『穴熊のトミーのお話』
穴熊のトミーの服はいつも汚れています。
その汚れている服を見てです、彼のお友達の狐どんは呆れて言いました。
「いつも思うことだがね」
「服が、だね」
「そうだよ、汚れ過ぎているよ」
こうトミーに言うのでした。
「泥でね」
「わしの家は穴でね」
穴熊だからです、トミーは自分で掘った穴に住んでいるのです。それで自分が掘った穴に入る時になのです。
「雨が降るとね」
「穴の入口が泥で汚れてだね」
「それでだよ」
「あんたの服は汚れているのか」
「そうだよ、よくね」
「理由はわかったよ」
狐どんはトミーのお話を聞いて頷きました、ですが。
そのうえで、です。トミーにあらためて言いました。
「しかしだよ」
「服が汚れたままはというんだね」
「それはよくない」
狐どんはトミーに清潔という観点から言うのです。
「いいかい、服はだよ」
「いつもだね」
「清潔にしておかないと」
「服もだね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「いつも奇麗にしておかないと」
「しかしね」
「入口がだね」
「そうだよ、穴だからね」
穴故にというのです。
「入口がどうしても汚れてしまうんだ」
「理由はわかった、それならだよ」
「それなら?」
「わしが協力しよう、そしてだ」
狐どんはトミーにさらに言いました。
「兎のバウンサーさんやピーターの親父さんも呼ぼう」
「兎の人達もかい」
「そうだ、三人いればだ」
まさにというのです。
「何とやらの知恵というからな」
「成程な」
「とにかく服が汚れたままなのはよくない」
狐どんは紳士なので服装のことは五月蝿いです、とにかくいつも清潔にしてそのうえできちんと整えていないと気が済まないのです。
だからトミーにもです、こう言います。
「理想はアイロンもいつもかけてだが」
「わしは肉体労働でね」
「それはわかってるさ、しかしね」
「しかしだね」
「洗濯をして常にね」
それこそというのです。
「清潔にしてこそだよ」
「だから泥なんかは」
「もっての他だよ、ではね」
「うん、あんたとバウンサーさん達とだね」
「何とかしよう、言っておくが友人として見ていられず行うから」
そうしたものだからというのです。
「お金はいい」
「太っ腹だね」
「精々ウイスキー、最高級のスコッチで我慢しよう」
「わしが持っているのを知っているのか」
「まさかと思ったが持っているのか」
「むっ、カマをかけたか」
「そうとも、そしてその通りだったな」
狐どんはにやりとしてトミーに返しました。
「持っていたな」
「ううむ、してやられたな」
「してやられたことはともかくとしてだ」
「服のことはか」
「そうだ、しっかりとしないと」
よくないというのです、いつも泥だらけだとです。
かくして狐どんはバウンサーさんとピーターラビットのお父さんにトミーの家の前に集まってもらいました。そしてです。
三匹でトミーのお家の玄関を見ましたが。
まずはバウンサーさんがです、顔を曇らせて言いました。
「こんなのだとね」
「全くですね」
ピーターのお父さんもいいます、その玄関を見て。
「玄関の前がくぼんでいて」
「雨になるとだよ」
「すぐにこのくぼみに水が溜まって」
「そこに足を入れたら」
「足も汚れますし」
それにです。
「服だって」
「汚れることも当然だよ」
「全くですね」
「これは駄目だよ」
バウンサーさんはパイプで煙草を楽しみつつ言います。
「道理でトミーの服はいつも汚れている筈だよ」
「全くです」
「それにね」
しかもとです、バウンサーさんはさらにお話しました。
「玄関は只の穴で」
「扉もないですから」
「雨が入ってきて家の中にまで泥が入るから」
「余計に駄目ですね」
「彼はそうしたことには無頓着なんだよ」
狐どんが二匹にお話します。
「どうにもね」
「ううん、無神経なのかな」
「そうですね」
「こうしたこともしっかりしないと」
「駄目ですね」
「穴を深く掘ってその奥に住んでいたら雨は入らないし濡れない」
そこまで入ればです。
「もう快適だからとね」
「そして汚れてもだね、服が」
「気になるタイプじゃなくて」
「そこはもうわしが注意したよ」
狐どんは二匹の兎にお話しました。
「ちゃんと洗濯もする様に、そのうえで」
「お家の前がくぼんでいて」
「玄関もなくて」
「家に入っても泥で汚れる」
「そうなってしまうのですね」
「そうだね、じゃあここは」
狐どんも言いました。
「くぼみを埋めて玄関を作る」
「そうしよう」
「それで問題ないですね」
バウンサーさんとピーターのお父さんは狐どんの言葉に頷きました。
「では早速」
「その二つにかかりましょう」
「全く、トミーときたら」
狐どんはトンカチや鋸を取り出しつつぼやきました、玄関の扉を木で作る為です。家に雨が入って家の前が濡れない様に。
「いい加減なものだよ」
「おおらかどころじゃないね」
「服のことに無頓着過ぎますね」
「服に泥があっても平気とは」
「しかもお家に玄関がなくてもいいなんて」
バウンサーさんとピーターのお父さんもいいます。
「全く以て」
「困ったことですね」
「全くだよ、まあお礼のスコッチはちゃんと頂いて」
もう玄関の扉を作りだしている狐どんでした。
「仕事が終わったら皆で飲むとしよう」
「スコッチか、いいな」
「それは楽しみですね」
兎達はくぼみを埋めています、雨になると泥水が溜まるそこを。
「ではスコッチの為にも」
「頑張りましょう」
三匹で力を合わせてトミーの家の玄関を何とかしました、くぼみは埋められて玄関が作られました。しかもそれだけではなく。
「絨毯もかい?」
「敷いたよ」
お仕事から帰ってきたトミーにです、狐どんはお話します。バウンサーさんとピーターのお父さんも一緒です。
「足の裏の泥を拭く為のね」
「家に入ってだね」
「そうだよ、これでね」
「もうわしの服が泥で汚れることはないか」
「少なくとも雨に家に入る時は」
その時はというのです。
「もうないよ」
「成程ね」
「あとくれぐれもだよ」
狐どんはトミーに忠告するお顔でさらにお話しあmす。
「服が汚れたら」
「洗濯とか」
「洗濯機は家にあるしね」
「使って下さいね」
バウンサーさんとピーターのお父さんがトミーのお家の中にある洗濯機のことをお話しました。
「それを使ってだよ」
「汚れたらすぐに洗濯ですよ」
「ううん、肉体労働だと服は汚れるもの」
またこのことを言うトミーでした。
「そういうものだけれど」
「それは作業服でね」
「私服は別ですよ」
「作業服も時々洗うね」
「それで汚れを落としますから」
だからだというのです。
「出来るだけね」
「奇麗にして下さいね」
「わかったよ、わしにはどうも面倒臭いが」
だから服も汚れたままだったのです、玄関がそのままだった理由もここにあります。
「しかし皆がそう言うのならね」
「しっかりとね」
「やって下さいね」
「わかったよ」
嫌そうですが頷きはしたトミーでした。
「これからは」
「くれぐれもだよ、服はいつも奇麗に」
狐どんはまたトミーに忠告しました。
「わかったね」
「さもないとまたこうして言われるね」
「何度でも言わせてもらうよ」
トミーの服が汚れているのならというのです。
「常に」
「友達だからかい」
「そうだよ、わかったね」
「よくね、じゃあ気をつけるよ」
「そうしてくれたら何よりだよ、さて」
ここまでお話してでした、狐どんは。
トミーにです、楽しげな笑顔になって言いました。
「後はだよ」
「スコッチだね」
「待ちに待ったそれを楽しませてもらう」
「わしもだ」
「では僕も」
バウンサーさんとピーターのお父さんも続きます。
「スコッチを楽しませてもらおう」
「早速」
「仕方ないな、ここまでしてもらったんだ」
トミーは立派ななったお家の玄関を見ました、くぼみはなくなって扉が出来ていてです。そして中には絨毯まであります。
「四本全部出そう」
「ではこれから皆で飲もう」
狐どんは四本と聞いてこう言いました。
「一人一本でだ」
「というとわしもか」
「そうだ、御前さんもだ」
是非にとです、狐どんはトミーに言うのでした。
「一緒に飲もう」
「作ってもらったのにかい」
「お祝いということでだ」
「お家の玄関が出来たか」
「そうだ、だからな」
四匹でというのです。
「飲もう、いいかな」
「わかった、それなら」
「そう、飲むぞ」
「そうするか」
トミーは狐どんの言葉に頷きました、そして。
バウンサーさんもピーターのお父さんと四匹でトミーのお家に入りました、玄関の扉を開けて絨毯の上を歩いて。お家の中で飲むスコッチはとても美味しかったです。
穴熊のトミーのお話 完
2016・9・12
今回は穴熊のトミーと狐か。
美姫 「二人のやり取りも仲が良い感じだったわね」
だな。最後は皆で飲んで楽しそうだったな。
美姫 「そうね。今回も投稿ありがとうございました」
ありがとうございました。