『オズのエマおばさん』
第十幕 山の妖精達の村
ドロシーは街の周りのある山にです、この日は朝から皆を誘って入ってそのうえで笑顔で言うのでした。
「この山には妖精さんがいるのね」
「そうなのね」
「ええ、山の妖精さん達がね」
エマおばさんに笑顔で答えました。
「いるの」
「オズの国には妖精さん達もいるから」
「だからね」
それでというのです。
「山の妖精さん達もいて」
「それでこの山になのね」
「村をもうけてね」
そうしてというのです。
「暮らしているの」
「妖精の村ね」
「とても素敵な村よ」
おばさんににこりと笑ってお話しました。
「その村はね」
「さて、どんな村かな」
おじさんは姪御さんの言葉に目をキラキラとさせました。
「一体」
「それは行ってのお楽しみでね」
ドロシーはおじさんにもお話しました。
「今はね」
「期待しておくことだね」
「どんな楽しい村かね」
「行くまではそうして楽しんで」
「行ってからはね」
それからはというのです。
「村自体をよ」
「楽しむことだね」
「そうよ。それでね」
ドロシーは笑顔でさらにお話しました。
「その村でも山の幸をね」
「いただくんだね」
「そうしましょう」
笑顔で言うのでした。
「是非ね」
「私達が山の幸を楽しむべき旅行だから」
「その村でもだね」
「楽しむのよ」
おばさんとおじさんに答えました。
「そうしてね」
「ええ、それじゃあね」
「そうさせてもらうよ」
お二人もそれならと答えました。
「では山の妖精達の村にね」
「行きましょう」
「妖精といっても色々な人達がいるけれど」
それでもと言うトトでした。
「今度の妖精さん達はどんな人達かっていうと」
「貴方のあの村に行ったことがあるでしょ」
「ドロシーと一緒にね」
トトは笑顔で応えました。
「そうしたよ」
「そうでしょ」
「だって僕はいつもドロシーと一緒だからね」
それでというのです。
「あの村にもだよ」
「私と一緒に行ったわね」
「そうしたよ」
「それで楽しかったでしょ」
「とてもね」
笑顔で応えました。
「そうだったよ」
「それでね」
「あの村にね」
「行きましょう」
「そうしようね」
こうお話してです。
皆で山の妖精の村に向かいました、山道を歩いていってそうしまして。
そして妖精の村の前に来るとそこは木の柵で囲まれていてその中にログハウスが沢山見えました、そしてです。
村の妖精さん達はといいますと。
「あら、鹿の角が生えているわね」
「そして足も膝から下は鹿のものだね」
「服はカドリングの赤い服で」
「顔立ちや身体や大きさはわし等と変わらないね」
「この人達はパン神の眷属でね」
ドロシーはおばさんとおじさんに答えました。
「鹿の妖精なの」
「パン神は山羊でね」
ムシノスケ教授が言ってきました。
「彼等は羊だね」
「ええ、パン神は山にも関係あるから」
「牧童の神様だから」
「山にもよく入られるから」
それでというのです。
「山の妖精さんもね」
「眷属の人達がいるね」
「そうなのよね」
「うん、それじゃあね」
「今からね」
「村に入れてもらおう」
「そうしましょう」
ドロシーは教授ともお話してでした。
皆は木の門のところに行ってそのうえで門番の人に尋ねました。見れば門はもう全開になっています。
「中に入っていいかしら」
「勿論です」
門番の若い男の人が答えました。
「この村は来る者は拒まずなので」
「だからなのね」
「はい」
それ故にというのです。
「もうです」
「何時でもなのね」
「入って頂いて」
そうしてというのです。
「楽しんでいって下さい」
「それじゃあね」
「それでなのですが」
あらためてです、門番の人はドロシーに言いました。
「お久し振りですね」
「この村に来るのはね」
「そうですね」
「ええ、そうなのよね」
「久し振りに来て頂いて」
ドロシーににこりと笑って言うのでした。
「凄くです」
「どうなの?」
「嬉しいです、ではです」
「これよりね」
「村を楽しんで下さい」
「それではね」
こうお話してでした。
皆で村に入りました、そしてです。
村に入ると人間と同じ大きさの鹿の角と足の妖精さん達が畑仕事をして楽しそうに過ごしています、その村の中を見てです。
おばさんは神妙なお顔で、です。こう言いました。
「私達の村と同じね」
「ああ、お仕事はな」
「畑仕事をして」
「あと山に入って採集なんかしているみたいだな」
「そうよ、この村はそうして暮らしてるの」
ドロシーはお二人にここでも答えました。
「近くに大きなお池があってそこに水道を通してね」
「お水を村に持って来て」
「それで農業にも使っているんだね」
「そうなのよ」
そうしているというのです。
「この村はね」
「それで山の恵みもなのね」
「採集しているんだね」
「そうして暮らしているのね」
「そうなんだね」
「あと放牧もしているね」
腹ペコタイガーは村に山羊が多いことも見て言いました。
「そうだね」
「山羊が多いね、それにね」
臆病ライオンも村の中を見回して言います。
「トナカイもね」
「多いね」
「やっぱり鹿の妖精さん達だから」
「トナカイもいるね」そうだね」
「山羊の乳にね」
ドロシーは二匹に応えてお話しました。
「トナカイのものもね」
「飲んでいるんだね」
「この村の人達は」
「そうよ、勿論チーズやバターやヨーグルトもね」
そうした乳製品もというのです。
「楽しめるわよ」
「ああ、そうなんだ」
「そのことも楽しみだね」
「鹿の妖精さん達だから」
ドロシーはさらにお話しました。
「お肉は食べないわよ」
「ああ、そうなんだ」
「鹿だからだね」
「ベジタリアンよ、パンやジャガイモが主食で」
そうしてというのです。
「お野菜や果物を食べて」
「ミルクや乳製品もだね」
「食べるんだね」
「そうなの、それでね」
さらにお話するドロシーでした。
「この村のお料理は」
「あっ、若しかして」
モジャボロがふと気付いたお顔になって言いました。
「あのお料理かな」
「チーズをふんだんに使ったね」
弟さんも応えました。
「あれだね」
「そうじゃないかな」
「そうだね、見ればワインも沢山あるし」
「この村はワインも沢山あるわよ」
笑顔で、でした。ドロシーはモジャボロと弟さんに答えました。
「だからね」
「あのお料理をだね」
「楽しめるんだね」
「そうよ、おばさんとおじさんにね」
お二人にとです。
「あのお料理をよ」
「楽しんで欲しくて」
「それでだね」
「案内したしね」
だからだというのです。
「ここはね」
「是非だね」
「楽しんでもらうね」
「あのお料理をね」
「チーズを使ったお料理でワインも使う」
カルロスはそう聞いて考えるお顔になりました。
「何かな」
「すぐにわかるわ」
ドロシーは笑顔で答えました。
「どのお料理か」
「そですか」
「だからね」
それでというのです。
「これからね」
「そのお料理を食べに」
「お店に行きましょう」
「わかりました」
カルロスはドロシーにそれならと応えました、そうしてです。
皆でドロシーが案内したお店に入りました、そしてドロシーが注文して出て来たお料理はといいますと。
チーズフォンデュでした、お鍋の中にワインと一緒に煮られて溶けているチーズがあり横に小さく切られたパンにジャガイモにです。
茸にお野菜があります、カルロスはそのお料理を見て言いました。
「チーズフォンデュなんだ」
「このお料理なのね」
ナターシャもそのお料理を見て言います。
「そうなのね」
「何かなと思っていたら」
ジョージもお鍋を見て言います。
「チーズフォンデュだったんだ」
「これは楽しみだね」
神宝の目はきらきらとしています。
「具も多いしね」
「じゃあそれぞれの串を取って」
恵梨香はお鍋と一緒に用意されているそちらを見ています。
「具を串に刺してチーズに入れて食べましょう」
「チーズフォンデュは私達の村にもあるけれど」
おばさんも言います、そのお料理を見て。
「ただね」
「何か違う感じがするな」
おじさんもお鍋を見ています。
「どうも」
「そうよね」
「何かチーズの匂いが違うよ」
「どうもね」
「これはトナカイのミルクで作ったチーズなの」
ドロシーがお話しました。
「実はね」
「へえ、トナカイの」
「トナカイのチーズから作ったんだね」
「そうなの、私達のお口にも合う様にね」
その様にというのだ。
「なってるわ」
「そうなのね」
「じゃあ安心して食べられるね」
「外の世界でトナカイのミルク自体をね」
チーズどころかです。
「飲んでいるかは知らないけれど」
「山羊のチーズはありますね」
カルロスが言ってきました。
「そちらは」
「ええ、それでもね」
「今日はですね」
「この村の名物のね」
「トナカイのチーズのフォンデュですか」
「そちらにしたのよ」
「そうなんですね」
「外の世界のことは知らないけれど」
それでもというのです。
「オズの国ではね」
「あるんでね」
「この村にね、それでおばさんとおじさんにね」
「今日のお昼はですね」
「食べて欲しくて」
そのトナカイのチーズのフォンデュをというのです。
「この村に案内させてもらって」
「お店にもですね」
「そうさせてもらって」
「これからですか」
「食べてもらうわ」
そのトナカイのチーズのフォンデュをというのです。
「そうしてもらうわ」
「そういうことですね。それじゃあ」
「ええ、今からね」
「食べますね」
「そうしましょう」
こうお話してでした。
皆で串を取ってそちらにそれぞれが食べたい具を刺してでした。
溶けているチーズに入れてチーズをたっぷりと絡めて食べます、おばさんはフォンデュを食べて言いました。
「これはね」
「美味しいね」
おじさんも食べてから言います。
「そうだね」
「とてもね」
「牛のチーズのものは食べているよ」
「そちらのチーズフォンデュはね」
「ええ、けれどね」
「トナカイのチーズもね」
「美味しいよ」
こう言うのでした。
「本当にね」
「そうよね」
「ワインも利いていてね」
「白ワインがね」
「こちらも美味しくて」
「いい味付けになっているわ」
「そうでしょ、だからね」
ドロシーもフォンデュを食べつつ言います。
「お二人に食べてもらいたくて」
「それでなのね」
「わし等をこの村に案内してくれて」
「このお店にもそうしてくれて」
「食べさせてくれるんだね」
「そうなの」
まさにとです、カドリングの赤い木で造られたログハウスの中で赤い椅子に座って赤いテーブルの上にある赤いお鍋の中の白いチーズを見て言いました。
「こうしてね。あとね」
「あと?」
「あとっていうと?」
「ここはカドリングでしょ」
この国にあるからだというのです。
「だからチーズの色もね」
「赤いものもあるのね」
「そうなんだね」
「そうなの。白いチーズもあれば」
それと共にというのです。
「赤いチーズもあってね」
「食べられるのね」
「そちらのチーズも」
「そうよ、味は同じだけれど」
それでもというのです。
「色はね」
「違うのね」
「そのことも面白いね」
「そうでしょ、それでこうしてね」
さらにお話するドロシーでした。
「チーズフォンデュを食べて」
「そしてなの」
「そのうえでなの」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「このお昼のデザートはね」
「何なの?」
「そちらは何かな」
「同じフォンデュで」
今自分達が食べている、というのです。
「チョコレートよ」
「あそこにあるね」
モジャボロはお店の中にあるチョコレートが溶けて上から下に流れている装置を見て言いました、その横には沢山の果物やお菓子があります。
「あちらだね」
「そうなの、メインはチーズフォンデュでね」
「デザートはチョコレートフォンデュだね」
「そうなの」
こうお話するのでした。
「フォンデュ尽くしよ」
「そうだね」
「赤いチョコレートだね」
弟さんはそのチョコレート見て言いました。
「カドリングの」
「そうでしょ、あちらもね」
「楽しむんだね」
「そうするのよ」
「どちらもいいね」
「そうよね」
ドロシーはそのスカーレッドのチョコレートを見つつ応えました。
「本当にね」
「そうだね、じゃあ今は」
「チーズフォンデュだね」
「こちらを食べましょう」
「こうしてね」
弟さんは言いつつです。
自分の串に茸を刺してチーズの中に入れます、それを食べてからそのうえでこんなことを言ったのでした。
「いや、本当にね」
「美味しいわね」
「チーズがね」
こちらがというのです。
「最高の調味料になっているよ」
「チーズってそうなのよね」
「そのまま食べても美味しくてね」
そうしてというのです。
「お料理に使ってもだよ」
「最高なのよね」
「特に溶けると」
今の様にです。
「そうなるとね」
「特にね」
「凄くね」
まさにというのです。
「美味しいよ」
「そうよね」
「そう思うとチーズフォンデュはね」
「最高の調味料で食べる」
「最高のお料理だね」
「そう言っていいわね」
ドロシーも笑顔で応えます。
「本当に」
「全くだよ」
「チーズの美味しさがわかれば」
教授はジャガイモをお鍋に入れてから言いました。
「こうしてだよ」
「お料理に使えばいいわね」
「チーズは美味しくて栄養があって」
そうしてというのです。
「保存も利くし」
「調味料にも使える」
「最高の食材だよ」
「そのうちの一つね」
「オズの国にもあってね」
そのチーズがというのです。
「どれだけよかったか」
「そうよね」
「私としてはね」
教授はさらに言いました。
「ワインとも合うし」
「このこともいいことね」
「それでだけれど」
ドロシーにあらためて言いました。
「今からね」
「ワインもなのね」
「注文していいかな」
「勿論よ」
これがドロシーの返事でした。
「それじゃあね」
「ワインをね」
「そうしましょう」
「子供用のワインも頼んで」
こちらもというのです。
「楽しみましょう」
「そうしようね」
トトも応えました、そうしてです。
皆でワインも注文しました、それぞれボトルのワインを注文してそのうえでグラスに入れて飲みます。子供達は子供用のアルコールが入っていませんが酔うことの出来るそれを買ってです。そうするとです。
「これはまたね」
「美味しいですね」
「ワインとよく合いますね」
「どちらも凄く美味しいです」
「幾らでも食べられる感じです」
「そして飲めます」
「そうよね」
ドロシーは飲みつつカルロス達五人に応えました。
「チーズとワインの組み合わせがいいのよね」
「そうですよね」
「最高の組み合わせの一つですよね」
「チーズとワインって」
「本当にそうですよね」
「凄く美味しいですね」
「そうなのよね、頼んでよかったわ」
ドロシーはそのワインを飲みながら言いました。
「本当にね」
「このワインもかな」
おじさんはワインを飲んでからドロシーに尋ねました。
「この村のものかな」
「そうよ、この村の葡萄から造ったのよ」
「やっぱりそうだね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「機械で造ったのよ」
「オズの国の」
「昔は足で踏んでいたわよね」
「ワインを造るのはね」
「けれど今はね」
「機械でプレスするね」
「この村もそれは同じよ」
こうおじさんにお話するのでした。
「文明があるのよ」
「そういうことだね」
「だからね」
それでというのです。
「このことはね」
「よく覚えておくことだね」
「ええ、文明はね」
これはというのだ。
「オズの国のものは」
「オズの国の何処にもあるんだね」
「そう、この村にもね」
「深い山の中にあってね」
おばさんは木串に刺したパンをフォンデュの中に入れました、そうして溶けた熱いチーズに覆われたパンを食べてからドロシーに言いました。
「それで昔ながらの暮らしをしていると思ったのに」
「そうした面があってもね」
「文明もあるのね」
「そう、ここの人達もオズの国の人達だから」
山の妖精達もというのです。
「それでね」
「だからなのね」
「そう、文明は入っていて」
「その中で暮らしているのね」
「この村はむしろ密接にね」
こう言っていい位にというのです。
「オズの国の文明を受け入れてるわ」
「そうして暮らしているの」
「そうよ」
まさにというのです。
「そうしているわ」
「そうなのね」
「文明は素晴らしいものでしょ」
「ええ」
おばさんも否定しませんでした。
「それが何もかも作っているわ」
「外の世界もそうでね」
「オズの国もよね」
「そうよね、だからこの村もそうで」
「それでなのね」
「そしてね」
そうしてというのです。
「このフォンデュだってね」
「文明が用いられているのね」
「そうなのよ」
まさにというのです。
「電気のコンロで熱しているしね」
「そういえばそうね」
おばさんもそれはと頷きました。
「確かに」
「この村でもテレビを観られてパソコンを使えて」
そうしてというのです。
「水道も通っているのよ」
「本当に文明の中にあるのね」
「科学と魔法のね。食べ終わったら」
ドロシーはそれからのこともお話しました。
「村のワイン工場やチーズ倉庫を観ましょう」
「今度はそちらね」
「そうよ、今私達が飲んで食べているものをね」
まさにそれ等をというのです。
「観ましょう」
「ええ、それじゃあね」
おばさんも笑顔で頷きました、そしてです。
皆でチーズフォンデュをワインと一緒に楽しんでチョコレートフォンデュもそうしました、その後で。
皆でチーズ倉庫を観ますがそこには色々な種類の白や赤の大きな丸いチーズ達が置かれています。そのチーズ達を目にしてです。
モジャボロは嬉しそうにです、こんなことを言いました。
「いや、もうお腹一杯だけれど」
「美味しそうだよね」
「うん、どのチーズもね」
弟さんに笑顔で応えました。
「そうだね」
「僕もそう思うよ」
「やっぱりチーズはいいね」
「そのまま食べても美味しくて」
「お料理にも使えてね」
「味付けにもなってくれて」
そうしてというのです。
「本当にね」
「いい食べものだよ」
「全くだね」
「若しチーズがなかったら」
教授は深く考えるお顔になって述べました。
「私達は困っていただろうね」
「美味しいものがなくてだね」
「そして保存も利くからね」
こう腹ペコタイガーにお話しました。
「とてもいい食べものだよ」
「だからだね」
「若しなかったら」
チーズがというのです。
「どれだけ困っていたか」
「わからないね」
「うん、ただね」
教授はここでこうも言いました。
「アジア、中国や日本ではあまりなかったんだよ」
「どちらもあまり乳製品は関係ない感じだね」
腹ペコタイガーも言われて頷きました。
「そうだね」
「その食文化においてそうだね」
「確かにね」
「モンゴル等遊牧民は常に食べていたよ」
チーズをというのです。
「馬乳で造ってね」
「牛乳じゃないね」
「勿論山羊のものでもないし」
そちらから造っていないというのです。
「トナカイのものもだよ」
「さっき僕達が食べた」
「そちらもだよ」
「そうだね」
「けれど遊牧民の人達は食べていたんだ」
「アジアでもだね」
臆病ライオンが応えました。
「そうだね」
「そうだよ、ただ中国や日本でもだよ」
「チーズ食べていたんだ」
「そうなんだ」
「あまり食べていなくても」
「蘇があるね」
教授はこの食べものの名前を出しました。
「酪や醍醐も」
「オズの国もあるのかな」
「あるわよ」
ドロシーが言ってきました。
「どの食べものもね」
「あるんだ」
「中国や日本の乳製品よ」
「今教授がお話してくれた通りに」
「そう、それでね」
そうした食べものでというのです。
「私達も食べられるわよ」
「そうだったんだ」
「中華料理っていうと」
ドロシーは微笑んでお話しました。
「色々な食材や調理方法があるけれど」
「うん、けれどね」
「乳製品はあまり、だよね」
腹ペコタイガーと臆病ライオンが応えました。
「縁がないよね」
「そうだね」
「日本のお料理、和食もね」
こちらはというのです。
「そうでしょ」
「和食はお醤油だね」
「何といっても」
二匹で言いました。
「そこに乳製品が出る幕ないよね」
「あとお味噌もあるし」
「肉じゃがとかにも使わないし」
「チーズだってね」
「けれどあるのよ」
これがというのです。
「日本にもね」
「その蘇や酪や醍醐」
「そうしたものがあるんだね」
「この村でもあるかしら」
「ありますよ」
案内役の若い男の山の妖精が答えました。
「どれも」
「あら、そうなの」
「よかったら如何でしょうか」
「お昼食べたばかりでお腹一杯だから」
だからだとです、ドロシーは案内役の妖精に答えました。
「おやつにいいかしら」
「はい」
案内役の妖精は笑顔で答えました。
「どうぞ」
「それではね」
「この村に中国系の人が来まして」
「造り方を教えてくれたの」
「その人が随分腕のいい料理人で」
そうであってというのです。
「それで、です」
「造り方を教えてくれたのね」
「蘇も酪も醍醐も」
その全てのというのです。
「そうしてくれました」
「そうなのね」
「それでその造り方ですが」
それはといいますと。
「実は私達も知っているものでした」
「ああ、乳製品だから」
「はい、それでお互いに笑ってしまいました」
「何かと思えばよね」
「あちらの人もチーズの造り方は詳しくなかったですが」
それでもというのです。
「いざです」
「聞いてみたら」
「それはです」
「蘇や酪や醍醐と」
「同じでしたし」
「貴方達もよね」
「チーズに」
それにというのです。
「バターやヨーグルトとです」
「同じだったわね」
「そうでしたので」
それでというのです。
「これは面白いとです」
「お互いに笑ったのね」
「いや、何かと思ったら」
それがというのです。
「本当にそうで」
「あれっ、そのお話を聞いたら」
トトは二人のお話を聞いてはっとなりました。
「蘇や酪や醍醐は」
「そうね」
おばさんも言いました。
「乳製品だっていうし」
「それならね」
トトはおばさんに応えました。
「同じであることもね」
「有り得るわね」
「そうだね」
「勿論細かい部分は違いますが」
それでもとです、案内役の妖精はおばさん達にもお話しました。
「基本はです」
「そうなのね」
「そんな食べものなんだね」
おばさんだけでなくおじさんも応えました。
「今お話している食べものは」
「アジアの乳製品も」
「一体どんなものか」
「おやつの時が楽しみね」
「ええ、その時はね」
ドロシーはお二人にここでもお話しました。
「蘇も酪も醍醐もね」
「食べるのね」
「そうするんだね」
「三つ共ね。そうしましょう」
こう言ってチーズの倉庫にです。
ワイン工場も観ました、そしてです。
おやつの時間に皆でそのアジアの乳製品を食べました、するとおばさんもおじさんもこれはというお顔になって言いました。
「あっ、これは確かに」
「チーズだよ」
まずは蘇を食べて言いました。
「紛れもなくね」
「味も食感も」
「酪はチーズでね」
「醍醐はヨーグルトかしら」
「僕達も食べて驚きました」
カルロスがお二人に言ってきました。
「チーズやバターだって」
「何かと思ったら」
ジョージも言います。
「そうしたものだったんで」
「昔の中国や日本でこうしたものも食べていたんだって」
ナターシャは実際に食べつつ言いました。
「意外でした」
「ですが食べてみますと」
その当事国の一国出身の恵梨香の言葉です。
「これがです」
「チーズとかなんですよね」
もう一方の当事国出身の神宝も言ってきました。
「外の世界に皆で学校で食べたことがあるんですが」
「大学の方で造りまして」
カルロスはそれでとお二人にお話しました。
「僕達にも試しにということで」
「試食ね」
「それで食べさせてもらったんだね」
「はい、そうしたらです」
カルロスはお二人にお話しました。
「これがです」
「チーズやバターで」
「ヨーグルトだったんだね」
「はい、それで」
そうしたものでというのです。
「僕達は知っていました」
「蘇も酪も醍醐も」
「どんな食べものかだね」
「そうでした」
「実は諸説あるの」
ドロシーは蘇を食べつつ言ってきました。
「蘇や酪や醍醐がどんな食べものか」
「あら、そうなの」
「今わし等が食べているものが本当かわからないんだ」
「ええ、酪か醍醐がコンデンスミルクみたいなものじゃないかとか」
そうしたというのです。
「醍醐がバターじゃないかとか」
「言われているの」
「そんな説もあるんだ」
「私達が食べているのはその説のうちの主流で」
そうしたものであってというのです。
「それでね」
「チーズやバターで」
「ヨーグルトなんだね」
「そうなの。あと牛乳から造るものが主流だけれど」
それでもというのです。
「私達が食べているのは山羊のものよ」
「牛乳じゃなくて」
「山羊のお乳から造ったのね」
「そうなの、牛乳から造ったものもあるけれど」
そうした蘇等があるというのです。
「こちらもどうかしら」
「そうね、どんなものか知りたいし」
「食べさせてくれるならね」
「頂きましょう」
「そうしようか」
お二人でお話してでした。
実際に牛乳から造った蘇等も食べました、するとでした。
「ミルクが違うとね」
「同じ食べものでも味が違うね」
「食べてみるとわかるわね」
「実際にね」
「そうでしょ。遊牧民の人達はね」
ドロシーはさらにお話しました、村の喫茶店の中で皆で食べながらそうしています。
「馬のお乳で造っているのよ」
「馬のお乳を飲んで」
「そうしているんだね」
「そうなの、お酒もね」
こちらもというのです。
「馬のお乳から造っているしね」
「そこも違うわね」
「わし等が今食べているものと」
「そうよ、それで」
ここで、でした。ドロシーは。
今自分達が飲んでいるカルピス、白くて甘いその飲みものを見てそのうえでおばさんとおじさんにお話しました。
「カルピスも元は馬乳酒なの」
「えっ、そうなの」
「カルピスはそうなのかい」
「そうなの、それでね」
そうなっていてというのです。
「こうした凄く甘い飲みものになっているのよ」
「それは驚きね」
「カルピスがそうなんて」
「カルピスは日本の飲みものですね」
カルロスが言ってきました。
「兎に角滅茶苦茶甘いですよね」
「こんなに甘いものあるかって」
「最初に飲んだ時に驚いたよ」
二人でカルロスに答えました。
「いや、本当にね」
「最初に飲んだ時はね」
「そのカルピスもなんです」
カルロスはそのカルピスを飲みつつお話します。
「馬乳酒からなんです」
「それは意外ね」
「全くだよ」
「そうですよね、ですがとても甘くて」
そうしてというのです。
「美味しいですね」
「村で好きな人がいるのよ」
おばさんが答えました。
「それで私達も時々ね」
「飲まれていますか」
「ええ」
そうだというのです。
「私達もね」
「カルピスもなかったわね」
ドロシーもカルピスを飲んで言います。
「カンザスには」
「うん、ずっとそんなものがあるって知らなかったよ」
トトも言ってきました。
「そもそもね」
「そうだったわね」
「けれどね」
それがというのです。
「実際に飲んでみると」
「これがね」
「甘くてね」
そうであってというのです。
「美味しいよね」
「カルロスの言う通りにね」
「それでオズの国に入って来て」
「よかったわね」
「全くだよ」
「私も好きで」
ドロシーはにこりとして言いました。
「こうしてね」
「飲む時があるね」
「時々ね」
「そうだよね」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「楽しんでいるわね」
「そうしているね」104
「乳製品尽くしで」
「しかも日本に関係のあるね」
「面白いわね」
「確かに乳製品と縁が薄い国だけれど」
その食文化はというのです。
「これがね」
「おつなものよね」
「本当にね」
「ただね」
おばさんがまた言ってきました。
「食べていたのよね、日本でも」
「昔からね」
「それが伝わっているのね」
「今のオズの国にね」
「日本それに中国では何時から食べていたのかしら」
「日本では七世紀にはね」
この頃にはとです、ドロシーは答えました。
「食べていて中国ではその前からね」
「食べていたの」
「そうだったのよ」
これがというのです。
「縁は薄くてもその歴史は長いの」
「そうだったのね」
「とても高価な食べもので」
そうであってというのです。
「皇室や貴族といった」
「そんな人達が食べていたの」
「かなりのご馳走だったんだな」
「そうなの、牛乳を念入りに煮て」
そうしてというのです。
「残ったものがね」
「ああ、水分をなくすのね」
「沸騰させていって」
「そうして作っていたの」
おばさんとおじさんにお話しました。
「そうしたもので牛乳自体中国や日本にはなかったし」
「殆どの人が飲まないでいたのね」
「わし等と違ってな」
「そうした食文化でね」
そうであってというのです。
「牛乳自体も少なくて」
「それから作るものも少ない」
「そうなるな」
「それでね」
そのうえでというのです。
「皇室や貴族といった」
「偉い人達だけが食べていたのね」
「中国や日本だと」
「そうしたものだったのよ」
「成程ね」
「蘇や酪や醍醐はそうした食べものなんだな」
「今はこうして普通に食べられてもね」
実際にそうした感じで食べながらお話するドロシーでした。
「本当にね」
「昔は違ったのね」
「とても稀少で贅沢な食べものだったんだな」
「そうなのよ」
ドロシーはお二人に蘇を笑顔で食べつつ応えました、蘇はチーズに歴史があるそうした深い味がしました。