『オズのカリフ王』




               第九幕  天空のお城で

 ポリクロームの案内を受けて精霊の連合王国を訪問してです。
 皆は最後まで最高のおもてなしを受けてそれから次の国に向かいましたが笑顔で手を振り合ってからでした。
 ノーム王達は飛行船に乗り込みました、そうして次の目的地に向かいましたが。 
 つぎはぎ娘は皆にです、こんなことを言いました。
「いや、お空もいいわね」
「どうしていいのかしら」
 そのつぎはぎ娘にビリーナが尋ねました。
「一体」
「だって色々な生きものや人がいてね」
 つぎはぎ娘は即座に答えました。
「国も場所もあるからよ」
「それでなのね」
「ほら、お空自体にもね」
 飛行船の外、三百六十度見えるそちらのお話もしました。
「賑やかにね」
「お魚や鳥が飛んでいるからっていうのね」
「色々なね」
「だからなのね」
「そうよ、それでね」
 そうした世界だからだというのです。
「あたしこれまでも何度もお空の旅もしてるけれど」
「その都度思うのね」
「ええ、いいものだってね」
 その様にというのです。
「思うわ」
「そうなのね」
「イルカもいるしね」 
 見ればすぐ傍にイルカの群れがあって泳いでいます。
「恐竜もいるしね」
「恐竜?いないでしょ」
「ほら、いるじゃない」
 つぎはぎ娘が指差した先にです。
 イルカそっくりの生きものが群れで泳いでいます、つぎはぎ娘はその生きものを指差しながらビリーナにお話しました。
「あそこにね」
「あれイルカでしょ」
 ビリーナはその生きものを見てこう言いました。
「形も大きさも」
「違うわよ、あれはイクチオサウルスよ」
 つぎはぎ娘は違うと返しました。
「恐竜よ」
「そうなの」
「そうよ、よく見ればわかるわよ」
「そういえば」
 ビリーナはそう言われてでした。
 その生きもの達をじっくり見ました、そのうえで頷きました。
「そうね」
「でしょ?違うでしょ」
「そっくりだけれどね」
「だからあたしも言ったのよ」
「恐竜もいるって」
「見えるってね」
「あんた間違えてなかったわね」
 ビリーナもこのことを認めました。
「間違えていたのは私よ」
「わかってくれたらいいわ」
「それじゃあね」
「いや、厳密に言うとつぎはぎ娘も間違っているよ」
 ところがここでキャプテンビルが言ってきました。
「イクチオサウルスは恐竜じゃないよ」
「そうなの?」
「うん、昔はそう呼ばれていたけれど」
「今は違うの」
「大型の水棲哺乳類だよ」
「そう呼ばれているの」
「今はね」
 こうお話するのでした。
「何でも骨格のことでね」
「それでなの」
「そう呼ばれているんだ」
「じゃあプレシオサウルスとかティロサウルスもなのね」
 トロットはキャプテンのお話を聞いて言いました。
「そうなのね」
「そうだよ、そうなっているよ」
 キャプテンはトロットにも答えました。
「これがね」
「そうなのね」
「わしもムシノスケ教授に教えてもらったんだ」
 オズの国きっての学者さんであるこの人にというのです。
「そうだってね」
「あの人になの」
「そうなんだ」
「成程ね」
「わしもそのお話には驚いたよ」
「そうよね、そうなるなんて」
 まさにとです、トロットは言いました。
「学問も変わるのね」
「教授はそうも言ってたよ」
「学問は時代によって変わるって」
「色々学ばれていって」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「わかっていくのね」
「新しいことが次々とね」
「そうなるのね」
「世の中に変わらないものはなくて」
 それでというのです。
「学問もだよ」
「変わるのね」
「それもどんどんね」
「変わらないものはないから」
「そうだよ」
「オズの国自体も変わって」
 トロットは考えるお顔で言いました。
「そしてなのね」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「教授が言うには大型の水棲爬虫類もね」
 こちらの生きものもというのです。
「恐竜と考えてもね」
「いいのね」
「大型の爬虫類という点では」
 そのことから考えればというのです。
「同じだってね」
「言ってるのね」
「そうだよ」
「そういうことね」
「恐竜もいるなんていいですよね」
 こう言ったのはジョージでした。
「オズの国は」
「そして普通に見られるなんて最高です」
 カルロスも言います。
「外の世界じゃいるかどうかわからないですから」
「いて欲しいし見たいですが」
 神宝は自分の望みを言葉に出しました。
「残念ですが」
「恐竜って皆に人気なんですよ」
 恵梨香はこう言いました。
「私達子供からは特に」
「大きくて恰好よくて」
 ナターシャも言います。
「素敵な生きものですよね」
「あたしも大好きよ」
 つぎはぎ娘は笑顔で言いました。
「見られたらそれだけで幸せよ」
「うむ、地下にもおるが」
 ノーム王も言います。
「やはり恰好よいのう」
「全くじゃ、わしはステゴサウルスが好きじゃ」
 ドワーフ王も続きました。
「大型の水棲爬虫類ならアーケロンか」
「あの大きな亀じゃな」
 ノーム王は笑顔で応えました。
「あれもな」
「恰好よいのう」
「そうじゃな、大きなウミガメでな」
「あの甲羅に乗りたいとじゃ」
「思っておるか」
「それで実際に乗ってみると」
 そうすればというのです。
「日本の童話からこちらに来た者がおるな」
「亀に乗る者か」
「ほれ、おるな」
「ああ、浦島太郎じゃな」
 ノーム王は日本の童話で亀に乗る人と聞いてこの人だと察しました。
「いつも釣りをしておるという」
「あの御仁の気持ちがな」
「わかったか」
「いや、面白いぞ」
 ドワーフ王は笑顔で言いました。
「あれはあれでな」
「そうなのじゃな」
「アーケロンの背中に乗って進むと」
 そうすればというのです。
「恐竜に乗って進むという経験を出来てな」
「面白いか」
「実にな、だからな」 
 それでというのです。
「また機会があればな」
「アーケロンの背中に乗るか」
「そうしたい」
「ではわしはモササウルスじゃ」
 ノーム王はこちらの生きものだと言いました。
「あの大型の水棲爬虫類が好きだからな」
「それでか」
「そうじゃ、あれに乗ってな」
「進みたいか」
「そうしたい」
 是非にというのです。
「一度な」
「それもよいのう、しかしな」
「しかし?」
「お主とは恐竜やそうした生きものとも話が合うな」
 ノーム王はこのことに気付いて笑顔になりました。
「他のことでもそうだが」
「そういえばそうじゃな」
 ドワーフ王もそれはと頷きます。
「言われてみれば」
「そうじゃな」
「ではこれからはな」
「恐竜の話もな」
「一緒にしようぞ」
「そうしようぞ」
「今度は鯨が見えたわね」
 つぎはぎ娘はまた言いました。
「それも随分と大きな鯨ね」
「うわ、大きいね」
「この飛行船より大きいよ」
「百メートル以上は普通にあるよ」
「あんな大きな鯨がお空にいるなんて」
「流石オズの国ね」
「そうよね、海にもいて」 
 そしてと言うつぎはぎ娘でした。
「お空にもいるのがね」
「まさにオズの国だね」
「そうだよね」
「お伽の国だけあって」
「お空にも鯨がいて」
「この飛行船よりも大きいのね」
「そうよ、あれだけ大きいなら」
 つぎはぎ娘はこうも言いました。
「背中に普通に乗れるわね」
「そうね、本当に」 
 トロットもそれはと頷きました。
「あれだけ大きいと」
「そうよね」
「ええ、けれど今はね」
「お外に出ないの」
「出ることは出られても」
「あたし達は自分達では飛べないからね」
「そうした道具も今はね」
 お空を飛べる様なものもというのです。
「持っていないから」
「それでなのね」
「そう、残念だけれど」
「鯨さんのところまではなのね」
「行けないわ」
「じゃあ仕方ないわね」
 つぎはぎ娘はトロットのお話を聞いて頷きました。
「それじゃあね」
「ええ、鯨さんは今は見るだけにして」
「他の生きものと同じで」
「そのうえでね」
「さらに進むのね」
「そうしましょう」
 こう言うのでした。
「次の歴訪先にね」
「わかったわ」
「さて、その次の国じゃが」 
 ノーム王が言ってきました。
「今度は天空のお城じゃ」
「ああ、あの天使さん達がいる」 
 ジョージはそのお城のお話を聞いて言いました。
「あのお城ですね」
「確かお前さん達は行ったことがあるな」
「はい、あそこも素敵な場所です」
 ジョージはノーム王に笑顔で答えました。
「本当に」
「そうであるな」
「あそこにですね」
「今から行ってな」
 そうしてというのです。
「また訪問させてもらう」
「そうですね」
「ううむ、写真等を見るとな」
 ノーム王は今度は唸って言いました。
「かなり幻想的な」
「はい、素敵な場所です」
「外の世界だとアニメみたいな」
「本当に素敵な場所です」
「お空に島が浮かんでいて」
「その島全体がお城になっていますから」
「石造りのな、わしは空に行けたなら」
 その時はとです、ノーム王は目をキラキラとさせて言いました。
「是非な」
「あのお城に行きたい」
「そう思われてたんですね」
「そうなんですね」
「それじゃあですね」
「今からあのお城に行けるので」
「楽しみじゃ」 
 心からのお言葉でした。
「まことにな」
「わしもじゃ」
 ドワーフ王も言いました。
「これまで行った場所もであるが」
「天空のお城もじゃな」
「行くのが楽しみじゃ」
「そうであるな、しかしお空を飛べる様になってな」
「何かとじゃな」
「行ける場所が増えてな」
 そうしてというのです。
「よいのう」
「まことにな」
「ではな」
「うむ、行こうぞ」
「天空のお城にもな」
 満面の笑顔でお話してでした。
 飛行船をそちらに向かわせます、そしてです。
 飛行船は天空のお城に着いて船に接舷して上陸しますと。
 石造りの西欧の建物や塔、お城のそれが浮島の全てに建っていてです。
 アーチもかけられ緑の草やお花で飾られていてとても奇麗です、そこに大勢の天使の人達が銀色の鎧兜と剣や槍で武装してです。
 皆を迎えてくれました、そして城主さんも言ってきました。
「ようこそ天空のお城へ」
「来させて頂いた」
 ノーム王は城主さんと握手をして言葉を返しました。
「これから宜しく頼み申す」
「こちらこそ」
「いや、来させてもらってよかった」
 心からです、ノーム王は言いました。
「このお城に」
「そう言って頂きますか」
「心から」 
 これがノーム王の返事でした。
「それでは」
「これからですね」
「是非お城の中を見せてもらう」
「わしもじゃ」
 ドワーフ王も言ってきました。
「このお城に来たならな」
「隅から隅までな」
 ノーム王も応えます。
「見学したいと思っておった」
「そうであるからな」
「是非な」
「見させてもらおう」
「是非な」
 こうお話してでした。
 ノーム王とドワーフ王は一緒にでした。
 皆と共に天空のお城の隅から隅まで見学させてもらいました、それが一段落してからでした。
 ティータイムとなってです、皆でお城の中庭花壇になっているそこでお茶とお菓子を楽しみますがここで、でした。
 ノーム王はレモンティーを飲みつつこんなことを言いました。
「夢ではないのう」
「紅茶美味しいでしょ」
 トロットはそのノーム王に笑顔で尋ねました。
「そうでしょ」
「実に美味い」
 これがノーム王の返事でした。
「そして美味いならじゃな」
「夢じゃないわ」
「そうであるな」
「そう、今こうしてね」
「わし等がこのお城におることはじゃな」
「現実よ」
 そうだというのです。
「間違いなくね」
「信じられん程綺麗でな」
 このお城がというのです。
「わしもな」
「夢かって思ったのね」
「そうなのじゃ、しかもな」
 ノーム王はさらにお話しました。
「ティーセットもな」
「美味しくてなのね」
「夢の様じゃ」
 上段はエクレア、中段はケーキ、下段はチョコレートクッキーとなっています。そちらも楽しんでの言葉です。
「こちらもな」
「そうなのね」
「まことに嬉しいぞ」
「天空のお城に来られて」
「しかもこうしたティーセットまで楽しめてな」
「奇麗なお花達に囲まれてな」 
 ドワーフ王はお花も見て笑顔になっています。
「菖蒲に菫、百合にとな」
「色々なお花が咲いていてね」
「そうしてな、しかしな」
「しかし?どうしたの?」
「いや、このお城の草は全て緑じゃな」
 このことを言うのでした。
「そうなるとな」
「ええ、ここはエメラルドの都のね」
「その領土になるか」
「そうなの」
 トロットはケーキを食べつつ答えました。
「こちらはね」
「やはりそうか」
「オズの国は色でね」
「その国がわかるのう」
「それでなのよ」
「このお城はか」
「エメラルドの都の領土だから」
 それでというのです。
「草の色もね」
「緑色じゃな」
「それで他のものもね」
「緑か」
「多くのものがそうなっているのよ」
「そういえば地下もな」
 こちらもとです、ドワーフ王は言いました。
「よく見ればな」
「それぞれの国の地下で、でしょ」
「色が違う」
「地下もお空も海の中のものも」
「そうなっておるか」
「ええ、それぞれの色でね」
「分かれておるか」 
 しみじみとしたお言葉でした。
「いや、そうしたこともな」
「今回の歴訪でわかったのね」
「うむ」
 その通りだというのです。
「この目でな」
「見るとよくわかる」
 ノーム王も言いました。
「実にな」
「本当に百聞は一見に如かずね」
 ビリーナも言ってきました。
「その通りね」
「うむ」
 まさにというのでした。
「聞いておったがな」
「見るとね」
「尚更な」
「よくわかるわね」
「うむ、しかしな」
「しかし?」
「空の領域はのう」 
 ノーム王は首を傾げさせて思うのでした。
「あるのじゃな」
「あるわよ、地下も海もでね」
「空もか」
「そう、地上をもとにして」
 ビリーナはノーム王にお話しました。
「それでよ」
「地下も海もそれぞれの国の領域があってか」
「そしてね」 
「空もじゃな」
「そういうことよ」
「よくわかった」 
 ノーム王はケーキを食べてから述べました、ノーム王は今食べているケーキはチョコレートとナッツのものです。
「今な」
「それは何よりよ」
「うむ、ではティータイムが終わったら」
「またね」
「城の中を案内してもらってじゃな」
「見ていくわよ」
「そうするとするか」
 ノーム王は今度はまたレモンティーを飲みました。
 それからです、またエクレアを食べますがドワーフ王にこんなことを言われました。
「お主は甘いものも好きであるな」
「そう言うお主こそな」
「ノームの者は皆な」 
 お供の人達もでした、見れば一緒にティータイムを楽しんでいます。
「酒だけでなくな」
「甘いものもな」
「好きであるな」
「ドワーフ達もな」
「いや、確かに酒好きであるがな」 
 ドワーフ王もレモンティーを飲んでいます、そのうえで言うのでした。
「しかしな」
「それと共にであるな」
「甘いもの、果物にな」
「お菓子もじゃな」
「好きでな」
 それでというのです。
「こうして今の様にじゃ」
「食べることもか」
「好きでな」
 それでというのです。
「よくじゃ」
「食っておるな」
「そうじゃ、甘い飲みものもな」
 こちらもというのです。
「この通りじゃ」
「成程のう」
「酒もお菓子もな」 
 その両方をというのです。
「楽しむぞ」
「わし等はそうしたことも一緒じゃな」
「兄弟の様な間柄でな」
「酒が好きで」
「甘いものもな」
 こうお話します。
「だからティータイムもよい」
「実にな」
「ケーキもエクレアもよいのう」
「クッキーもな」
「わしもじゃ、お酒もよいが」 
 キャプテンも言いました。
「甘いものを楽しむのもな」
「そうそう、キャプテンってお菓子を食べてワインもね」
 トロットがクッキーを食べつつ応えました。
「楽しむことあるわね」
「一緒に飲んだりするじゃろ」
「そうしたこともするしね」
「赤ワインを飲んで」
 そしてというのです。
「それと共にじゃ」
「ケーキやエクレアを食べるのもね」
「これもよくてな」
 それでというのです。
「時々な」
「そうしてるわね」
「ワインやブランデーはお菓子にも合う」
「逆にビールはね」
「こちらの酒とお菓子はな」
「合わないのね」
「そうじゃ」
 こうトロットに言いました。
「わしとしてはな」
「そうなのね」
「それで今の様なじゃ」
「ティータイムもなのね」
「好きでな」
 それでというのです。
「紅茶も楽しむよ」
「ではね」
「レモンティーお代わりするか」
「このレモンティーも美味しいわ」
 ポリクロームもレモンティーを飲んで笑顔になっています。
「私もお代わりしたい位よ」
「飲める時は飲めばいいのよ」
 トロットはポリクロームんも言います。
「どんどんね」
「お代わりもして」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「楽しみましょう」
「それではね」
 ポリクロームも笑顔で頷いてでした。
 一緒にティータイムを楽しみました、それが終わってから皆でまたお城の中を案内してもらい巡りますが。
 塔と塔をつないでいる石造りのアーチを歩いてです、ノーム王は青いお空と白い雲を見つつしみじみとして言いました。
「まさにのう」
「天空のお城におる」
「それが実感出来るのう」
「そうであるな」
 ドワーフ王もしみじみとして言います。
「こうした場所を歩くと」
「そう思えるな」
「地下にはない」
「空ならではのものじゃ」
「空中庭園もあるしのう」
「天空の城とは実によいわ」
「これもまたオズの国よね」
 つぎはぎ娘も言ってきました。
「そうなのよね、ただね」
「ただ?どうしたのじゃ」
「あんた達落ちたらとかは考えないのね」
 つぎはぎ娘はノーム王に尋ねました。
「そうなのね」
「このアーチからか」
「そして島からね」
「実は私はじめて来た時そのことも考えたの」
 トロットが言ってきました。
「若しかしたらって」
「そうなのよね、あんた達って」
「外の世界から来た人はね」
 トロットはつぎはぎ娘に答えました。
「そう思ってしまうの」
「どうしてもね」
「そう、お空にいると」
「浮島から落ちないか」
「端にいたらね」
「それは私もだったし」
 トロットはここでジョージ達五人にお顔を向けて彼等に尋ねました。
「貴方達もよね」
「実は」 
 まずはジョージが答えました。
「最初に来た時そうでした」
「とても素敵な場所ですが」 
 それでもと言うナターシャでした。
「若しかしてって思いました」
「落ちないか」
 神宝も言います。
「そう思って怖くなりました」
「素敵な場所でも」
 それでもと言う恵梨香でした。
「そのことが怖くなりました」
「それで落ちたら」
 カルロスはそうなった時のことをお話しました。
「どうなるかって」
「それが落ちないのじゃ」
 こう答えたのはノーム王でした。
「これがな」
「ノーム王はご存知なんですね」
「オズの国のこのことを」
「浮島から落ちることはない」
「雲の上にも乗れて」
「浮島も雲も端から出ても」
「そこで浮かんでかつそこからは行けずな」
 それでというのです。
「戻れるのじゃ」
「そうですよね」
「オズの国はそうした時もお伽の国で」
「ちゃんと守ってもらえますね」
「そうなんですね」
「そうなのじゃよ、落ちることはじゃ」
 それはというのです。
「ないのじゃ」
「そうですよね」
「それでお空を飛べるなら進めますね」
「そこから先にも」
「翼とかがあったら」
「そう出来ますね」
「うむ、例えば空を歩ける靴があれば」
 それならというのです。
「そこから先もな」
「進めて」
「お空を歩ける」
「そうですか」
「そんな靴も欲しいですね」
「一度履きたいですね」
「全くじゃな、それでじゃが」
 ノーム王は皆と一緒にアーチを渡り終えてからまた言いました。
「今度は木造の少し垂れたな」
「ああ、吊り橋ですね」
「それも渡りたいんですね」
「塔と塔をつないでいる」
「若しくは建物の」
「そこを渡って」
「楽しみたい、こうした場所のアーチを渡るのも」
 それもというのです。
「実にな」
「楽しいのう、楽し過ぎて」 
 ドワーフ王は塔の中で言いました、今は塔の今いる階の中で言いました。
「心の弾みが止まらない」
「そうであるな」
 ノーム王はドワーフ王の言葉に頷きました。
「このお城でもな」
「全くじゃ、しかし何処かな」
「どうしたのじゃ?」
「いや、このお城はお城と言ってもな」
 ノーム王はドワーフ王に首を傾げさせつつ言うのでした。
「宮殿の方のな」
「そうしたお城じゃな」
「そちらじゃな」
「確かに」
 否定せずにです、ドワーフ王も頷きました。
「砦が巨大になってな」
「宮殿になるな」
「うむ、お城と言ってもそれぞれじゃ」
「わし等のお城は山の中をくり抜いてな」
「そこに多くの部屋と通路を設けたものじゃ」
「それが地下の城で多い」
「後は空洞の中を街にしてな」
 そうしてというのです。
「それがお城じゃ」
「あと宮殿をもうけてな」
「お城とすることもある」
「そうであるな」
「街もお城なのよね」
 ビリーナが言ってきました。
「オズの国でも」
「そうじゃな」
「お城って言ってもね」
 一口にです。
「色々あるわね」
「そうであるな」
「街を壁で囲んだら」
「立派なお城じゃ」
「そうよね」
「それでこのお城はな」 
 天空のお城はといいますと。
「宮殿であるな」
「砦を大きくした」
「そっちであるな」
「ええ、あと日本だとね」
「うむ、地上での安土城や大坂城であるな」
「ああしてね」
「城下町が周りにあってな」
 ノーム王も日本のお城のことを知っていました。
「それでその中心にな」
「幾つもの場所にね」
「お堀や城壁で分かれておってな」
「門もあってね」
「見事な天守閣もある」
「そうしたお城なのよ」
「日本のお城はな」
 それだというのです。
「それが何よりもな」
「特徴よね」
「あの天守閣がな」
「王様は好きなのね」
「恰好よくてな」
 そしてというのです。
「奇麗であるからな」
「安土城も大坂城もね」
「あと名古屋城のものもな」
「あちらもいいわね」
「実にいいセンスじゃ」
 日本のお城はというのです。
「それでそこにおるお侍さん達もな」
「好きなのね」
「恰好よいのう」 
 今度はお侍さん達のお話をするのでした。
「あちらもな」
「そうね、私は忍者も好きよ」
「おお、忍者か」
「あの人達もね」
「ううむ、忍者はな」 
 まさにとです、ノーム王は唸りました。
「不思議の塊じゃ」
「忍術を使ってね」
「恰好よ過ぎるわ」
「お水の上を歩けてね」
「水蜘蛛の術でな」
「それでお空もよ」
「飛べるな」
「あれもいいわね」
「オズの国のお空もじゃな」
「あの人達は飛べるのよ」
 ポリクロームがお話しました、今度は塔の中を巡りながらそのうえでお話をしています。塔の中は一階一階が壮麗な美術館になっていて素敵な絵や彫刻が沢山あります。
「私達みたいにね」
「むささびの術であるか」
「それを使ってね」
 そうしてというのです。
「それでなのよ」
「空を飛ぶか」
「高いところから風に乗って」
「飛ぶのう」
「あと大凧にもね」
「乗ってな」
「こちらは飛ばないけれど」
 それでもというのです。
「舞うこともね」
「あるのう」
「そうなのよ、あの人達は」
「実は忍者になりたいとな」
「思ったこともあるの」
「うむ」 
 その通りだというのです。
「一度な」
「わしもじゃ」
 ドワーフ王は忍者の人達が見事な術を使っている油絵を見つつ言いました、その絵も実に恰好いいものです。
「そう思ったことがある」
「そうであるな」
「しかしな」
「何かな」
「思ってもな」
 それでもというのです。
「それを行動に移さんとな」
「駄目であるしな」
「結局わしはそうしなかった」
「わしもじゃ」
 二人共というのです。
「そうであるな」
「なりたいと思ったが」
「他のことをしてな」
「忍者にはならんかった」
「忍術を身に着けてな」
「身に着けたいならやればいいけれど」
 つぎはぎ娘は子供達が楽しく遊んでいる絵を見てから答えました。
「けれどね」
「実際にやるとなるとな」
「あたしも忍者になりたいって思った時あるわ」
 つぎはぎ娘もでした。
「それでもね」
「しなかったのか」
「他にそれでもっとやりたいことがあったからね」
「歌とダンスか」
「そう、その二つをしたくて」 
 それでというのです。
「あたしは忍者にならなかったの」
「そうなのか」
「あたしが一番したいことはいつもね」
「歌とダンスじゃな」
「その二つだから」
 ノーム王に答えました。
「ならなかったのよ」
「そうか」
「ええ、それであんた達もよね」
「実は忍者になるよりもな」
「やりたいことがあったのね」
「他に何かと遊びたいことがな」
 つぎはぎ娘に笑って答えました。
「あってな」
「忍者になりたいと思い以上に遊びたかったのね」
「その時はな」
「あの時何かと遊んでおったな」
 ドワーフ王も言ってきました。
「お主は」
「そうじゃ、酒を飲んでテレビゲームをしてな」
「それでな」
「楽しんでおったのう」
「それでじゃ」
 そうした状況だったからだというのです。
「わしはな」
「忍者にならずな」
「今に至る」
「わしも酒を飲んでな」
 ドワーフ王も言います。
「その時は旅行にじゃ」
「お主やたらと凝っておった時があったな」
「そうした時に思ってな」
 それでというのです。
「忍者にはな」
「ならなかったな」
「いや、服部殿や真田殿にな」
「十勇士の面々の様にな」
「使いたいと思ったが」
「今はな」
「恰好いいとは思うが」 
 それでもというのです。
「自分達で使いたいか」
「そうは思わんのう」
「どうもな」
「そう思うならそれでいいですね」
 ジョージも言いました。
「またなりたいと思えば」
「その時になればよいな」
「それでな」
「そう思います、外の世界でも忍者は人気があって」 
 そうであってというのです。
「なりたいって人沢山いますが」
「実際になる人はな」
「多くてもじゃな」
「実行に移すのは別ですから」
 考えるのというのです。
「それはまた」
「そうであるな」
「思うのと動くのはまた別じゃ」
「それはな」
「そうなんですよね」
「本気でなりたいならそれをやってみる」 
 トロットは笑顔で働く人達の絵を見ています、その絵では農家の人達が皆で力を合わせて畑仕事をしています。
「何と言ってもね」
「オズの国ではな」
「そうよ、忍者でも仙人でもね」
「なりたいならな」
「それならよ」
 まさにというのです。
「やってみる、実際にね」
「どうしてもと思うならな」
「そこでしなくてもね」
「いいな」
「ええ、けれどどうしてもと思うなら」
「やるべきであるな」
「最初は下手でもやっていけば」 
 そうすればというのです。
「それでね」
「上手になるのう」
「だからね」
 それでというのです。
「何でもやってみることよ」
「本気でやりたいと思えばな」
「そうしたらいいのよ」
「ではわしも本気で忍者になりたいとな」
「思えばね」 
 その時はとです、トロットはまた言いました。
「なってね」
「そうなるとしよう」
 ノーム王も笑顔で応えます、そしてです。
 天使達の長である天使長のうちのお一人が一行に言ってきました。
「このお城以外も見て回られますか?」
「というと」
「はい、我々の領土はこの浮島だけでなくです」
 見れば六枚の翼を持っています、その天使長さんの人が言うのです。
「周りの浮島達もです」
「領土に持っておってか」
「そのどれにもです」
「お城があるか」
「はい、このお城を中心として」
 そうしてというのです。
「複数のお城を持ち」
「領土にしておるか」
「左様です」
 こうお話するのでした。
「そしてそちらにもです」
「巡るかどうか」
「如何でしょうか」
「そう言ってくれるならのう」
「そうじゃな」
 ノーム王だけでなくドワーフ王も頷きました。
「わし等もな」
「他の浮島達も巡らせてもらおうか」
「折角の申し出じゃしな」
「そうするか」
「はい、それでは」
 天使長の人も頷いてでした。
 皆は今度は浮島を巡ることになりました、天空のお城の訪問はまだ続くのでした。








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