『新オズのかかし』




               第五幕  小公女

 使節団は今度は小公女の国を訪問しました、その国はインドの街並みで褐色のお肌に黒い髪と目の彫のある顔立ちの人達がいました。
 そして牛も多いです、ナターシャ達はその街並みを見回して言いました。
「インドみたいね」
「そうだよね」
「お肌が黒くて彫のある顔の人達で」
「ターバンとか服装もそうで」
「牛さんも多いし」
「挨拶とか頭の上にものを置いて歩くことも」
「ええ、ここの主はセーラ=クルーでね」 
 ドロシーが皆にお話します。
「あの人はインドに縁が深いから」
「そうでしたね」
「元々インドで暮らしていましたね」
「それでダイアモンド鉱山を持っていて」
「その収入で大金持ちで」
「お姫様みたいでしたね」
「そうだったからね」
 だからだというのです。
「オズの国でもなのよ」
「インドなんですね」
「小公女といえばロンドンですが」
「インドと縁の深い人で」
「インドで暮らしておられて」
「ダイアモンド鉱山もインドにあったので」
「それでセーラの国はインドなの」 
 この国の趣だというのです。
「そうなのよ」
「本当にインドだね」
 トトも街の中を見回して言いました。
「この街は」
「そうよね」
「僕達が聞いているね」
「外の世界のね」
「あの国だよね」
「時々外の世界に出てね」
 そうしてと言うドロシーでした。
「色々な国を見て回ってるけれど」
「まさにだね」
「この国はインドよ」
「そうだね」
「十九世紀のね」 
 この頃のというのです。
「インドの街よ」
「そうだね」
「それで今からセーラのところに行くんだね」
 臆病ライオンはドロシーに尋ねました。
「そうするんだね」
「そうよ」 
 ドロシーはその通りだと答えました。
「これからね」
「そうするね」
「そしてね」
「セーラともお話をして」
「この国のことを聞いて」
「見て回るね」
「これまでそうしてきたみたいにね」
 四姉妹の国や小公子の国でそうしてきた様にというのです。
「そうするわよ」
「そうだよね」
「だから今からね」
「セーラのところに行くね」
「皆でね」
「あの」
 ここでナターシャが心配そうにです、ドロシーに尋ねました。
「セーラさんってかなり苦労されましたね」
「一度お父さんが破産してお亡くなりになって」
 カルロスも言います。
「二年かそれ位屋根裏部屋で暮らしておられて」
「そうそう、こき使われもして」
 神宝は眉を曇らせて言いました。
「大変だったね」
「あの時の大変さを見たら」
 それこそと言うジョージでした。
「胸が締め付けられるよ」
「物凄く意地悪もされて」
 恵梨香も暗いお顔で言います。
「大変だったわね」
「まさか」
 ここでこうも言ったナターシャでした。
「あの意地悪な」
「ミンチン先生いるとか?」
「あとラビニアさん」
「オズの国にいるとか」
「そうだとか」
「その人達はいないよ」
 すぐにです、魔法使いが五人に答えました。
「全くね」
「そうなんですね」
「性格が悪いからですね」
「それも凄く」
「小公女の中で酷かったですからね」
「最悪でしたね」
「だからいないよ」
 魔法使いはまた言いました。
「あの人達はね」
「それはよかったです」
「何よりです」
「セーラさんをあんなに苦しめて」
「読んで観て腹が立ちました」
「何でこんな酷いことするのかって」
「そうだね、けれどこの国にいるのはセーラと彼女によくしてくれた人達で」
 そうであってというのです。
「あの人達はいないからね」
「安心していいですね」
「それでセーラさんとお会いしていいですね」
「セーラさんとあの人によくしてくれた人達がおられるので」
「だからですね」
「私達も素直に楽しめますね」
「そうだよ」
 魔法使いは五人に優しい笑顔で答えました。
「安心してね」
「わかりました」
「それじゃあそのうえで、です」
「セーラさんにお会いして」
「お話させてもらいます」
「そしてこの国の色々な場所を巡らせてもらいます」
「そうしようね」
 笑顔でお話してでした。
 皆はインドの街並みを歩いていってそこを行き交う人達とも気さくに挨拶をしました。そうしてでした。
 セーラのお屋敷に着きました、そのお屋敷はインドの壮麗な宮殿を思わせる白い壁と丸い黄色い屋根や塔がありまして。
 左右対称で様々なお花で飾られたお庭があります、そしてその正門のところにです。
 紺色と白の奇麗な西洋風のドレスを着た黒くて長い髪の毛と青い目を持つ白いお肌のオズマと同じ位の年齢の女の子が背の高いインドの白い服とターバンを巻いた端正な男の人と黒いメイド服を着た赤髪に緑の目のそばかすのあるやはりオズマと同じ位の年齢の女の子と一緒にいます、その黒髪の少女が挨拶をしてきました。
「ようこそ我が国へ」
「お邪魔するわ」
 ドロシーが一行を代表してにこりと笑って応えました。
「今回はね」
「はい、セーラ=クルーです」 
 少女はにこりと笑って名乗りました。
「はじめての方もおられるので」
「私達ですか」
「はい」
 ナターシャに笑顔で答えました。
「宜しくです」
「あの、敬語はいいです」 
 ここでナターシャはこうセーラに言いました。
「それはちょっと」
「そうですか?」
「セーラさんはこの国の主ですね」
「プリンセス、王女として」
「しかも私達より年上なので」
 だからだというのです。
「そうしたことはです」
「いいですか」
「はい」
 そうだというのです。
「畏まることは」
「それでお願いします」
「それにセーラさんって僕達の憧れの人の一人ですし」
「読んでいてどれだけ応援して励まされたか」
「四姉妹さん達はセドリックさんと同じですから」
 五人全員で言います。
「孫悟空さんや関羽さん達もでしたが」
「そんな風に接せられるとです」
「かえって困ります」
「ですから普通でお願いします」
「畏まらなくて」
「それじゃあ貴方達にはロンドンの学校にいた時みたいに接するわね」
 セーラは五人ににこりと笑って言葉を返しました。
「そうしていくわね」
「はい、お願いします」
「そうして下さい」
「これからは」
「それで宜しくお願いします」
「本当にそれで」
「それではね」
 こうしてセーラは五人には学校の女の子の先輩として接する様にしました、そして今度はなのでした。
 セーラと一緒にいて彼女の後ろに控えている人達が笑顔で名乗りました。
「ラメダスです」
「ベッキーです」
 男の人も女の子も名乗りました。
「ようこそです」
「この度はようこそいらっしゃいました」
「こちらこそね」
 またドロシーが応えました。
「ではこれからね」
「はい、この国においてですね」
「何かとですね」
「お話をしてね」 
 ドロシーは二人にも答えました。
「見させてもらうわ」
「宜しくお願いします」
「滞在される間おもてなしさせてもらいます」
「それでまずはです」  
 セーラが再び口を開きました。
「お昼にしますか」
「あっ、もうそんな時間なんだ」
 ジャックはセーラの今の言葉にはっとなりました。
「僕は飲んだり食べたりしないからね」
「お昼といってもね」
「言われて気付く時があるね」
 かかしと樵も言います。
「今みたいに」
「そうだね」
「それで今はね」
「これからお昼だね」
「はい、ではお屋敷の中に」
 セーラは自分から言ってでした。
 一行をお屋敷の中に案内しました、まずは広くて奇麗な黄色い草木の中に様々なお花が咲き誇っているインドの庭園の中を通ってです。
 お屋敷自体の中に入りました、その中はといいますと。
「お屋敷の中もインドね」
「そうだね」
「ダイアモンドと金と銀で飾られていて」
「様式はそうだね」
「かけられている絵だって」
「セーラはずっとインドにいたからね」 
 それでとです、ナターシャ達五人にかかしがお話しました。
「だからだよ」
「街とお庭と同じですね」
「お屋敷もインドですね」
「セーラさんがずっとインドにおられたので」
「お屋敷の中もインドですね」
「その全てが」
「そうなんだ、セーラはイギリス人でも」 
 それでもというのです。
「そこにあるのはインドなんだよ」
「そう、私はインドで育って生きて来てね」
 セーラ自身もお話します、にこりと笑って。
「ロンドンにいたのは実は少しの間で」
「またインドに戻られて」
「それからはずっとですか」
「インドで暮らされたので」
「だからですか」
「オズの国でもインドなんですね」
「そうなの、お屋敷の中もそうで」
 そうであってというのです。
「着ている服はイギリスのものでも他のことはね」
「インドなんですね」
「家具もそうなんですね」
「お風呂とかも」
「そうしたものもですね」
「全部インドですね」
「ええ、本当に全てがインドでね」
 セーラはにりと笑って優雅に舞を舞う様に動いてお話します。
「お食事もね」
「というと」
 ナターシャはセーラの今のお話を聞いて言いました。
「カリーですか」
「そうよ」
 ナターシャに笑顔で答えました。
「それを食べるわ」
「そうですね」
「そうだと思ったわね」
「はい」 
 ナターシャはその通りだと答えました。
「やっぱり」
「そうよね」
「インドっていいますと食べものは」
 それはというのです。
「何と言ってもです」
「カリーよね」
「カレーでなくて」
「実はね」 
 セーラはお話しました。
「私ロンドンでのお食事はね」
「合わなかったのかしら」
「そうだったんです」
 ドロシーに答えました。
「実は」
「やっぱりそうだったのね」
「お父様と一緒だった時も」
「インドのものを食べていたの」
「カリーを」 
 まさにこのお料理をというのです。
「そうでしたので」
「だからなのね」
「はい、それにあの頃のイギリスのお食事は」
「よくなかったのね」
「パンも他の食べものも」
 どれもというのです。
「実はです」
「お口に合わなくて」
「苦労しました」
「そうだったのね」
「ですがインドに戻って」
「またカリーを食べて」
「そうなってです」
 それでというのです。
「嬉しかったです」
「そして今もなのね」
「インドのお料理特にです」
「カリーを食べているのね」
「そうしています、ですがカレーも」
 こちらもというのです。
「好きで」
「よく食べているのね」
「そうしています」 
 皆にお屋敷の中を案内してです、その中でドロシーにお話します。
「よく、それで色々なカリーとです」
「カレーをなのね」
「楽しんでいます、それでは今から」
「カリーをなので」
「召し上がって下さい」
 こうお話してでした。
 皆でお屋敷の食堂に案内されてそこでカリーを食べました、ご飯の上に様々なスパイスで調合された鶏肉とお野菜がたっぷりと入ったルーをかけたそのカリーを皆で食べました、その後で。
 セーラはラメダス、ベッキーと一緒に皆を国の隅から隅まで案内しますが。
「人と一緒に牛がいて」
「共に街の中で暮らしているね」
 かかしと樵はその彼等を見て言いました。
「この風景を見るとね」
「やっぱりインドだね」
「そして小公女の国だね」
「そう思うね、人も牛もね」
 かかしはここでこう言いました。
「変わらないよ」
「そうですね」
 ラメダスが応えました。
「牛は神聖な生きものです」
「神様の使いだね」
「農作業の手伝いをしてくれて」
 そうしてというのです。
「沢山のミルクをくれる」
「有り難い生きものだね」
「ですから」
 だからだというのです。
「私達はです」
「牛を大切にしていて」
「人と同じ様にです」
「街でもいるね」
「そうなのです」
「インドがそうで」
「この街もです」
「そうだね」
 かかしはラメダスの言葉に頷きました。
「まさに」
「そうです、それでなのですが」
「それで?」
「お嬢様はクリスチャンですが」
 今度は宗教のお話をしました。
「ですが」
「それでもだね」
「この国は多くの宗教が存在しています」
「ヒンズー教やシーク教だね」
「ジャイナ教も、そしてお嬢様もです」
 クリスチャン即ちキリスト教徒でもというのです。
「よくそちらの寺院にです」
「参拝しているんだ」
「そうなのです」
「そうなったんだね」
「かつては教会にだけです」
 キリスト教のというのです。
「行かれていましたが」
「今はだね」
「他の宗教の寺院にも参拝され」
「祈っているんだね」
「それを捧げられています」 
 そうだというのです。
「今は」
「色々な寺院がありまして」
 ベッキーもかかしにお話します。
「ヒンズー教の多くの神々が祀られています」
「神々ご自身は今この国におられるかな」
「いえ、この国にはおられないです」
 ベッキーは正直に答えました。
「あの方々は」
「あの方々の場所にだね」
「おられます」
「そうなんだね」
「ですから」
 それでというのです。
「お参りしますと」
「お祈りを捧げるだけだね」
「そうなります」
「神々とお話は出来ないね」
「残念ですが」
「それは次の機会だね、しかし」
 こうも言うかかしでした。
「ヒンズー教の神々はよく腕や目が沢山あるね」
「はい、まことに」
「それだけ凄い力があるということだね」
「それで私もです」
 セーラはにこりと笑って言いました。
「国の人達に像を造ってもらいましたら」
「腕や目が多かったんだ」
「腕が六本でした、目は三つで」
「そうだったんだね」
「何でも私はそこまで凄いとです」 
 その様にというのです。
「言ってもらいまして」
「そうなんだね」
「あの、女神様ではです」
 セーラは苦笑いを浮かべて言いました。
「とても」
「ないというんだね」
「プリンセスと言ったことはありますが」
 自分をというのです。
「女神様とはです」
「そこまで凄くないかな」
「そうです」
 かかしにその通りだと答えました。
「私は。ですから」
「そうした像を造られて」
「恐縮しまして」
 そうしてというのです。
「造ったげいしゅつかの人にありのままの姿の」
「その像をだね」
「造ってもらいまして」
「その像をだね」
「お庭に置いています」
「そういえばあったね」 
 樵もここで言いました。
「お屋敷のお庭にセーラの像がね」
「ラメダスとベッキーのものもね」
「そして他の人達のものもね」
「あったね」
「二人も他の人達も」
 セーラはかかしと樵に答えました。
「私がロンドンで辛かった時に支えてくれました」
「そうした人達で」
「今でも感謝しているんだね」
「若しです」
 セーラはその時のことを振り返って言いました。
「皆がいなかったら私もどうなっていたか」
「大変だったね、あの頃は」
「ロンドンでね」
「お父さんが破産したんだったね」
「それでお亡くなりになってね」
「セーラ嬢は孤児になって一文無し」
「そうなったからね」
 二人でお話します。
「だからね」
「学院の中であっという間に扱いが酷くなって」
「屋根裏に追いやられて」
「こき使われたね」
「ああしたことは絶対に許されないことだよ」
 魔法使いは少し怒ったお顔になって言いました。
「幾らお金がなくなってもね」
「急に掌を返してね」
「粗末に扱うなんてね」
「何でも虐待だったそうだね」
「その酷さは」
「何でも日本のアニメだとね」 
 魔法使いはそちらのお話をしました。
「とんでもないいじめだったそうだよ」
「ううん、いじめのお話は聞くけれど」
「オズの国にはないからね」
 二人でお話します。
「僕達はお話を聞くだけで」
「実感はないんだよね」
「一体どんなものか」
「どれだけ酷いか」
「私も幸い聞いているだけだけれど」 
 魔法使いも実際に見たことはありません、もっと言えば経験したこともない様です。とても幸せなことに。
「とても酷くて醜いものだよ」
「そうなんだね」
「いじめというものは」
「そのいじめをね」
 魔法使いはセーラを見つつ言いました。
「彼女は受けていたんだよ」
「酷いね」
「よく我慢したね」
「ですが今はです」
 ラメダスが深く深刻に考えるかかし達に言いました。
「ご覧の通りです」
「幸せになったんだね」
「セーラ嬢は」
「ダイアモンド鉱山が手に入って」
「お父さんは実は破産していなくて」
「それで、です」
 そのうえでというのです。
「お金が戻って無事にです」
「豊かに暮らせる様になった」
「そうだね」
「そしてロンドンを後にされて」
 そうしてというのです。
「インドにおいてです」
「幸せにだね」
「過ごせる様になったね」
「そうです」
 かかしと樵に答えました。
「再び」
「お嬢様は本当に苦労されました」
 ベッキーも言ってきました。
「ミンチン先生に酷い扱いを受けて」
「そのミンチン先生は許せないね」
 臆病ライオンは怒って言いました。
「何があっても」
「そうですね」
「全く、お金がなくなってもね」
「酷いことをしてはいけないですね」
「そうだよ、とても悪いことをしたよ」
 ミンチン先生はというのです。
「許してはいけないよ」
「はい、ですがそれはです」
「それは?」
「終わったことでして」
 そうであってというのです。
「お嬢様は何も思っておられません」
「ほんの一瞬のことでした」
 セーラは微笑んで言いました。
「あの時のことは」
「そうなんだね」
「ですからもうです」
「忘れたんだね」
「忘れていませんがほんの一瞬のです」
 そうしたというのです。
「出来事だったとです」
「思っているんだ」
「小さなことだと」
「大変だったのに」
 臆病ライオンはセーラのお話を聞いて考えろお顔で言いました。
「そう言うなんてね」
「凄いね」
 トトも言いました。
「本当にね」
「そうだよね」
「セーラは凄い人だよ」
「器が大きいね」
「まさにプリンセスだね」
「一国の主に相応しいよ」
「そのセーラと比べて」
 ジャックも言いました。
「ミンチン先生っていう人は随分器が小さかったんだね」
「そしてどうもね」
 かかしがここでこう言いました。
「先生と言うからには教師だね」
「学院っていうしね」
「それも立場ある」
「学院長さんかな」
「そうでした」 
 ベッキーが答えました。
「あの人は」
「やっぱりそうだったんだ」
「はい、ですが」
 ベッキーはジャックに答えました。
「皆さんが仰る通りにです」
「器が小さかったんだ」
「そしてお嬢様はあの学院にはです」
「そこにはだね」
「おられるにはあまりにも賢過ぎました」
「そうだったんだ」
「少なくともミンチン先生にはです」
 その人にはというのです。
「あまりにもです」
「賢過ぎたんだ」
「そうでした、ですから」
 それでというのです。
「お嬢様は結果として学院を出られ」
「インドに戻ったんだね」
「そして再び幸せになりました」
「そうなんだね」
「全てはです」
 まさにというのです、ラメダスは言いました。
「そうなるべくしてです」
「なったね」 
 かかしが応えました。
「まことに」
「はい、お嬢様の聡明さと人格を考えますと」
「ミンチン先生はどうしてもね」
「そのどちらもです」
「セーラ嬢には及ばないね」
「遥かにですね」
「だからね」  
 それでというのです。
「まさにそうなるべくしてね」
「お嬢様は幸せを取り戻せました」
「そうだね」
「そしてロンドンのことは一瞬で」
 ドロシーも言いました。
「それからはなのね」
「ずっと幸せで」
 そしてとです、セーラはドロシーにお話しました。
「今はこうしてです」
「オズの国にいて」
「永遠に幸せなのですから」
「ロンドンのことは一瞬ね」
「ほんの」
「そうなのね」
「不幸があろうとも」
 セーラはドロシーに微笑んで言いました。
「まさにそれはです」
「一瞬のことで」
「永遠の最高の幸せに包まれていますから」
「いいのね」
「私は」
「そうなのね」
「この国ですが」
 セーラは自分のお国のお話もしました。
「とてもいい国なので」
「好きなのね」
「心から愛しています」
 ドロシーににこりと笑って答えました。
「ですからいつも私の全ての力を以てです」
「統治しているのね」
「この国の誰もが幸せでいられる様に」
「貴女みたいに」
「そうです」
「そういえばね」
 ここでトトが言いました。
「ミンチン先生達はどうなったのかな」
「その人達は学院が破産しそうになって」
 ナターシャがお話しました。
「セーラさんの寄付で助かったのよ」
「日本ではそうなっているの」
 恵梨香も言います。
「アニメの方でね」
「ミンチン先生はセーラさんにとても酷いことをしたけれど」
 それでもと言うジョージでした。
「セーラさんに救われたんだよ」
「そのうえでセーラさんはインドに戻ったんだ」 
 神宝はこのことを言い加えました。
「学院とそこにいる人達を救ってね」
「自分に酷いことをした人達を助ける」
 カルロスはしみじみとした口調で言いました。
「そうは出来ないね」
「凄いね、神様みたいだよ」
 トトはここまで聞いて思いました。
「セーラ嬢は」
「ええ、そうよね」
「僕達もそのお話を聞いて凄いと思ったよ」
「日本のアニメでのことだけれど」
「こんなこと出来ないって」
「そうはね」
「僕だったら自分や他の人に酷いことをする人を助けないよ」 
 絶対にというのです。
「本当にね」
「そうね、ただね」
 ここでナターシャはトトに言いました。
「アニメは声優さんがおられるでしょ」
「それぞれのキャラクターの声をあてるね」
「いじめの場面が酷過ぎて」
 それでというのです。
「皆物凄く怒ったのよ」
「いじめをするミンチン先生達に」
「そしてその怒りがね」
 この感情がというのです。
「先生達の声をあてている声優さん達にも向かったのよ」
「演じている人は関係ないよ」
 トトはすぐにこう言いました。
「それでもなんだ」
「それで声優さん達は物凄い攻撃を受けたのよ」
「抗議の手紙や剃刀やゴミや生きものの死骸が送られて」
「自殺しろってロープが来て」
「陰口とか物凄く言われて」
「オーディションでその声でミンチン先生達思い出すって言われて門前払いにされて」
「うわ、それこそいじめだよ」
 トトはナターシャ達五人のお話を聞いて飛び上がって驚きました、そのうえでこう言ったのでした。
「声優さん達に罪はないのに」
「そうよね」
「けれどその時はそうだったらしいよ」
「私達も聞いただけだけれど」
「それで声優さん達も参って」
「こうした役は二度としたくないって言ったそうよ」
「それも間違いだよ」
 心優しい樵はその心をとても痛めて言いました。
「声優さん達は演じているだけで」
「ミンチン先生達じゃないよ」
 かかしも心を痛めて言いました。
「もっと言えばミンチン先生達本人に対しても」
「そんなことをしたら駄目だね」
「絶対にね」
「それもまたいじめだね」
「自分達が嫌うミンチン先生達と同じだよ」
「もっと酷いかもね」
「そうかも知れないね」
 こう言うのでした。
「もうね」
「そうだよね」
「そのことも酷いね」 
 臆病ライオンが見てもでした。
「日本のアニメのことも」
「そう言うしかないね」
「本当にね」
 魔法使いもジャックもそう思いました。
「あまりにもね」
「酷いよ」
「そうしたことはしないで」
 それでと言うかかしでした。
「むしろその演技をね」
「讃えるべきだよ」 
 樵はそうすべきと主張しました。
「本当に」
「悪役でもね」
「いい演技をしたからこそ」
「映えるしね」
「それで攻撃するなんて」
「間違いだよ」
「全く以てね」
 二人でお話します。
「ミンチン先生達と同じかね」
「もっと酷いよ」
「そんなことしたらね」
「絶対に駄目だよ」
「本当にそうだわ、声優さん達は大変だったわね」
 ドロシーも思って言うことでした。
「よくずっと演じられたわね」
「はい、本当に二度と演じたくないと言われて」
 ナターシャはドロシーにも言いました。
「実際にです」
「ミンチン先生達みたいな役はなのね」
「演じた声優さん達は今もです」
「演じておられないのね」
「そうです」
「それだけ参ったのね」
「はい、そして」 
 それにというのでした。
「二年後若草物語がアニメになったんですが」
「あの四姉妹の」
「その人達はお母さんとジョーさんの役になりました」
「あら、どちらも凄くいい役ね」
 ドロシーはナターシャのお話を聞いてお顔を明るくさせました。
「とても」
「そうですよね」
「その時は大変だったけれど」
「はい、若草物語ではです」
「凄くいい役を演じられたのね」
「その演技が凄く評判がよかったです」
「そのこともよかったわね」
 ドロシーは微笑んで言いました。
「小公女の時は大変だったけれど」
「後で、です」
「凄くいいことになったわね」
「本当にです」
「そしてセーラ嬢達は今オズの国にいる」
 かかしは腕を組んで笑顔で言いました。
「それならいいね」
「ええ、セーラが幸せになってね」
 それでと言うドロシーでした。
「声優さん達もいい役を演じられたら」
「それでいいね」
「それで作品としてもよかったのね」
「名作と言われてます」
 ナターシャが答えました。
「そのシリーズの中でも」
「そうなのね」
「確かにいじめの場面が酷かったですが」
 それでもというのです。
「今はです」
「名作と言われているのね」
「実際に作品としてです」
「クオリティが高いのね」
「そうです」
「そうなのね」
「それもかなりとです」
 こうドロシーにお話します。
「言われています」
「声優さん達も報われるわね」
「大変な思いをされただけ」
「ええ、そう思うわ」
 ドロシーは微笑んで答えました。
「本当にね。それではね」
「これからですね」
「この国でやるべきことをしていきましょう」
 こうお話してでした。
 ドロシーは皆と一緒にセーラの案内を受けてそのうえで彼女の国の隅から隅まで見ました、勿論カリーも食べましたが。
 晩ご飯はカレーでした、ドロシーはそのカレーを食べて言いました。
「カリーとカレーでね」
「また違いますね」
「ええ、カリーはインドでね」
 セーラに応えて言います。
「カレーはインドね」
「そうですね」
「そしてね」 
 ドロシーはさらに言いました。
「日本でね」
「カレーはとんでもないことになりましたね」
「もうね」
「独自の進化ですね」
「それに入ってね」
「色々なカレーがありますね」
「貴方も知っているのね」
 セーラに尋ねました。
「やっぱり」
「はい、色々なカレーがあってです」
「貴女も食べているのね」
「カリーも食べていますが」
 それでもというのです。
「カレーもで」
「日本のカレーもなのね」
「カツカレーやシーフードカレーに」
 そうしたカレーにというのです。
「海老フライやハンバーグのカレーもです」
「食べているのね」
「他にも色々なカレーを」
「お嬢様はです」
 ラメダスは微笑んでお話しました。
「あらゆるカレーがお好きでして」
「そうなのね」
「毎日一食はです」
 そうしたペースでというのです。
「カリーかカレーをです」
「食べているのね」
「そうしています」
 そうだというのです。
「本日の様に二食カリーかカレーということもです」
「あるのね」
「インドですから」
「カリーよね」
「それにイギリスにおられたので」
「尚更ね」
「そうしたお料理がお好きです」 
 そうだというのです。
「それでお笑いの街のカレーも」
「あの日本風の」
「そうです、縦縞のユニフォームの野球チームが人気の」
「あの街ね」
「あの街のカレーもお好きです」
「素敵なカレーですね」
 セーラも微笑んで言いました。
「最初からご飯とルーが混ぜてあって」
「真ん中に生卵がありますね」 
 ベッキーも言ってきました。
「そこにおソースをかけて卵とカレーをかき混ぜて食べる」
「こんなカレーがあるのかと」
「お嬢様は驚かれて」
「そしてとても美味しかったので」
 それでと言うセーラでした。
「私としましても」
「美味しくてなのね」
「大好きになりました」
「本当にあのカレーが好きなのね」
「他のカレーも。今は茸のカレーですが」 
 見れば皆そちらを食べています。
「こちらも好きです」
「美味しいわね、このカレー」
「あの頃のロンドンにはカレーは」
「なかったのね」
「そのことが寂しかったですが」
 それでもというのです。
「今はです」
「こうしてなのね」
「はい」 
 まさにというのです。
「毎日です」
「食べているのね」
「そうしています、カリーやカレーを毎日食べられる」
「幸せね」
「とても」
 こう言うのでした。
「そう感じています」
「そうよね、好きなものがいつも食べられる」
「幸せですね」
「私もそう思うわ」
「ですからこれからも」
「オズの国で」
 ドロシーも言いました。
「そして貴女の国で」
「カリーやカレーを食べていきます」
「そうしていくのね」
「この国を治めて」
 そうしながらというのです。
「そしてです」
「楽しく明るい国にするわね」
「そうします」
 絶対にというのです。
「私も」
「その意気ね、そう思ってね」
「何かを出来ますね」
「そうしようって思って」
「そこから努力することですね」
「そう、まずはそうしようそうしたいってね」
 その様にというのです。
「思ってこそね」
「出来ますね」
「だからね」
「私もですね」
「そう思って」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「動くことですね」
「そうしてね、動いていってね」
 ドロシーはセーラに確かな声でお願いする様に言いました。
「これからも」
「はい、そうしていきます」
「私もそうするし」
 ドロシー自身もです。
「貴女もね」
「一緒ですね、私達は」
「同じプリンセスだし」
 それにというのです。
「お友達よね」
「私達はお友達ですね」
「ええ、同じオズの国の住人の」
「だから同じですね」
「そう、一緒にね」
 まさにというのです。
「頑張っていきましょう」
「思って動いて」
「そうしていきましょう」
「わかりました」 
 セーラはドロシーの言葉に微笑んで頷きました、そうしてでした。
 一行は小公女の国も隅から隅まで観ました、それから次の国に向かったのでした。








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