『町鼠ジョニーのお話』
ジョニーは自分の住処である町に戻っていました、ですがそれから歳月が経ってです。お友達の黒鼠のヘンリーに言いました。
「実は昔村に行ったことがあるんだ」
「村っていうと?」
「ここから結構行った森や湖が傍にあるね」
「自然の場所にだね」
「うん、人間ものどかな農家ばかりでね」
「こんなにごたごたしていないんだね」
ヘンリーはここで周りを見回しました、周りはとても人が多くて皆右に左に動いています。レストランの裏ですが何かと大変な状況です。ジョニー達はその裏でレストランの残飯を拝借してそれで御飯にしているのです。
「そうなんだね」
「静かで落ち着いた場所だよ」
「それは何より。けれどいきなりその村の話をしたけれど」
「そのことだね」
「一体どうしてなのかな」
「うん、どうしたもこうしたもなくてね」
ジョニーは残飯の中から見付けた胡桃の粒を齧りながらお話しました。
「またそこに行ってみたくなったんだ」
「そうなんだ」
「もう二度と行きたくないって思っていたけれどね」
ジョニーにとっては自分に合わない場所でした、それでそう思ったのです。
「今思うといい場所も多くて」
「それでだね」
「また行きたくなったんだ」
その村までというのです。
「旅行にね」
「じゃあ今から行くのかな」
「そうしようかな」
実際にというのでした。
「思い立ったらだしね」
「じゃあ僕も一緒に連れて行ってくれるかな」
ヘンリーはジョニーのお話を聞いてこう申し出ました。
「そうしてくれるかな」
「君も行きたいんだ」
「お話を聞いたら興味を持ったよ」
だからだというのです。
「それでね」
「それじゃあ」
「うん、一緒に行こうよ」
「よし、じゃあ今から村まで行く車に乗ってね」
人が動かすそれにというのです。
「行こうね」
「よし、それじゃあね」
「車に乗っても隅っこにいれば見付からないよ」
「人間達にはね」
「だから何の問題もないから」
「今から村に行くんだね」
「そうしよう」
ジョニーはヘンリーにケーキの残りを渡しながら言いました。
「お弁当とかも持って」
「お弁当ならもうね」
ヘンリーはジョニーの言葉を受けてです、明るく応えました。
「残飯から何でも持って行って」
「そうしてだね」
「お弁当にしよう」
「よし、じゃあローストビーフにコールドチキン」
「胡桃にアーモンドにチーズにね」
「ピクルスやシチューのお野菜の残り」
「何でもあるよ」
お弁当として持って行けるものはというのです。
「じゃあ何でも持って行って」
「持って行けるだけね」
「水筒には紅茶やジュースを拝借して」
「少しだけね」
人間達から見れば気付かない位です。
「そして行こう」
「お弁当はたっぷり」
「それだけ持って行ってね」
二匹で楽しくお話してでした、そのうえで。
それぞれお弁当に飲みものも持って行ってでした、そうしてなのでした。
ジョニーとヘンリーは一緒に村に行く車に乗りました、二匹は車にいる間はじっとしていて人間達には見付からずにしていてです。
村に着くとさっと車から出てでした、村に降り立ちました。ヘンリーは村に降り立つとすぐに周りを見回して隣にいるジョニーに言いました。
「確かに木が多くて建物も少ないね」
「それがこの村なんだ」
「そうだね、空気も奇麗だね」
「のどかな場所だよ」
「いい場所だと思うけれど」
「ところが前に来た時は馴染めなかったんだ」
ジョニーはヘンリーに残念そうにお話しました。
「これがね」
「そうだったんだ」
「うん、全体的にね」
「それで長い間来なかったんだね」
「二度と行くものかって思ったよ」
ジョニーはその時のことを思い出しつつヘンリーにお話しました。
「それでずっと来ていなかったんだ」
「それを思い立って」
「ふと行きたくなってね」
「成程ね」
「いや、まさかこんな気持ちになるなんてね」
ジョニーはヘンリーにしみじみとした口調でお話していきます、二匹はお話をしつつジョニーが案内する場所を歩いていきます。
「不思議だよ」
「気が向いたっていうのかな」
「そうそう、気が向いたんだよ」
「たまたま」
「そうだったんだ、行きたくないって思っていたのに」
その筈がだったのです。
「いや、不思議だよ」
「どうしてそんな気持ちになったのか僕はわからないけれど」
ヘンリーはジョニーと一緒に歩きつつ言いました、彼に案内を受けながら。
「それでもこうして案内してくれるのはね」
「嬉しいんだね」
「とてもね」
実際にというのでした。
「僕にとってはね」
「そうなんだね」
「うん、そして僕から見たらね」
ヘンリーはジョニーが案内してくれた畑を見ました、マクレガーさんの畑は大きな犬がいて何か怖そうなお爺さんとお婆さんがいますが二匹には気付いていません。その犬や人間達も見つつそうして言うのでした。
「ここはいい場所だよ」
「そうなんだね」
「こんな畑はじめて見たよ」
「街の畑って街の端の方にやっとあるからね」
「そうそう、本当にね」
「こんなに広くてのどかな畑はね」
「街にはないよ」
そうだというのです。
「とてもね」
「だからだね」
「うん、いいよ」
とてもというのです。
「新鮮なお野菜の葉が見られるしね」
「奇麗な緑色だね」
「如何に美味しそうだよ」
「うん、けれどね」
ジョニーは犬やお爺さん、お婆さん達を見てからヘンリーに囁きました。二匹で一緒に畑の中を歩き回りつつ。
「ここでは食べない方がいいよ」
「そうなんだ」
「うん、若し犬や人間達に見付かったら」
そうなってしまえばというのです。
「怖いからね」
「そうだね、ここでは食べない方がいいね」
「後で市場に案内するから」
「この村のだね」
「森の方にあるんだ」
「じゃあ森の方に行って」
「買って食べようね」
こう言うのでした。
「そうしようね」
「お弁当はもう食べちゃったしね」
「うん、車の中でね」
ついつい食べ過ぎてそうしてしまったのです、ついでに言いますと水筒の中の紅茶やジュースも飲んでしまいました。
「それじゃあね」
「一緒にね」
こうお話してでした、畑では見ているだけで。
そしてそのうえで、です。二匹はジョニーの案内のうえで村の市場に行きました。森の中のそこ行きますと色々なお店が並んでいてです。
沢山の生きもの達がお店を見て回って買いものをしています、ヘンリーは市場の品物達を見て言いました。
「うん、都会とはね」
「また違うものが売ってるね」
こうジョニーに言うのでした。
「食べものも服もね」
「何でもだね」
「うん、街にないものも多いね」
「何かここだけにしかない」
それこそというのです。
「そうしたものもあるね」
「食べものでもだね」
「あるね、新鮮なものが多いね」
「森や湖で採れたばかりのね」
「僕達の街だとね」
「色々なものがあっても」
「こうしたものはないよ」
ヘンリーは今はです、採れたてのお豆を見ています。まさに畑で採れたばかりのそれをです。
「とてもね」
「そうなんだよね」
「こうしたものを見てもね」
それこそというのです。
「いいね」
「そうなんだね」
「買ってみるね」
実際にでした、ヘンリーはそのお豆を買ってです。齧ってみました。そうしてジョニーに対して言うのでした。
「新鮮で美味しいよ」
「そうだね、確かに」
ジョニーも買って食べてみました、そうしてヘンリーに言いました。
「美味しいね」
「そうだね」
「新鮮でね」
「他の食べものも新鮮だし。木造のお店が並んでいるのも」
出店達自体も見て言うのでした。
「風情があっていいよ」
「都会だとコンクリートだからね」
「コンクリートは頑丈であれはあれでいいけれど」
「木造には木造のよさがある」
「だからね」
それでというのです。
「いいと思うよ」
「言われてみればそうだね」
ジョニーはヘンリーのその言葉に頷いて応えました。
「確かにね」
「そうだよね」
「うん、コンクリートもいいけれど」
「木は木でね」
「そのよさがあるね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「道も土の道でね」
「石やコンクリートでもない」
「それもいいね」
「自然な感じでだね」
「確かに靴も汚れて雨が降ったら泥になりそうだけれど」
それでもというのです。
「土は土でね」
「いいんだね」
「歩きやすくてね」
石やコンクリートの道もというのです。
「僕は気に入ったよ」
「そうだね、自然だね」
「そう、自然がいいからね」
だからとです、ヘンリーはジョニーに笑顔でお話しました。
「この大自然な感じが」
「ヘンリーは自然が気に入ったみたいだね」
「かなりね、じゃあ次は」
「うん、湖の方に行こう」
ジョニーはヘンリーに今度はこちらに案内することにして言いました。
「そうしよう」
「次はだね」
「そちらだよ」
笑顔でお話しました。
「そちらでいいよね」
「街のお池とはまた違うね」
「全然違うよ」
そこはしっかりと答えたジョニーでした。
「ここが気に入ったならきっと気に入るよ」
「それじゃあね」
「うん、次はね」
「湖だよ」
「それじゃあね」
こうお話してでした、二匹で。
湖の方に行きました、湖はとても広くて対岸が遥か彼方に見えます。水面は青く澄んでいて周りには緑の水草があります。
青くきらきらと光っていてそれでいてとても静かな湖を見てです、ヘンリーは感嘆の言葉を出しました・
「凄いね」
「この湖がだね」
「うん、こんな場所はじめて見たよ」
「街にはお池や川があるけれどね」
「溝も下水道もね」
「けれど確かにこうした場所はないね」
「そうだよね、こんなとても広くて青くて静かな場所はね」
とてもというのです。
「ないよね」
「だからだね」
「見られてね」
心から言うのでした。
「本当に嬉しいよ」
「うん、僕もね」
「ジョニーは前に観たよね」
「前はいい感情がなかったんだ」
ジョニーもその湖を観ています、そのうえで隣にいるヘンリーに言いました。
「だからすぐに逃げる様に帰ったよ」
「街にだね」
「そうしたよ、けれどね」
「今はだね」
「ずっと嫌いだったんだ」
「この村がだね」
「二度と来たくないって思っていたよ」
そこまでだったというのです。
「本当にね、けれどね」
「今はだね」
「来てよかったと思ってるよ。前に来た時は嫌いになったけれど」
「今はだね」
「うん、好きになったよ」
そうなったというのです。
「今はね」
「そうなったんだね」
「ふと思ったのが今も不思議だよ」
またここに来ようとです。
「その時も嫌いだったのにね」
「それは神様が知らせてくれたんじゃないかな」
「神様が?」
「だって嫌いになるより好きになる方がいいよね」
「何に対してもね」
「だからじゃないかな」
「神様がそう導いてくれたのかな」
考えつつです、ジョニーは言うのでした。
「僕に嫌いなものを減らして好きなものを増やそうって」
「僕はそう思ったけれど」
「じゃあそうなのかな」
「だとすれば嬉しいね」
「そうだよね、それに若しかしたら」
ヘンリーは湖を観ながらです、ジョニーにこうも言いました。
「君と一緒にいる時に神様の思し召しがあったのなら」
「思いついたのは一緒に食べている時だったしね」
「御飯をね」
「だったら」
「僕もこの村に来て」
ジョニーと一緒にです。
「そうしてこの村の自然の素晴らしさを知る様になる」
「そうなるべきだって思われてかな」
「神様は君に思いつかせたのかも知れないね」
「そう考えると神様は凄いね」
「全く以てそうだね」
「本当にね」
二匹でしみじみとしてお話をするのでした。
「自然の素晴らしさに気付かせ知らせてくれる」
「この村にある自然達を見てね」
「そのうえで知らせてくれる」
「普通にしていたら気付かないけれど」
街にいてはです、やっぱり街はどうしても自然が少ないです。人が沢山いて道は整備されていてコンクリートの建物が林立していますが。
「ここに来ればわかる」
「気付くね」
「実際にこの目で見るから」
「直接感じるから」
二匹は湖の青くその中に銀色に煌く波を静かに漂わせている水面を見ています、そのうえでお話をしています。
ジョニーはその水面を見ながらです、ヘンリーにあらためて言いました。
「僕本当にここには二度と来ないって思っていたんだ」
「もう絶対にだね」
「街から出ないって決めていたんだ」
「それがだね」
「本当に君を連れて来たのはね」
「神様の思し召しとしか思えないね」
「全くだよ」
しみじみとして言うのでした。
「僕もね」
「そうだよね」
「うん、それじゃあ神様の思し召しに感謝して」
「これからもだね」
「時々ここに来ようね」
「一緒にね」
「そして楽しもうね」
こうお話するのでした。
「是非ね。ただね」
「ただ?」
「うん、何かこの水面を見ていたら」
ジョニーはヘンリーに言うのでした。
「舟に乗って遊びたくならない?」
「言われてみれば」
ヘンリーはジョニーのその言葉に頷いて応えました。
「この湖でそうしたらいいね」
「そう思うよね」
「うん、そうだね」
「それじゃあボート乗り場を見付けて」
「そこでボートを借りてね」
「一緒に湖出て遊ぼう」
「そうしよう、それで漕ぎながらね」
そうしてというのです。
「水面をじっくり観よう」
「それがいいね、他にも色々遊んで」
「そうしてだね」
「満足して街に帰ろう」
「そうしようね」
これからも楽しく遊んでというのです、そして実際にでした。
二匹は湖の周りを歩いてそうしてボート置き場を見付けました、そこですぐにボートを借りて舟遊びをしてです。
他にも色々な遊びをして村の自然を満喫してでした、二匹は街に帰る時になりましたが。
その時にです、ジョニーはヘンリーに笑顔で言いました。
「また一緒にね」
「うん、来ようね」
ヘンリーも笑顔で応えました、そうして二匹で街まで行く車に乗ってです。幸せな気持ちのまま帰るのでした。
町鼠ジョニーのお話 完
2017・1・9
町鼠が自然を満喫と。
美姫 「確かに街の方が何かと便利なんだけれどね」
自然も良いもんだしね。
美姫 「そうよね。友達と二人でちょっとした旅行ね」
だな。今回もほのぼのとした感じで。
美姫 「ちょっとのんびりとした気分になったわね」
うんうん。投稿ありがとうございました。
美姫 「ありがとうございます」