『薔薇の騎士』




                          第二幕  花嫁の前で

 ここはファニナルの屋敷であった。客間の中央の戸は玄関に通じ左にも戸がある。右手には大きなガラスの窓があり二つの角にはそれぞれ大きな暖炉が置かれている。白いオーストリア軍の軍服に似た制服の従者達も控えている。内装は穏やかで質素だがそれでいて細部に銀や絹を使った隠れた豪奢を見せていた。
 その中を白い鬘を被って眼鏡をかけた痩せて小柄な男が歩き回っている。彼がこの屋敷の主でゾフィーの父親であるファニナルである。彼は周りの者の話を聞いていた。
「旦那様」
 白い服のメイドが彼に声をかけてきた。この家のメイドのマリアンネだ。
「ヨゼフの駆る新しい馬車には空色のカーテンがついています」
「うむ、いいな」
 空色は晴れの色だ。少なくともファニナルにとってはそうである。
「四匹の鼠色のまだら模様の馬に引かれています」
「それでいい。立派な馬なのだな」
「勿論です」
「旦那様」
 今度は初老で黒いタキシードの執事が彼に声をかけてきた。
「何かな」
「もうお発ちになる時間ですが」
「もうなのか」
「そうです。貴族の花嫁の父は銀の薔薇の騎士が到着される前に発たれるもの」
 彼はそう主に告げる。
「それがしきたりなのです」
「そうなのか」
「そうです。それで戸口の前で御会いになられれば」
「都合が悪いのだな」
「ですから。今のうちに」
 そう彼に声をかける。
「宜しいですね」
「わかった。それではな」
「はい、今のうちに」
 また主に述べる。
「では戻って来た時は婿殿がだな」
「そうです。旦那様、それが」
 またマリアンネが彼に声をかけてきた。
「気高くも厳格なレルヒェナウの男爵様」
「そうだ」
 彼等はこう聞いていたのだ。風聞どころではないでまかせの言葉だが。
「もうじき来られますよ」
「お父様」
 ここで一人の小柄な少女がファニナルに声をかけてきた。まだ幼さの残るあどけないが肉付きもも程よく瑞々しい美貌をたたえその白い髪を上でまとめている。だがそれはフランスの宮廷にあるような派手派手しいものではなく穏やかかものだ。青い目は湖の静かさと星の瞬きを同時に見せていた。唇はまるで薔薇の花の様に紅い。その少女が白と金の絹のドレスに身を包んでいる。彼女がゾフィーである。
「もうすぐなのですね」
「そうだよ、もうすぐなんだ」
 優しい声で娘に語る。
「御前が妻となる時が来るのは」
「私は妻として」
「御前ならなれるよ」
 その優しい声をまた娘に贈った。
「立派な妻にね」
「そうなります」
 父の言葉にこくりと頷いてみせた。
「きっと。何があっても」
「そうあってくれ」
「ウィーン中が注目していますよ」
 マリアンネはゾフィーの不安を消し去るように明るい声をかけてきた。
「神学校でもお坊様達がバルコニーから見ていますし」
「そんなになのね」
 しかしそれがゾフィーをさらに緊張させた。顔が強張った。
「神聖な婚姻を前にして」
「来ました」
 マリアンネがまた言った。家の入り口の方を見つつ。
「二台の馬車が。最初は四頭立てで次は六頭」
「いよいよね」
 胸の前で手を組んで呟くゾフィーであった。
「薔薇の騎士が来られて。はじまるのね」
 もうファニナルはいない。ゾフィーとマリアンネ達がいるだけだ。入り口の方から声が聞こえてきた。
「ロフラーノ伯爵のお着きです」
「ロフラーノ伯爵?」
「薔薇の騎士ですわ」
 マリアンネがそうゾフィーに説明する。
「他にもお嬢様の新しい親族となる方々も来られています」
「私の」
「そう、お嬢様の」
 マリアンネの言葉は素直に祝福する言葉であった。
「今召使達が並んでいます。あちらの従者達も来て」
「そう、ついに」
「皆銀色の服を着て天使みたいです」
「ああ、天の神様」
 天使と聞いて祈るゾフィーであった。
「どうか御加護を」
 祈る間にオクタヴィアンの従者達が白に薄緑の制服を着て現われる。これはロフラーノ家の色である。他には曲がった剣を腰に持つハンガリーの騎兵や白い鹿皮の服に緑の駝鳥の羽を帽子に着けた走り使い達もいる。その中でオクタヴィアンがその銀の服を着ている。周りの従者達が彼の帽子や銀の薔薇を入れるモロッコ皮のケースを持っている控えている。薔薇は他ならぬ彼が持っていた。持ちながら前に進み遂には家の中に入って来た。そうして緊張した面持ちで厳かな声で前にいるゾフィーに対して声をかけるのであった。
「フロイライン」
「はい」
 ゾフィーも頭を垂れて彼に応える。
「気高くも美しき花嫁にレルヒェナウという我が縁者の名に於いて」
「レルヒェナウの名に於いて」
 ゾフィーもその言葉を繰り返す。
「愛の薔薇を捧げます。その名誉の役を僭越ながら私が務めます」
「貴方様の御好意」
 ゾフィーは顔をあげてその薔薇を受け取った。それからにこやかに笑って述べた。
「かたじけのうございます。何時までも忘れません」
「はい」
「それにしてもこの薔薇は」
 ここでゾフィーは薔薇から本当に香りがするのに気付いた。
「香りがするのですね」
「ペルシャの薔薇油を一滴入れてあります」
 オクタヴィアンはこう答えた。
「それでなのです」
「そうでしたか。地上のものとは思われぬ天界の聖なる薔薇の香りですね」
「おそらくは」
 ゾフィーのその言葉に答えた。
「堪え忍ぶにはあまりにも強い香り。ますで心に鎖をかけて引いていくように惹き付ける」
「それ程までにですか」
「まるで幸福の様に」
 薔薇の香りでもう恍惚としていた。
「何時ここまで幸福だったことがあったでしょうか」
「私もです」
 何故かここでオクタヴィアンは彼女に同意するのだった。
「けれど私は」
 不意にゾフィーの顔が曇った。
「元の世界に帰らなくてはならない。遠い道を歩いて」
「遠い道を」
「そうです。けれど私は忘れません」
 また恍惚とした顔を見せたのだった。
「この時を。永遠に。例え死んでも」
「私は子供だった」
 オクタヴィアンは不意に呟くのだった。
「この人を知らなかった。この人を知らない私は何なのか」
 自分に対して問う。
「どうしてこの人に出会ったのか。ここに来たのか。私が男でないのなら消え去りたい。けれど」
 そのうえでまた呟く。
「この幸福の瞬間を一生忘れない」
「従兄様」
 ゾフィーは顔を見上げてオクタヴィアンをこう呼んだ。これは貴族の呼び方だ。二人の周りでは従者達がそれぞれの動きをして世界を作り上げていた。その中で二人はじっと見詰め合っているのだった。
「私は貴方を前から存じていました」
「従妹様」
 オクタヴィアンもそれに応えてゾフィーをこう読んで応えた。
「私を以前からですか」
「そうです、系図の木の描いてある本はオーストリアの名誉の鏡と申しますね
「はい」
 俗にこう言われてきていた。
「私はその本を夜寝床に入れて私の未来の親戚の方々を調べていたのです」
「そうだったのですか」
「貴方がお幾つかも存じています」
 これはオクタヴィアンにとっては思いも寄らないことであった。
「十七歳と二ヶ月」
「そこまで」
「洗礼名もですよ」
「私自身もそこまでは詳しく知りませんでしたが」
 これには正直に驚いていた。しかもそれを隠さない。
「貴女は。そこまで私を」
「その他のことも存じています」
 ここでゾフィーは顔を赤くさせていた。
「カンカンという仇名も」
「それもですか」
「親しいお友達を貴方のことをそう御呼びになるのですね」
「はい」
 その通りであった。驚きを隠せないまま答えた。
「美しい御婦人方もそう呼ばれるとか」
「それは」
「今私は非常に嬉しいのです」
 オクタヴィアンを見上げての言葉であった。目は彼を見ている。
「一人でいる時とは違う別の世界に入るのですから」
「だからなのですね」
「そうです。貴方も喜んで下さりますね」
「勿論です」
(何という美しさか)
 ここで心の中で呟いた。
「従兄様」
 また彼をこう呼んできた。
「私が私となる為にはまず男の人が必要なのです」
「男がですか」
「まずはそれが貴方」
 またオクタヴィアンを見上げての言葉であった。
「ですから私は男の方にまず感謝の念を持ちますわ」
「それはつまり」
「そう、貴方に対して」
 この上なく優しい笑みでの言葉であった。
「私は貴方の名誉を何があってもお守りしますわ」
「何と有り難いお言葉。では私もまた」
 オクタヴィアンもゾフィーのその気持ちを受けその心に近付いていた。
「そうさせて頂きます。貴女と同じように」
「私と同じように」
「そうです」
 そして言うのだった。
「貴女が不当な扱いを受けることを許しません」
「私がなのですね」
「ええ。何故なら貴女は」
 そしてまた言ってみせた。
「この世で最も素晴らしい、美しい方なのですから」
「それはお世辞では」
「笑って下さるのならそれで結構です」
 返す言葉は毅然としたものであった。
「貴女のされることは何でもそのまま受けますから。おや」
「また馬車が来ましたわ」
 マリアンネが二人に告げる。
「おそらくあれは」
「フロイライン」
 オクタヴィアンはゾフィーに顔を向けて告げてきた。
「花婿が来られました」
「私の夫となる方が」
「そうです。ここに来られたのです」
 それを教えるのであった。
「さあ。もうすぐです」
 ここでファニナルが戻って来た。儀礼通りである。しかし儀礼通りはそこまででここからはそれが砕けてしまったものになった。何故なら。
「こら、御前達」
「あの声は」
「レルヒェナウ男爵のものです」
 急に聞こえてきた場違いの声に戸惑いを見せるゾフィーにオクタヴィアンが説明する。彼はその顔を少し顰めさせていた。
「では私の旦那様となる方が」
「そうです。ですが」
(様子がおかしいな)
 オクタヴィアンは心の中で呟くのであった。
(ここは騒ぐ場所ではないのに)
 ウィーンの儀礼を知っている彼はこう思った。しかし声はまた聞こえてきた。
「そうウロウロ歩くな。行儀よくだぞ」
「すいません、旦那様」
 穏やかに窘める男爵の声とそれに謝る声が聞こえてきた。
「慣れていないもので」
「わかればいい。では行くぞ」
「はい」
 こう話をしていた。そして扉を開けて出て来たのは着飾った男爵と彼の従者達であったがその従者達がどうにも野暮ったいのだ。まるで田舎からそのまま出て来たようであった。
「うわあ、こりゃいいお屋敷だ」
「旦那様のお屋敷よりも」
「何でわしのところだ」
 口を尖らせて今の言葉には問い返す。
「いやあ、全然違うなあと」
「立派なものです」
「ウィーンだから当然だ」
 男爵はこう彼等に言う。
「しかし落ち着け。折角連れて来てやったのだぞ」
「わかりました、旦那様」
「それでは」
 彼等も頭を掻きながら応えて彼の後ろに下がる。彼等を控えた男爵はゾフィーの前に進み出てまずは一礼しその手に接吻をした。ところがそっとその手を撫でるのを忘れない。
「奇麗な御手ですな」
「はあ」
「噂にたがわぬ」
「男爵」
 娘の横に来ていたファニナルがここで彼に声をかけてきた。丁度いいタイミングで男爵も立ち上がっていた。ファニナルはここでマリアンヌを紹介する。
「こちらがゾフィーの侍女のマリアンヌです」
「左様ですか」
 今度の返事は素っ気無い。
「可愛いよな」
「そうだよな」
 彼の後ろの従者達は別にしてだ。オクタヴィアンも紹介され一礼するがまたここで男爵の従者達が言うのだった。しかもよく聞いてみればかなり訛りの強い言葉であった。
「いやあ、男前の方だ」
「まるで女の子みたいだよ」
「あの、男爵様」
 マリアンネがその彼等を見ながら男爵に声をかけてきた。
「お連れの方々が」
「失礼。こらっ」
 それを受けて彼等を怒り出した。しかし声は優しい。
「静かにしておれと言っているではないか」
「すいません旦那様」
「別嬪さんに男前の殿方もおられるんで」
 まるで畑で話しているようだ。素朴だが残念なことにここでのマナーではない。
「だがそれでもだ。静かにしておれ」
「すいません」
「それではあっし等はこれで」
「困った奴等だ。しかしですな」
 オクタヴィアン達に顔を戻して言う。
「これで立派な奴等なのですぞ。気は優しくて力持ち」
「はあ」
 ゾフィーはかなり戸惑いを見せていた。
「至って気のいいレルヒェナウの、わしの宝なのですじゃ」
「いや、旦那様」
「お宝だなんてそんな」
 従者達もまんざらではないようである。その証拠に顔が笑っている。
「その中でもこれは。ロイポルド」
 また我が子を呼んだ。
「息子でしてな。利発で気が利いて」
「ここの自分の子供は出しませんよね」
「まあ普通はな」
 マリアンネと執事はヒソヒソと話をする。
「デリカシーに欠けるというか」
「何と言うべきか」
 二人は困った顔をしていた。
「それで男爵」
 ファニナルはそと進み出てきた。後ろにはワインのボトルを持った従者が一人控えている。
「私からささやかな贈りものです」
「ワインですか」
「そう、トカイです」
 オーストリアで最も高級とされるワインだ。皇室御用達のものである。
「是非贈らせて頂きたいのですが」
「トカイといいますと」
 しかし男爵は目を丸くさせているだけだった。どうやら知らないようである。
「どんなワインでしょうか」
「トカイを御存知ないのですか?」
「さて」
 今度は首を捻った。
「ワインには詳しいつもりですが」
「やっぱりワインはレルヒェナウだよな」
「そうそう」
「だから静かにしておれ」
 また従者達を叱る。しかしやはり声は優しい。
「ですが頂きます。ワインなら何でも好きでして」
「はい。それでは」
「後で皆で飲むとするか」
「流石旦那様」
「太っ腹」
「あの、男爵」
 あまりにも場違いな雰囲気を見せる男爵を見かねてオクタヴィアンが出て来た。
「何でしょうか」
「せめて従者は静かにさせて欲しいのですが」
「ですから嗜めているではないですか」
「ですが」
「それよりもですな」
 スケベそうな目でゾフィーを見て話を変えてきた。
「フロイライン」
「はい」
 ゾフィーもそれに応える。だが少し引いている。
「まずはお話を。これからのことですが」
「何でしょうか」
「あの、男爵」
 またオクタヴィアンが言う。
「今はそれよりもですね」
「まあまあ」
 だが男爵は彼に取り合わずゾフィーばかりを見ている。そして彼女に語り掛けるのだ。
「これからの二人は。幸せになり」
「けれどまだはじめて会ったばかりで」
「それでも私にはわかります」
 ゾフィーの話は全く聞いてはいないのだった。
「まずは従者達の無礼失礼を」
「はあ」
 それは一応は謝罪する。ゾフィーもそれを受ける。
「ですが悪気はないので。パリとは違い」
 パリの作法の五月蝿さを皮肉り否定していた。
「オーストリアですので。お許しを」
「ですか」
「まあ私達も少しは破目を外しましょう」
「いい加減どうにかならないものか」
 オクタヴィアンはそんな男爵を見て歯噛みしていた。
「幾ら何でも」
「さてさて」
 ファニナルがまたどう言っていいかわかりかねている顔であった。
「男爵様も困るが従者の者達も。どうしたものか」
「おい見ろよこのワイン」
「それに窓ガラスも」
 相変わらずの様子の彼等であった。
「美味そうだよな」
「レルヘンフェルトにも行こうぜ、後でな」
「そうするか」
「少しはしゃぎ過ぎではないかな」
 彼等を見て呟くファニナルであった。
「困ったことだ」
 口では呟くがどうにもできない。その横ではこれまだ男爵が好色な目でゾフィーを見て話し掛けている。
「若鶏の様な。そんな感じか」
「私が鶏ですか」
「いやいや、レルヒェナウではですな」
 また自分の領地のことを口にする。
「婚礼の時には領主、つまりわしがその夫婦に鶏を馳走することになっていましてな」
「そうなのですか」
「それを思い出したのです。ですから私もまた鶏を後で」
「別に鶏は」
「いやいや、遠慮はなりませんぞ」
 やはり話を聞いてはいない。
「鶏を食べて幸せを祈り」
「幸せは」
「一夜でわかるものです。こちらの歌にもありまして」
「どちらの?」
「当然レルヒェナウのです。気持ちよい歌でして」
「しかしこれまた」
 マリアンネがそっとオクタヴィアンに歩み寄って囁く。
「お嬢様がお困りなのですが」
「わかっている。けれど」 
 今は我慢しているのだった。彼なりに。
「どうしたものか」
「私と一緒ならいつも長くはないでしょう」
 遂には歌いだした。しかもそれに従者達も続く。
「私は貴方のものになりますわ」
「私と一緒に暮らすなら」
「どんなお部屋も小さ過ぎないでしょう」
「私がいなければ毎日悲しいことでしょう」
 こう歌いだしたのだった。いい加減オクタヴィアンも腹が据えかねていた。
「もう限界だ。何とかならないものか」
「いやいや、わしは幸福者ですじゃ」
「いよっ、旦那様」
 またしても従者達が調子に乗って主を乗せる。
「この幸福者」
「憎いですぞ」
「ははは、帰ったら皆でワインとビールで乾杯だ」
「旦那様の幸せに」
「ついでにソーセージとハムも」
「よいぞよいぞ」
 こんな調子であった。ゾフィーのことは好色そうな目で見るだけで完全にレルヒェナウにいる時と同じになっている。少なくともウィーンのそれではないのは確かだ。
「さて。それでな」
「はい」
「どうされますか?」
 また従者達と話をする。部屋中にいる従者を自分の側に集めようとする。それでオクタヴィアンの前を通ってそのところにいる従者達を手招きしようとする。その時だった。
「そうじゃ」
 浮かれきった顔でオクタヴィアンに顔を向けて話すのだった。
「伯爵殿」
「何でしょうか」
 不機嫌を隠さずに男爵に応える。
「どうも花嫁はまだ何も御存知ない。しかしですな」
「何でしょうか」
 不機嫌なままで応える。
「それもこれまでのこと」
「どういうことですか?」
「だから申し上げたままでございます」
 得意満面な顔であった。
「初々しいからこそ可愛い。そしてその可愛さが」
「どうなるのでしょうか」
「全てわしのものになりますのじゃ。もっとも伯爵殿が」
「私が?」
「彼女に少しいろ目を使われても何も言いませんぞ。わしは寛容ですので」
 そう言うと彼の前を通り過ぎた。そうしえ自分の従者達を手招きする。オクタヴィアンは嫌悪に満ちた顔で彼を見ながらゾフィーのところに歩み寄る。それから彼女に囁いて問うのであった。
「本当にあの男と?」
「いいえ」
 必死にそれを否定する顔で首を横に振って応える。
「そんなことは。それでですね」
「何でしょうか」
「御願いしたいことがあるのです」
 小声で囁いてきた。
「御願いですか」
「そうです。助けて下さい」
 小声だが必死に嘆願してきたのだった。
「どうか私を」
「わかりました」
 それに頷く。ところがここで家中で騒ぎが起こった。
「どうしたのだ?」
「あの、旦那様」
 ファニナルが騒ぎに顔を顰めたところで今この部屋にいる執事とは別の執事が慌てた様子で部屋に入って来た。若い黒い髪の執事だ。
「大変なことになっています」
「大変なこと?」
「レルヒェナウ家の方々がですね」
「わしの家のか」
 男爵はそれを聞いて顔を向けた。
「どうしたのだ?」
「大酒を飲むわ大飯を喰らうわ女の子にからむわで」
「そんなに凄いのか」
「まるでフランスの兵隊共です」
 またフランスが出た。これでもこの時代同盟関係にある。
「トルコ人の方がずっとましです。お酒を飲まず羊しか食べずムスリムの女の子以外には声をかけたりはしないので」
「そうなのか」
「はい。もう無茶苦茶です」
 こう主に訴えるのだった。
「どうしたものか」
「ふむ、それでしたら私が」
 男爵が名乗りを挙げた。
「何とかしましょう」
「御願いします」
「それで女の子達は大丈夫なのかい?」
 ファニナルはそちらを心配していた。
「気になる。案内してくれ」
「はい、こちらです」
「行くぞ」
「わかりました」
 男爵と従者たちも向かう。マリアンネと年輩の執事も。こうして二人になったのだった。
 二人になるとゾフィーはまずほっとしたように大きく息を吐き出した。そうして言うのだった。
「御願いします」
 またオクタヴィアンに訴えかけてきた。
「どうかこの私を」
「はい、それではですね」
「何が」
「まずは貴女御自身をお助けすることです」
 こうゾフィーに告げるのだった。
「私をですか」
「そうです」
 彼は言う。
「それでですね。まずは」
「どうすればいいのでしょうか」
「まずはです」
 オクタヴィアンは真剣な顔でゾフィーを見詰めていた。そうして囁くのであった。
「私達二人の為に私達を護るのです」
「私達を」
「そうです」
 そう答えて頷く。
「貴女の為に、そして私の為に貴女は御自分を御護り下さい。そして今の貴女を見失わないようにして下さい。宜しいですね」
「わかりました」
 目に涙を湛えてオクタヴィアンの言葉に頷く。それから彼を強く抱き締めた。
「憂いに心を支配され絶望にかられ。その貴女の信頼する友人として今ここにいます。何という幸福なことでしょうか」
「貴女がいればもうそれだけで憂いも絶望も消えます」
 ゾフィーもまたそれに応えて言う。
「何が起ころうと押し黙り木の枝の鳥の様に身を隠して止まって貴方がここにいることを感じたい」
「私をですね」
「そうです」
 また彼の言葉に応えた。
「貴方が喜んでここに来られたか危急で来られたか。ですが」
 彼は想うのであった。
「何時か美しい夢の中でそれが起こったような」
「そう想われますのね」
「はい。感じませんか、それを」
「感じます」
 そしてゾフィーはそれに頷いた。
「そのことを。不安に襲われなければならない筈なのにそれがなくて。苦しみも消えて」
「どうなっているのですか?」
「言葉で言い表せと仰られても言えない。けれど貴方が今ここにおられるだけで」
「宜しいのですか?」
「はい」
 うっとりとした顔と声で頷いてみせた。オクタヴィアンを抱いたまま。
「貴方の御顔が。若々しく明るい目が私に注がれて優しい表情が癒してくれる。けれどそれすらも判らなかった」
「そうだったのですか」
「けれど今は側にいて下さい。それが私の願いです」
 そこまで言ってまだ抱き締め合う。そこで急にある二人が部屋に飛び込んできた。元帥夫人のところで男爵に声をかけていたあのイタリア人、ヴァルツァッキとアンニーナであった。
「男爵様、男爵様!」
「大変ですよ!」
「くっ、しまった!」
 オクタヴィアンは素早くゾフィーから離れて呻いた。
「大変なことになるぞ」
「どうしましょう」
「貴女が心配されることはありません」
 再び不安に包まれたゾフィーに顔を向けて安心させるように告げた。
「・・・・・・わかりました」
 オクタヴィアンのその言葉を信じることにした。その間も二人はけたたましく騒ぎ遂には男爵が左の戸口から出て来た。そうしてシニカルな笑みを作ってオクタヴィアンに問うのであった。
「幾ら何でもこれはまずいと思いますが」
「貴方は私のことを判ってはいないからです」
 ゾフィーがオクタヴィアンの後ろから叫んだ。
「ですから」
「私は伯爵殿にお伺いしているのでな。伯爵殿」
 あえて鷹揚にオクタヴィアンに声をかける。
「どういったことでしょうか」
「今回の件で大きな変化が起こったのです」
 オクタヴィアンは男爵を見せてこう述べるのだった。
「大きな変化ですと」
「そうです」
 その声も目も毅然としたものである。
「この方は」
「どうされたのでしょうか」
「この方は」
「どうされたのでしょうか」
 一旦言葉が繰り返された。
「申し上げましょう。貴方が御気に召されないのです」
「御心配なく」
 それを聞いても男爵は全く気にすることがない。平気な顔であった。
「そのうち変わりますので。だからフロイライン」
 優しい声になってゾフィーに声をかけた。
「中へ。婚姻の署名を」
「嫌です」
 だが今度はゾフィーが断ってきた。自分から。
「私は一緒には行きません」
「そういうことです」
 オクタヴィアンも彼女を護りながら男爵に対して告げる。今にも腰の剣を抜かんばかりの剣幕で。
「貴女とは結婚されないのです」
「戯言ですな」
 ましてや貴族の世界では、男爵は言葉の外でこう言っていた。
 そのままさらに言葉を続ける。
「そんなことを本気で取り上げては世の中は動かない。ですから」
「行かないと言っているではありませんか」
 前に出た男爵の前に立ちはだかるようにしてまた告げるオクタヴィアンであった。
「さあ、下がって下さい」
「人を待たせるのはどうかと思いますが、伯爵殿」
「そんなことは話していないでしょう」
 オクタヴィアンも退く気はなかった。あくまで突っぱねる。
「とにかく。彼女は貴方とは結婚する気はないのです」
「ふむ、十七とは思えぬ気迫ですな」
 これは完全に皮肉である。
「ですが伯爵殿、あまり無体なことを言われてはいけませんぞ」
「無体なことですと」
「そうです。あまり我儘を言われると」
 ここで呼んでもいないのに男爵が入って来た戸口から彼の従者達がどやどやと入って来た。皆真っ赤な顔をしている。その手にワインの瓶や大きなソーセージを持っている者までいる。彼等は男爵の後ろから口々に言うのだった。
「どうしました、旦那様」
「まさか大変なことが」
 彼等の主に異変が起こっていることを察知してそれぞれ身構える。だが男爵達はそんな彼等を制する。
「御前達は静かにしておれ」
「はあ」
「そうでしたか」
「男爵」
 オクタヴィアンはここで遂に剣に手をかけた。
「彼女は何があろうとも」
「旦那様!」
「ここは剣を」
「馬鹿を申せ」
 しかし男爵は剣を抜こうとはしない。それどころか後ろから急かす従者達を叱った。
「他所様のお屋敷の中でだな」
「ですが旦那様」
「向こうは」
「さあ、男爵」
 既にオクタヴィアンはその剣に手をかけ引こうとはしない。
「剣を抜きなさい。そして」
「果し合いというわけですな」
「そうです。さあ」
「では」
 ここに至って遂に彼も剣に手をかける。といってもオクタヴィアンのそれとは違い動きがどうにも野暮ったく鈍いものであった。
「勝負を」
「宜しいでしょう。それでは」
 二人は剣を抜いて突き合う。勝負は呆気無く終わり男爵が剣を落とした。
「しまった、やられた!」
「旦那様、御無事で!」
「大丈夫ですか!」
 従者達は酔いも一気に醒めて男爵に駆け寄る。男爵はその彼等にも叫ぶ。
「医者を呼べ!」
 まずはこう叫ぶ。
「包帯もだ!警察も!血が流れているな!」
「本当だ!」
「早く手当てを!」
 オクタヴィアンをよそに必死に男爵を気遣う。しかしそこにあのヴァルツァッキとアンニーナが来た。そして彼等に囁くのだった。
「あらあら、これはまた」
「薔薇の騎士にやられるなんて!」
「何てことだ!」
 しかし従者達はそれを聞かず騒ぐだけである。男爵もまた。
「早く、早く手当てを!」
「言いたいことがあるなら何でも言うのだ」
 オクタヴィアンはまだ剣を手にしていた。その剣を見せながら堂々と言い放つ。
「ここで起こったことは私が弁護できる」
「何という混乱」
 ゾフィーはゾフィーで今起こったことにオロオロしていた。
「けれど。この方の剣の速いこと。それに何と頼もしい」
「血は駄目なのだ!」
 男爵はその前で叫んでいるがゾフィーの目には入っていない。
「誰の血であっても。血が流れるのは見たくもない!」
「その通りです」
「ですから旦那様」
 つまりは彼等の血も見たくはないというわけなのだ。
「ここは落ち着かれて」
「怪我はわし等が」
「またこれは随分」
 マリアンネはそっとゾフィーの側に来て彼女を守りながら言う。
「大変なことになりましたけれど」
 その騒ぎの中に戻って来たのは。騒ぎを聞いたファニナルであった。彼も今日は彼自身が思っていたよりもずっと忙しい日を送る破目になっていた。それを言葉にも出しながらたまりかねた顔で言うのだった。
「今度は何なのか。決闘なのか!?」
「その通りです」
「旦那、ここはどうか」
 男爵の従者達がここでファニナルに言うのだった。
「お医者様を読んで下さい」
「どうか」
「わかりました。しかし」
 彼は少し憔悴した様子でここで呟くのだった。
「こんな騒ぎになるとは。伯爵殿」
「はい」
 オクタヴィアンは剣を収めてから彼に一礼した。
「こんなことを期待してはいないのですが」
「申し訳ありません」
 オクタヴィアンもこれには素直に謝罪する。
「私としても悲しむべきこと。ですが」
「ですが?」
「このことに関する真実は娘さんから御聞きになるでしょう」
「ゾフィーから」
「そうです」
 ゾフィーに顔を向けた彼に答える。
「その通りです」
「お父様」
 そしてゾフィーもここで父に顔を向けて言うのであった。
「あの方のお振る舞いは間違っています」
「一体何を言っているんだ」
 ファニナルは娘の言葉に顔を顰めさせる。そうして二人と男爵達の丁度真ん中に座って話をするのであった。マリアンネと彼に従う執事達がその後ろについた。
「この方は御前の夫になるんだよ」
「嫌です」
 またきっぱりと言い切ってきた。
「この方は」
「馬鹿なことを言う」
 その後ろから医者が来た。そうして男爵の手当てにかかった。手当てといっても腕を少し切っただけなので実に簡単なものであった。
「薔薇の騎士が剣を抜くわ花婿は傷を受けるわこの騒ぎだわ。確かにわしは成り上がり者だ」
 その自覚はあった。
「しかし。だからといって名誉がないわけではない。その名誉にかけて言おう」
「何をですか?」
「男爵様と結婚するのだ」
 そう娘に命じた。
「わかったな。例えこの方がなくなろうとも」
「ふむ」
 その右手で医者が男爵を見ながら声をあげていた。
「大丈夫です」
「そうか、よかった」
「旦那様は御無事か」
 従者達がそれで喜んでいる。ゾフィーはそれも水にやはりオクタヴィアンに守られつつ父に言葉を返すのだった。それまでにない強い声で。
「例えこの人が死のうが生きようが」
「どうだというのだ?」
「結婚はしません」
 それをまたはっきりと言うのだった。
「何があろうとも」
「では無理にでもだ」
 売り言葉に買い言葉だった。ファニナルも引かない。
「結婚させる。いいな」
「それなら私が死にます」
「なら私は教会で神父様にいいえと言います」
 今度はこう返す。
「なら修道院に戻してやる!」
「ですからお父様」
 いい加減泣きそうな顔になって父に叫ぶのだった。
「私はどうしても」
「ならん!」
 腕を組んで娘の言葉をつっぱねる。
「何があろうともな」
「フロイライン」
 困り果てるゾフィーにオクタヴィアンが囁く。やはり彼女の前に立って護っている。今は怒り狂う父の嵐から護る様にだ。
「御安心下さい。後から便りを寄越します」
「伯爵様・・・・・・」
「伯爵殿」
 ファニナルは口をへの字にさせてオクタヴィアンにも言う。
「あまり娘に近付かないで下さい。宜しいですね」
「すいません」
「とにかくだ」
 また娘を睨んで言う。
「今は部屋に下がれ。頭を冷やせ」
「・・・・・・はい」
 父のその言葉に俯いて頷く。そしてオクタヴィアンに一礼しマリアンネに護られるように付き添われながらその場を後にした。それでまずは一人退場であった。
 しかしオクタヴィアンも男爵も残っている。ファニナルは今度は男爵に顔を向けた。
「大丈夫ですか」
「何とか」
 あの元気は何処にいったのか声が弱々しい。
「そうですか。ではお飲み物は」
「いや、それは結構」
 いつもなら頼むのだが今はそれを頼む元気もないのだった。
「そっとしておいてくれ」
「宜しいですか、男爵」
 ここで彼は男爵に対して穏やかな調子を何とか作りながら話すのだった。
「貴女の御親切と御寛容に対して接吻致します」
「わしに対して」
「そうです。娘だけでなく」
 恭しく語る。
「この屋敷の全ては貴方のものです」
「わしのものだと」
 それを聞いただけでもう機嫌をなおしだした男爵であった。
「真ですかな、それは」
「私とて貴族です」
 その誇りはあるのだ。
「嘘は申し上げません。娘にも我儘は言わせません」
「左様ですか。いやいや、それでは」
 かなり機嫌を直し従者達に囲まれた中で言うのだった。
「まあお話は後で」
「ささ、トカイを」
「これはどうも」
 執事がファニナルに手渡しそのワインを受け取って一杯飲む。ところが持つ手が痛んでそれでまた顔を顰めるのだった。
「痛っ・・・・・・、全く以って」
 斬られたことを思い出して歯噛みする。悔しさと憎らしさで苦い顔にもなる。
「こんな目に遭うとはな。訴えるべきか」
「是非そうしましょう」
「旦那様がやられっぱなしでは」
 従者達もそれを聞いて彼に言う。
「レルヒェナウの名誉が廃りますぜ」
「ですから」
「まあ待て」
 しかし信頼する彼等の言葉を聞くといつもの鷹揚な男爵になった。その鷹揚な様子で言うのである。
「落ち着くのだ。いいな」
「はあ」
「それでしたら」
 主の言葉を受けて彼等もまずは落ち着いた。男爵はそれを見届けてからまた言う。
「まあ伯爵殿も去られた。そしてだ」
「そして?」
「若い娘の我儘はいつものこと」
 いつもの余裕も見せだしていた。
「これはこれで面白い話ではないか」
「左様ですか」
「その方らも知っていよう」
 得意げな顔で従者達に問う。
「気の強い方が女は可愛いものじゃ」
「確かに」
「言われてみればその通りで」
 またその訛りの強い言葉で口々に言い出していた。
「そういうことですな」
「その通り。では」
「はい、どうぞ」
「ささ、もう一杯」
 今度は従者達がワインを注ぐ。彼等が入れたワインを一気に飲み干す。それからまた言うのだった。
「やはり御主等が入れてその側で飲むのが一番だわい」
「ではまた後で」
「旦那様とご一緒に」
「よいぞよいぞ」
 もういつもの男爵であった。そんな彼のところにアンニーナがまた来ていた。
「んっ!?どうしたのじゃ?」
「旦那様」
 含み笑いを浮かべて彼のところにそっと寄って囁く。
「実はですね」
「何かあったのか?」
「何かあるから来るのです」
「それもそうか。して何用じゃ?」
「これです」
 そっと一通の手紙を差し出すのであった。
「これをどうぞ」
「手紙か」
「そうです。さあ」
「うむ。それではな」
 手紙を受け取ってそれを開く。するとそこにはマリアンデルからと書かれていた。
「おっ」
 男爵はその名を見てまずは楽しそうに声をあげた。
「これはいい。あの娘からか」
「あの娘!?」
「あっ、何でもないぞ」
 にやけた顔であるが従者達に言葉を返す。
「何でもないからな」
「わかりました、それでは」
「それでだ」
 そしてあらためて手紙を読むことを再開させるのだった。そこに書いてあることは。

 騎士様
 私は明日の晩時間があります。貴方様をお慕い申しておりますが奥方様の前ですから中々言えないでいました。
 ですがどうか明日の晩に御会いして下さい。

                            貴方をお慕いするマリアンデルより

「おお」
 男爵は最後まで読んでその顔をさらににやけさせた。
「これはいい。明日か」
「明日!?」
「明日に何が」
「その方等には関係のないことだ」
 にやけた顔のままで従者達に返す。
「気にするな。よいな」
「むっ、これはまさか」
「女の子と?」
「だから。関係ないと言っておるだろう」
 そうは言っても顔は笑ったままである。
「よいな。それで」
「はい、それでは」
「そういうことで」
 彼等はそれで黙ることにした。だが男爵はここでさらにアンニーナに対して言うのだった。
「まずはこれを」
「毎度あり」
 さりげなく金貨を数枚掴ませた。一応はチップということだ。
「それでじゃ。場所は」
「どうされますか?」
「わしのホテルにしよう。いや」
「いや?」
「居酒屋がいいか」
 こう考えを変えた。
「そこにする。店の名前は」
「はい、場所は」
 アンニーナに囁いて場所を決める。男爵はもうそのことで頭が一杯になっていた。他のことはもう頭に入ってはいなかった。見事なまでにであった。



前回、夫人にあんな事を言ったオクタヴィアンだったけれど。
美姫 「ゾフィーにどうやら惚れたみたいよね」
とは言え、父親の方は男爵と結婚させる気みたいだし。
美姫 「でも、男爵に宛てた手紙が怪しいわよね」
だよな。一体、どんな策を練ったんだろうか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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