『新オズのグリンダ』
第八幕 狐の国
一行は今度は狐の国に行くことが決まっていました、ビリーナはこのことについてタンクの中で言いました。
「狐って鶏肉好きでしょ」
「私達猫と同じでね」
エリカが応えました。
「そうなのよね」
「だから昔はね」
「襲われないかって警戒していたのね」
「狐と会う時はね」
そうだったというのです。
「そうだったわ」
「昔は生きものも狩りをしていたしね」
「ええ、けれど今はそんなこともなくて」
それでというのです。
「別にね」
「警戒もしないわね」
「ええ、それでね」
そうであってというのです。
「狐も随分変わったわね」
「多彩になったね」
トトがこう言ってきました。
「随分と」
「そうね」
ジュリアが確かにと応えました。
「アメリカだけじゃなくて」
「中国とか日本とかね」
「そうした国の狐も増えたわ」
「そうだよね」
「それで建物や食べものも」
そちらもというのです。
「中華街に中華料理に」
「日本のお家に和食にね」
「そうしたものが増えたわ」
「それで特にね」
トトは言いました。
「揚げが多くなったね」
「ええ、もう狐の国っていうと」
まさにとです、ジュリアは言いました。
「揚げという位にね」
「皆よく食べるね」
「そうなっているわ」
「勿論他のものも食べるけれど」
「揚げがね」
「皆大好きになっているわ」
「そう、狐の国も変わったのよ」
グリンダも言います。
「昔と比べてね」
「そうだね、オズの国が変わると共にね」
魔法使いがグリンダとお話します。
「当然の様にね」
「狐の国も変わったわ」
「中華街が出来たのは」
それはどうしてかといいますと。
「中国では狐が多いからね」
「狐のお話が多いわ、あの国は」
「だからだよ」
「狐の国でも中華街が出来たわね」
「オズの国の他の地域と同じくね」
「そうなっているわね」
「それで中華料理もね」
こちらもというのです。
「食べる様になったわね」
「そうだよ」
狐の国でもというのです。
「あの国でもね、そして日本でもね」
「狐が多いわね」
「狐のお話もね」
「それで日本文化も入って」
「日本のお家もあってね」
狐の国にというのです。
「和食もあるよ」
「そうよね」
「そういえば」
ここでドロシーが言いました。
「オズの国の狐は尻尾が何本もある狐もいるけれど」
「それは中国の狐からでね」
オズマが答えました。
「尻尾が多いとそれだけね」
「妖力が強いのよね」
「それが九本になると」
それだけになるというのです。
「もう仙人さんと同じ位よ」
「強い妖力を持っているわね」
「仙力じゃなくて妖力と呼ぶけれど同じものでね」
「魔力ともね」
「それでその妖力がね」
それがというのです。
「尻尾が九本になると」
「かなり強くて」
「仙人さんそれも神様の域に達した位の人にもね」
「匹敵するわね」
「そこまで強いわ」
「中国では狐も試験があって」
その中国人の神宝がお話します。
「試験に合格すればどんどん位も上がるんですよね」
「ああ、そうだったね」
ジョージは神宝のそのお話に応えました。
「中国の狐は」
「それで合格する都度に位が上がって」
そしてと言う恵梨香でした。
「一番偉いのは天狐よね」
「そこまでなるとだね」
カルロスも言います。
「もう本当に仙人さんにも負けないね」
「それが中国の狐で」
それでと言うナターシャでした。
「尻尾の数も力に比例して強くなるわね」
「そうよ、けれどね」
グリンダは五人の子供達にお話しました。
「狐の国ではそうした狐はいないのよ」
「仙人さんみたいなですね」
「力の強い狐はですね」
「尻尾は皆一本で」
「妖力も持っていないですね」
「仙人さんみたいじゃないですね」
「そうした狐は深い山にいて修行しているから」
だからだというのです。
「普通に考えて訪問してね」
「わかりました」
「そうさせてもらいます」
「狐の国にも」
「それで狐さん達ともお話します」
「そうさせてもらいます」
神宝達はそれではと答えました、そしてです。
皆で狐の国を訪問しました、すると王様が国の正門で国の狐達を連れてそのうえで笑顔でお迎えしました。
「ようこそ狐の国に」
「久し振りね」
オズマが一行を代表して挨拶を返します。
「元気そうね、皆」
「この通り。美味しい揚げを食べて」
王様はそれでと言いました。
「元気ですね」
「貴方達本当に揚げが大好きになったわね」
「もうあんな美味しいものはないとです」
王様はにこにことして答えました。
「思う位です、それで実は」
「実は?」
「先日カワウソの国の王様にご馳走になりまして」
それでというのです。
「川の幸をご馳走になって」
「お礼に揚げをなの」
「ご馳走しました」
「狐の国のご馳走だから」
「皆大好きな」
「はい、厚揚げにきつねうどんにと」
「日本のお料理ね」
オズマはまさにと応えました。
「どちらも」
「楽しんでもらいましたが」
しかしというのです。
「あちらではまだ揚げはポピュラーではなかったです」
「というかね」
むしろとです、グリンダが答えました。
「貴方達と狸の国はね」
「揚げを好き過ぎますか」
「そう思うわ」
「そうですか、あまりにも美味しくて」
「皆病みつきね」
「特に我々は」
狐達はというのです。
「そうです、ですがまずは」
「まずは?」
「国の中を見てもらって」
そうしてというのです。
「お昼ですが」
「今回は揚げでないのね」
「はい、中華料理です」
こちらだというのです。
「そうです」
「そちらのお料理ね」
「中華街に入ってもらって」
狐の国のというのです。
「楽しまれて下さい」
「それではね」
「上海料理でいいですね」
中華料理の種類はというのです。
「今回は」
「上海料理大好きよ」
オズマが皆を代表してにこりと笑って答えました。
「それではね」
「これからですね」
「そう、貴方達も一緒よね」
「はい、それでは」
「お邪魔させてもらうわ」
ここでもにこりと笑ってです。
オズマは応えました、そうしてです。
皆狐の国に入れてもらいました、するとアメリカ風にジーンズを穿いた狐達だけでなく中国や日本の服を着た狐達もいます。
中華風や和風の木造の橋があったり中華街も日本のお家もありまして。
「アメリカと中国と日本が一緒にある」
「不思議な国ね」
「狐さん達もそれぞれで」
「面白い国ね」
「そうなっているね」
神宝達五人は国の中を案内されて見回してお話しました。
「お花も薔薇に梅に桜に」
「三つのお花が一緒にあって」
「香りもそうで」
「不思議な国ね」
「どうも」
「こうなったんだよ」
王様が五人に答えます。
「中国や日本の狐も来てその文化も入ってね」
「オズの国の中でもね」
魔法使いも説明します。
「狐の国は特に三国の文化が共存しているよ」
「そうした国になったんだね」
「うん、本当に狐はね」
神宝にお話します。
「中国と日本でお話が多いから」
「オズの国でもですね」
「多いんだ、欧州にもいるけれど」
狐はというのです。
「そんなに目立たないね」
「そうみたいですね」
神宝も否定しません。
「狼のお話が多いですね」
「あちらはね」
「狐よりも」
「童話でもね」
「狼が多いです」
「けれど中国や日本だとね」
「狐のお話が多くて」
それでとです、神宝は言いました。
「この狐の国でもですね」
「中国や日本の狐が多いんだ」
「そうなっていますね」
「アメリカにも狐がいて」
「オズの国にも狐の国があって」
「そしてね」
そうであってというのです。
「そこに皆が入ったんだ」
「面白いことですね」
「しかし皆尻尾は一本だからね」
王様もこう言います、立派な黄色いローブと服を着ていますが出ている尻尾は確かに一本だけです。
「この国の狐は」
「妖力を備えている狐はいないわね」
「はい、この国では」
グリンダに答えます。
「そうなっています」
「そうよね」
「それで」
王様はさらにお話します。
「皆普通にです」
「暮らしているのね」
「そうです、ですが確かに修行を積むと」
「妖力を備えて」
「それが強くなると仙人さんみたいになって」
そうしてというのです。
「尻尾も増えて」
「九本にもなるわね」
「九尾の狐ですね」
「あの狐ね」
「そうもなります、九尾の狐になりますと」
それこそというのです。
「かなり位の高い仙人さんにも匹敵する」
「凄い妖力を備えるわね」
「はい、ですが」
「ですが?」
「孫悟空さん達には負けますね」
このお猿さんにはというのです。
「あまりにも強いですから」
「孫悟空さん達は別格です」
神宝も言います。
「あの神様達は」
「そう、神様でも力はね」
「最強クラスですね」
「中国、道教の神様で孫悟空さんに勝てるとなると」
そこまでの神様はといいますと。
「関羽さんか項羽さんか」
「あの方々ですね」
「そうだよ、項羽さん位になったら」
それこそというのです。
「誰も勝てないよ」
「武力が強くて」
「本当にね。だから悟空さんにはね」
「九尾の狐でも負けますね」
「そうなるよ」
「悟空さんは確かに強いね」
トトも言います。
「伊達にたった一柱で中国の天界を暴れ回った訳じゃないね」
「あの神様昔は物凄い乱暴者で」
それでと言うドロシーでした。
「短気でね」
「暴れ回ったんだよね」
「別に征服しようとか制覇とか考えなくて」
「ただ暴れて」
「けれどそれがとんでもなくて」
物凄い大暴れでというのです。
「天界が大変なことになったのよ」
「そうだったね」
「あんな神様とは比べられませんよ」
王様も笑って言います。
「流石に」
「そうよね」
「ですが狐も修行を積めば」
「そこまでなれるわね」
「そうです、ではこれから」
「中華街でね」
「おもてなしをさせてもらいます」
そんなお話をして中華街に入りました、赤い色が目立つその街の中では胡弓や琵琶の声も聞こえていて中国の建物が立ち並んでいます。
その中の飯店の一つに入ってでした。
皆で上海料理を食べます、そこでジュリアが言いました。
「美味しいです」
「その言葉が最高の喜びです」
王様も食べつつ言います。
「何しろ中国の狐が多いので」
「中華料理もですね」
「多くて」
そうなっていてというのです。
「皆好きでして」
「美味しいって言われるとですか」
「嬉しいです」
こうジュリアに答えます。
「私達も」
「そうなのですね」
「はい、そして」
それにというのです。
「上海蟹ですが」
「これがメインですね」
「如何ですか」
「蒸した蟹が」
それを食べつつです、ジュリアは言うのでした。
「特にです」
「美味しいですか」
「はい」
そうだと答えます。
「本当に」
「そうですよね、麺も点心もありますが」
診れば焼売や蒸し餃子もあります。
「どうぞです」
「こちらもですね」
「いただいて下さい」
「それでは」
「そして」
それにというのです。
「最後のデザートもありますので」
「そちらもですね」
「ライチですが」
この果物だというのです。
「如何でしょうか」
「ああ、ライチね」
グリンダはライチと聞いてとても嬉しそうに言いました。
「あの果物なのね」
「お好きですか」
「大好きよ」
王様ににこりと笑って答えました。
「私もね」
「私もです」
ジュリアも言います。
「大好きです」
「それでは」
「デザートもですね」
「どうぞです」
まさにというのです。
「楽しまれて下さい」
「それでは」
ジュリアは満面の笑みで答えました。
「そうさせてもらいます」
「はい、昔はライチもです」
「召し上がられなかったですか」
「そうでした、ですがそれが」
「変ったんですね」
「オズの国が変わって」
そうなってというのです。
「その中にある我が国もです」
「それでライチもですね」
「食べる様になりました」
「昔はね」
グリンダも言います。
「ライチなんてあることもね」
「知らなかったですね」
「そうだったわ。ムシノスケ教授は文献で知っていても」
それでもというのです。
「けれどね」
「それでもですね」
「まだね」
それこそというのです。
「その目で見たことがなかったわ」
「教授にしましても」
「そう、オズの国にも殆どなくて」
ライチはというのです。
「木自体がね」
「それで見たことがなくて」
「勿論食べたこともね」
それもというのです。
「なくてね」
「どういったものかとですね」
「思っていたわ、けれどね」
それがというのです。
「オズの国の中で中国系の人が増えて」
「生きものも」
「文化もそうなってね」
それでというのです。
「中国の木も増えてね」
「竹等ですね」
「そうした木も増えて杏や蜜柑もで」
「そしてライチも」
「そうなってね」
「ライチの実も食べる様になりましたね」
「そうなったわ、そして食べると」
そのライチの実がというのです。
「凄くね」
「美味しいですね」
「私も大好きよ、ではね」
「デザートはライチを」
「喜んでいただくわ」
グリンダはにこりと笑って言いました、そうして上海料理を楽しんでその最後にライチを食べました。
そしてです、皆狐の王様の宮殿に招かれましたがその宮殿は欧風の立派な区域に中国の木造の宮殿に日本のものもありました。
その三つの区域を巡ってです、魔法使いは日本の区域を見て言いました。
「いつも思うけれど日本だけ違うね」
「左右対称でないです」
ジュリアが応えました。
「日本は」
「欧州は左右対称だね」
「宮殿もお庭も」
「アメリカもそうでね」
「中国もです」
「そうであるのに」
それがというのです。
「日本はね」
「左右対称ではないです」
「そうなんだよね」
「はい、それで狸の国ですが」
狐がお話します。
「ほぼ完全に日本です」
「ああ、狸って日本だけでなく中国にもいるけれど」
トトはそれでもと言いました。
「日本にお話が多いね」
「そう、だからオズの国の狸もだよ」
「日本の狸だね」
「もう殆どがね、他の国の狸がいてアナグマも一緒にいるけれど」
「アナグマさん達もなんだ」
「彼等はそっくりだからね」
狸とアナグマはというのです。
「同居しているよ」
「狸の国に」
「だから正確に言えば連合王国で」
狸の国はというのです。
「狸とアナグマ、貉の国なんだ」
「貉ってあれよね」
エリカが聞いて言ってきました。
「アナグマのことよね」
「そうよ」
ジュリアはその通りだと答えました。
「そうも呼ばれるのよ」
「日本とかではね」
「それで日本では狸とアナグマはね」
この二種類の生きもの達はといいますと。
「同じ様に言われるのよ」
「そうよね」
「面白いことにね」
「そして日本だと」
王様はあらためて言いました。
「左右対称じゃないよ、そしてお庭もこうしたものだよ」
「お池があって草木やお花を自然と調和する形に置いて」
ビリーナが言います。
「石もあったりするわね」
「そうなんだよ」
「日本だとね」
「いや、これは不思議だと」
王様はビリーナにも言いました。
「思ったね」
「最初は」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「受け入れるとこれもまたよし」
「そうなったわね」
「そもそも私達の一番の好物となった揚げも」
この食べものもとです、王様は揚げの味を思い出してついつい舌なめずりしてしまってそのうえで言いました。
「日本のものだしね」
「そうなのよね」
ドロシーがまさにと答えました。
「揚げはね」
「日本の食べものですね」
「そう、そして」
そうであってというのです。
「揚げをはじめて食べた時はなのね」
「感激しました」
「その美味しさに」
「我々狐を魅了して止まない」
そうしたというのです。
「至高の食べものです」
「狐さん達にとってはそうなのね」
「鶏肉すら遥かに凌駕する」
そこまでのというのです。
「最高のです」
「至高であって」
「そうした食べものでして」
「オズの国に日本が入ったこそからなのね」
「食べられるので」
だからだというのです。
「まことにです」
「オズの国に日本が入って」
「嬉しいです」
そうだったというのです。
「皆毎日食べています」
「それじゃあ夜は」
「勿論お出しします」
王様はオズマにも答えました。
「そちらも」
「そうしてくれるのね」
「夜は和食でして。尚明日の朝はアメリカ料理です」
「朝はなのね」
「ハンバーガー等です」
朝はというのです。
「そして夜は和食ですが」
「揚げも出るのね」
「おでんですから」
このお料理でというのです。
「揚げもです」
「中に入っているのね」
「そうです」
「おでん、そういえば」
神宝はこのお料理を聞いて言いました。
「オズの国ではまだ」
「食べていないわ」
ナターシャも言います。
「一度もね」
「代表的な日本のお料理の一つで」
それでと言うジョージでした。
「僕達も冬は結構食べるけれど」
「オズの国ではなかったよ」
カルロスも言いました。
「これがね」
「けれどご馳走になるなら」
恵梨香はにこりとして言いました。
「嬉しいわね」
「そういえば私も」
グリンダもおでんと聞いて気付きました。
「最近食べていないわ」
「左様でしたか」
「ええ、和食も好きで」
そうであってというのです。
「おでんもね」
「お好きで」
「そうだけれど」
それでもというのです。
「最近食べていなかったわ」
「それでは丁度いいですね」
「そうね、楽しみだわ」
「具はその揚げにです」
王様は何と言ってもという感じでまずは揚げを挙げました。
「がんもどき、ちくわ、ごぼ天、はんぺん、大根、卵、蒟蒻、筋肉、蛸、昆布、卵、スジ肉、コロです」
「あら、コロも入っているのね」
「鯨のそちらも」
「それは通ね」
「揚げは絶対に外せないとして」
それと共にというのです。
「他のものも考えてです」
「コロも入れたのね」
「おでんに入っていますと」
鯨のコロがというのです。
「これまたです」
「美味しいわね」
「はい、ですが」
王様はそれでもと言いました。
「やはりメインはです」
「揚げなのね」
「私達にとっては」
「じゃあ揚げはかなり多いかしら」
「全体の四割はです」
おでんの具のというのです。
「揚げです」
「四割なの」
「そうです、ですがおでんは他の具も必要ですね」
「どうしてもね」
「ですから」
それでもというのです。
「揚げは二割に抑えまして」
「抑えたのね」
「そしてです」
そのうえでというのです。
「他の具も入れました、皆さんのものは普通ですが」
「貴方達のおでんは四割なの」
「はい」
それだけだというのです。
「揚げが」
「そこまで好きなのね」
「そして揚げを肴にしまして」
王様はグリンダに実に嬉しそうに言いました。
「日本酒を飲むこともです」
「好きなのね」
「はい」
そうだというのです。
「大好きです」
「それじゃあ揚げを焼いてもきつねうどんもなのね」
「肴に飲んでいます」
お酒ここでは日本酒をというのです。
「そうしています」
「そうなのね」
「はい、そして」
そうであってというのです。
「今夜は日本酒です」
「おでんだから」
「そうです、勿論中華料理の時は中国のお酒です」
「杏酒や桂花陳酒ね」
「それに紹興酒ですね」
こうグリンダに答えます。
「アメリカ料理だとワインやバーボンです」
「そちらね」
「そして日本酒はです」
「和食の時ね」
「焼酎の時もあります、そして」
それでというのです。
「今夜は日本酒です」
「おでんを特に揚げを食べて」
「皆で楽しみましょう」
こうグリンダに言って宮殿の隅から隅まで案内しました、そうしてそのうえで国の名所も案内してもらいまして。
夜は宮殿に戻って皆で和室居酒屋風のテーブルに座っておでんを楽しみます、ドロシ―はその中の揚げを食べて言いました。
「狐さん達の言う通りにね」
「美味しいわね」
「ええ、こうした食べものがあることもね」
グリンダに食べつつお話しました。
「いいことよね」
「そうよね」
「日本の素敵な食べものの一つね」
「本当にね。私も好きよ」
グリンダも揚げを食べて言います。
「揚げはね」
「そうよね」
「それでおでんだから」
さらに言うグリンダでした。
「他の具もね」
「食べましょう」
「皆でね」
「いや、おでんは素敵な食べものだよ」
魔法使いは蛸を食べて言いました。
「色々な具があってしかもお酒にも合う」
「だからよね」
「私も好きだよ」
「そうよね」
「だから」
それでというのです。
「今こうして食べてね」
「お酒も飲むわね」
「日本酒をね」
おちょこで飲みます。
「そうするよ、私は冷たいものだけれど」
「そうそう、面白いことにです」
王様がここである人のお話をしました。
「以前こちらに日本の作家さんが来られましたが」
「日本のなんだ」
「はい、泉鏡花さんという人で」
その作家さんはというのです。
「妖怪が大好きな人で」
「確か妖怪ものを沢山書いた人だね」
「外の世界では。そしてオズの国でも」
「妖怪ものを書いているね」
「その泉鏡花さんですが」
「どうだったのかな」
「蛸は形が悪いからと言って食べなくて」
そうであってというのです。
「お酒は熱燗で」
「確かそれもかなり沸騰した」
「そうしたもので」
それでというのです。
「私もかなり驚きました」
「あの人はかなり特別な人よ」
グリンダも泉鏡花さんについてお話します。
「何でも火を通したものじゃないと食べないわね」
「お水もお湯で」
「何かと潔癖症ね」
「そう言っておられまして」
それでというのです。
「お酒もです」
「熱消毒ね」
「オズの国といいますか今はです」
現代はというのです。
「衛生もしっかりしていますので」
「あの人が外の世界におられた頃よりも」
「だから大丈夫とお話したのですが」
それでもというのです。
「それが習性になっておられるとのことで」
「お酒はそうして飲んでいたわね」
「はい、そして」
そうであってというのです。
「本当によく火を通したものでないと」
「食べなかったわね」
「お水にしましても」
「あの人はそうした人なのよ」
「オズの国でもですね」
「お鍋を食べても」
そうしてもというのです。
「よく火を通さないとね」
「召し上がられないですね」
「そう、あとこちらの世界では大丈夫になったけれど」
それでもというのです。
「犬がお嫌いだったわね」
「あの人は」
「そうであってね」
それでというのです。
「近付けなかったわ」
「不思議だよね」
トトは泉鏡花さんが犬がお嫌いと聞いて首を傾げさせました。
「別に怖がることはないのに」
「ところがそうでもないのよ」
オズマはそのトトに答えました。
「これがね」
「理由があるんだ」
「外の世界には狂犬病があるわね」
「あの怖い病気だね」
「鏡花さんが外の世界におられた頃は日本にもまだあったのよ」
狂犬病がというのです。
「それでね」
「鏡花さんは犬がお嫌いだったんだ」
「そうなの。かなりの潔癖症と言ったわね」
「それで犬もだったんだ」
「そうよ、兎に角極端な潔癖症だったのよ」
泉鏡花という人はというのです。
「本当にね」
「成程ね、それでわかったよ」
「吠えたり噛んだりも怖いけれど」
「狂犬病もだね、忘れていたよ」
トトにしてもです。
「オズの国だと狂犬病どころか他の病気もないし」
「それならね」
「忘れていたよ」
「けれどこれで思い出したわね」
「僕もね」
「いや、面白い人でしたよ」
王様は鏡花さんについてこうも言いました。
「妖怪に詳しくて、そして後で妖怪博士さんも来られましたが」
「あの元漫画家さんの」
「はい」
グリンダにまさにと答えました。
「あの人もです」
「妖怪に詳しくて」
「我々が妖力を持った場合についても」
狐についてもというのです。
「実にです」
「詳しくて」
「そしてです」
そうであってというのです。
「感服しました」
「あの人程妖怪に詳しい人はおられないわ」
グリンダが見てもです。
「外の世界のあらゆる国あらゆる妖怪をご存知で」
「お話を聞かせてくれました」
「貴方達のこともね」
「そうです、まさに妖怪博士で」
そうであってというのです。
「これ程までの方がおられるとは」
「思わなかったわね」
「私共も」
「ああした人がオズの国に来てくれてね」
「嬉しいですね」
「本当にね」
王様にお酒を飲みつつ応えます、見ますとグリンダはおでんだけでなく日本酒もかなり楽しんでいます。
「私も」
「全くです」
王様もその通りだと頷きました。
「オズの国もどんどん賑やかになってきています」
「これまでも賑やかで」
「これからもです」
「そうよね」
「色々な人が来られて。そして我々も揚げに出会えましたし」
またこう言った王様でした。
「感謝しきりです。それと今夜のデザートですが」
「夜は何かしら」
「葡萄の和菓子です」
「葡萄を使ったものね」
「ゼリーですが」
「和風のゼリーですね」
神宝が言ってきました。
「そうですね」
「お茶菓子とはまた違う」
そうしたというのです。
「素敵なね」
「和菓子ですか」
「そちらも楽しみにしていてね」
「そうします、おでんも楽しんで」
神宝はちくわを食べてから答えました。
「そうさせてもらいます」
「それではね。狐は葡萄も好きなんだ」
この果物もというのです。
「親子で食べるのがね」
「いいんですね」
「そう言われていてね」
「じゃあよく親子で食べるんですね」
「そうなんだ」
葡萄はというのです。
「私達の間ではね」
「オズの国の狐さん達の間だと」
「それでよくね」
「食べるんですね」
「そうなんだ、子供達はね」
狐のというのです。
「本当によく親御さん特にお母さんとね」
「葡萄を一緒に食べますか」
「お母さんの愛情がね」
まさにそれがというのです。
「葡萄に入るそうだよ」
「お母さんの愛情が」
「一緒に食べるとね」
「そう言われていてですか」
「そうするんだ、この国ではね」
「何か不思議なお話ですね」
「そうだね」
まさにとです、王様も応えました。
「暖かくて優しくてね」
「心に染み入る」
「そうしたね」
「いいお話ですね」
「それでその葡萄を使った」
まさにというのです。
「ゼリーをね」
「いただきますね」
「デザートにね」
そちらにというのです。
「そうしてね」
「わかりました」
神宝は笑顔で頷きました。
「そうさせてもらいます」
「皆で食べてね。勿論我々もね」
「同じ様に」
「是非ね」
こう答えました。
「そうしましょう」
「それでは」
「狐と葡萄といいますと」
神宝がここで言いました。
「何かです」
「どうしたの?」
「二つありますね」
こう言うのでした。
「一つは取れなくて拗ねるお話で」
「もう一つはなのね」
「お母さんとのお話で」
「今回はもう一つの方ね」
「そうですね、それじゃあ今は」
「その葡萄のお菓子をね」
「頂きます」
笑顔で言って皆で、でした。
そのお菓子もいただきました。狐の国でも誰もがとても楽しい時間を過ごすことが出来たのでした。