『新オズのグリンダ』
第七幕
一行は森に来ました、するとドロシーは懐かしい感じのお顔になってそのうえでこんなことを言いました。
「ここにも来たわね」
「何度かね」
トトが応えました。
「そうだね」
「ええ、それで最初に来た時はね」
「この森にある木の実を食べた熊がいて」
「その熊に襲われてよ」
「一難だったね」
「そうだったわ」
こうトトにお話します。
「魔法使いさんが戻ってきた」
「あの時の旅だったね」
「冒険だったわ」
その時もというのです。
「それであの時はね」
「ドロシーはカンサスに帰ったね」
「四回行って四回帰って」
そうしてというのです。
「五回目でよ」
「オズの国に定住したね」
「その時にね」
「来る度に定住する様に言ってたけれど」
オズマが笑って言ってきました。
「五回目でだったわね」
「中々ね」
「カンサスにも愛着があって」
「おじさんおばさんもいたしね」
このこともあってというのです。
「それでね」
「四回帰ったわね」
「カンサスにね」
「カンサスってね」
ビリーナが言ってきました、皆今はタンクの中にいてその中から森を見ています。森はカドリングの赤い葉と草で満ちています。
「私が思うにね」
「あれよね、大草原と畑ばかりあって」
エリカが応えます。
「他には何もない」
「そんなイメージよ」
「ドロシー達のお家もそうだったのよね」
「そうだったのよね」
「ええ、そうだったわ」
ドロシーもその通りだと答えます。
「私のお家もね」
「あのお家で最初にオズの国に来たわね」
「竜巻に乗せられてね」
「思えば凄いことよ」
ビリーナはしみじみとして言いました。
「竜巻で来るなんてね」
「お家が粉々にならないでね」
「思えば奇跡だったわ」
オズの国に来たことはというのです。
「あの時のことはね」
「まさにね」
「あそこでお家が壊されないでね」
「そのままオズの国に来たから」
「貴女と来た時もね」
その時もというのです。
「乗っている船が嵐に遭って」
「私と一緒に波に流されて」
「それで辿り着いたわね」
「オズの国にね」
「貴女はオズの国自体に愛されているのよ」
オズマが笑顔で言ってきました。
「だからよ」
「奇跡でなのね」
「オズの国に来たのよ」
「四度も」
「そして五度目でね」
その時にというのです。
「遂によ」
「オズの国に定住したわね」
「そうなのよ」
まさにというのです。
「貴女はね」
「オズの国に愛されているのね、私は」
「そうよ、そしてね」
「そして?」
「その愛情をね」
オズの国のというのです。
「大切にしてね」
「これからも」
「オズの国はオズの国に来る人達とね」
ドロシーの様にというのです。
「オズの国にいる人達皆をよ」
「愛しているわね」
「そうなのよ」
「国自体に意志があるのね」
「言うならね」
まさにというのです。
「そうなるわ」
「そういうことね」
「そうですね」
ジュリアはオズマの今の言葉に頷きました。
「オズの国にはです」
「意志があるわね」
「自分に来る人達といる人達皆が大好きで」
「もっともっと楽しく素敵な国になろうとね」
「そうした意志がありますね」
「そうでしょ」
「はい」
オズマにまさにと答えました。
「言われるとです」
「その意志を感じるわね」
「私も」
「そうした国だから」
「私達も幸せでいられますね」
「そうなのよ、そして私達もね」
オズの国にいる人達もというのです。
「もっとね」
「幸せになる様にですね」
「努力することよ」
こう言うのでした。
「皆でね」
「政治でも何でもですね」
「そうよ、そしてね」
「そして?」
「この森の木の実だけれど」
オズマはこちらのお話もしました。
「私達も食べるとね」
「透明になりますね」
「そうなるわ」
実際にというのだ。
「誰でもね」
「それで熊もですね」
「いつもその木の実を食べているから」
だからだというのです。
「見えないのよ」
「そうですね」
「見えていたらね」
その姿がというのです。
「注意するでしょ」
「そうですね」
「その頃はまだ獣も襲ったりしていたから」
ドロシーがはじめてこの森に来た時はです。
「ドロシーも襲われたのよ」
「そうですね」
「けれどね」
それがというのです。
「今はね」
「それもないですね」
「襲われないわ、オズの生きものは皆ね」
「平和になりましたね」
「人もね」
まさにというのです。
「そうなってね」
「それで、ですね」
「襲われないわ」
「この森でも」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「外に出てもね」
「安心していいですね」
「そうよ、では出てみましょう」
「タンクを停めましょう」
グリンダが言ってでした。
タンクを操縦していた魔法使いも停めました、そうしてハッチから外に出ますと。
「凄いタンクだね」
「おや、声はしたけれど」
「ここにいるよ」
魔法使いがタンクの下を見るとでした、そこには誰もいないですが。
「見えないよね」
「君はあの時の熊かな」
「あの時は悪いことをしたね」
こう声もしてきました。
「僕達もあの時は襲ったりしていたから」
「獣としてだね」
「うん、けれど今はね」
「平和にだね」
「暮らしていてね」
そしてというのです。
「皆も襲わないから」
「そうだね」
「あの、気になったことは」
神宝が言ってきました、皆ハッチから出てタンクの上にいます。
「どの種類の熊か」
「熊といっても沢山の種類があるんだよね」
ジョージも言います。
「これが」
「犬や猫と同じでね」
それでと言うカルロスでした。
「そうなんだよね」
「日本だとツキノワグマとヒグマがいて」
恵梨香は自分の国にいる熊の種類をお話しました。
「北海道にはヒグマ、本州とかはツキノワグマなのよね」
「それで一体どの種類の熊なのかしら」
ナターシャもそのことが気になりました。
「一体」
「ああ、僕はグリズリーだよ」
姿が見えない熊はこう答えました。
「そちらの種類だよ」
「へえ、そうなんだ」
「あの大きい熊だね」
「そうそう、寒い場所にいる」
「物凄く大きな熊よ」
「ただね」
ここで神宝は言いました。
「グリズリーがどうかを確認するにはね」
「わからないよね」
「姿が見えないから」
「どうしても」
「それじゃあ」
「それなら方法があるよ」
熊の方から言ってきました。
「僕がお水に入るとね」
「ああ、毛が濡れて」
「お水がそのまま身体を見せてくれるね」
「そうしてくれるわね」
「そうよね」
「そうなるね」
「だからね」
それでというのです。
「すぐ近くにお池もあるし」
「それでなんだ」
「今からそこに入って」
「それでなのね」
「私達にその姿を見せてくれるのね」
「そうしてくれるんだね」
「そうするよ、ちょっと待っていてね」
こう言ってでした。
暫くしてグリズリーの形をしたお水がやってきました、これで皆にもその熊の姿がはっきりとわかったのです。
「うん、わかったよ」
「君はグリズリーだね」
「その大きさや姿がわかるよ」
「はっきりとね」
「お水に濡れて」
「姿が見えなくても」
グリンダはそれでもと言いました。
「そこに身体があるのよ」
「そうですね」
「だからですね」
「濡れれば身体が出ますね」
「そうなりますね」
「まさに」
「そうなんだよね、この森の生きものは身体があるんだ」
熊もその通りだと言いました。
「だから濡れるとね」
「はっきりと身体が出るわね」
「そうだよ、あと身体の毛の色は」
グリンダにお話します。
「カドリングの生きものだからね」
「赤ね」
「そうだよ」
「そうね、貴方もね」
「木の実の効果が消えたら」
その時はというのです。
「姿が出るよ」
「そうなるわね」
「ちなみにそろそろ効果が消えるから」
その木の実のというのです。
「少し待ったらね」
「貴方の姿も見えるわね」
「そうなるよ」
「その木の実を食べると」
神宝はそうなると、といいました。
「身体が光を反射して」
「見なくなるのよ」
グリンダはその通りだとお話しました。
「そうなるのよ」
「そうですね」
「何故姿が見えるか」
「光を吸収するからですね」
「そうなるからね」
「見えますね」
「目にね」
「そうですね」
「だからね」
それでというのです。
「木の実の効果が消えると」
「それならですね」
「光を反射しなくなってね
「見える様になりますね」
「そうなるのよ」
「そういうことですね」
「それじゃあそろそろ効果が消えるから」
また濡れた熊が言ってきました。
「少し待ってね」
「わかったわ」
グリンダが応えました、そしてです。
五分位すると徐々に姿が見えてきました、赤いとても大きなグリズリーです。皆その姿をはっきりと見ました。
それで、です。神宝達五人は言いました。
「姿が見えなくても」
「そこにちゃんといて」
「色だってある」
「そうなのね」
「見えなくても」
「そうよ、見えなくてもね」
グリンダもまさにと答えます。
「身体はあってね」
「色もある」
「そうですね」
「見えなくても」
「ちゃんとあるんですね」
「何もかもが」
「そうなのよ、物事はそうよ」
あらゆることがというのです。
「見えなくてもね」
「あるんですね」
「今は見えなくても」
「ちゃんとあって」
「それで、ですね」
「私達も今見えていますね」
「透明人間の髪の毛が何色か」
魔法使いは笑って言いました。
「考えてみると面白いね」
「そうですね」
神宝はまさにと頷きました。
「言われてみますと」
「そうだね」
「はい、そんなことはこれまでです」
「考えたことがなかったね」
「透明人間は透明なままで」
そうであってというのです。
「見えないものだって」
「思っていたね」
「この森の生きもの達も」
見れば今丁度赤い野兎がタンクの横を走りました、そして森の中にある木の実を齧ってすぐに見えなくなりました。
その光景も見てです、神宝は言いました。
「同じですね」
「姿が見えないと色も意識しないね」
熊も言ってきました。
「そうだね」
「うん、それならね」
「けれどだよ」
それでもというのです。
「その僕にもだよ」
「色があって」
「そしてね」
そうであってというのです。
「ちゃんとだよ」
「見える様になったら」
「この赤い毛がだよ」
それがだというのです。
「僕の自慢なんだ」
「そうなんだね」
「だから見える様になったら」
その時はというのです。
「自分の子の毛を見てね」
「楽しんでいるんだね」
「そうだよ、寝ていて起きたら」
そうなればというのです。
「大抵見える様になっているよ」
「ああ、木のみの効果が消えて」
「そうなっていてね」
それでというのです。
「見えているよ、だからこの森の生きものはね」
「起きた時はなんだ」
「皆見えているんだ」
「そうなんだね」
「そして木の実を食べて」
そうしてというのです。
「見えなくなるんだ」
「そういうことだね」
「そうなんだ」
こう神宝にお話します。
「これがね」
「見えなくても姿形があって色もある」
グリンダは神宝達五人に言いました。
「覚えていてね」
「はい」
「覚えておきます」
「とても大事なことですね」
「面白くて」
「忘れられないです」
「そうしてね、そしてね」
それでというのです。
「見えなくなるのは光の反射よ」
「科学ですね」
「これは科学の知識ですね」
「科学も大事ですね」
「大切な学問ですね」
「本当に」
「科学を軽視したり馬鹿にすると」
そうすると、というのです。
「いいことはないわ」
「そうなんだよね、科学と魔法があって」
魔法使いはそれでとお話しました。
「オズの国は発展していっているしね」
「その両方がね」
「科学をしっかりと学んで」
そうしてというのです。
「理解する」
「そうすることよね」
「さもないとね」
魔法使いはグリンダにお話しました。
「失敗するよね」
「絶対にね」
グリンダもまさにと頷きます。
「そうなるわ」
「そうだね」
「外の世界ではいるみたいね」
「何故かね」
首を傾げさせてです、魔法使いは言いました。
「科学文明の中にあってもね」
「科学を否定する人はいるわね」
「迷信に捉われているか」
若しくはというのです。
「別の日科学的なことを信じているんだよ」
「しかもそれで信仰があるか」
「ない人もいるんだよ」
そうした人もいるというのです。
「外の世界にはね」
「じゃあ何を信じているか」
「ううん、これがね」
魔法使いは腕を組み真剣に考えるお顔になってしきりに首を傾げさせながらグリンダに対して言いました。
「自分しかなくて」
「自分しか信じていないのかしら」
「というかね」
「というか?」
「自分の欲しかなくて」
そうであってというのです。
「それを貪ることしか頭になくて」
「科学とかどうでもいいの」
「もう自分の欲しかなくて」
頭の中にです。
「科学もどうでもよくて信仰もね」
「どうでもいいのね」
「頭の中にあるのはね」
「自分だけね」
「それで他の人も世の中のね」
それこそというです。
「どうなってもいいんだ」
「自分さえよかったら」
「どんな嘘を吐いて騙しても平気で」
そうであってというのです。
「恥も外聞も思いやりもなくて下品な罵倒もだよ」
「出すのね」
「息をする様にね」
「かつてのラゲドー氏より酷いわね」
「そうだろうね、もう人ではない」
それこそというのです。
「そこまで酷かったりするよ」
「ええ、外の世界にはそんな人もいるわね」
ドロシーも言ってきました。
「本当に」
「そうだね」
「私はお会いしたことはないけれど」
外の世界ではというのです。
「けれどね」
「聞いたことがあるね、ドロシーも」
「世の中酷い人もいて」
「そんな人もいるね」
「本当に自分しかなくて」
頭の中にというのです。
「欲の為にはどんなこともする」
「悪事も平気だよ」
「暴力も恥知らずなことも平気で」
それでというのです。
「嘘も法律を捻じ曲げることも脅すことも」
「全く平気だね」
「そんなとんでもない人がいることをね」
「聞いているね」
「私もね」
「最低と言っても足りない」
トトも言います。
「そんな人が実際にいるんだね」
「オズの国にはそんな人は絶対にいないから」
それでと言うビリーナでした。
「よかったわね」
「そうだね、こうした人は中々いなくならないし」
「どんなことをしても居座ろうとするわね」
「本当に恥も外聞もなくね」
トトはビリーナに言いました。
「するよ、世界の多くの人が睨んだり軽蔑したり憎んでも」
「平気ね」
「だって自分さえよかったらいいから」
だからだというのです。
「自分がやりたいことをやってね」
「欲しいものが手に入るなら」
「どれだけ人を騙して傷付けても平気で」
「どう思われても平気ね」
「他の人やものはどうとも思っていないから」
魔法使いの言う通り自分だけでというのです。
「どう思われてもだよ」
「平気ね」
「そうだよ」
「そんな人に騙される人いないよ」
熊は断言しました、何時しか皆はタンクから下りてシーツを敷いてその上に座って熊と一緒にお話をしています。
「見えてるんだよね」
「はっきりとね」
エリカが答えました。
「嘘を吐いて悪事を働く姿をね」
「それなら騙されないよ」
熊は断言しました。
「絶対にね」
「そう思うわよね」
「見えなくてわからないことは当然だよ」
食べると姿が消える木の実を食べているから言うのでした。
「けれどそれでもそこに身体はちゃんとあって」
「色もね」
「そうだしね、ましてや」
「見えているとね」
「はっきりわかるじゃない」
それこそというのです。
「その人がどんな人か」
「悪人かどうか」
「非科学的で信仰もなくて」
そうであってというのです。
「自分の欲しか頭になくてどんな悪事も平気で」
「他の人やものはどうなってもいい」
「そんなとんでもない人だってね」
「わかるわね」
「見えているならね」
それならというのです。
「わかるよ」
「その筈ね」
「それがそうでもないのよ」
オズマが言ってきました。
「見えていてもね」
「わからない人がいるんだ」
「非科学的ということがどうしてわかるか」
オズマは熊に言いました
「それは科学を知っているからでしょ」
「あっ、そうだね」
熊も確かにと頷きました。
「言われてみたら」
「ことの善悪がわかるにもよ」
「善悪を知ることだね」
「そう、そしてね」
それにというのです。
「悪人が悪人とわかることも」
「悪人を知ることだね」
「全く何も知らない人は」
「何もわからなくて」
「そしてね」
「騙されるんだね」
「そうなるのよ、知ることはとても大事なのよ」
オズマは真面目なお顔で断言しました。
「何も知らない人はね」
「騙されるんだね」
「そうなるからね」
「知らないと駄目だね」
「色々なことをね」
「オズマの言う通りね」
グリンダはまさにと頷きました。
「知らないとね」
「駄目よね」
「色々なことをね」
「科学にしてもそうでね」
「他の色々なこともね」
「何も知らない。文字通りの全くの無知という人はね」
オズマはグリンダにも言いました。
「外の世界だと騙されて」
「そうなって」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「騙された分の被害を受けるわ」
「そうなるわね」
「オズの国でも知らないと」
そうであると、というのです。
「その分楽しいことがよ」
「出来ないね」
「そうよ」
実際にというのです。
「そうなるわ」
「だから知らないと駄目よ」
「学問だってね」
「することね」
「何一つ知らないで何が出来るか」
それこそというのです。
「楽しめるか」
「無理なことね」
「だからオズの国でもね」
「知ることね」
「沢山のことをね」
「その通りね」
「本当に。木の実のことも」
姿が消えるそれをというのです。
「知っていれば色々わかって」
「どうすればいいかもね」
「わかるしね」
「いいものよ」
「あの、僕達も木の実を食べたら」
それならと言う神宝でした。
「姿が消えますね」
「この森の生きもの皆がそうなら」
恵梨香は考えて言いました。
「私達も」
「じゃあ試しに食べてみようかな」
カルロスはここで好奇心を出しました。
「僕達も」
「それで姿が消えたなら」
それならと言うのはジョージでした。
「面白いしね」
「それなら」
ナターシャは自分の好奇心が首をもたげていることを感じつつ言いました。
「食べてみようかしら」
「ああ、そうするんだ」
熊は五人の子供達に応えました。
「君達も」
「今思ったけれど」
「そうしてみようかな」
「それで実際に姿が消えるか確かめたいし」
「味も気になるし」
「私達もね」
「いいことよ。木の実に毒はないから」
グリンダが五人に笑顔で言ってきました。
「是非ね」
「食べるといいですね」
「この機に」
「そうすればいいですね」
「これから」
「そうですね」
「そう、そしてね」
それでというのです。
「自分で確かめて知ってね」
「これは実験になるね」
魔法使いも言ってきました。
「まさに」
「実験、そうですね」
まさにとです、神宝も頷きました。
「僕達が食べて確かめますから」
「そう、薬を使ってみてね」
「どうなるかを確かめるのと同じですね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「この場合はね」
「そうですね」
「だからね」
それでというのです。
「食べてみればいいわ」
「わかりました」
「あそこにあるから」
神宝がオズマの言葉に頷くとでした。
熊は自分達が今いる場所のすぐ傍の木を指差しました、その木には赤いプラムを思わせる形の木の実が沢山実っています。
「他には野苺に似た実とかもだよ」
「ああ、さっき兎さんが食べていた」
「あの実だね」
「消える実は一つじゃないんだ」
「他にもあって」
「それでこの森の生きものは消えるのね」
「そうだよ」
熊は神宝達五人に答えました。
「これがね」
「成程ね」
「じゃあ僕達はあのプラムみたいなのを食べればいいんだ」
「それじゃあね」
「今から頂くわね」
「そうさせてもらうね」
「そうしたらいいよ」
熊は笑顔で応えてでした。
そのうえで五人を案内しました、そして自分も食べますと。
五人と一匹は忽ち姿を消しました、すると五人は面白そうに言いました。
「消えたね」
「けれど触ってみるとちゃんと身体あるし」
「面白いわ」
「僕達透明人間になったんだね」
「魔法か科学みたいね」
「いや、こうなるから」
それでと言う熊でした、姿は見えずとも声があります。
「森の皆は見えないんだよ」
「うん、一見誰もいない」
「そんな森に見えるよね」
「けれど音や声が聞こえるし」
「皆がいるのは間違いない」
「そうした森ね」
「そうだよ、そのことが実際にわかったね」
まさにと言う熊でした。
「君達も」
「よくわかったよ」
「実際に食べてみて」
「木の実の味だって」
「プラムそっくりの味だったわ」
「美味しかったよ」
「うん、これが美味しいんだよね」
熊の声は笑っていました。
「だから僕達毎日食べているよ」
「それで見えなくなって」
「こうした森になっているのね」
「そのことがあらためてわかったよ」
「食べてみて」
「そうして」
「うん、ただね」
ここで魔法使いが言ってきました。
「見えないと君達が何処にいるかわからないね」
「あっ、確かに」
言われてみてです、神宝も頷きました。
「そうですね」
「それをどうするかだよ」
「どうしましょう」
「ちゃんと解決策はあるよ」
魔法使いは姿が見えない神宝に微笑んで言いました。
「木の実の影響を受けないバッジがあるんだ」
「そうなんですか」
「オズの国では他にも姿が見えなくなる食べものやお薬があってね」
「そうしたものを食べたり飲むとですね」
「姿が消えてね」
そうなってというのだ。
「何処にいるかわからなくてね」
「ぶつかったりしますね」
「そうなると危ないから」
だからだというのです。
「見えない人が何処にいるかわかる為のね」
「バッジがあるんですね」
「何があっても見える」
そうしたというのです。
「そうしたバッジだよ」
「じゃあそのバッジを身体に付けたら」
「そのバッジが見えるからね」
だからだというのです。
「君達の姿は見えないままでもね」
「何処にいるかわかりますね」
「そうだよ」
実際にというのです。
「そうしたものがあるんだ」
「どうしたら姿が消えるかわかったら」
グリンダも言ってきました。
「対策方法が考えられるわ」
「やっぱり知ることですね」
「そう、問題があれば」
グリンダも神宝にお話します。
「その問題の原因を知ればね」
「解決方法もわかりますね」
「そうなるから」
「知ることですね」
「姿が消えることについてもね」
今のことでもというのです。
「そうすることよ」
「そういうことですね、じゃあ」
「ええ、バッジを付けてね」
「そうさせてもらいます」
「では受け取ってね」
「わかりました」
五人はグリンダの言葉に頷きました、そしてです。
魔法使いからバッジを受け取ってそれぞれの胸に付けてみました、するとそのバッジだけが見えて宙に浮かんでいる様でした。
それで、です。五人は面白そうに言いました。
「浮かんでいる様でね」
「面白いわ」
「バッジだけが見えていて」
「私達は見えないから」
「不思議な光景だよ」
「そうね、私達も見ていて面白いわ」
グリンダも笑顔で言います。
「本当にね」
「こうしたものが見られるのもオズの国よね」
ドロシーはにこりと笑って応えました。
「バッジだけが浮かんでいる様な」
「そうした光景もね」
「お伽の国ならではね」
「その通りよ」
「この森に最初に来た時は大急ぎで出たのよ」
「僕に襲われてね」
熊は反省することしきりの声でした、やはり姿は見えません。
「あの時のことは何と言えばいいか」
「あの時のことは仕方ないから」
「そう言ってくれるんだ」
「だって狩りをするものだったでしょ」
「あの頃はオズの国でもね」
「狩りをしていたからなんだ」
「仕方ないわ、私達も知っていたら」
熊にさらにお話します。
「この森と木の実のことをね」
「入らなかったね」
「そうだったわ」
こう言うのでした。
「本当にね」
「やっぱり知ることだね」
「そう、大切なことよ」
「何も知ろうとしない人は負けるわ」
きっぱりとです、オズマは言いました。
「知とうとする人にね」
「さっきお話したみたいな人は」
「そう、絶対にね」
まさにというのです。
「負けるわ」
「そうなるのね」
「勝てる筈がないわ」
それこそというのです。
「だって知識はね」
「最大の武器ね」
「例え圧倒的に強い暴君も」
「何も知ろうとしないなら」
「全てを知ろうとする一介の小さな子供にもね」
「負けるのね」
「そうなるわ」
ドロシーに確かな声で答えました。
「必ずね」
「そうよね」
ドロシーも確かにと頷きます。
「そうなるわね」
「そう、そして」
それにというのです。
「知ればそれだけよ」
「楽しみも増えるわ」
「広い世界を知れば」
「広い世界全体を楽しめるわ」
「自分しかない人はね」
「自分しか楽しめないわね」
「そうであってね」
それでというのです。
「とても狭い世界でよ」
「生きることになるわね」
「周りにいるのはね」
そうした人はといいますと。
「外の世界で言うとおこぼれにあずかりたい」
「そうした人達だけね」
「もうね」
それこそというのです。
「他にあるものはね」
「一切なくて」
「それでね」
そうであってというのです。
「そうした人は負けるから」
「何も知ろうとしないから」
「自分だけでね、負けて何もかもを失ったら」
その時はというのです。
「そうした人達は真っ先によ」
「いなくなるわね」
「だって自分しかない人の傍にいてもね」
「おこぼれがないとね」
「何もね」
それこそというのです。
「いる理由がないから」
「その人が負けて全部失ったら」
「もうね」
「いなくなるわね」
「むしろ自分がその人が破滅した時に巻き添えにならない様に」
「真っ先によね」
「いなくなるわ」
そうなるというのです。
「逃げるのよ」
「その人を見捨てて」
「だって自分しかない人が他の人を大切にするか」
「その筈もないわね」
「そうよ」
絶対にというのです。
「もうそんなことはね」
「しないわね」
「だってね」
それはどうしてかといいますと。
「そうした人達も自分しかなくて」
「志もなくてね」
「欲だけあって」
そうであってというのだ。
「それでね」
「その人への愛情もないから」
「友情もね、そうした感情がないから」
だからだというのです。
「もうね」
「一切よね」
「その人に何かあると」
その時はというのです。
「真っ先にね」
「逃げるわね」
「利権を貪りたいだけで」
「その利権を貪れないなら」
「もうね」
それこそというのです。
「逃げるわ」
「自分だけが」
「そうするから」
それでというのです。
「もうね」
「自分だけが逃げる」
「そう、けれど人は見ているから」
世の人達はというのです。
「その人の行いをね」
「それでどんな人がわかっているから」
「だからね」
「評判が悪くて信用されないで」
「それでね」
そんな人でというのです。
「もうね」
「逃げた先でも信用されなくて」
「相手にされないわ」
「悪い人と思われて」
「そうよ、そしてそんな人にはね」
「なっては駄目ね」
「絶対にね」
外の世界のそうしたお話もするのでした、そうしたお話もしてでした。
森でも楽しい時間を過ごしました、一行はそれが終わるとまた次の訪問する国にタンクを進めるのでした。その時には神宝達は見える様になっていました。