聞こえた。

 

(その身を魔性へと堕とすことになろうとも、生を望むか?)

 

 その声は、わたしの答えを待たずにさらに問いかけてくる。

 正直なところ、なにを訊かれたのかあまり理解できていない。

 でも、ただこの寒くて暗いところから連れ出してほしくて――

 

 

 その問いに、「はい」と答えた。

 

 

(……分かった)

 

 その声はなにかを悲しむように応えた。

 

(その望み、叶えよう)

 

 直後、闇は銀色の光に変わり、火がついたような熱さが胸を灼いた。

 

 

 

 

 

 

      第13話  「結末」

 

 

 

 

 

 

  1月28日 (土)  AM 4:56

 

「あ……れ……?」

 

 気がつけば、目に映るのは自分の部屋の天井。

 朝が来る度に見るその景色を見て、最初に浮かんだのは困惑だった。

 

 わたし、なんでここにいるんだろう?

 

 昨夜は確か、海鳴の街を飛び回っていたはずで、その後でベッドに入った覚えはない。

 そもそも、神雷さんの戦いはどうなったんだっけ?

 あれからどれくらい経ったか分からないけど、まだ決着が付いていないということはないと思う。

 とりあえずそこから思い出そうとして――

 

 すぅー。すぅー。

 

 すぐ側から誰かの寝息が聞こえた。その音のする方へと目を向けてみれば、ベッドの縁になのはとアルフがいた。二人ともベッドに突っ伏すような体勢で眠っている。

 時計を見てみれば、いつもの目覚ましをセットしている時間まであと数分。

 なら二人を起こして状況を聞いてもいいかと思い、体を起こそうとして――

 

「! ッ…………!!」

 

 右胸に激痛が走った。その痛みで一瞬、呼吸が止まる。

 そのまま数秒、痛みに悶えてからようやく落ち着く。が、息は荒いままで、それでも考える。

 なんだろう、今の? 最近はケガはもちろん、戦闘をしたわけでもない。なのになんでこんな……

 そのまま少し考えてみるけれど、結局答えは出ないし昨夜のことも思い出せない。

 とりあえず、ゆっくりと、細心の注意を払って左腕だけを動かして布団をめくって見てみる。

 

「ええぇっ!?」

 

 実を言うと、さっきから違和感は感じていた。困惑と激痛で意識する余裕もなかったけど、それを見た瞬間、その違和感の正体が分かった。

 パジャマを着ていない。

 めくって見えるようになったのは胸の部分だけだけどそれで十分。足の方も感触だけでショーツだけだと察する。普段と違って直接布団に触れていたのだから違和感を感じて当然か。

 だけど、目に映った光景は、そんなこと些細な問題と片付けてしまえるだけのものだと思う。

 

 胸を覆うように包帯が巻かれていて、右胸の部分はわずかに赤く滲んでいる。

 

 いったいなにがあったの!?

 

「ん……っ?」

 

 今の声で気づいたのか、なのはが呻き声を上げて起き上がった。寝起きでしょぼしょぼとした目がわたしを見た途端にパッと開かれ

て、

 

「フェイトちゃん!」

 

 押し潰すような勢いで抱きついてきた。さらにボロボロと泣いて「よかった」を繰り返している。普段ならちょっと困惑するだけなん

だけど――

 

「なのは、……痛いよ」

「あ……、ごめんね」

 

 今は原因不明の傷が胸にある。そのせいで普段なら問題ない行為もものすごく体力を使う。

 

「でもよかった〜。神雷さんは大丈夫って言ってたけど、全然起きないから死んじゃうんじゃないかって心配したんだよ?」

「え……?」

 

 神雷さん? なんでその名前が出てくるの? それに、死んじゃうって誰が?

 そのわたしの困惑に、なのはは気づいたみたいだけど……

 コンコン。

 誰かが控えめにドアをノックした。

 

「ちょっと入るわね」

 

 リンディさんの声だ。そしてわたしがなにか答える前に、ドアが開かれる。

 そして真っ先にわたしを見て、

 

「よかった。フェイトさん、気がついたのね」

 

 そう言って見せるのは、心から安堵したような、そして見る者を安心させるような微笑み。

 それがわたしに向けられていることに、もう何度目になるのかそれでも慣れない不思議な気分になる。嬉しいような、気恥ずかしいような、くすぐったいような、そんな感覚。

 ……ところで、なんでアースラにいるはずのリンディさんがここにいるんだろう?

 

「リンディさん、どうしたんですか? ……もしかして、はやてちゃんたちの方でなにかあったとか……」

「いえ。そろそろフェイトさんの目覚ましが鳴る頃だから、止めておこうと思って」

 

 それで、わたしもなのはも時計を見る。さっき見た時間からまだ数分しか経っていない。でも、針はもういつ鳴ってもおかしくない場所を指している。

 

「そう……ですか。ありがとうございます」

 

 たぶん、わたしが目覚ましで起こされないようにと気を使ってくれたのだろう。

 そして、寝かせておこうとする理由はおそらく――

 

「あの、この傷……」

 

 言いよどんだのは、なにから訊けばいいか迷ったから。いつ、どこでつけたものなのか。管理局の技術ならこんな半端な状態じゃなくて全部治せるんじゃないかとか。

 でもリンディさんは困ったように笑って、

 

「それは私にも分からないのよ。フェイトさんが起きたら説明してくれるということなんだけど、いいかしら?」

「あ……、はい。行きます」

 

 誰が、というところを省略されているけど追及しない。なんとなく予想がついたから。

 そう答えてから起き上がり、ベッドを出ようとしたところで――

 

 ピピピピピピピピピピ。

 

 セットした時間になって目覚まし時計が鳴り出した。

 それを止めて、とりあえず服を着るために立ち上がった。

 

 

 それからが大変だった。

 

「フェイトちゃん、大丈夫?」

「うん……、大丈夫」

 

 そうは答えるものの、一歩足を動かす度に右胸から全身へと痛みが走る。そのせいでいつもなら意識しない部屋からリビングまでの数メートルを歩くのにも苦労した。

 そうして辿り着いたリビングには、もう全員揃っている、という感じだった。

 はやてやシグナムたちはもちろん、クロノとエイミィもいるし、やっぱり神雷さんもいて、なんでか神無さんもいる。(はやてとヴィータは眠っていた)

 そして起きていた全員が(とはいってもやっぱり二人例外はいるけど)、わたしを見て安心したように息を吐いた。

 

「フェイト、起きたのか」

「うん……。ごめんね、心配させちゃったみたいで」

「いや、君が無茶をする子だということは十分に知っている」

 

 むぅ……。いつも言われる言葉だけど、そんな当たり前みたいに言われるのはいい気分じゃない。

 そもそも、わたしはどんな無茶をしたのかも分からないのに……

 

「テスタロッサ。傷の具合はどうだ?」

 

 シグナムも心持ち気遣うような雰囲気で訊いてきた。(その横ではシャマルがはやてとヴィータを起こしている)

 

「あ……、ええ、ちょっと痛みはありますけど、大丈夫です」

「そうか。ならいいが……」

 

 なにか気になることがあるのか、シグナムが敵を見るような目で神雷さんを見る。その目つきはどう見ても穏やかなものじゃない。そしてその視線につられて、わたしも横目で神雷さんの方を見る。あの人のことだから、絶対に気づいていて、その上で無視してるんだろうなぁ。

 

 それにしても、一目見たときから気になってたんだけど、なんで神雷さんの左手がないんだろう?

 服がボロボロなのは分かる。昨夜の戦いでそうなるのを見ているから。

 でも、その破れた袖から出ている左腕は中ほどで途切れていて、断面になってる部分は布と包帯で覆われている。そんなものを見たらもっと驚くべきなんだろうけど、周りが全然気にしてないみたいでわたしも驚くタイミングを逃してしまった。

 それに、なんだか皆なにかを遠慮しているように見える。昨夜のことを話すのかと思えば、その話題を避けているようにも感じる。

 本当に、いったいなにがあったんだろう。

 わたしが覚えていない空白の時間になにがあったのか、思い出そうとしたところで、急に影が射し――

 

 パァン!

 

 いきなり、鋭い音が響いた。

 その音が、わたしの左の頬から響いた音だと気づくのに、ほんの少し遅れた。

 恐る恐る正面を向くと、そこにはいつの間に近づいていたのか神無さんが立っていた。

 

「あなたは、わたしの言葉を聞いていなかったのか?」

 

 苛立ちを隠そうともしない声。無表情なようでいて、目からものすごい怒ってるオーラを感じる。

 

「これは神雷様の戦いだと、何人たりとも手出し無用と、言ったはずだ。だというのに……」

 

 その言葉からすると、わたしが神雷さんの戦いの邪魔をしてしまったみたいだ。

 でも、それをわたしは覚えてない。

 わたしはいったい――

 

「なにを……したんですか?」

 

 その訊き方がいけなかったのか、神無さんの顔が更なる怒りに染められ、もう一度、今度は見えるように手を振り上げて、

 

「そこまでだ」

 

 その手を、神雷さんが掴んで止めた。その動きは神無さんのようないつの間にというものではなく、本当に一瞬でそこに移動していた。

 

「神雷様……」

「お前の言うことにも道理はあるが、それを責める権利は俺のものだ。それ以上、手は出すな」

「……失礼しました」

 

 理解はするけど納得は難しいという雰囲気で神無さんは頭を下げて、一歩退がる。その仕草は(アリサやすずかのところで見たような)主人に仕える執事かメイドを連想させる。なんて言うか、この二人の関係もよく分からない。

 その頭を神雷さんは軽く撫でて、

 

「では問おうか、フェイト・テスタロッサ」金色の両目でわたしを見詰めて「昨夜はなぜ、あんな真似をした?」

「え……?」

「……覚えていないのか」

 

 無言で首を縦に振る。

 それに対して表現の違いはあるけれど、全員が『やっぱり』と言いたそうな反応をする。

 そこから代表するように神雷さんが進み出て、

 

「なら教えてやろう」

 

 いつの間にか目の前に来ていた右手で、トンと額を指で突かれ――

 

 

 

      *   *   *

 

 血の色をした槍は獲物を貫かんと空を走り――

 雷を纏った兇刃は終わりを告げるように振り下ろされた。

 

 

 その瞬間、全力を込めて振り下ろした刀身が粉々に砕け散った。

 破片とともに舞い散る雷の残滓を視界に捉えながら、舌打ちを打つ。最初から分かってはいたが、こうも狙ったような瞬間にそのときが来れば悪態の一つも吐きたくなる。

 

 これは、雷刃『千鳥』の欠点の一つ。

 確かにこの雷術は、強力無比と言える。金属製の得物に限定されるがその刃は雷を帯びることで、この世の全てを断つほどの切れ味を得るのだから。切れ味を重視する日本刀を使うなら、決して無視できない術だ。

 だが、その代償として刀身が異常なまでに高速で崩壊していく。

 それは考えるまでもなく当然のことと言える。

 生と死の相克より生まれる、雷の貌をした異能の力。

 そんなものをなんの処理もしていない金属に宿して、影響がないはずがないのだ。むしろ、その程度の代償で済むなら十分使える能力と言えた。

 

 だが今はそれどころではない。

 自分がこの世をさ迷ってきた千五百年においても五指に入るほどの禍々しい気配を帯びたなにかが背後にある。

 狙われているのはおそらく首。

 首を破壊されればそれで行動不能になる。理由は単純、脳が発する指令が首から下へと行かなくなるからだ。最初の夜も、心臓はともかく脊髄を破壊されたせいで立てなくなったのだ。いかな不死といえども人間の形をしている以上、人体の構造を無視することはできない。

 それは『千鳥』によって模擬刀が砕けて刹那、状況を認識するだけで対処する余裕もなく――

 

 ドブッ! という鈍い音とともに、鋼ではなく熱い液体が背後から降り注いだ。

 

 その液体がなんであるか、あまりに慣れ親しんだ感触は、触れた瞬間すでに答えへと辿り着いている。

 しかも真正面にいる無刃の驚愕。そして心眼の知覚が読み取る周囲の情報。それらがおよそ考えうる限り最悪の結果を示している。

 だが、振り返ってはいけない。

 振り返ってはいけない。

 振り返ってはいけない。

 今は殺し合いの最中だ。他所に意識を向けるなど愚かにもほどがある。

 そう自分に言い聞かせて、何度も何度も言い聞かせて――

 それでも振り返ってしまった理由は、ただそれを信じたくないという思いだけで。

 そして敵の目の前で背後を振り返るなどという愚を犯してまで目にしたもの。

 

 

 それは、まるで俺を庇うように右胸を赤槍に貫かれ、地面へと落ちていくフェイト・テスタロッサの姿だった。

 

 

 

      *  *  *

 

「ひゃあっ!」

 

 脳裏を駆け抜けた光景に驚いて悲鳴を上げて後ろに退がろうとして、そのままバランスを崩して尻もちをつく。

 それが、今の光景を見て、わたしにできた反応だった。

 

「フェイトちゃん、どうしたの?」

「爪でも刺さったんか?」

 

 なのはとはやてが心配そうに声を掛けてくるが、それに返事を返す余裕はない。心臓がバクバク鳴って、その度に右胸が痛い。

 今見た(というか見せられた)光景は一秒にも満たない間に行われた戦いの一幕。

 それを、まるでわたしの目で実際に見たみたいに流し込まれた。

 ついでに、今のは『御霊写し』という外法――魔法とは違う力によるもので、その外法は互いの魂を介して情報や記憶をやり取りすることができるらしいもので、つまり今見た光景は嘘ではなく昨夜確かにあったことなのだとか、そういうことまでもしっかり分かった。

 そして、それらが分かったことを間違いなく知っていて神雷さんは言う。

 

「思い出せたか?」

「……はい。わたしは神雷さんを庇って、それで……」

 

 その先は覚えていない。

 いや、そもそも今見た光景の通りならわたしはそこで意識を失っていたみたいだった。なら覚えているはずがないし、続きも見れなかったから分からない。

 

「そうだ。そしてそのときにお前は右の肺を潰されて意識を失った」

「……はい」

「その傷を、最初はそこの女が治そうとしたんだが……」

 

 そう言って視線を向けられた先にいるのはシャマル。

 

「ええ、そうなんですけど……。ごめんなさい、私じゃ治せませんでした」

「え?」

 

 そう言う申し訳なさそうな顔から、それが事実と知り驚く。シャマルは癒しと補助のスペシャリスト。『闇の書事件』の最終決戦で回復してもらった経験からして治せなかったというのは正直信じられない。でも、だとすると――

 

「じゃあこの傷は……」

「それはその男が治した」シグナムが警戒心全開の視線で神雷さんを見据えて「以前、恭也の足を治すところを見たが、いったいどういう力だそれは? 魔法ではないようだが……」

「これのことか?」

 

 見せ付けるように、神雷さんの右手に銀色の光が灯る。

 

「これは、本来の持ち主は『御巫』の力と呼んでいた。無限の命を生み出し、死者さえ生き返らせる、命の摂理を否定する力。これを持っていることで俺は不死になり、『呪い憑き』になった」

 

 そう説明する声はいつも以上に感情の感じられない虚ろなもので……

 

「あの……ちょっといいですか?」

 

 ここまで黙っていたクロノが躊躇いがちに口を挟む。

 

「今のあなたの言い分を聞くと、あなたは呪いではなくその力のせいで不老不死になった、というように解釈できるんですが……」

「そう言ったつもりだが……。おかしいことなどなにもないだろう? 『呪い憑き』は異能の資質や能力を持つ者が選ばれた。なら俺は、何故選ばれたと思う?」

 

 そう問いを投げ掛けられて、全員が(とはいっても神無さんは別だけど)絶句する。

 『呪い憑き』という人たちが異能の力を持つ者だというのは、志乃さんに聞いていた。

 でも、この人の場合は『神雷』という名前からてっきりあの黒と銀の雷がそうだと思っていた。それか、なのはのお父さんを生き返らせた力とか。

 それが実は、不老不死だったから不老不死の呪いを受けた、と神雷さんは言う。誰がそんなこと想像するだろう。

 

「まぁ、それはいい」思考を打ち切るように言って、神雷さんはわたしを見詰めて「では改めて問おうか、フェイト・テスタロッサ。何故、あそこで割って入った?」

「え……、それは……その……」

 

 どう答えよう。何故と訊かれても自分でも分からない。

 

「事実、お前があんな真似をするのは二度目だ。一度目は構わなかったが、今回はお前に関わりはない。それが何故、邪魔をする」

 

 神雷さんが言う一度目は、いつだかアルフを止めようとしたときのことだろう。あのときも神雷さんが助けてくれなかったらケガをしていた。代わりに神雷さんの手が潰れていたのを思い出して後悔で胸が締め付けられる。

 そして今回は二度目。それにわたしには関係ないはずのことなのに飛び込んでまで庇った理由……

 視線を感じる。どんな答えを言うのかと、皆がわたしを見ている。

 でも答えられない。だって自分でも答えが分からないんだから。

 そう言ってしまえれば簡単なんだけど、そうした場合の神雷さんの反応を予想するだけで体が震える。

 きっと怒られる。

 きっと嫌われる。

 なんでだろう、それは考えるだけでもとても怖い。

 

「ごめんなさい。でもわた――」

 

 ビキッ。

 

 ッ……また、胸の傷に痛みが走った。実はさっきから小さい痛みが何度もあったんだけど、今度のはちょっと大きい。

 

「か……っ、く……」

 

 胸を押さえて、歯を食いしばって痛みに耐える。大丈夫、我慢できないほどの痛みじゃない。

 

「フェイトちゃん!?」

「フェイト。まだ傷が痛むのかい!?」

「……やはりまだ馴染んでいないか」

 

 皆が慌ててわたしを気遣う中で、一人だけ落ち着いているのはやはり神雷さんだった。説明を求めるように、全員の視線が集まる。

 

「どういうことだ? 貴様はあのとき、左腕を引き千切ってまでテスタロッサの傷に血をかけていたな。あれが原因か?」

「……俺の『御巫』の力で癒すには少しばかり特異な傷だったんでな、こちらも少し細工をした。今は擬似的な形ではあるが、俺の眷属になろうとしている、というところだ」

「それってひょっとして、くーちゃんと同じ……」

 

 自分は神雷さんの眷属だと。

 そう誇るように告げたあの子の笑顔を思い出す。

 

「いいや。フェイト・テスタロッサには『御巫』の力の依り代に、俺の血を入れているだけだ。久遠とは違う。……まぁ、適性がなければそのときに即死していただろうが」

 

 さらっと怖いことを言う。

 

「久遠って那美ちゃんのとこの子狐だよね。あの子と違うってことは、フェイトちゃんを使い魔にしたってわけじゃない?」

 

 エイミィが独り言のように呟いた言葉は、わたしにも聞こえた。そしてそれは神雷さんも同じようで、

 

「……使い魔というのがどういうものなのか知らんが……お前らが知る必要はない。俺はフェイト・テスタロッサに眷属としての働きも在り様も期待していないからな」

 

 ギシリ、と胸の奥――心が軋む。

 お前は要らないと、そう言われたような気がして。

 それに気づく様子もなく、神雷さんは続ける。

 

「それに、今は治癒のためにそうするしかなかったが、傷が完治したら俺の血と力を抜き取る。それで全部終わりだ。それまでは痛かろうが違和感があろうが我慢してもらおうか」

「……はい」

 

 傷のことについては……まだ少し理解できてないところもあるけどだいたい分かった。それよりも今は答えないといけないことがある。

 

「あの……それで、昨日割り込んだ理由ですけど、わたしにも分からない……です。ただ、直前の状況を見て、神雷さんが危ないって思って、そうしたら考える前に……」

「それは……その判断をしたのは、心というものか?」

「え? あ……はい、たぶん……」

「そうか。そういうものか……」

 

 それでさっきまでの険悪な雰囲気がいくらか和らいだ。今の答えで納得してくれたってことかな?

 自分でも咄嗟の答えで納得してもらえたことに安堵して、余裕ができたために一つ疑問が浮かぶ。

 あの戦いの結果はどうなったんだろう? 神雷さんはここにいるし、なのはやはやての様子を見てると志乃さんが殺されたというのも考えにくい。

 

「あの……昨日の志乃さんとの戦いはどうなったんですか……?」

「ああ、俺の敗けだ」

「え……?」

 

 淡々と、なんでもないように結果だけを言われたために呆気にとられて、反応が遅れた。

 そしてそれを神無さんが頑なに否定する。

 

「そんなことはありません。神雷様が敗けなど、あるはずがない!」

「そうは言ってもな、あの庇った行為がそうなるように俺が仕向けたか、偶然だったならそれはそれでよしとしよう。だが、第三者の勝手な恣意による割り込みとなればそうはいかない。……反則敗け、といったところだ」

 

 それはこの人なりのルールか。

 でも、それはつまり、この人が敗けたのはわたしのせいということで……

 

「ごめんなさい……」

「? なんだ、いきなり」

「わたしが勝手なことをしたせいで……」

「まったくだ。あなたが割り込まなければ無刃とやらの死で終わっていただろうに」

 

 その横から飛んできた辛辣な言い方に、グサッときた。

 

「神無。そのくらいにしておけ。もう終わったことだ」神雷さんは宥めるようにポンポンと神無さんの頭を叩いて「そう、終わった。もうあの女は俺の敵になる理由がない」

 

 それはどういう意味なのか。わたしが割り込んで反則敗けになって、それで本当に終わったのかな?

 

「まぁ。もういい。訊くべきことは聞いた。その傷は、頃合いを見てもう一度様子を見に来るが、それまで無理はしないことだ」

 

 それだけわたしに向けて告げて、もう話もなにもかも終わりとばかりに神雷さんは部屋を出て行こうとして、(そしてその後ろに当然のように神無さんが続いて)

 

「ちょっと待ってください」

 

 それを、リンディさんが呼び止めた。

 

「よろしければあなたの連絡先を教えてもらいたいんですけど……、今はどちらにお住まいですか?」

「……どこでもいいだろう。どこで寝ようと凍死も餓死もないんだからな」

 

 あ、やっぱり野宿してるんですね。

 

「そうですか……」そこで一度、考えるように顎に手を当てて「フェイトさんたちに話を聞いたときから考えていたんですけど、もしよろしければ、家に住み込むというのはどうでしょうか?」

「ちょっ……母さん!?」

「リンディさん!?」」

「幸い部屋に余りはありますし、フェイトさんのケガも私たちではもしものときに対処できるか分かりませんし……。それに信用はしてるんですけど、やっぱり女の子二人だけ家に残していくのは心配なんですよ」

 

 なんてことを言い出すんだろう。

 たぶん他の皆も程度の差はあるだろうけど驚いているだろう。その中でただ一人、神雷さんはリンディさんを胡散臭そうに見て、

 

「言い分は分かるが……お前、前提として俺を信用できるかという問題はどうなっている?」

「あなたはフェイトさんを助けてくれたでしょう。咄嗟に選ぶ行動というのはその人の内面を偽りなく見せてくれるものです。それに、こうして話してみれば信用できる人かどうかくらいは分かります」

 

 そう萎縮することなく凛として答える姿は時空管理局提督としてたくさんの人を相手にしてきた成果か。そういうところは素直に憧れる。

 

「そうか……」そこでなんでか視線をわたしに向けて「フェイト・テスタロッサ。お前はどうしたい?」

「あ……、わたしは……」

「お前が一言、否定すればそれで解決だが……」

 

 そうはいっても、それを強要する勢いはない。お前が決めろ、とそういう雰囲気。はやての羨ましそうな視線や、神無さんの険悪な視線を向けられる中、口を開く。

 

「わたしは……」

 

 答えは……たぶん決まっている。

 けれど、その答えを言葉にするのには少し勇気が必要で、それを整える前にアルフが口を挟んだ。

 

「フェイト、やめときなって。こんな奴と一緒に暮らすなんて、なにされるか分かったもんじゃないよ」

「アルフ……。ダメだよ、そんなこと言ったら……。アルフも知ってるはずだよ、神雷さんがいい人だって。でなきゃ、あんなこと言えないよ」

 

 覚えている。

 あの日、悩みで押し潰されそうだったわたしに言ってくれた言葉。

 命は生きるために生まれてくる。だから、わたしはわたしとして生きていいって。

 たったそれだけの言葉に、どれだけ救われただろう。

 

「きっと、この人はたくさんのものを見てきて、たくさんの答えを持ってるんだよ。まだわたしは子供だし弱いから……だから、いろんなことを教えてもらいたいんだ。……分かってくれないかな?」

「フェイト……」まだ少し悩むように首を振ってから「分かったよ。フェイトがそう言うなら、あたしは反対しない」

「……ありがとう、アルフ」

 

 万感の想いを込めて一撫でし、アルフはそれを至福の表情で受け止める。

 ありがとう。いつだって、どんなときだって、わたしの味方でいてくれて

 さて、今度こそ答えを伝えようと神雷さんを見上げると、その人はなにか眩しいものを見るように目を細めて、

 

「……人生の宝物、か……」

「はい?」

 

 なにかを、ポツリと呟いた。

 

「いや、こっちの話だ」それから肩の力を抜くように息を吐いて「まぁいい。その傷が癒えるまでは、その提案に乗るとしよう」

 

 え? ひょっとして今ので決定ですか?

 アルフを説得するだけのつもりで言った言葉。それは間違いなくわたしの本心でもあるのだけれど、入れようとした気合が空回りするのを感じた。

 

 

 その後、話が一段楽したところで、神雷さんは神無さんを連れて出て行ってしまった。置き去りのままの荷物もあるので、それを取りに行って夜までにまた来るとのこと。

 とりあえず、時間もちょうどいいし話の続きは食べながらということで、リンディさんとエイミィが朝ごはんの準備を始めた。さっきまでの重苦しい空気(主に神無さんからのプレッシャー)がなくなって、リビングでは思いっきりくつろぎモードに入っている。

 その中で、お客さんということで料理の手伝いをやんわりと断られたはやてが近づいてきた。

 

「フェイトちゃん、ホンマに大丈夫なん? たくさん血ィ出とったけどどこかおかしいところとかは……」

「うん。今のところは大丈夫……だと思う」

 

 相変わらず、痛みは断続的に訪れるけどそれはまだ我慢できる。それに手足の動きも問題はない。

 ただ、『眷属』というものについては早めに確認しておくべきだろう。あの人がなにかするとは思わないけど、知らないうちになにかがなくなっているというのは嫌だ。

 

「それにしても……」そこで一度区切り、複雑そうな表情をしてため息を吐いて「ええなぁフェイトちゃん。今日から神雷さんと一つ屋根の下なんて」

「あぅ……」

 

 はやての一目惚れ宣言を聞いてるから、そう言われると少し後ろめたい気持ちはある。

 

「はやてちゃん、その言い方はダメだよ。そうなったのはフェイトちゃんのケガのためなんだから」

「うぅ……。それは分かっとるんやけど……」

 

 理解と納得は別のもの。それでもなんとか割り切ろうとがんばっている。

 そんなはやてを横目に、さっきから気になっていたことをなのはに尋ねる。

 

「ところで、志乃さんはどうなったの?」

 

 さっきの会話でもわたしのことばかりで、そこには一切触れていなかった。

 

「あ、うん、志乃さんなら――」

 

 

 

  1月28日 (土)  PM 15:24

 

「う゛〜〜……」

 

 ぼんやりとした意識のまま、墓場のゾンビが上げるような呻き声を出す。というか、それしか出せない。

 もうあの殺し合いから半日以上が過ぎたというのに指一本動かすのも気怠るいこの状態は、『ヒヒイロノカネ』と『万里』を使い過ぎた代償。両方ともが使用者の命を代価として発動する呪い。それをあれだけ使って、なんの後遺症もないはずがない。たぶんこれからしばらく今のままで回復できないと思う。

 そしてもう一つ、右胸を貫通している傷による失血もある。

 その傷は昨夜精製した異能の金属『朱燐鋼』によって作られる武器『人喰いの棘』の後遺症。

 『人を殺す』という異能を付与したあの金属は、代償として使用者に『傷の共有』を強制する。つまりこの右胸の傷は、あの金髪の少女――フェイトちゃんと同じものということだ。

 その名前を思い出し、殺し合いの最後の場面がフラッシュバックして、もう何度目になるか分からない思考が脳裏を走る。

 

「敗けた……か」

 

 明確な形で勝敗は出てはいない。でも、最後は一方的に崖から蹴り落とされたと覚えている。

 でも、もしそのとき違う手段を神雷が使っていたら?

 神雷の刀は砕けていたけど、なんらかの手段で致命傷を負っていたら?

 フェイトちゃんの横槍を責める気はない。あんな命がけの状況なら、あるもの全てを利用するのが鉄則だろう。

 そう考えてしまえば結論は一つ。

 これでもう、復讐と息巻いてみても、そこにはもう(最初からあったかも疑わしい)正当性はもう欠片も残っていない。それでもやるというならそれは、ただの独りよがりの蛮行以外のなにものでもない。

 

「ごめん……」

 

 誰ともなく――否、もうあたしの記憶の中にしかいない親友であり、義妹であった綺羅に向けて呟く。

 

「弱くて、ごめん。あたしには、君の仇を討てなかったよ……」

 

 それで、終わり。憎しみは消えなくても、あたしの復讐の旅はここで閉ざされた。

 不思議と、涙は出てこない。ただ、心とでも呼ぶべきところからなにかが消えたような喪失感だけがある。

 

「どうしようかな……これから……」

 

 あたしの半生を費やした目的は消えた。そう思うとどうにもやる気が出ない。

 呆然としてなにをするでもなく天井を見上げていると、

 

 にゃあっ

 

 すぐ横から、猫の鳴き声が聞こえた。

 首から上だけをなんとか動かして見てみると、そこには赤みがかった三毛猫――紅虎がいた。

 

「そうだね……。君にはありがとうって言っておくべきなのかな」

 

 蹴落とされた時点で半分気絶してたからあたしはよく覚えていないんだけど、この子がリスティを連れてきてくれたから、今ここにいられる。でなければ他にいた男女の二人組みに救急車でも呼ばれて病院から出れなくなってたかもしれない。

 その言葉が通じたわけじゃないだろうけど、紅虎は甘えるように擦り寄ってくる。今でも他の猫たちには逃げられるので、こうも対極の対応をされるのに少し弱い。

 そのめったに見れない甘えてくる姿に頬を緩め、撫でてみようかと手を少し動かし、

 

 くきゅるううぅぅぅ〜〜〜。

 

 かなり大きな音でお腹がなった。そういえば最後に食べたのは……昨日の夕ご飯になるかな。

 普段なら二、三日の絶食くらいわけないんだけど、今は呪いの代償と傷の治癒で体力が異様に削られている。このままで放っておける状態じゃない。

 とりあえず、下に下りてなにか食べておこうかと思い、起き上がろうとして――

 

「くっ……」

 

 右胸の傷に痛みが走る。その痛みで糸が切れるように少しだけ浮かした体が落ちる。やっぱり、胸を貫通し肺を潰すほどの傷があると、そう自由にはいかないか。 

 けど、そう愚痴を言っていられない。もう一度起き上がろうとする前に、一度深呼吸。そして、

 

「ふっ」

 

 ミシミシと、なにかが軋むような勢いで体を起こし、ベッドの縁に座ろうとして、

 

「あ……」

 

 ドゴン!

 

 傾いた体を維持できず、受身も取れず、ベッドから落ちた。しかも顔面から。

 

「っ……痛〜〜」

 

 とはいっても、落ちたこと自体は問題ない。ないんだけど、力が入らないから立ち上がることもベッドに戻ることもできない。上半身だけベッドから床に落ちた間抜けな体勢のままで動けない。

 ……どうしよう。このままこの部屋の主――リスティが帰ってくるまでじっとしてるしかないのか。

 情けない話だけど、それしかない。わざわざ声を出して人を呼ぶ気力が湧いてこないのだから。

 だが、天の助けか悪魔の悪戯か、その状態は長くは続かなかった。

 

「志乃さん、今の音なんっすか?」

 

 真雪ちゃんがガチャリとドアを開けて、床に寝そべっているあたしに視線を合わせて、

 

「あーー……、大丈夫っすか?」

「……うん、だい……じょぶ」

 

 なんとか首を回して見てみると、真雪ちゃんの顔は思いっきり引きつっている。今にも爆笑しそうな雰囲気だ。

 そうなる前に先手を打とう。

 

「あ〜〜、できたら助けて欲しいんだけど……」

「はいよ」一言だけ答えて近づき、脇に腕を通されて「よっせ」

 

 その掛け声を合図に持ち上げられて、ベッドの上に戻された。

 

「ありがとう」

「いやぁ。このくらいたいしたことじゃないっすよ」

 

 さっきからなんだけど、慣れてないような丁寧語がなんだか気になる。あたしがさざなみ寮に来た頃はタメ口だったのに、今は違う。

 こうなったのはあたしが不老不死で千年近く生きていると教えてから。だからたぶん、年上だと分かって一応丁寧に話そうとしているんだろう。

 

「で、なにしてたんすか? あんな面白い格好して」

「……ちょっとね、お腹すいたから食べに下りようと思って……」

「はぁ……」納得してくれたのか、ちょっと微妙な顔で頷いて「そんなら、あたしがなんか食いもんでも持ってきましょうか?」

「あ〜〜、うん、お願い」

 

 もともとそのために一階に下りようとして、ベッドから落ちたんだし。

 

「はいよ、ちょっと待っててください」

 

 それだけ言い残して真雪ちゃんは部屋を出て行く。足音からして向かう先は一階。

 

「ふぅ……」

 

 それを確認して、全身から力を抜くように息を吐く。お茶漬け程度でも作ってきてくれたら十分だけど……いや、もし耕介くんが作ることになれば手間をかけてお粥にでもなるかも。あれは正直苦手なんだよね。

 苦笑いを浮かべて枕の横で寝転んでいる紅虎を撫でながら、昨夜蹴落とされる直前のことを思い出し、その意味するところを考えてみた。

 

 

 耳元で。

 あの男は言った。

 

――この身はすでに冥界を追放された死者。そして永遠に死に続けることを約束された呪いの顕現だ。お前の望む死の概念など、とうの昔に乗り越えている




 

 

 

 あ〜〜、できた。ようやく、第2章第13話をお届けできました。そしてこれで、第2章、しゅ〜〜りょ〜〜

「お疲れ様です」

 はい。そして今回のゲストにはフェイトを呼んであります。で、どうだったかな?

「……なんだかわたしの出番多いですけど、いいんですか?」

 まあね。一応、メインヒロインらしくと思って君の視点を多く使ってるから、自然そうなるよね

「え!? わたしがメインなんですか?」

 なにを今さら

「だって、はやてや神無さんもいるのに……」

 ……そうかもなぁ。はやてと比べれば、それぞれ覚悟と生命について説かれて、それが切っ掛けで神雷を『人生の先生』みたいに見始めている、みたいな形だし。そこに好意の自覚があるかないかの差はあるけど

「わたしはそんな……」

 まぁ聞け。それに神無や久遠は『眷属』として君の先達になる。……最終的に『眷属』になることを選んでしまうなら、だけど

「……その、『眷属』っていうのが分からないんですけど。わたしも気がつけばそれにされてたようですし」

 それは次の章の半ばで久遠の話をするまで待て。……とまぁ、君を特別視する要素はなさそうだけど……

「ですよね」

 でも、『ヒカリ』という要素がある。それがどういう意味かは最後の方まで置いとくがな

「あぅ……、やっぱり。じゃあ一応最後に訊いておきますが、結局神雷さんと志乃さんの戦いはどっちの勝ちなんですか?」

 客観的に見れば……引き分け? 二人ともが自分の理屈で敗けたと思っているし、再戦する気力もないからもう次はないけど

「いいんですか、それで?」

 いい。これが今回の一番の解決だろうと思う。

「そういうものですか……」

 そう。そしてそれはともかく、ようやく物語全体における『起』の部分が終わり、次回からは『承』の展開。まずはさざなみ寮とそこに住む二人のオリキャラを中心に、物語を進めていきます。……たぶん

 

 

 最後に、今回登場分の戦闘能力評価を

 

■??  《神雷》

 ・御霊写し

  御霊写し

   魂による接触を行い、そこから記憶や情報の交信をする術。

   テレパシーや念話と違い、精神ではなく魂の位階にある情報を扱うため、そこに一切の虚偽は入らない。

   よほど近づかないと使えないということと、あまり長く、多く使うと自他の境界を見失い、精神崩壊を起こす可能性があるという欠点を持つ。

   なお、久遠の夢写しはこの能力を継承したもの。

 

 

■比良坂 志乃  《無刃》

 ・人喰いの棘

   異能の金属『朱燐鋼』によって精製された武器。形状は問わないが、なぜか『刺す』用途の武器でなければ効果は出ない。

   『殺人』の異能を付与されており、これによる武器に傷つけられたらそれだけで死ぬという最凶の呪われた武器。しかしその代償として、その傷と同じ傷を使用者も負うことになる。(その傷に『殺人』の異能はない)

   だが、あくまで対象は『人』に限定されるため、人以外の生き物はアリ一匹さえ殺せないという欠点を持つ。





うーん、結局勝負はあやふやに。
美姫 「フェイトは怪我しちゃったけれどね」
だな。うーん、眷属の説明は次回みたいだから我慢しよう。
美姫 「そうね。それじゃあ、次回を待ちましょう」
おう。次回も待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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