『ピーターラビットのお母さんのお話』





 ピーターラビットのお母さんはお店で手袋や飾り、お薬や煙草等をご主人と一緒に売って暮らしています。
 お店自体はわりかし繁盛しています、ですがお母さんはお店を閉めてからお店の売り上げの状況を書いている帳簿をチェックしてからお父さんに言いました。
「煙草の売り上げがまた落ちてるわ」
「えっ、またなんだ」
 お店の後片付けをしているお父さんはお母さんの言葉にお顔を向けて聞き返しました。
「また煙草の売り上げが落ちたんだ」
「そうなの、何かもう煙草はね」
「どんどん売れなくなっているね」
「パイプも葉巻もね」
 普通の紙煙草だけでなくというのです。
「とにかく煙草は全部駄目よ」
「どれだけ売れなくなっているのかな」
「もう一番売れていた時と比べて九割よ」
「九割って相当だね」
「それに合わせて仕入れも減らしてきたけれど」
「そんなに売れていないならね」
「ええ、もううちで売るのを止めようかしら」
 こう言うのでした。
「煙草はね」
「そうするんだ」
「ええ、バウンサーさんは買ってくれるけれど」
 それでもと言うお母さんでした。
「けれどね」
「もう、だね」
「売れないから」
 だからだというのです。
「仕入れるのは止めようかしら」
「そう言われると僕も吸わないしね、煙草は」
 お父さんもなのでした。
「それならね」
「バウンサーさんの分だけ仕入れて」
 この人は定期的に買ってくれるからです。
「もうね」
「他の人の分はだね」
「もう仕入れないでね」 
 そうしてというのです。
「これからは」
「そうするんだ」
「他にうちで煙草買ってくれる人もいないし」
「他には誰もいないんだね」
「私の知ってる限りではね」
「ううん、じゃあね」
 お父さんはお母さんのお話を聞いてです、一緒にお店をやっている立場からお母さんに言いました。
「もう仕入れはね」
「バウンサーさんの分だけにしてね」
「それでいこうか」
「その分他のものを入れましょう」
「じゃあ何を入れようかな」
「そのことはじっくり相談して決めましょう」
 こうしてです、お二人で煙草の代わりに仕入れていくものやお店に出すものを考えていきました。そうしてお店には子供用の手袋やアクセサリーを増やしていくことになったのですが。
 バウンサーさんはお店の中に入って煙草を買おうとしてお店の中にある煙草の数と種類も減っているのに気付いてカウンターにいるピーターラビットのお母さんに言いました。
「奥さん、煙草が随分と減ったね」
「バウンサーさんの分は置いてますよ」
 お母さんはバウンサーさんにあっさりと答えました。
「ですからご安心下さい」
「ああ、わしが喫う分はだね」
「ちゃんとありますので」
「そうなんだね、しかしね」
「しかしといいますと」
「煙草のスペースが随分と狭くなってね」
 それでと言うのでした。
「寂しくなったね」
「売れないですからね」
 それでと答えたお母さんでした、ピーターラビットのお父さんはそのお店の中で品物やお店の中のお掃除をしています。
「ですから」
「それでなんだ」
「はい、もう煙草はです」
「置いていないんだね」
「そうしています」
「ううん、昔はもっとあったのに」
 バウンサーさんは残念そうなお顔でこうも言いました。
「それがだね」
「もうバウンサーさんの分だけですね」
「つまりこの辺りで煙草を喫うのは今はわしだけなのかな」
「そうなりますね」
 お母さんの知る限りはです。
「うちに来てくれるお客さんでは少なくとも」
「そんなに少ないんだね、煙草を喫う人は」
「今では」
「そしてその分だね」
「他のものを用意してますので」
 子供用の品が特に多くなっています。
「お子さん達へのお土産にどうぞ」
「じゃあ手袋を買っていこうかな」
 こう言ってそうしてでした、バウンサーさんは実際に子供達の手袋も買ってお家に帰りました。そしてバウンサーさん以外にはでした。
 誰も煙草を買いませんでした、それでお母さんはあらためて思うのでした。
「本当にもう煙草はね」
「買う人が殆どいないんだね」
「ええ、バウンサーさん以外はね」
「じゃあもう煙草を仕入れるのを止めようか」
 買う人が一人しかいないならとです、お父さんはお母さんに提案しました。
「そうしようか」
「いえ、それはよくないわ」
「買ってくれる人がいたらなんだ」
「その品をお一人でもね」 
 それならというのです。
「買って喜んでくれるから」
「だからなんだ」
「仕入れていきましょう」
「そうしていくんだ」
「ええ、お一人でもいるならね」
 それならとです、またお話したお母さんでした。
「そうしていきましょう」
「バウンサーさんの為にだね」
「ええ、それじゃあ駄目かしら」
「そうだね」
 お父さんはお母さんに言われて思うのでした。
「それじゃあね」
「ええ、あなたもそれでいいわね」
「それならそうしよう」
「煙草はバウンサーさんの為に仕入れていくわ」
 それは続けるというのです、そしてバウンサーさんもでした。
 お店に来ていつも煙草を買うのでした、それだけでなく奥さんや子供達の分まで買ってお母さんに言うのでした。
「今日は妻の為に買うよ」
「煙草だけでなくですね」
「そう、今日はね」
 お店の品を見て言うのでした。
「頭への飾りを買うよ、耳に付けるものを」
「耳にですか」
「そう、ノウサギのね」
 あの長い耳にというのです、当然バウンサーさんにしてもお母さんお父さんにしてもノウサギなので耳は長いです。
「それを買っていくよ」
「では」
 お母さんも応えてでした、バウンサーさんに買ってもらいました。そしてバウンサーさんに煙草や飾りを買ってもらってからです。
 そうしてです、この日のお店を閉めた後でお母さんはお父さんに言いました。
「バウンサーさんは煙草以外にも買ってくれるから」
「だからなんだ」
「ええ、煙草を置いているとね」
「それだけでは終わらないんだね」
「他のものも売れるからね」
「煙草はプラスの利益にもなっているんだね」
「仕入れの分以上のね」
 まさにそうなっているというのです。
「そう考えるとやっぱりね」
「品は一人でも買う人がいるとだね」
「いつも買ってくれる人がおられるならね」
 それならというのです。
「置いておいた方がいいみたいね」
「そうなんだね」
「だからこれからも置いていきましょう」
「バウンサーさんの為にもお店の売り上げの為にも」
「是非ね」
 笑顔で、でした。お母さんはお父さんに言いました。そうして買う人がもうバウンサーさんしかいなくなった煙草をお店に置いていくのでした。


ピーターラビットのお母さんのお話   完


                  2018・1・10



今回はお店でのお話か。
美姫 「一人でも利用者がいるならと」
優しいだけじゃなく、ちゃんと売り上げも考えての事というのが、しっかりしているよな。
美姫 「確かにね。今回の話も楽しませてもらいました」
投稿ありがとうございました。
美姫 「ありがとうございます」



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