『ハンカ=マンカのお話V』
鼠のハンカ=マンカはご主人のトム=サムがお仕事から帰ってくるとあるものを見せて言いました。
「狐さんからドールハウス貰ったのよ」
「狐さんからかい」
「ええ、何でもお家の倉庫にあったらしいけれど」
それでもというのです。
「狐さんもご家族も興味がなくてね」
「譲ってくれたのかい」
「ただでね」
お金を支払うことはなかったというのです。
「これがね」
「そうか、ただならいいな」
ご主人はそれならと頷きました。
「じゃあうちで飾るか」
「そうしましょう、ただ私達前に人間のドールハウスを滅茶苦茶にして」
「あの時は騒ぎになったな」
「そのこともあったし」
それでというのです。
「何かね」
「ちょっと抵抗があるな」
「お家に飾るにしてもね、けれど折角貰ったし」
「ああ、飾るか」
「そうしましょう」
こうお話してでした。
夫婦でドールハウスをお家の空いている場所に置きました、その中にハウスと一緒にあったお人形狐や鼠、栗鼠に兎に穴熊といった生きもの達のそれを置きました。するとです。
「何か森の皆を思い出すな」
「そうね」
奥さんはご主人の言葉に頷きました。
「お人形達を見ていると」
「家は人間のものでもな」
「そうなってしまうわね」
「そう思うと面白いな」
「子供達が遊びから帰ったら見せましょう」
「そして家族で楽しもうな」
「ええ、こうしたものもいいわね」
ハンカ=マンカはトム=サムに言いました。
「面白い遊びね」
「ドールハウスもな」
「狐さんもご家族も興味なくて」
「わし等は前に荒らしてしまったがな」
「こうして飾ってみるとね」
「いいものだな」
「そうよね」
夫婦でドールハウスを見ながらお話します、そしてです。
子供達が帰ってきて見せますと子供達も喜びました、それで一家でずっとその場所にドールハウスを飾って見る様になりました。勿論時々お掃除をしますが奥さんがそうしてです。
「こうしてずっとね」
「飾って見ていような」
「こうして飾っているだけでいいわね」
「ドールハウスもな」
「本当にそうね」
「悪いものじゃない」
夫婦で笑顔で見てお話します、そしてそのお話を聞いた元の持ち主である狐どんはパブで日本から来た狸に言いました。
「喜んでくれるならいいよ」
「そうなんだね」
「私も家族も興味がなかったからね」
「それならだね」
「あの家族が楽しんでくれたならいいよ」
「自分が興味がないなら」
「それならそうしてくれたらいいよ」
こう言ってでした。
狐どんはエールを飲みました、そうして狸に対して今興味があるのはこちらだと笑顔で言うのでした。そして今度はおつまみにしている日本から入って来た油揚げを食べてこれが一番興味があると言いました、それには狸も同意して一緒にエールを飲んでそれから油揚げを食べるのでした。そしてドールハウスのお話はしないのでした。
ハンマ=マンカのお話V 完
2025・8・31