『オズのカリフ王』
第十幕 天空城を巡り
皆は天使の人達の天空のお城、本城と言っていいそのお城の周りのお城も案内してもらうことになりました。
それで移動に船に乗せてもらうのですが。
「おお、帆船か」
「これはいいわね」
キャプテンビルとトロットは浮島の港にあるその船を見て言いました。
「お空を飛んで進むのね」
「そうした船か」
「飛行船でも飛べるけれど」
「こうした船もあるのじゃな」
「私達は翼で飛べるので問題ないですが」
案内役の天使さん、武装したその人が笑顔で言ってきました。
「お客様の多くは飛べないので」
「だからなのね」
「はい、そうした方々の為にです」
「こうした船もなのね」
「私達は持っています」
「そうなのね」
「この船に乗ってです」
そうしてというのです。
「浮島と浮島の間を行き来します」
「そうするのね」
「はい、そして」
天使さんはさらにお話しました。
「こちらの船旅も行き来するだけの間ですが」
「楽しんでいいのね」
「そうされて下さい」
「それではね」
トロットは天使さんににこりと笑ってでした。
皆に船に乗りましょうと声をかけてでした、皆もこの娘と一緒に乗り込みました。そうしてなのでした。
船はすぐに出発しました、すると。
「本当に飛んでるね」
「そうだね」
「お空の船旅がはじまったわ」
「飛行船で行き来するのもいいけれど」
「帆船もいいね」
「そうね、お空が自然に見られてね」
つぎはぎ娘はジョージ達五人に応えて言いました。
「物凄くね」
「いいよね」
「いや、青空が奇麗だよ」
「白い雲もね」
「鳥やお魚が周りに沢山いて」
「天使さん達もいてね」
「とてもいい景色よ、浮島に行くのもいいけれど」
それでもと言うつぎはぎ娘でした。
「船旅もいいわね」
「楽しんで頂き何よりです」
そう聞いてです、天使さんが言ってきました。
「我々も。ただ」
「ただ?どうしたの?」
「もうすぐ目的地の次の浮島に着きます」
「あら、もうなの」
「浮島と浮島の距離はこの船にして三十分もないので」
「そうなの」
「距離的には離れていますが」
それでもというのです。
「船の速度が速いので」
「だからなのね」
「三十分もかからず」
それでというのです。
「到着します」
「そうなのね」
「はい、ですから」
「あと少しでなのね」
「到着します」
「わかったわ、それじゃあね」
「はい、今度はお城をご覧になって下さい」
笑顔でのお言葉でした。
皆は次の浮島に着くとでした、皆はそこにあるお城に入りました。そのお城も白い石造りのもので神聖で壮麗な雰囲気に満ちていました。
そして大勢の天使の人達がいてです、どの人達も金色に輝く鎧兜で武装して剣や盾を持っていて警備やお仕事それに鍛錬に精を出しています。
それを見てです、ビリーナは言いました。
「大きさといい中にいる人達の多さといいね」
「どうしたの?」
「いえ、ここが本城と言われてもね」
それでもとです、ビリーナはポリクロームに答えました。
「そうなのねってなるわね」
「そうね、このお城も立派ね」
「全部で七つあります」
天使さんはビリーナ達に言ってきました。
「こうしたお城が本城を含めて」
「そうなのね」
「本城が日曜日のお城で」
それでというのです。
「このお城は月曜日のお城でして」
「わかったわ、次は火曜日ね」
「その通りです」
天使さんはビリーナの言葉に笑顔で頷いてくれました。
「そして水曜日木曜日となって」
「金曜日土曜日ね」
「そうなっています」
「一週間ね」
「一週間の分です」
まさにというのです。
「我々のお城はお空にあります」
「そうなのね」
「その七つのお城をです」
「私達は見せてもらうのね」
「左様です」
「いいことね、最初のお城もよかったけれど」
ビリーナは嬉しそうに言いました。
「けれどね」
「このお城もいいですね」
「素敵よ」
こう天使さんに答えました。
「凄くね」
「それは何よりです、ではこのお城もじっくりと見て頂き」
そうしてというのです。
「そのうえで、です」
「楽しめばいいのね」
「はい、音楽もお食事も用意しますので」
「そうしたものも楽しんで」
「満喫して下さい」
この言葉通りにです。
皆はお城の中を見させてもらってです、さらにでした。
聖堂で天使の人達の合唱団による讃美歌も聴かせてもらいました、ノーム王はその讃美歌を聴いた後で言いました。
「ううむ、何という壮麗さか」
「そして神聖さか」
ドワーフ王も唸って言いました。
「全く以てな」
「素晴らしいのう」
「心が洗われる様であるな」
「全くじゃ」
ノーム王はドワーフ王の言葉に頷いました。
「これ以上はないまでにじゃ」
「聖なる気持ちになれたな」
「うむ、思えばな」
ノーム王はこうも言いました。
「わし等はかつてはな」
「こうした音楽もじゃな」
「聴いたことがなかった」
白い大聖堂の中にあるパイプオルガン、合唱団の人達が歌う音楽を奏でたそれを見つつドワーフ王にお話しました。
「そしてな」
「それがであるな」
「うむ、今思うとな」
反省する様に言いました。
「こうしたものに触れずな」
「悪いことばかり考えておったな」
「いい教えにもな」
「触れたことがなくじゃな」
「考えることもじゃ」
こちらもというのです。
「なかった」
「そうであったな」
「そう思うとな」
しみじみと反省する様にして言うのでした。
「それがな」
「よくなかったのう」
「わし等にとってな」
「悪いことばかり考えておるとな」
「悪人になるわ」
「オズの国が何故皆善人か」
それはどうしてかといいますと。
「これ以上はないまでにな」
「素晴らしい教えが溢れておってな」
「そしてじゃ」
そのうえでというのです。
「素晴らしいものにじゃ」
「満ちておってな」
「皆そうしたものにいつも触れておる」
「だからいい人しかおらん」
「そうじゃ、本来誰もが真っ白じゃ」
最初はというのです。
「だからいいものに触れていくとな」
「いい人にになる」
「そして悪いものに触れていくとな」
「悪い人になる」
「そうじゃ」
そうなるというのです。
「まさにな」
「そういうことであるな、かつてのわし等は」
ノーム王はまた反省しているお顔で言いました。
「自分達のことばかりでな」
「悪いことばかりじゃな」
「考えてな」
「そうしたものばかりにじゃな」
「触れてな」
そうであってというのです。
「全くじゃ」
「いいものにはな」
「触れてこなかった、それではじゃ」
「悪人ばかりになってな」
「悪い種族になった」
「そうだったな」
「しかしな」
それがというのです。
「今はな」
「オズの国に完全に入ってな」
「それでな」
そのうえでというのです。
「今ではな」
「よい種族になったな」
「そうなれた」
ドワーフ王に笑顔で応えました。
「いいものばかりに触れて考えているオズマ姫の治めるオズの国に入り」
「そうしてじゃな」
「わし等もそうなってな」
「いい種族になったのう」
「そうなった」
実際にというのです。
「そして今もな」
「讃美歌を聴かせてもらってか」
「そうしてじゃ」
それでというのです。
「最高にじゃ」
「幸せであるな」
「そんな気持ちじゃ」
満面の笑顔で言うのでした。
「今のわしはな」
「それは何よりであるな」
「わし等にとってもな」
「それは何よりじゃ、わし等もな」
ドワーフ王も言いました、それも明るい笑顔で。
「オズの国の住人にじゃ」
「正式になってじゃな」
「いいものばかりに触れてな」
「考える様になってか」
「今はな」
まさにというのです。
「幸せにじゃ」
「なったのう」
「お主達と同じくな」
「それは何よりじゃな」
「全くじゃ」
笑顔でお話します、そうしてです。
ドワーフ王は自分も讃美歌を歌いました、するとお供のドワーフの人達も一緒に歌いそこにでした。
ノーム王もお供のノームの人達と一緒に歌ってそこに皆も入ってです。
一曲合唱しました、その曲を歌い終えると。
そこにいた天使の人達が拍手しました、その中には案内役の天使さんもいてこの人は皆に笑顔で言いました。
「素敵な歌でしたよ」
「下手でなかったか」
「ですから上手か下手かはです」
「問題ではなかったな」
「歌われる、されることがです」
それ自体がというのです。
「まことにです」
「よかったか」
「はい、ですから」
それ故にというのです。
「私共もです」
「楽しんでくれたか」
「心から」
まさにというのです。
「そうさせて頂きました」
「それは何よりじゃ」
「いや、讃美歌って日本にいますと」
ジョージは今自分達がいるお国のことからお話しました。
「聴かせてもらう機会自体がないですから」
「聴かせてもらうだけで」
カルロスも言います。
「嬉しいですね」
「日本って教会やイコン自体が少ないです」
ナターシャも言います。
「それでオズの国にいましても」
「そういえばオズの国ってキリスト教の教会少ないですね」
神宝も言いました。
「他に色々な宗教があって」
「日本じゃ普通ですが」
日本人の恵梨香にしてはです。
「他の多くの国の人達は教会が少ないことは困るみたいですね」
「ううむ、外の世界はそうであるか」
ノーム王はジョージ達のお話を聞いて腕を組んで考えるお顔で言いました。
「キリスト教に触れることが多いのか」
「そうですね」
「日本はそうじゃないですが」
「多くの国がそうです」
「キリスト教の教会多いです」
「そうなのか、まあオズの国にもあってな」
そうしてとです、ノーム王は五人にお話しました。
「こうしてな」
「讃美歌も聴けて」
「聖堂にも入られますね」
「そうですね」
「それで神様に触れられる」
「今みたいに」
「そうじゃ、しかし外の世界より少ない様じゃな」
ノーム王はこのことを実感しました。
「やはり」
「そうですね」
「そのことは間違いないです」
「オズの国は沢山の宗教があって」
「大勢の神様がおられて」
「オズの国独自の神々もおられますが」
「キリスト教は少ないな、しかしな」
それでもと言うノーム王でした。
「ここではこうしてな」
「触れられますね」
「キリスト教に」
「そうした場所もありますね」
「オズの国でも」
「ちゃんと」
「キリスト教の教えもいいものじゃな」
ノーム王は実感しつつ言いました。
「やはりな」
「そうじゃな、讃美歌を聴いてもわかる」
実際にと言うドワーフ王でした。
「わしもな」
「全くじゃな」
「他の宗教の教えもよいが」
「キリスト教の教えもな」
「実によい」
「ではな」
「これからも触れていこう」
「そうしていこう」
こうお話しました、そしてです。
皆は讃美歌の後は宗教画の美術館を見せてもらいましたが数多くの絵画があってそこにキリストやダビデ王ソロモン王それに天使の人達の絵もありますが。
ふとです、ノーム王は言いました。
「おや、何か違うのう」
「どうしたのじゃ」
「いや、キリストの犠牲であるが」
ドワーフ王に十字架にかけられているその人の絵を観てお話しました。
「これはな」
「どうしたのじゃ」
「いや、キリストは犠牲になっておらんとな」
その様にというのです。
「わしは聞いたが」
「そうなのか」
「それにソロモン王も立ってな」
そうしてというのです。
「外の世界ではな」
「亡くなっておったか」
「そう聞いたが他の展開もな」
「違うか」
「これがな」
「そうなのか」
「それはイスラム教ですね」
天使さんが言ってきました。
「そちらでは主、キリストもです」
「生きておるか」
「はい、それで他の方々も」
「展開が違うか」
「そうなのです」
「そうなのか」
「イスラム教とキリスト教は出て来る人は実は同じですが」
それでもというのです。
「宗教が違いますと」
「行いも違うか」
「そうなのです」
「成程のう」
「こちらの世界では仲良しなので」
キリスト教とイスラム教はというのです。
「他の宗教とも」
「だからか」
「そうしたものだとです」
「わかっておればよいか」
「はい、そうして頂ければ」
「そういうことじゃな」
「それぞれの宗教で世界があるので」
それでというのです。
「ご理解下さい」
「それではな」
ノーム王も納得して頷きました。
「わしもそうさせてもらう」
「それでは」
「しかし聖書も読まんとな」
「読まれたことはないですか」
「一度あるが」
「では何度もです」
「読めばよいか」
「はい、本は一度読むよりもです」
天使さんは笑顔で言いました。
「何度もです」
「読むものか」
「そうするとです」
「よいか」
「よりよく理解出来るので」
その本の内容をというのです。
「ですから」
「何度もであるな」
「読まれることです」
「それがよいな」
「そして百度読めば」
本をというのです。
「もうかなりです」
「理解出来ておるか」
「そうなっています」
「読書百篇じゃな」
「その通りです」
まさにというのです。
「ですから」
「それでじゃな」
「どんどん読まれて下さい」
「聖書もじゃな」
「そして他の本もです」
「一度よりもな」
「二度三度とです」
そしてというのです。
「百回も読みますと」
「いいな」
「はい、ですから」
「聖書も読んで」
「他の本もです」
「ではそうするか」
「是非共」
天使さんは笑顔で応えました。
「そうして下さい」
「ではな、しかし聖書はファンタジーとしてもな」
それでもというのです。
「面白いのう」
「そういえばそうであるな」
ドワーフ王も同意しました。
「あの書は」
「こう言うと真面目なキリスト教徒の者は怒るであろうが」
「それでもな」
「読んでも面白い」
「多くのことを学べるだけでなくな」
「物語も登場する人達もな」
「実に面白い」
そうだというのです。
「これからどうなるか」
「気になるのう」
「ギリシア神話や北欧神話もそうであるがな」
「左様、神話も読んで面白い」
「面白いから余計に読みたくなる」
「そうであるな」
「その好奇心は大事ですね」
天使さんはノーム王とドワーフ王に微笑んで応えました。
「確かに聖書を物語として面白いと言うことは」
「真面目なキリスト教徒としてはな」
「憚れるものがありますが」
「それでもじゃな」
「はい、面白いことはです」
このこと自体はというのです。
「それで読んで頂くことになるので」
「よいか」
「そうでもあります」
「そうなのじゃな」
「はい、ではノーム王もですね」
「これからもな」
ノーム王は笑顔で応えました。
「聖書も読むぞ」
「そうされますね」
「楽しませてもらう」
笑顔での返事でした。
「わしもな」
「キリストがいなければ」
ドワーフ王もしみじみとして言いました。
「オズの国も多少違っていたのう」
「オズの国はキリスト教だけじゃないけれど」
トロットが応えました。
「やっぱり存在しているから」
「それではな」
「なかったらね」
「その分違っていたのう」
「間違いなくね」
「そうであるな」
「ええ、ただオズの国の宗教って本当に多くて」
トロットは首を傾げさせてこうも言いました。
「私も最初は驚いたわ」
「わし等がアメリカにいた頃はアメリカは殆どキリスト教だったからな」
キャプテンも言います。
「プロテスタントかカトリックか」
「プロテスタントの人が多くてね」
「そうした風だったが」
「オズの国は色々な宗教があってね」
「見たことも聞いたこともない宗教も沢山あった」
「オズの国だけの宗教もね」
「オズの国の神々の話を聞いて」
そしてそちらの信仰をです。
「そんなものがあるのかとな」
「本当に驚いたわね」
「全くじゃ」
「外の世界から来た人って最初そのことでも驚くのよね」
つぎはぎ娘も言ってきました。
「これが」
「そうなのよね、私達は別にね」
ポリクロームはつぎはぎ娘の言葉に頷きました。
「オズの国で生まれ育ってるから」
「何とも思わないけれどね」
「神様が大勢おられて」
「色々な宗教があることについてね」
「驚く人いたわね」
「最近は減ったけれどね」
「別に宗教が違っても」
天使さんは微笑んでお話しました。
「信仰があることが大事ですね」
「そうよね、けれどね」
ビリーナは天使さんに言いました。
「中にはそもそも神様を信じない人もね」
「オズの国にはいないですね」
「私が外の世界にいた頃は稀によ」
「そうした考えの人もいましたか」
「そうだったけれどね」
「オズの国ではいないですね」
天sさんは穏やかな声で否定しました。
「そうした人は」
「だからわからないのね」
「神々がおられるのは事実で」
オズの国というのです。
「それを否定するなぞは」
「事実おられてね」
「そしてお会い出来ますのに」
「否定するなんてね」
「それは無理です」
到底というのです。
「流石に」
「ええ、けれど外の世界ではね」
ビリーナはそちらの世界のことをさらにお話しました。
「神様にお会い出来ないから」
「その存在を否定する人もいますね」
「教会も神殿もお寺も神社もね」
神仏がいる場所にというのです。
「道観もそうね」
「道教の」
「一切行かない人もね」
「いますか」
「逆にそうした存在はいないと言っていて」
それでというのです。
「時々でも行く人もね」
「いますか」
「ええ、ただ私が思うに」
ビリーナは考えるお顔になってお話しました。
「神様を信じない人って勘違いしている人多いわね」
「あっ、そうだよね」
ジョージもそれはと頷きました。
「僕達もそう思うよ」
「何か自分の力だけで生きるって言っていて」
恵梨香も言います。
「何かと見当違いのことばかりしている人多いのよね」
「おかしな人を好きだったりするんだよね」
神宝も言ってきました。
「神様を信じない人って」
「それでおかしなことをするんだよね」
カルロスも首を傾げさせています。
「そうした人達って」
「神様を信じる人を馬鹿にして」
ナターシャも言います。
「自分はどうかなのよね」
「神様を信じる信じないも自由じゃ」
ノーム王は五人のお話を聞いて言いました。
「そうであろう」
「そうなんですよね」
「こうしたことは感じ取って」
「それから信じますよね」
「まあ大抵の人は感じますよね」
「神様はいるって」
「そうじゃ、人間では想像も出来ないな」
そうしたというのです。
「不思議な出来事や出会いがあるであろう」
「それで僕達もですしね」
「オズの国に来られて」
「今もここにいます」
「そう思うとです」
「神様の不思議な導きと用意ですね」
「そうじゃ、偶然と思う出会いで運命が変わる」
まさにというのです。
「出来事でもな」
「私とキャプテンもね」
トロットは自分達がオズの国に来た時のことを思い出しました、そのうえでしみじみとして言うのでした。
「まさかのまさかよ」
「オズの国に来たのう」
「不思議過ぎるわよね」
「来た時のことを考えたら」
「ベッツイとハンクもだし」
「ドロシーもだよ」
「あの娘なんてね」
トロットは特に彼女のことを言いました。
「もうオズの国の神々に導かれて」
「何度もオズの国に来たとしか思えないのう」
「そうなのよね」
「ドロシー王女はまさにじゃ」
ノーム王も言いました。
「オズの国の神々にな」
「導かれてね」
「一度帰ってもな」
「四回も来てね」
「四回も帰ってな」
「そして五度目でね」
「遂にオズの国に完全に入ってな」
そうなってというのです。
「オズの国の王女になって」
「今もオズの国にいるわ」
「そのことを見たらのう」
「神様はいるのよ」
間違いなくとです、トロットは断言しました。
「本当にね」
「左様、外の世界でも不思議なことは山程あると聞いておる」
ドワーフ王がまた言いました。
「それで神様を信じないのか」
「そうした人もいます」
「もう何があっても偶然で」
「助かってもです」
「信仰を持たない人もいます」
「外の世界には」
ジョージ達五人がドワーフ王にお話しました。
「助かっても助けられても」
「誰にも感謝しないで」
「ふんぞり返っていて」
「自分がこの世に偉いとか思って」
「何かを敬うこともしません」
「そうなっては終わりじゃ」
ドワーフ王は言い切りました。
「人は小さい、実にな」
「神の前では全てが小さなものですからね」
天使さんも言いました。
「オズの国においても」
「全くじゃな」
「オズマ姫もそう言われていますね」
「いつも言ってるわ、私一人では何も出来ないって」
トロットがオズマの言葉を述べました。
「皆がいてそしてね」
「神々がですね」
「おられてね」
そうしてというのです。
「いつも何かが出来ているって」
「そうです、私達もです」
「天使さん達もなのね」
「私達だけで何が出来るか」
穏やかな真面目なお顔で言いました。
「果たして」
「何も出来ないわよね」
「そうです、人はまことにです」
「小さいわね」
「それで自分が偉いなぞ」
「ないわよね」
「それは勘違いもです」
それこそという口調での言葉でした。
「実にです」
「はなただしいわ」
「まことに」
「かつての前王がそうであったのう」
ノーム王はしみじみとして思いました。
「妖魔達やウグもだったか」
「そうじゃな、神様を信じないでな」
「自分だけになってな」
ドワーフ王にも応えました。
「そしてな」
「日本で言う天狗か」
「いや、天狗というか悪い意味での唯我独尊か」
「自分しかなくなっておったか」
「もう信仰も何もなくてな」
そうした考えになっていてというのです。
「それでじゃ」
「神様は頭にない」
「信仰もな」
「それで自分だけでな」
それでというのです。
「勝手気ままになっておったら」
「それでは失敗するのう」
「事実何度も失敗してな」
「ラゲドー氏は王でなくなった」
「今は心が変わって楽しく暮らしておるが」
「かつてはな」
「全く以てな」
それこそというのです。
「なっておらんかった」
「そうであったな」
「そうじゃ」
こう言うのでした。
「あれでは失敗するのも当然じゃ」
「自分だけではな」
「本当にな」
「そうしたことがわかることもです」
まさにとです、天使さんがここでも言いました。
「信仰の素晴らしさですね」
「全く以てな」
「ではこのままですね」
「宗教画もな」
全てというのです。
「このままな」
「ご覧になられますね」
「うむ」
笑顔での返事でした。
「そうさせてもらう」
「それでは」
天使さんは笑顔で応えてでした。
そうして皆に絵画を紹介していきます、そこは本当にとても素敵な絵それに彫刻ばかりでした。そうしたものを観てです。
皆沢山のものを学びました、そして他の浮島のお城でもです。
沢山のものを見て沢山の天使さんにも会いました、その中には四枚の翼に金属の足そして人と鳥、牛、羊の四つの頭を持つ天使さんもいました。
その天使さんを見てです、ジョージは言いました。
「ケルビムですね」
「そうだよ」
その天使さんから明るい返事が来ました。
「わしはその立場の者だよ」
「そうですね」
「天使の中でも」
まさにというのです。
「特に独特な姿をしているね」
「選書を読んだ時から思ってました」
ジョージはこう答えました。
「はじめて読んだその時から」
「そうだよね」
「何か今思うと」
「どう思うのかな」
「結構ロボットみたいなところありますね」
「ははは、わしはロボットじゃないよ」
ケルビムさんは笑って否定しました。
「それは金属の足だからだね」
「そうでした」
「しかしわしはれっきとした天使でね」
「生身の身体ですね」
「そうだよ、ただ機械の身体でも」
「人間ですね」
「それを言ったらブリキの樵さんやチクタク氏は」
その彼等はといいますと。
「どうなるか」
「そうですね」
「どんな身体でも心があれば」
人間のというのです。
「その人はだよ」
「人間ですね」
「紛れもなくね」
「だからケルビムさんは天使であって」
「そして人間だよ」
「そうですね」
「このお城で神様と主にお仕えして生きている」
そうしていてというのです。
「オズの国の人だよ」
「そういうことですね」
「そうだよ、あと君達はちゃんと食べてるかな」
ケルビムさんはお空を飛びながらジョージに尋ねました。
「わし等天使は食べる必要がないけれどね」
「ああ、そういえば食べておらんな」
ノーム王も言われて気付きました。
「食堂や台所があってもな」
「わし等は食べないのです」
ケルビムさんはノーム王にも答えました。
「光を浴びればです」
「それが糧になるか」
「そうした身体なので」
「それでか」
「何も食べず飲まず」
その様にしてというのです。
「生きられます」
「そうであるか」
「ただお客様にはです」
「食べる必要がある者達にはか」
「おもてなしとして」
それでというのです。
「食べものや飲みものをです」
「出しますか」
「はい、お酒もあります」
こちらもというのです。
「赤ワインが」
「赤ワインか」
「赤ワインは主の血であるので」
それでというのです。
「いつもです」
「用意しておるか」
「わし等は飲みませんが」
「お客人達にじゃな」
「振舞わせてもらっています」
「成程のう」
「それでなのですが」
ケルビムさんはさらに言いました。
「実はわしはシェフでして」
「おお、そうなのか」
「もうお昼ですので」
「ではわし等にか」
「これからお料理を作らせて頂きます」
こう言うのでした。
「是非」
「そうしてくれるか」
「それで何をお召し上がりになりたいですか」
「そうじゃな」
注文になってです、ノーム王は少し考えました。そのうえでケルビムさんに答えました。
「スパゲティがよいか」
「そちらですか」
「ワインがあるならな」
それならというのです。
「ワインに合うな」
「そうしたものをですね」
「食べたくなったからな」
それでというのです。
「ここはな」
「そちらをですね」
「頂きたい」
「では他の方は」
ノーム王以外の人にも尋ねました、すると皆もスパゲティと聞いてそれでとなりました。そのソースのお話もです。
受けてです、そうして皆を食堂に案内してです。
すぐに皆にスパゲティを出しました、そのスパゲティはアルデンテに茹でられていてオリーブと大蒜がよく効いていてとても美味しいです。
ノーム王は自分が注文したボロネーゼを食べて言いました。
「うむ、実にな」
「美味いのう」
カルボナーラを食べているドワーフ王が応えました。
「スパゲティも」
「天使の人達は食わぬが」
「しかしその料理はな」
「実に美味い」
「全くじゃな」
「これはな」
食べながら言いました。
「実にな」
「よいのう」
「ではな」
「これも食べてな」
「楽しもう」
「そうしよう」
「ワインもじゃ」
ノーム王は赤ワインが並々と入った木のジョッキを手に言いました。
「飲むぞ」
「そうするな」
「スパゲティにチーズをたっぷりまぶしてな」
「そして食うとな」
「ワインがよく合う」
「その通りじゃ」
「いや、ビールもよいが」
「ワインもよい」
このお酒も飲んでのお言葉です。
「実にな」
「ではたらふく飲もう」
「どんどんな」
「いや、天空のお城もいいわね」
トロットはボンゴレを食べつつ言いました。
「歴訪させてもらってよかったわ」
「全くであるな、実は次の国でな」
ノーム王はトロットに赤ら顔でお話します。
「わし等の歴訪もな」
「終わりね」
「そしてその後はな」
「帰国ね」
「そうする」
こう答えました。
「そうさせてもらう」
「そうなのね」
「いよいよな」
笑顔でさらに言いました。
「わし等の歴訪もな」
「終わるのね」
「そう思うと寂しいが」
実際に寂しそうなお言葉でした。
「しかしな」
「またよ」
「うむ、そこからな」
「すぐに別の楽しいことがはじまって」
「そうしてであるな」
「寂しく思うことはね」
「ないな」
「寂しさはね」
この感情はといいますと。
「次のよ」
「楽しさがあるからのう」
「思うことはないのよ」
「そうであるな」
「それにまだ歴訪は続くから」
最後の国のそちらにというのです。
「是非ね」
「喜んで、であるな」
「行きましょう」
「それではな」
ノーム王も笑顔で頷きました。
「楽しく思うと、今も」
「そうしていきましょう」
「ではな」
ワインを飲みました、そしてです。
皆でお昼も楽しみました、それからも天空のお城で楽しい思いを訪問が終わる時までしたのでした。