『新オズのグリンダ』




                第十幕  楽しい水辺

 今度行く国は川獺の国でした、ですが。
 川獺と聞いてもです。神宝達五人は微妙なお顔になりました。
「川獺ってあまり馴染みがないね」
「そうだよね」
「今の僕達はね」
「日本には川獺はいないかも知れないから」
「それでね」
「ああ、そういえば」 
 魔法使いは五人のお話を聞いて言いました。
「今の日本はね」
「川獺がいないかも知れないって言われています」
「昔はいたんですが」
「四国の方にいるそうですが」
「確かなことは言えないです」
「もういないかも知れないです」
「そうだね、日本の川獺はニホンカワウソで」
 この川獺でというのです。
「果たして今いるかどうか」
「よくわからないんです」
 神宝は残念そうに言いました。
「昔は日本全土にいたそうですが」
「今は四国の一部にいるかも知れないと言われていて」
 ナターシャも残念そうなお顔です。
「はっきりとした証拠はないです」
「見たっていう人はおられますが」
 ジョージはそれでもと言いました。
「果たして本当のことか」
「日本って案外生きものが見付かりにくいかも知れないです」
 日本人の恵梨香の言葉です。
「他にもこうしたお話があります」
「それで川獺もです」 
 カルロスも言いました。
「はっきりわかりません」
「いてくれたらいいけれど」
 魔法使いは心から思いました。
「わからないね」
「はい、そうです」
「どうにも」
「今日本にいるかどうか」
「よくわからないです」
「そのことは」
「日本ってアメリカと比べたら小さな国なのに」
 ビリーナはかつて自分達が暮らしていてオズの国に影響を与えるこの国と比較して日本のお話をしました。
「見付かっていない生きものも多いのかしら」
「絶滅したかもっていう生きものでしょ、今回は」
 エリカはこうビリーナに言いました。
「そうでしょ」
「そうね」 
 確かにとです、ビリーナも頷きました。
「言われてみると」
「そうでしょ、けれどいるかも知れないっていう生きものもなのね」
「日本多いみたいよ」
「そうなのね」
「日本は山が多いのよ」
 ドロシーが言ってきました。
「周りは海で川も多いから」
「ああ、それだとね」 
 トトはそれならと応えました。
「確かにね」
「隠れる場所も多いでしょ」
「それでだね」
「山も海も川もね」
「いるかも知れないっていう生きものが多いんだ」
「そうなっているの」
「成程ね」
 トトはドロシーの言葉を聞いて頷きました。
「そうした事情でなんだ」
「見付かっていない生きもの。未確認動物も結構いて」
「いなくなったかどうかはっきりしない生きものもいるんだ」
「そうなのよ」
「山や海は川が多いと」
「そうなりやすいの」
「アメリカも多いけれど」
 そうした生きもののお話はというのです。
「日本もだね」
「そうなのよ」
「オズの国では未確認動物はいないわ」
 オズマが言いました。
「どんな生きもののことも魔法の動物図鑑に載っているから」
「オズの国の全ての生きもののことが書かれているわね」
 グリンダが応えました、今皆は夜にタンクの中にいて晩ご飯の後の穏やかな時間を過ごしています。
「写真付きで」
「何処にいるのかもね」
「書かれているから」
「未確認動物はいないわ」
「そして生きものが絶滅することもね」
「ないのよ、もう外の世界にいない生きものもね」 
 そうした生きもの達もというのです。
「いるしね」
「そういえばです」
 ジュリアがここで言いました。
「モアもドードー鳥もですね」
「外の世界ではね」
「もういないですね」
「オオウミガラスもね」
「ステラーカイギュウもそうですね」
「けれどね」
 それでもというのです。
「オズの国ではね」
「皆いますね」
「カワイルカだってね」
「カワイルカでしたら」
 神宝はその生きものの名前を聞いてお顔を上げました。
「ヨウスコウカワイルカですか」
「ええ、そのイルカよ」
 グリンダが答えました。
「オズの国にもいるのよ」
「そういえばオズの国の川には」
「イルカもいるわね」
「色々な生きものがいて」
「それであのイルカもね」
「いますね、実はです」
 神宝は切実な声で言いました。
「ヨウスコウカワイルカはわかっていないです」
「いるかどうか」
「前はいたんですが」
「絶滅したかもと言われているわね」
「僕は絶対にです」
 神宝の声は切実なままでした。
「いて欲しいです」
「今もね」
「心から思っています、パンダとです」
「ヨウスコウカワイルカはね」
「ずっといて欲しいです」
 そうだというのです。
「本当に」
「皆そう思っているわね」
「中国人は」
 夜にこんなお話をしました、タンクはその夜の間も進んでいてそうして次の日に川獺の国に付きました。この国は川辺にありまして。
 街の中は小川や運河、堀に水路にとお水で満ちています。それで神宝達五人は街の中を小舟に乗って進みますが。
 今いる運河の中にカワイルカを見てです、神宝達五人は言いました。
「イルカいるね」
「ヨウスコウカワイルカかな」
「街にイルカがいるなんて」
「見たら他の生きものも一杯いるわ」
「お魚も亀も」
「この国はこうした国だよ」 
 一緒に乗っている川獺の王様が言ってきました、緑色の服にローブを身に着けていて痩せた身体をしています。
「街をお水が巡っていてね」
「船で移動して」
「川の生きものが一杯いて」
「普通に泳いでいて」
「イルカもいますね」
「そうなんですね」
「そうだよ、あのイルカはヨウスコウカワイルカだよ」
 王様はイルカの種類のお話をしました。
「そのイルカだよ」
「ああ、そうなんですね」
 神宝はそのイルカだと聞いてお顔をぱっと明るくさせました、
「嬉しいですね」
「いや、この国だと普通にね」
「国の中を泳いでいますか」
「アマゾンカワイルカもガンジスカワイルカもね」
 そうした種類のイルカ達もというのです。
「普通にだよ」
「国の中を泳いでいますか」
「我々川獺は水辺で暮らすね」
「だから国の中もですね」
「こうして小川にね」
 それにというのです。
「運河やお堀、水路を造って」
「国仲をお水が巡っていますね」
「道はなくて」
 それでというのです。
「お水があるんだ」
「そうしたお国ですね」
「それで普段は泳いでね」 
 そのお水の中をというのです。
「移動しているんだ」
「川獺だからですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「川獺だからね」
「そうですか」
「そしてね」
 王様はさらにお話しました。
「お客さんはね」
「船で、ですね」
「移動してもらっているんだ」
「そうですか」
「泳ぎが達者でない人達はね」 
 川獺の様にというのです。
「そうしてもらっているよ、ではこれからね」
「王宮に行くんんですね」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「ご馳走させてもらうよ」
「宜しくお願いします」
 神宝も他の皆も笑顔で応えました、そうしてです。
 皆で船から王宮に入りました、王宮はイタリアのそれを思わせるものでとても壮麗でした。川やそこにいる生きもの達をモチーフにした芸術品が沢山ありまして。
 そしてです、そのご馳走はといいますと。
 鯉のお刺身やカルパッチョ、蛙のフライにザリガニの丸蒸し、鰻のアクアパッツァそれにスッポンの中華煮とです。
 川の幸で一杯でした、オズマはそのご馳走を前に目を輝かせました。
「これは素晴らしいわ」
「はい、我が国は川の幸が名物で」
「そのお料理ね」
「左様です、どれも美味しいので」
 だからだというのです。
「是非です」
「楽しんでいいのね」
「はい」
 そうだというのです。
「これから」
「それではね」
「実はです」
 王様はここで笑ってお話しました。
「狐の国た狸と貉の国ともです」
「仲がいいのよね」
「それでお互い交流していますか」
「狐の王様から聞いたわ」
 オズマはくすりと笑って言いました。
「揚げよね」
「はい、狐の国に行きますと」
「揚げが出るわね」
「絶対に。そして狸と貉の国では」
 そちらではというのです。
「おうどんをよく振る舞ってもらいますが」
「たぬきうどんね」
「お蕎麦ならたぬきそばですね、天かすを入れた」
 そうしたというのです。
「そうなっていて我が国では」
「川の幸ね」
「そうです、前はリンキティンク王が来られて」
 この人がというのです。
「川の幸に大喜びでした」
「あの人なら随分とよね」
 ドロシーは王様のお話を聞いて言いました。
「笑ったわね」
「いつも通り賑やかなまでに」
 そこまでにというのです。
「喜んでくれました」
「そうだったのね」
「はい、そして」 
 それでというのです。
「我々も楽しい思いをしました」
「そうだったのね」
「そして今回はです」
「私達がいただくのね」
「遠慮なく」
 王様は一向にお話しました。
「召し上がって下さい」
「それではね」
 ドロシーがにこりと笑って応えてでした。
 皆川の幸を食べはじめます、グリンダはまずはお刺身を食べてそのうえで満面の笑顔で言いました。
「鯉のお刺身がまたね」
「絶品ですよね」
「ええ、本当に美味しいわ」
 王様に笑顔で応えます。
「こうして山葵醤油で食べるとね」
「幾らでも食べられますね」
「そうなるわ」
「我々もそうで」 
 川獺達もというのです。
「よくです」
「鯉をお刺身で食べるのね」
「カルパッチョも。他のお魚も」
 鯉に限らずというのです。
「お刺身にしまして」
「頂いているのね」
「そうしています、またこうして他のものも」
「お料理して頂いているのね」
「そうです、実はイルカも」
 この生きものもというのです。
「食べますよ」
「ああ、鯨と同じだからねイルカは」
 魔法使いは蛙のフライを食べつつ応えました。
「それでだね」
「はい、食べます」
「鯨も食べるしね」
「オズの国ではそうですね」
「川にも鯨がいてね」
「それで食べます」
 そうしているというのです。
「これがまたです」
「美味しいね」
「皆鯨も好きです」
「そうだね」
「あと鰐も食べますし」 
 この生きものもというのです。
「水鳥もです」
「食べるね」
「そうしています」 
 王様は笑顔でお話しました。
「夜はその鰐のステーキと鴨のオリーブ煮です」
「鴨もだね」
「出させてもらいますので」
 だからだというのです。
「ご期待下さい」
「夜は夜で」
「是非、それと普通に丘のものもです」
「食べるんだね」
「ですからサラダもありますし」
 見ればそのお料理もあります。
「お料理の中にです」
「トマトとかがあるわね」
 グリンダはアクアパッツァの中のトマトそれに大蒜やパセリを見ました、そのうえで笑顔で言いました。
「いいわね」
「畑もありますので」 
 お国にはというのです。
「こちらもです」
「楽しめばいいのね」
「是非。あとスパゲティもありまして」
 このお料理もというのです。
「そこでもです」
「川の幸をなのね」
「使っていまして」
 それでというのです。
「パスかとーれやボンゴレみたいにして」
「食べているのね」
「蟹も使いまして」
 そしてというのです。
「川烏賊の墨も使って」
「イカ墨のスパゲティね」
「そちらもです」
「あるのね」
「はい、そして」
 そうしてというのです。
「夜はスパゲティも出しますので」
「期待していいのね」
「どうぞ。ではです」
「今はね」
「このお料理達を楽しんで下さい」
「そうさせてもらうわ」 
 笑顔で応えてでした。
 皆でお刺身やフライを楽しみました、それと一緒にお酒も飲みます。そしてお昼のご馳走を堪能した後で。
 一行はまた船に乗って国のあちこちを巡りますがここでビリーナは周りを見回してこんなことを言いました。
「他にもこうした川が多い国あるわね」
「ええ、おじさんと一緒に行った街がね」 
 ドロシーが答えました。
「こうしてね」
「街に川や運河が沢山流れていて」
「船で行き来しているのよ」
「そうよね」
「その街と同じでね」 
 それでというのです。
「この国もね」
「船で行き来しているわね」
「ええ、それで街並みは」
 ビリーナはそちらも見てお話しました。
「欧州の感じね」
「これはヴェネツィアだよ」
 魔法使いが言ってきました。
「外の世界のね」
「ああ、あの水の都と言われる」
 エリカが応えました。
「イタリアの街ね」
「そう、その街だよ」
「この国は」
「そうだよ、いや奇麗だよね」
 笑顔で、です。魔法使いはこうも言いました。
「お家も色々な建物も」
「風情があるね、青いお水の中に白いお家や建物が浮かぶみたいにあって」
 トトはそれでと言いました。
「幻想的だよ」
「オズの国の中でもね」
「だからね」
 それでというのです。
「僕ずっと見ていたいよ」
「この街並みを」
「船に乗ったままでね」
「そうね、素敵な国よ」
 グリンダも微笑んで頷きました。
「この国は」
「そう、だからね」
「ずっと見ていきたいわね」
「青と白の対比がよくてね、外の世界だとね」
 トトはそちらの世界のお話もしました。
「僕達犬は色がわからないから」
「犬の目ではね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「色が分かる様になったしね」
「オズの国に入って」
「尚更嬉しいよ」
「そうなのよね、私達も色がわからないのよ」
 エリカも言ってきました。
「外の世界だとね」
「やっぱり白黒ね」
「そうなのよ」
 こうグリンダにお話しました。
「これがね」
「哺乳類で色がわかるのは」 
 グリンダは外の世界ではと言いました、その青と白の国の中で。見れば恐れも青くてお家や建物はその下にもあります。
「人間と猿だけだから」
「それでなのよ」
「色がわかることは嬉しいわね」
「凄くね」
 実際にというのです。
「私もね」
「色がわかると」
「これも喜びなのよ、ただ白黒でもね」
「いいのね」
「それはそれで役に立つのよ」
 色がわからなくてもというのです。
「これでね」
「これも進化なのよ」
 グリンダはまさにとお話しました。
「色がわからないというのもね」
「進化の在り方なのね」
「犬や猫が色がわからないのは」
 人間や猿以外の哺乳類がというのです。
「それはそれで必要に応じた」
「進化ね」
「そうよ」
 川には川獺の人達も泳いでいます、服を着たまますいすい泳いでいてそれこそ歩くよりも速いです。
「だから悪いことでも劣っていることでもね」
「ないわね」
「色がわからなくてもね」
 それでもというのです。
「別にね」
「そういうことね」
「そう、そして」
 それにというのです。
「オズの国ではね」
「色が分かる様になるのは」
「それが必要だからよ」 
 それ故にというのです。
「だからね」
「見えるのね」
「そうなの、オズの豊かな色彩をね」
「皆が見て楽しむことね」
「その為によ」
「私達も色が分かる様になるのね」
「魔法でね」 
 オズの国全体にかけられているそれによってというのです。
「そうなるのよ」
「そうなるといい国だから」
「そうなのね」
「そうそう、外の世界ではです」
 ここで川獺の王様も言ってきました。
「私達川獺も色がわからないとか」
「そうよ」
 グリンダは王様にも答えました。
「これがね」
「そうでしたね」
「けれどね」
 それがというのです。
「オズの国ではわかるから」
「この国の色を楽しみ為に」
「オズの国はそれぞれの色があるわね」
「国によって」
「このカドリングは赤で」 
 この色でというのです。
「マンチキンは青、ギリキンは紫、ウィンキーは黄色で」
「エメラルドの都は緑ですね」
「その五色があって」 
 そうしてというのです。
「他にもね」
「色々な色がありますね」
「ほら、見て」
 ここで、でした。
 皆が前を通ったお家のお庭で川獺の子供がシャボン玉を吹いて飛ばしていました、グリンダはそのシャボン玉達を見て言いました。
「シャボン玉の色をね」
「七色ですね」
「そう、七色のね」
 この色のというのです。
「虹の色ね」
「七つの色ですね」
「オズの国では虹も多いでしょ」
「いつも見られます」
 王様は笑顔で答えました。
「嬉しいことに」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「他にも色々な色があるでしょ」
「オズの国は」
「宝石も多くて」
「それぞれの色がありますね、宝石にも」
「そうした国だからね」
「皆色がわかるといいですね」
「だからよ」
「皆色がわかりますね」
「犬も猫もね」
 外の世界では色がわからない生きもの達もというのです。
「そうなるのよ」
「そういうことですね」
「オズの国では色も楽しむことよ」
 こちらもというのです。
「とても沢山の奇麗な色があるから」
「だからですね」
「そう、そしてね」 
 それでというのです。
「この国でもね」
「色を楽しむことをですね」
「青いお水とお空に」
 それにというのです。
「白いお家、雲も白いから」
「青と白ですね」
「そして草木もあるけれど」
 どのお家にもあります、公演もあってそちらは本当に草木が豊かで水路に囲まれてお水の中に浮かんでいる様です。
「ここはカドリングだから」
「草木は赤いですね」
「赤もあるから」
 この色もというのです。
「その三色の組み合わせをね」
「楽しめばいいですね」
「こうしてね」
 笑顔で言います、そうしてでした。
 皆で船に乗って国の中を案内してもらいます、そしてです。
 その中で、です。皆おやつも食べますが。
「船に乗って食べるのもね」
「いいものね」 
 ビリーナとエリカがお話します。
「お茶も飲んで」
「結構以上な贅沢よ」
「本当にね」
「落としたら駄目だけれど」
 トトはおやつのケーキを食べつつ言います、甘いケーキにシュークリームやエクレアを皆で楽しんでいます。
「これも楽しいよね」
「ゆらゆらと船に揺られながら周りを見て」
「ゆっくりと進んでね」
 ビリーナとエリカはそのトトに応えました。
「そうしながらお菓子を食べる」
「お茶も飲むことがいいのよね」
「贅沢だね」
 トトはにこりと笑って言いました。
「これはまた」
「そう、これは贅沢な楽しみよ」
 ドロシーはレモンティーを飲みつつ微笑んで言いました。
「とてもね」
「そうだよね」
「優雅でしょ」
「とてもね」
 トトはまさにと答えました。
「僕もそう思うよ」
「その遊びをよ」
 まさにというのです。
「今回はね」
「楽しむことね」
「色にね」
 グリンダが先程言ったそちらにというのです。
「船遊びにお国の中の色々なものを見て回って」
「そしてお菓子とお茶を楽しむ」
「同時に色々なことを楽しめる」
 そうしたというのです。
「とても贅沢な遊びよ」
「僕達が今していることは」
「これ以上はないまでのね」
「全くだよ」
 魔法使いはエクレアを食べつつ応えました。
「こんないい遊びはないよ」
「そうはね」
「最高の遊びの一つだよ」
 こうまで言いました。
「本当にね」
「全くよね」
「そう、それでね」
 魔法使いはさらに言いました。
「今はね」
「私達はよね」
「この遊びを楽しもう」
「心から」
「幸せを感じてね」
「幸せを感じたらね」 
 オズマは満面の笑顔で言いました、ケーキを食べつつ言います。
「それでよ」
「いいですね」
「今の舟遊びとおやつだけじゃなくて」 
「他のことでもですね」
「幸せを感じられたら」
 それならというのです。
「もうね」
「それでいいですね」
「幸せは一つじゃなくて」
「手に入れる方法もですね」
「一つじゃなくて」 
 それでというのです。
「さっき川の幸をご馳走になって幸せだったわね」
「はい、とても」
 ジュリアは素直な笑顔で答えました。
「そうでした」
「ヨウスコウカワイルカを観られて」
 神宝が言ってきました。
「幸せでした」
「ほら、あそこには亀がいるよ」
 カルロスは四本の足が鰭になっている亀が泳いでいるのを見付けました。
「水棲のウミガメになるね」
「オズの国にしかいないわね、そうした亀は」
 ナターシャは微笑んで言いました。
「外の世界にいないわね」
「そうした生きものも観られてね」
 それでと言うジョージでした。
「幸せだね」
「そうよね。色々な生きものが観られることも幸せよ」
 恵梨香も笑顔で言います。
「とてもね」
「そう、幸せは一つじゃなくて」 
 オズマは五人の子供達にも言いました。
「他にもよ」
「色々とですね」
「楽しみ方がありますね」
「そうですね」
「色々なやり方があって」
「色々なものがありますね」
「ご馳走を食べて舟遊びをしておやつを食べて」
 そしてというのです。
「観光もして珍しい生きものも観て」
「色々ですね」
「本当にそうですね」
「一つじゃないですね」
「幸せは」
「そこに至る方法も」
「それしかないじゃなくて」
 そうではなくというのです。
「色々よ」
「ええ、幸せを感じたらそれでよくて」
 グリンダも言います。
「そしてそれを手に入れる方法も幸せの形も」
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「色々と広くね」
「考えていけばいいのよ」
「幸せのことも」
「その通りね」
「私も今幸せよ」
 オズマもレモンティーを飲んでいます、とても甘くてレモンの味も甘酸っぱさもあるとても美味しい紅茶です。
「とても美味しいものも食べられて飲めて」
「凄くね」
「幸せよ」
「本当にね、そのうえで周りの景色も楽しめて」
「とても幸せね」
「船に乗られて進んで」
「本当にね」
 こうお話します、そしてです。
 お空にある鳥が飛んでいるのが見えました、その鳥はといいますと。
「鳩ね」
「ええ、赤い鳩ね」
 グリンダとオズマがお話しました。
「カドリングの鳩ね」
「幸せの鳩よ」
「カドリングではそう言うわね」
「飛んでいる赤い鳩を見られたら」
 それならというのです。
「その日に幸せが訪れる」
「そうなるというわね」
「それじゃあさらにね」
「私達に幸せが訪れるわね」
「それも今日のうちに」
「そうなるわ」 
 二人で笑顔でお話します、そしてです。
 そのうえで、です。こうも言ったグリンダでした。
「オズマの言う通りね」
「幸せについてはね」
「その人が感じられたらね」
「それでいいのよ、そして感じる方法はそれぞれで」
「一つじゃないわね」
「食べても見てもでね」
「色々よね、そしてオズの国は」
 この国はといいますと。
「幸せがあちこちにある国よ」
「その通りね」
「そうした国だから」 
 それでというのです。
「私はもっとね」
「幸せを増やしていくわね」
「オズの国の国家元首だから」
 そうであるからだというのです。
「政治で以てね」
「そうするわね」
「偉大な国にすると言って」
 そしてというのです。
「迷惑ばかりかけて嘘ばかり吐いてね」
「悪いことばかりする」
「そんなことはしないわ」
 絶対にというのです。
「それは間違っているわ」
「その通りよ」
 グリンダもその通りだと答えました。
「私もね」
「前のノーム王みたいに他の国を無理に併合しようとか」
「しないわね」
「絶対にね、そんなことをしたら」
 それこそというのです。
「その国は絶対にね」
「幸せな国にならないわね」
「若しそんなことを続けていたら」
「幸せになるどころか」
「不幸になるわ、悪いことばかりする国を誰が好きになるかしら」
「若し好きになるとしたら」
 それこそというのです。
「お仲間よ」
「あの時の妖魔達みたいな」
「同じ位悪い人達よ」
 まさにというのです。
「そして同じくね」
「嫌われるわね」
「そして前のノームの様に」
 まさにというのです。
「全てを失うわ」
「そうなるわね」
「そうした人はお口ではどう言っても」
 それでもというのです。
「自分のことしか考えていないわ」
「そして悪いことも平気でするわ」
「自分の為にね」
「そんな人達とはよ」
「貴女は違うわ」
「絶対になりたくないから」
 オズマは断言しました。
「だからね」
「偉大な国じゃなくて」
「幸せな国にね」
「皆がね」
「そうした国にするわ」 
 まさにというのです。
「本当にね」
「そうよね」
「だからね」
 それでというのです。
「今百幸せがあるとしたら明日はね」
「百一ね」
「明後日は百二に」
「増やしていくわね」
「そうしていくわ」
 こう言うのでした。
「あとね」
「あと?」
「世の中色々な生活をしている人がいて」
 それでというのです。
「そうしたそれぞれの生活スタイルもね」
「わかっているわね、貴方は」
「だからね」
 それでというのです。
「遊牧民の人達やお家を持たないでね」
「旅をして暮らしている人達もよね」
「ちゃんと頭に入れてね」
「その人達の幸せも考えていくわね」
「そうするわ」
 こう言うのでした。
「私はね」
「そう、色々な人がいることはね」
 グリンダもまさにと答えました。
「覚えておかないとね」
「オズの国は特にね」
「この国自体がそうでしょ」
「川獺の国よ」
「狐や狸と貉の国があって」
「瀬戸物やピースパズルの国があってね」
「鏡の国、蛇人の国に」 
 それにというのです。
「他にもね」
「色々な国があるわね」
「人間でもね」
 オズの国で一番多いとされる人達もというのです。
「白人だけじゃないわ」
「黄色人種に黒人に」
「人種があるからね」
「色々よ」
「若し一つの人間だけとしたら」
 その時はといいますと。
「もうね」
「その国はね」
「とんでもないことになるわ」
「オズの国もね」
「そうですよね」 
 神宝も言いました。
「若し一つの人だけとしたら」
「とんでもないことになるわね」
「オズの国だと、それに」 
 神宝はグリンダに言いました。
「外の世界でも」
「どんな国でもね」
「一つだけにしたら」
「他の人達はどうなるかしら」
「考えるだけで怖いですね」
「そうなるからね」  
 だからだというのです。
「色々な人がいるという現実をね」
「受け入れることですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そうすることがいいことよ」
「本当にそうですね」
「特にオズの国はね」
「色々な人がいるので」
「そのことを認めないとね」
 さもないと、というのです。
「とてもね」
「やっていけないですね」
「この国にもいられないわ」 
 川獺の国にもというのです。
「とてもね」
「そうですね」
「そうよ、若し一つだけとするなら」
「何も出来ないですね」
「外の世界でもとんでもない人や国になるわね」
「絶対に」
 神宝ははっきりと答えました。
「そうなります」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「皆でわかっていきましょう」
「はい、本当に」
「そうしていきましょう」
 こう言ってでした、グリンダはケーキを食べました。その食べているケーキはチーズケーキですが。
 そのチーズケーキを食べてです、また言いました。
「ケーキも色々な種類があるでしょ」
「数えきれない位に」
「それで色々なケーキを食べて」
 そしてというのです。
「楽しめるわね」
「そうですね」
「だからね」
「色々あっていいですね」
「ケーキも一種類だけだと」
 それならというのです。
「飽きるしね」
「幾ら美味しくても」
「そうなるから」
 だからだというのです。
「いいのよ」
「そうですよね」
「さあ、食べましょう」 
 チーズケーキを食べつつ言います。
「色々なものをね」
「そうさせてもらいます」
「僕達も」
「ケーキにしてもです」
「色々楽しませてもらいます」
「是非」
 神宝も他の四人の子達も笑顔で応えてでした。
 実際にケーキを食べます、王様はその光景を見て笑顔で言いました。
「幸せですね」
「そうよね」
「本当に」
 グリンダに言うのでした。
「そのことを実感しています、そして」
「夜もね」
「ご馳走を食べて」 
 そしてというのです。
「お風呂にもです」
「入るわね」
「川獺はいつもお水の中にいるので」
 それでというのです。
「そこで奇麗になっていますが」
「お風呂もなのね」
「入ります」 
 そうするというのです。
「毎日」
「お湯も好きなのね」
「はい、そちらで身体を洗って」
 そうしてというのです。
「毛もです」
「洗うのね」
「そしてブラッシングもして」
 そうもしてというのです。
「身だしなみを整えることもです」
「好きなのね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「皆さんもです」
「夜はお風呂に入っていいのね」
「そうして下さい」 
 こうお話するのでした。
「是非」
「それではね」
「皆さんもお風呂はお好きですね」
「ええ」
 オズマが答えました。
「凄くね」
「ではです」
「お風呂もね」
「楽しまれて下さい」
「それではね」
「川獺のお風呂はです」 
 それはといいますと。
「大浴場で泳げます」
「川獺だからよね」
「そうです、ですから」
 それでというのです。
「皆さんもです」
「泳げばいいわね」
「そうされて下さい、では」
「お風呂もね」
「楽しんで下さい」
「そうさせてもらうわね」 
 オズマが一行を代表して笑顔で頷いてでした。
 皆は夜はお風呂も楽しみました、美味しいものも食べてそうしてでした。
 川獺の国でも色々と楽しいことを満喫しました、そうして次の国に向かうのでした。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る