『新オズのリキティンク』
第十二幕 最高のお花見
遂にお花見の日となりました、リンキティンク王は皆と一緒にお花見が開かれる鶴見公園に行きました。
そこに行くともう大勢の人達がいました、そしてです。
司馬さんもいて皆に言ってきました。
「桜のお花見を楽しめることはな」
「よいことじゃのう」
「そや、桜があれば」
リンキティンク王に笑顔で言うのでした。
「それだけでちゃうで」
「そうじゃな、ではな」
「これからな」
「楽しもうぞ」
「さて、これからカレーや善哉も食べてや」
織田作さんもいて言います。
「楽しもうか」
「ええな、わしはもうお酒飲んでや」
西鶴さんはそちらを楽しみにしています。
「存分に楽しむで」
「ミックスジュースあるで」
寛美さんはもうそれを出しています。
「これも飲もうな」
「甘いところてん出すんや」
藤田さんはそちらでした。
「黒蜜や、何て言ってもな」
「飲んで食ってや」
やすしさんもいます。
「それで賑やかにやるんや」
「さて、野球の話をしよか」
野村さんは少しはにかんで言いました。
「愚痴になるがええか」
「勿論や」
黒と黄色のチームの十一番、ざんばら髪の村山実さんが応えます。
「一緒に野球の話しよか」
「オズの国でも野球もお花見も楽しめる」
十番の陽気な顔立ちの人藤村富美雄さんも言います。
「最高やな」
「さて、これからオズマ姫も来られるので」
晴明さんは来賓の人達のことを考えています。
「より賑やかになるね」
「そうじゃ、殿も来られるのじゃ」
秀吉さんも言います。
「これは最高のお花見になるぞ」
「全くだね、もうお酒やご馳走の用意は出来てるしね」
ねねさんはその秀吉さんのお隣にいます。
「これはいいものになるね」
「そうじゃのう、絶対にな」
「それでなんですが」
王子が秀吉さんに聞いてきました。
「信長さん達は何で来られるのでしょうか」
「うむ、列車じゃ」
秀吉さんは笑顔で答えました。
「殿も同輩の皆もな」
「そちらでなんですね」
「そうなっておる、もうそろそろこの街の駅に着かれてな」
そうしてというのです。
「ここに来られるぞ」
「そうなのですね」
「その時はわしが迎えに行くからな」
「その間はですね」
「任せた」
「もうすぐ行くからね」
ねねさんが気さくに言ってきました。
「宜しくね」
「それでは」
「それでやけどな」
落語家の米朝さんが魔法使いに尋ねました。
「オズマ姫さん達はどうして来られるんや」
「ここまでだね」
「そや、どうして来られるんや」
「飛行船でだよ」
魔法使いは米朝さんに笑顔で答えました。
「それに乗ってね」
「そのうえでかいな」
「来られるよ」
「成程な、わかったわ」
「そちらも楽しみにしてね」
「参上しましたぞ」
ここで、でした。幸村さんが十勇士の人達とご子息の大助さんを連れて皆の前に笑顔で登場しました。
「遅くなっていませんか」
「いえーーこれからーーです」
チクタクが応えました。
「皆さんーー集まってーーおられーーます」
「そうでござるか、それは何より」
「ご安心ーーを」
「それでは」
「いや、次から次に人が来られてね」
アン王女はどんどん集まる沢山の人達を見て言います。
「凄いものになりそうね」
「ははは、ほんま楽しいもんになるわ」
やすしさんが応えました。
「落語も漫才もやってな」
「浄瑠璃や歌舞伎もよね」
「それでや」
そのうえでというのです。
「ほんまな」
「今日はとても楽しいね」
「お花見になるで」
「さて、芝居の用意をするか」
寛美さんは新喜劇の人達に声をかけました。
「そうしよな」
「そうしましょう」
「最高の舞台にしましょう」
「今回もそうしましょう」
「わしは歴史の話をさせてもらうで」
司馬さんはそちらでした。
「同じもの書きでも織田作さんとはちゃうジャンルやな」
「そやな、わしは西鶴さんに近いな」
織田作さんは自分から笑顔でお話します。
「作風は」
「ああ、そうやな」
他ならぬ西鶴さんも頷きます。
「あんたの作風はな」
「そやな」
「ううん、何か二人の作品を読んでみたくなったよ」
カエルマンは河豚や蟹のお鍋、ハリハリ鍋の用意を見つつ言いました。勿論お好み焼きやたこ焼き、焼きそばや串カツの用意もされています。
「どれもね」
「ああ、読んでくれるか」
織田作さんはカエルマンの今の言葉にお顔を向けました。
「ほな是非な」
「読ませてもらうね」
「外の世界での作品もあれば」
「オズの国での作品もあるね」
「この街の人達を書いたな」
「それは面白そうだね」
「ああ、そうした作品を書いてるで」
ご自身の奥さんの横で笑って言います。
「そやからな」
「楽しませてもらうで」
「今秀吉さんが奥さんと一緒に行かれましたよ」
クッキーはお二人を見て言いました。
「ですからいよいよ」
「信長さんも来られるな」
野村さんが応えました。
「あの人はもうお日さんやな」
「太陽ですか」
「ああ、思い切り晴れやかでな」
そうした人でというのです。
「もう目立ってしゃあないわ」
「そうなのですね」
「オズマ姫は世界そのものでな」
「オズの国のですね」
「そや、あの人わしのことよお褒めてくれるからな」
だからだというのです。
「わしも嬉しいわ」
「野村さんも褒めてもらえるとですね」
「こんな人間や、よおボロクソ言われたが」
それでもというのです。
「西本さんにも褒めてもらったし」
「オズマ姫にもですか」
「褒めてもらってるで」
「そうなんですね」
「そやで」
「そうですか、それで西本さんというのは」
どなたかとです、クッキーが言いますと。
白髪頭を真ん中で分けた小さくて優しい目をしたやや細長いお顔のスーツの人が出て来ました、ナターシャ達五人はクッキーにその人を見て言いました。
「この方です」
「この方が西本さんです」
「西本幸雄さんっていいます」
「三つのチームで監督をされてです」
「どのチームも優勝させたんですよ」
「そんなに凄い方なの」
クッキーは五人のお話を聞いて驚きました。
「この方は」
「そうなんです」
「凄い実績のある方なんです」
「沢山の名選手を育てられて」
「それで八回も優勝された」
「素晴らしい人なんですよ」
「ははは、一回も日本一になってへんで」
西本さんは笑ってこう言いました。
「わしは」
「いえ、凄いですよ」
ナターシャはその西本さんに目を輝かせて答えました。
「八回も優勝させるなんて」
「しかも弱いチームを強くしてですからね」
恵梨香も西本さんを尊敬する目で見ています。
「尚更です」
「沢山の名選手を育てて」
ジョージはこのことを言いました。
「そのうえで、ですから」
「それで凄くないなんてないですよ」
神宝が見てもです。
「本当に」
「八回も優勝なんて」
カルロスも西本さんに言います。
「どんなスポーツでもそうは出来ないですからね」
「そやな、わしはこの人にはどうしても勝てんわ」
野村さんも言います。
「西本さんだけにはな」
「何言うてるんや、自分にはよおやられたわ」
西本さんは野村さんに笑って言い返しました。
「試合の度にな」
「ははは、そうでした?」
「キャッチャーとしてもバッターとしても監督としてもな」
「そやけどわしもかなりやられてますで」
「それでオズの国でもやな」
「ほんまどれだけやられてるか」
こう言うのでした。
「ずっと」
「そう言うとお互い様ですか」
「そうなりますか」
「あの、お二人は確か」
ナターシャが言ってきました。
「お酒は」
「ああ、わしもあかんかった」
西本さんが答えました。
「外の世界ではな」
「そうでしたね」
「オズの国では飲めるけどな」
「それでもですね」
「やっぱり甘いもんの方がな」
そうしたものの方がというのです。
「好きやで」
「だからお花見でもですね」
「ケーキとか貰うわ」
「ケーキですか」
「そや、そっちをな」
こう言うのでした。
「好きやで」
「そうなんですね」
「ノムや織田作さんと一緒やな」
甘いものが好きということはというのです。
「そこはな」
「そうなんですね」
「そやからこのお花見ではな」
「ケーキとか甘いものをですね」
「主に楽しむで」
「それでは」
「ああ、一緒に食べような」
ナターシャに笑顔で言います、そしてでした。
皆で秀吉さんとねねさんが戻るのを待っているとでした、暫くしてその秀吉さんとねねさんがです。
信長さんと家臣の人達を案内して戻って来ました、信長さんは場に来ると皆に笑顔でこう言いました。
「オズマ姫とお歴々はまだか」
「うむ、そうじゃ」
リンキティンク王が応えました。
「飛行船で来られるとのことじゃが」
「そうか、では来られてからであるな」
「お花見じゃ」
「であるか、ではな」
信長さんは笑顔で言いました。
「暫くは待とうぞ」
「そうするか」
「わしは待つのは苦手じゃが」
「それでも今はか」
「この雰囲気を楽しんでな」
そうしてというのです。
「待つぞ、それではじまれば」
「オズマ姫が来られてじゃな」
「あれじゃ、焼き味噌とじゃ」
それにというのです。
「甘いものをじゃ」
「楽しむか」
「そうじゃ、実はわしは外の世界では酒が苦手でな」
それでというのです。
「それよりもな」
「甘いものが好きか」
「焼き味噌に梅干しが好きでな」
そうしてというのです。
「甘いものがじゃ」
「好きなのか」
「外の世界では酒を少し飲んだだけでじゃ」
「それでか」
「酔い潰れて頭が痛うなってじゃ」
そうなってというのです。
「参っておったのじゃ」
「そうだったのか」
「実は殿は酒が大の苦手であられたのじゃ」
秀吉さんもお話します。
「かつてはな」
「そうであったか」
「ははは、大酒飲みに見えるであろう」
信長さんは笑って言いました。
「わしは」
「そう言われるとな」
「しかし外の世界におった頃はな」
「大の苦手でか」
「オズの国では飲めるが」
それでもというのです。
「やはりな」
「甘いものが好きか」
「果物に菓子もな」
「ではケーキは好きか」
「大好物じゃ」
そうだというのです。
「無論アイルキャンデーもか」
「そちらもか」
「好きでな」
それでというのです。
「楽しみで来たぞ」
「成程のう」
「甘いものも充実していますが」
王子はきつねうどんやラーメン、鰻丼、関東煮の用意がされていてです。
ホルモンや餃子を焼く準備に豚まんや焼売を蒸す準備も整っているのを見つつ微笑んで言いました。
「他のものもです」
「どんどんな」
「準備が出来ていますね」
「そうであるな」
リンキティンク王もその状況を見て目を細めさせます。
「これは凄いお花見になるぞ」
「左様ですね」
「ははは、賑やかなものはとことん賑やかにせんとな」
秀吉さんが笑って言ってきました。
「だからじゃ」
「それでか」
「この様にな」
まさにというのです。
「賑やかにじゃ」
「するのじゃな」
「左様、舞台の準備も出来ておるからな」
催しを行うそれのというのです。
「それでじゃ」
「オズマ姫が来られるとか」
「早速はじめるぞ」
「それではな」
「拙者達は忍術を披露致します」
幸村さんは微笑んで言ってきました。
「その粋を」
「いやあ、間に合ったかな」
妖怪博士さんも来ました、妖怪の皆も一緒です。
「心配だけれど」
「おお、まだじゃぞ」
リンキティンク王は妖怪博士さんにも応えました。
「充分じゃ」
「間に合ったんだ」
「そうじゃ、心配は無用じゃ」
「それは何よりだよ」
「しかし妖怪まで来るとはのう」
ここでリンキティンク王は楽しそうに笑いました。
「ほっほっほ、面白いのう」
「そこで笑うんだ」
「笑いたいから笑うのじゃ」
そうするというのです。
「心からな」
「そうなんだね」
「うむ、それでじゃ」
リンキティンク王はさらに言いました。
「はじまるとな」
「尚更だね」
「わしは笑うぞ」
「そうなるんだね」
「兎に角笑うことじゃ」
こうも言うのでした。
「笑えばそれだけ幸せになるからのう」
「幸せだから笑ってだね」
「そこでさらにな」
「笑ってそうして」
「幸せになるのじゃ」
こう言うのでした。
「皆でな」
「そうじゃ、今日は皆をはらわたがよじれるまで笑わせるぞ」
秀吉さんがまた言います。
「楽しみにしておるのじゃ」
「うちの人はオズの国に来てからずっとこう言ってるんだよ」
ねねさんはその秀吉さんの横で言いました。
「もうね」
「人を笑わせることをか」
「それもなんだよ」
「はらわたがよじれるまでか」
「そうさせるって言うんだよ」
「笑わぬなら笑わせてやろうじゃ」
秀吉さんのお言葉です。
「それがわしじゃ」
「ははは猿らしいのう、まあわしもじゃがな」
信長さんも言ってきます。
「笑わぬならな」
「笑わせてやるですな」
「わしは鳴かぬなら殺してしまえと言われるが」
秀吉さんに応えこうも言います。
「その実はじゃ」
「殿も鳴かせてやろうですな」
「そして竹千代もな」
「ですな、徳川殿も」
「あの者もな」
「鳴くまで待とうではなく」
「鳴かせる為にな」
まさにその為にというのです。
「あの手この手をな」
「用いられますな」
「そうじゃ、それで笑わぬ者は」
信長さんは笑って言いました。
「笑わせてやるわ」
「そうされますな」
「そうする」
まさにというのです。
「わしもな」
「とことんですな」
「別に戦をしておる訳ではない」
信長さんはそうではないとも言いました。
「別にな」
「それならですな」
「もうな」
「笑うまで、ですな」
「笑わせる」
そうするというのです。
「常にな」
「それでわしもです」
「笑うまでじゃな」
「努めます」
「それでよいわ、笑わせるにはな」
「相手が笑うまで」
「それまでこちらが努める」
是非にと言うのでした。
「とことんな」
「ではそれがしも」
「そうしていくな」
「この街の主をさせてもらっているのです」
それならというのです。
「もうそれこそ」
「皆をじゃな」
「笑わせていきます」
「そうせよ、しかしお主」
信長さんは秀吉さんに笑ってお話しました。
「外の世界におる時よりもな」
「オズの国にいる時の方がですな」
「即ち今の方がじゃ」
「活き活きとしていますか」
「うむ、水を得た魚の様じゃ」
「柿を食った猿ではないですか」
「ははは、そう言うことこそな」
まさにとです、信長さんは破顔して言いました。
「オズの国におる方がな」
「活き活きしている証ですか」
「そうじゃ、随分とな」
「何しろ悩むことも落ち込むこともないので」
「だからじゃな」
「いつも幸せなので」
それでというのです。
「この様にです」
「活き活きとしておるな、それを言うとな」
「殿もですな」
「うむ、武芸をして茶を飲んでな」
そうしてというのです。
「相撲や様々な催しを観てな」
「楽しまれてますな」
「そうしておってな」
「外の世界におられた時よりも」
「活き活きとしておるな」
「信長さん自身もというのです。
「そうなっておるな」
「左様でありますな」
「やはりな」
何と言ってもというのです。
「オズの国は幸せばかりがある国だからな」
「自然と活き活きとなりますな」
「うむ、何の憂いもなくな」
「それで殿もですな」
「毎日楽しんでじゃ」
笑って言うのでした。
「この様にじゃ」
「笑っておられますな」
「左様、では今からな」
「またですな」
「笑うぞ」
「では今は」
「茶でも飲みながらな」
そうしつつというのです。
「オズマ姫を待とうぞ」
「そうしましょうぞ」
秀吉さんも笑顔で応えます、そうしてです。
実際に信長さんはお茶を煎れだしました、それは茶道のお茶で秀吉さんを含めた織田家の人達もご一緒しました。
そして織田作さん達もです。
コーヒーを飲みはじめました、ですが誰もものを食べません。
「それはお花見がはじまってからや」
「それからですね」
「そや、今は待ってるだけやさかいな」
織田作さんはナターシャに答えました。
「それでや」
「飲まれるだけですね」
「待つ時はな」
ナターシャに紅茶と苺ジャムを出しつつ言いました。
「こうしてや」
「飲むことですか」
「そうして待つとや」
「その時間も楽しいですね」
「そやからな」
「今はですね」
「コーヒーかお茶でも飲んでや」
そのうえでというのです。
「ゆっくりとな」
「待つことですね」
「そや、もうじき来られるやろしな」
「待つ間はこうして飲んでお喋りでもしてや」
寛美さんも言います。
「仕事の打ち合わせでもや」
「されますか」
「そや、ノムさんのぼやきでも聞くか?」
「ははは、何でも話すで」
野村さんが笑顔で言ってきました。
「暇潰しにな」
「それじゃあ」
ナターシャも他の皆もです。
お茶やコーヒーを飲みつつお喋りもしてオズマ達が来るのを待っていました、そうして三十分程するとです。
魔法使いのスマートフォンが鳴りました、それに魔法使いが出ますと。
「おお、あと少しでね」
「来られるのね」
「うん、三十分もしたら」
アン王女に答えました。
「ここに飛行船が来るそうだよ」
「じゃあもうね」
「うん、お茶やコーヒーは片付けて」
「今のうちに飲み終わって」
「そうしてだよ」
そのうえでというのです。
「これからはね」
「オズマ姫達をお迎えしましょう」
「皆でね」
笑顔でお話をしてでした。
皆で一旦お茶の道具や敷きものそれにテーブルや椅子というものを片付けてオズマ達を迎える用意をしました、そしてです。
実際に三十分程するとでした。
緑色の飛行船、オズの王家の紋章があるそれがお空からやって来ました。その飛行船が来てでした。
公園の真ん中に来るとゆっくりと降りてきてでした。
降り立つとそこからオズマとドロシーにトト、トロットにベッツイ、ジュリアにです。
かかしと樵、それに臆病ライオンと腹ペコタイガーが出て来ました。オズマは一行の先頭に立ってです。
お迎えした秀吉さんと握手をしてそうして笑顔で言いました。
「お招きしてくれて有り難う」
「いえ、こちらこそ来てくれてまことに恐悦至極です」
秀吉さんは笑顔で応えました。
「嬉しい限りですぞ」
「そう言ってくれるのね」
「それでなのですが」
「ええ、今からよね」
「お花見をしましょうぞ」
「それではね」
「もう用意は出来ていますぞ」
秀吉さんが言った通りにです。
公園にシーツが数えきれないだけ敷かれてテーブルや椅子もあります、お食事や飲みものの用意も整っています。
そちらを見せてです、秀吉さんはさらに言いました。
「この通りに」
「では早速なのね」
「はじめられますぞ」
「はじまればーーです」
チクタクが言ってきました。
「催しもーーです」
「はじめられるのね」
「そうーーです」
その通りだというのです。
「漫才やーー落語ーーを」
「歌舞伎や浄瑠璃もあってね」
カエルマンもオズマにお話します。
「新喜劇もやるそうだよ」
「あっ、あれ面白いよね」
新喜劇と聞いてです、ドロシーの足下にいるトトは嬉しそうに尻尾を左右にぱたぱたと振りました。
「僕も好きだよ」
「そうね、しかも寛美さんがおられるし」
ドロシーはその人を見てお話しました。
「きっとね」
「楽しいものになるよ」
「そうよね」
「凄い人達が揃ってるわね」
ここでこう言ったのはベッツイでした。
「ミスタータイガースまでね」
「ええ、初代が藤村さんでね」
トロットも言います。
「二代目が村山さんね」
「お二人がおられるなんて」
「野村さんや西本さんもおられて」
「野球の人も揃っておられるわ」
「司馬遼太郎さんや織田作之助さんがおられますが」
ジュリアは作家さん達を観ています。
「一体どんなお話が聞けるか楽しみです」
「これは楽しいお花見になるね」
「間違いなくね」
かかしと樵は二人でお話しました。
「桜の木も沢山あってね」
「どの木も咲き誇っているからね」
「三千本あるというけれど」
臆病ライオンも桜の木達を観ています。
「凄いね」
「全くだよ、それに美味しそうなものが沢山あるからね」
腹ペコタイガーは舌なめずりをして言いました。
「僕も期待しているよ」
「実際に美味しいものばかりだよ」
カエルマンが腹ペコタイガーに笑顔でお話しました。
「この街のものはね」
「僕もこの街に来たことがあるけれど」
「そうだね」
「知っているからね」
この街の美味しいものをというのです。
「それでだよ」
「楽しみだね」
「今からね」
「ううん、この街はあれだね」
かかしは笑ってこうも言いました。
「腹ペコタイガー君向きの街かな」
「美味しいものが多くてね」
樵も言います。
「それに野球チームもだよ」
「うん、黒と黄色の縦縞だからね」
「まさにだよ」
「腹ペコタイガー君向きだね」
「そうだよね」
「ううん、僕達ライオンを象徴にしてくれるチームもあるけれど」
臆病ライオンは少し残念そうに言いました。
「この街のチームは別格だからね」
「華があるのよね」
ベッツイが観てもです。
「これ以上はないまでに」
「どんなことになっても絵になってね」
トロットは微笑んでお話しました。
「勝っても負けても」
「だからこそね」
「素晴らしいチームなのよね」
「あの華ときたらね」
「勝敗を超えたものがあるわね」
「あのチームは私も好きよ」
ドロシーも微笑んで言います。
「素敵なチームよね」
「そうだよね、球場もいいよね」
トトはこちらもと続きました。
「あのチームは」
「そうよね、もう何もかもが奇麗で恰好いい」
「素敵な球場だよ」
「ユニフォームも含めて」
「野球のお話も出来ますね」
ジュリアもにこりとしています。
「今日は」
「そうですね、桜の木を見まして」
クッキーが応えます。
「飲んで食べて」
「催しも観て」
「歴史やこの街のお話を聞いて」
「野球のお話もして」
「楽しめますね」
「今日は」
「ほっほっほ、その楽しいお花見が今からはじまるぞ」
リンキティンク王はとても上機嫌で言いました。
「よいのう」
「もう準備は出来ていますし」
ボボ王子がそのリンキティンク王に横から言ってきました。
「それではですね」
「後はじゃ」
「オズマ姫の掛け声一つですね」
「それだけじゃ」
「私なのね」
オズマはリンキティンク王のその言葉に笑って応えました。
「それを言うのは」
「うむ、やはりな」
「私がオズの国の国家元首だから」
「それでじゃ」
まさにその為にというのです。
「お願いしたい、わしからもな」
「わかったわ、じゃあね」
「うむ、今からな」
「お花見をはじめましょう」
オズマ姫はミックスジュースが入ったコップを右手に持って高く掲げたうえでこう言いました、その声と共にでした。
皆お花見をはじめました、飲んで食べて催しをして観てです。
心から楽しみます、リンキティンク王はここで軽快にラップダンスを歌と共にしてみせたのですが。
「いやあ、いいのう」
「動きが凄いですね」
ナターシャは王様にワインを差し出して言いました。
「王様は」
「足の動きもよくて」
ジョージはステップ等について言います。
「身体の動き全体が」
「凄くリズミカルでしたよ」
カルロスが観てもでした。
「抜群に」
「お身体も柔らかくて」
神宝はリンキティンク王のこのことに驚いています。
「素晴らしかったです」
「当然歌もお見事で」
恵梨香はラップのそれに聴き惚れていました。
「最高でした」
「ほっほっほ、毎日しておるからのう」
リンキティンク王はナターシャが出してくれたグラスに入った甘いワインを飲みながら笑顔で言いました。
「大好きでな」
「好きこそものの上手ですね」
「好きだからいつもする」
「それで上手になりますね」
「自然と」
「王様もそうですね」
「うむ、しかもこの街にラップは合う様じゃな」
リンキティンク王はこうも言いました。
「どうもな」
「そんな感じですね」
「街の雰囲気を観ますと」
「ラップが合ってますね」
「どうにも」
「そうですね」
「うむ、だからな」
このこともあってというのです。
「わしもやってみたが」
「実際に会ってましたよ」
王子はリンキティンク王にたこ焼きを出して言いました。
「それにお上手でしたし」
「それであるか」
「はい、それでラップの後ですが」
「たこ焼きじゃな」
「この街らしく」
にこりと笑って言うのでした。
「どうでしょうか」
「よいのう、ではな」
「一緒に食べましょう」
「うむ、それでたこ焼きの後はじゃ」
たこ焼きに爪楊枝を刺してです。
お口の中に入れてはふはふと食べつつそうして言うのでした。
「落語か漫才をな」
「されますか」
「落語は一人で出来るが」
「漫才は二人ですね」
「基本な、そちらはどうするか」
「それなら相方がもういますよ」
王子は満面の笑顔で言ってきました。
「漫才をされるなら」
「若しやそれは」
「そう、僕です」
こう答えるのでした。
「それは」
「それをしてくれるか」
「はい、ですから」
それでというのです。
「安心してです」
「漫才をしてよいか」
「一緒にしましょう、僕もです」
王子としてもというのです。
「王様と一緒に漫才が出来るなら」
「嬉しいか」
「そうですから」
それ故にというのです。
「王様さえよければ」
「一緒にじゃな」
「漫才をしましょう」
「それではな」
「うむ、わしも漫才をするぞ」
秀吉さんも言ってきました。
「ねねとな」
「お主達は夫婦漫才じゃな」
「そうじゃ、そんな話もしたな」
「そうであったな」
「わし等もお笑いが好きでな」
「自分達でもやっておるな」
「それでじゃ」
秀吉さんはさらにお話しました。
「このお花見ではな」
「お主達も催しに参加してか」
「夫婦円満の夫婦漫才をじゃ」
まさにそれをというのです。
「見せるぞ」
「ではな」
「まあしょっちゅう言い合うけどね」
ねねさんが言ってきました。
「あたし達は」
「そこでそれを言うか」
「言うよ、本当のことだからね」
それでとです、秀吉さんに言います。
「言うよ」
「全く、それを言われるとな」
「困るかい?」
「ここではな、まあ確かにいつもじゃな」
「あたし達は言い合うね」
「何かとな」
それこそとうのです。
「それも言い合うとじゃ」
「尾張の言葉丸出しでね」
「そうなるのう」
「何じゃ、お主達まだその言葉か」
信長さんは大好物の焼き味噌を食べつつご夫婦に言いました。
「言い合いの時に出るのは」
「どうもこの街の言葉でなく」
秀吉さんは右手を頭の後ろにやって照れ臭そうに答えました。
「出るのはです」
「であるか」
「そうです」
「まあわしもな」
「何かあるとですな」
「出るのはな」
その言葉はといいますと。
「尾張の言葉じゃ」
「外の世界で言う名古屋弁ですな」
「それじゃ、それでじゃ」
その為にというのです。
「ここのものも美味いと思うが」
「最もよいものは」
「きし麺に味噌カツ、海老に鶏料理にな」
「モーニングにですな」
「鉄板のナポリタンじゃ」
「それに味噌煮込みうどんですな」
「ういろうもな」
こうしたものが好きだというのだ。
「そうじゃが。しかしな」
「この街ではですな」
「この街の料理をな」
「堪能されますな」
「そしてじゃ」
信長さんは今度はきつねうどんを食べつつ言います、そちらもかなり美味しそうに笑顔で食べています。
「催しもな」
「そちらもですね」
「相撲も行われるというが」
信長さんの大好きなです。
「それにじゃ」
「他のものもですな」
「楽しむぞ」
「では漫才も」
「お主達のそれもな」
夫婦漫才もというのです。
「そうしてじゃ」
「おお、リンキティンク王と」
「ボボ王子のじゃ」
お二人のものもというのです。
「是非じゃ」
「楽しまれますな」
「そうしたい」
「おお、そうか」
そう言われてでした。
リンキティンク王は王子にお顔を向けて言いました。
「ではな」
「これからですね」
「やるか」
「はい、漫才を」
「するか」
「はじめてですが」
「はじめてでもよいではないか」
リンキティンク王はそれはよしとしました。
「誰でもじゃ」
「何でもですね」
「何かをするならな」
「はじめてですね」
「そうであるからな」
だからだというのです。
「はじめてするといってもじゃ」
「恐れずに」
「やることじゃ、失敗してもじゃ」
例えそうしてもというのです。
「よい、やりたいことはな」
「最初は出来なくても」
「やるのがよい、だからな」
それでというのです。
「わしはやるぞ」
「では僕も」
王子はリンキティンク王のお言葉を聞いて笑顔で頷きました。
「その心意気でいきます」
「うむ、ではな」
「やりましょう」
「二人でな」
こうお話してでした。
二人で漫才をします、その漫才はやすしさんから見るとです。
「やっぱりな」
「まだまだか」
「しかしよかったで」
笑顔で、です。リンキティンク王に言いました。
「全力でやってる、それがや」
「よいのか」
「そや、お笑いは笑ってもらう」
「そして笑わせるじゃな」
「そう思ってこそやからな」
「わしはよいか」
「そや、技術はこれから磨いてな」
そうしてというのです。
「その心意気を忘れんことや」
「それが大事じゃな」
「そういうことや、ほな皆でさらにな」
「笑うのじゃな」
「そうしてこな」
「その通りじゃ、皆笑うのじゃ」
秀吉さんも言って来ました。
「飲んで食べて催しでもじゃ」
「心から笑うのじゃな」
「桜も見てな、笑ってこそじゃ」
「世の中よくなるな」
「そうじゃ、では皆で楽しむのじゃ」
秀吉さんは笑顔で言ってお猿さんの物真似をしました、それを見て皆爆笑しましたがリンキティンク王も同じで。
「ほっほっほ、面白いのう」
「笑えるな」
「この通りな、やはり笑うことは最高じゃ」
桜の花びらが舞う中で言いました、他の皆もそうしてです。最高のお花見の時間を過ごしたのでした。
新オズのリンキティンク 完
2022・11・11