『アナグマトミーのお話U』
狐どんと穴熊のトミーはとても仲が悪いです。
それで今も道ですれ違った時にお互いのつんと顔を背け合って通り過ぎますが犬のダッチェスはその様子を見て後でトミーのお家に来て言いました。
「君達の仲のことは知っているけれど」
「とても悪いとだね」
「うん、けれど少しはね」
「仲良くすべきっていうのかな」
「そうしたらどうかな」
こうトミーに言うのでした。
「本当に」
「そう言うけれどね、わしと彼はね」
どうしてもとです、トミーはダッチェスに言いました。
「もうこれ以上はないまでにだよ」
「相性が悪いというんだね」
「そうだよ、その仲の悪さたるやね」
「それが僕も知ってるよ」
ダッチェスは不機嫌そうなお顔になって語るトミーに機先を制する様にしてお話しました。
「もうね」
「そうだね、この森でも一番だね」
「僕は基本飼われていてお家から森を見ているけれどね」
「それでもだね」
「君達のことはわかるよ、しかしね」
「それでもだというのだね」
「そう、本当にね」
ダッチェスはトミーにお友達としてお話しました。
「少しは仲良くした方がいいよ、やっぱり仲が悪いよりね」
「いい方が苦労しないね」
「敵がいるとそれだけで苦労するからね」
どうしてもというのです。
「僕も間に入るから今度一緒に飲んでみたらどうかな」
「お酒かい?だったら」
お酒の話を聞くとトミーはそれならと応えました、実はトミーはお酒には目がないのです。
「乗ったよ」
「よし、じゃあ狐どんと三人でね」
「今度飲むか」
「狐どんには僕からお話しておくからね」
ダッチェスは狐どんともお友達です、今回は二匹の共通のお友達として考えてでのことなのです。
ダッチェスはトミーと狐どんを森の居酒屋に呼んでそこで同じテーブルに着いて飲むことになりました。
ダッチェスが間に入って二匹は向かい合いましたが。
お互いお顔を背け合っています、そうしてお互いにはお話をしないでダッチェスとだけお話をします。ダッチェスは二匹と一緒にウイスキーを飲んで干し肉を食べながらそのうえで言うのでした。
「あの、もっとお互いに」
「あんたとはお話するよ」
「こうしてね」
「しかしこいつと話すものがあるか」
「一切ないんだよ」
こうダッチェスに言うのでした、そして。
二匹も飲んで干し肉を食べますがお互いはつーーーんとしたままでした、そうして三匹とももうこれ以上は駄目だという位飲んでです。
そのうえでお開きになりました、トミーも狐どんも確かにかなり酔っていますが意識はあります。それでダッチェスに言うのでした。
「今日は誘いをかけてくれて有り難う」
「お礼は言っておくよ」
「いけ好かない奴も一緒だったが」
「それでもだよ」
こう言ってダッチェスとお別れを告げてそれぞれのお家に戻ります、ダッチェスは二匹と別れて結局二匹の仲が悪いままだったことにがっかりしながらお家に帰りました。ですがその後で、でした。
数日後ダッチェスはまたトミーのお家に遊びに来た時にトミーに紅茶を出してもらってそれを一緒に飲みながらこんなことを言われました。
「また三匹で飲もうか」
「狐どんを入れてかい」
「そうしようか」
「あの時ずっと仲が悪かったじゃないか」
それでがっかりしたことをトミーに言うのでした。
「それでもいいのかい?」
「あんたの気持ちがわかったからね」
ダッチェスの自分への気遣いがというのです。
「それがね、だからだよ」
「まただね」
「三匹で飲もう」
「じゃあ狐どんにもお話しておくよ」
「あいつがいいというのならね」
「狐どんがどう言うかわからないけれど」
それでもとです、ダッチェスはトミーのまた三匹でという申し出に内心これで少しずつ二匹の仲がよくなっていくのならと思いながらでした。
そうして狐どんにもお話してみると狐どんは自分から言うつもりだったと答えました、そしてです。
トミーと狐どんはまたダッチェスを入れて三匹で居酒屋に入りました、そこでは今回はです。
お話しませんがそれでも顔を背け合ってはいませんでした、そうして今回もダッチェスとだけお話をしていますが。
飲むのが終わった時にです、トミーはダッチェスにこう言いました。
「また三匹でな」
「そうしよう」
狐どんも言ってきました。
「是非共」
「それでいいな、あんたも」
「いいとも、ではまた」
「一緒に飲もう」
こう言ってでした、トミーはウイスキーにしこたま酔った状態でお店を後にしました。そして三度目の三匹で飲む時にその打ち合わせの時にダッチェスに言いました。
「ほんの少しずつでも顔を合わせていけばいいか」
「うん、飲みながらね」
「そうしていけばやがては」
「普通の間柄になるかもね」
「そうなるといいな、やはり仲が悪い相手はいないに越したことはないからな」
こうダッチェスに言うのでした、狐どんが大嫌いなトミーですがそれでもダッチェスを通してその大嫌いな気持ちも和らげていこうと思うのでした。
アナグマトミーのお話U 完
2019・10・2