『りすのナトキンのお話』





 りすのナトキンには困ったところがあります、お母さんはナトキン自身にお家である木の中に作った穴の中で言いました。
「ナトキン、あなたは少し態度が悪いわよ」
「えっ、そうかな」
 ナトキンは自覚していないお顔でお母さんに言葉を返しました。
「僕そんなに態度悪いかな」
「そうよ、お行儀が悪いし」
 それにというのです、お母さんは。
「いつもなぞなぞばかり言って」
「あれは僕の趣味だよ」
 やっぱり自覚していない顔で返すナトキンでした。
「だから何も問題ないよ」
「そう言ってこの前どうなったのよ」
 お母さんは気が気でなりません、それでナトキンにさらに言うのでした。
「梟のブラウンさんが怒ったでしょ」
「ああ、あのことだね」
「そう、お医者様に看てもらって治ったけれど」
「あれは痛かったよ」
「尻尾が大変なことになったでしょ」
 こう言うのでした。
「またああなりたいの?」
「いや、それはね」
「そうでしょ、だったらね」
「もっとお行儀よくしなさいっていうの?」
「年上の人におかしなこととか言わないの」
 それが大事だというのです。
「さもないとまた怒られるわよ」
「ブラウンさんに?」
「ブラウンさん以外にもよ」
 ブラウンさんだけに限らないというのです、怒らせる相手は。
「他の人もよ」
「お母さん心配し過ぎじゃないの?」
「し過ぎじゃなくて普通よ」 
 普通程度に心配しているのです、お母さんにしてみれば。
「今度何かあったらどうするのよ」
「どうするのって」
「今度は尻尾だけじゃ済まないかも知れないわよ」
「だからお行儀よくっていうんだ」
「そう、態度をあらためなさい」
 お母さんは厳しい声で我が子に告げました。
「わかったわね」
「大丈夫だよ、お母さん」
 本当にわかっていません、ナトキンのお顔は平然とさえしています。
「心配しなくても」
「そう言ってどうなっても知らないわよ」
「何かあっても逃げるしね」
「鼬さんからも?」
「ブラウンさんでもね」
 この前怒らせた梟さんでもだというのです。
「僕逃げ足には自信があるから」
「その自信がかえって危ないのよ」
「捕まるっていうの?」
「そう、捕まってからじゃ遅いのよ」
「そんなのないって、絶対にね」
 ナトキンは本当にわかりませんでした、お母さんが言うことは。そしてお母さんが言い終わるとすぐにdした。
 お家を出ました、そのうえでこう言うのでした。
「晩御飯までには帰るよ」
「お父さんが帰って来るまでに帰ってきなさい」
「うん、わかったよ」
「とにかくよ」
 ここでまた言うお母さんでした。
「お行儀よくね」
「またそう言うの?」
「言うわ、何度でもね」
「お母さん本当に心配し過ぎだよ」
 ナトキンはやれやれといったお顔でお家から出ました、そうして。
 森の中を歩いてです、そうしてでした。
 りすのお友達と会ってです、彼にこう言いました。
「一緒に遊ばない?」
「うん、いいよ」
 お友達はナトキンににこりと笑って答えました。
「それじゃあね」
「じゃあ何をして遊ぼうかな」
「木の実を取ってね」
「それで食べるの?」
「食べられる木の実は食べてね」
 そしてだというのです。
「食べられない木の実は蹴って遊ばない?」
「ボールにしてだね」
「うん、そうしてね」
「サッカーをするんだね」
「食べられる木の実はそのまま食べていいけれど」
 それでもだというのです。
「食べられないのならそうして遊ぶしかないじゃない」
「それもそうだね」
「そう、だからね」
「わかったよ、それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 ナトキンはお友達と一緒に木の実を取りに行ってです、実際に食べられる木の実は食べてなのでした。食べられない木の実はです。
 後ろ足で蹴り合って遊びました、その木の実でサッカーをしたのです。
 そうして遊びながらです、ナトキンはお友達に言いました。
「ねえ、サッカーもいいけれどね」
「何かな」
「ラクロスとかもどうかな」
 こう言うのです。
「棒を持ってきてね」
「ラクロスだね」
「うん、それもしない?」
「それならもっと小さい木の実の方がいいよ」
 お友達はナトキンにこう提案してきました。
「今の木の実はラクロスをするには少し大きいから」
「そうだね、じゃあね」
「小さな木の実も探してね」
 そうしてとお話してでした、そのうえで。
 二匹で探してでした、ですが。
 ラクロスに使えそうな棒は見つかりました、しかし小さな木の実は見つかりません、それでナトキンはこう言うのでした。
「ちょっとお願いしてみようかな」
「お願いって?」
「近くにマグナスおじさんがいるじゃない」
 二匹と同じりすです、そのおじさんにというのです。
「あのおじさん木の実を集めることが好きだから」
「だからなんだ」
「そう、小さな木の実も持ってるかも知れないから」
「おじさんにお願いしてだね」
「そうして借りてね」
「ラクロスをしようっていうんだね」
「うん、どうかな」
 こうお友達に提案するのでした。
「おじさんにね」
「いいね、おじさんなら持ってるかもね」
 お友達もナトキンの言葉に頷いて同意しました、そうしてでした。
 二匹でマグナスおじさんのところに行ってです、ですが。
 おじさんのお家がある木の前に来たところでなのでした、ナトキンはふと立ち止まってそのうえでお友達に言いました。
「実はね、僕ね」
「?どうしたの?」
「いや、お家が出る前にお母さんに言われたんだ」
「お行儀が悪いってかな」
「うん、態度がね」 
 このことを言うのでした。
「言われたんだ」
「うん、そのことだけれど」
「君もそう思うんだ」
「ナトキンはちょっと態度が悪いよ」
 実際にというのです。
「特に年上の人にね」
「そうかなあ」
「うん、だからブラウンさんにも怒られたんだよ」
 お友達もナトキンに言うのでした、ナトキンに。
「だからね、マグナスさんにもね」
「お行儀よくなんだ」
「そう、そうしないとね」
「駄目なんだ」
「さもないとマグナスさんも怒るよ」
「それはまずいね」
 若しマグナスさんを怒らせてしまったらどうなるのか、ナトキンは難しいお顔になってそのうえでお友達に言いました。
「確かに」
「木の実借りられなくなるよ」
「それでラクロスも出来なくなるね」
「そう、だからね」
「ここはお行儀よくだね」
「そうしないとね」
 駄目だとお話してでした、そうして。
 ナトキンは確かなお顔になってです、こうお友達に言いました。
「わかったよ、じゃあね」
「お行儀よくするんだね」
「態度をよくするよ」
「具体的には礼儀正しくね」
 そうして欲しいとです、お友達はナトキンに言いました。
「そうしてね」
「礼儀正しくだね」
「ナトキンいつも誰にでも砕け過ぎているんだよ」
 その態度がだというのです。
「挨拶だってこんにちはじゃなくてやあじゃない」
「それが駄目なんだね」
「そうだよ、あとすぐになぞなぞを出すよね」
 このことも言うお友達でした。
「あれもよくないから」
「ブラウンさんみたいに怒るからだね」
「そう、だからね」
「なぞなぞもなしだね」
「そうしてね」
「それじゃあ」
 ナトキンもお友達の言葉に頷いてでした、そうして。
 二匹でなのでした、マグナスさんのお家の入口まで登ってでした。
 お互いにです、顔を見合わせてです。
 ナトキンもです、今は礼儀正しくでした。
「こんにちは」
「マグナスさんおられますか?」
 こう挨拶をしました、するとです。
 お家の中からです、雄りすの声が返ってきました。
「何か用かい?」
「はい、お邪魔していいですか?」
「今からそちらに」
「ああ、いいよ」
 とても砕けた声でした、その返事を受けてです。
 ナトキンとお友達は一緒にお家の中に入りました、するとです。
 そこにマグナスおじさんがいました、おじさんは自分の前に来てぺこりを下げてきたナトキン達に驚いて言いました。
「あれ、ナトキンだよね」
「はい、そうです」
「いや、ナトキンにしてはね」
 とてもだというのです。
「随分と礼儀正しいなって思ってね」
「だからですか」
「驚いたよ」 
 マグナスおじさんはしみじみとしてこうも言いました。
「ナトキンには思えない位だよ」
「実はお母さんに言われまして」
 ナトキンは今も礼儀正しくマグナスおじさんにお話します。
「お行儀よくしなさいって」
「そうする方がいいって言われたんだね」
「はい、ですから」
「うん、その通りだよ」
 まさにと言うマグナスおじさんでした。
「態度が悪いといいことは何もないよ」
「そうなんですね」
「相手を怒らせるだけだからね」
 だからいいことはないというのです。
「礼儀正しい方がいいんだよ」
「そうみたいですね」
「だからね」
 それでだと言うマグナスおじさんでした。
「これからはナトキンもね」
「礼儀正しくですね」
「そうあるべきだよ」
 絶対にというのです。
「いいね、これからは」
「わかりました」
「それで今日は何の用かな」
 マグナスおじさんはあらためてナトキン達に尋ねました。
「どうしてわしの家に来たのかな」
「はい、実はです」
 二匹はマグナスおじさんの問いに答えました。どうしてここに来たのかを。
「僕達これからラクロスをしようと思いまして」
「小さな木の実を探したんですけれど見つかりませんでした」
「けれどおじさんなら持っておられると思いまして」
「小さな木の実をお借りしたくて来ました」
「成程、事情はわかったよ」
 ここまで聞いてです、マグナスおじさんはまずは頷きました。
 そのうえで、です。こう二匹に言いました。
「ラクロスに使える位の木の実なら持ってるよ」
「えっ、そうなんですか」
「それじゃあ」
「うん、貸してあげるよ」
 おじさんは笑顔で二匹に言います。
「ただ。終わったらね」
「はい、洗ってですね」
「返してですね」
「そうしてくれるね、いいね」
「はい、わかりました」
「それじゃあそうさせてもらいます」
 二匹は笑顔で応えてでした、そのうえで。
 マグナスおじさんからその小さな木の実を受け取ってぺこりと頭を下げました。それから一緒におじさんのお家を出てです。
 二匹で楽しくラクロスをして遊びました、そうしてたっぷり遊んでからでした。
 ちゃんとです、ナトキンはお友達に言いました。
「じゃあ木の実はね」
「お水でちゃんと洗ってね」
「そうして返そうね」
「お行儀よくね」
「洗って綺麗にしてね」
 こうしてでした、ちゃんと木の実を洗ってです。
 二匹でおじさんのお家に戻って挨拶をしてからまた入ってでした、そうして有り難うございましたと言ってから木の実をその前足に取って返しました。おじさんはその木の実を受け取ってです。
 そうしてです、こう言うのでした。
「うん、出来るじゃないか」
「お行儀よくですか」
「うん、ナトキンもね」
 これまでとは違ってというのです。
「出来るじゃないか」
「僕も出来るんですね、お行儀よく」
「出来てるじゃないか、これでいいんだよ」
「こうすればいいんですね」
「やっぱりお行儀が悪いとね」
 今にしてもそうだとです、おじさんはナトキンに笑顔でお話します。
「次は貸したくなくなるし」
「ボールも」
「その他のものである場合もね」
 どちらにしても、というのです。
「貸したくなくなるからね」
「お行儀よくすればいいんですね」
「それが人と付き合う秘訣だよ」
「秘訣ですか」
「そう、秘訣だよ」
 まさにそれだというのです。
「人を怒らせないから」
「だからなですか」
「そうだよ、だからいいね」
「はい、わかりました」
 確かな顔で頷いたナトキンでした。
「それじゃあこれからは」
「うん、これまでもね」
「礼儀正しくですね」
「お行儀をよくしてね」
「そうすればいいんですね」
「そうだよ、これでわかったね」
「はい、わかりました」
 ナトキンはとても明るい顔でおじさんに答えました。
「これからはそうします」
「そういうことでね、じゃあまたね」
「今度もですか」
「何か借りたい木の実があれば来てね」
 そしてというのです。
「わしも貸すよ」
「わかりました」
「それじゃあまたお願いします」
 ナトキンもお友達も応えました、そうしてです。
 ナトキンは気持ちよく遊びを終えてお家に帰ることが出来ました。お友達とも丁寧に挨拶をしましたが明るく帰ることが出来ました。
 そしてお家でマグナスおじさんとのことをお話するとです、お母さんはこうナトキンに言いました。
「ほら、いいでしょ」
「うん、お行儀よくしたらね」
「誰も怒らないしね」
「それどころか笑顔でいてくれるね」
「なぞなぞもね」
 これもだというのです。
「場所を考えて言うことよ」
「そうすればだね」
「そう、ブラウンさんの時みたいにはならないわよ」
「そうなんだね、じゃあこれからは」
「わかったわね」
「うん、わかったよ」
 とてもよくと答えたナトキンでした。
「それじゃあこれからはね」
「そう、お行儀よくしなさいね」
「わかったよ、お母さん」
「それじゃあもうすぐお父さんが帰ってくるから」
「お父さんが帰ってくればだね」
「晩御飯にするわよ」
 お母さんは我が子に笑顔で言いました、そうしてです。
 お父さんが帰ってくるとすぐにでした、ナトキンはとても美味しい晩御飯を皆で食べました。ナトキンはお行儀よくするとどうなるかよくわかりました。


りすのナトキンのお話   完


                                 2014・3・16



今回はリスのお話だったな。
美姫 「みたいね。態度が悪いって最初に出てきたから」
だな。木の実を借りに行った先で何かやらかすかと思ったけれど。
美姫 「そうでもなかったみたいね」
だな。意外と素直だったよな。
美姫 「それで問題もなく友達と遊べたんだから良かったじゃない」
本人も行儀よくする方が良いと分かったみたいだしな。
美姫 「そうね。今回もほのぼのしてて楽しかったです」
ではでは。



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