『新オズのグリンダ』
第九幕 狸と貉
狐の国への訪問を終えて今度は狸の国に行く時にです、ジュリアがその国まであと少しと言うところで言いました。
「一つ気になったのは」
「何なの?」
「はい、狸とアナグマのことです」
オズマに聞かれて答えました。
「今度行く国はあの人達の国ですね」
「だから正確には狸と貉の国というのよ」
「そうですね」
「それがどうかしたの?」
「はい、実は私最初はです」
ジュリアはオズマに答えて言いました。
「誰が狸で誰が貉か」
「わからなかったの」
「貉、アナグマはです」
この生きものはといいますと。
「アジアとアメリカでまた違いますね」
「そうそう、アメリカのアナグマはアメリカアナグマよ」
ドロシーが答えました。
「アジアのアナグマとはね」
「また書類が違いますね」
「そうであってね」
「狸との違いはわかりやすいですが」
「アジアのアナグマになるとね」
「これがどうもです」
「狸とかなり似ているわね」
「それで最初は見分けることがです」
「難しかったわね」
「毛の色もシルエットも」
どちらもというのです。
「本当にです」
「そっくりよね」
「はい、ですから」
それ故にというのです。
「中々」
「日本とかだと同じ穴に暮らしているんだよね」
魔法使いがこのことをお話しました。
「狸とアナグマは」
「同じ穴の狢ね」
ビリーナは魔法使いの言葉を受けてこう言いました。
「そうよね」
「うん、それはね」
「狸とアナグマが同居しているからよね」
「狸は自分で穴を掘ることが出来なくて」
それでというのです。
「アナグマの穴に入ってね」
「同居するのね」
「そうすることがあるから」
だからだというのです。
「こうした言葉が出来てね」
「狸とアナグマは仲がいいのね」
「それでこれから私達が行く国でもだよ」
「一緒に暮らしているのね」
「そうだよ」
「成程ね、狸は僕の親戚だけれど」
トトは犬として言いました。
「アナグマはまた違う種類だけれど」
「似ているのよね」
エリカが応えました。
「本当に」
「そうなんだよね、けれど匂いはね」
それはといいますと。
「やっぱりね」
「違うわね」
「そこでわかるよ」
「あっ、匂いは」
ジュリアはトトの言葉にはっとなって言いました。
「貴方達はわかるわね」
「犬や猫はね」
「お鼻がいいから」
「特に僕達犬はね」
トトは笑顔で言いました。
「わかるよ」
「そうよね」
「それでわかるよ、目でわからなくても」
「お鼻でわかるわね」
「そして声でもね」
「鳴き声も」
「同じ様な外見でもね」
そうであってもというのです。
「種類が違うとね」
「鳴き声が違ったりするわね」
「そして声の色も」
これもというのです。
「違ったりするからね」
「同じ種類の生きものでね」
そしてと言うビリーナでした。
「鳴き方や声の色が違うわね」
「そうだよね」
「匂いもそうね」
「見分ける方法は一つじゃないよ」
「狸と貉もね」
「そうだよ」
「そう、そっくりさん同士でも」
グリンダはそれでもと言いました。
「違いがあるのよ」
「見た目以外のことでね」
魔法使いも言いました。
「あるね」
「そうなのよ」
「生きものはね」
「同じ種類でもね」
「違いがあるね」
「それぞれ個性があるから」
だからだというのです。
「本当にね」
「違いがあるよ」
「そしてそれを見分けるのは」
「外見だけじゃないんだよ」
「匂いや声でもね」
「見分けられるよ」
「そうなのよね、外見がそっくりでも」
ドロシーはそれでもと言いました。
「違うよのね、狸さんや貉さんは化けるのが得意で」
「先の狐さん達もね」
グリンダが応えました。
「そうよね」
「ええ、そして悪戯好きで」
そうであってというのです。
「私達に化けることもね」
「よくするわ」
「今上げた生きものはね」
「化けるだけの妖力があれば」
「そうするのよね」
「ええ、けれどね」
グリンダはそれでもと言いました。
「違うのよ」
「私達そっくりに化けても」
「若し声をそうしても」
「トト達だと匂いが違うし」
「他のことでもね」
「狐さん達だったら」
ドロシーはそれならと言いました。
「揚げが大好きで揚げを見ると」
「そう、その瞬間にね」
まさにとです、グリンダは答えました。
「尻尾が出てしまうわ」
「そうなるわね」
「条件反射みたいにね」
「相当注意していてもね」
「それこそ揚げと聞いただけで」
その目で見なくともです。
「尻尾が出てしまうわ」
「そうよね、そして揚げを出さなくてどんな行きものでも」
そっくりに化けてもというのです。
「その人の内面まではよ」
「化けられないわね」
「だからその人の癖を見たり知っていることを聞くと」
「わかるわね」
「内面をよく見れば」
「見破れるわね」
「ええ、そして外の世界だとね」
そちらならというのです。
「その人がどうなのか」
「よく見たらいいわね」
「それでわかるわ、ちゃんとした良識を備えて」
そうしてというのです。
「その人をじっくり見ればね」
「わかるわね」
「楽器を演奏出来ない人がオーケストラの中にいたらわかりにくいわね」
グリンダは今度はこう言いました。
「けれど一人一人聴いていくとね」
「出来るかどうかわかるわね」
「じっくりと見ることよ、大勢のまともな人達の中にね」
「おかしな人がいれば」
「わかるわ、大抵の人はまともなのがね」
「外の世界ね」
「その中で若し英雄のふりをした悪人がいても」
それこそ化けた様にその中にいてです。
「一人一人見ていくとね」
「悪人かどうかわかるわね」
「そう、そして」
それでというのです。
「化けている人を見破ったら」
「それを言うことね」
「この人は偽物だってね」
その様にというのです。
「それが何故かもね」
「言えばいいわね」
「そうよ、そして悪人だったら」
「皆に言うことね」
「そうすればいいのよ、若しそこで善悪がわからない人がいても」
それでもというのです。
「世界では常に大勢の人が善悪がわかっているから」
「わからない人よりもずっと多く」
「悪が悪とわかっているから」
「悪人は裁かれるわね」
「そうなるわ」
外の世界ではというのです、こうしたことを狸の国に行く前にお話しました。そして狸と貉の国に着くとです。
日本の趣、平安時代のそれが濃い街の入り口に狸と貉達が大勢お出迎えに来ていました、その先頭に青い服を着た狸の王様と黒い服を着た貉の王様がいました。
「ようこそ我が国に」
「おもてなししますぞ」
「ああ、王様はお二人なんだね」
神宝は王様達を見て言いました。
「狸と貉の国だから」
「それで狸の王様もいて」
カルロスはそれでと言いました。
「貉の王様もいるんだね」
「そうだね。しかし本当にそっくりだね」
ジョージはお迎えしてくれている狸と貉を見て思いました。
「目だけだとよく見ないとわからないよ」
「よく見たら確かに違うけれど」
それでもと言うナターシャでした。
「少しではわからないわね」
「そこで匂いや声も確かめると」
恵梨香はそうしたらと言いました。
「わかるのね」
「実はね」
狸の王様がここで言いました。
「私達狸は自分で穴を掘れないんだ」
「そうそう、狸は」
「それが出来ないんだよね」
「穴で暮らすけれど」
「それでもなのよね」
「自分では」
「スコップとかを使えば出来るけれど」
それでもというのです。
「自分の手ではね」
「けれどアナグマさんは出来る」
「その名前の通り」
「だからアナグマさんの巣に入って暮らすのよね」
「同居という形で」
「そうなのよね」
「そうなんだ、だからね」
それ故にというのです。
「貉さん達とは仲がいいんだ」
「基本お互いの生活に干渉しないで」
貉の王様も言ってきました。
「それでね」
「一緒に暮らしているね」
「同居人としてね」
狸の王様も応えました。
「この国でもね」
「そうしているね」
「同じ穴の狢というけれど」
「それで昔の日本じゃ一緒と思われたね」
「狸と貉は」
「同じ生きものだって」
「確かに少し見ただけではわからなくて」
それでと言う神宝でした。
「同じに見えますね」
「そうなんだよね、これでね」
魔法使いは神宝に笑ってお話しました。
「食べるものも被るから」
「そうなんですね」
「狸とアナグマはね」
「だから尚更ですか」
「同じ様に見えるよ、けれどね」
「それでもですね」
「違うからね」
だからだというのです。
「そこはわかっていてね」
「それでは」
「さて、まずはお昼ですが」
ここで貉の王様が言ってきました。
「私達は先程のお話通り食べるものが被っていたりするのね」
「いつも一緒に食べています」
狸の王様も言います。
「朝昼晩と」
「二人で」
「それでこのお昼はたぬきうどんです」
「そちらになります」
「たぬきうどん?」
ですがそう聞いてでした、まずは神宝が首を傾げさせました。
「何だったかな」
「きつねうどんは聞くけれど」
「たぬきそばもね」
「ええと、何だったかな」
「たぬきうどんって」
恵梨香達四人も言います。
「関西じゃないね」
「確か天かすを入れたおうどん?」
「それだったわね」
「関東だと」
「あと愛媛だとあんかけで」
「そうそう、関西じゃ天かすを入れるとハイカラうどんで」
それでと言う神宝でした。
「僕達も関西の学校に通って関西で暮らしているからそっちだね」
「それで揚げを入れたおそばはたぬきそば」
「きつねそばじゃなくて」
「けれど他の地域だときつねそばと言うんだ」
「そうだったよ」
「このことがわからないと」
どうしてもと言う神宝でした。
「たぬきうどんと聞いてもわからないね」
「そのことはあるね」
貉の王様も笑って言いました。
「たぬきうどんが何かは」
「ええ、この子達は日本の関西の子達だから」
オズマはそれでとお話しました。
「たぬきうどんはね」
「知らないですね」
「まして恵梨香以外の子達は他の国から来ていて」
日本以外のというのです。
「それで関西に入ったから」
「日本の関西以外の地域のことはですね」
「よく知らないのよ」
「そうですね」
「そしてね」
それでというのです。
「きつねうどんはね」
「揚げを入れたおうどんですね」
「それがお蕎麦になるとい」
「たぬきそばですね」
「そうなるのよ」
「それで天かすを入れると」
「ハイカラうどんになって」
それでというのです。
「ハイカラそばにもね」
「なりますね」
「そうなのよ」
「日本のお話ですね、ただ」
「ただ?」
「日本で狸と言えば四国で」
狸の王様は笑って言いました。
「四国ではおうどんなので」
「貴方もおうどんが好きなのね」
「私もです」
貉の王様も言ってきました。
「狸と狐は仲よしなので」
「それでなのね」
「先程お話にあった通りに」
「好きな食べものも被っているから」
だからだというのです。
「おうどんもです」
「好きなのね」
「左様です」
「勿論おうどん以外もありまして」
貉の王様はさらに言いました。
「茸や山芋の佃煮に焼き魚に山菜の天婦羅と」
「色々あるのね」
「はい」
まさにとです、貉の王様はグリンダにも答えました。
「山と川の幸を揃えました、あと揚げもです」
「あるのね」
「狐さん達程ではないですが」
それでもというのです。
「我々も揚げが好きなのね」
「よく食べるのね」
「ですから」
「揚げも出してくれるのね」
「ご所望なら」
「そうなのね」
「そしてデザートは」
貉の王様はこちらのお話もしました。
「お饅頭です」
「いや、外の世界では狸はよくお地蔵様に化けるからね」
「我等貉ももっと言えば狐さん達も」
「そしてね」
狸の王様が応えます、お二人の仲はかなりいいみたいです。
「お供えを頂こうとするね」
「そうするね」
「けれどいつもお供え見た途端に尻尾が出て」
「食べようと思って」
「そこでばれて」
「怒られるんだよね」
「悪企みするからよ」
ドロシーはそのお話を聞いて言いました。
「全く、そんなことはね」
「駄目ですよね」
「やはり」
「そうよ、化けてお供えくすねるなんて」
そうしたことはというのです。
「したら駄目よ」
「オズの国ではしないですから」
「我々も」
「ええ、オズの国は悪い人や生きものはいないから」
「皆そんなことしなくても生きられますし」
「それも幸せに」
だからだというのです。
「しないです」
「法律でも定められていますから」
「そうだけれどね、ただね」
こうも言うドロシーでした。
「貴方達はお饅頭好きなのね」
「大好きです」
「本当に」
それこそという返事でした。
「おはぎにしましても」
「大好物です」
「そうなのね、それでお昼のデザートは」
「お饅頭です」
「そちらもご期待下さい」
「それではね」
ドロシーも頷きました、そして早速お外でお昼ご飯となりました。国に入ってお店で食べるのですが。
天かすの入ったおうどんをお箸で食べてです、グリンダは言いました。
「天かすが入ると」
「それだけで違いますね」
「ええ、味がね」
ジュリアに答えます、お店はまさに日本のうどん屋さんです。
「かなりね」
「美味しくなりますね」
「何でもない様で」
それでいてというのです。
「それがね」
「違ってきますね」
「これがね」
「そうなのよね」
オズマも言います。
「おうどんとかお蕎麦によ」
「天かすを入れると」
「物凄く美味しくなるのよ」
「お好み焼きや焼きそばもそうで」
狸の王様もおうどんを食べつつ言います。
「たこ焼きもです」
「所謂粉ものね」
「はい」
まさにというのです。
「そうしたものにです」
「天かすを入れると」
「それだけで、です」
「味が全く変わるわね」
「段違いにですよね」
狸の王様は笑顔で言いました。
「美味しくなりますね」
「ええ、ちょっとしたことよね」
「はい、天かすを入れることは」
「確か外の世界では」
貉の王様も言います。
「天かすは何でもない位安いですね」
「そうだよね」
神宝はそのお話を受けて言いました。
「言われてみれば」
「日本のお店でも売ってるけれど」
カルロスはそれでもと言いました。
「本当に安いね」
「揚げた残りでもいいし」
それでと言うジョージでした。
「代用出来るし」
「物凄く安いわ」
恵梨香も言います。
「天かすは」
「お店じゃサービスで入れられるところもあって」
ナターシャは関西のお店を思い出しました。
「本当に何でもないわね」
「そう、けれどね」
貉の王様はそれでもと言いました。
「入れると味がぐんと違ってくるんだよね」
「魔法だね」
トトが笑って言ってきました。
「それだけでここまで味が違うって」
「確かに入れると全く違うわ」
エリカも認めることでした。
「物凄く美味しくなるわ」
「これがお好み焼きや焼きそばだとね」
「尚更だよね」
「もう味が本当に違うのよ」
「美味しさが段違いに上がって」
「さらに美味しくなるわ」
「それを入れたものがだよ」
その天かすをというのです。
「たぬきうどんやたぬきそばと呼ぶんだ」
「関西以外の地域だと」
「そうなるのね」
「そうだよ、揚げもいいけれど」
狐達の大好きなそれもというのです。
「天かすもいいね」
「確かに」
「その通りね」
「そうね、しかしね」
ここでビリーナはこんなことを言ったのでした。
「こうして二種類の生きものが一緒に国をやっていることって」
「面白いよね」
「そうだね」
「お家もそうなのかしら」
二人の王様に尋ねました。
「やっぱり」
「うん、今でもね」
「一つのお家に両方の家族が暮らすこともあるよ」
王様達はまさにと答えました。
「私達はね」
「そうしているよ」
「狸の家族と貉の家族が同居していることも多いよ」
「一つのお家でね」
「やっぱりそうなのね、本当にあれね」
ビリーナはそのお話を聞いて笑って言いました。
「同じ穴の狢ね」
「私達はね」
「ずっとそうした関係だよ」
「アメリカアナグマや中国の狸もいるけれど」
魔法使いは山の幸を食べつつ言いました。
「同じだね」
「はい、狸とアナグマはです」
「一緒に暮らしています」
「それも仲よく」
「同じお家同じ家族で」
「そうだね、そう思うとね」
魔法使いは微笑んで言いました。
「オズの国に相応しい国だね」
「仲よく共に暮らしている」
「そのことがですね」
「うん、とてもね」
「そうですね、ですから」
「私達はこれからもです」
二人の王様は魔法使いにも言いました。
「一緒に暮らしていきます」
「仲よく」
「そうしていこう、オズの国全体で」
まさにというのです。
「そうしていこう」
「是非共」
「そうしていきましょう」
「いや、おうどんを食べると」
グリンダは笑顔で言いました。
「このおつゆの香りも満喫出来ることがいいのよ」
「そうよね、日本のだしよね」
ドロシーも食べています、そのうえでの言葉です。
「昆布や煮干しを使った」
「にっぽんのだしよ」
「これがまたいいのよね」
「麺だけじゃなくてね」
「それならね」
「こちらも楽しみましょう」
こうお話しておうどんや他のお料理も楽しみます、そうしてその後は王様達は音楽会を催してくれましたが。
狸も貉もお腹を叩いて腹太鼓で演奏をします、その太鼓の音を聞いてです。
グリンダは微笑んで、です。屋外の日本の演奏会場においてのそれを前にしてこんなことを言いました。
「お腹を叩いて太鼓にすることもよ」
「面白いのよね」
「ええ、こんな楽器はね」
「他にないわね」
「狸と貉だけよね」
「そうよね、ただ」
ここでドロシーはこのことを言いました。
「狸は叩いても」
「貉は、よね」
「どうだったのかしら」
「オズの国ではね」
二人にオズマがお話しました。
「貉もよ」
「腹太鼓を叩けるの」
「そうなの」
「ええ、狸さん達に教わって」
そうしてというのです。
「そのうえでね」
「叩ける様になったの」
「演奏出来る様に」
「一緒にね。確かに種類は違うけれど」
生きもののそれはというのです。
「ずっと仲よく暮らしているから」
「それでなのね」
「出来る様になったのね」
「そうなの」
まさにというのです。
「そうなったのよ」
「成程ね」
「そうしたことなのね」
「そう、そして」
それでというのです。
「私達にね」
「聴かせてくれているのね」
「二種類の生きものの腹太鼓を」
「そうよ、面白い音よね」
狸と貉の腹太鼓はというのです。
「どちらも」
「そうね、ただどちらがどちらか」
ドロシーは聴きつつ思いました。
「わからないわ」
「どちらが狸のものか貉のものか」
グリンダも言います。
「そうね、私にもよ」
「わからないのね」
「違うのかも知れないけれど」
「私達にはね」
「狸の音の方が高いわよ」
ここで言ってきたのはエリカでした。
「貉のそれよりもね」
「そうなのね」
「ええ、身体が違うから」
それでというのです。
「やっぱりね」
「それが影響して」
「それでね」
「狸の腹太鼓の方が音が高いのね」
「そうなっているわ」
「そうなのね」
「外見は似ていても違うと」
それならというのです。
「やっぱり音もね」
「違うのね」
「猫の耳にはわかるわ、もっと言えば」
エリカはさらに言いました。
「人間も音楽に通じていて」
「音楽家の人ね」
「そう、プロの人が聴くと」
「わかることね」
「そうでなくとも聴いていると」
何度も、長い時間をかけてというのです。
「わかってくるわよ」
「経験を積めば」
「そうよ、けれど猫の耳にはね」
エリカは胸を張って誇らしげに言いました。
「すぐにわかるわ」
「猫の耳はね」
オズマも言います。
「物凄くいいから」
「そうよ、だからね」
「すぐわかるわね」
「どんな音も聴き分けられて」
「音楽もにしても」
「同じなのよ」
「犬はお鼻で猫は耳ですね」
ジュリアはエリカのお話を聞いてオズマに言いました。
「つまり」
「そうね」
オズマも確かにと頷きました。
「そういうことね」
「そうですね」
「そう思うとね」
それならというのです。
「それぞれの生きもので特徴があって」
「素晴らしいものを持っていますね」
「そうね」
「そうよ、だから今回もわかったし」
エリカは胸を張って言いました。
「他のことでもね」
「猫はわかるのね」
「そうよ」
グリンダに答えました。
「凄いでしょ」
「そこで自慢するのはよくないわよ」
オズマはそんなエリカを注意しました。
「いつも言ってるけれど」
「そう言うの」
「言うわ、貴女はそこをあらためたら」
そうしたらというのです。
「もっとね」
「よくなるっていうのね」
「そうよ」
実際にというのです。
「本当にね」
「そうなのね」
「かなりよくなってるけれど」
「もっとよくなるのね」
「そうよ」
「いいところをもっとよくする」
ここでグリンダは言いました。
「そうしたらよくないところはね」
「なくなっていきますね」
「よくないところを伸ばすことがね」
それがとです、ジュリアに答えました。
「なくなってね」
「それで、ですね」
「そうなっていってね」
「いいところを伸ばすばかりになって」
「よくないところは次第にね」
「小さくなって」
「そしてよ」
そのうえでというのです。
「なくなっていくわ、それにいいところが大きくなると」
「よくないところは」
「かえって目立ちもするし。同じ色の中に違うものがあると目立つわね」
「はい」
確かにとです、ジュリアも頷きました。
「そうなりますと」
「青い中に白があったら」
「本当に目立ちますね」
「赤と白でもね」
「同じですね」
「だからね、よくないところを」
それをというのです。
「何とかしようとね」
「思う様になって」
「自然と努力する様になるのよ」
「いいところを伸ばすと」
「だからまずはね」
「いいところを伸ばす」
「エリカについてもそうで」
そうであってというのです。
「他の皆もね」
「それは同じですね」
「長所を伸ばすことよ」
「はい、若しです」
貉の王様が言ってきました。
「悪いところばかり言われると」
「そうだね」
狸の王様も言いました。
「悪い部分だけ意識して」
「いい部分はね」
「見なくなってね」
「もう悪い悪いで」
「どうにもならない気分になるよ」
「そうだね」
「駄目出しはね」
これはといいますと。
「オズの国ではね」
「しないね」
「誰もね、それよりも」
「そう、誰でもいいところはあるから」
「そのいい部分を言ってね」
「どんどんよくする」
そのいい部分をです、貉の王様は言いました。
「それこそがだよ」
「いいことだよ」
「全くだね」
「そうしたら」
まさにというのです。
「よくなっていくよ」
「そしてよくない部分はね」
「いい部分を伸ばす方に力が使われて」
「そちらに力が向かわなくて」
「次第に弱くなる、そして」
そうなりというのです。
「次第に目立つ様になって」
「自然とそこをなおそうとなるから」
「まずいい部分を伸ばす」
「そこからだね」
「そうですね。相当な状況でないと」
神宝は太鼓の音とお話を聞いて言いました。
「さもないとです」
「まずはね」
「いい部分を伸ばす」
「それがいいね」
「オズの国でそうしている様に」
恵梨香達四人も言います。
「まずいい部分を伸ばす」
「悪い部分を駄目出しするんじゃなくて」
「悪い部分をすぐになおさないと駄目な場合もあるけれど」
「そうでないのんら」
「そこからよね」
「そうだね、それでエリカも」
神宝は白い猫を見て言いました。
「まずいい部分が伸ばされたね」
「そうみたいね、私は自覚はないけれど」
エリカは神宝にも応えました。
「そうしてね」
「よくなったね」
「そうみたいね」
「最初の貴女はいい娘じゃなかったわ」
「全くだね」
ドロシーだけでなく魔法使いにも言います。
「オズの国に最初に来た頃は」
「トラブルメイカーだったわ」
「けれどそれがね」
「随分よくなったわ」
「そうなったから」
だからだというのです。
「今思うとね」
「いい部分が凄く大きくなって」
「よくない部分はかなり小さくなって」
「いい娘になったわ」
「全くだね」
「私一度ウグに桃の中に入れられたわね」
オズマはかつて自分がいなくなった時のお話をしました。
「姿を変えられて」
「あの時は大騒ぎだったわ」
ドロシーはその時のことを思い出して少し苦笑いになりました。
「全く以てね」
「そうだったわね」
「けれどウグもね」
その騒動を起こした張本人もというのです。
「今はね」
「いい人になったわ」
「そうだったわね」
「そうなることも」
それもというのです。
「本当にね」
「オズの国よね」
「あの人は改心して」
「そうなってくれたわね」
「そしていい部分が大きくなって」
「よくない部分はね」
「もうなくなったわ」
そうなったというのです。
「嬉しいことに」
「皆にとってもね」
「その人がよくなることは誰にとってもいいことですよね」
狸の王様が言ってきました。
「その人だけでなく」
「そうだね」
貉の王様はパートナーの言葉に頷きました。
「全く以て」
「周りがその人に助けられる様になって」
「いい思いをしてね」
「そしてその人も評判がよくなって」
「いいこと尽くめだよ」
「その人がよくなることは」
「本当に」
こうお話します、そしてです。
演奏会を見ます、そして二人でお話します。
「演奏もよくなっていっているよ」
「どんどんね」
「皆頑張って稽古をしているから」
「稽古をすればする程よくなるから」
「だからね」
「皆どんどん上手になっているよ」
「最初は貉はまだまだだったけれど」
狸達に腹太鼓を教えてもらった時はというのです。
「それがね」
「稽古をしていって」
「どんどん上手になって」
「今では同じ位上手になったね」
「そうだね」
「そうね。そしてその音を聞き分けることは」
どうかとです、グリンダは言いました。
「聴いていると」
「出来る様になります」
「エリカ嬢だけでなく」
王様達はグリンダに答えました。
「必ずです」
「そうなります」
「そうね、聴くことも努力で」
そうであってというのです。
「誰でも努力したら」
「よくなりますよ」
「本当に」
「そうなのよね」
「努力は本当に大事だね」
トトも言いました。
「誰でも努力すればよくなるんだね」
「そうね」
ビリーナも頷きました。
「確かに努力をしているとね」
「出来る様になってね」
「よくなるわ、ジュリアなんてね」
彼女を見て言うのでした。
「かなりね」
「努力家でね」
「何でも出来るでしょ」
「それも上手にね」
「オズマの侍従長としてね」
その役職でというのです。
「物凄くね」
「何でも出来る」
「そうしたよ」
まさにというのです。
「オズの国一のメイドさんよ」
「努力しているからね」
「そうなっているわ」
「全くだね」
「逆に努力しないと」
「そうはならないわ」
「そう、ジュリアはね」
実際にとです、ジュリアをいつも見ているオズマも言います。
「物凄い努力家よ」
「そうだよね」
「ここまで努力する人はそうはいないから」
だからだというのです。
「私も感謝しているし尊敬もしているわ」
「努力家だって」
「だから私もね」
オズマ自身もというのです。
「努力しないといけないって思って」
「それでよね」
「ええ」
まさにというのです。
「努力をね」
「しているわね」
「何でもね」
そうしているというのです。
「政治も学問も」
「何でもよね」
「スポーツもね」
こちらもというのです。
「本当にね」
「努力しているわね」
「努力しないと」
さもないと、というのです。
「何も出来ないからね」
「努力していっているわね」
「少なくともそのつもりよ」
オズマとしてはというのです。
「他の人から見れば違うかも知れないから」
「主観と客観ね」
「自分ではしているつもりでも」
それでもというのです。
「人から見ればね」
「違ったりすることはあるわね」
「だからね」
それでというのです。
「違うかも知れないわ」
「皆貴女が努力していると思っているわ」
ドロシーはそのオズマに微笑んで言いました。
「だからね」
「安心していいのね」
「ええ、そして努力は実を結ぶわね」
「必ずね」
「貴女もそうなっているから」
「頑張ればいいのね」
「このままね」
こう言うのでした。
「そうしていけばいいわ」
「それなら」
「ええ、頑張ってね」
「これからもね」
笑顔でこうしたお話をしました、そしてです。
狸と狐の国でも楽しい時間を過ごしました、そうして訪問の時が終わるとまた次の国に向けて出発するのでした。