『新オズのリキティンク』




                第七幕  街全体のお花見を

 秀吉さんはこの時四天王寺にいました、そこでお茶会を開いていましたがそこにリンキティンク王達を招いています。
 そしてお菓子を楽しみつつ言うのでした。
「いやはや心地よいのう」
「ここでお茶を飲むこともじゃな」
「うむ、この塔を観ながらじゃ」
 傍にある仏教の五重の塔を観つつ言います、皆お外で敷きものをしてその上に座って和風の傘がさされている中で楽しんでいます。
「飲む茶は絶品じゃ」
「そして菓子もじゃな」
「そうじゃ」
 その通りだというのです。
「まさにな」
「それは何よりじゃな」
「最高じゃ」
「あの、どうもです」 
 ボボ王子が言ってきました。皆それぞれがくつろぎやすい姿勢で座ってそのうえでお茶にお菓子を楽しんでいます。
「秀吉さんはお茶がおすきですね」
「茶道のな」
「信長さんもですが」
「うむ、殿にお仕えしておるとな」
「お茶がですか」
「好きになる、風情に和むものもあってな」
 それでというのです。
「殿の家臣であるとな」
「お茶がお好きになります」
「茶道のな」 
 言いつつそのお茶をごくりと飲みます。
「今では紅茶や中国茶も好きじゃがな」
「確か信長さんはお酒が飲めなくてね」
 カエルマンが言ってきました。
「それで甘いものがお好きで」
「左様、実は殿はな」
「甘党だったね」
「今もな」
 オズに国に来られてからもというのです。
「そうであるな」
「そうだね」
「殿は今では洋菓子もお好きでな」
 こちらもというのです。
「ケーキなぞもじゃ」
「召し上がられるんだ」
「左様、わしも好きであるぞ」
 秀吉さんは笑ってお話しました。
「大阪の食べものもでな」
「甘いお菓子もだね」
「そうなのじゃ」
「成程ね」
「あの、何かです」
 クッキーも言ってきました。
「秀吉さんは美食家だったそうですが」
「美味いものは好きじゃ」
「やっぱりそうですね」
「しかしな、一番好きなのは麦飯でじゃ」
 質素と言われるこのお食事でというのです。
「母上かねねが漬けてくれた漬けものじゃ」
「いつもこう言うんだよこの人」
 一緒にいるねねさんが笑って言ってきます。
「一番はね」
「麦飯とですか」
「お義母さんかあたしが漬けた漬けものだってね」
「そう言われるんですね」
「この二つが一番落ち着くわ」
 こうも言う秀吉さんでした。
「全く以てな」
「そうなんですね」
「色々食って飲んでな」
 秀吉さんはまた言いました。
「やはり最後はそれじゃ」
「ううん、それはわかるね」
 魔法使いはお二人のお話を聞いて頷きました。そうしてお茶菓子である宝石みたいに奇麗な和菓子を食べます。
「やっぱり落ち着く食べものってあるからね」
「そうじゃな」
「うん、秀吉さんにとってはね」
「その二つでな」
「一番美味しく感じるんだね」
「そういうことじゃ、だから明日の朝はじゃ」 
 秀吉さんは笑ってお話しました。
「そのじゃ」
「麦を入れたご飯とだね」
「母上が漬けてくれた漬けものをじゃ」
 この二つをというのです。
「食するぞ」
「そうするね」
「一番の馳走を楽しむぞ」
 こうも言うのでした。
「まことにな」
「その人それぞれで一番好きなものって違うのよね」
 アン王女はこう言いました。
「やっぱりね」
「お主は林檎が好きであったな」
「もう大好きで」
 王女も秀吉さんに答えます。
「それでね」
「そのうえでじゃな」
「林檎そのものか林檎を使ったお料理ならね」
「何でもじゃな」
「大好きよ」
「お主はそうであるな」
「そうよ、他の食べものも好きだけれど」
 それでもというのです。
「林檎かね」
「それを使ったものをじゃな」
「食べるのがね」
「一番よいのう」
「そうなのよ」
「そうじゃな、誰でも一番好きなものはあってな」
 それでというのです。
「わしはその二つということじゃ」
「成程ね」
「私はーーです」
 食べる必要のないチクタクはこう言いました。
「皆さんのーー笑顔がーーです」
「飲んで食ってじゃな」
「そうなるーー笑顔がーーです」
 まさにというのです。
「好きーーです」
「成程のう」
「それでもーーいいですーーね」
「構わん、それぞれの身体の仕組みがあるからな」 
 だからだというのです。
「オズの国ではな」
「だからーーですーーか」
「左様、笑顔が一番のご馳走でもな」
 そうであってもというのです。
「別にじゃ」
「構わないーーですーーか」
「特にな」
 こうチクタクに言うのでした、そしてです。
 秀吉さんは自分からお茶を煎れて皆に振舞います、それでナターシャ達もお茶を飲みますがここで、です。
 五人で茶道のお茶、お抹茶を飲んで言いました。
「こうして飲んでいると」
「最初は物凄く苦くて」
「とても飲めないと思ったけれど」
「今ではね」
「楽しんで飲めるわ」
「そうであろう、それがお茶なのじゃ」
 秀吉さんは五人にも言いました。
「最初は苦くてな」
「飲めないと思っていましても」
 なたーしゃが言いました。
「飲める様になりますね」
「むしろ美味しいと思えますね」
 ジョージも言います。
「飲んでいると」
「飲めないと思っていても」
 それでもと言う神宝でした。
「飲んでいるうちに変わりますね」
「美味しく感じられて」
 カルロスは飲みつつ言いました。
「好きになりますね」
「お菓子とも合っていて」
 恵梨香はお菓子を見ています。
「いいですよね」
「うむ、お茶だけでもよいが」 
 秀吉さんもお菓子を食べています、飾らない物腰で楽しく食べていますがそれが実に絵になっています。
「お菓子もあるとな」
「尚更ですよね」
「いいですよね」
「本当に」
「最高の組み合わせですね」
「そうですよね」
「そうじゃ、だからな」 
 それでというのです。
「皆でこの組み合わせを楽しむぞ」
「わかりました」
「そうしていきましょう」
「今は」
「お茶を飲んで」
「お菓子も食べましょう」
「是非共のう」
 秀吉さんは人懐っこい笑顔で五人に言ってです。
 ご自身が率先してお茶を楽しみます、そこにふらりとです。
 織田作さんが来ました、リンキティンク王は着流しにマントに帽子という格好のその人を見て声をかけました。
「あんたもどうじゃ」
「ああ、茶道のお茶やな」
「うむ、飲まんか」
「淹れるぞ」 
 秀吉さんは茶器を出して言ってきました。
「お主の分ものう」
「実はさっきコーヒー飲んできてん」
 織田作さんは少し申し訳なさそうに答えました。
「そやからな」
「喉は渇いておらんか」
「そこでケーキも食べたしな」
「お菓子もか」
「そやからな」
「そうか、それではな」
「また今度な」
 こうリンキティンク王に言うのでした。
「ご一緒させてもらうわ」
「ではのう」
「わしは喫茶店が好きで」
「そうなのか」
「小説書くこともあるわ」 
 喫茶店においてというのです。
「何かあると入って」
「コーヒーを飲むか」
「そうしてるねん」
「お主はコーヒー派か」
「外の世界におった時からな」
「成程のう」
「そしてな」
 さらに言うのでした。
「くつろいでもおるわ」
「日本人でもお茶派ではないか」
「いや、当然お茶も飲むけどな」
 それでもというのです。
「外に出るとな」
「喫茶店に入ってか」
「コーヒーを飲むのがな」
 これがというのです。
「わしやな」
「外の世界におった時からで」
「今もな」
「成程のう」
「コーヒーもええやろ」
 織田作さんは笑ってこうも言いました。
「そやろ」
「それはのう」
 リンキティンク王も否定しません。
「わしはクリープにお砂糖をたっぷりと入れてじゃ」
「そのうえでやな」
「飲むのがじゃ」
 これがというのです。
「まことにじゃ」
「好きなんやな」
「そうじゃ」 
 まことにというのです。
「わしはな」
「王様は甘いものが好きですからね」
 王子も言ってきました。
「飲むものもです」
「コーヒーもやな」
「そうして飲みます」
「成程な、わしも外の世界ではお酒苦手やったさかい」
「そうだったんですか」
「殆どあかんかった」
 そうだったとです、織田作さんは王子にお話しました。
「それで甘いもんが好きでな」
「甘いものと一緒にですね」
「コーヒーも飲んでな」
 そうしてというのです。
「オズの国でもや」
「コーヒーを飲まれていますか」
「そや」
 まさにというのです。
「そうしてるねん」
「甘いものと一緒に」
「甘いもんが好きやから善哉も食べるし」
「あの夫婦善哉も」
「特にかみさんと一緒に行ってな」
 そうしてとです、織田作さんは笑ってお話しました。
「あの善哉食べるのが好きや」
「そうですか」
「もう大好きや」 
 それこそというのです。
「かみさんと一緒やと特にな」
「それで織田作さんは今もですか」
「オズの国でも奥さんと一緒ですか」
「二人で暮らしておられますか」
「そうされてるんですか」
「今も」
「そや、外の世界では先立たれたけど」
 織田作さんはナターシャ達五人にこのことは寂しく答えました。
「けどこっちやとな」
「ご一緒ですか」
「またお二人になれて」
「それで、ですか」
「夫婦仲良くですか」
「暮らしておられますか」
「そうしてるねん、二人で色々食べ歩きもして」
 そうしてというのです。
「小説書く時も今はパソコンで書いてるけどな」
「それでもですか」
「手伝ってもらったりしていますか」
「パソコンで執筆されても」
「それでもですね」
「そうしてもらってるんですね」
「そや、かみさんが一緒やと」
 本当にというのです。
「わしは最高に幸せや」
「オズの国におられても」
「それでもですか」
「まず奥さんとお二人なら」
「それならですか」
「幸せですか」
「その時点でな、それでこの街におられてな」
 そうしてというのです。
「美味しいもんが食べられるなら」
「もうそれならですか」
「最高を超えてですか」
「それで幸せですか」
「そうなんですか」
「織田作さんとしては」
「そや、こんなええことないわ」
 本当にというのです。
「わしにとって」
「最高を超えた幸せですか」
「オズの国にはそうしたものもあるんですね」
「そして織田作さんがですね」
「その中にあるんですね」
「実際に」
「そや、ずっと二人でここにいて」
 そうしてというのです。
「コーヒーも飲んで他の美味いもんもな」
「楽しまれて」
「そうして過ごされて」
「そしてですか」
「毎日ですね」
「最高を超えてですね」
「幸せや、ほなまたな」
 ナターシャ達五人に笑顔で応えてでした。
 織田作さんは飄々とした感じでその場を後にしました、秀吉さんはその織田作さんを見送ってからまたお茶を飲んで言いました。
「あの者もおしどり夫婦で何よりじゃ」
「何言ってるんだい、あたし達はよく喧嘩するじゃないか」
 ねねさんが笑って言ってきました。
「あんたが別嬪さん見るとすぐに目がいってね」
「それは普通じゃろう」
「あんた外の世界にいる時からじゃない」
「奇麗なおなごを見るとか」
「すぐに目が言ってだよ」 
 笑いながら言うのでした。
「鼻の下伸ばしてね」
「今はしてないじゃろ」
「いや、してるじゃないか」
「そうか?」
「この前野球チームの娘さん達観てたね」
「チアガールのか」
「それでだらしなく鼻の下伸ばして」
 そうしてというのです。
「でれでれして」
「いや、しかしじゃ」
「それでもかい」
「いつも言っておろう、わしは一番はじゃ」
「あたしかい?」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「それは絶対に変わらん」
「そうなんだね」
「だからじゃ」
 それでというのです。
「わしはじゃ」
「おしどり夫婦ってかい」
「自分で言うのじゃ」
「そういうことだね」
「だから今も一緒であろう」
 夫婦でいるというのです。
「そうであろう」
「そう言われるとね」
 ねねさんも否定しませんでした。
「そうだね」
「もう天下人でもないしな」
「この街のお殿様でね」
「ただそれだけでじゃ」
 それでというのです。
「何も偉いことはないからのう」
「そうだよね」
「殿様といってもじゃ」
 それでもというのです。
「オズの国ではじゃ」
「偉くないからね」
「何といってもな」
 それこそというのです。
「オズの国の主はじゃ」
「オズマ姫だからね」
「言うなら天下人はじゃ」
「オズマ姫でね」
「わしは天か人ではない」
「それじゃあね」
「もう堅苦しいことは抜きでじゃ」
 それでというのです。
「殿や権六達とも楽しく過ごしてな」
「この街でもね」
「そうしてな」
 そうしてというのです。
「楽しむだけじゃ」
「あたしとかい」
「二人でな、そしてな」
「これからもだね」
「ずっといようぞ」 
 こう言うのでした。
「この街でな」
「全く、そう言われるとだよ」
 ねねさんは秀吉さんに笑って応えました。
「あたしも頷くしかないじゃないか」
「ははは、そうか」
「全くお前さんときたら」
 秀吉さんにこうも言うのでした。
「人たらしなんだから」
「女たらしだけではないか」
「誰でもだね」
「それでそう言うか」
「人たらしだよ」 
 こうも言うのでした。
「本当にね」
「昔から言われるのう」
「そうだね、外の世界にいた時から」
「人たらしとな」
「言われてるね」
「うむ、そして今もであるな」
 オズの国に来てもというのです。
「わしは人たらしであるな」
「そうだよ、というかね」
 ねねさんはさらに言いました。
「オズの国に来たらもっとね」
「外の世界にいた時よりもか」
「お前さん人懐っこくて気さくになってね」 
 それでというのです。
「余計にだよ」
「人たらしになっておるか」
「よさがどんどん出てね」 
 秀吉さん本来のというのです。
「あたしも今のお前さんの方が好きだよ」
「それは何よりじゃ、しかしな」
「しかし?」
「それを言うとわしもじゃ」
 秀吉さんはねねさんに笑って応えました。
「今のねねの方がじゃ」
「好きなのかい?」
「うむ、ずっと一緒にいてもな」
「いいんだね」
「そうじゃ」
 こう言うのでした。
「まことにな」
「そこでそう言うのがだよ」
「人たらしでか」
「外の世界にいた時よりもだよ」
「そうなっておるか」
「そうだよ」
「わしはよくなっておるか、やはりな」 
 秀吉さんはあらためて言いました。
「人は努力してな」
「そうしてだね」
「少しずつでもな」 
 それでもというのです。
「よくならんとな」
「駄目だね」
「全くじゃ」
 こう言うのでした。
「それでよくなっておるのなら」
「いいね」
「うむ、そしてな」
 秀吉さんはこうも言いました。
「人にはな」
「笑顔になってもらうだね」
「それがじゃ」
 まさにというのでした。
「人としてよいことであるな」
「いいことをしてね」
「そしてな、この街はお笑いの街でな」
「人はそこで笑うことが多いね」
「しかしな」
 それと共にというのでした。
「わしはそっちは専門ではない」
「いや、お前さん落語するじゃない」
「専門ではない、餅は餅屋でな」
 それでというのです。
「漫才もじゃ」
「漫才師の人達の方がかい」
「左様、実際にここに来たな」
 外の世界からというのです。
「漫才師の者達の方が面白いであろう」
「お前さんの落語よりも」
「コントでも新喜劇でもな」
 そういったものでもというのです。
「わしとお主で夫婦漫才をやってもな」
「それなりに受けてるけれどね」
「時々やって披露してもな」
「やっぱりだね」
「プロの者達には負けるわ」
「あの人達はそれがお仕事だし」
「そうじゃ、しかしわしはわしで人を笑わせることが出来る」
 秀吉さんはねねさんにあらためて言いました。
「だからな」
「お前さんのやり方でだね」
「人を笑わせよう、笑わぬならな」
 それならというのです、秀吉さんはここで和菓子を食べてその味を楽しんでからねねさんに言うのでした。
「笑わせてやろうじゃ」
「不如帰だね」
「この場合は人であるがな」
「それがお前さんだね」
「実は殿もじゃ」
 信長さんもというのです。
「鳴かぬならであるな」
「そうだね、殿様はね」
 ねねさんもその通りだと頷きます。
「そうした方だね」
「そうであるな」
「全然物騒じゃなくてね」
「不如帰が鳴かなかったら」
「むしろわし以上にじゃ」
「鳴かせてやろうだね」
「そして徳川殿もな」
 この人達もというのです。
「そうであるな」
「そうだね、どの人も」
「うむ、それでな」
「人もだね」
「笑わせてやろうとな」
 その様にというのです。
「なるわ」
「そうだね」
「ではどうして笑わせるか」
 秀吉さんは楽しそうに述べました。
「丁度花見をやるつもりであるし」
「それでだね」
「皆をな」
 是非にと言うのでした。
「そうしてみせよう」
「それはいいね」
「うむ、では花見の用意じゃ」
「おお、それはよいのう」
 お花見と聞いてです、リンキティンク王は笑顔で言いました。
「桜のじゃな」
「うむ、そうじゃ」
「わしは桜も好きだからな」
「そちらもか」
「うむ、楽しみじゃ」
「王様はそこでもですね」
 ボボ王子はリンキティンク王に笑顔で応えました。
「飲んで食べて」
「そして歌って踊るぞ」
「そうですね」
「それが楽しくてな」 
 その為にというのです。
「そうせずにじゃ」
「いられないですね」
「花見の時もな」
「お花見は今もしているけれど」
 カエルマンは舞う桜の花びら達を見て言います。
「何時してもいいね」
「そうですよね」
 クッキーはカエルマンのその言葉に頷きました。
「私も好きです」
「色々なお花でも楽しめるけれど」
「桜はまた独特ですね」
「そのよさがあるね」
「本当に」
「桜がーーありますーーと」 
 チクタクはこう言いました。
「それだけでーー違いーーますーーね」
「そうよね」
 アン王女はチクタクの言葉に頷きました。
「奇麗でそれでいて穏やかで」
「見ていてーー和んで」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「華やかでね」
「素晴らしいーーです」
「最高のお花の一つよ」
「アメリカにいた時はあまり馴染みのないお花だったけれど」
 魔法使いはこう言いました。
「オズの国に来てね」
「そうしてであるな」
「日系人の人が増えてね」
「それと共に桜も増えてな」
「お花見も楽しめる様になったよ」
 こうリンキティンク王にお話しました。
「そうなったよ」
「そうであるな」
「それがね」
 さらに言うのでした。
「オズの国の変化の中でもね」
「いいのう」
「本当にね」
「どんなお花見かしら」
 ナターシャは四天王寺の中の桜達を見つつ思いました。
「一体」
「この街だとここにも大阪城にも咲いてるけれどね」
 神宝はナターシャに応えました。
「どんなのかな」
「住吉大社でもあったけれどね」
 カルロスはこちらの桜を思い出しました。
「何処かな」
「この街も桜の名所多いけれど」
 それでもと言うジョージでした。
「果たして何処かな」
「あっ、秀吉さんは大々的なお花見されたことあるから」
 恵梨香は秀吉さんが外の世界にいた時のことを思い出しました。
「そちらかしら」
「それじゃ」
 秀吉さんは笑顔で応えました。
「まさにな」
「そうなんですか」
「あのお花見ですか」
「確か三千本ですね」
「それだけの桜を集めて」
「それで沢山の人達と楽しんだ」
「そのお花見をな」
 それをというのです。
「催してじゃ」
「皆で笑う」
「そうなるんですね」
「沢山の桜の木を観て」
「飲んで食べて」
「歌って踊って」
「そうじゃ、美味いものもふんだんに用意してな」
 そのうえでというのです。
「皆を笑顔にしてみせるぞ」
「ほっほっほ、まさに笑わせてやろうじゃな」
 リンキティンク王は秀吉さんの今のお言葉にも笑顔になりました。
「これが」
「うむ、そうじゃ」 
 秀吉さんもその通りだと答えます。
「わしはそれじゃ、人を笑わせることがな」
「好きなのじゃな」
「大好きじゃ、それもじゃ」
 秀吉さんはさらに言いました。
「全力でじゃ」
「笑わせるな」
「うむ」
 その通りだというのです。
「わしはな」
「そうであるな」
「だから楽しみにしておるのじゃ」
 そのお花見をというのです。
「よいな」
「それではのう」
「そしてな」
 秀吉さんはさらに言いました。
「お主の歌と踊りをじゃ」
「観たいか」
「うむ」
 そうだというのです。
「その時もな」
「わしは何かあればすぐに歌って踊っておるが」
「花見の時もな」
「するぞ、絶対にな」
「ではじゃ」
 それならと言うのでした。
「わしは見させてもらうぞ」
「左様か、では見るぞ」
「それではのう、あと歌舞伎や浄瑠璃もな」
「観るか」
「うむ、そうした芸能も大好きであるからな」 
 それ故にというのです。
「是非な」
「楽しむか」
「そうするぞ」
「ではな」
「当然漫才も落語もな」
「催すか」
「新喜劇もな」
 こちらもというのです。
「そうするぞ」
「そちらでも笑うか」
「人は笑えばな」
「うむ、それだけでな」
「幸せになるな」
「全くじゃな」
 リンキティンク王もそうだと答えます。
「どんな時でもじゃ」
「まず笑うとな」
「幸せになれるわ」
「その通りじゃ、外の世界では色々あったが」
 それでもとです、秀吉さんは言いました。
「そうした時も笑うとな」
「幸せになったか」
「そしてオズの国ではいつも笑っておるからな」
「そのことでもよいな」
「うむ、何はともあれじゃ」
「まず笑うことじゃな」
「笑う門には福来るじゃ」 
 秀吉さんは笑ってこうも言いました。
「やはりな」
「それに尽きるのう」
「うむ、では皆でじゃ」
「お花見の時はじゃな」
「心から笑おうぞ」
 今の時点で満面の笑顔で言う秀吉さんでした、そうしたお話を四天王寺でして皆はこの日の夜はでした。
 蟹を食べました、その蟹はといいますと。
 巨大な動く蟹の看板のお店です、そこでです。 
 蟹を食べますがナターシャ達五人は食べつつ言いました。
「蟹も食べられるなんてね」
「いい街だよね」
「何かと美味しいものがあって」
「蟹もあるなんて」
「凄くいいよ」
「全くじゃ、わしは蟹も好きでしゃ」
 リンキティンク王も食べながら言います。
「こうして食べられるだけでもな」
「嬉しいですか」
「やっぱりそうですか」
「蟹もお好きで」
「それでなんですね」
「幸せになれますか」
「そして笑顔にもなれる」
 こうも言うのでした。
「この様にな」
「実際にそうですね」
「王様今笑顔ですよ」
「とても嬉しそうです」
「美味しいものを召し上がられて」
「そうなっています」
「そうであるな、わしだけが食べてもじゃ」
 その蟹をというのです。
「一人だけ笑うが」
「こうしてですね」
「皆で食べるとですね」
「皆が笑顔になる」
「だから余計にいいですね」
「そうですよね」
「その通りじゃ、だからな」
 それでというのです。
「皆で食べような」
「そうしましょう」
「今夜は蟹をそうしましょう」
「是非そうしましょう」
「そして笑顔になりましょう」
「そうなりましょう」
「この様にな、それでじゃが」
 ここで、でした。リンキティンク王は。
 隣の席にいる西鶴さんに気付いて言いました。
「西鶴さんもおるな」
「あっ、こっちに来てたんか」
 西鶴さんは言われて気付きました。
「それで蟹食べてるんか」
「そうじゃ、今宵はな」
「そうなんやな」
「いや、蟹美味いやろ」
「滅茶苦茶美味いのう」
「そやろ、蟹もこの街の名物でな」 
 それでというのです。
「わしもや」
「こうしてじゃな」
「時々来てな」
 そうしてというのです。
「食べてるんや」
「そうなのじゃな」
「そうや、それで美味いもんを食べたことを本にもや」
 そちらにもというのです。
「最近は書いてるんや」
「そうなのか」
「男がどうとかおなごがどうとか」
「そうした本を書いてか」
「こっちは昔から書いててな」
 そうしてというのです。
「今はや」
「食いもののこともか」
「書いてるわ、この街美味いもんめっちゃあるし」
 それでというのです。
「どんどんや」
「書いてるか」
「そうしてるわ」
 こう言うのでした。
「ほんまにな」
「その本読みたいのう」
「本屋行ったらあるで」
 西鶴さんは気さくに笑って答えました。
「わしの書いた本もな」
「あってか」
「それでな、織田作さんの本もあれば」
「私の本もあるわ」
 見れば西鶴さんと向かい合って座っている人がいました、眼鏡をかけていて真ん中で分けた白髪が印象的です。
「有り難いことにな」
「そういうお前さんは誰じゃ」
「司馬遼太郎や」
 リンキティンク王に笑って答えました。
「よろしゅうな」
「お前さんも外の世界から来たのじゃな」
「そや、大阪に生まれて生きてきて」 
 そうしてというのです。
「ずっと大阪が好きでな」
「今はこの街におってか」
「暮らしてるんや」
「そうなのじゃな」
「今も歴史を書いて」
 そうしてというのです。
「オズの国のあちこちを歩いてな」
「そうしてか」
「その旅のこともな」
 このこともというのです。
「書いてるで」
「そうなのか」
「外の世界におる間は基本大阪におった」
「大阪が好きだったのじゃな」
「そやったからな」
 それでというのです。
「ほんまな」
「ずっとか」
「世界のあちこちを旅もしたけど」
 それと共にというのです。
「家はや」
「大阪か」
「そこから離れんかった」
「そうなのか」
「あの、東京は」
 ナターシャが言ってきました。
「行かれることは」
「あの街か」
「はい、住まれたことは」
「いや、もうな」
「ずっと大阪でしたか」
「わしは大阪が好きでな」
 こうナターシャにお話します。
「それでや」
「東京にはか」
「正直住むことはな」
「なかったですか」
「何度も行ったことはあるけど」 
 それでもというのです。
「やっぱり住むんやったら」
「大阪でしたか」
「そや」
 笑顔での返事でした。
「他はないわ」
「そこまで大阪がお好きで」
「ずっとおってな」
「今はこの街で、ですか」
「楽しく暮らしてるわ、ただな」
「ただ?」
「今も歴史小説を書いてるけど」
 それでもとです、司馬さんはナターシャにお話しました。
「オズの国の歴史になってな」
「オズの国の雰囲気のですか」
「そうした作品になってるわ」
「今はそうなんですね」
「外の世界におった時と作風がな」
 これがというのです。
「随分変わったかもな」
「同じ歴史小説でもですね」
「こっちは戦争とかないさかいな」
 だからだというのです。
「僕の作品は戦争もよお出たけど」
「それがなくて」
「平和でのどかでそれでいて」
「楽しいですね」
「そや、そうした作品になってるわ」
 こうお話するのでした。
「これがな」
「世界が違うと同じ歴史小説でもですね」
「作風が変わるわ」
「そうしたものなんですね」
「そや、けど今もええわ」
 司馬さんは蟹を食べつつ明るく言いました。
「こうした歴史小説あるんや」
「戦争がなくて明るく楽しい」
「そうしたな、秀吉さん達ともよお会うし」
「そうしたことでもですね」
「ええわ、この国は」
「ほんまや、こんなええ国は他には一つしかないわ」 
 西鶴さんは蟹鍋に舌鼓を打ちつつ言いました。
「大坂以外にな」
「大坂と同じ位ええですな」
「ほんまにな」 
 司馬さんに笑って応えます。
「もうずっとな」
「ここにおられるさかい」
「わし等最高に幸せや」
「それはよいことじゃ、では共に楽しもうぞ」
 リンキティンク王もそれならと応えました。
「存分にな」
「そうしてこな」
「皆でのう」
 司馬さんに明るく応えてでした。
 皆で楽しく飲んで食べました、この街は蟹料理も最高でした。








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