『新オズのリキティンク』




                第十一幕  色々な人達を呼んで

 秀吉さんがお花見を開くということは他ならぬ秀吉さんが皆に知らせました、それで街の人達はおろかです。
 他の街からも来ました、何とです。
「ほう、信長さんもか」
「来られるそうですよ」
 ボボ王子はリンキティンク王にお話しました、皆今は豚まんが有名な中華料理店で豚まんに餃子してにラーメンを食べています。二人は今その豚まんを食べています。
「家臣の方々と一緒に」
「秀吉さんとのお付き合いでじゃな」
「それで大阪城に縁があるので」 
 それで、というのです。
「真田幸村さんもです」
「来るのか」
「十勇士の人達と一緒に」
「それは豪華じゃな」
「妖怪博士も妖怪の皆さんと来られて」 
 そうしてというのです。
「この街の名士の人達もです」
「来るのじゃな」
「そうなんですよ」
「ほっほっほ、これはよい」
 リンキティンク王は笑顔で応えました。
「楽しいお花見になりそうじゃ」
「そうですよね」
「オズマ姫も来るそうよ」 
 アン王女は焼き餃子を食べつつ言ってきました。
「ドロシー王女にかかしさん、樵さんもね」
「尚更よいのう」
「もう今回のお花見はね」
 それこそというのです。
「とんでもなく豪華な」
「そうしたものになるな」
「そうみたいよ」
「そして美味いものを飲んで食ってじゃな」
「漫才や落語もね」
 こうしたものもというのです。
「催されてね」
「歌舞伎とか浄瑠璃もじゃな」
「そうなのよ」
「尚よいのう」
「そやろ」 
 ここで、でした。
 お店にいた着流しを着た黒髪を短くしている恰好いい感じの男の人が笑顔で一行に言ってきました。
「これがこの街の催しや」
「貴方はーーどなたーーですーーか」 
 一人食べていないチクタクがその人に尋ねました、見ればその人は炒飯を美味しそうに食べています。
「一体」
「わしは坂田三吉や」
 その人歯笑顔で答えました。
「将棋好きのな」
「将棋ーーですーーか」
「そや、それが好きでな」
 それでというのです。
「オズの国でもや」
「将棋をーーされてーーいますーーか」
「そうしてるわ、もうな」 
 坂田さんはさらに言いました。
「こっちの世界でも将棋三昧や」
「そうーーですーーか」
「そや、楽しくな」
「あの、坂田三吉さんって」
 ナターシャはその人の名前を聞いて言いました、見ればこの娘達も豚まんや餃子やラーメンを食べています。
「大阪のね」
「そうそう、将棋名人でね」
 カルロスが応えました。
「伝説の人だよ」
「この人もおられるなんてね」 
 神宝は唸って言いました。
「オズの国ならではだね」
「しかもこうしてお会い出来るなんて」
 ジョージも唸って言います。
「外の世界ではとても想像出来ないよ」
「思わぬところで思わぬ人に会える」
 恵梨香はしみじみとした口調で言いました。
「そうした国なのがあらためてわかったわ」
「そやろ、オズの国はや」
 坂田さんは五人にもお話しました。
「そうした国や、そやからわしもな」
「この国におられるんですね」
「外の世界から来られて」
「それで、ですね」
「こうしてですね」
「このお店で召し上がられて」
「楽しまれてますね」
「そや、この街は美味いもんばかりでな」
 それでというのです。
「食べ歩きも出来るわ」
「この街は美味しいお店ばかりでね」
 魔法使いは言いました。
「このお店もそうだけれど」
「近くに肉で美味いお店もあるわ」
「そうなんだね」
「ステーキとか肉寿司とか出てな」 
 そうしてというのです。
「食べ放題飲み放題でな」
「美味しいんだね」
「それと柚子を利かせたお料理の居酒屋もや」
「あるんだね」
「そっちもええ」 
 美味しいというのです。
「ほんま何かとや」
「美味しいお店が多いんだね」
「この街には美味い店しかないわ」
 坂田さんは笑ってこうも言いました。
「そやからわしは将棋とや」
「お食事をだね」
「楽しんでるわ」
 餃子を食べている魔法使いにお話しました。
「毎日な」
「それは何よりだね」
「それでさっきあんた等お花見の話してたけどな」
 坂田さんはこちらのお話もしました。
「わしも招待されてるわ」
「そうなんだ」
「そやからな」 
 それでというのです。
「そっちもや」
「楽しむんだね」
「そうするわ」
 こうお話するのでした。
「ほんまにな」
「じゃあお花見をしつつ将棋を打つのかな」
「それや」
 坂田さんはまさにとです、魔法使いに答えました。
「誰か相手がおったらな」
「その人とだね」
「将棋を打つで」
「ううん、本当に将棋が好きなんだね」
 カエルマンはその大きなお口の中に豚まんを入れてです、噛んで食べて楽しみながら言うのでした。
「坂田さんは」
「毎日朝から晩まで将棋盤と向かい合ってるわ」
「そこまでなんだね」
「それで外の世界ではや」 
 そちらにいた頃はというのです。
「将棋の文字以外の文字をや」
「まさかと思うけれどね」
「忘れてもうてたわ」
「それは凄いね」
 カエルマンもびっくりでした。
「そこまでだなんて」
「そんなに凄いか」
「凄いよ、貴方は本物だよ」
「本物の棋士かいな」
「本気でそう思ったよ」
 そうだったというのです。
「本当にね」
「それは何よりや、わしもや」
「そうでありたいんだね」
「まあ将棋馬鹿って言うな」
「貴方の場合はかな」
「それでええわ、わしはただの将棋好きや」
 こう言うのでした。
「そやからな」
「あくまでだね」
「将棋を打てたらな」
 それでというのです。
「ええわ」
「そうなんだね」
「ずっとね」
「何かです」
 クッキーはラーメンを前にして言いました、その手にはお箸があります。
「坂田さんは道を歩いておられますね」
「将棋の道をかいな」
「そう思いましたが」
「そう言ってくれてもや」
 坂田さんはクッキーにも笑って言いました。
「ええで」
「そうですか」
「わしは他のことは知らんからな」
「将棋以外のことは」
「そや」
 まさにというのです。
「ほんま他に何もしたことないな」
「将棋馬鹿ですか」
「そうやさかいな」
「将棋の道を歩いているとですか」
「言われると嬉しいわ」
 こう言うのでした。
「ほんまにな」
「そうなんですね」
「そやからお花見の場でもな」
「将棋をですね」
「誰かと打つわ、桜の花びらが舞う中でや」
 坂田さんは笑って言いました。
「将棋をや」
「打たれるんですね」
「そうするわ、楽しみやわ」
 こうも言うのでした。
「ほんま、それとな」
「それと?」
「実はノムさんも来てな」
 そしてというのです。
「寛美さんもや」
「そうした人達もですか」
「来るで、二人共大阪に縁があるさかいな」
「寛美さんっていいますと」
 ナターシャが言いました。
「藤山寛美さんですか」
「そや、面長で目が丸くて頬が少しふっくらしたな」 
 その人のお顔立ちのお話もします。
「その人もや」
「オズの国におられて」
「それでな」
「お花見にですか」
「招かれてるで、それでな」
 坂田さんはさらにお話しました。
「今日の午後はその寛美さんの新喜劇もあるさかい」
「それで、ですか」
「そっちを観たらええわ」
「藤山寛美か」
 リンキティンク王はその人の名前を憶える様にして言いました。
「その人の舞台がか」
「今日の午後やるさかいな」
「観に行けばいいのじゃな」
「そや、興味があったらな」
「ではそうするぞ」
「そうしたらええわ、あとノムさんっていうのはな」
「どんな人じゃ」
 坂田さんに尋ねました。
「一体」
「プロ野球選手でキャッチャーやったんや」
「そうなのか」
「今は別の街のチームにおるけどな」
 それでもというのです。
「その人も大阪に縁があってな」
「それでか」
「秀吉さんに招かれてるねん」
 お花見にというのです。
「チームの選手の人達と一緒にな」
「そうなのか」
「監督さんも一緒や」
「そうなのじゃな」
「このノムさんもおもろい人やからな」
「会ってか」
「ええわ、一見口は悪いが」
 その野村さんという人はというのです。
「実は優しくてな」
「いい人か」
「そや、その喋りもな」
「いいのじゃな」
「楽しみにしておくんや」
「ではそうするぞ」
「ああ、ほな午後はな」
 リンキティンク王に笑って言いました。
「行って来るか、新喜劇」
「そうするぞ」
 笑顔で応えてでした。
 一行は坂田さんと一緒に豚まんや餃子にラーメンそして他の中華料理を注文して食べて楽しんで、です。
 デザートのアイスキャンデーも食べてでした。
 次は新喜劇を観に行きました、するとです。
 坂田さんが言った通りのお顔立ちの人が舞台でお芝居をしていました、それがとても面白くてです。
 リンキティンク王はこの時もでした。
「ほっほっほ、よいのう」
「そうですね」 
 王子も笑いながら応えました。
「これまで新喜劇は観てきましたが」
「今日は特別じゃな」
「面白いですね」
「それでじゃ」 
 お腹を抱えて笑いつつ応えます。
「わしはこうしてじゃ」
「笑い転げていますね」
「うむ」
 まさにというのです。
「この様にな」
「僕もです、面白くて」
 見れば王子も笑っています、他の皆もです。
「これはです」
「笑いが止まらんな」
「はい、もう腹筋がです」
「鍛えられるわ」
「そうですよね」
「いや、お笑いの街の中でもな」
 寛美さんはというのです。
「とびきりじゃ」
「いいですね」
「うむ、ではな」
「今はですね」
「徹底的に笑わせてもらうぞ」 
 こうしてでした。
 皆で寛美さんのお芝居に笑います、それでお芝居が終わってから劇場を後にしようとするとでした。
 その時にです、寛美さんご自身が一行の前に来て言ってきました。見れば舞台衣装のままのお姿です。
「リンキティンク王さんご一行やな」
「そうじゃが」
「観客席で一番笑っておったからな」
 それでというのです。
「わかったわ」
「そうなのか」
「特にあんたがな」 
 寛美さんはリンキティンク王に笑ってお話しました。
「もう誰よりもや」
「笑っておったか」
「笑う人と聞いてたけど」
 それでもというのです。
「噂以上にや」
「わしは笑っておったか」
「そやったわ、そやからな」
 それでというのです。
「ちょっと話がしたくてな」
「それでか」
「今から楽屋でお話がしたくなってな」
「来てくれたのか」
「そや、ミックスジュース飲みながら話すか」
「あのジュースか」
「わしの好物でな」
 笑顔で言うのでした。
「いつも飲んでるけどな」
「それを飲みながらか」
「お話しよか、今ノムさんも来てるで」
「あのキャッチャーのか」
「あの人も来ててな」
「皆でか」
「ミックスジュースを飲みながらや」 
 そうしつつというのです。
「話をしよか」
「そうしてよいか」
「わしはな、ほなな」
「うむ、そこまで言ってくれるならな」
「こっちやで」
 早速でした。
 リンキティンク王は皆をご自身の楽屋に案内しました、するとそこにはスーツ姿で小さめの目でし下膨れの大柄な人もいました。
 その人はリンキティンク王を見て少し苦笑いになって言いました。
「何や、人が増えて窮屈になるわ」
「あんたいつもそう言うな」
「そうも言いますわ」
 その人は寛美さんに苦笑いのまま言いました。
「わしは昔寛美さんに顔が似てるて言われてましたさかい」
「ほんま似てるしな」
「そうですな、しかしまあしゃあないですわ」
 ここでこうも言ったのでした。
「顔のことは。それに」
「それにやな」
「人が増えても」
 そうなってもというのです。
「まあしゃあないってことで」
「ほなな」
「皆でミックスジュースを飲みながら」
「お話しよな」
「そうしましょか」
 こうお話してでした。
 皆寛美さんが出してくれたミックスジュースを飲んでです。
 お菓子を食べつつお話します、そこでスーツの人は野村克也さんだと名乗りました、そうするとでした。
 ナターシャ達五人は目を輝かせて言いました。
「あの名監督の」
「名キャッチャーで」
「しかもスラッガーだった」
「ID野球の」
「まさかと思いましたが」
「おお、こんな子供等もわし知ってるか」
 野村さんは五人の言葉に笑って応えました。
「わしはずっと月見草やったけどな」
「そうですよね、野村さんは」
「月見草ですよね」
「ご自身がそう言われてますね」
「目立たないって」
「お話にならないって」
「わしはいつもそやろ」
 野村さんはこうも言いました。
「日陰でひっそりや」
「いえいえ、とんでもない」
「僕達も知ってますから」
「偉大な野球人だって」
「明るくて気さくで」
「物凄くいい人とも聞いてます」
「わしの何処がええ人なんや」
 野村さんは五人のお話を否定しました。
「愚痴ってばかりで地味でな」
「違いますよ」
「僕達からしてみたら有名人で」
「ぼやいても実はとてもいい人で」
「優しくて気さくで」
「面倒見のいい人ですよ」
「誤解やな、けどそう思いたいなら思ってええわ」
 野村さんは五人に笑って言いました。
「わしも悪い気はせんしな」
「そうですか、それならです」
「そう思わせてもらいます」
「今もこれからも」
「そうさせてもらいますね」
「是非共」
「実際あんたええ人や」
 寛美さんは野村さんにミックスジュースを飲みながら言いました。
「困ってる人を見捨てんしな」
「いや、そんなことはないですわ」
「いやいや、見てるとな」
 野村さんをというのです。
「ほんまにな」
「困ってる人をですか」
「見捨てんで拾ってな」
 そうしてというのです。
「また活躍させてるやろ」
「再生工場でっか」
「それを見たらな」
 本当にというのです。
「あんたはええ人や」
「そうでっか」
「そやから皆あんたのこと好きなんや」
「まあ周りにいつも人はいてくれてます」
「そやろ、繊細でな」 
 それでというのです。
「気遣いも忘れん」106
「そうした人間で」
「皆わかってるさかいな」
「わしの周りにいてくれてますか」
「そや」
 まさにというのです。
「あんたはそうした人や」
「そうなら嬉しいですわ」
「ほんまな、それで野球好きでな」
 そしてというのです。
「甘いもん好きやな」
「酒はあかんかったので」
 野村さんは笑って応えました。
「外の世界では」
「今は飲めてもやな」
「やっぱり好きなんはです」
 それはというのです。
「ミックスジュースとか」
「甘いもんやな」
「そうです」
 実際にというのです。
「どっちかっていうと」
「そやな」
「この顔なんで酒飲みと思われますが」
「あんたはな」
「実は飲めませんでした」
 外の世界ではそうだったというのです。
「これが」
「それで甘いもんが好きで」
「それで、です」
「今もやな」
「今は酒も飲めますが」
「甘いもんの方が好きやな」
「そうですわ」
 そのミックスジュースを飲みつつ答えました。
「ほんまに」
「そやな」
「いや、野村さんまでおられるなんて」
 ナターシャはまたあらためて言いました。
「この街は凄いですね」
「そういえばこの街にも縁の深い方だったよ」
 カルロスも言います。
「大阪に本拠地があったチームに二十年以上おられて」
「四番でキャッチャーでね」
 ジョージはそのチームでの野村さんのポジションと打順のお話をしました。
「何度もタイトルを取って」
「凄いスラッガーで名リードで」
 神宝はその活躍のお話をしました。
「大活躍だったね」
「監督もされて」
 恵梨香は野村さんのこのことをお話しました。
「優勝もされて」
「ははは、皆よお知ってるな」 
 野村さんは五人のお話に笑って応えました。
「子供やのにな」
「いえ、本当に有名ですから」
「野村さんのことは」
「四番キャッチャーでチームの柱で」
「監督兼任でも頑張られて」
「優勝もされたということは」
「その後色々なチームの監督してや」 
 野村さんは笑ったまま言いました。
「負けまくったけどな」
「いえいえ、四度も優勝されてるじゃないですか」
「それからも」
「ID野球で」
「沢山の選手を育てられて」
「再生工場もあって」
「観てる者は観ておるのじゃよ」
 リンキティンク王もミックスジュースを飲んでいます、その甘さを心から堪能しながら言うのでした。
「あんたのこともな」
「月見草やけどな」
「月見草も奇麗じゃ」
 こう野村さんに言うのでした。
「そしてお前さんは特に奇麗で大きなじゃ」
「そうした月見草かいな」
「そうじゃ、だからな」
 それ故にというのです。
「子供達もじゃ」
「わしを知っててか」
「褒めるのじゃよ」
「そうなんやな」
「わしもそう思うで」
 寛美さんも野村さんに言います。
「人は向日葵だけやなくてな」
「月見草も見ますか」
「それでその月見草が奇麗やったら」
 それならというのです。
「好きになるんや」
「そうですか」
「あんたは選手としても監督としても凄くてや」
 そうしてというのです。
「困ってるモンを見捨てん」
「そうした人間でっか」
「それがわかるからな」
 野村さんという人を見ればというのです。
「好きになるんや」
「そうでっか」
「実際あんたこの街の人気者の一人や」
 そうなっているというのです。
「わしも好きやしな」
「それは何よりです」
「それでオズの国でも野球やってるやろ」
「わしが出来るといいましたら」
「野球やな」
「何といっても」 
 まさにというのです。
「これですさかい」
「それでやってるな」
「今でも」 
 オズの国でもというのです。
「そうしてます」
「ほなこれからもな」
「オズの国でもですか」
「野球をしてな」
 そうしてというのです。
「あんたも楽しんで」
「観る人達もですか」
「楽しませるんや」
「ほなそうしていきます」
「あんたを好きな人達の為にな」
「わしは注目されんと思っていましたが」
「違いますから」
 ナターシャが真面目なお顔で答えました。
「野村さんはです」
「人気があってか」
「皆好きで」
「注目してくれてるか」
「そのお喋りも好きですよ」
 こちらもとです、ナターシャはにこりと笑って答えました。
「ぼやく感じの」
「これもかいな」
「はい」
 そうだというのです。
「私達は皆」
「これがいいんだよね」
「そうだよね」
「野村さんって感じで」
「本当にね」
 五人全員でお話します。
「これがないとね」
「野村さんじゃなくて」
「独特の味があって」
「ああまた言われたなって」
「笑顔で聞けるんですよ」
「悪いことしか言わんがな」
 野村さんは五人に言われてはにかんで応えました。
「ええんかいな」
「いや、一見そうでもね」
 アン王女も言いました。
「貴方の言葉には愛情があるのよ」
「そうなんかいな」
「暖かくてね」
「わし位冷たいモンおらんがな」
「全くよ、貴方は自分でそう言ってもね」
「暖かいか」
「ええ」 
 そうした心の持ち主だというのです。
「本当にね」
「誤解やろ思うけどな」
「目を見ればわかるしね」
 野村さんのそちらをというのです。
「本当によ」
「わしはええ奴か」
「そんな暖かい目をしてるんだから」
「こうした人もいてくれるなんてね」
 カエルマンは目を笑わせてお話しました。
「この街は本当に素晴らしい街だよ」
「邪魔やないか」
「邪魔なんてとんでもないよ」 
 それこそと野村さん自身に言います。
「私から見てもね」
「わしはこの街におってよおてか」
「オズの国にもね」
「相応しいんやな」
「そう思うよ」
「照れ臭いのう」
 野村さんはカエルマンのお話にもはにかんで応えました。
「わしみたいなモンにそう言うてくれてるとはな」
「そうなんだね」
「とてもな、しかし秀吉さんのお花見にも招待されてるし」
「参加するんだね」
「呼ばれるとな」
 それならというのです。
「やっぱりな」
「断わらないね」
「それで皆とな」
 一緒にというのです。
「楽しませてもらうわ」
「そうするんだね」
「そうさせてもらうわ、ほなな」
「お花見の時もだね」
「会おうな」
「わしも楽しみや」
 寛美さんもミックスジュースを飲みつつ言いました。
「お花見は」
「その時もですね」
「そや、これ飲んでな」
 クッキーに答えます。
「そうしてや」
「他のご馳走や飲みものもですね」
「そうするわ、しかし秀吉さんはほんま賑やかでな」
「楽しい人ですね」
「この街の代表にな」 
 それにというのです。
「相応しいわ」
「そうした人ですね」
「そやな、あの人がおってな」
 そうしてというのです。
「この街は余計にええわ」
「元々大阪城におられたんですね」
「外の世界でもな、そしてな」
 そのうえでというのです。
「大阪って街を築いたお人や」
「だからですね」
「今もな」
「大阪城におられて」
「この街の代表や」
「それでそれがですね」
「ほんまにええわ」
 こう言うのでした。
「そやからお花見もな」
「寛美さんもですね」
「参加させてもらうわ」
 こう言ってでした。
 寛美さんはミックスジュースをさらに飲みました、そのうえでお菓子もさらに出してそちらも楽しんでです。
 皆と楽しくお話しました、それで皆は晩ご飯になるとです。
 寛美さんそして野村さんとお別れしますが。
「またな」
「会おうな」
「はいーーお花見の時ーーに」  
 チクタクはお二人に応えました。
「そうーーしましょう」
「その時も楽しみや」
「一緒に飲んで食べてな」
「私はーーしませんーーが」
 チクタクは自分の身体のお話もしました。
「それでーーです」
「そうしよな」
「その時は」
「皆さんのーー笑顔がーーです」
 まさにというのです。
「私のーー栄養ーーですから」
「そうか、ほなな」
「その時の笑顔も見せてもらうで」
「そうさせてーーもらいーーます」
 チクタクは笑顔で応えました、そうしてです。
 皆はお二人と別れてホテルに戻りました、その途中の帰り道で晩ご飯を食べましたがこの時は立って食べる豚骨ラーメンのお店に入ってです。
 そこで豚骨ラーメンを食べますがここでリンキティンク王はまた言いました。
「このラーメンもお花見の時に出るかのう」
「出ますよ」
 店員さんが笑顔で応えてくれました。
「秀吉さんのお願いで」
「それでか」
「大阪の名物はです」
 それこそというのです。
「全部です」
「出るのか」
「そうなんです」
「それはよいのう」
「はい、ですから」
 お店の人はさらにお話しました。
「皆さんもです」
「このラーメンを楽しんでよいのじゃな」
「そして他の名物も」
「それはよいのう、このラーメンもよいが」
 さらにと言うのでした。
「たこ焼きなぞじゃ」
「お花見の時にいいですね」
「そう思うしな」
「外で食べるたこ焼きもいいですよね」
「うむ」
 その通りだとです、リンキティンク王は笑顔で答えました。
「そう思うぞ」
「左様ですね」
「だからな」
 それでというのです。
「お花見の時はじゃ」
「こちらのラーメンにですね」
「他の名物も楽しんでな」
 そうしてというのです。
「たこ焼きもじゃ」
「楽しまれますね」
「そして飲みものもな」
 こちらもというのです。
「是非じゃ」
「楽しまれて」
「満喫するぞ」
「そして催しも観てだね」
 魔法使いがここで言ってきました。
「歌舞伎に浄瑠璃にね」
「落語や漫才に新喜劇にな」
「そうしたものも観て」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのです。
「まさにな」
「そうしたこともだね」
「楽しんでな」
「満喫するね」
「そうするぞ」
 絶対にという返事でした。
「何があってもな」
「それではね」
「しかしじゃ」
 リンキティンク王はこうも言いました。
「この街は何でも親しみやすいのう」
「食べものも娯楽もね」
「そして人もな」
「全てがそうだね」
「この親しみやすさがな」
 それがというのです。
「わしとしてはじゃ」
「いいんだね」
「そうじゃ」
 こう魔法使いに言いました。
「何といってもな」
「私もだよ、庶民的と言えばね」
「そうなるな」
「あらゆるものがね」
「わしは王様であるが堅苦しいことは嫌いじゃ」
 リンキティンク王はご自身の好みのお話もしました。
「何といってもな」
「そうだよね、本当に」
「だから王宮におってもな」
「堅苦しいことはだね」
「せぬ」
 一切というのです。
「儀式もな」
「親しみやすいものだね」
「そして楽しいな」 
 そうしたというのです。
「そんなものにじゃ」
「しているんだね」
「そうじゃ、何でも楽しくてな」
 そうしてというのです。
「親しみやすいな」
「そういうものでないとだね」
「とてもじゃ」
 それこそというのです。
「わしはじゃ」
「好きになれないね」
「そうなのじゃよ」
「僕は最初そんな王様に驚きましたよ」
 王子も皆と一緒にラーメンを食べています、そうして言うのでした。
「こんな王様がおられるんだって」
「ほっほっほ、そうであったな」
「それで驢馬でしたし」
 その時はというのです。
「何かとです」
「あの時のお主は口が悪かったのう」
「悪態ばかりでしたね」
「あの時も懐かしいわ」
 リンキティンク王にしてみればです。
「実にな」
「そう言ってくれますか」
「実際そうじゃしな」
 こうも言うのでした。
「だからな」
「そう言ってくれるならいいですが」
「それでお主が人に戻った時はな」
 この時のこともお話するのでした。
「嬉しかったのう」
「いやあ、あの時はよかったですよ」
「人間に戻れてじゃな」
「心から」
「ほっほっほ、嬉しいと思えればな」
 その時はというのです。
「もうそれでよいのじゃ」
「そうなんですね」
「人はな、そして今もじゃ」
「こうしてですね」
「楽しんでおるからな」
「それでいいですね」
「こうした時は笑ってな」 
 実際に笑いながら言うリンキティンク王でした。
「さらにじゃ」
「笑うことですね」
「人間笑えばな」
 その様にすればというのです。
「笑うだけじゃ」
「幸せになれますね」
「笑うと上機嫌になってな」
「幸せもですね」
「来るからな」 
 だからだというのです。
「笑うことじゃ」
「そういうことですね」
「うむ」
 まさにというのです。
「だからわしはお主と会う前からじゃ」
「ずっとですね」
「笑っておるのじゃ」
「僕が驢馬だった頃から」
「そうじゃ、それでこのラーメンもじゃ」
「笑ってですね」
「食べておるのじゃ、実に美味くてじゃ」 
 その豚骨ラーメンはというのです。
「おかわりをしたい位じゃ」
「ではされますね」
「うむ、昼に食べたラーメンも美味かったが」
「こちらのラーメンもですね」
「美味い、美味いものばかりでじゃ」  
 それでというのです。
「このことからもじゃ」
「笑いが止まらないですか」
「全くじゃ」  
 こうも言うのでした。
「まことにな」
「それではですね」
「お代わりじゃ」
 実際にここで全部食べました、そしてです。
 おかわりもします、それでまた食べますが。
「ここに胡椒にキムチにな」
「大蒜や韮を入れるとね」
 王女が応えます。
「尚更ね」
「美味くなるのう」
「そうなのよね」
「辛いものとな」
「ここのラーメンは合うわね」
「実にな、しかも好きなだけ入れられるからな」
 キムチ等がというのです。
「このこともじゃ」
「いいわよね」
「自分で味を調えられてな」
「私もそう思うわ」
「こうしてじゃ」
 お箸で、でした。
 刻んだ大蒜をラーメンにどっさりと入れてです、リンキティンク王はとても嬉しそうに言いました。
「大蒜を入れてな」
「貴方は食べるのが好きよね」
「大蒜も好きだからのう」
「それでなのね」
「こうする、大蒜は食べると美味くてじゃ」
 そうしてというのです。
「しかも元気が出る」
「いい食べものよね」
「それで好きなのじゃ」
「よく食べるのね」
「そうじゃ、だからな」
「今もよね」
「こうしてじゃ」
 その大蒜と一緒にラーメンの麺を食べつつ言いました。
「食っておる」
「そういうことね」
「そうじゃ、美味いのう」
「美味しいものを食べればね」
「それで笑顔になれたらな」
「いいわね」
「心は誰でも同じじゃ」 
 こうもです、リンキティンク王は言いました。
「笑えればじゃ」
「それでいいわね」
「誰でもな、逆にじゃ」
「笑えないとね」
「それではな」
「残念よね」
「そうじゃ、皆で笑うのじゃ」
 是非にというのでした。
「あらゆることでな」
「そうすることが一番ね」
「そうじゃ、だから国に帰ってもな」
「笑っていくのね」
「この街をお笑いを国にも持ち込んで」
 そうしてというのです。
「これまで以上にじゃ」
「お国を嗤いで包むのね」
「そうするぞ、王の仕事は民を幸せにすることじゃな」
「その通りよ」
 王女もこのことはよくわかっています、この人も何時も自分のお国の人達のことを第一に考えているからです。
「まさにね」
「それで幸せになる為にはな」
「まず笑うことね」
「だからな」
 それ故にというのです。
「この街のお笑いをじゃ」
「お国に持って行くのね」
「全てな、そしてな」
 そのうえでというのです。
「今以上にじゃ」
「お国をお笑いで包んで」
「そこからも幸せにするぞ」
「善政を敷きながら」
「そうするぞ」
 こう言うのでした、そうしてです。
 またラーメンを食べてです、こうも言いました。
「ほっほっほ、やはりじゃ」
「美味しいわねこのラーメンは」
「美味いものを食っても笑顔になるのう」
「じゃあここの美味しいものもかしら」
「わしの国に紹介するぞ」
 王女に言って食べるのでした、リンキティンク王はラーメンを食べる時もずっと笑顔のままで笑っていました。








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