『ブラウンじいさまのお話U』
ブラウンじいさまはお年寄りの梟です、お年寄りなので身体のあちこちが気になってきていています。
それで今自分のお家の中で奥さんにこんなことを言いました。
「最近腰や膝がな」
「気になってるのね」
「痛んでな」
「それは仕方ないでしょ」
奥さんはじいさまにこう返しました。
「だってあなたもね」
「歳だからだな」
「私もだけれどね」
「そう、歳だからな」
じいさま自身こう言います。
「最近何かとな」
「腰や膝が痛むの」
「やれやれだ。どうしたものか」
「それじゃあお医者さんに行ったらどうかしら」
奥さんはじいさまにそうすることを勧めました。
「これからね」
「お医者さんかい?」
「ええ、烏のお医者さんね」
鳥類専門のお医者さんのところに行ってはというのです。
「そうしたらどうかしら」
「お医者さんはいいよ」
じいさまは奥さんの提案に嫌そうに答えました、実はじいさまはお医者さんが好きではないのです。
「別に」
「そんなこと言ったらずっと痛いままよ」
「だからかい」
「お医者さんに診てもらってね」
「どうして痛くなっているのか教えてもらってか」
「治療方法とか教えてもらえばいいのよ」
「それしかないか」
じいさまは嫌そうに述べました。
「お医者さんに行くしか」
「あなた本当に昔からお医者さん嫌いね」
「色々診られるのが嫌いなんだよ」
「嫌いでも診てもらわないとずっと痛いままよ」
「仕方ないな」
じいさまは奥さんがずっと痛いままと言った時にお医者さんも嫌だが腰や膝がずっと痛いままということはもっと嫌だと思いました、それでです。
渋々ですがそれでもお医者さんに行くことにしました、そうしてお家からお医者さんのところに飛んで行きました。
病院に入ると暫く待ってから烏のお医者さんに腰と膝のことをお話してそのうえで診てもらいました、するとお医者さんはこう言いました。
「これ位だと毎日お風呂でゆっくり温めていくとよくなりますよ」
「お風呂ですか」
「はい、そちらにゆっくりと入っていれば」
毎日そうしていると、というのです。
「特にお湯に入って温めてお水で一旦冷やしてまたお湯に入って温めますと」
「いいのですか」
「そうです、毎日そうしていけば」
「それで腰も膝もよくなりますか」
「飛べる種類の鳥の方は飛ぶことが多いですが」
「はい、わしもです」
「腰も膝も大事ですね」
翼だけでなくというのです。
「お家の中では歩きますし」
「木の上にも停まりますし」
「ですから気を付けて下さい」
腰や膝のことをというのです。
「くれぐれも」
「わかりました、お風呂ですね」
「毎日入られて下さい」
「そうします」
じいさまはお医者さんの言葉に頷きました、そうしてお家に帰って奥さんに事情をお話すると奥さんも言いました。
「じゃあこれから毎日お風呂に入るのね」
「それで腰や膝が楽になるならいいな」
「そうね、案外楽に治るものね」
「そうだな、もっと何度も病院に行って治療を受けると思っていたが」
「それで治るならね」
「毎日お風呂に入ろう」
こう奥さんに言いました。
「そうしよう」
「そうですか」
「これからな」
こう言ってそうしてでした。
じいさまは実際に毎日お風呂に入ってじっくりと温まることにしました、そしてお湯で身体を温めた後で冷たいお水のシャワーを浴びてまたお湯のお風呂に入ることを繰り返していますと。
自然と腰と膝が楽になりました、それだけでなく。
「翼の付け根の凝りもなの」
「ああ、ずっと悩んでいたがな」
こちらのこともというのです。
「そちらも随分と楽になった」
「そうなのね」
「まさかそこまでよくなるなんてな」
「そのこともよかったわね」
「うん、病院に行ってよかったよ」
じいさまは奥さんに笑顔で言いました。
「本当に」
「そうでしょ、無闇に嫌うんじゃなくてね」
「行くべき時は行くことだな」
「そうよ、じゃあこれからもね」
「お風呂に入ってだな」
「病院に行くべき時は行くことよ」
「そうするよ」
じいさまは奥さんに笑顔で言いました、そしてです。
毎日お風呂に入って病院に行くべきだと思った時は行く様にしました、もうすっかりお年寄りのじいさまですが一つ教訓を得たのでした。
ブラウンじいさまのお話U 完
2020・9・30