『妹達のお話』
フロプシー、モプシー、カトンテールはピーターラビットの妹達です。家族と一緒に大きなもみの木の下の砂の穴に住んでいます。
ですが三匹でお家の中でこんなお話をしていました。
「もっとね」
「そうよね、もみの木よりもね」
「いい木の下で住みたいわね」
もみの木の中でお話をするのでした。
「もっとね」
「いい木があるわよね」
「そこで住みたいわね」
「何を言ってるの」
その三匹にお母さんが怒った声で言いました。
「もみの木はとてもいい木よ。これ以上いい木はないのよ」
「もっといい木があるわよ」
「そうよ、もみの木よりもね」
「絶対にいい木があるわ」
三匹はお母さんに口ごたえをして言うのでした。
「もっとね」
「絶対にあるわよ」
「もみの木よりもいい木が」
「じゃあどんな木がいいのよ」
お母さんは口ごたえをする三匹に言いました。
「一体」
「杉なんかいいわよね」
「そうよね」
「杉の方がいいわよね」
三匹が出したのは杉でした、それで杉の下に穴を掘って住もうと三匹でお母さんに言います。ですがそれでもです。
お母さんはあくまでです、三匹に言うのでした。
「はっきり言うわ、もみの木以上にいい木はないわよ」
「杉の方が恰好いいわよね」
「恰好いいわよね」
「緑色だって奇麗だし」
「そんなにいいのなら杉の木に三匹で住みなさい」
お母さんはこれまで以上に怒って三匹に言いました、すると三匹もです。
余計に怒ってです、お母さんに言い返しました。
「わかったわよ、じゃあね」
「私達だけで杉の木の下に住むわ」
「そうするわ」
「そうしなさい」
怒ったまま言うお母さんでした、こうしてです。
三匹は怒ってお家を出てました、そうして三匹でお話をするのでした。
「何よ、もみの木が一番いいとか」
「そんな筈ないわよね」
「杉の木の方がいいわよ」
三匹は実は杉の木についてよく知らないのですがお母さんが言ったのでそれで怒って言い返してそれがそのまま定着しているのです。
「そんなこともわからないなんてね」
「お母さんの方がおかしいわよ」
「全くよ」
こんなことをお話しつつです、そのうえで。
三匹で森の中にある一番大きな杉の方に行きます、ですが。
その杉の木の前に来たところで、です。三匹のところに大きな狸の日本の着物と袴お爺さんが来ました。そのお爺さんを見て三匹はまずはこう思いました。
「アナグマさんね」
「アナグマのお爺さんね」
「日本の服を着た」
「ははは、わしは狸だよ」
お爺さんは三匹に笑って答えました。
「アナグマに似ているがね」
「あっ、違うんですか」
「お爺さんはアナグマさんじゃないんですか」
「狸なんですか」
「似ているけれど違うんだ」
こうお話するのでした。
「わしはね」
「あっ、そうなんですか」
「お爺さんは狸なんですか」
「そうだったんですね」
「そうだよ、まあアナグマ君とは同居しているがね」
お爺さんは笑って三匹にお話しました。
「食いものはわしが自分で手に入れてお金も稼いでいるしな」
「そうなんですね」
「お爺さんはアナグマさんと同居されてるんですね」
「自分のことは自分でされて」
「そうじゃよ、日本から移住してきたんじゃよ」
さらにお話をするお爺さんでした。
「ふと他の国に住みたくなってな」
「だから日本の服なんですね、着物と袴で」
「足も足袋と草履ですし」
「素敵な恰好ですね」
「そうじゃろ、わしはこの服が大好きじゃ」
着ている着物がというのです。
「それでこっちでも来ておるのじゃよ、移住してきてもな」
「そうなんですね」
「それでこっちでも楽しくですか」
「過ごされていますか」
「うむ、しかしイギリスは杉が少ないのう」
ふとです、狸のお爺さんは自分達の傍にある杉の木を見上げてこんなことを言いました。
「それは何よりじゃ」
「えっ、何でなんですか?」
「杉の木が少なくていいんですか?」
「それはどうしてですか?」
「うむ、杉の木は春になると花粉を出してくしゃみをさせるのじゃ」
お爺さんは三匹の子兎達に杉のこのことをお話しました。
「鼻がつまって目にもきて大層辛いそうじゃ」
「へえ、そうなんですね」
「杉の木の花粉で、ですか」
「そんなことになるんですか」
「そうじゃ、それで杉の木が少ないことはな」
このことがというのです。
「よいことじゃ」
「ううん、そうなんですか」
「杉の木にそんなことがあるんですか」
「花粉でくしゃみとかが出るんですか」
「だから少ないことは何よりじゃ。日本は杉の木が多くてのう」
このことを笑ってお話するお爺さんでした。
「困っておる者も多いぞ」
「そんなことがあるなんて」
「思いも寄りませんでした」
「杉の木に」
「そうなのじゃよ、まあこの国は杉が少ないから大丈夫じゃ」
その杉の木がというのです。
「安心してよい。ではな」
「はい、それじゃあ」
「今日は有り難うございました」
「またお会いしましょう」
三匹はお爺さんに礼儀正しく挨拶をして別れました、ですが。
三匹だけになってです、こんなことをお話しました。
「杉の木にそんなことがあるなんてね」
「花粉でくしゃみが出るとか」
「そんなことがあるなんて」
「くしゃみが出るとか嫌だし」
「私もよ」
「私だってそうよ」
三匹共思うことは同じでした。
「だったらね」
「杉はよくないわね」
「そうよね」
「まだもみの木の方がいい?」
「もみの木でくしゃみが出ることはないし」
「それじゃあね」
こうお話するのでした、そしてです。
三匹は杉の木よりももみの木の方がいいと思いなおしました、日本から来た狸のお爺さんのお話を受けて。そうして。
お家に帰ってです、お母さんにお爺さんに言われたことをお話してお母さん兎にこんなことも言ったのでした。
「やっぱりもみの木の方がいいみたい」
「花粉が出ないから」
「それだけにね」
「そうでしょ、もみの木が一番なのよ」
お母さんもこう三匹にお話しました。
「お家がね」
「私達のお家が一番なのね」
「もみの木の下が」
「そうなのね」
「こんなに広くて奇麗で住みやすいお家は他にはないわ」
到底とも言うお母さんでした。
「そのことがわかったわね」
「うん、まさかと思ったけれど」
「お家が一番なのね」
「杉の木の下にあるより一番いいのね」
「そうよ、怖い生きものも来ないし」
このお家にはというのです。
「余計にいいのよ」
「そうよね、怖い生きものは来ないし」
「あのマクレガーさんだって来ないしね」
「このお家にはね」
「だったらいいのよ、広くて奇麗で住みやすくて安全なら」
この四つが揃っていればというのです。
「最高のお家なのよ、じゃあ今からね」
「うん、晩御飯の用意ね」
「お兄ちゃんもそろそろ帰ってくるし」
「お父さんもお仕事から帰ってくるし」
「皆で支度をしましょう」
晩御飯のそれをとです、こうもお話してでした。
三匹の子兎達はお家に戻ってお母さんの家事を手伝うのでした、戻ってきたお家が一番だということをわかってから。
妹達のお話 完
2018・3・7
うんうん、お家が一番落ち着くよな。
美姫 「何事も慣れ親しんだ物が良いのよ」
まあ、それでも色々と考えてしまうんだろう。
美姫 「仲の良い姉妹にほっこりしたわ」
今回も投稿ありがとうございます。
美姫 「ありがとうございました」
ではでは。