『リビーおばさんのお話U』
リビーおばさんはこの時お仕事から帰ってきたばかりのご主人にこう言っていました。
「あなた最近煙草吸わないわね」
「ああ、止めたんだよ」
ご主人はおばさんにすぐに答えました。
「もうね」
「そうなの」
「仕事の時もそうしているよ」
ご主人はおばさんにまた答えました。
「いつもね」
「そうしてるの」
「いや、やっぱりね」
「やっぱりっていうと」
「煙草は身体によくないからね」
何といってもというのです。
「前から君にも言われていたし同僚にもね」
「言われてなのね」
「止めたんだ、ただね」
「ただっていうと」
「いや、もう完全に吸わない様にしているけれど」
それでもとです、ご主人はリビーおばさんに言うのでした。
「これが結構辛いんだよ」
「吸いたくなるのね」
「うん、結構いらいらしたりね」
「煙草の禁断症状ね」
「禁断症状と言うと怖いけれどね」
「吸いたくなってよね」
「いらいらしたりするんだ」
実際にそうなっているというのです。
「無性にね」
「それは困ったことね」
「どうしたものかな」
「そうね、折角止めようと思って実行に移しているから」
それならとです、リビーおばさんはご主人に言いました。
「これをいい機会にしてね」
「そうしてだね」
「止めるべきだと思うから」
「じゃあ君にいい考えがあるかな」
「こうした時は飴を舐めるといいっていうわ」
「飴なんだね」
「そう、お口が寂しいならね」
煙草を吸わなくてです。
「それならよ」
「飴を舐めるといいんだ」
「それに飴は糖分が入ってるでしょ」
「糖分がだね」
「甘くて美味しいし」
このこともあってというのです。
「それでよ」
「いらいらも解消してくれるんだね」
「ええ、そうなると思うから」
だからだというのです。
「ここはね」
「飴を舐めるといいんだね」
「そうしましょう、丁度いい飴があるわ」
リビーおばさんはキッチンから小さな丸い飴が入った袋を出してきました、そうしてご主人にそれを差し出して言いました。
「これを舐めてね」
「それを一粒ずつ舐めて」
「そうしてね、煙草を吸いたいって思ったら」
その時にというのです。
「舐めればいいわ」
「そうだね、じゃあこれからはね」
「飴を舐めてて」
「禁煙をしていくよ」
ご主人もこう答えてです、早速飴を舐めはじめました。家族で晩ご飯を食べた後の一服の時も舐めて夜の間煙草を吸いたいと思えばです。
飴を舐めました、それは数日続いてです。
ご主人はリビーおばさんにお家で言いました。
「うん、何かね」
「煙草を吸いたくなくなってきたわね」
「そうなってきたよ」
こう奥さんに言うのでした。
「いい感じだよ」
「それは何よりね」
「お仕事の時もね」
お家を出て働いている時もというのです。
「その時もね」
「煙草を吸いたいと思えば」
「舐めているよ」
「それで煙草を吸っていないのね」
「そうなんだ、ただね」
「ただ?」
「むしろ最近はね」
煙草を吸わなくなってというのです。
「飴を舐めていると」
「今度は飴なの」
「そう、いつも舐める様になったから」
煙草を吸いたい、そう思った時にです。
「飴から離れられなくなったのよ」
「飴中毒ね」
「一日二十個は舐めているよ」
それだけの数の飴をというのです。
「そうなったよ」
「そうなの、けれどね」
「けれどっていうと」
「飴だと煙草を吸うよりもずっと安いから」
「飴ならいいんだ」
「ええ、後は太らない様にして」
飴の糖分で、です。
「それと歯をよく磨いてね」
「ああ、飴の糖分でね」
「そちらにも気をつけないとね」
「そうだね、じゃあね」
それならとです、ご主人は奥さんの言葉に頷きました。
そしてです、こうも言ったのでした。
「毎日寝る前、あとお昼ご飯を食べて朝ご飯を食べても」
「いつもね」
「歯を磨いて」
「虫歯には気をつけてね」
「あと運動もしないといけないね」
ご主人はさらに言いました。
「これまで以上に」
「じゃあ毎朝か毎晩かジョギングする?」
「そうしようか、煙草を止めたらね」
「一気に変わりそうね」
「そうだね、煙草を止めるだけと思ったら」
「それがね」
まさにとです、リビーおばさんはご主人に微笑んで言いました。
「どんどん変わりそうね」
「うん、これをいいことにするかどうかは」
「これから次第ね」
「そうなるね」
夫婦でお話をしてでした、リビーおばさんはご主人に袋に入った一粒のキャンディを差し出しました。ご主人もその飴を受け取ってお口の中に入れて美味しく舐めるのでした。
リビーおばさんのお話U 完
2018・12・2