『新オズのリキティンク』




                第三幕  通天閣と大阪城

 リンキティンク王は皆を周りに色々なお店がある鉄筋とガラスの塔に案内しました、そうしてです。
 そのうえで、です。皆に下に広がる街並みを観ながらお話しました。
「この塔もよいであろう」
「通天閣ーーですーーね」
 チクタクが応えました。
「このーー塔ーーは」
「うむ、外の世界にもあるそうじゃが」
「オズの国ーーにもーーですーーね」
「この通りあってな」
 そうしてというのです。
「そしてじゃ」
「そのうえでーーですーーか」
「景色を楽しめて」
「中のお店もーーですーーね」
「楽しめる、そうなっておる」
「ここもいいね」
 魔法使いは街並みを眺めつつ笑顔で言いました。
「高いだけでなく親しみやすい場所だね」
「そうであろう」
「うん、リンキティンク王がお気に入りになるのもね」
 このこともというのです。
「当然だよ」
「そうであろう」
「ここの下にも美味しいお店が一杯あるんですよね」 
 ボボ王子はにこりと笑ってお話しました。
「串カツもそうで」
「いや、この街本当に串カツ好きだね」
 カエルマンは王子のお話に思わず笑って言いました。
「何かと」
「名物でしかも美味しいからね」
「だからだね」
「串カツのお店も多いよ」
 実際にというのです。
「こちらはね」
「そういうことだね」
「牛肉や豚肉や鶏肉だけじゃなくて」
「魚介類やお野菜もね」
 こういったものもというのです。
「揚げるよ」
「それが串カツだね」
「そうなんだ」
「その串カツのお店もあって」
 クッキーは笑顔でお話しました。
「お好み焼きのお店もありますね」
「ほっほっほ、その通りじゃ」
 笑顔で、です。リンキティンク王はクッキーに答えました。
「この街にはな」
「それも沢山」
「人も多いからのう」
「お店も沢山必要ですね」
「駆使奴もお好み焼きもな」
 どちらを出すお店もというのです。
「そうじゃ」
「そういうことですね」
「そうじゃ、ではな」
「通天閣の後はですね」
「お好み焼きじゃ」
 笑顔でこう言ってでした。
 リンキティンク王は王様を通天閣の後はお好み焼き屋さんに紹介しました、そうして和風でテーブルに鉄板があるお店で、です。
 お好み焼きやモダン焼きを焼いて焼きそばも注文して食べます、アン王女はここでアルコールは入っていませんが酔えるオズの国の子供ヨビールを飲んで、です。
 そうしてです、笑顔で言いました。
「いやあ、お好み焼きとね」
「ビールは合うのう」
「串カツもだけれど」
「お好み焼きもじゃな」
「ビールによく合っていて」
 大きなジョッキに入ったそれを飲みつつ言います。
「それでね」
「よく飲めるのう」
「よく食べてね」
「わしもじゃ、お好み焼きにはじゃ」
 リンキティンク王もビールを飲んでいます、とても美味しそうに。
「ビールじゃよ」
「本当にそうね」
「この街にいるとどうしても」
 ボボ王子もビールを飲みながら言います。
「ビールをよく飲みますね」
「こうしたものに合うからのう」
「はい、ですから」
 リンキティンク王に笑顔で応えます。
「そうなりますね」
「全くじゃ」
「はい、それは今もで」
「それでじゃ」
 まさにというのです。
「わしもじゃ」
「ビールもですね」
「楽しんでおるぞ」
「そうですね」
「あの、オズの国なので」
 ここで言ってきたのはナターシャでした。
「私達もビールを飲めますね」
「子供が飲めるビールがあるなんて」
 恵梨香も飲んでいます、五人全員がそうしています。
「流石オズの国ですね」
「お伽の国なので」
 カルロスは五人の中で一番美味しそうに飲んでいます。
「こうしたものもあるんですね」
「科学と魔法が一緒にあるから」
 そうした世界だからとです、神宝は言いました。
「こうしたものもあるんですね」
「酔ってるけれどアルコールがなくて」
 ジョージはこのことをお話しました。
「時間が経てば頭が痛くなることなく酔いが醒めますね」
「そうだよ、ただ普通のビールを飲むとね」
 魔法使いもビールを飲んでいます、そのうえで五人にお話します。
「飲み過ぎるとね」
「二日酔いですか」
「それになりますか」
「大人の人がよくなりますけれど」
「飲み過ぎると」
「そうなりますか」
「うん、そうなるよ」
 こうお話するのでした。
「やっぱりね」
「あれは苦手じゃ」
 リンキティンク王は辛そうに言ってきました。
「わしもな」
「王様はそうですか」
「うむ、酔うのは好きじゃが」
 こうナターシャにお話します。
「しかしな」
「それでもですか」
「うむ、頭が痛くなってな」
 そうしてというのです。
「身体が辛くなることはな」
「駄目ですか」
「大の苦手じゃ」
 そうだというのです。
「わしはな」
「そうなんですね」
「うむ、だからな」
「子供用のビールをですか」
「いつも飲んでおる」
 そうしているというのです。
「わしはな」
「そうなんですね」
「そしてな」
 そのうえでというのです。
「わしはじゃ」
「楽しまれていますか」
「そうなのじゃよ」
 そのビールを飲みながら笑顔でお話します。
「わしはな」
「そうですか」
「そしてな」
 さらにお話します。
「他のお酒も飲むぞ」
「どのお酒かしら」
 アン王女はお好み焼きを食べつつ尋ねました、食べているのは海老玉でそちらも心から楽しんでいます。
「それで」
「何でもじゃ」
「あら、そうなの」
「ワインも飲むしウイスキーもな」
 このお酒もというのです。
「ライチ酒にバーボンもな」
「飲むのね」
「そして日本酒もな」
 こちらのお酒もというのです。
「好きでな」
「よく飲むの」
「子供用のな」
 アルコールが入っていないけれど酔えるそれをというのです。
「勿論シードルもじゃ」
「飲んでいるの」
「うむ、そのお酒もじゃ」
「あれはいいよね」
 シードルと聞いてです、アン王女は笑顔で応えました。
「私の国名産はね」
「林檎じゃな」
「シードルは林檎から作るから」 
 それでというのです。
「よく飲むし」
「シードルが好きだとか」
「嬉しいわ」
「そうなのじゃな」
「モジャボロさんも好きだけれど」
 林檎が大好きなこの人もというのです。
「私もね」
「シードルは好きでか」
「国の名産でもあるの」
 そうだというのです。
「だから飲む機会があったら」
「その時はか」
「一緒にね」
「うむ、そうしようぞ」
「それじゃあね」
 笑顔でこうしたお話をしてです。
 リンキティンク王は焼きそばも食べて言いました。
「お好み焼きもよいが」
「焼きそばもいいですよね」
「美味しいですよね」
「それじゃあですね」
「お好み焼きやモダン焼きも食べて」
「ビールも飲んで」
「こちらも食べるぞ、ソースのこの味がじゃ」
 これがというのです。
「またよいのう」
「そうですよね」
「お好み焼きにもそうですが」
「マヨネーズもかけて」
「あと紅生姜や青海苔もですね」
「鰹節も欠かせないです」
「そうして食べてな」 
 そのうえでというのです。
「楽しめるのう」
「そうですよね」
「焼きそばにしても」
「それじゃあですね」
「今もですね」
「食べますね」
「そうしようぞ」
 その焼きそばを笑顔で食べつつ言います、そうしてこの日も美味しいものを心から楽しんで、でした。
 その後で、です。皆でホテルに戻ってお風呂に入って歯を磨いて寝ました。翌朝皆起きるとすぐに朝ご飯を食べましたが。
 そのすぐ後で、です。着物を着たお侍さんが来て言ってきました。
「お城から来ました」
「大阪城からか」
「はい、太閤殿下がです」
 この人がというのです。
「今日是非お城に来て欲しいとです」
「わし等がか」
「皆さんを。皆さんがこの街に来ておられるとお聞きしまして」
 太閤さん即ち豊臣秀吉さんがというのです。
「それで、です」
「わし等をか」
「お招きしたいとのことです」
「ううむ、わし等からお邪魔するつもりであったが」
「そうだったのですか」
「その前にか」
「そうなりますね」
 お侍さんはリンキティンク王に答えました。
「この度は」
「そうか、ではな」
「この度は」
「うむ、是非な」
「来て頂けますね」
「そうさせてもらう」
 こうお話してでした。
 皆この日はホテルを出るとすぐに大阪城を訪問しました、青緑の瓦の五層で七階建ての天守閣があってです。
 そこに行くとです、黄金色に輝く着物を着たお猿さんに似たお顔の剽軽そうな顔相の小柄な男の人が出て来て笑顔で言ってきました。
「暫く振りの者もおるのう」
「信長さんとお会いした時でしたね」
「おられましたね」
「豊臣秀吉さんですね」
「暫く振りです」
「お元気そうですね」
「はっはっは、この通りじゃ」
 気さくに笑ってです、秀吉さんはナターシャ達五人に応えました。
「わしは元気じゃよ」
「それは何よりです」
「この街におられると聞いてましたけれど」
「大阪城におられるんですね」
「そしてこのお城に住んでおられるんですね」
「そうなんですね」
「そうじゃ」 
 まさにというのです。
「わしはのう」
「それでこの度はだね」 
 魔法使いはその人秀吉さんに笑顔で尋ねました。
「私達をだね」
「招待させてもらったのじゃ」
「そうなんだね」
「おのおの方がこの街に来ていると聞いてな」
 そうしてというのです。
「招かせてもらったのじゃ」
「そうなんだね」
「うむ、それでわしもな」
 秀吉さんは笑顔でさらに言います。
「今はな」
「オズの国でだね」
「楽しく暮らしておる」
「そうだね」
「殿それにな」
「同じく織田家に仕えていた人達と一緒に」
「そうじゃ、外の世界では仲違いもしたが」
 それでもというのです。
「今はな」
「違ってだね」
「仲直りをしてな」
 そうしてというのです。
「楽しくじゃ」
「過ごしているんだね」
「ねねと一緒にな」
「ああお前さんお客さんだね」
 ここで、でした、
 秀吉さんよりさらに小さい人懐っこい感じの中年の女の人が出て来ました。着ている服は奇麗な着物ですがとても気さくな感じです。
「言ってくれたらよかったのに」
「ははは、忘れておった」
「全く、困るよ」
「済まぬ済まぬ、こちらがねねじゃ」 
 秀吉さんは皆に笑って応えました。
「わしの女房じゃ」
「はじめまして、ねねよ」
 ねねさんも皆に笑顔で挨拶をします。
「こっちの世界でもこの人の女房だよ」
「いつも飯を作ってくれてじゃ」
 秀吉さんは笑顔でお話します。
「特に漬けものが絶品じゃ」
「あの、お漬けものっていますと」
 そう聞いてです、クッキーは秀吉さんに尋ねました。
「日本の」
「うむ、塩を使ったな」
 まさにとです、秀吉さんは笑顔で応えました。
「それじゃ」
「それをですか」
「作ってくれてな」
「毎日ですか」
「食しておる、臼で轢いた米や麦飯と一緒にな」
「随分質素ですね」
「いや、美味いものは大好きじゃ」
 それはとです、秀吉さんはクッキーに答えました。
「何でもな、しかし家に戻るとな」
「そうしたものがですか」
「食べたくなってのう」
 それでというのです。
「家つまりこの城じゃな」
「大阪城ではですか」
「いつもじゃ」
 笑顔のままお話します。
「食べておる」
「そうなんですね」
「漬けものにな」
「臼で轢いたお米と」
「轢き米とな」
 秀吉さんはそのお米の名前も言いました。
「若しくは麦飯じゃ」
「そうしたものをですか」
「食しておる、あとおなごも好きじゃぞ」
 笑ったままこうも言う秀吉さんでした。
「実にな」
「あの、それは」
「はっはっは、オズの世界では見るだけじゃ」
 自分のお話にどうかというお顔になったクッキーにです、秀吉さんは今も気さくに笑って答えました。
「おなごはな」
「そうですか」
「毎日この街それに殿や織田家の同僚と楽しくな」
「遊ばれて」
「美味いものを食ってな」
 そうもしてというのです。
「楽しんでおる」
「そうなのですね」
「今のわしはな」
「そうですか」
「それでじゃ」
 秀吉さんはさらに言いました。
「今日は茶を飲まぬか」
「お茶ですか」
「日本の茶道のな」
 それのというのです。
「そうせぬか」
「茶道のお茶ですか」
「抹茶じゃ」
 それだというのです。
「それを今から天守閣や庭を見つつな」
「そのうえで」
「飲んでな」
 そうしてというのです。
「その後で天守閣にもな」
「こちらですね」
 クッキーはその天守閣を見て応えました。
「そうですね」
「そうせぬか」
「いいのう」
 皆を代表してです、リンキティンク王が応えました。
「ではな」
「その様にするか」
「ほっほっほ、お茶も大好きでな」
「それでじゃな」
「日本の茶道のお茶もじゃ」
 こちらもというのです。
「そうじゃ、ただわしは正座は出来ぬぞ」
「ははは、人数分の椅子は用意する」
 それはというのです。
「だからな」
「正座はか」
「せずともよい」
 そうだというのです。
「別にな」
「そうなのじゃな」
「無理をせずくつろいでな」
 そうしてというのです。
「そのうえでな」
「楽しむのが茶道か」
「堅苦しいことは無用じゃ」
 こう言うのでした。
「というかわしは元々じゃ」
「堅苦しいことは苦手か」
「天下人の時は公の場に出てばかりでな」
「堅苦しかったか」
「そうせねばならなかったが」
 外の世界にいた時はというのです。
「今はそうしたことをする必要もないからな」
「だからか」
「堅苦しいことは一切せぬしじゃ」
 それにというのです。
「言うこともな」
「ないか」
「うむ」
 その通りだというのです。
「それでお茶もじゃ」
「しないですか」
「うむ」
 まさにというのです。
「ここはな」
「そうか、ではな」
「椅子に座ってな」
 そうしてというのです。
「楽しんでもよいぞ」
「それではな」
 笑顔でお話をしてでした。
 一行は秀吉さんと一緒にお茶を楽しみました、お茶を煎れるのは秀吉さんご自身です、これにはナターシャ達も驚きました。
「えっ、秀吉さんがですか!?」
「秀吉さんが煎れてくれるんですか」
「あの、本当ですか!?」
「私達に煎れてくれるんですか」
「そうしてくれるんですか」
「何を驚いておるのじゃ」
 言われてです、秀吉さんは笑って返しました。
「今のわしは天下人ではないぞ、天下人だった時もじゃ」
「こうしてですか」
「お茶を煎れられてたんですか」
「秀吉さんご自身が」
「そうだったんですね」
「その頃から」
「それが茶道じゃ、自分も煎れることがじゃ」
 お茶をというのです。
「茶の道だからのう」
「だからですか」
「秀吉さんご自身が煎れてくれるんですか」
「そうしてくれるんですね」
「僕達に」
「それで一緒に飲まれるんですね」
「左様じゃ、では飲もうぞ」
 笑顔で言ってでした。
 秀吉さんはお茶を煎れてくれてそのうえでなのでした。
 皆でお茶を飲みます、その中で和菓子も出ますが。
 秀吉さんはピンクや水色、白といった色で彩られた奇麗な和菓子も食べて満面の笑顔で言ったのでした。
「美味いのう」
「そうだね、お茶にはお菓子だけれど」 
 魔法使いはその秀吉さんにお茶を飲みつつ応えました。
「和菓子もいいね」
「そうであろう、わしは甘いものも好きでな」
 秀吉さんは魔法使いに応えて言います。
「こうしてじゃ」
「お茶と一緒にだね」
「よく食べておる」
「うちの人は何でも食べてね」
 ねねさんが笑って言ってきました。
「こうしてだよ」
「和菓子もだね」
「よく食べるんだよ」
 そうしているというのです。
「これがね」
「洋菓子や紅茶も好きじゃ」
 秀吉さんはこうも言いました。
「あとコーヒーもな」
「そうなんだね」
「基本黒い食器でないならな」 
 それならというのです。
「いいぞ」
「そういえば貴方は黒い茶器やお箸が嫌いだそうだね」
 カエルマンは秀吉さんのこのことを指摘しました。
「そうだね」
「うむ、昔からな」
「縁起かな」
「そうじゃな、あとわしは兎に角金色が好きじゃ」
「それで服もだね」
「そうしておる、実は天守閣もじゃ」
 大阪城のそれを見てお話します。
「屋根を金箔したかったがのう」
「それがどうしてされなかったんですか?」
「何でも外の世界では今この天守閣はこうなっておるそうでな」
 青緑の瓦の天守閣を見つつお話します。
「それでじゃ」
「だからですか」
「これにした、街の皆も言うしな」
 このこともあってというのです。
「天守閣は今のな」
「外の世界のものですね」
「それにしたのじゃ」
 こうお話するのでした。
「皆も喜んでくれるしのう」
「そうだったんですね」
「わしは笑顔も好きでのう」
 秀吉さんは笑ってこうも言いました。
「皆が喜んでくれるならな」
「天守閣もですね」
「そうする、しかしな」
 ここで、です。秀吉さんは。
 少し苦笑いになってです、こんなことを言いました。
「この天守閣は怪獣に壊されることもあるらしいのう」
「特撮ですね」
 ナターシャが笑って応えました。
「日本の」
「テレビでも壊されてですね」
 カルロスは和菓子を食べつつお話しました。
「映画でもですね」
「特撮では色々な場所壊されますけれど」
 ジョージも笑ってお話します。
「大阪城は多い方ですね」
「有名な場所ですしね」
 だからだとです、神宝も言います。
「どうしてもそうした風に使われますね」
「私達の住んでいる兵庫県では姫路城の天守閣が有名ですが」
 それでもとです、恵梨香は秀吉さんにお話しました。
「あまり壊された記憶はないですね」
「わしは姫路城にもおった時があったが」 
 秀吉さんは五人に応えてお話しました。
「何でか壊されるのはこっちじゃな」
「大阪城ですね」
「特撮ではそうですね」
「そうなりますよね」
「姫路城でなくて」
「こちらですね」
「うむ、それでじゃ」
 秀吉さんはさらに言います。
「わしとしては複雑な気持ちじゃ」
「いいお城で絵になるからじゃないですか?」
 ボボ王子は秀吉さんに言いました。
「だからじゃないですか?」
「絵になるからか」
「はい、壊してもです」
「よいのか」
「それもまた絵になるので」
 だからだというのです。
「使われるのではないですか?」
「そうなのか」
「僕が今思ったことですが」
「成程のう、しかしな」
 それでもとです、秀吉さんは王子に応えて言いました。
「わしとしては壊されるとな」
「それが創作の世界でのことでもですね」
「複雑じゃ」
 そうしたお気持ちになるというのです。
「どうもな」
「そうなんですね」
「わしが精魂込めて築いた城じゃからのう」
「まさにーーですーーね」
 チクタクだけはお茶もお菓子も楽しんでいません、ですがそれでも場にいて雰囲気を心の栄養にしています。
「秀吉さんのーーお家ーーですーーね」
「この城はのう」
「オズの国ーーでも」
「殿は安土城がお家でな」
 秀吉さんは信長さんのお話もしました。
「それでじゃ」
「大阪城はーーですーーね」
「わしの家じゃ、実際に御殿もあってな」
 後ろに見事な日本の宮殿と呼ぶべき場所があります。
「住んでおるしのう」
「お家がーー壊されるーーことーーは」
「やはり作り話でもな」
 そうであってもというのです。
「複雑な気持ちになる」
「そうーーですーーか」
「うむ、やはりな」  
 こう言うのでした。
「楽しんで観ておってもな」
「楽しんでおるのか」
「テレビも映画も好きでのう」
 リンキティンク王にそれはと笑って応えます。
「それ自体はのう」
「左様か」
「そうじゃ、何かわしが主役の時代劇も多いそうじゃな」
 こうも言うのでした。
「外の世界では」
「はい、かなりありますよ」 
 ナターシャが微笑んで答えました。
「秀吉さんが出られる時代劇は」
「それで主役にもじゃな」
「よくなっています」
「殿と徳川殿もじゃな」
「多いですね、日本では」
「そうじゃな、オズの国でも多くてな」
 秀吉さんが出ている時代劇はというのです。
「わしはこんなに男前かとな」
「思われますか」
「いつものう」
「あたしだってだよ」
 ねねさんは身振りを入れて笑って言いました。
「こんな別嬪さんじゃないよってね」
「思われますか」
「そうだよ、アニメだと凄く可愛い声だけれど」 
 それでもというのです。
「実際のあたしはこうだよ」
「そうですか」
「そうだよ、全く何処が似てるのか」
「全くじゃ、わしは別に男前でもないぞ」
 秀吉さんはお口を大きく開けて笑ってお話しました。
「別にのう」
「そうですか」
「この通りな、しかし心はな」
 こちらはといいますと。
「男前でありたいのう」
「そちらはですぁ」
「うむ」
 是非にというのです。
「やはりな」
「そうですか」
「だから心はいつも確かにな」
「されていますか」
「明るく楽しくでな」
 そうしてというのです。
「広く大きくじゃ」
「そうなる様にですか」
「いつも心掛けておる」
 こうナターシャにお話します。
「そして武道で身体も鍛えておるぞ」
「そうですか」
「日々な、そのうえでな」
「楽しまれていますか」
「オズの国をな、それでお茶の後はな」
 秀吉さんはさらに言ってきました。
「街に出て昼に美味いものを食うか」
「お昼にですか」
「うむ、河豚はどうじゃ」
「あのお魚ですか」
「あるのう、この街には」
「河豚のお店もですね」
「そうじゃ、わしは美味いものは何でも食うと言ったな」
 ナターシャにこのことも言うのでした。
「だからじゃ」
「河豚もですか」
「好きでのう」
 それでというのです。
「よく食しておる」
「それで、ですね」
「昼はそれにせぬか」
「それでは」
「あたし達の頃は河豚は食べなかったんだよ」
 ねねさんも言ってきました。
「戦国の頃はね」
「毒があるからですか」
「外の世界の河豚はそうだね」
「はい、美味しいですが」
「美味しくてもね」
 そうであってもというのです。
「あたるならね」
「毒があって」
「やっぱりね」 
 どうしてもというのです。
「食べられないよ」
「それは仕方ないですね」
「河豚の何処に毒があるかわかっていたら」
 それならというのです。
「そこを切り取って食べるんだけれど」
「難しいですよね」
「あたし達の頃はそれが出来る料理人さんも少なかったしね」
 このこともあってというのです。
「どうしてもだよ」
「河豚は食べなかったんですね」
「あたし達はね」
「しかし今は違うぞ」
 またです、秀吉さんは楽しそうに笑ってお話しました。
「その河豚もな」
「召し上がられますか」
「うむ、だからな」
「お昼はですね」
「あの河豚の模型が看板の店に行ってじゃ」
 そうしてというのです。
「食うか」
「そうしますか」
「是非な、どうじゃ」
「ほっほっほ、よいことじゃ」
 リンキティンク王は秀吉さんのお話を聞いて笑顔で応えました。
「ではのう」
「お昼はじゃ」
「河豚にしようぞ」
「鍋にじゃ」
 河豚のというのです。
「唐揚げ、酢のものにな」
「お刺身じゃな」
「左様、てっさをな」
「それもじゃな」
「皆で食おうぞ」
「いいのう」
「最後は雑炊でな」 
 これも食べようというのです。
「お鍋のだしを使ってな」
「ほっほっほ、それも最高じゃ」
「そうであるな、ただじゃ」
「どうしたのじゃ?」
「どうして河豚のお刺身をてっさと呼ぶじゃ」
 リンキティンク王は和菓子を食べつつ首を傾げさせて尋ねました。
「それがわからん」
「外の世界の大阪では河豚を鉄砲と呼ぶのじゃ」
「武器のか」
「うむ、あたると死ぬからな」
「外の世界では命があるものは死ぬからのう」
「必ずな、そしてじゃ」
 秀吉さんはさらにお話します。
「河豚を鉄砲と呼んでじゃ」
「てっさもか」
「鉄砲のお刺身だからじゃ」
 そうなるからだというのです。
「てっさとじゃ」
「呼ぶのじゃな」
「そういうことじゃ」
「成程のう」
「それでそのじゃ」
「てっさもじゃな」
「食しようぞ」
 皆でというのです。
「是非な」
「うむ、ではお昼は」
「まずは街に行こうぞ、ねねも来るな」
「勿論だよ、お前さん街に出たらすぐに可愛い娘にでれでれするんだから」
「ははは、だからか」
「心配だからね」
 女の子達にでれでれしてというのです。
「それでだよ」
「一緒にじゃな」
「河豚も食べたいしね」
「ではのう」
「一緒に行こうね」
「そうしようぞ」
 笑顔でお話をして実際にでした。
 お茶の後は天守閣に登って景色を楽しんでそれからでした。
 皆で街に出て河豚のお店に入りました、そうしてお鍋や唐揚げ、天麩羅に酢のものにてっさを食べますと。
 リンキティンク王はとても嬉しそうにです、こう言いました。
「うむ、確かにじゃ」
「美味いであろう」
「最高じゃ」
 秀吉さんに笑顔で答えます。
「魚の中でもじゃ」
「特に美味いのう」
「そうであるな」
「だからじゃ」
 秀吉さんも笑顔で言います。
「わしもじゃ」
「好きなのじゃな」
「蟹も串カツもお好み焼きも好きじゃが」
「たこ焼きもか」
「うむ、それで河豚もじゃ」
 このお魚もというのです。
「大好きでな」
「食しておるか」
「よくのう」
 秀吉さんはお鍋の中にある河豚を食べつつ言いました。
「こうしてな」
「そうか、貴殿にとってはか」
「この街の食いもの全てが大好物でじゃ」
「河豚もじゃな」
「その中にあるのじゃ」
「成程のう」
「オズの国に来てよかったわ」
 こうもです、秀吉さんは言いました。
「そう思っておる」
「あたしもだよ、オズの国に来てね」
 ねねさんも河豚を美味しそうに食べつつ言います。
「よかったよ」
「全くじゃ」
「こんないい国はないよ」
「うむ、花見もいつも出来るしのう」
「それもいいね」
「お花見というと桜かな」
 カエルマンはお花見と聞いてこのお花の名前を出しました。
「そうなのかな」
「うむ、この場合の花見はな」
 秀吉さんもそうだと答えます。
「その花のじゃ」
「そうだね」
「梅や桃、菊もあってな」
「他のお花もだね」
「色々あるがわしが一番好きなのはな」
「桜でだね」
「それを見るな」
「お花見が好きなんだ」
「こちらも大好きじゃ」
 満面の笑みでのお言葉でした。
「わしはな」
「お花見もなんだ」
「左様、それでな」
「何時でもだね」
「オズの国はいつも様々な花が咲いておってじゃ」
 そうしてというのです。
「桜もであるからな」
「だからだね」
「いつも楽しんでおるぞ」
 そのお花見もというのです。
「そうしておるぞ」
「うちの人はもう無類のお花見好きでね」
 ねねさんがまた笑って言います、お酒を飲んでいる秀吉さんを見つつ。
「もう三日に一回はね」
「花見をしておるのう」
「そうだね」
「城にも多く植えておるしな」
「そうだよね」
「桜は最高じゃ」
 お酒を飲みながらです、秀吉さんは言い切りました。
「朝も昼も夜も見てじゃ」
「楽しんでるね」
「そして飽きぬ」
 全くというのです。
「わしはな」
「お前さんはそうだね」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのです。
「そこで茶や酒もな」
「楽しむね」
「そうしておる」
「じゃあこの私達もですね」
 ナターシャは唐揚げを食べつつ秀吉さんに言いました。
「お花見をしていいですね」
「存分にな」
 秀吉さんは笑顔のまま答えました。
「するとよいぞ」
「わかりました」
「花見に美味いものにのう」
 秀吉さんはさらに言いました。
「テレビに映画、ゲームにとな」
「楽しいことばかりですか」
「今はな、何も不満はない」
「オズの国に来られて」
「左様、殿も織田家のお歴々もおられて」
 昔馴染みの人達もというのです。
「特にねねがおってな」
「あらやだ」
 ねねさんは秀吉さんの今のお言葉に笑って応えました。
「そこでそう言うかい?」
「やっぱりわしにはお主じゃ」
 ねねさんにも笑って言うのでした。
「おなごは好きでもな」
「あたしが一番かい?」
「そうじゃ、お主と一緒に仲良く暮らしてな」
 その様にしてというのです。
「まことにな」 
「何も不満もなくだね」
「楽しいわ、だからな」 
 それ故にというのです。
「ずっとオズの国でじゃ」
「暮らしていかれますか」
「その様にしていくぞ」
 河豚を食べつつ言います、そしてです。
 秀吉さんもねねさんも一行もこのお昼は河豚を楽しみました、黒と黄色の縦縞での楽しみはまだ続くのでした。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る