『ピーターラビットのお話U』
ピーターラビットはこの時マクレガーさんのお家の近くにいました、そこで同じ兎の友人達に言われました。
「おうい、マクレガーさんのお家の中に入らないか?」
「そして探検しないか?」
「マクレガーさんのお家のお庭またお花とか変わったみたいだぞ」
「奥さんがガーデニング変えたみたいだぞ」
こうピーターラビットに言うのでした。
「だから中に入ってみないか?」
「畑じゃないから中に入っても怒られないぞ」
「追いかけても来ないぞ」
「だから大丈夫だよ」
「それでも危ないんじゃないかな」
ですがピーターラビットは友人達にどうかという顔で応えました。
「ちょっとね」
「お庭だよ」
「畑じゃないんだよ」
「僕達も別に荒らさないよ」
「食べるものもないしね」
「それが最近あの畑に大きな猫がいるからね」
だからだというのです。
「行かない方がいいよ」
「猫?大丈夫だよ」
「猫なら心配いらないよ」
「犬よりずっと小さいじゃない」
「マクレガーさんのところの犬大きくてよく吠えるから怖いけれど」
「向かって来るしね」
この犬はというのです。
「そうだけれどね」
「あの犬は今はお家の玄関のところにいるよ」
「そこからお散歩の時以外は動かないから」
「お庭には来ないし」
「あの犬がいないなら大丈夫だよ」
「猫なんて何でもないよ」
ピーターの友人達は皆こう言います、そうしてです。
マクレガーさんのお庭に向かいます、ピーターもどうしてもと言われて仕方なくついて行きました。
お庭の中は確かに前と変わっていました、色々とものの配置が変わっていてです。
お花は変わったというより増えています、マーガレットは数が増えていて花壇には色とりどりのチューリップが咲いていてです。
蒲公英も沢山あります、皆そのお庭の中を見回して楽しそうにお話しました。
「うん、かなり変わったね」
「何かとね」
「お花は増えていて新しいものも咲いていて」
「前よりずっといいよ」
「奇麗になったね」
「しかもだよ」
皆ここで、でした。
お庭の中に白いティータイム用のテーブルと二つのチェアーを見ました、そこにぴょんと上がって見回して言います。
「このテーブルとチェアーいいね」
「お洒落だね」
「白くて奇麗で」
「これが一番いいね」
「皆そろそろ帰ろう」
猫が来ないか心配なピーターラビットは皆とは違って周りを警戒しながら忠告しました。
「猫が出て来るよ」
「大丈夫だって」
「猫が来ても何ともないよ」
「猫が来たら逃げればいいじゃない」
「怖がることはないよ」
「そんな猫じゃないから」
ピーターは周りを警戒しながら友人達に言います、ですが皆は安心しきってお庭の隅から隅まで観て回って探検しています。
その様にして心から楽しんでいました、ですが。
お家の窓にでした、真っ白い毛の猫が出て来て彼等に聞いてきました。
「君達何をしているのかな」
「うわっ、何だこの猫」
「とんでもなく大きいぞ」
「十キロ以上あるんじゃないか?」
「人間の子供位の大きさがあるぞ」
「悪いことしたら駄目だよ」
猫はガラスの窓の向こうから穏やかな声で言うだけでした、ですが。
そのとんでもない大きさにピーター達はびっくりしてです、文字通り脱兎となってお庭から逃げ去りました。
そしてマクレガーさんのお家から離れたところでお話しました。
「何あの猫」
「僕あんな大きな猫見たことないよ」
「僕もだよ」
「下手な犬よりずっと大きいよ」
「トイプードルやポメラニアンの三倍近くなかった?」
そうした犬と比べて言う子もいます。
「あんな大きな猫に襲われたらひとたまりもないよ」
「あっという間に食べられるよ」
「あんな猫がいるなんて」
「怖くてとても行けないよ」
「だから行ったんだ、マクレガーさんのお家猫が増えたみたいだけれど」
皆と一緒に逃げたピーターも言います。
「とんでもなく大きな猫が来たらしいって聞いていたんだ」
「それがあの猫だね」
「また大きいね」
「あんな猫がいるんじゃ迂闊にお庭に行けないよ」
「襲われたら大変なことになるよ」
「だからだよ」
それでと言うピーターでした。
「あのお庭には行かない様にしよう」
「そうだね」
「それがいいね」
「あんな猫がいるんじゃね」
「行ったら駄目だよ」
皆も言います、そうしてです。
皆暫くマクレガーさんのお庭には行きませんでした、それは森の烏からその大きな猫も他の猫も家猫でお家の外から出ないと聞くまででした。それまでは決して行きませんでした。そして家猫とわかると窓越しに他の猫達とも一緒に仲良くお話する様になりました。
ピーターラビットのお話U 完
2022・7・31