『新オズのグリンダ』




                第六幕  蛇人の国

 鏡の国のおもてなしを受けた一行は次の国に向かいました、その次に訪問する国はどの国かといいますと。
「蛇人の国よ」
「ああ、あの国ね」
 タンクの応接間でオズマに言われてです、グリンダは頷きました。
「今度行く国は」
「そうよ」
「わかったわ、ではね」
 グリンダは笑顔で言いました。
「これからね」
「あの国に行きましょう」
「それじゃあね」
「いや、昔はね」
 蛇人の国に行くと聞いてです、ビリーナは言いました。
「蛇というとやっつけないといけないってね」
「思ったんだね」
「見たらね」 
 魔法使いに答えました、タンクは今も自動操縦で魔法使いもフリーなのです。
「卵を狙われるから」
「その足の爪と嘴でだね」
「本当に見たらね」
 蛇をというのです。
「やっていけていたわ」
「そうだったね」
「けれど今はね」
「そんな考えはないね」
「だって卵を狙われることがないから」
 オズの国ではというのです。
「蛇からね」
「オズの国では食べたいものはね」
「普通にあちこちの草木に出るから」
「木の実とかになってね」
「だからよ」
 それでというのです。
「蛇もね」
「卵を狙わないね」
「だからもうね」
「やっつける気はないね」
「全くね」
 こう言うのでした。
「ないわ」
「だから蛇人の国に行ってもだね」
「これまで行ったことがあるし」
 このこともあってというのです。
「それでね」
「親しくだね」
「行くことが出来るわ」
「いや、昔は蛇を見たらね」   
 エリカも言ってきました。
「前足が出たわ」
「やっつけようとしたね」
「そう、毒蛾あるのは警戒してね」
 トトにお話します。
「そうでなかったら一気に襲い掛かって」
「やっつけようとしたね」
「動くものを見るとね」
 どうしてもというのです。
「前足が出るのよ」
「君は猫だからね」
「そう、それでね」
 その為にというのだ。
「そうなっていたわ」
「僕達犬もそうした傾向あるけれどね」
「動くものに興味があるわね」
「けれど君達猫はね」
「もっとよ、それに好奇心旺盛だから」
 そうした生きものだからだというのです。
「すぐによ」
「前足が出たね」
「そうだったわ、けれど今はね」
「オズの国に来てね」
「動くものを見ても普通になったね」
「そうした習性がかなり穏やかになってね」
 猫のというのです。
「もう蛇を見ても何ともないわ」
「そうなたね、じゃあね」
「ええ、行きましょう」
「蛇の国にね」
 こうしたお話をしてでした、皆は蛇の国に入りました。その国は国全体が森で木々が一つずつお家やお店になっていてです。
 蛇の頭に鱗の身体を持つカドリングの赤い服の人達がいます、皆はその国の中に入るとすぐにカドリングの軍服を着た兵隊さんに国の中を案内してもらいましたが。
 国のあちこち、木々の枝達にも蛇が大勢いて動き回っています、蛇人達はそんな彼等を愛し気に見ています。
 その状況を見てです、ドロシーは微笑んで言いました。
「この蛇が一杯いる感じがいいのよね」
「この国ならではよね」
 オズマが応えます、それも笑顔で。
「本当に」
「ええ、お水も一杯あって」
「お池や小川が」
 見れば国のあちこちにあります。
「そこにもよ」
「蛇が大勢いてね」
「賑やかでね」
「この国ならではよね」
「蛇人の人達を見ていますと」 
 神宝が言ってきました。
「リザードマンの人達とあまり変わらないですね」
「元々蛇と蜥蜴って親戚同士だからね」 
 カルロスはそれでと言いました。
「蛇って蜥蜴の足がなくなった生きものだから」
「だからリザードマンの人達とは親戚同士ね」
 恵梨香はすぐにこのことを察しました。
「蛇人の人達は」
「そうね」
 ナターシャは恵梨香のその言葉に頷きました。
「そうなるわね」
「オズの国にはリザードマンの人達もいるし」 
 それでと言うジョージでした。
「あの人達と仲がいいのかな」
「はい、そうです」
 兵隊さんがにこりと笑って答えました。
「私達蛇人とリザードマンは親戚同士で」
「それで、ですね」
「はい」
 ジュリアにその通りだと答えました。
「リザードマンの国とはです」
「仲よくですね」
「しています、友好関係にあり」
 それでというのです。
「いつも交流を行っています」
「そうですね」
「はい、そして玄武様ですが」
「ギリキンにおられますね」
「蛇とです」
 この生きものと、というのです。
「亀ですね」
「そうなっていまして」
「蛇は亀ともですね」
「オズの国では仲がいいです」
「そうなっていますね」
「左様です」
 その通りだというのです。
「有り難いことに」
「そういえば」
 ここで神宝はこう言いました。
「龍もです」
「ええ、その生きものもね」
 グリンダが応えました。
「オズの国にいるけれど」
「蛇の身体ですね」
「そうよね」
「兎の目に馬の頭に鹿の角に駱駝の足で」
「身体はそうね」
「九つの特徴がありまして」
 龍はというのです。
「身体は蛇です」
「そうね」
「はい、蛇は毒がある種類もいて」
「外の世界では危険ではあるわね」
「大蛇もいまして、ですが」
「怖いかっていうと」
 それはというのです。
「そうでもないわね」
「よく調べると」
「あまりしつこく絡まないと攻撃してこないし」
「別にですね」
「怖い生きものでもないわ」
「避ければいいですね」
「危険だと思えばね」
 外の世界ではというのです。
「むしろ外の世界では鼠も食べてくれるから」
「穀物を荒らしたりする」
「有り難い生きものよ」
「そうですね」
「その外見で判断したらね」
「よくないですね、龍でもありますし」
「それに蛇の神様だっているわね」
 グリンダはそうした神様のお話もしました。
「そうね」
「オズの国にもおられますね」
「蛇の力を使ったりしてるわ」
「蛇の神様は日本にもおられて」 
 神宝はそうしてと言いました。
「中国でもです」
「おられるわね」
「日本の三輪神社の神様が蛇で」
「お酒のね」
「それで中国では」
「伏儀神と女禍神ね」
「確かオズの国にもおられて」
 神宝もそう聞いています。
「あの方々のお身体は」
「ええ、上半身は人でね」
「下半身が蛇です」
「そうよね」
「勿論人間の身体にもなれますが」
 完全にです。
「基本はです」
「そうなっているわね」
「はい」
 そうだというのです。
「それでナーガというのは」
「オズの国では蛇の精霊よ」
「そうなっていますね」
「そしてです」
 兵隊さんが笑顔で言いました。
「ピュートーン神がおらえます」
「オズの国にはね」
「予言をしてくれる有り難い神様で」
 そうであってというのです。
「巨大な蛇のお姿です」
「そうよね」
「ケツアルコアトル神も」
 この神様もというのです。
「おられまして」
「緑色の身体に白い翼を持つ神様ね」
「そうです、蛇の神様もです」
「おられるわ」
「オズの国では。あとヘルメス神も」
 この神様もというのです。
「杖に蛇がおられて」
「それでよね」
「我々と縁があります」
「あの神様もね」
「何かとです」
「蛇も神様と縁があるわね」
「そうした生きものです」 
 グリンダに笑顔でお話します、そうしたお話をしてそのうえで蛇人の国の王宮、巨大な神木の中にあるそちらに入りました、すると緑色の鱗に緑の見事な服を着た王様がいてです。
 一行を迎えました、そのうえで言うのでした。
「ようこそ我が国へ」
「ええ、お邪魔させてもらうわね」
「いえいえ、とんでもない」
 王様はオズマに畏まって言いました。
「オズマ姫と他の方々が来られて国全体が喜んでいます」
「確かに皆笑顔で迎えてくれたわ」 
 エリカが言いました。
「嬉しいことにね」
「皆待っていたんだよ」
 王様はエリカにも言いました。
「心からね」
「私達が来ることを」
「そうだよ」 
 まさにというのです。
「今か今かとね」
「そこまでなの」
「そう、そしてね」 
 そうであってというのです。
「実際に来てくれて」
「嬉しいのね」
「早速おもてなしをはじめさせてもらうよ」 
 実に気さくな感じで言いました。
「これからね」
「それじゃあね」
「楽しんでね」 
 こうお話してでした、早速国を挙げてのおもてなしとなり。
 インド風のダンスに舞台劇、歌唱大会にと色々な催しが披露されました。その中で派手な乗馬ショーもありましたが。
 そのショーと騎手の人の衣装を見てです、神宝達五人は気付きました。
「アメリカ風でね」
「西部劇みたいだね」
「ガラガラヘビかな」
「そうした感じ?」
「ひょっとして」
「そうですね」 
 ジュリアが確かにとです、五人に応えました。
「これは」
「やっぱりそうですね」
「アメリカにも蛇はいますし」
「砂漠のガラガラヘビが有名で」
「それで、ですね」
「西部劇調の催しも見せてくれるんですね」
「そうかと。いいですね」
 ジュリアは乗馬の妙技を見つつ言いました。
「こうしたものも」
「はい、それで次はオーストラリアのアボリジニーの人達のダンスとのことですが」
 神宝が言ってきました。
「そういえばあの国は」
「ええ、虹蛇っていうね」
 グリンダがお話してきました。
「神様がおられるわね」
「そうですね」
「自然の力を司ってね」
「夢の世界にもですね」
「大きな力を及ぼすね」
「そうした神々ですね」
「それでよ」
 そうであるからだというのです。
「こちらではね」
「アボリジニーのダンスもですね」
「行われるのよ」
「そうですね」
「そうだよ、そしてね」 
 お酒をどんどん飲んでいる王様が言ってきました、バーボンを文字通りウワバミの様に飲んでいます。
「今夜はアメリカ料理だよ」
「西部劇の」
「そう、ステーキにハンバーガーに」
 そうしたものにというのです。
「フライドチキンもね」
「出してくれますか」
「存分に楽しんでね」
 神宝に笑顔で言いました。
「そちらも」
「そうさせてもらっていいですね」
「オズの国だからね」
 それ故にというのです。
「遠慮は無用だよ」
「そうですね」
「だからね」 
 それでというのです。
「夜の方も楽しんでね。お酒も出るしね」
「子供用の」
「そう、酔えるけれどね」
「アルコールの入っていない」
「そうしたお酒もあるから」
「楽しんでいいですね」
「お酒もね。お酒がないなんで」
 そうした状況はというのです。
「蛇人では無理だよ」
「蛇人の人達はお酒がお好きなんですね」
「大好きだよ」
 実際にバーボンを飲みつつ言います。
「本当にね。あとね」
「あと?」
「私達は卵料理も大好きだよ」
「蛇だからですね」
「そう、蛇は卵が大好きでね」
「蛇人の皆さんも」
「卵料理が大好きで」 
 そうであってというのです。
「今夜もね」
「出してくれますか」
「ゆで卵にね」 
 このお料理にというのです。
「スクランブルエッグにオムレツもね」
「出してくれますか」
「そうするからね」
「そちらも楽しめばいいですね」
「存分にね、いいね」
「そうさせてもらいます」
 神宝は笑顔で頷きました、そして実際にアボリジニーのダンスも見てそうしてからさらになのでした。
 晩餐となりました、実際にステーキやハンバーガー、フライドチキンの他にです。
「卵料理もあるね」
「ゆで卵があって」
「救えンブルエッグもオムレツも」
「どれも美味しそうね」
「そうよね」
「卵料理はいいものだよ」 
 魔法使いは神宝達五人に微笑んで言いました。
「そのまま食べてもいいけれどお酒にもだよ」
「合いますね」
「ワインと一緒に飲んでもです」
「かなり合います」
「美味しいです」
「お酒と一緒でも」
「どのメニューも」
「そのこともいいことでね」
 それでというのです。
「私も嬉しいよ」
「こうして出してくれて」
「それで、ですね」
「ステーキやハンバーガーも美味しいですが」
「それだけじゃないですね」
「卵料理もですね」
「いいものだよ、そういえば」
 魔法使いはこうも言いました。
「和食で卵ふわふわというお料理があるね」
「ああ、あれですね」
 一緒に食べている王様が笑顔で応えました。
「勿論我々も大好きです」
「そうなんだね」
「それで日本からオズの国に来た剣術の強い」
「近藤勇さんかな」
「はい、あの人もです」
 魔法使いに笑顔でお話しました。
「卵ふわふわがお好きです」
「何でも外の世界にいた頃からね」
「お好きだったそうですね」
「当時はね」
 近藤さんが外の世界にいた頃はというのです。
「そのお料理はね」
「かなり贅沢なもので」
「最初近藤さんは食べられなかったそうだね」
「ああ、卵はね」
 グリンダも言ってきました。
「長い間日本ではね」
「高価な食材でね」
「中々食べられなくて」
「近藤さんもね」
「食べられなかったわね」
「それが新選組の局長さんになって」 
 そうしてというのです。
「立場が出来てね」
「それでだったわね」
「食べられる様になって」
「大好物になったのよね」
「そうだよ、ただね」 
 魔法使いは笑って言いました。
「私は最初お菓子だと思っていたよ」
「卵ふわふわは」
「名前を聞いてね」
「ああ、それはですね」
 王様は笑って応えました。
「思いますね」
「ふわふわと聞いてね」
「シュークリームみたいな」
「クリームだね」
「そうしたお菓子だと思いますね」
「そうだよね」
「ところが」
 その実はというのです。
「また違うんだよね」
「だしで味付けしていまして」
「どちらかというと茶碗蒸しかな」
「あちらに近いですね」
「お菓子じゃないよ」
「そうですね、あとです」
 王様はゆで卵を食べつつ言いました。
「近藤さんは新選組ですね」
「日本のね」
「あの人達は今毎日剣道の修行に励んでいますね」
「ええ、外の世界じゃ切った張っただったそうだけれど」
 オズマが答えました。
「オズの国はそうしたことがないから」
「だからですね」
「剣道の修行にね」
 そちらにというのです。
「励んでいるわ」
「それも毎日」
「お酒も飲んでね」
「それで局長さんが三人おられて」
 王様は新選組のこのこともお話しました。
「この国に来られて」
「新選組の人達が」
「芹沢さんともお話しましたが」
 この人というのです。
「局長さんのお一人も」
「面白い人でしょ」
「乱暴者と聞いていましたが」
 その実はというのです。
「器が大きくて剽軽なところもある」
「気さくな人ね」
「お酒が大好きで」
「別に悪くないわね」
「これが」
「あとね」
 エリカも言ってきました。
「冲田さんがいつも黒猫連れてるのよね」
「そうそう、あの人はね」
 ビリーナはまさにと応えました。
「そうよね」
「何でも外の世界でね」
「黒猫を傍に置いていて」
「オズの国でもね」
「そうしているみたいね」
「あの人はね」
「近藤さんは拳飲めるんだよね」
 トトは笑ってこの人のお話をしました。
「最初見た時は驚いたよ」
「あれは凄かったわね」
 ドロシーはトトのそのお話に応えました。
「信じられなかったわ」
「普通出来ないよね」
「とてもね」
「幕末の志士の人達もいるわよ、オズの国では」
 グリンダは微笑んで言いました。
「それで坂本龍馬さんもね」
「オズの国で楽しく過ごされていますね」
「そうよ」
 ジュリアに答えました。
「今はね」
「そうですね」
「あの人も器が大きくて気さくで」
「面白い人ですね」
「海が好きでね」
「いい人ですね、見ていますと」
 ジュリアは微笑んで言いました。
「応援したくなります」
「龍馬さんはね」
「あの人が何をされても」
「そうよね」
「それで新選組の人達もですね」
「オズの国にいるのよ」
「今は。そして楽しく」
 こうもです、ジュリアは言いました。
「毎日過ごされていますね」
「それで近藤さんはその卵ふわふわをね」
 この卵料理をというのです。
「今もね」
「楽しんでおられますね」
「よく食べてね」
 そうしてというのです。
「毎日ね」
「左様ですね」
「もう切った張ったではないです」
 王様は笑って言いました。
「あの人達も」
「楽しく暮らしているわね」
「そうです、あの人達の外の世界でのことは聞いていますが」
 オズマにお話しました。
「ですが今は」
「卵ふわふわも食べて」
「お酒も飲んで」
 王様はここで自分のお酒をぐい、と飲みました。そのうえでまた言いました。
「そうされています」
「いいことよね」
「オズの国はそうした国ですね」
「そうよ、楽しくね」
「過ごす国ですね」
「毎日ね」
 オズマもその通りだと言います。
「貴方の言う通りにね」
「それでは」
「ええ、私達もね」
「楽しく過ごすことですね」
「毎日ね、美味しいわ」
 オズマは今は子供用の赤ワインを飲んでいます、そうしながら言います。
「お酒もお料理もね」
「お気に召されていますね」
「とてもね」 
「卵ふわふわも美味しいわ」
 さっき出されたそれを食べて言いました。
「こちらもね」
「それで近藤さんもです」
「この国に来た時に」
「美味い美味いとです」
 その様にというのです。
「絶賛されていました」
「それはよかったわね」
「そして漢詩もです」
 この詩もというのです。
「詠ってくれました」
「漢詩ですか」
 神宝はその詩について目を丸くしました。
「それはまた」
「中学校で習うもので」
 恵梨香は自分達がまだ小学五年生であることから言いました。
「私達はまだよく知らないですが」
「近藤さん漢詩詠まれるんですね」
 ジョージも目を丸くして言います。
「凄いですね」
「ただお強いだけじゃないんですね」
 ナターシャは感心する様に言いました。
「あの人は」
「虎徹という刀を持っていて強いとは聞いていますが」
 カルロスはそれでもと言いました。
「漢詩も詠まれますか」
「芹沢さんは和歌でね」
 グリンダが近藤さんが漢詩を詠むと聞いて驚いている五人にお話しました、とても気さくで明るい感じです。
「よく詠まれるわ、志士の人達もね」
「漢詩や和歌を詠まれますか」
「詩人でもあるんですね」
「ただお強いだけでなく」
「そうした人達ですか」
「文武両道ですね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「近藤さんは漢詩なのよ」
「意外ですね」
「いやいや、それだけの教養や風流を愛するお心もね」
「備えていると」
「驚かずにね」
 そのうえでというのです。
「受け入れればいいのよ」
「そうですか」
「そうだよ、私達だって詩が好きだよ」
 王様も言ってきました。
「蛇人もね」
「近藤さん達と同じですか」
「だから漢詩を詠って贈ってもらって」 
 そうしてもらってというのです。
「凄く嬉しかったよ」
「そうですか」
「それで我々は日本風の傘を贈らせてもらったよ」
 蛇人の国としてはというのです。
「蛇の目傘をね」
「そちらをですか」
「うん、それで皆にもね」
「蛇の目傘をですか」
「贈らせてもらうよ」
 神宝にお話しました。
「これからね」
「有り難うございます」
「蛇の目傘はいいね」 
 王様は笑顔で言いました。
「本当に」
「蛇の目の模様がですね」
「いいね、日本のそうしたセンスにね」 
 それにというのです。
「感激さえしているよ」
「そうですか」
「私はね」 
 こう言うのでした。
「この国の皆もね」
「蛇の目傘はお好きですか」
「皆持っているよ、では贈らせてもらうよ」
 王様は笑顔のままでした、そうしてです。
 皆は晩餐もそれからの催しも楽しみました、そして国を発つ時に蛇の目傘を贈ってもらいました。その傘を見てです。
 グリンダはうっとりとしてです、こんなことを言いました。
「着物を着てこの傘を持てば」
「ばっちりですね」
「物凄く似合いますね」
「まるで絵みたいに」
「そうなりますね」
「まさに日本ですね」
「そうね、日本の着物はね」 
 この服はというのです。
「私も持っているけれど」
「それならですね」
「今度ですね」
「着物を着られて」
「蛇の目傘を持たれて」
「お洒落をしますね」
「そうするわ」
 神宝達五人に笑顔でお話します。
「今度ね」
「いいわね、私もそうしてみるわ」
 ドロシーも笑顔で言いました。
「着物を着てね」
「蛇の目傘を持つわね」
「そしてさしてみるわ」
「パラソルみたいに」
「お洒落よね」
「とてもね」
「そう、日本の着物のお洒落はね」
 魔法使いも言いました。
「とても独特で」
「いいものね」
「私もそう思うよ」
 グリンダにお話しました。
「大好きだよ」
「そうね」
「私が外の世界にいた頃は日本はね」
「殆ど縁がなかったわね」
「そうだったよ」 
 こう言うのでした。
「遠いお伽の国みたいな」
「お話に聞くだけの」
「不思議な国だったよ、中国もね」
 この国もというのです。
「そうだったよ」
「それが今では」
「実際に日本そして中国には行っていなくても」
「その文化には触れられるわね」
「日系人や中国系の人もいて」
 オズの国の国民の人達にです。
「文化もあるから」
「普通に触れられるわね」
「うん、外の世界の日本や中国からも来てくれているしね」
「新選組や志士の人達もで」
「有り難いよ」
 グリンダに満面の笑顔でお話しました。
「だから私も」
「着物を着て」
「蛇の目傘をさすよ」
「そうしてお洒落をするわね」
「実はお洒落が大好きなんだ」 
 にこりと笑っての言葉でした。
「私はね」
「それはわかるわ」
 グリンダにしてもです。
「貴方を見ているとね」
「そうだね」
「いつもタキシードに蝶ネクタイで」
「シルクハットでね」
「決めているから」
 だからだというのです。
「わかるわ」
「それが手品師の服装でね」
「貴方自身も好きで」
「それでね」
 そうであってというのです。
「いつも着ているからだね」
「服のお手入れもちゃんとしてね」
「定期的にクリーニングをしてもらっているよ」
 服はというのです。
「アイロンもかけてね」
「そうしているね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「コロンも付けて」
「服にね」
「そこまでしているから」
 だからだというのです。
「凄くね」
「お洒落だってわかってくれるんだね」
「そうよ」
「確かに」
 神宝は二人のお話を聞いて言いました。
「魔法使いさんってお洒落だね」
「そうだよね」
「それもかなりね」
「タキシードでいつも整えていて」
「決めているわ」
 五人でお話します。
「それを見たらね」
「魔法使いさんお洒落だよ」
「服に凝る人ね」
「そしてマナーにもね」
「かなりのお洒落だよ」
「そうでしょ、実はオズの国でもかなりのお洒落なのよ」 
 グリンダは五人にもお話しました。
「服も沢山持っているのよ」
「正装が好きでね」 
 魔法使いは笑顔で言いました。
「日本や中国の礼装もね」
「持っておられますか」
「袴とかも」
「紋付羽織ですか」
「それを持っておられますか」
「うん、家紋じゃなくてエメラルドの都の紋章を飾ってね」
 そうしてというのです。
「持っているよ、ただ色は黒でなくてね」
「あっ、緑ですね」
「エメラルドの都の色ですね」
「魔法使いさんは宮廷におられるので」
「だからですね」
「黒でなくて緑ですね」
「そうだよ、そしてね」 
 そうであってというのです。
「蛇の目傘を持つなら」
「紋付羽織袴ですか」
「それを着られますか」
「緑色の」
「それは見てみたいです」
「魔法使いさんの日本のお洒落を」
「その時が楽しみね。私もね」
 オズマも言ってきました。
「日本や中国の礼装を持っているしね」
「中国だと瀬戸物の国で着た漢服や旗抱でね」
 ドロシーが続きました。
「日本だと十二単もあるわね」
「あれを着る時もあるわね」
「私達もね」
「あの礼装もいいわね」
「平安の物語の世界に入ったみたいで」
「本当にね」
「そうよね、それで普通の着物も持っていて」
 ドロシーはそれでと言いました。
「そのうえでね」
「蛇の目傘ならそちらを持ってね」
「お洒落をしたいわね」
「そうよね」
「冒険の時は動きやすい服で」
 そうした服を着てというのです。
「礼装の時はね」
「そうした服を着るのよ」
「ドレスを着て」
「十二単だってね」
「十二単はとても不思議な服ね」
 グリンダも十二単についてお話しました。
「どの服よりも物語を感じるわ」
「そうよね」
「現実にある服だけれど」 
 ドロシーにお話しました。
「竹取物語や伊勢物語に出て」
「枕草子や源氏物語にもね」
「そうした服でね」
「その華やかさといいね」
「この世でない様な」
「この世にありながら」
「幻想的な服よね」
 そうだというのです。
「本当に」
「ええ、だからまた機会があれば」
「十二単を着ましょう」
「そうしましょう」
「かぐや姫みたいにね」
「お洒落はいい服を着るだけじゃないですからね」
 神宝はしみじみとした口調で言いました、今はタンクに乗ってそのうえで次に目的に向かっています。
「本当に」
「うん、だから私もね」
 魔法使いは神宝に応えて言いました。
「いつもね」
「服の手入れもしてもらって」
「クリーニングでね」
「コロンも付けて」
「色々な服も持っているんだ、着こなしもね」 
 こちらもというのです。
「考えているよ」
「そちらもですか」
「君の言う通りいい服を着るだけじゃないんだ」
 お洒落はというのです。
「ちゃんとね」
「着こなしもですね」
「大事でね」 
 そうであってというのだ。
「私はそちらにもだよ」
「気を使っておられますか」
「そうなんだ、そしてね」
「そして?」
「身体を奇麗にすることも」
「お風呂に入られて」
「しっかりとね」 
 こう言っていいまでにというのです。
「気を付けているよ」
「そちらもですね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「お洒落に凝っているんだ」
「お洒落は奥が深いですね」
「そう言っていいね、そしてね」
「そして?」
「一番面白いのは」
 お洒落についてです。
「一つじゃないんだ」
「お洒落の形は」
「その人それぞれのね」
 そうしたというのです。
「お洒落があるよ」
「そうですか」
「例えば織田信長さんはお洒落だね」
 この人はというのです。
「オズの国の人の中でも」
「日本ではそちらでも有名ですね」
「傾奇者でもあるからね、あの人は」
 それでというのです。
「派手だね」
「とても」
「けれどあの人とはまた違う」
「そうしたお洒落もありますね」
「シックな」
 そうしたというのです。
「服を着たね」
「お洒落もありますね」
「そうだよ、そこはね」
「その人それぞれですね」
「私だと正装でね」
「お洒落ですね」
「いつも正装だしね」 
 そのタキシード姿で言います。
「だからね」
「それで、ですね」
「身体も奇麗にして。それに」
「それに?」
「心が確かなら」
 そうであるならというのです。
「尚更だよ」
「お洒落になりますか」
「その人の内面がよければ」
 そうであればというのです。
「本当の意味でね」
「お洒落になりますね」
「そう思うから」
 だからだというのです。
「私はね」
「心ですね」
「そう、内面というとね」
 それはというのです。
「まさにね」
「心で」
「そちらを磨こうと」
「努力もされていますね」
「うん、さもないとね」
 そうでなければというのです。
「本当の意味でね」
「お洒落でないですね」
「そうだよ」
 こう言うのでした。
「私が思うにね」
「そうですか」
「だからね」
 そうであってというのです。
「毎日ね」
「お心も磨く」
「そうしてこそね」
 まさにというのです。
「本当の意味でのね」
「お洒落なんですね」
「魔法使いさんが考える」
「お洒落は服だけじゃない」
「お風呂にも入って」
「そして内面も磨くことですね」
「そうだと思うよ、これからもね」
 魔法使いはにこりと笑ってお話しました。
「オズの国にいてね」
「そうしてですね」
「本当のお洒落をしていく」
「これからも」
「お心まで磨いて」
「そのうえで」
「そうしていくよ」
 神宝達五人にお話しました。
「ずっとね」
「その通りよ、本当のお洒落は内面も磨くものよ」
 グリンダもその通りと言いました。
「私もそうしたお洒落をしていくし」
「ではお互いに」
「そうしていきましょう」
 二人でお話してそうしてでした。
 タンクの自動操縦を次の目的地に向かわせました、皆は周りに見える景色を楽しみながら美味しい昼食のカレーを食べるのでした。








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