『ブラウンじいさまのお話V』





 梟のブラウンじいさまは基本朝寝て夜起きています、そうした生活なので狐どんに夕方停まっているいる木の下から言われました。じいさまはその木の枝に停まっています。
「じいさまは今起きたところかい?」
「ああ、そうさ」
 じいさまはその通りだと答えました。
「起きたところだよ」
「それで夜の間起きて森の見張りをするんだな」
「わしの仕事をな」
「そうだな、わしはもう家に帰って」
 狐どんはそうしてと言います。
「晩飯を食べて風呂に入って寝るよ」
「そうするんだな」
「夜はな」
「じゃあゆっくり寝るんだな」
「今夜もな」
「わしは起きてな」
 そうしてというのです。
「夜の見張りをするからな」
「宜しくな」
「ああ、それじゃあな」
 こうしたお話をしてでした。
 狐どんは自分のお家に帰ってじいさまは森の入り口で見張りにつきました、森は今日も平和でしたが。
 ある日です、夕方いつも通り起きて森の見張りの位置についたじいさまに狐どんがこんなことを言いました。
「最近夜に銛の中に出るそうだよ」
「出る?何も見ないぞ」
 じいさまは木の下にいる狐どんに言いました。
「森の中も外もな」
「そうかい?妖精が出るそうだよ」
「妖精?どんな妖精だい?」
「何でもパックとかいうらしいな」
「パック。何処かで聞いた名前だな」
「わし等は知らないが有名な妖精らしいな」
 狐どんは言いました。
「これが」
「それでその妖精が出てかい」
「ああ、色々森の中を動き回るらしいな」
「そうなのか、じゃあ今夜よく見張っておくな」
「本当にいるかどうかだな」
「妖精がいるならな」
 じいさまは狐どんにそれならと言いました。
「わしが見てどんな妖精か確かめてな」
「そうしてか」
「明日あんたに言うよ」
「宜しくな」 
 こうお話をしてでした。
 じいさまは本当に森の中に妖精がいるのかどうか確かめることにしました、そうしてでした。
 その夜森の中をじっと見はりました、そして。
 あるものを見てです、成程と一羽頷きました。その次の日の夕方自分の木の下に来た狐どんにお話しました。
「風だったよ」
「風?」
「うん、妖精だと思ったら」
「あれか、夜の中で風が吹いたら」
「夜目が利かないと見えなくてな」
「妖精だと思うな」
「それだったんだ」
 こう狐どんに言いました。
「これが」
「ああ、森の皆は大抵はじいさまよりずっと夜目が利かないからな」
「夜といったら梟だろ」
「全くだ」
 狐どんはその通りだと答えました。
「それはな、大体大抵のこの森の生きものは夜は寝ている」
「それなら尚更だな」
「夜に風が吹いて物音でもしたら」
「見えないからな」
「妖精とか思うな」
「それでパックという名前を誰かが出して」
 そうしてというのです。
「噂になったんだ」
「そういうことだな」
「わしが思うにな、ただ世の中わし等生きものもいればな」
「妖精もいるな」
「そうしたものだ、別に妖精いても」
 そうであってもというのです。
「悪さをしないならな」
「それでいいな」
「全くな、そうだな」
「その通りだ」 
 狐どんはじいさまに笑顔で答えました。
「この森は来る者は拒まずだからな」
「だからそれが妖精でもな」
「いいな」
「そうだろ、だからな」
「妖精が本当にいてもだな」
「いいということでな」
 それでというのです。
「迎えような」
「そうしよう」
 じいさまは狐どんに言いました、そしてこの日の夜も森の見張りをするのでした。自分のお仕事を頑張るのでした。


ブラウンじいさまのお話V   完


                   2024・10・27








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