『ケップのお話U』





 コリーのケップはこの時遊びに来たピーターラビットとお話していました、その中で彼はピーターラビットに言いました。
「ふうん、狼さん達は君達を食べるんだ」
「そうだよ、お腹が空いていたらね」
 ピーターラビットはケップに答えました。
「そうするっていうよ」
「そうなんだね」
「それで犬は狼の仲間だよね」
「そうだよ」
 ケップはその通りだと答えました。
「僕達はね」
「けれど君は僕達を襲わないね」
「家鴨のジマイマさんとも仲よくしてるしね」
「兎も鳥も他の生きものもだね」
「僕はドッグフードを食べているからね」
「ああ、あの焦げ茶色で豆みたいな大きさの」
「そう、あれをね」
 まさにというのです。
「いつも食べていてね」
「それでだね」
「お腹一杯だしね、そもそも君達を食べものと思ったことはね」
「ないんだ」
「一度もね。お友達や家族と思っても」
 それでもというのです。
「食べものとはね」
「思わないんだね」
「全くね」
 それこそというのです。
「見ていても食欲なんてそそられないよ」
「君にとってはドッグフードが食べものだね」
「そうであってね」
「成程ね」
「それに狼さん達もお腹空いていないとだね」
「うん、襲わないっていうね」
「今は森に市場があるね」
 ケップはピーターラビットにこのことを言いました。
「そうだね」
「そこで何でも買えるよ」
「狼さん達だってだね」
「牛肉や豚肉に」
 ピーターラビットは森の狼達が買うもののお話をしました。
「ハムとかソーセージをね」
「買って食べるね」
「この前家族で来ていて」
 そうしてというのです。
「ラムを買ってね」
「子羊の肉だね」
「大喜びで帰っていたよ」
「狼さん達も餓えていないとね」
「何もしないね」
「もっと言えば僕達犬は狼からなったんだよ」
 ケップはまたこのことをお話しました。
「僕達は怖い犬もいるけれどおおむね穏やかじゃないかな」
「君もそうだね」
「狼が元々怖くない生きものだから」
「犬さん達になれたんだね」
「そうだよ、だから狼さん達は無闇に怖がらなくていいよ」
「満腹なら何もしない」
「市場でお肉を買えたらね」
 そうだとです、ケップはピーターラビットにお話しました。そして彼が帰ってからご主人が出してくれたドッグフードをお腹一杯食べました。
 その後で、です。ケップはお家の中で家鴨のジマイマと一緒にいましたがそこでピーターラビットとお話したことを彼女にもお話しました。
 そのうえで、です。彼女に尋ねました。
「僕は怖いかな」
「あんたが?」
「どうかな」
「優しくて穏やかよ」
 ジマイマはすぐに答えました。
「いい子よ」
「そうなんだね」
「狼と違ってね、けれどその狼はね」
 それはといいますと。
「あくまで私の昔のイメージよ」
「実際の狼さん達は違うんだよね」
「怖くも残酷でも欲が深くもないわ」
「どちらかというと穏やかだね」
「そうした生きものね」
「そうだね、犬は狼さん達からなったから」
「同じ様な性格ね」
 こうケップに言いました。
「そのことはわかっておかないとね」
「そう言ってくれて嬉しいよ、狼さん達が怖いとか言われるとね」
「犬としてはよね」
「親戚を馬鹿にされている様に思ってね」 
 それでというのです。
「よく思えないんだ」
「そうよね」
「だからね、皆狼さん達に正しい認識を持ってくれるなら」
「あんたとしては嬉しいわね」
「とてもね」 
 笑顔で言うのでした、そしてです。
 ケップは今度はお水を飲みました、お水も満足するまで飲むとそれで終わりでした、狼の様にそうしました。


ケップのお話U   完


                  2024・2・28








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