『子猫のトムのお話』
トムは甘えん坊です。
このことは立てる様になってからですが今でもです、妹のミトンやモペットよりも甘えん坊です。
それでお母さん猫のタビタ=トゥチットはいつもトムにこう言います。
「貴方もお父さんにならないといけないのよ」
「お父さんみたいにならないといけないの?」
「そう、何時かはね」
こうトムに注意するのです。
「結婚してね」
「女の子と」
「それで甘えないでね」
このことを言うことも忘れないです。
「お父さんみたいに皆をしっかりと育てないといけないのよ」
「えっ、けれど僕そんなこと出来ないよ」
トムはそうお母さんに言われるとです、いつも困った顔でこう言うのでした。
「とてもね」
「またそう言うのね」
「だって本当にことだから」
やっぱり甘えて言うのです、それもいつも。
「それに僕まだ子供だし」
「子供でもお兄さんでしょ」
「ミトンやモペットの?」
「そう、だからね」
本当にいつもこう言うお母さんです。
「貴方は甘えないでね」
「それでなんだ」
「しっかりとならないと駄目なの」
「しっかりっていうと?」
「何でも自分のことは自分でして」
そして、と言うお母さんです。
「頼りにされる様にならないと駄目なのよ」
「自分のことはなんだ」
「そう、自分でね」
それこそ何でもというのです。
「駄目なのよ」
「じゃあお洋服を畳むことも」
「そうよ」
「自分のお部屋をお掃除したりすることも?」
「当然よ」
「食べた後の食器を洗ってなおしたりとか」
「お母さんはいつもしているでしょ」
お母さんはトムに厳しい口調で言っていきます。
「だから貴方もね」
「ううん、大人になるって大変なんだな」
「大変でもそれでもよ」
「僕はしっかりしないといけないんだ」
「さもないとね」
それこそ、というのです。
「お父さんみたいになれないわよ」
「今のままだと」
「今のままだと大人にもなれないのよ」
お母さんの口調は何時になく厳しいものになっています。
「だからいいわね」
「これからはしっかりとして」
「やっていくのよ」
「具体的にはどうすればいいのかな」
「だから自分のお部屋をお掃除してね」
お母さんはさっきトムとお話したことをそのまま言うのでした。
「お洋服も畳んで。食べた後の食器もね」
「洗ってなおして」
「そうしなさい、これからは」
「大変だなあ」
「大変でもやらないと駄目なの」
「大人になれないから」
こう言ってなのでした、そのうえで。
トムにです、さらに強く言うのでした。
「大人になる為にそれ位はしなさい」
「それじゃあね」
こうお話してでした、お母さんはトムにしっかりする様に言うのでした。そしてトムは今回はお母さんがあまりにも強く言うので。
それで、でした。早速自分のお部屋に入ってです。
お掃除をはじめました、ミトンとモペットはそのお兄さんを見て言いました。
「お兄ちゃんがお掃除なんてね」
「珍しいよね」
「うん、そんなこと全然しないのに」
「こんなことするなんてね」
「どうしたのかしら」
「お母さんに言われたのかしら」
「言われたんだよ」
実際にと答えるトムでした。
「しっかりしなさいって」
「うん、お兄ちゃん甘えん坊だからね」
「私達よりもね」
ミトンとモペットもこのことを知っています。
「いつも言われてるし」
「怒られてるし」
「けれどずっと怒られても聞いていなかったのに」
「今回は違うの」
「ずっとこうだと大人になれないって言われたからね」
それで今回は、というのです。
「だからだよ」
「うん、お掃除位はしないとね」
「それ位はね」
「あとお洋服も畳んでね」
トムはさらに言うのでした。
「それとね」
「それと?」
「まだあるの?」
「食器も食べた後はちゃんと洗って元の場所になおして」
そして、というのです。
「そうしたこともしてね」
「しっかりとなって」
「大人になるのね」
「そうならないといけないって言われたから」
トムはお掃除を続けながら妹達に言います。
「それで僕もね」
「しっかりとなるのね」
「大人に」
「うん、なるから」
こう言ってでした、トムはお掃除をしてです。
お洋服も畳んで、です。御飯の後で。
食器を洗います、そして泡をタオルで拭くのでした。ここでお父さんはそのトムを見ながらお母さんに言うのでした。
「トムが食器を洗うって珍しいけれど」
「怒ったのよ」
「そうか、それでか」
「ええ、そうなの」
「トムもしっかりしないとな。それでなんだが」
ここでこうも言うお父さんでした。
「こっちじゃ食器は洗ってタオルで泡を拭き取るな」
「ええ、それがどうかしたの?」
「日本じゃな」
「あの東の方の島国ね」
「あそこは食器を洗剤で洗うだろ」
ここまではイギリスと同じです。
「けれどそこから洗剤の泡を水で洗い落とすらしいんだ」
「あら、そうするの」
「そうらしいな」
「それだとお水をかなり使うわね」
「けれど日本じゃ水がかなり多くてな」
しかも、というのです。
「その質もいいらしくてな」
「そうしたことをするのね」
「そうらしいな」
「そうしたことも国によって違うのね」
「そうだな、それでな」
「それで?」
「トムはこのままな」
またトムのことをお話するのでした。
「ずっとこうだといいな」
「本当にね」
お父さんもお母さんも笑顔になっています、そうして。
トムはお友達のピーターラビットにもです、こう言うのでした。
「何かしっかりしないとね」
「ああ、お母さんに言われたんだ」
「うん、そうなんだ」
森の中で遊びながらです、トムはピーターに言うのです。
「さもないと大人になれないって」
「僕もそう言われるよ」
「お母さんにだね、ピーターの」
「そうそう、しっかりと何でも出来ないと」
大人になれないと言われるというのです、ピーターも。
「お父さんみたいにね」
「そういえばピーターのお父さんってこの前大変だったって?」
「マクレガーさんに危うく捕まりそうになってね」
「ああ、あの人に捕まったら大変だよ」
「食べられるからね」
「肉のパイにされてね」
そのうえで、というのです。
「そうなるからね」
「怖いよね、食べられるなんて」
「パイねえ。僕お魚のパイなら好きだけれど」
「兎のパイだよ」
「そういうのはね」
とても、というのです。
「いいよ」
「そうだよね、僕も人参とかのパイならいいけれど」
「とてもね、兎のパイとかね」
「なりたくないよ」
「じゃあしっかりとならないと」
「パイにされてね」
そして、というのです。
「マグレガーさんに食べられるよ」
「そうなるんだね」
「僕もそう言われてるから」
だから、というのです。
「嫌だけれどね」
「しっかりとなる様にだね」
「頑張ってるよ」
そうしているというのです。
「これでもね」
「やっぱりその方がいいんだね」
「トムだって食べられたくないよね」
「この前大変なことになりそうだったよ」
鼠の夫婦にこっぴどくやられた時のことをです、トムは思い出しながらそのうえでピーターにお話しました。
「あの時のことを思うとね」
「やっぱりしっかりしないとね」
「僕達は僕達で住んでいるからね」
人間に飼われている猫ではないのです、森の中に住んでいるからです。
「しっかりとしないと」
「御飯も食べられないし」
「捕まって食べられるしね」
「そういうことだね、じゃあ」
「うん、僕しっかりするよ」
トムはピーターに強い言葉で言いました。
「そして立派な大人になるよ」
「僕もそうなるよ」
ピーターもトムに答えるのでした。
「絶対にね」
「お互い食べられたくないしね」
「食べたいしね」
こうしたことをお話しながらでした、トムとピーターは二匹で遊んでいました。ピーターはその中で草を食べました。
そのピーターを見てです、トムは言いました。
「ピーターはすぐに草を食べるよね」
「食べられる草ならね」
食べるというのです、ピーターもこう答えます。
「お腹が空いたらね」
「すぐに食べてだね」
「餓えない様にしているよ」
そうしているというのです。
「あくまで食べられる草だけだよ」
「どんな草でもいい訳じゃないんだね」
「毒がある草とか食べないよ」
「そこはしっかりしているんだ」
「お父さんとお母さんに何度も言われたんだ」
その言われたことはどういったことかといいますと。
「どの草を食べていいのか、どの草を食べたら駄目なのか」
「言われたんだ」
「それで食べてはいけない草はわかっているよ」
「成程ね」
「それはトムも同じだよね」
「うん、僕もね」
トムもお父さんとお母さんに何度も言われたことを思い出しました、そしてそれはどういったことかといいますと。
「お魚とか鳥とか鼠とかね」
「どれを食べていいのか、駄目なのかをだね」
「教えてもらってるよ」
「それで食べたら駄目なものは」
「食べないよ」
そうしているというのです。
「それで蛇は美味しいけれどね」
「それでもなんだ」
「蝮は毒があるよね」
「うん、だから僕も気をつけろって言われてるよ」
兎であるピーターにとって蝮は物凄く怖い相手です、兎は蝮に食べられる大きさではないですが毒があるので機嫌を損ねたらです。
「噛まれて毒にやられるからね」
「それでだよね」
「うん、毒がね」
それがというのです。
「怖いから」
「僕も気をつけろってね」
例え食べると美味しくてもです。
「言われてるよ」
「そうだよね」
「蝮を捕まえるのは大人になってから」
トムはピーターに言います。
「お父さんとお母さんにそう言われてるよ」
「そのことは守ってるよね」
「しっかりとね」
そうしているというのです。
「僕だって死にたくないから」
「成程ね」
「ううん、しっかりする理由ってあるんだね」
「しっかりしないと死ぬからね」
マクレガーさんのことも蝮のこともです。
「だからだね」
「そういうことになるね」
「大人になるって生きるってことなのかな」
「そうなのかもね」
こう二匹でお話してでした、二匹は喉が渇いたのでお水を飲みに湖のところに行きました。そしてそこで一緒にお水も飲みました。
そしてです、トムはです。
湖の中にいる小魚を見てです、ピーターに言いました。
「あのお魚は食べられるんだ」
「そうなんだ」
「僕今お腹が空いてるんだ」
「それじゃあだね」
「獲って食べようかな」
小魚を見ながらです、トムはピーターに言うのでした。
「どうしようかな」
「そうしたらいいんじゃないかな」
これがピーターの返事でした。
「そうしたらね」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「僕お魚を自分で獲ったことがないんだ」
トムは自信なさげに言いました。
「これまでね」
「そうなんだ」
「ピーターは草を食べればいいけれど」
兎である彼はです。
「けれどね」
「猫は捕まえないといけないからね」
「僕お魚は獲ったことがないんだ」
「これまではお父さんやお母さんが獲って来たものを食べていたね」
「買って来たものかね」
そうしたものを食べて来たのです、このことはミトンやモペットも同じです。
「そういうものを食べてたけれど」
「自分で獲ったことがないから」
「大丈夫かな」
少し不安気になったお顔での言葉です。
「獲れるかな」
「そのことに挑戦してみる?」
これがピーターのアドバイスでした。
「実際に」
「やったことがなくても」
「大人になったら自分で獲らないといけないよね」
「お父さんみたいにね」
「だったらね」
それなら、というのです。
「トムもね」
「今ここで」
「獲ってみたらどうかな」
自分で、というのです。
「はじめてでもね」
「そうだね、大人になったら獲らないといけないから」
「それじゃあね」
「やってみるよ」
トムはピーターの言葉に頷きました、そしてです。
トムは右の前足を構えてでした、そのうえで。
小魚に狙いを定めました、そしてでした。
そのお魚に向けて前足を一閃させました、前足は湖の中をさっとかいて。
小魚を獲って湖面に出しました、トムはその小魚を見てピーターに言いました。
「出来たね」76
「そうだね」
ピーターもその小魚を見ながら答えます。
「確かにね」
「僕もやればできるんだね」
「しっかりとね」
「大人になれるかな、僕」
「このまましっかりしていくとなれるんじゃないかな」
ピーターはトムにこうも答えました。
「そうしていったらね」
「しっかりって大事なんだね」
「そうだね、じゃあトムは今の」
「このお魚食べるよ」
獲ったその小魚をです。
「そうするよ」
「是非ね」
「それじゃあ」
トムはその小魚を食べました、そして食べ終えてからピーターに言いました。
「とても美味しかったよ」
「よかったね」
「これからは自分でお魚を獲って」
「そしてだよね」
「お魚以外にもね」
猫が食べるものは他いもあります、その他にはです。
「鳥や鼠、虫もね」
「猫って虫も食べるよね」
「あっちもかりかりして美味しいんだ」
「虫美味しいんだ」
「僕達にとってはね」
「じゃあ虫も捕まえてね」
そして、と言うピーターでした。
「食べればいいね」
「これからはね」
「勿論食べていいものだけだけれど」
「そっちも教えてもらってるよ」
「それじゃあね」
ピーターはまたトムに言いました。
「そっちも頑張ろうね」
「お魚のことはお父さんとお母さんに言うよ」
捕まえて食べたことをというのです。
「はじめて出来たってね」
「それはいいことだね」
「うん、僕もやれば出来て」
「しっかりすることもね」
「出来るんだね」
このこともお話する二匹でした。
「このまま」
「それでお魚ってどんな味なの?」
ピーターはトムにこのことも尋ねました。
「匂いは生臭いけれど」
「お魚の味?」
「うん、どんな味なのかな」
「そうだね、お肉とはまた違ってね」
「僕お肉も食べないから」
兎であるピーターはです、そうしたものは食べません。それでお肉とは違うといってもわからないのです。
「わからないよ」
「そうだね、君お肉食べないからね」
「けれどお肉とはまた違うんだ」
「うん、違う味だよ」
「そうなんだね」
「匂いとかもね、けれど凄く美味しいから」
「トムも好きなんだね」
ピーターもこのことはわかりました。
「そういうことだね」
「そうだよ、じゃあまた一尾獲ってみようかな」
湖を見て言うトムでした、トムは何となくお母さんの言ったことがわかった気がしました。どうしてしっかりとしないといけないのかということを。
子猫のトムのお話 完
2014・8・15
今回は子猫のお話だったな。
美姫 「そうね。トムという甘えん坊の」
とは言え、母猫に言われてせっせと動いていたけれどな。
美姫 「ピーターとも話して、少しは自覚したみたいね」
だな。これから先はしっかりするかな。
美姫 「どうなるかしらね」
今回も楽しませてもらいました。
美姫 「投稿ありがとうございました〜」
ではでは。