『新オズの臆病ライオン』




               第三幕  動物園に行って

 皆は朝になると朝ご飯を食べてです。
 それからすぐに動物園に行きました、そして動物園に入ると多くの種類の生きもの達がいて皆で彼等と一緒に遊ぶことにしました。
「うわあ、沢山の生きものがいるね」
「そうだね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーはそれぞれの生きものが暮らしている場所を模した草原や岩場がある動物園の中で声をあげました、オズの国では生きものも人も仲良く暮らしているので檻や堀は一切ありません。
「それぞれの場所にね」
「だから僕達も普通に行き来出来るね」
「僕達の仲間もいてね」
「ライオンや虎もね」
「そして他の生きもの達もいて」
「凄く賑やかだね」
 こうお話してです。
 二匹も皆も楽しく遊びはじめました、その中で。
 ボタンは眠そうにです、こんなことを言いました。
「お天気もいいしあったかくてね」
「それでだね」
「ちょっとお昼寝したくなったよ」
「いや、まだ朝だよ」
 魔法使いはそのボタンに笑って言いました。
「今はね」
「そうだけれど」
「眠いんだ」
「そうなってきたよ」
 欠伸をしつつ言うのでした。
「もうね」
「じゃあここで寝るかな」
「うん、そうしていい?」
 こう魔法使いに言いました。
「今からね」
「私はいいと思うよ」 
 魔法使いは笑顔で答えました。
「そうしてもね」
「そうなんだ」
「うん、ただ君はね」
「寝るとね」
「時々何処かに行くね」
「オズの国かオズの国と関係のある場所にね」
「何処かに行くからね」
「今回も朝起きたら」 
 その時にというのです。
「私のお部屋にいたね」
「お部屋のソファーの上で寝ていたね」
「そうだったね」
「それまでグリンダさんのお城にいたけれど」
 それがというのです。
「起きたらね」
「私のお部屋にそうしていてね」
「それで今回一緒にいるね」
「そうだね」
「そう思うと」
「今寝て」
「別の場所に行ってるかも知れないね」
 こう言うのでした。
「本当に」
「そうだね、けれど大丈夫だよ」
「大丈夫かな」
「だって君が今何処にいるかはね」
 このことはというのです。
「GPSがあるから」
「それでなんだ」
「君の頭の帽子に付いているからね」
 水兵さんのそれにというのです。
「だからね」
「わかるんだね」
「そうだよ、若し君がいなくなっても」
 そうなってもというのです。
「すぐにね」
「そこに来てくれるんだ」
「そしてこの街に戻るよ」
「そうしてくれるんだね」
「何かあってもね」
 ドロシーも笑顔で言ってきました。
「私がオズマから沢山魔法の道具を借りてるから」
「それを使ってなんだ」
「すぐに貴方が今いる場所にも行けるし」
 そうしたことも出来てというのです。
「皆もいるから」
「皆の力でなんだ」
「何とか出来るわ」
 こうも言うのでした。
「だから安心してね」
「それじゃあね」
「まあ何もないとね」
 かかしが言ってきました。
「それに越したことはないよ」
「そうだね」
 樵はかかしの言葉に頷きました。
「それが一番だね」
「けれどボタンが寝ている間にいなくなることはオズの国じゃ普通のことだしね」
 トトの言葉は何でもないといったものでした。
「別にね」
「いいね」
「そうなってもね」
「うん、そうなる可能性があるって思ったら」
 トトはかかしと樵にも応えました。
「それならね」
「何でもないね」
「別にね」
「そうだよね」
 こうしたことをお話してでした。
 ボタンは動物園の兎のコーナーのところにある椅子に座ったまま眠りはじめました、周りの白や茶色や黒の兎達と一緒に。
 皆はその間色々な生きものを見て一緒に遊んで楽しみます、その中にゴリラもいますが。
 ゴリラは皆にとても優しく接してくれます、臆病ライオンはそんなゴリラの傍にいてこんなことを言いました。
「ゴリラって優しいよね」
「そうだよね」
 神宝が頷きました。
「とてもね」
「お顔は怖いけれど」
 ジョージはそれでもと言いました。
「実は凄く優しいんだよね」
「穏やかでね」
 カルロスもゴリラを見て言います。
「もの静かなんだよね」
「食べるものはセロリや果物で」
 恵梨香はゴリラの食べもののお話をしました。
「完全なベジタリアンで」
「乱暴なことも一切しないで」
 ナターシャも言いました。
「素敵な生きものよね」
「誰かに何かを強制してね」
 それでと言う臆病ライオンでした。
「そうしないと暴れるとかね」
「そんなこともしないよね」
「ゴリラってね」
「自分がそうだと思っても」
「それを無理強いもしない」
「そうよね」
「しかもね。見てよ」
 ゴリラが動物園の猫達とも仲良くしているのを見てです、腹ペコタイガーは神宝達にお話しました。
「小さな猫達ともね」
「仲良くしてるね」
「それもとても優しく」
「お友達になっているわ」
「小さな猫達とも」
「とても大きな身体で」
「ゴリラの力は凄いんだ」
 臆病ライオンはこのこともお話しました。
「僕や腹ペコタイガーにも負けない位にね」
「けれど暴力は振るわないんだよ」
「絶対にね」
 かかしと樵も五人に言います。
「意地悪もしないし」
「弱い者いじめだってしないよ」
「その力もね」
「自分のお仕事や他の誰かを助ける為に使うんだ」
「そんな風になりたいですね」 
 神宝はここまで聞いて思いました。
「本当に」
「全くですね」
「そうなりたいですね」
「ゴリラみたいに」
「優しくて穏やかで」
 恵梨香達四人も同じでした。
「そんな風になりたいです」
「小さな相手も絶対に傷付けない」
「紳士でもありますし」
「そんな風になってです」
「皆に優しくしたいです」
「何でも外の世界ではゴリラは誤解されているんだよね」
 臆病ライオンは残念そうに言いました。
「怖いって」
「そう思ってる人多いよ」
 神宝はその通りだと答えました。
「お顔がね」
「怖そうだから」
「だからね」
 それでというのです。
「よくね」
「怖いって思われているね」
「そうした映画もあるしね」
「キングコングだね」
「うん、あの映画じゃ巨大なゴリラが暴れるんだ」
 そうするというのです。
「大きなビルにも登って」
「そうだね」
「けれど実際のゴリラは」
「そんなこと絶対にしないよ」
「そうだね」
「間違ってもね」
 それこそというのです。
「そんなことはね」
「しないね」
「こんな優しい生きものいないよ」
 臆病ライオンはとても優しい目でゴリラを見つつお話しました。
「僕も凄くね」
「優しくしてもらっているんだね」
「そうだよ」
「いや、そう言ってもらって嬉しいよ」
 そのゴリラも言ってきました。
「僕もね」
「君もなんだ」
「誰だって優しいって言ってもらったらね」
「嬉しいんだね」
「だから僕もだよ」
「そうなんだね」
「オズの国の皆はそう言ってくれるからね」
 ゴリラをというのです。
「凄くね」
「嬉しいんだ」
「いつもね」
 神宝ににこりと笑ってお話します。
「そうだよ」
「それじゃあ君達は幸せかな」
「うん、凄くね」
「それは何よりだね」
「そして美味しいものも」
 これもというのです。
「孫文に楽しめるからね」
「尚更幸せだね」
「そうなんだ」
 こう言うのでした。
「そちらのことでもね、ただね」
「ただ?」
「皆僕達がバナナ好きだと思ってるね」
 ゴリラは笑って言いました。
「そうだね」
「うん、ゴリラっていったらね」
「バナナよね」
「バナナが大好き」
「そうよね」
「そんなイメージあるよ」
「けれどセロリが一番好きかな」
 このお野菜がというのです。
「僕達は完全な菜食主義者だけれどね」
「そうそう、君は外の世界だとアフリカの生きものでね」
 魔法使いが言ってきました。
「アフリカじゃバナナはないからね」
「オズの国じゃどっちも普通にあるけれどね」
「それでもだね」
「外の世界のこともあって」
 ゴリラは魔法使いに応えました。
「それでなんだ」
「君達はね」
「バナナってイメージが強いけれど」
 それでもというのです。
「実はね」
「セロリの方が好きだね」
「セロリはね」
 このお野菜はといいますと。
「外の世界だとアフリカにもあって」
「野生のものがね」
「僕達もよく食べているから」
 だからだというのです。
「バナナよりもね」
「馴染みがあるね」
「そうなんだよね」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「そうだね、ただ」
「ただ?」
「バナナも嫌いじゃないね」
「大好きだよ」
 ゴリラは魔法使いに笑顔で答えました。
「本当にね」
「そうだよね」
「林檎も葡萄もね」
「果物は全体的に好きだね」
「そうなんだ」
「そうだね」
「勿論お野菜も好きだしね」
 こちらもというのです。
「セロリ以外の」
「それでだね」
「毎日そうしたものを食べて」
 そうしてというのです。
「幸せに過ごしているよ」
「そちらのことでもだね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「いや、僕達がお肉やお魚を食べるとか」
 そうしたことはというのです。
「誤解している人もね」
「いるかもね」
「狂暴だって思って」 
 それでというのです。
「そうね」
「思っている人もいるかもね」
「実際はそうしたものはね」
 お肉やお魚はというのです。
「全くね」
「君達は食べないね」
「虫もだよ」
「食べないね」
「うん、食べるものはね」
「お野菜や果物だけだね」
「ヴィーガンって言葉があるけれど」
「君達は完全にそうだね」
「そうだよ、それで穏やかにね」
「誰かを傷付けることなんて絶対にしないで」
「暮らしているよ」
「若し皆が君達みたいになれたら」
 魔法使いは心から思いました。
「オズの国でもかつてのラゲドー王みたいな人がいたから」
「よくない人達がね」
「それで思うよ、私もね」
「オズの国の誰もが僕達みたいになったら」
「凄くね」
 その時はというのです。
「平和で穏やかで幸せな」
「そんな世界になるかな」
「そうなると思うよ」 
 こう言うのでした。
「凄くね」
「そう思ってくれるとね」
「嬉しいんだね」
「このこともね」
 ゴリラは笑顔のままでした、そしてです。
 皆でゴリラ以外の生きものとも遊んで楽しんで、です。
 ボタンのところに行くとでした。
「ああ、いないね」
「そうだね」
 かかしと樵は誰もいないベンチを見てお話しました。
「何処かに行ったね」
「そうなったみたいだね」
「じゃあGPSで居場所を確認しよう」
「そうしよう」
「あら、近いわね」
 ドロシーは自分のスマートフォンを出してボタンが今いる場所を確認してからそのうえで言いました。
「ギリキンの海の小島よ」
「そこにいるんだね」
「ボタンは」
「ええ、そうよ」
 かかしと樵に答えました。
「そこにね」
「じゃあそこまでだね」
「ボタンを迎えに行くんだね」
「そうしましょう」
「あの、近いって言ってもね」
 臆病ライオンが言ってきました。
「ギリキンの海に出てだよね」
「そう、その北の小島よ」
「この街からじゃ結構遠いよ」
「歩いたり船で行けばね」
 ドロシーは臆病ライオンににこりと笑って答えました。
「そうしたらね」
「あっ、ここはだね」
「オズマから借りたね」
「魔法の道具を使うんだね」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「行けばね」
「すぐだね」
「そうよ、動物園の人に少しお外に出るって言って」
 そうしてというのです。
「今からね」
「魔法の道具を使ってだね」
「そのうえでね」
 それでというのです。
「小島に行きましょう」
「そしてボタンを迎えて」
「そのうえでね」
 そうしてというのです。
「戻りましょう」
「そうするんだね」
「今回はね」
 ドロシーはここで、でした。
 自分が持っている鞄からあるものを出しました、それは何かといいますと。
 緑のフラフープでした、それを出して言うのでした。
「これを潜ったら」
「もう小島になんだ」
「行けるわ」
 そうだというのです。
「自分が生きたい場所にね」
「便利な道具だね」
「化学と魔法が一緒になったら」
 その時はというのです。
「もうね」
「こんな凄いものも出来るんだ」
「そうなのよ」
 臆病ライオンににこりと笑って答えます。
「これがね」
「これを発明したのは私なんだ」
 魔法使いも言ってきました。
「実はね」
「魔法使いさんがなんだ」
「うん、一瞬で自分が行きたい場所に行ける」
「そうしたものを発明したくて」
「それでね」
「発明したんだね」
「そうなんだ」
 こうお話するのでした。
「そしてそれがね」
「成功して」
「今もね」
「ボタンを迎えにだね」
「行けるわ」
「じゃあ早速だね」
「道具を使ってボタンを迎えに行きましょう」
 臆病ライオンに笑顔でお話します。
「そうしましょう」
「わかったよ、それでどんな道具を使うのかな」  
 臆病ライオンは自分に言うドロシーに尋ねました。
「それで」
「そうね、前に翼のお話をしたし」
「それを使うんだ」
「ええ、魔法の翼を付けて」
 そうしてというのです。
「お空を飛んでね」
「そうしてだね」
「今ボタンがいる小島まで行って」 
「飛んでだね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「行きましょう」
「それではね」
「この距離ならすぐに行けるね」
 魔法使いは自分のスマートフォンでGPSボタンに付けたそれの場所を確認してからドロシーに言いました。
「飛んでいけば」
「すぐなのね」
「うん、それにね」
 魔王使いはさらにお話しました。
「ボタンだけだから」
「それでなの」
「そう、それでね」
 だからだというのです。
「ここは少しのメンバーだけでもね」
「飛んで行って」
「迎えに行ってもいいね」
「それじゃあね」 
 臆病ライオンは魔法使いの提案を聞いて言いました。
「僕とドロシーでね」
「二人でなのね」
「行こうよ」
 ボタンを迎えにというのです。
「そうしよう」
「それじゃあね」
「そしてね」
 それでというのです。
「今から翼をね」
「ええ、出すわね」
「それで一緒に付けてね」
「飛んでいくのね」
「そうしようね」
「わかったわ」
 ドロシーも頷いてでした。
 鞄から早速二つの白い鳥の翼を出しました、一つをまずは自分が着けてもう一つを臆病ライオンに付けました。するとです。
 皆は今の二人の姿を見て思わず息を飲んでしまいました。
「いや、ドロシーは天使の様に可愛くて」
「翼を着けると尚更ね」
 かかしと樵が言います。
「素晴らしいね」
「似合っているなんてものじゃないよ」
「臆病ライオン君は格好良くてね」
「獣の王者と呼ぶに相応しいね」
 腹ペコタイガーとトトは彼のことをお話します。
「そうだよね」
「全く以てね」
「二人共本当に素晴らしい姿だよ」
 魔法使いも言います。
「これは是非画像に撮らないとね」
「はい、絶対にですよ」
 神宝が応えました。
「こんなに奇麗で格好いいんですから」
「早速そうしましょう」 
 ジョージも言います。
「ここは」
「そうしていいですよね」 
 カルロスはドロシーに尋ねました。
「今から」
「出発前にお願いします」 
 恵梨香もドロシーにお願いします。
「今のドロシーさんと臆病ライオンさん撮りたいです」
「それでオズの国中に拡散しましょう」 
 ナターシャはこう言いました。
「大人気間違いなしよ」
「ええ、私も隠す気はないし」
 ドロシーも微笑んで応えました。
「それじゃあね」
「はい、そうしましょう」
「皆で画像を撮ってです」
「オズの国のインターネットに拡散しましょう」
「動画もいいですね」
「オズの国のSNSに投稿しましょう」
「オズの国にもツイッターやフェイスブックやインスタグラムみたいなものがあるわ」
 ドロシーが言ってきました。
「ユーチューブやニコニコ動画みたいなものもね」
「何でもあるからね」
 臆病ライオンも言います。
「それじゃあだね」
「ええ、皆に撮ってもらって」
「それからだね」
「ボタンを迎えに行きましょう」
「それ位の時間はあるしね」
 臆病ライオンは笑ってこうも言いました。
「ボタンは今頃ね」
「小島で気持ちよく寝てるわ」
「そうだね」
「だって動いていないから」
 GPSでボタンの動きを確認するとそうでした。
「それならね」
「間違いなく寝ているね」
「だからね」
「寝ている間にね」
「迎えに行きましょう」
「それじゃあね」
 臆病ライオンも頷いてでした。
 まずは皆に撮ってもらってです、それから出発となりましたが。
 臆病ライオンはここでドロシーにこう提案しました。
「僕の背中に乗ったらどうかな」
「そうしてボタンのところに行くのね」
「別々に飛ぶよりもね」 
 それよりもというのです。
「一緒になったら翼は四つだね」
「一人ずつだと二つずつだけれどね」
「二つより四つの方がね」
「速く飛べるわね」
「それに別々だとお互いの飛ぶ速さに合わせたりね」
「そうもなるし」
「だからね」  
 そうしたことが考えられるからだというのです。
「ここはね」
「一緒にだね」
「僕の背中に乗って」 
 そうしてというのです。
「行こうね」
「そうね、それがいいわね」
「それじゃあね」
 ドロシーが頷いたのを見て笑顔になってでした。
 臆病ライオンはドロシーを自分の背中に乗せました、そうして一緒に飛び立つと。
 ドロシー達は風に様に速く舞い上がり空を飛びはじめました、皆が手を振って見送るのは瞬く間に見えなくなって。
 下はもう海になりました、ドロシーは羽ばたく中で臆病ライオンに言いました。
「この翼只でさえ速いのに」
「こうして一緒になるとだね」
「翼が倍になったから」
 だからだというのです。
「尚更ね」
「速くなったね」
「もうね」 
 それこそというのです。
「風の様にね」
「飛んで行くね」
「これは凄いわ」
「全くだね、これならね」
 臆病ライオンはドロシーに言いました。
「すぐにだよ」
「ボタンが今いる小島までね」
「行けるよ」
「そうね」
「実際もう見えてきたし」
 臆病ライオンはその目に小島を見付けました。
「だったらね」
「あの小島までね」
「今から行こうね」
「それじゃあね」
 ドロシーも頷きます、そうしてです。
 小島がどんどん近付いて来る様に見える中一緒に飛んで行って小島に着きました、するとなのでした。
 ボタンは二人が降り立った海岸のところで仰向けですやすやと眠っていました。ドロシーはこの彼を見て言いました。
「いつも通りね」
「気持ちよさそうに寝てるね」
 臆病ライオンも彼の寝顔を見て言います。
「とても」
「そうね」
「じゃあ今からね」
「ボタンを乗せてね」 
「僕の背中にね」
「そうしてね」  
 そのうえでというのです。
「彼にも翼を着けてあげて」
「今度は六枚の翼で飛んで」
「皆のところに帰りましょう」
「そうしようね」
「ボタン起きて」
 ドロシーは寝ている彼に声をかけました。
「お話があるの」
「あれっ、お話って?」
 ドロシーの声を聞いてです。
 ボタンは目を開きました、そして寝ぼけ眼を擦りながら言いました。
「どうしたのかな」
「貴方寝ている場所に他のところに来たのよ」
「動物園から?」
「そうなのよ」
「そういえばここ海岸だね」 
 ボタンはまだ寝たまま周りを見回して言いました。
「そうだね」
「ええ、ギリキンの北の海の小島よ」
「そんなところに来たんだ」
「そうなのよ」
「ここに来たのははじめてかな」
 ボタンは上半身を起こして周りを見回して言いました。
「そうかな」
「一回位来たんじゃないかな」
 臆病ライオンは笑って言いました。
「若しかしたら」
「わかんなーーい」
 これがボタンの返事でした。
「だって僕いつもこうだから」
「寝ている間にだね」
「何処かに行ったりするから」
 だからだというのです。
「そうだからね」
「いつもだからだね」
「一つ一つ来た場所はわからないね」
「そうなのかな」
「おそらくね、けれど見付けたし」
「ええ、それじゃあね」 
 ドロシーが応えました。
「今から一緒にね」
「帰ろうね」
「そうしましょう」
「そういえばドロシーさんも臆病ライオンも翼着けてるね」
 ボタンはここでこのことを言いました。
「そうだね」
「ええ、そうだけれど」
「それを使って飛んで来たのかな」
「そうよ」 
 その通りだとです、ドロシーは答えました。
「貴方を迎えにね」
「有り難う、そこまでしてくれて」
「それで君もだよ」
 臆病ライオンも言ってきました。
「今からね」
「翼着けていいんだ」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「ドロシーと一緒に僕の背中に乗って」
「飛んで帰るんだね」
「そうしよう」 
 こう言うのでした。
「今からね」
「うん、僕もお空を飛べるなら」
 ボタンは笑顔で応えました。
「一緒にね」
「戻ろうね」
「動物園までね」
 笑顔でお話してでした。
 ボタンも翼を着けます、白い水兵さんの服で背中から一対の翼を生やしたその彼の姿を見てでした。
 ドロシーも臆病ライオンもです、こう言いました。
「可愛いわね」
「うん、小さな天使みたいだね」
「男の子のね」
「ドロシーは女の子の天使でね」
 今の彼女はというのです。
「それでね」
「ボタンはね」
「男の子の天使だよ」
「この子はそうね」
「うん、凄くね」 
 臆病ライオンは笑顔でこうも言いました。
「可愛いよ」
「この子の画像も人気が出そうね」
「絶対に出るよ」
「じゃあ動物園に戻ったら」
 ドロシーはそれからのことをお話しました。
「是非ね」
「皆に見てもらって」
「そして撮ってとらいましょう」
「そうしようね」
「あれっ、何か僕モデルさんみたいになってる?」
 ボタンはドロシーと臆病ライオンのお話を聞いて思いました。
「ひょっとしたら」
「ええ、そうね」
「そう言えばそうだね」
 ドロシー達もそれはと答えます。
「小さなモデルさんだね」
「男の子のね」
「そうなんだ。そう言ってくれると嬉しいよ」
 ボタンは実際ににこりと笑って応えました。
「僕もね、それじゃあね」
「今からね」
「皆のところに戻ろうね」
 こうお話してでした。
 ボタンはドロシーと一緒に臆病ライオンの背中に乗って皆で飛び立ちました、そうして早速動物園に向かって飛びました。
 すると小島に来た時よりも素早く飛ぶことが出来ました、動物園にもすぐに戻ることが出来ました。
 皆戻って来た彼等を見て驚きました。
「速いね」
「もう戻って来たなんて」
 かかしも樵も言います。
「こんなに速いなんて」
「流石魔法の翼だね」
「全くだね、然程時間は経っていないよ」 
 魔法使いも言いました。
「まだお昼ごはんの時間でもないよ」
「そんな時間なんだ」 
 臆病ライオンは三人のお話を聞いて自分も驚きました。
「これはまた速いね」
「皆で集まって一緒に羽ばたいたからね」
 ドロシーはそれだけ速かったのはどうしてかと考えました。
「それでなのね」
「二人と一匹でだね」
「それでなのよ」
「僕とドロシーでも速かったし」
「そこにボタンも加わって」 
 そうもなってというのです。
「それでね」
「尚更なんだね」
「そうなのよ」
「そういうことだね」
「じゃあお昼ご飯までまだ少し時間があるし」
 トトが言ってきました。
「皆でね」
「他にも見ていこう」
「そうしようね」 
 トトは臆病ライオンにも応えました。
「それでお昼を食べてからも」
「皆でね」
「動物園の中をね」
「観て回ろうね」
「そうしようね」 
「ええ、今日はその予定だったし」
 ドロシーも言ってきました。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「ただその前にね」
 臆病ライオンがここで言うことはといいますと。
「ボタンの画像もね」
「あっ、撮らないとね」
「折角だから」 
 ボタンも翼を着けたからだというのです。
「ここはね」
「皆でね」
「画像や動画を撮ろう」
「それじゃあね」
「こうしたこともだよね」
「ええ、皆でね」
 是非にとです、ドロシーは答えました。
「撮りましょう」
「今からね」 
 魔法使いが笑顔で応えてでした。
 皆で翼を着けたボタンも撮りました、それが終わってから翼を撮りましたがここでドロシーは皆に言いました。
「今回こんなに速かったのはね」
「どうしてかな」
「臆病ライオンが言ってくれたからよ」
 魔法使いに笑顔でお話します。
「背中に乗ってね」
「それでなんだ」
「一緒に羽ばたけば速いって言ってくれたから」
 だからだというのです。
「それで実際にそうしたからね」
「速かったんだね」
「そうなのよ」
「じゃあ臆病ライオンのお陰だね」
「そうなのよ」
 こうお話するのでした。
「本当に臆病ライオンのお陰よ」
「僕のお陰って」 
 臆病ライオンはそう言われて気恥ずかしそうに言いました。
「照れ臭いよ」
「けれどその通りよ」
「僕もお陰なんだ」
「ええ、今回こんなに速かったのはね」
「お手柄ってことかな」
「その通りよ」
 まさにというのです。
「今回のことはね」
「そうなんだね」
「だからね」 
 それでというのです。
「あらためて頼りになるってね」
「そこまで思ってくれたんだ」
「貴方は勇気にね」
 それに加えてというのです。
「知恵もよ」
「備えているんだ」
「そうよ、そうした立派なね」
「ライオンなんだね」
「だからこれからもね」
「その知恵と勇気を使ってだね」
「そのうえでね」
 是非にという言葉でした。
「皆の為にね」
「力を使うことだね」
「ええ、そうしてね」
「そうだね、勇気や知恵は力であって」
「力は何の為にあるか」
「人の為に使う為だよ」
「助けたりする為にね」
 ドロシーはにこりと笑って答えました。
「そうする為のよ」
「力だから」
「これからもね」
「そうしていくよ、しかし僕に知恵があるなんて」
 臆病ライオンは自分でこのことに驚きつつ言いました、
「思いもしなかったよ」
「いや、ライオンは元々頭がいいよ」
 オズの国きっての知恵者であるかかしが言ってきました。
「君もライオンだしね」
「しかも君はあの時ボタンを迎えに行こうって自分で動いたね」
 樵も言ってきました。
「その勇気を出したから尚更だよ」
「そう、勇気を出せば知恵も出る」
 魔法使いも言います。
「そうしたものだからね」
「実際何かしようって前向きになったら知恵出るね」
「そうだよね」 
 トトは腹ペコタイガーの言葉に頷きました。
「言われてみれば」
「そうなるよね」
「つまり知恵は勇気によって導き出されてるってこと?」
 ボタンは皆のお話を聞いて思いました。
「要するに」
「ええ、そうね」
 ドロシーはボタンにも応えました。
「そうなるわね」
「やっぱりそうなるんだ」
「前向きになれば」
 その時はというのです。
「何かといいものが出るのよ」
「知恵だってそうなんだ」
「やろうって思えばどんどん頭と身体が動いて」 
 そうなってというのです。
「神様もそんな人に何かと授けてくれるから」
「知恵が出るんだ」
「そして他のものもね」
「そうなんだね」
「君もそうだよ」
「誰かを助けようというのが勇気ならね」
 それならというのです。
「君はその勇気を出した」
「それで知恵も出たんだ」
「だからボタンをすぐに助けてここに戻せた」
「そうだと思うよ」
「そうなんだね、それならね」
 臆病ライオンは二人の言葉を聞いて言いました。
「これからもね、怖いと思っても」
「頑張ってね」
「勇気を出していこうね」
「君は自分をいつも臆病だと思っていても」
「実は違うんだ」 
 かかしと樵はこのことをよく知っています、何故ならドロシーと会ってからずっと彼とお友達だからです。
「君はオズの国一の勇者だよ」
「誰かの為に動ける」
「そして助けられてね」
「弱い相手を慈しむ」
「そうした心を持っているからね」
「君程の勇気の持ち主はいないよ」
「そう言ってくれて嬉しいよ、それならね」
 二人の言葉を聞いて言うのでした。
「これからも怖くても」
「頑張るね」
「そうしていくね」
「そうしていく様に努力するよ」
 こう二人に答えます、そして動物園まで連れて帰ったボタンを背中に乗せて楽しく動物園の中を巡るのでした。








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